(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の溶銑鍋装置を結ぶ移動経路と、攪拌装置を支持しかつ前記移動経路に沿って移動可能な移動台車と、前記移動台車と前記移動経路との間に設置された複数のストッパ機構と、を有し、
前記ストッパ機構は、前記移動経路に固定された固定側部材と、前記移動台車に設置された移動側部材と、前記移動側部材を前記固定側部材に当接させる当接機構と、を有し、
複数の前記ストッパ機構のうち少なくとも2組の一対となる前記ストッパ機構が交差方向に配置され、
それぞれの一対となる前記ストッパ機構は、各々の前記移動側部材を前記固定側部材に当接させることによる前記移動台車の水平面内の移動を規制する方向が互いに逆向きに配置されていることを特徴とする溶銑脱硫装置。
複数の溶銑鍋装置を結ぶ移動経路と、攪拌装置を支持しかつ前記移動経路に沿って移動可能な移動台車と、前記移動台車と前記移動経路との間に設置された複数のストッパ機構と、を有し、
前記ストッパ機構は、前記移動経路に固定された固定側部材と、前記移動台車に設置された移動側部材と、前記移動側部材を前記固定側部材に当接させる当接機構と、を有し、
複数の前記ストッパ機構のうち少なくとも2組の一対となる前記ストッパ機構が交差方向に配置され、
それぞれの一対となる前記ストッパ機構は、各々の前記移動側部材を前記固定側部材に当接させることによる前記移動台車の水平面内の移動を規制する方向が互いに逆向きに配置された溶銑脱硫装置の移動台車固定方法であって、
前記移動台車を前記移動経路の前記溶銑鍋装置に対応した位置まで移動させ、
少なくとも2組の一対となる前記ストッパ機構のうち、
第1の一対の前記ストッパ機構において、前記第1の一対の前記ストッパ機構のうち、一方の前記ストッパ機構の前記移動側部材を、前記一方の前記ストッパ機構の前記固定側部材に当接させる位置決め動作と、前記第1の一対の前記ストッパ機構のうちの前記一方の前記ストッパ機構の位置決め動作の後、前記第1の一対の前記ストッパ機構のうち、他方の前記ストッパ機構の前記移動側部材を、前記他方の前記ストッパ機構の前記固定側部材に当接させる固定動作と、を行うとともに、
第2の一対の前記ストッパ機構において、前記第2の一対の前記ストッパ機構のうち、一方の前記ストッパ機構の前記移動側部材を、前記一方の前記ストッパ機構の前記固定側部材に当接させる位置決め動作と、前記第2の一対の前記ストッパ機構のうち前記一方のストッパ機構の位置決め動作の後、前記第2の一対の前記ストッパ機構のうち、他方の前記ストッパ機構の前記移動側部材を、前記他方の前記ストッパ機構の前記固定側部材に当接させる固定動作と、を行うこと、を特徴とする溶銑脱硫装置の移動台車固定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した溶銑脱硫装置においては、攪拌に伴う共振が問題となる。すなわち、大重量の溶銑を攪拌器で駆動する際に、垂直な回転軸を中心とした水平方向の振動が生じる。この振動は、装置の固有振動数近くで大きくなり、装置に影響を及ぼす可能性がある。
とくに、前述した特許文献2の溶銑脱硫装置では、攪拌装置が台車で水平方向に移動可能であり、台車には移動のための機械的な遊びが必要であるため、攪拌時に水平方向の振動が生じ易い。
これに対し、特許文献2では、攪拌時の振動を抑制するために、台車の両側に複数の固定装置を設置し、台車をその移動経路に対して固定している。
しかし、特許文献2で用いられる固定装置は、例えば垂直方向に凹凸嵌合することで水平方向の位置規制を行うストッパなどであり、嵌合状態においても僅かな遊びが残る。このため、攪拌時の振動に対して十分な抑止効果が得られていなかった。
【0006】
本発明の目的は、攪拌装置の移動台車を確実に固定できる溶銑脱硫装置およびその移動台車固定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の溶銑脱硫装置は、複数の溶銑鍋装置を結ぶ移動経路と、攪拌装置を支持しかつ前記移動経路に沿って移動可能な移動台車と、前記移動台車と前記移動経路との間に設置された複数のストッパ機構と、を有し、前記ストッパ機構は、前記移動経路に固定された固定側部材と、前記移動台車に設置された移動側部材と、前記移動側部材を前記固定側部材に当接させる当接機構と、を有し、複数の前記ストッパ機構のうち少なくとも
2組の一対となる前記ストッパ機構が交差方向に配置され、それぞれの一対となる前記ストッパ機構は、各々の前記移動側部材
を前記固定側部材に
当接させることによる前記移動台車の水平面内の移動を規制する方向が互いに逆向きに配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、攪拌装置が移動台車によって移動経路に沿って移動され、複数の溶銑鍋装置のいずれかに対して配置された状態で、その溶銑鍋の攪拌を行うことができる。
攪拌を行う際には、ストッパ機構の当接機構により移動側部材を固定側部材に当接させ、移動台車を移動経路に対して固定する。
複数のストッパ機構のうち少なくとも一対は、移動側部材の固定側部材に対する当接方向の水平成分が互いに逆向きとされている。
このため、一対のストッパ機構のうち、一方のストッパ機構の移動側部材を固定側部材に当接させた際に、各々の間に遊びが残っていたとしても、他方のストッパ機構の移動側部材を固定側部材に当接させることで、残っていた遊びを解消させることができる。
従って、本発明によれば、移動台車と移動経路との間の遊びを解消し、攪拌装置の移動台車を確実に固定することができ、攪拌時の振動を確実に抑制することができる。
【0009】
本発明において、移動経路としては、基盤に敷設されたレールなどを用いることができる。台車としては、レールに転動する車輪を有するものが利用できる。
ストッパ機構の固定側部材は、移動側部材が当接可能な部材、例えば板材などを用いることができる。固定側部材は、移動経路の基盤などに直接固定してもよく、ブラケットなどを介して固定してもよい。
ストッパ機構の移動側部材は、固定側部材に当接可能な部材、例えば円筒形状や球面状など当接方向が多少ずれても当接できる形状であることが望ましい。移動側部材は、移動台車のフレームに直接固定してもよく、ブラケットなどを介して固定してもよい。
移動側部材と固定側部材とは、攪拌時の振動を抑制するために、水平方向成分を含む状態で当接する状態とされる。
【0010】
ストッパ機構の当接機構としては、移動側部材または固定側部材の一方を、互いに対向する状態から当接方向に沿って移動させることで、移動側部材を固定側部材に対して直接的に当接させる構成が利用できる。また、移動側部材または固定側部材とは別の圧入部材を用い、この圧入部材を当接方向とは交差する方向へ駆動し、移動側部材と固定側部材との間隔に圧入させることで、移動側部材を固定側部材に対して間接的に当接させる構成としてもよい。
移動側部材または固定側部材の移動機構、または、圧入部材を移動させる駆動機構としては、例えば油圧シリンダなどが利用できるほか、モータと歯車機構により往復駆動を行うものが利用できる。
【0011】
本発明の溶銑脱硫装置において、逆向きに配置された一対の前記ストッパ機構は、各々の前記固定側部材が互いに向かい合わせに配置されていることが好ましい。
本発明では、一対のストッパ機構の各々の固定側部材の間に、移動台車およびこれに設置された一対の移動側部材が配置される。その結果、移動台車は、2つの移動側部材を一対の固定側部材に挟まれた状態とされ、確実に固定することができる。
【0012】
本発明の溶銑脱硫装置において、逆向きに配置された一対の前記ストッパ機構は、各々の前記固定側部材が互いに背中合わせに配置されていることが好ましい。
本発明では、一対のストッパ機構の各々の固定側部材を、移動台車に設置された一対の移動側部材によって挟みつけることができ、確実に固定することができる。
【0013】
本発明の溶銑脱硫装置において、逆向きに配置された一対の前記ストッパ機構は、少なくとも2組が交差方向に設置されていることが好ましい。
本発明では、一対のストッパ機構の2組が交差方向に設置されることで、移動経路に対する移動台車の水平面内の位置を確定し、攪拌装置の垂直な回転軸を中心に生じる水平方向の振動を全て抑制することができる。
【0014】
本発明において、交差方向に設置される一対のストッパ機構の2組としては、一対のストッパ機構の一方が移動台車の移動方向で、他方が移動台車の幅方向とすることができる。また、一対のストッパ機構の2組を、それぞれ移動台車の移動方向に対して斜めに配置してもよい。例えば、移動台車の平面形状が矩形であれば、各々の対角線方向に2組を配置することができる。
【0015】
本発明の溶銑脱硫装置において、前記固定側部材および前記移動側部材の互いに当接する部分の少なくとも一方が揺動可能に支持されていることが好ましい。
本発明では、移動側部材が固定側部材に当接する際に、互いに所期の接触方向に対していずれかが傾いている場合でも、移動側部材または固定側部材が揺動することで、適切な当接状態を得ることができる。
移動側部材または固定側部材を揺動させる構成としては、ピンジョイントやボールジョイントなどの回動自在な支持構造や、V溝などの溝条嵌合による揺動構造などが適宜利用できる。
【0016】
本発明の溶銑脱硫装置において、前記当接機構は、前記移動側部材とともに前記移動台車に設置されていることが好ましい。
本発明では、当接機構および移動側部材は、移動台車に必要な数だけ設置される。一方、固定側部材は、移動台車が停止すべき位置ごとに所定数ずつ設置される。当接機構を固定側部材とともに移動経路側に設置する場合、当接機構も停止位置毎に所定数ずつ設置する必要があるが、本発明では、移動台車に所定数だけ設置すればよく、全体としての数を減らすことができ、構造を簡素化することができる。
【0017】
本発明の溶銑脱硫装置において、前記当接機構は、前記固定側部材と前記移動側部材との間に圧入可能な圧入部材と、前記移動台車に設置されて前記圧入部材を前記移動台車の移動方向と交差する圧入方向へ駆動する駆動機構とを有し、前記移動側部材は、前記圧入方向に平行かつ前記移動台車の移動方向と交差する表面を有し、前記固定側部材は、表面が前記圧入方向に対して傾斜しかつ前記移動台車の移動方向と交差する表面を有することが好ましい。
【0018】
本発明では、当接機構において、駆動機構により圧入部材を移動させることで、圧入部材が固定側部材の傾斜した表面と移動側部材との間に圧入され、移動側部材が圧入部材を介して固定側部材に当接される。
つまり、駆動機構で圧入部材を移動させるだけで、移動側部材と固定側部材とを当接させることができるため、固定側部材および移動側部材は固定的に設置すればよく、強度を確保しつつ、構造を簡素化できる。
【0019】
なお、本発明の溶銑脱硫装置において、当接機構は移動台車側ではなく、移動経路側に設置してもよい。
このような場合、当接機構は、固定側部材と移動側部材との間に圧入可能な圧入部材と、移動経路に設置されて圧入部材を移動台車の移動方向と交差する圧入方向へ駆動する駆動機構とを有し、固定側部材は、圧入方向に平行かつ移動台車の移動方向と交差する表面を有し、移動側部材は、表面が圧入方向に対して傾斜しかつ移動台車の移動方向と交差する表面を有する構成とすればよい。
【0020】
本発明の溶銑脱硫装置において、前記駆動機構は、前記圧入部材の移動限が、前記圧入部材が前記移動側部材と前記固定側部材との間に圧入される位置よりも十分長く設定されていることが好ましい。
本発明では、駆動機構のストロークに十分余裕が得られるため、圧入部材を固定側部材と移動側部材との間に確実に圧入することができる。つまり、圧入部材が固定側部材と移動側部材との間に圧入される前に、駆動機構が移動限に達すると、圧入部材の十分な圧入ができなくなる可能性があるが、駆動機構の移動限が十分に長く設定されていることで、確実な圧入を行うことができる。
【0021】
本発明の溶銑脱硫装置において、前記圧入部材は円筒形状または周面の一部に平坦部を有する円筒形状であることが好ましい。
本発明では、圧入部材が円筒形状であることで、当接方向が周方向にずれても確実な当接が得られる。一方、周面の一部に平坦部を有する円筒形状を用い、平坦部を移動側部材または固定側部材の表面に沿わせることで、圧入部材の不要な回転などを防止できる。
【0022】
本発明の溶銑脱硫装置の移動台車固定方法は、複数の溶銑鍋装置を結ぶ移動経路と、攪拌装置を支持しかつ前記移動経路に沿って移動可能な移動台車と、前記移動台車と前記移動経路との間に設置された複数のストッパ機構と、を有し、前記ストッパ機構は、前記移動経路に固定された固定側部材と、前記移動台車に設置された移動側部材と、前記移動側部材を前記固定側部材に当接させる当接機構と、を有し、複数の前記ストッパ機構のうち少なくとも
2組の一対となる前記ストッパ機構が交差方向に配置され、それぞれの一対となる前記ストッパ機構は、各々の前記移動側部材
を前記固定側部材に
当接させることによる前記移動台車の水平面内の移動を規制する方向が互いに逆向きに配置された溶銑脱硫装置の移動台車固定方法であって、前記移動台車を前記移動経路の前記溶銑鍋装置に対応した位置まで移動させ、
少なくとも2組の一対となる前記ストッパ機構のうち、第1の一対の前記ストッパ機構において、前記第1の一対の前記ストッパ機構のうち、一方の前記ストッパ機構の前記移動側部材を、前記一方の前記ストッパ機構の前記固定側部材に当接させる位置決め動作
と、
前記第1の一対の前記ストッパ機構のうちの前記一方の前記ストッパ機構の位置決め動作の後、
前記第1の一対の前記ストッパ機構のうち、他方の前記ストッパ機構の前記移動側部材を、前記
他方の前記ストッパ機構の前記固定側部材に当接させる固定動作
と、を行う
とともに、第2の一対の前記ストッパ機構において、前記第2の一対の前記ストッパ機構のうち、一方の前記ストッパ機構の前記移動側部材を、前記一方の前記ストッパ機構の前記固定側部材に当接させる位置決め動作と、前記第2の一対の前記ストッパ機構のうち前記一方のストッパ機構の位置決め動作の後、前記第2の一対の前記ストッパ機構のうち、他方の前記ストッパ機構の前記移動側部材を、前記他方の前記ストッパ機構の前記固定側部材に当接させる固定動作と、を行うこと、を特徴とする。
【0023】
本発明では、攪拌装置が移動台車によって移動経路に沿って移動され、複数の溶銑鍋装置のいずれかに対して配置された状態で、その溶銑鍋の攪拌を行うことができる。
攪拌を行う際には、ストッパ機構の当接機構により移動側部材を固定側部材に当接させ、移動台車を移動経路に対して固定することができる。
とくに、一対のストッパ機構のうち、一方のストッパ機構の移動側部材を固定側部材に当接させることで、移動経路に対する移動台車の位置決めを行うことができる。そして、位置決め動作の際に、移動側部材および固定側部材の間に遊びが残っていたとしても、他方のストッパ機構の移動側部材を固定側部材に当接させる固定動作により、残っていた遊びを解消させ、この状態で移動経路に対する移動台車の固定を行うことができる。
従って、本発明によれば、移動台車と移動経路との間の遊びを解消し、攪拌装置の移動台車を確実に固定することができ、攪拌時の振動を確実に抑制することができる。
【0024】
本発明の溶銑脱硫装置の移動台車固定方法において、
2組の一対となる前記ストッパ機構は、前記移動台車と前記移動経路との間
に、前記移動台車の移動方向に沿っ
て設置され、先ず、一対の前記ストッパ機構の2組で同時に前記位置決め動作を行い、次に、一対の前記ストッパ機構の2組で同時に前記固定動作を行うことが好ましい。
【0025】
本発明では、一対の前記ストッパ機構の2組を、例えば移動台車の両側に配置しておくことで、移動経路を移動する移動台車に、移動経路に対する傾き(垂直方向を中心にした回転)があっても、2組の位置決め動作により、移動経路に対して正しい姿勢で移動台車を位置決めすることができる。そして、続く固定動作により、正しい姿勢で移動台車を移動経路に対して固定することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、攪拌装置の移動台車を確実に固定できる溶銑脱硫装置およびその移動台車固定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
図1から
図13の各図には、本発明の第1実施形態が示されている。
図1および
図2において、本実施形態の溶銑脱硫装置1は、2台の溶銑鍋装置10に対し、1台の攪拌装置20を用いて攪拌を行うものである。
【0029】
溶銑鍋装置10は、溶銑を貯留する溶銑鍋11を有し、溶銑鍋11は溶銑鍋台車12に載置されている。溶銑鍋台車12は、基礎13に敷設されたレール14に沿って移動可能に支持されている。
溶銑鍋装置10は、溶銑鍋台車12がレール14に沿って移動することで、溶銑鍋11が攪拌位置PS(
図2の上側)と給排位置PF(
図2の下側)との間を往復することができる。
【0030】
攪拌位置PSにあるとき、溶銑鍋装置10に貯留された溶銑が、後述する攪拌装置20により攪拌される。
給排位置PFにあるとき、溶銑鍋装置10に溶銑が積載された溶銑鍋11が供給され、あるいは溶銑鍋装置10から溶銑が積載された溶銑鍋11が取り出される。給排位置PFの近傍には、溶銑の上面に滞留する残滓を除去するために、図示しない排滓装置が設置される。
溶銑鍋装置10は、2台(溶銑鍋装置10Aおよび溶銑鍋装置10B)が、各々の往復移動方向が並列に設置される。
【0031】
攪拌装置20は、溶銑鍋11に導入可能な攪拌器21を有し、攪拌器21を回転させる駆動装置22と、攪拌器21および駆動装置22を昇降駆動する昇降装置23とを備えている。攪拌器21ないし昇降装置23は、移動台車24に支持されている。
【0032】
移動台車24は、車輪25で転動することでレール26に沿って移動可能である。
レール26は、基礎13に設置された支柱27により、溶銑鍋装置10Aおよび溶銑鍋装置10Bを跨ぐように支持され(
図2参照)、溶銑鍋装置10が往復移動する方向(レール14の連続方向)と交差する方向に延びている(
図1参照)。
前述したレール26および支柱27により、移動台車24が移動可能な移動経路28が構成されている。
【0033】
移動経路28は、複数の溶銑鍋装置10の攪拌位置PA,PB、および保守位置PCを直線的に結んでいる。
攪拌位置PAは、溶銑鍋装置10Aの攪拌位置PSの直上とされ、攪拌装置20は攪拌位置PAにおいて、溶銑鍋装置10Aの溶銑鍋11に攪拌器21を導入し、これを攪拌することができる。
攪拌位置PBは、溶銑鍋装置10Bの攪拌位置PSの直上とされ、攪拌装置20は攪拌位置PBにおいて、溶銑鍋装置10Bの溶銑鍋11に攪拌器21を導入し、これを攪拌することができる。
保守位置PCは、攪拌位置PA,PBを結ぶ直線の延長上にあり、レール26の下方は空き空間とされ、攪拌装置20を保守位置PCに配置することで、攪拌器21の保守点検などを行うことができる。
【0034】
図3から
図6の各図には、移動台車24の細部が示されている。
図3および
図4において、移動台車24は、鋼材で組まれた平面矩形のフレーム240を有し、その中央には攪拌装置20(
図1および
図2参照)を載置するステージ241を備えている。フレーム240の四隅には、台車枠242を介して前述した車輪25が支持されている。
【0035】
フレーム240の側面には、片側3個ずつ、両側で計6個のストッパ機構40が設置されている。このうち、
図3および
図4の左方に配置されたストッパ機構40A、同じく右方に配置されたストッパ機構40B、これらの中間に配置されたストッパ機構40Cは、それぞれ同様の構成を有するが、各々の向きが互いに異なる。
図5において、ストッパ機構40Aおよびストッパ機構40Bは、後述する移動側部材41ないし固定側部材44が、移動台車24の移動方向(
図3のR方向)に沿って配列されている。
図6において、ストッパ機構40Cは、後述する移動側部材41ないし固定側部材44が、移動台車24の幅方向(
図3のW方向)に沿って配列されている。
【0036】
図7には、本実施形態のストッパ機構40が示されている。
ストッパ機構40は、移動台車24に設置された移動側部材41および駆動シリンダ42と、駆動シリンダ42に支持された圧入部材43と、移動経路28に固定された固定側部材44と、を有する。
【0037】
移動側部材41は、平板状の鋼材であり、ブラケット411を介して移動台車24のフレーム240に固定されている。
移動側部材41の表面は、ストッパ機構40Cでは、垂直方向に沿いかつ移動台車24の移動方向と交差する方向に配置されている。また、ストッパ機構40A,40Bでは、垂直方向に沿いかつ移動経路28のレール26の連続方向(つまり移動台車24の移動方向)に沿って配置されている。ストッパ機構40A,40Bおよびストッパ機構40Cの配置の相違は、フレーム240に対するブラケット411の向きを変更することで、任意に設定することができる。
【0038】
駆動シリンダ42は、油圧シリンダなどの往復駆動機構で構成され、進退方向が垂直方向となる状態で、移動台車24のフレーム240に固定されている。
圧入部材43は、円筒形状の鋼材であり、駆動シリンダ42に支持され、その進退により昇降可能である。圧入部材43の周面は、移動側部材41の表面に接触するか、もしくは僅かな間隔で対向して配置されている。
駆動シリンダ42は、圧入部材43の移動限が、後述する圧入部材43が移動側部材41と固定側部材44との間に圧入される位置(
図7の実線表示)よりも十分(下方へ)長く設定され、これにより圧入部材43を移動側部材41と固定側部材44との間に十分強い力で圧入することができる。
【0039】
固定側部材44は、移動経路28のブラケット262に支持されたブロック状の鋼材である。ブラケット262は、レール26の支持構造などに固定されている。
固定側部材44には、平板状の鋼材で形成された当接板441が設置されている。
当接板441は、前述した移動側部材41と対向し、かつ上向きに傾斜して配置されている。前述した圧入部材43は、駆動シリンダ42で下降された際に、当接板441に当接し、さらに下降することで移動側部材41と当接板441とで形成されるV字状の隙間に圧入される。その結果、圧入部材43を介して、移動側部材41と固定側部材44とが間接的に当接した状態(
図7の実線表示)とされる。
【0040】
固定側部材44の上端位置は、移動側部材41の下端位置よりも十分下方に配置されている。このため、圧入部材43を引き上げた状態(
図7の鎖線表示)では、移動台車24が移動経路28に沿って移動した際に、固定側部材44の上端と移動側部材41の下端とが干渉することはない。
【0041】
固定側部材44は、ブラケット262に支持される部分に、垂直な回転軸まわりに回動可能な回動機構442を有する。移動側部材41の表面と、固定側部材44の当接板441の表面の水平方向成分とが平行でない場合、中間に圧入される圧入部材43の周面との間に片当たりなどが生じる可能性がある。しかし、このような場合には、固定側部材44が回動機構442により回動することで、移動側部材41の表面および圧入部材43の周面に追従して当接板441を揺動させ、片当たりを自動的に解消することができる。
【0042】
なお、固定側部材44としては、
図7のように、回動機構442により当接板441を揺動するものに限らず、
図8のように、断面矩形の溝条と断面半円筒状の突条との組み合わせや、V溝とV形突状との嵌合など、揺動可能な溝条嵌合構造443などを介して当接板441を固定側部材44に揺動自在に支持する構成としてもよい。
【0043】
本実施形態のストッパ機構40においては、駆動シリンダ42が本発明の駆動機構であり、この駆動シリンダ42、圧入部材43、V字状に配置された移動側部材41および固定側部材44により、本発明の当接機構が構成されている。
【0044】
なお、本実施形態では、
図7のように圧入部材43を円筒形状としたが、圧入部材としては次のような変形が可能である。
図8のように、円筒形状の一部に平坦部431を有する圧入部材43Aを用いてもよい。この場合、平坦部431を移動側部材41の表面に沿わせることにより、圧入部材43Aの不要な回転などを防止できる。
図9のように、駆動シリンダ42の先端に円筒面を有するブロック43Bを支持し、その円筒面を当接板441に当接させてもよい。
図10のように、駆動シリンダ42の先端に傾斜面を有するブロック43Cを支持し、その傾斜面を当接板441に当接させてもよい。
【0045】
さらに、本実施形態では、固定側部材44において、当接板441を移動経路28に対して揺動可能としたが、移動側部材41において、その当接面が移動台車24に対して揺動可能な構成としてもよく、このような構成でも移動側部材41の固定側部材44に対する当接状態を安定させることができる。
【0046】
図3に戻って、本実施形態の移動台車24では、前述したストッパ機構40が、それぞれストッパ機構40A,40Bおよびストッパ機構40Cとして設置されている。
そして、移動台車24の両側一対のストッパ機構40A,40Bにより、移動台車24の移動方向(R方向)の位置規制が行われ、一対のストッパ機構40Cにより移動台車24の幅方向(W方向)の位置規制が行われる。
【0047】
図11には、両側一対のストッパ機構40A,40Bおよび一対のストッパ機構40Cによる移動台車24の位置規制動作が模式的に図示されている。
前述の通り、移動台車24は、車輪25でレール26を走行することで、移動経路28に沿って移動可能である。そして、ストッパ機構40A,40B,40Cが解除されている状態では、移動台車24に対する位置規制は行われない。
これに対し、ストッパ機構40A,40B,40Cが当接状態とされると、各々により移動台車24の位置規制が行われる。
【0048】
図11中左側に設置された図中上下に2つのストッパ機構40Aにおいては、圧入部材43が移動側部材41と固定側部材44との間に圧入されることで、移動側部材41と固定側部材44とが図中左向き(R+方向)に当接され、移動台車24のR+方向への移動が規制される。
図11中右側に設置された図中上下に2つのストッパ機構40Bにおいては、圧入部材43が移動側部材41と固定側部材44との間に圧入されることで、移動側部材41と固定側部材44とが図中右向き(R−方向)に当接され、移動台車24のR−方向への移動が規制される。
これら2組のストッパ機構40A,40BのR+方向の当接およびR−方向の当接により、移動台車24の移動経路28に対するR方向の位置が規制される。
そして、移動台車24の中間に設置された図中上下に一対のストッパ機構40Cにおいては、圧入部材43が移動側部材41と固定側部材44との間に圧入されることで、各々において移動側部材41と固定側部材44とが図中上向き(W+方向)および図中下向き(W−方向)に当接され、移動台車24の幅方向(W方向)の位置が規制される。
【0049】
本実施形態において、ストッパ機構40A,40B,40Cによる移動台車24の位置規制は、次のような手順で行われる。
先ず、ストッパ機構40A,40B,40Cが解除された状態で、移動台車24をR−方向へ移動させ、所定の位置に停止させる。この際の停止位置は、例えば
図12右側のストッパ機構40Cにおいて、移動側部材41と固定側部材44とが、互いの間に圧入部材43を圧入可能な間隔の位置とする。
【0050】
この状態で、ストッパ機構40Bの圧入部材43を下降させ、圧入部材43を介して移動側部材41と固定側部材44とを当接させる(
図12参照)。この際、圧入部材43の圧入は、駆動シリンダ42の進出限よりも手前の所定ストローク位置とされる。圧入部材43の圧入により、移動台車24がR+方向へ僅かに移動することがある。
【0051】
次に、ストッパ機構40Aの圧入部材43を下降させ、圧入部材43を介して移動側部材41と固定側部材44とを当接させる(
図13参照)。この圧入により、移動台車24がR+方向およびR−方向のいずれにも当接した状態となり、移動台車24の移動経路28に対するR方向の位置が規制される。
この際、圧入部材43の圧入は、駆動シリンダ42の進出限よりも手前の所定ストローク位置とされ、ストッパ機構40A,40Bのいずれにおいても、移動側部材41と固定側部材44とが確実に当接される。
続いて、ストッパ機構40Cの圧入部材43を下降させ、圧入部材43を介して移動側部材41と固定側部材44とを当接させる(
図11参照)。これにより、既にR方向の位置が規制されていた移動台車24がW方向にも位置規制され、移動台車24の移動経路28に対する位置が全方向に向けて規制される。
【0052】
以上説明した第1実施形態によれば、次のような効果が得られる。
本実施形態では、攪拌装置20が移動台車24によって移動経路28に沿って移動され、複数の溶銑鍋装置10A,10Bのいずれかに対して配置された状態で、その溶銑鍋11の攪拌を行うことができる。
攪拌を行う際には、ストッパ機構40A,40B,40Cの各々において、駆動シリンダ42により圧入部材43を下降させ、移動側部材41と固定側部材44との間に圧入させることで、移動側部材41と固定側部材44とを間接的に当接させ、移動台車24を移動経路28に対して固定することができる。
【0053】
複数のストッパ機構40A,40B,40Cのうち、両側2組のストッパ機構40A,40Bは、移動経路28に沿ったR方向において互いに一対とされ、移動側部材41の固定側部材44に対する当接方向の水平成分が互いに逆向き(R+方向とR−方向)とされている。また、ストッパ機構40Cにおいては、移動経路28の幅方向であるW方向に一対が設置され、移動側部材41の固定側部材44に対する当接方向の水平成分が互いに逆向き(W+方向とW−方向)とされている。
このため、一対のストッパ機構40A,40B,40Cのうち、一方の移動側部材41を圧入部材43を介して固定側部材44に当接させた際に、各々の間に遊びが残っていたとしても、他方の移動側部材41を固定側部材44に当接させることで、残っていた遊びを解消させることができる。
従って、本実施形態によれば、移動台車24と移動経路28との間の遊びを解消し、攪拌装置20の移動台車24を確実に固定することができ、攪拌時の振動を確実に抑制することができる。
【0054】
本実施形態では、移動台車24の両側に一対のストッパ機構40A,40Bが2組、それぞれR方向に逆向きに配置され、移動台車24の両側に一対のストッパ機構40CがW方向に逆向きに配置されている。
これらの各対においては、それぞれの固定側部材44が互いに向かい合わせに配置され、これらの各対の固定側部材44の間に、移動台車24およびこれに設置された一対の移動側部材41が配置される。
その結果、移動台車24は、それぞれ圧入部材43を圧入して互いに当接させることで、2つの移動側部材41を一対の固定側部材44に挟まれた状態とされ、移動経路28に対して確実に固定することができる。
【0055】
本実施形態では、一対のストッパ機構40A,40BがR方向に逆向きに配置され、一対のストッパ機構40CがW方向に逆向きに配置されている。このように、一対のストッパ機構40A,40Bおよび一対のストッパ機構40Cという、2組(2方向)のストッパ機構40の対が交差方向に設置されることで、移動経路28に対する移動台車24の水平面内の位置を確定し、攪拌装置20の垂直な回転軸を中心に生じる水平方向の振動を全て抑制することができる。
【0056】
本実施形態では、当接板441を含む固定側部材44を移動経路28に回動機構442を介して回動自在に支持し(
図7参照)、あるいは、当接板441を固定側部材44に溝条嵌合構造443を介して嵌め合わせて揺動可能に支持した(
図8参照)。このため、移動側部材41が固定側部材44に当接する際に、互いに所期の接触方向に対していずれかが傾いている場合でも、移動側部材41または固定側部材44が揺動することで、適切な当接状態を得ることができる。
【0057】
本実施形態では、移動側部材41を固定側部材44に当接させる当接機構としての駆動シリンダ42および圧入部材43を、移動台車24に設置した。つまり、固定側部材44は、移動経路28の移動台車24が停止すべき位置にそれぞれ設置する必要があるが、移動側部材41、駆動シリンダ42および圧入部材43は、移動台車24に最低限の数だけ設置するだけでよい。従って、駆動シリンダ42および圧入部材43については、溶銑脱硫装置1の全体としての設置数を減らすことができ、構造を簡素化することができる。
【0058】
本実施形態では、ストッパ機構40(40A,40B,40C)の当接機構として、固定側部材44と移動側部材41との間に圧入可能な圧入部材43と、移動台車24に設置されて圧入部材43を移動台車24の移動方向(R方向)と交差する圧入方向(鉛直方向下向き)へ駆動する駆動シリンダ42とを用い、移動側部材41は、圧入方向に平行かつ移動台車24の移動方向と交差する表面を有し、固定側部材44は、表面が圧入方向に対して傾斜しかつ移動台車24の移動方向と交差する表面をなす当接板441を有するものとした。
【0059】
このため、本実施形態では、駆動シリンダ42により圧入部材43を移動させることで、圧入部材43が、固定側部材44の傾斜した当接板441と、移動側部材41の当接板441に対向する表面との間に圧入され、移動側部材41が圧入部材43を介して固定側部材44に当接される。
つまり、駆動シリンダ42で圧入部材43を移動させるだけで、移動側部材41と固定側部材44とを当接させることができ、固定側部材44および移動側部材41は、それぞれ移動経路28および移動台車24に固定的に設置すればよく、強度を確保しつつ、構造を簡素化できる。
【0060】
本実施形態では、駆動シリンダ42は、圧入部材43の移動限を、圧入部材43が移動側部材41と固定側部材44との間に圧入される位置よりも十分長くした。
これにより、駆動シリンダ42のストロークに十分余裕が得られるため、圧入部材43を固定側部材44と移動側部材41との間に確実に圧入することができる。つまり、圧入部材43が固定側部材44と移動側部材41との間に圧入される前に、駆動シリンダ42が移動限に達すると、圧入部材43の十分な圧入ができなくなる可能性があるが、駆動シリンダ42の移動限が十分に長く設定されることで、確実な圧入を行うことができる。
【0061】
本実施形態では、圧入部材43は円筒形状または周面の一部に平坦部を有する円筒形状とすることで、当接方向が周方向にずれても確実な当接が得られる。一方、周面の一部に平坦部を有する円筒形状を用い、平坦部を移動側部材41または固定側部材44の表面に沿わせることで、圧入部材43の不要な回転などを防止できる。
【0062】
本実施形態では、移動台車24を移動経路28に対して固定する操作として、移動台車24を移動経路28の溶銑鍋装置10に対応した位置まで移動させ、先ず、一対をなすストッパ機構40A,40Bのうち、一方のストッパ機構40Bにおいて、圧入部材43を下降させて移動側部材41を固定側部材44に当接させて位置決め動作を行い、次に、他方のストッパ機構40Aにおいて、圧入部材43を下降させて移動側部材41を固定側部材44に当接させる固定動作を行うようにした。
【0063】
このような位置決め動作および固定動作を順次行う場合、先ず、一方のストッパ機構40Bにおいて移動側部材41を固定側部材44に当接させ、移動経路28に対する移動台車24の位置決めを行うことができる。そして、位置決め動作の際に、移動側部材41および固定側部材44の間に遊びが残っていたとしても、他方のストッパ機構40Aの移動側部材41を固定側部材44に当接させる固定動作により、残っていた遊びを解消させ、この状態で移動経路28に対する移動台車24の固定を行うことができる。
従って、本実施形態では、上述した位置決め動作および固定動作を順次行うことで、移動台車24と移動経路28との間の遊びを解消し、攪拌装置20を載置した移動台車24を確実に固定することができ、攪拌時の振動を確実に抑制することができる。
【0064】
とくに、本実施形態では、移動台車24と移動経路28との間には、一対のストッパ機構40A,40Bが2組、移動台車24の移動方向(R方向)に沿って、移動台車24の両側に設置されており、先ず、一対のストッパ機構40Bの2組で同時に位置決め動作を行い、次に、一対のストッパ機構40Aの2組で同時に固定動作を行うことができる。
このように、一対のストッパ機構40A,40Bの2組を、例えば移動台車24の両側に配置しておくことで、移動経路28を移動する移動台車24に、移動経路28に対する傾き(垂直方向を中心にした回転)があっても、2組の位置決め動作により、移動経路28に対して正しい姿勢で移動台車24を位置決めすることができる。そして、続く固定動作により、正しい姿勢で移動台車24を移動経路28に対して固定することができる。
【0065】
〔第2実施形態〕
図14には、本発明の第2実施形態が示されている。
図14において、本実施形態の溶銑脱硫装置2は、基本構成が前述した第1実施形態の溶銑脱硫装置1と同様である。このため、溶銑脱硫装置1と共通の構成については重複する説明を省略し、以下には相違する部分について説明する。
【0066】
第1実施形態の溶銑脱硫装置1においては、移動台車24の両側に一対のストッパ機構40A,40Bが2組、それぞれR方向に逆向きに配置されており、移動台車24の両側に一対のストッパ機構40CがW方向に逆向きに配置されていた。
そして、一対のストッパ機構40A,40Bの固定側部材44が互いに向かい合わせに配置され、これらの各対の固定側部材44の間に、移動台車24およびこれに設置された一対の移動側部材41が配置されていた。
これに対し、本実施形態では、一対のストッパ機構40A,40Bの固定側部材44および移動側部材41の配置が逆とされている。
【0067】
本実施形態では、一対のストッパ機構40A,40Bの固定側部材44が互いに背中合わせの状態で移動経路28に設置され、これらの固定側部材44を挟むように、一対のストッパ機構40A,40Bの移動側部材41が移動台車24に設置されている。
このような構成では、一対のストッパ機構40A,40Bの固定側部材44を、移動台車24に設置された一対の移動側部材41によって挟みつけることができ、確実に固定することができる。
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0068】
〔第3実施形態〕
図15には、本発明の第3実施形態が示されている。
図15において、本実施形態の溶銑脱硫装置3は、基本構成が前述した第1実施形態の溶銑脱硫装置1と同様である。このため、溶銑脱硫装置1と共通の構成については重複する説明を省略し、以下には相違する部分について説明する。
【0069】
第1実施形態の溶銑脱硫装置1においては、移動台車24の両側に一対のストッパ機構40A,40Bが2組、それぞれR方向に逆向きに配置されており、移動台車24の両側に一対のストッパ機構40CがW方向に逆向きに配置されていた。
これに対し、本実施形態では、移動台車24の両側に一対のストッパ機構40A,40Bが2組、それぞれR方向に逆向きに配置されているとともに、移動台車24の両側でW方向に逆向きに対向する一対のストッパ機構40C,40Dが2組配置されている。
さらに、R方向に対向する一対のストッパ機構40A,40Bにおいては、各々の移動側部材41が1個の部材で共有されている。
【0070】
このような第3実施形態によっても、ストッパ機構40A〜40Dが互いに交差するR方向およびW方向に設置され、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
さらに、W方向のストッパ機構40C,40Dが2組とされ、移動台車24の位置決め精度を向上することができる。
【0071】
〔第4実施形態〕
図16には、本発明の第4実施形態が示されている。
図16において、本実施形態の溶銑脱硫装置4は、基本構成が前述した第1実施形態の溶銑脱硫装置1と同様である。このため、溶銑脱硫装置1と共通の構成については重複する説明を省略し、以下には相違する部分について説明する。
【0072】
第1実施形態の溶銑脱硫装置1においては、2組の一対のストッパ機構40A,40BがR方向に設置され、一対のストッパ機構40CがW方向に設置され、各々が交差方向の位置決めを行っていた。
これに対し、本実施形態では、移動台車24の両側に一対のストッパ機構40E,40Fが配置されている。ストッパ機構40E,40Fはそれぞれ移動台車24の中心に向かう方向に沿って設置され、互いに交差方向に当接するように構成されている。
【0073】
図中左上のストッパ機構40Eは、移動側部材41が固定側部材44に当接する方向がR+方向とW+方向との合成方向とされる。
図中左下のストッパ機構40Eは、移動側部材41が固定側部材44に当接する方向がR+方向とW−方向との合成方向とされる。
図中右上のストッパ機構40Fは、移動側部材41が固定側部材44に当接する方向がR−方向とW+方向との合成方向とされる。
図中右下のストッパ機構40Fは、移動側部材41が固定側部材44に当接する方向がR−方向とW−方向との合成方向とされる。
【0074】
従って、図中左上のストッパ機構40Eと図中右下のストッパ機構40Fとが互いに当接方向が逆向きの一対となり、図中左下のストッパ機構40Eと図中右上のストッパ機構40Fとが互いに当接方向が逆向きの一対となり、各一対の当接方向は交差方向となっている。
このような第4実施形態によっても、ストッパ機構40E,40Fが互いに交差方向に逆向きに一対ずつ設置され、攪拌装置20の攪拌によるR方向およびW方向の力を全て受け止めることができ、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0075】
〔第5実施形態〕
図17および
図18には、本発明の第5実施形態が示されている。
図17において、本実施形態の溶銑脱硫装置5は、基本構成が前述した第1実施形態の溶銑脱硫装置1と同様である。このため、溶銑脱硫装置1と共通の構成については重複する説明を省略し、以下には相違する部分について説明する。
【0076】
第1実施形態の溶銑脱硫装置1においては、複数のストッパ機構40A,40B,40Cが縦方向に配置されていた。すなわち、移動台車24には駆動シリンダ42が縦方向に配置され、移動側部材41および固定側部材44への圧入部材43の圧入方向が鉛直方向下向きであった。
これに対し、本実施形態では、移動台車24の両側に一対、計4つのストッパ機構40G,40Hが水平に配置されている。
【0077】
図18にも示すように、ストッパ機構40Gは、移動台車24の側面に移動側部材41が設置されている。移動側部材41の表面は、鉛直方向および移動台車24の幅方向(W方向)に沿っており、移動台車24の移動方向(R方向)とは交差している。
固定側部材44は、図示しないブラケット等を介して移動経路28に固定されている。固定側部材44は、移動台車24が所定の停止位置にあるとき移動側部材41と向き合い、かつ移動台車24の側面からW方向へ離れるほど互いの間隔が狭くなるように配置されている。
【0078】
移動台車24の内部には、W方向へ進退自在な駆動シリンダ42が設置されている。駆動シリンダ42の先端は移動台車24の側面から外部へ延びており、先端には円筒形状の圧入部材43が支持されている。
圧入部材43は、駆動シリンダ42の進出により移動側部材41の表面に沿ってW方向へ移動し、固定側部材44との間隔に圧入される。
ストッパ機構40Hは、ストッパ機構40Gと同じ構成を有し、かつR方向の向きが反対向きとされている。
【0079】
図17に戻って、本実施形態においては、ストッパ機構40G,40Hにより移動台車24が移動経路28に対して位置決め固定される。
図中左上のストッパ機構40Gは、圧入部材43の圧入により移動側部材41が固定側部材44に対してR−方向とW+方向との合成方向に当接する。
図中左下のストッパ機構40Gは、圧入部材43の圧入により移動側部材41が固定側部材44に対してR−方向とW−方向との合成方向に当接する。
図中右上のストッパ機構40Hは、圧入部材43の圧入により移動側部材41が固定側部材44に対してR+方向とW+方向との合成方向に当接する。
図中右下のストッパ機構40Hは、圧入部材43の圧入により移動側部材41が固定側部材44に対してR+方向とW−方向との合成方向に当接する。
【0080】
従って、移動台車24の両側において、各一対のストッパ機構40G,40HがR−方向およびR+方向へ互いに逆向きに当接し、R方向の位置決め固定が行われる。
また、移動台車24の両側対向するストッパ機構40G,40Hが、それぞれW−方向およびW+方向へ互いに逆向きに当接し、W方向の位置決め固定が行われる。
【0081】
このような第5実施形態によっても、ストッパ機構40G,40Hの当接方向が互いに交差するR方向およびW方向となり、攪拌装置20の攪拌による水平方向の力を全て受け止めることができ、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0082】
〔第6実施形態〕
図19には、本発明の第6実施形態が示されている。
図19において、本実施形態の溶銑脱硫装置6は、基本構成が前述した第1実施形態の溶銑脱硫装置1と同様である。このため、溶銑脱硫装置1と共通の構成については重複する説明を省略し、以下には相違する部分について説明する。
【0083】
第1実施形態の溶銑脱硫装置1においては、複数のストッパ機構40A,40B,40Cが縦方向に配置されていた。すなわち、移動台車24には駆動シリンダ42が縦方向に配置され、移動側部材41および固定側部材44への圧入部材43の圧入方向が鉛直方向下向きであった。
これに対し、本実施形態では、移動台車24の4つのコーナー部に、計4つのストッパ機構40G,40Hが水平に配置されている。
本実施形態のストッパ機構40G,40Hは、前述した第5実施形態のストッパ機構40G,40Hと同様に、駆動シリンダ42が水平に配置されたものである。さらに、本実施形態では、駆動シリンダ42の進出方向が、移動台車24の4つのコーナー部からそれぞれ外向きとされている。
【0084】
従って、本実施形態においても、前述した第5実施形態と同様に、移動台車24の両側において、各一対のストッパ機構40G,40HがR−方向およびR+方向へ互いに逆向きに当接し、R方向の位置決め固定が行われる。
また、移動台車24の両側対向するストッパ機構40G,40Hが、それぞれW−方向およびW+方向へ互いに逆向きに当接し、W方向の位置決め固定が行われる。
【0085】
従って、第6実施形態によっても、ストッパ機構40G,40Hの当接方向が互いに交差するR方向およびW方向となり、攪拌装置20の攪拌による水平方向の力を全て受け止めることができ、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0086】
〔変形例〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前述した第1実施形態では、当接機構である駆動シリンダ42により圧入部材43を移動台車24側に設置したが、これらは移動経路28側に設置してもよい。
【0087】
図20において、駆動シリンダ42により圧入部材43を移動経路28側に設置する場合、当接機構としては、固定側部材44と移動側部材41との間に圧入可能な圧入部材43と、移動経路28に設置されて圧入部材43を移動台車24の移動方向(R方向)と交差する圧入方向(鉛直方向上向き)へ駆動する駆動シリンダ42とを有し、固定側部材44は、圧入方向に平行かつ移動台車24の移動方向と交差する表面を有し、移動側部材41は、表面が圧入方向に対して傾斜しかつ移動台車24の移動方向と交差する表面を有する構成とすればよい。
【0088】
前記各実施形態では、移動経路28として車輪25が転動するレール26を用いたが、摺動によるガイド機構などを用いてもよい。基盤に敷設されたレールなどを用いることができる。台車としては、レールに転動する車輪を有するものが利用できる。
ストッパ機構40(40A〜40H)の当接機構としては、駆動シリンダ42で圧入部材43を当接方向とは交差する方向へ移動させ、移動側部材41と固定側部材44との間に圧入させる構成に限らない。
【0089】
例えば、圧入部材43を用いることは必須ではなく、移動台車24を移動経路28の所定停止位置に停止させた状態で、互いに対向する移動側部材41または固定側部材44の全体または一部を当接方向に沿って移動させることで、移動側部材41を固定側部材44に対して直接的に当接させてもよい。
移動側部材41または固定側部材44の移動機構、または、圧入部材43を移動させる駆動機構としては、前述した駆動シリンダ42として油圧シリンダなどが利用できるが、このような流体シリンダに限らず、モータと歯車機構により往復駆動を行う機構を利用してもよい。
【解決手段】溶銑脱硫装置1は、複数の溶銑鍋装置を結ぶ移動経路と、攪拌装置20を支持しかつ移動経路28に沿って移動可能な移動台車24と、移動台車24と移動経路28との間に設置された複数のストッパ機構40と、を有し、ストッパ機構40は、移動経路28に固定された固定側部材44と、移動台車24に設置された移動側部材41と、移動側部材41を固定側部材44に当接させる当接機構(駆動シリンダおよび圧入部材43)と、を有し、複数のストッパ機構40のうち少なくとも一対は、各々の移動側部材41の固定側部材44に対する当接方向の水平成分が互いに逆向きに配置されている。