(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277139
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】モータ保持機構およびアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/00 20060101AFI20180129BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
H02K5/00 A
H02K7/116
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-1992(P2015-1992)
(22)【出願日】2015年1月8日
(65)【公開番号】特開2016-127767(P2016-127767A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】平林 晃一郎
(72)【発明者】
【氏名】古屋 美幸
【審査官】
島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05511282(US,A)
【文献】
国際公開第2008/087962(WO,A1)
【文献】
特開2002−357248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/00
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを有するモータと、
前記モータが取り付けられるベースプレートと、
前記ベースプレートに取り付けられるカバーと、を有し、
前記シャフトは、前記モータの前端部から突出しており、
前記ベースプレートは、前記モータの前端部の位置を規制する前端支持部と、弾性を有するベース側支持部と、シャフト支持部と、を備え、
前記カバーは、弾性を有するカバー側支持部と、を備え、
前記モータの回転軸方向において、前記ベース側支持部は当該ベース側支持部に対向する前記モータの後端部を支持し、
前記モータは、前記ベース側支持部と前記カバー側支持部によって、前記前端支持部に押圧され、
前記モータの回転軸方向において、前記シャフト支持部は当該シャフト支持部に対向するシャフトの先端部を支持するモータ保持機構。
【請求項2】
前記カバー側支持部は、前記ベース側支持部の位置を規制している請求項1に記載のモータ保持機構。
【請求項3】
前記回転軸方向において、前記カバー側支持部は、前記モータの後端部に対向する前記ベース側支持部に接触している請求項1又は2に記載のモータ保持機構。
【請求項4】
請求項1に記載のモータ保持機構と、
前記シャフトに固定されたウォームと、
ギヤと、を備え、
前記ギヤは、前記ベースプレートに取り付けられているアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータとギヤ列をケースに収納し一体としたアクチュエータに関するものであり、特にモータの保持機構に係る。
【背景技術】
【0002】
モータとギヤ列をケースに収納し一体としたアクチュエータが知られている。このようなモータ一体型のアクチュエータでは、モータを保持する機構として、ケースに弾性変形可能な支持部を設け、モータの一端を支持部の弾性力により押圧して保持する構造を採用したものがある(特許文献1)。
【0003】
弾性変形可能な支持部によるモータ保持機構では、支持部をケースと一体に形成することにより、アクチュエータの部品点数を削減することができる。しかし、モータの押圧力を大きくしようとして支持部の弾性力を大きくすると、モータを嵌め込むために支持部を広げる際にも大きな力が必要となり、アクチュエータの組み立てが困難になる。また、アクチュエータの組み立てを容易にするために、支持部の弾性力を小さくすると、外部から強い振動や衝撃がモータに加わった場合、支持部がモータを支えられずに破損したり、モータが外れたりする恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−200407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、モータの取り付けが容易であり、モータを強固に保持することが可能な、モータ保持機構およびアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータ保持機構は上記目的を達成するために、モータと、前記モータが取り付けられるベースプレートと、前記ベースプレートに取り付けられるカバーとを有し、前記ベースプレートは、前記モータの前端部の位置を規制する前端支持部と、前記モータの後端部を前記前端支持部の方向に弾性力により押圧するベース側支持部とを備え、前記カバーは、前記ベース側支持部を前記前端支持部の方向に押圧するカバー側支持部を備えることを特徴とする。
【0007】
前記カバー側支持部は、弾性力により前記ベース側支持部を押圧することを特徴とする。
【0008】
前記カバー側支持部は、前記ベース側支持部の位置を規制することにより、前記ベース側支持部を押圧することを特徴とする。
【0009】
また、本発明のアクチュエータは、モータと、ギヤ列と、前記モータと前記ギヤ列とが取り付けられるベースプレートと、前記ベースプレートに取り付けられるカバーとを有し、前記ベースプレートは、前記モータの前端部の位置を規制する前端支持部と、前記モータの後端部を前記前端支持部の方向に弾性力により押圧するベース側支持部とを備え、前記カバーは、前記ベース側支持部を前記前端支持部の方向に押圧するカバー側支持部を備えることを特徴とする。
【0010】
前記カバー側支持部は、弾性力により前記ベース側支持部を押圧することを特徴とする。
【0011】
前記カバー側支持部は、前記ベース側支持部の位置を規制することにより、前記ベース側支持部を押圧することを特徴とする。
【0012】
前記モータの前端部から突出するモータのシャフトに、前記ギヤ列を構成するウォームが固定され、前記ベースプレートは、前記モータのシャフトおよび前記ウォームの少なくとも一方を、前記ベース側支持部の方向に弾性力により押圧するシャフト支持部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、モータの取り付けが容易であり、モータを強固に保持することが可能な、モータ保持機構およびアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態のアクチュエータの外観斜視図である。
【
図2】
図1のアクチュエータからカバーを取り除いた斜視図である。
【
図5】実施形態のアクチュエータのカバー取り付け前の断面図である。
【
図6】実施形態のモータ保持機構を示す断面図である。
【
図7】他の実施形態のモータ保持機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という)を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の実施形態のアクチュエータの外観斜視図であり、
図2は
図1のカバー2を取り除き、アクチュエータの内部構造を示した図である。実施形態のアクチュエータは、樹脂製のベースプレート1とカバー2で構成されたケース内に、モータ4と減速機構が収納され、カバー2に設けられた開口から出力軸3が突出する。
【0017】
アクチュエータの減速機構は、モータのシャフト4cに固定された第1ウォーム7aと、一端に第1ウォームホイール7bが形成され他端に第2ウォーム7cが形成されたギヤと、出力軸3に固定された第2ウォームホイール7dと、からなるギヤ列を備える。第1ウォーム7aは第1ウォームホイール7bとかみあい第1のウォームギヤを構成し、第2ウォーム7cは第2ウォームホイール7dとかみあい第2のウォームギヤを構成している。
【0018】
図3はベースプレート1の内面の斜視図である。ベースプレート1は樹脂によって形成され、モータ設置部9にはモータ4が載置される固定座10を備える。また、モータ4の回転軸方向に沿って、弾性を有しモータの後端部4bを支持するベース側支持部5、モータの前端部4aを支持する前端支持部8、および弾性を有しモータのシャフト4cの先端部を支持するシャフト支持部6が設けられている。固定座10、ベース側支持部5、前端支持部8、およびシャフト支持部6は、ベースプレート1と一体に樹脂成形されており、アクチュエータの部品点数の削減と組み立て作業性を高めている。
【0019】
前端支持部8には、モータの軸受け部4dが嵌合する溝8aが設けられており、溝8aの位置はモータの軸受け部4dを溝8aに嵌合したときに、第1ウォーム7aと第1ウォームホイール7bとが適切にかみあう位置に設定されている。シャフト支持部6は、モータのシャフト4cに固定された第1ウォーム7aの回転軸方向の遊び小さくするために、モータのシャフト4cの先端部をベース側支持部5の方向に押圧する。なお、シャフト支持部6が第1ウォーム7aの先端部をベース側支持部5の方向に押圧する構造とすることもできる。
【0020】
図4はカバー2の内面の斜視図である。ベースプレート1のモータ設置部9に対向する場所には、モータ4の上部を押さえるモータ押さえ部13、弾性を有しベースプレート1のベース側支持部5を前端支持部8の方向に付勢するカバー側支持部11、および溝8aに嵌合しモータの軸受け部4dを押さえて浮き上がりを防止する前端押さえ部12が設けられている。
【0021】
実施形態のモータ保持機構について、
図5、6に基づき説明する。
図5はベースプレート1にモータ4が取り付けられた状態を示す断面図である。モータ4の取り付けは、弾性を有するベース側支持部5とシャフト支持部6をそれぞれ前端支持部8とは反対方向に押し広げ、ベース側支持部5と前端支持部8、シャフト支持部6によって、モータ4をベースプレート1に固定する。
【0022】
ベースプレート1に固定されたモータ4には、シャフト支持部6の弾性力によりモータのシャフト4cの先端部をベース側支持部5の方向に押圧する力と、ベース側支持部5の弾性力によりモータの後端部4bを前端支持部8の方向に押圧する力が加わる。ベース側支持部5の弾性力はシャフト支持部6の弾性力よりも大きく設定されているので、ベース側支持部5はモータの後端部4bを、ベース側支持部5の弾性力とシャフト支持部6の弾性力の差分に相当する力で前端支持部8に押圧する。
【0023】
図6はベースプレート1にカバー2を取り付けた状態を示す断面図である。カバー2に設けられた弾性を有する板状のカバー側支持部11は、ベース側支持部5と一部が干渉する位置に設けられている。ベースプレート1にカバー2を取り付けると、カバー側支持部11はベース側支持部5に当接した後、ベース側支持部5に沿って、前端支持部8とは反対の方向に押し広げられる。
【0024】
このため、カバー側支持部11に生じる弾性力は、ベース側支持部5を前端支持部8に押し付ける方向に働く。この結果、モータの後端部4bは、ベース側支持部5の弾性力とカバー側支持部11の弾性力によって、前端支持部8に押圧される。また、ベース側支持部5の先端がカバー側支持部11によって支持されるため、ベース側支持部5の剛性が高まる。
【0025】
従来のベース側支持部5のみでモータ4を押圧するモータ保持機構では、ベース側支持部5の弾性力を小さくすると、モータ4の嵌めこみは容易になるが、外部からの振動や衝撃によってモータ4が外れ易くなり、弾性力を大きくするとモータ4は外れ難くなるがモータ4の嵌めこみが困難になるため、モータ4に適切な押圧力を加えることが難しかった。
【0026】
しかし、実施形態のモータ保持機構では、カバー2を取り付ける前の、モータ4の嵌め込み作業時にモータ4に作用する弾性力は、ベース側支持部5による弾性力のみであるが、カバー2を取り付けた後のモータ4は、ベース側支持部5の弾性力とカバー側支持部11の弾性力の合力によって前端支持部8に押圧される。このため、ベース側支持部5の弾性力を小さくして、モータ4の嵌め込み作業が容易に行えるようにしても、カバー2を取り付けた後はカバー側支持部11の弾性力が加わり、大きな押圧力でモータ4を強固に保持することができる。また、実施形態のカバー側支持部11は、樹脂製のカバー2と一体で形成することができるので、アクチュエータの部品点数が増えることはない。
【0027】
図7は本発明の他の実施形態を示す断面図である。他の実施形態のモータ保持機構は、板状のカバー側支持部11に替えて、カバー2に肉厚部を設けカバー側支持部14とした点が異なる。他の実施形態においても、モータ4の取り付け時の押圧力はベース側支持部5の弾性力のみであるので、モータ4の嵌め込みを容易に行うことができる。そして、カバー2が取り付けられると、押し広げられていたベース側支持部5の先端の位置が、カバー側支持部14によって規制され前端支持部8側に押し戻される。ベース側支持部5は先端をカバー側支持部14に、下部をベースプレート1にそれぞれ支持され、モータ4を前端支持部8に押し付ける構造となりモータ4が強固に保持される。
【0028】
上記実施形態では、2つのウォームギヤを減速機構とするアクチュエータについて説明したが、減速機構の構成はこれに限定されるものではない。また、ベース側支持部5またはカバー側支持部11、14の少なくとも一方の先端にテーパを設ければ、ベースプレート1にカバー2の取り付けを容易に行うことができる。
【0029】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 ベースプレート
2 カバー
4 モータ
4a モータの前端部
4b モータの後端部
4c モータのシャフト
5 ベース側支持部
6 シャフト支持部
7a、7c ウォーム
8 前端支持部
11、14 カバー側支持部