(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277211
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】交通監視システム
(51)【国際特許分類】
G08C 19/00 20060101AFI20180129BHJP
G08G 1/02 20060101ALI20180129BHJP
【FI】
G08C19/00 Z
G08G1/02 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-561167(P2015-561167)
(86)(22)【出願日】2014年12月1日
(86)【国際出願番号】JP2014081778
(87)【国際公開番号】WO2015118758
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2017年2月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-22050(P2014-22050)
(32)【優先日】2014年2月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】517177729
【氏名又は名称】仙台スマートマシーンズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095359
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100143834
【弁理士】
【氏名又は名称】楠 修二
(72)【発明者】
【氏名】桑野 博喜
(72)【発明者】
【氏名】北吉 均
(72)【発明者】
【氏名】賀 建軍
(72)【発明者】
【氏名】原 基揚
【審査官】
深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−233894(JP,A)
【文献】
特開2009−010926(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0286625(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 19/00
G08G 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機能をそれぞれ具備した複数のセンサモジュールと、各センサモジュールからの送信データを集約および解析するサーバ機とを有するセンサネットワークシステムを用いた交通監視システムであって、
前記サーバ機はサーバ用の蓄電素子を含み、
各センサモジュールの検出信号が所定の閾値を超えたときのみ、各センサモジュールからパルス信号が前記サーバ機に送信され、前記パルス信号に同期させて前記サーバ用の蓄電素子が蓄電され、前記サーバ用の蓄電素子の蓄電量に基づき交通量を推定することを
特徴とする交通監視システム。
【請求項2】
各センサモジュールはセンサ用の蓄電素子を含み、
各センサモジュールの前記検出信号は前記センサ用の蓄電素子に蓄電され、前記センサ用の蓄電素子の蓄電量が所定の閾値を超えたときのみ、前記パルス信号が前記サーバ機に送信されることを
特徴とする請求項1記載の交通監視システム。
【請求項3】
各センサモジュールは慣性センサを有することを特徴とする請求項1または2記載の交通監視システム。
【請求項4】
前記慣性センサは圧電体を具備することを特徴とする請求項3記載の交通監視システム。
【請求項5】
前記圧電体は窒化アルミニウムからなることを特徴とする請求項4記載の交通監視システム。
【請求項6】
前記パルス信号の頻度に基づき交通量を推定することを
特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の交通監視システム。
【請求項7】
各センサモジュールの前記パルス信号間の遅延時間に基づき、交通車両の速度および進行方向を推定することを
特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の交通監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサネットワークシステ
ムを用いた交通監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、橋脚やトンネル、高速道路、鉄道といった交通システムの老朽化が問題となっている。これらの老朽化は、部材の剥離落下や崩落などを引き起こし、重篤な被害を引き起こす。そのため、これら交通システムには適切な管理を欠かすことができない。しかしながら、これらの交通システムは、その長大な総延長により、人手による監視・管理だけでは適切なタイミングで定期点検を実施することは容易ではない。
【0003】
この課題に対して、交通システムにセンサを分散配置して、これらのセンサをネットワーク化することで、詳細な情報を取得し、監視・管理に役立てる試みが盛んに提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0004】
センサのネットワーク化においては、センサ素子と通信チップとをモジュール化して作製することが一般的に行われている。このように作製されたセンサモジュールからのデータの送信は、消費電力を抑えるために、一定間隔で断続的に行われる。ところが、この手法では、時間変動の激しい交通量や、それに伴う振動をセンシングの対象とする場合に、測定周期と消費電力とのトレードオフに悩まされることになる。以上のような理由から、現在、交通システムの監視・管理は、埋設式光ファイバー圧力センサからの測定データや、カメラからの画像を用いてなされるのが一般的となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−255572号公報
【特許文献2】特開2005−353015号公報
【特許文献3】特開2004−301571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、埋設式光ファイバー圧力センサやカメラの敷設・設置には多大な費用が必要となるため、一部の交通システムへの導入に留まっており、全交通システムへの普及は困難である。
【0007】
前記に鑑み、本発明は、例えば交通システムを監視・管理するために必要な利用状況に関する情報等を、低コスト且つ低消費電力で確実に取得できるようにするセンサネットワークシステ
ムを用いた交通監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明に係る
交通監視システムは、通信機能をそれぞれ具備した複数のセンサモジュールと、各センサモジュールからの送信データを集約および解析するサーバ機とを有するセンサネットワークシステム
を用いた交通監視システムであって、前記サーバ機はサーバ用の蓄電素子を含み、各センサモジュールの検出信号が所定の閾値を超えたときのみ、各センサモジュールからパルス信号が前記サーバ機に送信
され、前記パルス信号に同期させて前記サーバ用の蓄電素子が蓄電され、前記サーバ用の蓄電素子の蓄電量に基づき交通量を推定することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る
交通監視システムは、各センサモジュールからのデータ送信周期をイベント頻度に同期させることができるので、各センサモジュールの消費電力を適切に抑制することができると共に、イベントを確実にモニタリングできる。また、各センサモジュール中のセンサとして、例えば圧電型センサ等の安価なセンサを使用可能であるため、例えば交通システムを監視・管理するために必要な利用状況に関する情報等を低コスト且つ低消費電力で確実に取得することができる。
これにより、交通量を低コスト且つ低消費電力で確実に推定することができる。
【0010】
本発明に係る
交通監視システムにおいて、各センサモジュールは
センサ用の蓄電素子を含み、各センサモジュールの前記検出信号は前記
センサ用の蓄電素子に蓄電され、前記
センサ用の蓄電素子の蓄電量が所定の閾値を超えたときのみ、前記パルス信号が前記サーバ機に送信されてもよい。これによって、各センサモジュールからのデータ送信周期をイベント頻度に確実に同期させることができるので、前述の効果を確実に得ることができる。
【0011】
本発明に係る
交通監視システムにおいて、各センサモジュールは慣性センサを有していてもよい。これによって、パルス信号の頻度に基づき、例えば交通量を推定することができる。また、この場合、前記慣性センサが圧電体を具備すると、バイアス回路や増幅回路を使用しなくても、電荷出力を得ることができるので、各センサモジュールの消費電力をより一層抑制することができる。また、前記圧電体が窒化アルミニウムからなると、鉛を含まないセンサモジュールを構成できるので、センサネットワークシステムを例えば屋外の交通インフラに適用する場合にも、環境汚染を防止することができる。
【0012】
本発明に係
る交通監視システム
は、前記パルス信号の頻度に基づき交通量を推定
してもよい。これによって、交通量を低コスト且つ低消費電力で確実に推定することができる。
【0014】
本発明に係
る交通監視システム
は、各センサモジュールの前記パルス信号間の遅延時間に基づき、交通車両の速度および進行方向を推定
してもよい。これによって、交通車両の速度および進行方向を低コスト且つ低消費電力で確実に推定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、例えば交通システムを監視・管理するために必要な利用状況に関する情報等を、低コスト且つ低消費電力で確実に取得できるセンサネットワークシステ
ムを用いた交通監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】比較例に係るセンサモジュールを示す構成図である。
【
図2】
図1に示すセンサネットワークシステムを橋脚に適用した場合の模式図である。
【
図3】(a)
図2におけるセンサモジュールの出力波形を示すグラフ、(b)その出力を周期t
sで送信したときの送信データを示すグラフである。
【
図4】本発明の実施形態に係るセンサモジュールの一例を示す構成図である。
【
図5】
図4に示すセンサモジュールを
図2の橋脚に適用したときの、センサモジュールの出力波形を示すグラフである。
【
図6】
図4に示すセンサモジュールを構成するセンサの模式図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るセンサモジュールの第2の例を示す構成図である。
【
図8】本発明の実施形態に係るセンサモジュールの第3の例を示す構成図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るセンサモジュールの第4の例を示す構成図である。
【
図10】(a)
図4に示すセンサモジュールを、橋脚に等間隔に配置した様子を示す側面図、(b)そのときの車両の通過と測定波形との相関を調べた結果を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施形態に係るセンサネットワークシステムを用いて詳細な計測を行う場合の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[比較例]
図1は、加速度センサ(慣性センサ)からサーバ機にデータを送信するセンサネットワークシステムに用いられる、比較例に係るセンサモジュールの構成図である。
【0018】
図1に示すセンサモジュール10において、センサ11で測定された物理量f(t)は通信モジュール12のADコンバータ12aに送られ、デジタル信号に変換されたのちに、通信用フロントエンド(通信機)12bを経由して、データを集約および解析するサーバ機に送られる。ここで、データの送信は、タイマー12cを参照して、一定間隔にて為される。尚、センサモジュール10は、センサ11及び通信モジュール12に給電する電源13を有している。通信モジュール12として、ADコンバータ、タイマー及び通信用フロントエンドを内蔵する一般的な市販センサモジュールを使用できる。
【0019】
図2は、センサネットワークシステムを橋脚に適用した場合の模式図であり、センサモジュールが橋脚に9つ分散配置されている様子を示している。尚、
図2では、各センサモジュールにアンテナが搭載され、ワイヤレスにてネットワーク化されている様子を示しているが、これらのセンサモジュールは有線にてネットワーク化されていても良い。
【0020】
ここで、
図2において、
図1に示すセンサモジュールが用いられているものとして、一つのセンサモジュールAに着目すると、センサモジュールAに内蔵される加速度センサの出力は、
図3(a)のような波形となる。すなわち、
図3(a)に示す波形は、交通車両A、B、Cの通過に同期したピークを有する。この場合において、周期t
sにて加速度データを取得した様子を
図3(b)に示す。
図3(b)から分かるように、比較例に係るセンサモジュールを用いた場合、サーバ機に送られるデータ(
図3(b)中の棒グラフ)は、
図3(a)に示すピークを捉えることができていない。言い換えると、有意なデータを取得できていない。
【0021】
この問題に対し、周期t
sをピーク(振動ピーク)の時間幅よりも小さく設定する手法も考えられるが、この場合、センサモジュールの消費電力は著しく増大してしまう。尚、比較例に係るセンサモジュールにおいては、データの送信に使用される電力は一定であり、センサの出力の強弱とは関係しない。すなわち、比較例に係るセンサモジュールにおいては、
図3(b)に示すように、有意なデータが取得できていないにも関わらず、電力は、データを取得するタイミングで常に消費されている。
【0022】
[本発明の実施形態]
図4は、本発明の実施形態に係るセンサモジュールの一例を示す構成図である。
図4に示すセンサモジュール100の特徴は、データ送信を通信モジュールのタイマーに依存するのではなく、センサ101の出力強度をマイコン102でモニターし、出力強度が所定の閾値を超えたときのみ、スイッチ103を駆動し、通信機104を経由してパルス信号を、データを集約および解析するサーバ機に送る。尚、センサモジュール100は、センサ101、マイコン102、スイッチ103及び通信機104に給電する電源105を有している。
【0023】
ここで、
図2において、
図4に示すセンサモジュールが用いられているものとして、一つのセンサモジュールAに着目すると、センサモジュールAに内蔵される加速度センサ(慣性センサ)の出力は、
図5のような波形となる。
図5に示すように、比較例(
図3(a)、(b)参照)と比べて、データ取得の回数が抑制されており、それによって、センサモジュール100の消費電力を大幅に削減することができる。
【0024】
尚、
図4に示すセンサモジュールでは、加速度の強弱を取得することはできないものの、車両通過に伴うピークを確実に捉えることができる。従って、送信されるデータ(パルス信号)の頻度を計測すれば、対象とする交通システム(橋脚や道路等)における交通量を推定することが可能となる。
【0025】
また、本実施形態において、前述のように、センサ出力の強弱ではなく、その頻度のみに着目するのであれば、センサには、加速度のような外部入力に対して線形出力を求める必要がなく、インパルス状の入力に対して、高い電圧を出力できれば良い。このような要求に対して好適な部材として、圧電板を挙げることができる。
図6は、圧電板を用いたセンサの模式図である。
図6に示すように、センサ110において、圧電板111の一端は固定ジグ112に保持されており、他端には錘113が載置されている。このセンサ110によって、インパルス入力に対し、高い電圧を瞬間的に生成することができる。
【0026】
また、圧電板の特徴として、他のセンサ素子と異なり、バイアス回路を設けることなく、電荷を出力することができる。従って、
図4に示すセンサモジュールにおいて、センサ101に代えて、圧電型のセンサ110を用いることにより、
図7に示すセンサモジュール100Aのように、センサ素子への給電線を取り外すことが可能となる。但し、出力電荷量の低下が無視できない場合、電源105からセンサ110へ給電してもよい。
【0027】
さらに、本実施形態において、出力頻度だけに着目するのであれば、
図8に示すセンサモジュール100Bのように、圧電型のセンサ110と
センサ用の蓄電素子130とを組み合わせることによって、蓄電素子130に蓄積される蓄電量が所定の閾値を超えたときのみ、パルス信号をサーバ機に送信してもよい。具体的には、センサモジュール100Bにおいて、センサ110からの出力信号は、整流素子120を経由してコンデンサ等の蓄電素子130に蓄積される。マイコン102は、蓄電素子130の蓄電量をモニターし、出力強度が所定の閾値を超えたときのみ、スイッチ103を駆動し、通信機104を経由してパルス信号を、データを集約および解析するサーバ機に送る。
【0028】
尚、圧電板の出力電荷量によっては、
図9に示すセンサモジュール100Cのように、蓄電素子130から、他の回路要素、例えば、マイコン102、スイッチ103及び通信機104に電力を供給してもよい。
【0029】
また、センサモジュール内に蓄電素子
130を設けるだけではなく、サーバ機にも
サーバ用の蓄電素子を設け、センサモジュールから出力されるパルス信号に同期させて当該
サーバ用の蓄電素子を蓄電し、当該蓄電量に基づき交通量を推定
する。
【0030】
ところで、本実施形態のセンサネットワークを、例えば屋外の交通インフラに適用する場合、センサモジュールは有害な鉛を含まないことが望ましい。この場合、圧電板の構成部材として、圧電セラミックや圧電基板のような板材ではなく、非鉛の圧電薄膜を利用しても良い。非鉛の圧電薄膜としては、例えば、窒化アルミニウム膜、窒化ガリウム膜、酸化亜鉛膜、又は酸化タンタル膜等が適用可能である。
【0031】
図10は、本発明の実施形態に係るセンサモジュール(Sensor01〜08)を、長さ約100mの橋脚に等間隔(14m間隔)に配置し、車両の通過と測定波形との相関を調べた結果を示している。
【0032】
図10に示すように、各Sensor01〜08において、車両の走行に伴って、ピーク状の出力が得られていることが確認できる。このことから、各Sensor01〜08のピークに対応するパルス信号(サーバ機への送信データ)同士の間の遅延時間に基づき、交通車両の速度および進行方向をモニター可能であることが分かる。すなわち、複数のセンサモジュールを用いることによって、パルス信号の頻度と対応する交通量以外にも、交通システムを監視・管理するために必要な利用状況に関する多くの情報を解析によって得ることができる。
【0033】
例えば、本実施形態のセンサネットワークシステムは、地震のモニタリングにも適用可能である。すなわち、各センサモジュールのピークに対応するパルス信号同士の間の遅延時間が極めて短い場合には、例えば地震などの災害により、橋脚全体が振動したと判断することができる。
【0034】
地震の振動は、極めてダイナミックレンジが広く、全ての振動情報を得ようとした場合には、線形測定範囲と感度という背反する二つの仕様を同時に満足しなければならない。ところが、車両による振動を計測するために調整されたセンサネットワークシステム(例えば
図1に示す比較例に係るセンサモジュールを用いたセンサネットワークシステム)では、地震の振動が感度範囲外となって振動が過小評価されたり、或いは、
図3(b)で説明した理由により、振動が計測されなかったりする恐れがある。
【0035】
それに対して、本実施形態のセンサネットワークシステムでは、各センサモジュールのピークに対応するパルス信号同士の間の遅延時間が極めて短い場合を検出することにより、地震の到来を確実に捉えることができる。この場合に、さらに詳細な計測が必要な場合には、例えば
図11に示すようにシステムを構成すればよい。すなわち、例えば橋脚上に、
図4、
図7、
図8又は
図9に示すような本実施形態のセンサモジュール(Sensor01〜08)を配置し、Sensor01〜08からのデータが送信されるサーバ機150によるデータ解析の結果、地震の到来が検出された場合には、それをトリガーとして、スイッチ160を介して、タイマー170、及び、別途配置された高感度センサ180からの計測信号を記録するデータロガー190を起動し、一定時間レコーディングを行ってもよい。
【0036】
図10および
図11において、信号の解析について述べたが、信号解析には各センサ間の時間同期が必要となる。しかしながら、センサノードへの高精度なクロックデバイスの搭載は、消費電力の増大を引き起こす。このため、高精度なクロックデバイスは、センサからの信号を受け取るサーバ機に搭載されることが望ましい。
【0037】
サーバ機のクロックデバイスの精度を高めていくと、他の高速道路や橋脚の交通量とリンクさせて、都市レベルでの交通量監視が可能となる。しかしながら、クロックデバイスの高精度化は更なる消費電力の増大を引き起こすため、各交通監視システムでは解析を行わず、サーバ機に蓄電素子を搭載して、センサ出力の積分量、すなわち交通量のみを評価しても良い。
【0038】
本発明に係る交通監視システムは、交通量の増減が激しい生活道路や、メンテナンスが行き届かない交通量の少ない一般道を対象とするのが好ましい。交通量の多い幹線道路では、イベント駆動のセンサシステムは必ずしも消費電力の圧縮に寄与しない。ただし、主要な幹線道路は、従来のように、カメラや埋設センサにて対応しても良く、道路の種類による使い分けが肝要と言える。
【0039】
本発明に係る交通監視システムは、ピークだけに着目する簡便な手法であり、カメラと組み合わせることによって、交通車両の車間距離を正確に計測することに寄与する。近年、車間距離と交通渋滞との関連性が広く研究されており、車間距離の情報は、渋滞緩和の検討に対しても、重要なデータを提示する。
【0040】
図11では、解析による地震の検出に言及しているが、上述のように、信号の解析には時間同期が重要となる。しかしながら、橋脚に配置されたセンサ群の出力を一つの蓄電素子に蓄える系を備えておけば、地震によって全てのセンサノードが同時に信号を出力した場合、蓄電量の変化速度が著しく増大する。この蓄電速度の変化を読み取ることで、時間同期なしに、地震の到来を検出することができる。この蓄電素子は、高精度なクロックデバイスを有するサーバ機に搭載された蓄電素子と併用しても良い。
【0041】
以上、発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。具体的には、本実施形態においては、主として橋脚への適用例について述べてきたが、それ以外にも、道路等の他の交通システムや、その他の構造物等への適用が可能であることは言うまでもない。また、その場合、センサモジュール中のセンサは、慣性センサに限られないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0042】
10 センサモジュール
11 センサ
12 通信モジュール
12a ADコンバータ
12b 通信用フロントエンド
12c タイマー
13 電源
100、100A、100B、100C センサモジュール
101 センサ
102 マイコン
103 スイッチ
104 通信機
105 電源
110 (圧電型の)センサ
111 圧電板
112 固定ジグ
113 錘
120 整流素子
130 蓄電素子
150 サーバ機
160 スイッチ
170 タイマー
180 高感度センサ
190 データロガー