(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材を有し、その片面もしくは両面に金属箔を有する金属箔基板において、前記基材に格子状に構成された凹部を設け、前記基材の前記凹部を設けた面側に前記金属箔を備え、前記金属箔の前記凹部と対向する部分に粘着層を備え、前記凹部は、その外側における前記金属箔を切断してパターンを形成するために、パターン間隔より広い幅をもつことを特徴とする、金属箔基板。
基材を有し、その片面もしくは両面に金属箔を有する金属箔基板において、薄膜層を有し、前記基材に格子状に構成された凹部を設け、前記基材の前記凹部を設けた面側に前記薄膜層を備え、前記薄膜層の前記凹部と対向する部分に粘着層を備え、前記薄膜層の外側に前記金属箔を備え、前記凹部は、その外側における前記金属箔を切断してパターンを形成するために、パターン間隔より広い幅をもち、前記薄膜層は、前記凹部の外側における前記金属箔を不可抗力的な外力から保護するために、前記金属箔を補強する作用をもつことを特徴とする、金属箔基板。
基材を有し、その片面もしくは両面に金属箔を有する金属箔基板において、可塑性部材を有し、前記基材に格子状に構成された凹部を設け、当該凹部内に前記可塑性部材を備え、前記基材の前記凹部を設けた面側に前記金属箔を備え、前記凹部は、その外側における前記金属箔を切断してパターンを形成するために、パターン間隔より広い幅をもち、前記可塑性部材は、前記基材に比べて良好な加工性と可塑性とをもつ絶縁性の部材であることを特徴とする、金属箔基板。
請求項1から3のいずれか1項に記載の金属箔基板において、さらに、前記金属箔に、ソルダーレジストと当該ソルダーレジストによって形成されたランドとを備えることを特徴とする、金属箔基板。
請求項1から4のいずれか1項に記載の金属箔基板にパターンを形成する方法であって、前記金属箔を切断するとともに、当該切断箇所を塞いで固定することを特徴とするパターンの形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一または実質的に同一の機能および構成要素については、同一符号を付し、必要に応じて説明する。また、「厚さ」を表す場合に、「厚」と省略する場合がある。
【0021】
実施形態1.(実施形態1は請求項1に対応する。)
実施形態1の目的は、金属箔を容易に切断できるようにすること、および、その切断端を物理的に安定させることによって、簡単にパターンを形成することである。
【0022】
図1は、実施形態1の完成状態を示す断面図である。
図2Aは凹部2の形状例を拡大して示す傾斜図である。
図1に示すように、実施形態1の金属箔基板は、基材1と金属箔3とを有し、前記基材1に、
図2Aに示すような格子状に構成された凹部2を設け、前記基材1の前記凹部2を設けた面側に前記金属箔3を備え、前記金属箔3の前記凹部2と対向する部分に粘着層9を備える。
【0023】
前記基材1の材料は、例えば、紙エポキシ積層材、ガラスコンポジット積層材、ガラスエポキシ積層材、などの絶縁性の積層材を用いる。前記基材1における板厚tは、一般的な金属箔基板における標準値の1.6mmでよいが、違う値にする場合は前記1.6mmより厚くするのが好ましい。
【0024】
前記凹部2は、
図2Aに示すように、縦の凹部と横の凹部とによって格子状に構成された凹部である。前記積層材の場合に、前記凹部2を設ける方法は、ルータ加工による切削、レーザ加工による切削、などの方法がある。
【0025】
前記基材1には、前記積層材と同等程度の機械的強度、もしくは、ユーザーが所望する機械的強度をもち、かつ、前記積層材に比べて切削加工性や成形加工性に優れた絶縁性の材料(例えば耐熱性樹脂材やその複合材)を用いてもよい。その場合は、前記積層材に比べて、前記凹部2の形成にかかる工数やコストを低減することができる。
【0026】
本金属箔基板は、前記基材1と前記金属箔3とが貼り付いてなる。前記貼り付けには、接着剤や粘着剤などを用いる。このとき、前記粘着剤は、前記粘着層9を兼ねてもよい。その場合は、前記金属箔3の、前記基材1と対向する面の全面に粘着剤(粘着層9)を備える。なお、前記金属箔3の前記凹部2と対向する部分に備えられた前記粘着層9は、本金属箔基板の完成後も粘着性を保つものである。
【0027】
そして、前記基材1と前記金属箔3とが貼り付いたことによって、空間5が形成される。当該空間5は、前記基材1と前記金属箔3との間に、前記凹部2によって形成された格子状の空間である。
【0028】
図1では、金属箔3は基材1の片面に備えられているが、前記金属箔3は前記基材1の両面に備えてもよい。前記金属箔3を両面に備える場合は、凹部2および粘着層9も両面に備える。
【0029】
次に、凹部2の詳細について説明する。凹部2は、
図2Aのように、V形状に形成されている。当該形状は、広く用いられているV溝と同等の加工方法を用いて形成できる。このため、低コストに形成できる利点がある。この他、前記V形状の先端を平らにした逆台形状にしてもよい。前記逆台形状の場合は、金属箔を切断後、その切断端を凹部2の側面に貼り付けやすく、さらに、深さDを前記V形状より浅くできるため、基材1の強度低下を抑えることができる。
【0030】
図2Bは、凹部2の第1変形例を拡大して示す傾斜図である。本第1変形例は、
図2Bのように、半円またはU字形状に形成されている。当該形状は、底部が滑らかなため亀裂が入りにくく、前記V形状に比べて曲げやたわみに強い。
【0031】
図2Cは、凹部2の第2変形例を拡大して示す傾斜図である。本第2変形例は、
図2Cのように、四角形状に形成されている。当該形状は、(後述の)パターンを形成したときのパターン間隔を、他の形状に比べて広くすることができる。
【0032】
図2Dは、凹部2の第3変形例とパターンの形成例とを示す上面図である。なお、
図2D右側の形成例は凹部2を透視によって示している。本第3変形例は、
図2Dのように、格子状の凹部2が直交する箇所に、菱形(◇)状の凹部2を追加した構成である。本第3変形例の場合は、
図2Dの形成例に示したパターン3eのような、斜めのパターンを形成することができる。
【0033】
図2A〜
図2Cにおける、凸部4の間隔P、凹部2の幅W、凹部2の深さDは、基材1の材質、その板厚t、金属箔3厚や粘着層9厚、使用する電圧、実装する部品の種類、などの条件によって適する値が異なる。そのため、ユーザーの用途に合わせた値にするのがよい。例えば、前記金属箔3を片面に備え、前記基材1はガラスエポキシ積層材、その板厚tは1.6mm、金属箔3厚は35μm、粘着層9厚は15μm、使用電圧は20V以下、実装する部品はリード部品、前記凹部2は四角形状、であれば、前記間隔Pは2.54mm、前記幅Wは0.35mm〜0.6mm程度(このときのパターン間隔は0.25mm〜0.5mm)、前記深さDは0.3mm〜0.4mm程度が適している。前記間隔Pおよび前記幅Wおよび前記深さDの値を変えることによって、様々な条件に対応できる。
【0034】
次に、本実施形態1の金属箔基板を用いて、パターンを形成する方法について説明する。
図3は、実施形態1においてパターンを形成する方法を拡大して示す参考図である。
図3に示すように、ユーザーがカッター20を用いて、凹部2の外側における金属箔3を、前記凹部2の中央において切断し、その切断端を前記凹部2の側面に押し付ける。このとき、前記金属箔3の前記凹部2と対向する部分に備えた粘着層9によって、前記切断端は前記凹部2の側面に貼り付いて固定される。このようにして、パターン3aと3bとが形成される。なお、前記金属箔3の厚さは数十μm(例えば、一般の電子回路用途に用いる銅箔であれば、その主流は、18μm、35μm、70μm)である。そのため、前記凹部2の外側における前記金属箔3は、前記カッター20によって容易に切断できる。
【0035】
このとき形成されるパターン間隔PWsは、凹部2の形状によって異なる。前記凹部2の幅をWとしたときのPWsは、
図2Aに示したV形状(V部の角度が90°)の場合は、0.293W−(金属箔3厚+粘着層9厚)×√2である。
図2Bに示した半円形状の場合は、0.54W−(金属箔3厚+粘着層9厚)×1.08である。
図2Cに示した四角形状の場合は、W−(金属箔3厚+粘着層9厚)×2である。
【0036】
したがって、例えば、金属箔3厚が35μm、粘着層9厚が10μmのとき、パターン間隔PWsを、0.2mmにするために必要な前記凹部2の幅Wは、前記凹部2が、V形状(V角度90°)の場合は、0.9mm、半円形状の場合は、0.46mm、四角形状の場合は、0.29mmである。
【0037】
また、前記凹部2の深さDは、前記幅Wに対して、前記凹部2がV形状(V部の角度が90°)および半円形状の場合は0.5Wであるが、四角形状の場合は、0.5W以上とし、好ましくは、前記金属箔3を切断した場合の、前記凹部2の中央に対する切断位置の誤差分を加算した値(0.5W+0.1mm以上)とするのがよい。
【0038】
なお、本願では、最小パターン間隔を0.2mmに設定している。本来、前記最小パターン間隔は、使用条件、要求性能、要求品質などによって設定値が異なるものであるが、本願では、ショート不良などの物理的な不具合を起こさないために最低限必要な値とした。そのため、ユーザーの使用条件などにより、前記最小パターン間隔の0.2mmよりもパターン間隔が必要な場合は、前記凹部2の形状および幅Wおよび深さDを、ユーザーが必要とするパターン間隔に対応したものにすればよい。
【0039】
パターンを形成するときは、前記凹部2の外側において前記金属箔3を切断する必要があるが、前記凹部2は前記金属箔3の内側に設けられているため、直観的に前記凹部2の位置を認識しにくい。そのため、前記基材1の側面(断面)を見たり、寸法を確認したりする必要がある。この改善のため、前記金属箔3に、前記凹部2が設けられた位置を示す表示を備えるのがよい。それにより、ユーザーは前記表示を目安にして、前記金属箔3の切断作業を簡単確実に行うことができる。前記表示は前記凹部2の中央を実線や破線などによって表わし、その線種や太さや濃さや色などは様々な表現方法を用いることができる。前記表示を備える方法には、シルク印刷やインクジェット印刷や熱転写などの方法がある。
【0040】
次に、本実施形態1の金属箔基板を用いた試作回路例について説明する。
図4Aは、実施形態1において試作回路のパターンを形成した例を示す参考図である。
図4Aは、パターン(前記金属箔3)側から見た図であって、凹部2や裏側に実装した部品を透視している図である。
図4Bは、
図4Aの試作回路の回路を示す参考図である。
【0041】
図4Aに示す試作回路は、オペアンプ13と抵抗器14a〜14dとによって構成された反転増幅回路(
図4Bの回路図に示す回路)である。電源電圧は+15V(V+)、および、−15V(V−)である。破線11は、凹部2と凸部4との境界を示す線、部品穴12は部品を挿入するための貫通穴である。
【0042】
図4Aの試作回路は、以下の条件によって製作される。
金属箔3を片面に備える。前記金属箔3は銅箔である。その厚さは35μmである。粘着層9の厚さは5μmである。基材1はガラスエポキシ積層材である。その板厚tは1.6mmである。凸部4の間隔Pは2.54mmである。凹部2の形状は
図2Cに示した四角形状である。凹部2の幅Wは0.6mm、深さDは0.4mmである。金属箔を切断するための工具は、カッターを用いる。
【0043】
そして、パターンを形成するために、太実線10に示した箇所の前記金属箔3を切断し、その切断端を前記凹部2の側面に押し付けて固定する。このときに形成されるパターン間隔は0.52mmである。なお、前記切断端は前記粘着層9によって前記凹部2の側面に固定されるが、耐久性能を重視する場合は、切断後の隙間に絶縁性の材料を充填するなどして強固に固定してもよい。
【0044】
以上のように、本実施形態1の金属箔基板を用いれば、カッターなどの一般的な工具によって金属箔3を容易に切断でき、その切断端を基材1(凹部2)に固定することができる。そのため、簡単にパターンを形成できる。また、太いパターンやベタパターンも形成できるため、電気的特性の良好なパターンを得ることができる。さらに、パターンを形成する際に専用の設備や用品などを必要としないため、パターンの形成にかかる費用を低減することができる。
【0045】
実施形態2.(実施形態2は請求項2に対応する。)
実施形態2の目的は、実施形態1の目的に加えて、凹部2の外側における金属箔3を補強することである。
【0046】
図5は、実施形態2の完成状態を示す断面図である。
図5に示すように、実施形態2の金属箔基板は、基材1と金属箔3と薄膜層7とを有し、前記基材1に格子状に構成された凹部2を設ける。前記基材1の材料および前記凹部2を設ける方法は、前記実施形態1と同様である。前記基材1の前記凹部2を設けた面側に前記薄膜層7を備え、前記薄膜層7の前記凹部2と対向する部分に粘着層9を備え、前記薄膜層7の外側に前記金属箔3を備える。
【0047】
前記薄膜層7の材料は、良好な被切断性と、耐熱性と、前記金属箔3に比べて高い引張強度と、可塑性と、をもつ。前記薄膜層7の「良好な被切断性」は、前記金属箔3とともに、カッターなどの一般的な工具によって容易に切断できる性質である。「耐熱性」は、はんだ付け作業時に、発火、発煙、有毒ガスの発生、炭化、溶化、著しい変形、を起こさない性質である。このときの想定条件は、はんだコテのコテ先温度を350℃にし、前記金属箔3を5秒間加熱した場合である。「前記金属箔3に比べて高い引張強度」は、前記凹部2の外側における前記金属箔3を補強するために必要な性質である。「可塑性」は、前記凹部2の側面側に折り曲げたときに、その形状を保つことができる性質である。例えば、前記薄膜層7には、耐熱ポリイミドフィルムなどの耐熱性樹脂フィルムを用いることができるが、その厚さは薄いほうがよく、10μm以下とするのが望ましい。薄くすることによって前記凹部2の側面側に折り曲げやすく、厚い場合に比べて復元力が弱くなり可塑性も良好になる。
【0048】
本金属箔基板は、前記基材1と前記薄膜層7と前記金属箔3とが貼り付いてなる。前記貼り付けには、接着剤や粘着剤などを用いる。このとき、前記粘着剤は、前記粘着層9を兼ねてもよい。その場合は、前記薄膜層7の、前記基材1と対向する面の全面に粘着剤(粘着層9)を備える。なお、前記薄膜層7の前記凹部2と対向する部分に備えられた前記粘着層9は、本金属箔基板の完成後も粘着性を保つものである。
【0049】
図5では、金属箔3は基材1の片面に備えられているが、前記金属箔3は前記基材1の両面に備えてもよい。前記金属箔3を両面に備える場合は、凹部2および薄膜層7および粘着層9も両面に備える。
図5では、前記凹部2の形状は
図2Cに示した四角形状であるが、他の形状でもよい。
【0050】
本実施形態2の金属箔基板においてパターンを形成する方法は、前記実施形態1と同様に、前記金属箔3を切断し、その切断端を前記凹部2に貼り付ける方法である。その場合、本実施形態2では、前記基材1と前記金属箔3との間に前記薄膜層7を備えるため、前記薄膜層7を前記金属箔3とともに切断し、前記凹部2に貼り付ける必要があるが、前記薄膜層7は良好な被切断性をもち、前記凹部2と対向する部分に前記粘着層9を備えるため、前記実施形態1と同様に、カッターなどの一般的な工具によって前記金属箔3と前記薄膜層7とを容易に切断でき、その切断端を前記凹部2に貼り付けることができる。貼り付け後は前記粘着層9の粘着力および前記薄膜層7の可塑性によってその状態を保つことができるが、耐久性能を重視する場合は、切断後の隙間に絶縁性の材料を充填するなどして強固に固定してもよい。
【0051】
本実施形態2の場合に形成される前記パターン間隔PWsは、前記凹部2の幅をWとしたとき、前記凹部2がV形状(V部の角度が90°)の場合は、0.293W−(金属箔3厚+薄膜層7厚+粘着層9厚)×√2である。半円形状の場合は、0.54W−(金属箔3厚+薄膜層7厚+粘着層9厚)×1.08である。四角形状の場合は、W−(金属箔3厚+薄膜層7厚+粘着層9厚)×2である。なお、前記凹部2が四角形状の場合の深さDは、前述の[段落0037]と同様に設定する。
【0052】
以上のように、本実施形態2の金属箔基板を用いれば、前記実施形態1と同様に簡単にパターンを形成できる。さらに、前記薄膜層7によって前記凹部2の外側における前記金属箔3を補強できる。このことにより、前記金属箔3に対して不可抗力的な外力が加わった場合の、前記金属箔3の変形や破損を防止できる。そのため取り扱いが容易になる。
【0053】
実施形態3.(実施形態3は請求項3に対応する。)
実施形態3の目的は、実施形態2の目的に加えて、パターン形成の作業効率を向上させることである。
【0054】
図6は、実施形態3の完成状態とパターンの形成状態とを示す断面図である。
図6に示すように、実施形態3の金属箔基板は、基材1と金属箔3と可塑性部材8とを有し、前記基材1に格子状に構成された凹部2を設ける。前記基材1の材料および前記凹部2を設ける方法は、前記実施形態1と同様である。前記凹部2を塞ぐように前記可塑性部材8を備え、前記基材1の前記凹部2を設けた面側に前記金属箔3を備える。前記基材1と前記可塑性部材8と前記金属箔3とのそれぞれを、接着剤や粘着剤などによって貼り付ける。
【0055】
前記可塑性部材8の材料は、絶縁性と、耐熱性と、前記基材1に比べて柔らかくて良好な加工性と、可塑性と、をもつ。前記可塑性部材8の「絶縁性」は、その外側の前記金属箔3を切断したときに、前記金属箔3間を電気的に絶縁する性質である。「耐熱性」は、前述の[段落0047]と同じ性質である。「前記基材1に比べて柔らかくて良好な加工性」は、人がカッターなどの一般的な工具を用いて、その刃先を通常の力において材料内に入り込ませて切れ目を入れることができる性質である。「可塑性」は、前記切れ目の形状を保つ性質である。例えば、前記可塑性部材8には、材料を低密度化するなどして可塑性を高めた耐熱性樹脂材やその複合材などを用いればよい。ただし、本金属箔基板の取り扱い上想定される不可抗力的な外力(圧力)によって変形することのない強度を最低限有する必要がある。
【0056】
図6では、金属箔3は基材1の片面に備えられているが、前記金属箔3は前記基材1の両面に備えてもよい。前記金属箔3を両面に備える場合は、凹部2および可塑性部材8も両面に備える。前記凹部2の形状は
図2Cに示した四角形状が適しているが、他の形状でもよい。
【0057】
本実施形態3の金属箔基板においてパターンを形成する方法は、前記実施形態1と同様に前記金属箔3を切断する方法である。その場合、本実施形態3では、前記凹部2に前記可塑性部材8が備えられているため、前記可塑性部材8内に工具の刃先を入り込ませて切れ目を入れる必要があるが、前記可塑性部材8は前記基材1より柔らかく良好な加工性をもつため、それが容易である。前記切れ目の幅は、切断工具21の刃先を入り込ませる深さや切断工具21の刃幅や刃の角度によって調整することができ、切断後に「へら」などを用いて広げることも可能である。前記切れ目の幅を変えることによってパターン間隔を変えることができる。また、前記切れ目の形状は、前記の可塑性によって保つことができる。
【0058】
以上のように、本実施形態3の金属箔基板を用いれば、前記可塑性部材8を備えることによって、前記凹部2の外側における前記金属箔3を切断し、必要によって切断後の間隔を広げる簡単な作業によってパターンを形成することができる。また、前記凹部2の外側における前記金属箔3に対して不可抗力による外力が加わった場合の、前記金属箔3の変形や破損を防止できる。さらに、前記金属箔3は前記可塑性部材8に貼り付いているため、実施形態1および2のように、前記金属箔3を切断したあと、その切断端を凹部2の側面に貼り付ける作業は不要である。このため、作業の効率を向上させることができる。
【0059】
実施形態4.
実施形態4の目的は、実施形態1の目的に加えて、自由な形状のパターンを簡単に形成することである。
【0060】
図7は、実施形態4の完成状態とパターンの形成状態とを示す断面図である。
図7に示すように、実施形態4の金属箔基板は、基材1と金属箔3と可塑性層17とを有し、前記基材1と前記金属箔3との間に前記可塑性層17を備える。前記基材1の材料は実施形態1と同様である。前記基材1と前記可塑性層17と前記金属箔3とのそれぞれを接着剤または粘着剤などによって貼り付ける。
【0061】
前記可塑性層17は、絶縁性と、耐熱性と、前記基材1に比べて柔らかくて良好な加工性と、可塑性と、をもつ。前記可塑性層17がもつ前述の性質および材料は、前述の[段落0055]と同じである。
【0062】
また、前記可塑性層17は、前述[段落0038]の最小パターン間隔0.2mmを形成するために、0.4mm以上の厚さ(t2)をもつ。前記0.4mmは、切断工具21(もしくは「へら」等)の刃角度を45°に想定し、前記金属箔3および前記可塑性層17に、前記基材1に達するまで切れ目を入れたときのパターン間隔PWsを、0.2mmにするために必要な厚さである。前記0.2mmは最低限確保すべきパターン間隔として設定したものであるため、ユーザーが前記0.2mmよりもパターン間隔を必要とする場合は、前記可塑性層17厚t2を0.4mmよりも厚くすればよい。ただし、前記t2を厚くする場合は、基材1厚t1が相対的に薄くなるため、基板強度(前記基材1の材質や板厚t)を考慮して設定する必要がある。
【0063】
図7では、金属箔3は基材1の片面に備えられているが、前記金属箔3は前記基材1の両面に備えてもよい。前記金属箔3を両面に備える場合は、可塑性層17も両面に備える。
【0064】
本実施形態4の金属箔基板においてパターンを形成する方法は、前記実施形態1と同様に、前記金属箔3を切断する方法である。その場合、本実施形態4では、前記金属箔3と前記可塑性層17とが貼り付いているため、前記可塑性層17内に切断工具21の刃先を入り込ませて切れ目を入れる必要があるが、前記可塑性層17は、前記基材1より柔らかく良好な加工性をもつため、それが容易である。前記切れ目の幅は、切断工具21の刃先を入り込ませる深さや切断工具21の刃幅や刃の角度によって調整することができ、切断後に「へら」などを用いて広げることも可能である。前記切れ目の幅を変えることによってパターン間隔を変えることができる。また、前記切れ目の形状は、前記の可塑性によって保つことができる。
【0065】
以上のように、本実施形態4の金属箔基板を用いれば、前記可塑性層17を備えることによって、前記可塑性層17の外側における前記金属箔3を切断し、必要によって切断後の間隔を広げる簡単な作業によってパターンを形成できる。そして、そのパターン形状には制限がない。例えば、任意角度や曲線などの自由な形状のパターンを形成することが可能である。また、実施形態3と同様に、前記金属箔3の切断端を凹部2の側面に貼り付ける作業が不要となるため、パターン形成作業の効率を向上させることができる。
【0066】
実施形態5.
実施形態5の目的は、はんだ付けの作業性および品質向上のためにランドを備えること、および、金属箔3の酸化を防止することである。
【0067】
図8は、実施形態5の完成状態を示す傾斜図である。
図8に示すように、実施形態5の金属箔基板は、金属箔3の表面にランド15を備える。当該ランド15は、前記金属箔3にソルダーレジスト16を備えて形成したものである。(前記金属箔3において、前記ソルダーレジスト16を備えない部分が前記ランド15である。)
【0068】
前記ランド15を備えることによって、前記ランド15に部品等をはんだ付けする際、はんだが前記ランド15以外の前記金属箔3に広がらないため、はんだフィレットを形成しやすくなる。適切な形状のはんだフィレットを形成すれば、経年変化によって生じる「はんだクラック」などのはんだ付けに起因する不具合を低減できるため、はんだ付け品質を向上させることができる。また、前記ソルダーレジスト16によって、前記金属箔3の酸化を防止できる。さらに、前記ランド15に対してプリフラックスやはんだメッキを施せば、前記ランド15の酸化も防止することができる。なお、
図8に示した前記ランド15の形状は円形状であるが、角型部品に適した四角形状にしてもよい。
【0069】
実施形態6.
本実施形態6のパターンの形成方法は、前記金属箔3を切断するとともに、当該切断箇所を塞いで固定する方法である。本実施形態6の目的は、効率的にパターン形成を行うこと、および、前記金属箔3の切断箇所の耐久性を高めることである。
【0070】
図9は、実施形態6のパターンの形成方法と形成例とを示す傾斜図である。
図11Aは、先端形状の第1変形例を示す断面図である。
図9の中央に示す金属箔基板は、実施形態1に係る金属箔基板である。
図9の下部は、前記金属箔基板のパターン完成状態を示すものである。
図9のパターンは、前述の
図4Aで示した試作回路のパターンである。
【0071】
本実施形態6のパターン形成は、
図9上部に示す、切断兼固定用部材22を用いて行う。当該切断兼固定用部材22は、形成しようとするパターンの形に構成したものである。当該切断兼固定用部材22は、金属箔基板に設けた凹部2の外側における金属箔3を切断するために、前記金属箔基板と対向する側の先端を尖らせ、かつ、前記凹部2(V形状)と嵌合する形状である。
【0072】
前記切断兼固定用部材22には、絶縁性と耐熱性とをもつ樹脂材料などを用いる。なお、前記切断兼固定用部材22だけでは強度が不足する場合は、補強枠23を周囲に設けてもよい。前記補強枠23を設ける場合は、前記金属箔基板の外形に合わせてパターン形成時の位置合わせに用いてもよい。また、位置合わせ用突起30aを前記補強枠23に2箇所以上設けてもよく、その場合は前記位置合わせ用突起30aを嵌め合わせるための、位置合わせ用穴30bを前記金属箔基板にも設けておく。パターン形成時に位置合わせを行えば、作業性と精度とを向上させることができる。
【0073】
次に、本実施形態6の、パターンの形成方法について説明する。
前記切断兼固定用部材22を用いてパターンを形成するには、まず、前記切断兼固定用部材22の金属箔基板と対向する側に接着剤を塗布し、前記切断兼固定用部材22の先端を前記凹部2の中央に合わせて前記金属箔基板に押し付ける。それによって、前記凹部2の外側における前記金属箔3が切断されてパターンが形成されるとともに、前記切断兼固定用部材22は前記凹部2に入り込み、前記接着剤によって前記凹部2に接着(固定)される。なお、前記補強枠23を設けた場合は、不要であれば接着後に前記補強枠23を切り離せばよい。
【0074】
上記のパターン形成方法は、実施形態1の場合であるが、実施形態2の場合は、前記薄膜層7を前記金属箔3とともに切断する必要があるため、前記切断兼固定用部材22の先端(および前記凹部2のV部の角度)を鋭利にしたり、のこぎり状にしたりするなど、切りやすい形状にするのがよい。もしくは、実施形態2における前記薄膜層7に予め切れ目を断続的に入れておくなどすればよい。ただし、前記薄膜層7に切れ目を入れる場合は、前記金属箔3を補強するための作用(引張強度)が極端に低下しないようにする必要がある。
【0075】
実施形態3および4の場合、前記切断兼固定用部材22の形状はV形状が適している。実施形態3の場合は、前記切断兼固定用部材22を、前記可塑性部材8内に入り込ませて接着することによってパターンを形成することができるが、前記切断兼固定用部材22は、前記可塑性部材8より硬い材料を用いる必要がある。同様に、前記実施形態4の場合は、前記切断兼固定用部材22を、前記可塑性層17内に入り込ませて接着することによってパターンを形成できるが、前記切断兼固定用部材22は、前記可塑性層17より硬い材料を用いる必要がある。
【0076】
本パターンの形成方法に用いる前記凹部2の形状は、実施形態1および2においてはV形状が適しているが、四角形状を用いることもできる。その場合は、前記切断兼固定用部材22の先端形状を、
図11Aに示すような、下部中央を突起させて前記金属箔3を切断しやすくした形状などにすればよい。または、前記凹部2に嵌め合わせて、前記金属箔3の切断およびその切断部分を前記凹部2に固定することができれば他の形状であってもよく、前記切断兼固定用部材22の形状は、前記凹部2と同一形状にする必要はない。実施形態3においては、前記凹部2の形状を四角形状とし、前記切断兼固定用部材22の先端をV形状とする組み合わせが適している。
【0077】
以上のように、本実施形態6のパターンの形成方法によれば、前記切断兼固定用部材22に前記接着剤を塗布し、前記金属箔基板に押込むことによって、パターンの形成と切断箇所を塞いで固定することとを同時に行うことができる。これにより、パターン形成作業の効率と切断箇所の耐久性とを高めることができる。なお、前記接着剤を用いなくても、前記切断兼固定用部材22に固定用突起を複数箇所設け、前記金属箔基板に前記固定用突起に対応した固定用貫通穴を設け、前記固定用突起を前記固定用貫通穴に指し込んで固定するような構成にしてもよい。
【0078】
実施形態7.
本実施形態7の基板完成品または装置は、前記実施形態6のパターン形成方法と同じ作用をもたせた取付板または装置筺体に、本発明に係る金属箔基板を取り付けることによってパターンを形成した、基板完成品または装置である。本実施形態7の目的は、前記実施形態6の目的に加えて、さらに、前記基板完成品または前記装置におけるパターンの形成工数を削減することである。
【0079】
図10は、実施形態7のパターンの形成方法と形成例とを示す傾斜図である。
図11Bは、先端形状の第2変形例を示す断面図である。
図10中央に示す金属箔基板は、実施形態1に係る金属箔基板に取付穴26bを備え、裏面に部品を実装し、その部品足を金属箔3にはんだ付けした状態のものである。
図10の下部は、前記金属箔基板に部品が実装されてパターンが形成された完成状態(基板完成品)を示したものである。
【0080】
図10上部に示すように、前記金属箔基板の取り付けに用いる取付板24は、金属箔基板と対向する側に、形成しようとするパターンの形に構成された突起25をもつ。当該突起25は、前記金属箔基板に設けた凹部2の外側における金属箔3を切断するために、先端を尖らせ、かつ、前記凹部2(V形状)と嵌合する形状である。また、前記金属箔基板との取り付けに用いる取付穴26aと、はんだ付け部27を避けるための穴28と、を備える。(前記穴28は、前記取付板24を前記金属箔基板に取り付けたあとに、回路パターンの電気的な検査のために用いることもできる。)
【0081】
前記取付板24には、パターン形成時に位置合わせを行うための、位置合わせ兼取付用突起30cのような突起を2箇所以上設けてもよい。例に示した前記位置合わせ兼取付用突起30cは、前記金属箔基板との取り付けを兼ねたものである。パターン形成時に位置合わせを行えば、作業性と精度とを向上させることができる。
【0082】
前記取付板24および突起25の材料は絶縁性の材料である。前記取付板24と前記突起25とは一体に加工(成形)されてなるものでもよいし、前記取付板24に前記突起25を組み合わせて(貼り付けて)なる構成でもよい。組み合わせる場合は、それぞれが別の材料であってもよい。
【0083】
前記取付板24を、実施形態2に用いる場合は、前述の[段落0074]のように、前記突起25の先端を切りやすい形状にするのがよく、実施形態3または4に用いる場合は、前述の[段落0075]のように、前記突起25を、前記可塑性部材8または前記可塑性層17よりも硬い材料にする必要がある。実施形態4に用いる場合の前記突起25の先端形状は、V形状以外に、
図11Bに示すような、パターン幅の両端2箇所を尖らせて、前記金属箔3をパターンの幅において切断するような逆M形状(またはW形状)にしてもよい。前記凹部2の形状についても、前述の[段落0076]のように、実施形態に適した形状を用いるのがよい。
【0084】
次に、本実施形態7の、基板完成品を製作する方法について説明する。
前記取付板24を用いて基板完成品を製作するには、
図10中央に示すように、まず前記金属箔基板に部品を実装し、その部品足を金属箔3にはんだ付けした状態(はんだ付部27を備えた状態)にする。そして、前記突起25の先端を前記凹部2の中央に合わせて前記金属箔基板に押し付けたあと、取付ネジ29を用いて前記取付板24を前記金属箔基板に取り付ける。このことにより、前記凹部2の外側における前記金属箔3が前記突起25によって切断されてパターンが形成されるとともに、前記突起25は前記凹部2に入り込み、前記切断箇所は前記突起25(前記取付板24)によって固定される。このようにして基板完成品を製作することができる。なお、前記取付板24および前記突起25に透明な材料を用いれば、前記金属箔3の切断状態を目視によって確認することができ、取り付け後の検査に役立つ。
【0085】
図10では、前記取付板24は前記金属箔基板と密着しているが、前記突起25の突出量を増やして、前記金属箔基板と前記取付板24との間に隙間をもたせてもよい。前記取付板24と前記はんだ付部27とが接触しなければ、前記取付板24に設けた前記穴28はなくてもよい。また、前記取付板24に絶縁性をもたせる必要がなくなり、材料の選択肢を増やすことができる。(ただし、前記突起25は絶縁性の必要がある。)
【0086】
以上のように、前記取付板24を前記金属箔基板に取り付けることによって、パターンが形成された基板完成品を製作することができる。装置の場合は、装置筺体の一部を前記取付板24のような構成にすれば、装置筺体に前記金属箔基板を取り付けることによって装置を製作することができる。このように、取り付け作業によってパターンを形成することができるため、本実施形態7において製作された基板完成品または装置は、実質的にパターンの形成工程を省くことができる。
【0087】
その他の形態.
1、実施形態1〜4の前記金属箔3に、プリフラックスやはんだメッキを施してもよい。
2、前記凸部4もしくは前記ランドの中央部に、貫通穴を設けてもよい。当該貫通穴は片面スルーホルであってもよい。
3、前記金属箔3を両面に備え、かつ、前記貫通穴を設ける場合は、前記貫通穴にスルーホールメッキまたは導電性材料を備えて、両面の前記金属箔3を電気的に接続してもよい。
4、実施形態1における前記凹部2を示す表示を、前記凹部2を有する他の実施形態に備えてもよい。
5、実施形態4の前記金属箔3に、パターンの寸法取りを効率的に行うための寸法表示を備えてもよい。
6、前記基材1と他の構成品(前記金属箔3、前記薄膜層7、前記可塑性層17)とを分けて、ユーザーが組み立てることを目的としたキットの形態にしてもよい。
7、パターンを形成する際に、型(金型や強化プラスチック型)を用いて前記金属箔3を切断してもよい。
8、図示する形態に限らず、本発明の範囲内において、他の形態であってもよい。
【課題】簡単な作業と安価な方法と電気的特性を優先した方法とによって、パターンを形成できる金属箔基板および効率的なパターン形成方法並びに前記方法を用いて製作される基板完成品または装置を提供する。
【解決手段】基材1に格子状の凹部2を設け、その面に金属箔3を備え、金属箔の凹部との対向部分に粘着層9を備える。または、凹部に可塑性部材を備える。または、基材と金属箔との間に可塑性層を備える。これにより、一般的な工具によって容易に金属箔3を切断でき、その切断端を固定できるため、切断後のパターン間隔を保てる。こうして簡単にパターンを形成できる。前記パターンは金属箔の面積を有効活用した電気的特性に優れたパターンである。また、金属箔の切断とともに、その切断箇所を塞いで固定するパターンの形成方法と、その方法によって製作する基板完成品または装置とは、パターン形成の工数を削減できる。