(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277212
(24)【登録日】2018年1月19日
(45)【発行日】2018年2月7日
(54)【発明の名称】ドラム缶の連結具
(51)【国際特許分類】
B65D 67/02 20060101AFI20180129BHJP
【FI】
B65D67/02 M
B65D67/02 D
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-35162(P2016-35162)
(22)【出願日】2016年2月26日
(65)【公開番号】特開2017-149465(P2017-149465A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2017年12月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516059525
【氏名又は名称】岩本 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【弁理士】
【氏名又は名称】宮田 正道
(72)【発明者】
【氏名】岩本 隆
(72)【発明者】
【氏名】反 寛幸
【審査官】
植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭53−148768(JP,U)
【文献】
独国特許出願公告第1198021(DE,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 67/02
B65D 25/20
B65D 19/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結ロッドの両端部に、ドラム缶の上縁凸部の外周又は内周に係止する把持部が、連結ロッドに対して水平方向へ回動自在に設けられており、前記把持部は上下位置で対峙した把持爪を有すること、対峙した把持爪は上下方向に離接自在に構成されていること、前記対峙した把持爪は基部に対峙方向へガイド面を備え、前記ガイド面は互いに重合状態で上下方向へ摺動可能に構成されていることを特徴とするドラム缶の連結具。
【請求項2】
連結ロッドに昇降可能に設けられた垂直軸の制止部と連結ロッドとの間に、把持爪が対峙した状態で緩挿されており、前記垂直軸の昇降によって対峙した把持爪が上下方向に離接自在になることを特徴とする請求項1に記載のドラム缶の連結具。
【請求項3】
垂直軸が螺軸であり、連結ロッドに設けた螺子孔に螺合してなることを特徴とする請求項2に記載のドラム缶の連結具。
【請求項4】
垂直軸がボルトであることを特徴とする請求項3に記載のドラム缶の連結具。
【請求項5】
対峙した把持爪の基部に備えたガイド面が傾斜面で、互いに重合状態に構成されており、上下方向への摺動によって対峙した把持爪が水平方向へ離接自在になることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のドラム缶の連結具。
【請求項6】
上部把持爪の先部は下方への曲部を成していると共に、ドラム缶の上縁凸部の内周に突合する下端面は外側への湾曲面となっていること、ドラム缶の上縁凸部の外周に突合する下部把持爪の先端面は、連結ロッドから突出していると共に、内側への湾曲面となっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のドラム缶の連結具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起立して並設したドラム缶同士を連結し、地震時や輸送時の揺れ・振動に転倒しないようにするドラム缶の連結具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のドラム缶の転倒を防止するための連結具の先行技術として、本出願人が開発した特許第4522492号がある。
当該特許においては、ドラム缶の上縁凸部に係止する把持部と、この把持部を両端に有する連結ロッドより構成し、把持部は連結ロッドに対して水平方向に回動自在とし、把持部は上下位置で離接自在に対峙した把持爪を有することを特徴とするものである。
【0003】
そして、対峙した把持爪の一方は、他方の把持爪に設けた垂直軸に緩挿して昇降自在とし、対峙した把持爪間に連結ロッドの連結部を垂直軸に弾性材を介して緩挿したもので、垂直軸をナットの螺軸を用いて、ナットの弛緩によって一方の把持爪を昇降させるようにしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4522492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許第4522492号公報では、対峙した把持爪は上下方向のみで離接自在なっていること、対峙した把持爪の一方は、他方の把持爪に設けた垂直軸に緩挿してナットの弛緩によって昇降自在としたこと、一方の把持爪が昇降して離接すること、把持爪間に連結ロッドの連結部を垂直軸に弾性材を介して緩挿したこと等、操作や作用に新たな課題と構成の簡素化が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、簡単な取り扱い操作により、確実かつ強固にドラム缶同士を連結し、互いに固定して耐震性を高めて転倒を防止するドラム缶の連結具を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1のドラム缶の連結具は、連結ロッドの両端部に、ドラム缶の上縁凸部の外周又は内周に係止する把持部が、連結ロッドに対して水平方向へ回動自在に設けられており、前記把持部は上下位置で対峙した把持爪を有すること、対峙した把持爪は上下方向に離接自在に構成されていること、前記対峙した把持爪は基部に対峙方向へガイド面を備え、前記ガイド面は互いに重合状態で上下方向へ摺動可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2のドラム缶の連結具は、請求項1に記載の発明において、連結ロッドに昇降可能に設けられた垂直軸の制止部と連結ロッドとの間に、把持爪が対峙した状態で緩挿されており、前記垂直軸の昇降によって対峙した把持爪が上下方向に離接自在になることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3のドラム缶の連結具は、請求項2に記載の発明において、垂直軸が螺軸であり、連結ロッドに設けた螺子孔に螺合してなることを特徴とするものであり、請求項4のドラム缶の連結具は、請求項3に記載の発明において、垂直軸がボルトであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5のドラム缶の連結具は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、対峙した把持爪の基部に備えたガイド面が傾斜面で、互いに重合状態に構成されており、上下方向への摺動によって対峙した把持爪が水平方向へ離接自在になることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6のドラム缶の連結具は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、上部把持爪の先部は下方への曲部を成していると共に、ドラム缶の上縁凸部の内周に突合する下端面は外側への湾曲面となっていること、ドラム缶の上縁凸部の外周に突合する下部把持爪の先端面は、連結ロッドから突出していると共に、内側への湾曲面となっていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1は、把持部の把持爪によってドラム缶の上縁凸部を把持するものであるから、確実に把持することができ、この把持部を両端に有する連結ロッドによりドラム缶同士を連結し、又は他方を係止物に係止すれば、連係距離が広狭せず、安定した連結状態を維持できる効果を有する。
又、両方の把持部を1個のドラム缶に把持すれば、連結ロッドが連係用のロープやベルトの結着部分と利用できる効果も発揮する。
【0013】
そして、把持部は連結ロッドに対して水平方向に回動自在であるから、連結ロッドの長さが一定であっても、把持部を回動して把持位置を決定して把持間隔を調整することができる効果を有する。
【0014】
さらに、対峙した把持爪は基部に対峙方向へガイド面を備え、互いに重合状態で上下方向へ摺動可能に構成されているため、上下の把持爪は連結ロッドに対して水平方向への回動に連動すると共に、上下方向への離接にも対峙した位置関係を維持し、上下の把持爪が対向して挟持して確実に把持できる効果を発揮するものである。
【0015】
請求項2の発明は、請求項1の効果に加え、連結ロッドに昇降可能に設けられた垂直軸の制止部と連結ロッドとの間に、把持爪が対峙した状態で嵌挿されているため、把持部は連結ロッドに対して水平方向に回動自在となる。
また、垂直軸の制止部と連結ロッドとの間隔が垂直軸の昇降によって広狭するため、制止部と連結ロッドとの間に介在する対峙した把持爪が上下方向に離接自在となる作用効果を発揮する。
【0016】
請求項3の発明は、請求項2の効果に加え、垂直軸が螺軸であり、連結ロッドに設けた螺子孔に螺合してなるため、螺軸を回転させることで容易に垂直軸の制止部と連結ロッドとの間隔を広狭できる効果を有し、請求項4の発明は、請求項3の効果に加え、垂直軸がボルトであるため螺軸の回転を極めて容易に行える効果を有し、ボルトの頭部が制止部とすることができる効果も有する。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかの効果に加え、対峙した把持爪の基部に備えたガイド面が傾斜面で、互いに重合状態に構成されており、上下方向への摺動によって対峙した把持爪が水平方向へも離接自在になるため、対峙した把持爪の上下間隔が広狭するのと連動して、水平方向へも離接し、ドラム缶の上縁凸部の根元に角度が付いた方向で挟持することになり、より確実な把持となる効果を発揮する。
【0018】
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれかの効果に加え、上部把持爪の先部は下方への曲部を成していると共に、ドラム缶の上縁凸部の内周に突合する下端面は外側への湾曲面となっていること、ドラム缶の上縁凸部の外周に突合する下部把持爪の先端面は、連結ロッドから突出していると共に、内側への湾曲面となっているため、ドラム缶の上縁凸部の内周及び外周に沿って確実に突合する作用効果を発揮し、また、緩挿する螺軸の回転による共回りの回避と、当接する連結ロッドの共回りをも防止する効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の連結具の一実施の形態を示す斜視図である。
【
図2】本発明の連結具の使用の状態を示す断面図である。
【
図3】本発明の連結具の使用の状態を示す断面図である。
【
図4】本発明の連結具の上部把持爪及び下部把持爪を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明のドラム缶の連結具の一実施の形態を示す斜視図であり、
図2及び
図3は連結具の使用の状態を示す断面図、
図4は上部把持爪及び下部把持爪を示す斜視図である。
【0021】
連結具1はドラム缶10の上縁凸部11に係止する把持部2,2と、この把持部2,2を両端に載置する平板状の連結ロッド3より成り、把持部2,2は上下位置で離接自在に対峙した把持爪4,5で形成している。
把持部2は、連結ロッド3に対して水平方向へ回動自在に設けられており、前記把持部2は上下位置で対峙した把持爪4,5を有すること、対峙した把持爪4,5は上下方向に離接自在に構成されている。
把持爪4,5は、平板状の連結ロッド3と略同等の幅を有する。
【0022】
連結ロッド3には垂直軸6が昇降可能に設けられ、上下の把持爪4,5の挿通孔41,51に垂直軸6が緩挿している。
上下の把持爪4,5は、緩挿する垂直軸6の制止部7と連結ロッド3との間に対峙した状態で配置されている。
垂直軸6は螺軸であり、連結ロッド3に設けた螺子孔31に螺合してなるもので、図面では垂直軸6にボルトを利用し、ボルトの頭部を制止部7としてある。
【0023】
上部把持爪4は把持先端が下方に屈曲42してドラム缶10の上縁凸部11を形成するバンドに引っ掛り易くしてあり、さらに、屈曲42した先端は、ドラム缶10の上縁凸部11の内周11Aに突合するもので、その下端面は外側への湾曲面43と成っている。
一方、下部把持爪5は、ドラム缶10の上縁凸部11の外周11Bに突合するものであり、下部把持爪5の先端は、水平方向に回動しても載置する連結ロッド3から突出していると共に、その先端面は内側への湾曲面52と成っている。
【0024】
そして、対峙した把持爪4,5の基部は、対峙側の下方又は上方へガイド面44,53が折曲して形成されている。
ガイド面44,53は、互いに重合状態で上下方向へ摺動可能に構成され、上下の把持爪4,5は連結ロッド3に対して水平方向への回動に一体と成って連動すると共に、垂直軸6の昇降による上下方向への離接にも対峙した位置関係を維持し、上下の把持爪4,5が対向して挟持して確実に把持できる作用を奏する。
【0025】
図面では、ガイド面44,53は傾斜面に形成され、当該ガイド面44,53は互いに重合状態となる鈍角と鋭角を成している。
したがって、垂直軸6の昇降によって対峙した把持爪4,5の上下間隔が広狭するのに伴って、傾斜したガイド面44,53を摺動する把持爪4,5は水平方向へも離接自在に連動し、ドラム缶10の上縁凸部11の根元に角度が付いた方向で挟持する作用を奏する。
図面では上方の把持爪4の挿通孔41を長孔として水平方向への移動を支障なく行えるようにしてある。
【0026】
そこで、ドラム缶10の上縁凸部11を把持爪4,5の間に挟む格好で配置して、前記垂直軸6であるボルトを回転させることによって、ボルトが連結ロッド3に設けた螺子孔31に螺合して降下すると、ボルト頭部の制止部7と連結ロッド3との間に介在する把持爪4,5は、上下方向から押されて互いに上下間隔が近寄ると同時に、傾斜面部44,53が重合状態で摺動して水平方向の間隔も把持側へ互いに近寄る。
【0027】
したがって、対峙した把持爪4,5は上下方向及び水平方向に近接して、ドラム缶10の上縁凸部11の根元に角度が付いた方向で挟圧して挟持することになって確実に把持することができるものである。
また、上部把持爪4の下端面は外側への湾曲面43となっていること、下部把持爪5の先端面は連結ロッド3から突出していると共に、内側への湾曲面52となっているため、ドラム缶10の上縁凸部11の内周11A及び外周11Bに沿って確実に突合する作用を奏し、また、緩挿する螺軸の回転による共回りの回避と、当接する連結ロッド3の共回りをも防止する。
【0028】
連結ロッド3の長さは一定であるけれど、その長さに合わせて連係するドラム缶10,10の適宜場所を定め、把持部2を水平方向に回動させ、微調節をして位置決定すればよく、総ての連結具1とドラム缶10との係止位置関係を一致させる必要も無い。
隣接するドラム缶10同士が連結具1で連係されていることで、全体に一体性が生じて耐震性が向上するものとなる。
【0029】
以上、本発明を図面に表わした実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、さらに、連結ロッド3にターンバックル等を介在させて把持部2,2間の長さ調節をするようにしても良く、発明の思想を逸脱することなく、本発明の特徴を有し同等の作用効果を発揮する連結具にも適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 連結具
2 把持部
3 連結ロッド
4 上部把持爪
5 下部把持爪
6 垂直軸
7 制止部
10 ドラム缶
11 上縁凸部
11A 内周
11B 外周
31 螺子孔
41,51 挿通孔
42 屈曲
43 外側への湾曲面
44,53 傾斜面部
52 内側への湾曲面