【文献】
Mami FUJII et al,“Thermal Analysis of Degradation in Ga2O3-In2O3-ZnO Thin-Film Transistors”,Japanese Journal of Applied Physics,The Japan Society of Applied Physics,2008年 8月,Vol.47, No.8,pp.6236-6240
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の基礎となる知見)
以下、本開示の詳細を説明する前に、本開示の基礎となる知見について説明する。
【0013】
通常、薄膜トランジスタは、電子の移動度が高く、アクティブマトリクス方式の表示装置の画素内において駆動トランジスタとして用いられている。表示装置の各画素は、輝度を表す電圧を保持する容量素子を備え、この容量素子は移動トランジスタのゲートに接続される。駆動トランジスタのゲートに輝度を表す電圧を印加することにより、駆動トランジスタは、輝度値に対応する電流を有機EL素子(発光素子)に供給する。供給された電流により発光素子は、電流値に応じた発光量で発光する。
【0014】
このような駆動トランジスタとして用いられる酸化物薄膜トランジスタはオフ時のリーク電流が極めて小さく、リーク電流の大きさがpAオーダーであるという長所がある。
【0015】
リーク電流が極めて小さいことに関して本願発明者は以下の課題を見出している。すなわち、リーク電流が極めて小さいがために、表示装置の電源がオフになっても、各画素内部では電源オフ直前での輝度を表す電圧が数日間にわたって保持され、その電圧が駆動トランジスタに印加されることがある。その結果、表示装置の電源がオフであるにもかかわらず、駆動トランジスタに電気的ストレスが数日間かかり、閾値電圧シフトを生じさせる。
【0016】
このように、有機EL表示装置の電源がオフの期間であっても、駆動トランジスタの閾値電圧がシフトするという問題がある。閾値電圧シフトは酸化物薄膜トランジスタの種類によって異なるが、例えば、ゲート・ソース間にプラスのバイアスストレスが大きいほど閾値電圧シフトがプラス側に大きく現れる。
【0017】
電源オフ直前の表示パターンに応じて異なる閾値電圧シフトが発生してしまうため、異なる画素間の閾値電圧シフト量のばらつきが不均一になりあるいは拡大し、画質を劣化させる。
【0018】
この劣化は、例えば、特許文献2のように各画素に設けられている駆動トランジスタのゲートとソースを電気的に接続させるか否かを制御するトランジスタを設けることにより低減し得るが、かかるトランジスタを設けると、通常表示時において、トランジスタのゲート容量によるブートストラップ効率の低下(駆動トランジスタの閾値電圧補償率の低下)が発生し、表示性能が低下してしまうという問題がある。
【0019】
このような知見に基づいて本開示に係る表示装置の電源断方法は、表示装置に対する電源オフ操作が検出されたとき、駆動トランジスタへの電気的ストレスを抑制する電圧を設定し、この電圧の設定直後に前記表示パネルへの電力供給を止めるようにしている。ここで、電気的ストレスを抑圧する電圧というのは、具体的には0Vであり、駆動トランジスタのソースまたはドレインとゲートとを同じ電位にする。上述したように、ゲート・ソース間にプラスのバイアスストレスが大きいほど閾値電圧シフトは顕著に現れることから、駆動トランジスタのゲートに黒レベルを表す電圧が印加された状態にすることにより、駆動トランジスタにかかる電気的ストレスを抑制することができる。加えて、画素間における駆動トランジスタの閾値電圧シフトのばらつきも抑制することができる。
【0020】
これにより、表示装置が電源オフである期間では駆動トランジスタへの電気的ストレスが抑圧されているので、駆動トランジスタの閾値電圧シフトを抑制することができる。
【0021】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0022】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する趣旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0023】
(実施の形態)
以下、本開示における表示装置の電源断方法および表示装置について図面を参照しながら説明する。
【0024】
[1−1、表示装置の構成]
本実施の形態において、本開示の一態様に係る表示装置の発光素子として有機EL素子を用いる場合について、
図1および
図2を用いて説明する。
【0025】
図1は、実施の形態に係る表示装置の構成例を示すブロック図である。
図2は、
図1中の表示パネルに二次元状に配置される画素回路の構成例を示す回路図である。
【0026】
図1に示す表示装置1は、制御部2と、走査線駆動回路3と、電源部4と、データ線駆動回路5と、表示パネル6とを備える。
【0027】
表示パネル6は、例えば有機ELパネルである。また、表示パネル6は、少なくとも、互いに平行に配置されたN(例えばN=1080)本の走査線と、N本の点灯制御線、直交して配置されたM本のソース信号線を有する。さらに、表示パネル6は、ソース信号線と走査線との各交点に、薄膜トランジスタおよびEL素子から構成される画素回路を有する。以下、同一の走査線に対応して配置された画素回路を、適宜、「表示ライン」という。すなわち、表示パネル6は、M個のEL素子を有する表示ラインをN本並べた構成となっている。
【0028】
制御部2は、表示装置の電源がオンであるときの通常表示における1フレーム毎の動作の制御と、電源オフ操作が検出されたときのオフシーケンスの動作の制御とを行う。本開示における特徴的な動作として、表示装置に対する電源オフ操作が検出されたとき、制御部2は、通常表示の動作からオフシーケンス動作に制御を移行する。オフシーケンスでは、制御部2は、各画素回路内の駆動トランジスタへの電気的ストレスを抑制するために、複数の画素回路それぞれにおける前記容量素子の一方の電極と他方の電極とに同じ電位を設定する。この電位は接地レベル(0V)でよい。この電圧の設定直後に表示パネル6への電力供給を止めるように電源部4を制御する。
【0029】
また、通常表示において、制御部2は、表示データ信号に基づいてデータ線駆動回路5を制御するための第1制御信号を生成し、生成した第1制御信号をデータ線駆動回路5へ出力する。また、制御部2は、入力される同期信号に基づいて走査線駆動回路3を制御するための第2制御信号を生成し、生成した第2制御信号を走査線駆動回路3へ出力する。
【0030】
ここで、表示データ信号は、映像信号、垂直同期信号、および水平同期信号を含む表示データを示す信号である。映像信号は、フレームごとに階調情報である各画素値を指定する信号である。垂直同期信号は、画面に対する垂直方向の処理のタイミングについて同期を取るための信号であり、ここでは、フレームごとの処理タイミングの基準となる信号である。水平同期信号は、画面に対する水平方向の処理のタイミングについて同期を取るための信号であり、ここでは、表示ラインごとの処理タイミングの基準となる信号である。
【0031】
また、第1制御信号は、映像信号および水平同期信号を含む。第2制御信号は、垂直同期信号および水平同期信号を含む。
【0032】
電源部4は、制御部2、走査線駆動回路3、表示パネル6の各部に電力を供給するとともに、表示パネル6に各種電圧を供給する。ここでいう各種電圧は、
図2に示す画素回路例では、V
INI、V
REF、V
TFT、V
ELであり、それぞれ初期化電源線71、基準電圧電源線68、ELアノード電源線69、ELカソード電源線70を介して各画素回路に供給される。
【0033】
データ線駆動回路5は、制御部2で生成された第1制御信号に基づいて、表示パネル6のソース信号線(
図2ではData線76)を駆動する。より具体的には、データ線駆動回路5は、映像信号および水平同期信号に基づいて、各画素回路にソース信号を出力する。
【0034】
走査線駆動回路3は、制御部2で生成された第2制御信号に基づいて、表示パネル6の走査線を駆動する。より具体的には、走査線駆動回路3は、垂直同期信号および水平同期信号に基づいて、各画素回路に走査信号、REF信号、イネーブル信号、init信号を、少なくとも表示ライン単位で出力する。これらの走査信号、REF信号、イネーブル信号、init信号は、
図2に示す画素回路例では、Scan線72、Ref線73、Enable線75、Init線74に出力され、接続先のスイッチのオンおよびオフを制御するために用いられる。
【0035】
以上のように、表示装置1は構成される。
【0036】
なお、表示装置1は、例えば、図示しないが、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)などの記憶媒体、RAM(Random Access Memory)などの作業用メモリ、および通信回路を有するとしてもよい。例えば、表示データ信号S1は、例えば、CPUが制御プログラムを実行することにより生成される。
【0037】
続いて
図2に示す画素回路例の構成について説明する。
【0038】
図2に示す画素回路60は、表示パネル6が有する一画素であり、Data線76(データ線)を介して供給されたデータ信号(データ信号電圧)に応じた発光量で発光する機能を有する。
【0039】
画素回路60は、表示画素(発光画素)の一例であり、行列状に配置されている。画素回路60は、駆動トランジスタ61と、スイッチ62と、スイッチ63と、スイッチ64と、イネーブルスイッチ65と、EL素子66と、容量素子67と、を備えている。また、画素回路60には、Data線76(データ線)と、基準電圧電源線68(V
REF)と、ELアノード電源線69(V
TFT)と、ELカソード電源線70(V
EL)と、初期化電源線71(V
INI)とを備える。
【0040】
ここで、Data線76は、データ信号電圧を供給するための信号線(ソース信号線)の一例である。
【0041】
基準電圧電源線68(V
REF)は、容量素子67の第1電極の電圧値を規定する基準電圧V
REFを供給する電源線である。ELアノード電源線69(V
TFT)は、駆動トランジスタ61のドレイン電極の電位を決定するための高電圧側電源線である。ELカソード電源線70(V
EL)は、EL素子66の第2電極(カソード)に接続された低電圧側電源線である。初期化電源線71(V
INI)は、駆動トランジスタ61のソース・ゲート間の電圧すなわち容量素子67の電圧を初期化するための電源線である。
【0042】
EL素子66は、発光素子の一例であり、行列状に配置される。EL素子66は、駆動電流が流されて発光する発光期間と、駆動電流が流されず発光しない非発光期間とを有する。具体的には、EL素子66は、駆動トランジスタ61から供給される電流量に応じた発光量で発光する。EL素子66は、例えば有機EL素子である。EL素子66は、カソード(第2電極)が、ELカソード電源線70に接続され、アノード(第1電極)が、駆動トランジスタ61のソース(ソース電極)に接続されている。ここで、ELカソード電源線70に供給されている電圧はV
ELであり、例えば0(V)である。
【0043】
駆動トランジスタ61は、EL素子66への電流の供給量を制御する電圧駆動の駆動素子であり、EL素子66に電流(駆動電流)を流すことでEL素子66を発光させる。具体的には、駆動トランジスタ61は、ゲート電極が容量素子67の第1電極に接続され、ソース電極が容量素子67の第2電極およびEL素子66のアノードに接続されている。
【0044】
駆動トランジスタ61は、スイッチ63がオフ状態(非導通状態)にされて基準電圧電源線68と容量素子67の第1電極とが非導通で、かつ、イネーブルスイッチ65がオン状態(導通状態)にされてELアノード電源線69とドレイン電極と導通した場合に、当該データ信号電圧に応じた電流である駆動電流をEL素子66に流すことにより、EL素子66を発光させる。ここで、ELアノード電源線69に供給されている電圧はV
TFTであり、例えば20Vである。これにより、駆動トランジスタ61は、ゲート電極に供給されたデータ信号電圧(データ信号)を、そのデータ信号電圧(データ信号)に対応した信号電流に変換し、変換された信号電流をEL素子66に供給する。
【0045】
また、駆動トランジスタ61は、スイッチ63がオフ状態(非導通状態)にされて基準電圧電源線68と容量素子67の第1電極とが非導通で、かつ、イネーブルスイッチ65がオフ状態(非導通状態)にされてELアノード電源線69とドレイン電極とが非導通である場合に、駆動電流をEL素子66に流さないことでEL素子66を発光させない。詳細については後述する。
【0046】
容量素子67は、電圧を保持するための蓄積容量の一例であり、駆動トランジスタ61の流す電流量を決める電圧を保持する。具体的には、容量素子67の第2電極(節点B側の電極)は、駆動トランジスタ61のソース(ELカソード電源線70側)とEL素子66のアノード(第1電極)との間に接続されている。容量素子67の第1電極(節点A側の電極)は、駆動トランジスタ61のゲートに接続されている。また、容量素子67の第1電極は、基準電圧電源線68(V
REF)とスイッチ63を介して接続されている。
【0047】
スイッチ62は、データ信号電圧を供給するためのData線76(信号線)と容量素子67の第1電極との導通および非導通を切り換える。具体的には、スイッチ62は、ドレインおよびソースの一方の端子がData線76に接続され、ドレインおよびソースの他方の端子が容量素子67の第1電極に接続され、ゲートが走査線であるScan線72に接続されているスイッチングトランジスタである。換言すると、スイッチ62は、Data線76を介して供給された映像信号電圧(映像信号)に応じたデータ信号電圧(データ信号)を容量素子67に書き込むための機能を有する。
【0048】
スイッチ63は、基準電圧V
REFを供給する基準電圧電源線68と容量素子67の第1電極との導通および非導通を切り換える。具体的には、スイッチ63は、ドレインおよびソースの一方の端子が基準電圧電源線68(V
REF)に接続され、ドレインおよびソースの他方の端子が容量素子67の第1電極に接続され、ゲートがRef線73に接続されているスイッチングトランジスタである。換言すると、スイッチ63は、容量素子67の第1電極(駆動トランジスタ61のゲート)に対して基準電圧(V
REF)を与える機能を有する。
【0049】
スイッチ64は、容量素子67の第2電極と初期化電源線71との導通および非導通を切り換える。具体的には、スイッチ64は、ドレインおよびソースの一方の端子が初期化電源線71(V
INI)に接続され、ドレインおよびソースの他方の端子が容量素子67の第2電極に接続され、ゲートがInit線74に接続されているスイッチングトランジスタである。換言すると、スイッチ64は、容量素子67の第2電極(駆動トランジスタ61のソース)に対して初期化電圧(V
INI)を与える機能を有する。
【0050】
イネーブルスイッチ65は、ELアノード電源線69と駆動トランジスタ61のドレイン電極との導通および非導通を切り換える。具体的には、イネーブルスイッチ65は、ドレインおよびソースの一方の端子がELアノード電源線69(V
TFT)に接続され、ドレインおよびソースの他方の端子が駆動トランジスタ61のドレイン電極に接続され、ゲートがEnable線75に接続されているスイッチングトランジスタである。
【0051】
以上のように画素回路60は構成されている。
【0052】
なお、画素回路60を構成するスイッチ62〜スイッチ64とイネーブルスイッチ65とはn型TFTとして、以下では説明を行うが、それに限られない。スイッチ62〜スイッチ64とイネーブルスイッチ65とは、p型TFTであってもよい。また、スイッチ62〜スイッチ64とイネーブルスイッチ65とにおいて、n型TFTとp型TFTとが混在して用いられてもよい。なお、p型TFTのゲートに接続された信号線については以下で説明する電圧レベルを逆転させればよい。
【0053】
また、基準電圧電源線68の電圧V
REFと初期化電源線71の電圧V
INIとの電位差は駆動トランジスタ61の最大閾値電圧よりも大きな電圧に設定される。
【0054】
また、基準電圧電源線68の電圧V
REF及び初期化電源線71の電圧V
INIは、EL素子66に電流が流れないように、次のように設定されている。
【0055】
電圧V
INI<電圧V
EL+(EL素子66の順方向電流閾値電圧)、
(基準電圧電源線68の電圧V
REF)<電圧V
EL+(EL素子66の順方向電流閾値電圧)+(駆動トランジスタ61の閾値電圧)
【0056】
ここで、電圧V
ELは、上述したように、ELカソード電源線70の電圧である。
【0057】
[1−2、表示装置の動作]
次に、
図1および
図2に示した表示装置の構成例における動作について
図3および
図4を用いて説明する。
【0058】
図3は、実施の形態に係る表示装置の電源断方法を示すフローチャートである。また、
図4は、実施の形態に係る表示装置の通常表示の動作と、電源断の直前に行われるオフシーケンスとを示すタイムチャートである。
【0059】
まず、通常表示の動作よりも先にオフシーケンスの動作(電源断方法)について説明する。
【0060】
図3に示すように、制御部2は、表示装置1に対する電源オフ操作を検出する(S20)。ここでいう電源オフ操作は、例えば、ユーザによるリモコンの電源ボタンの押下、表示装置1本体の電源ボタンの押下、ユーザによるオフタイマーの設定によるオフ時刻の到来、ユーザの無操作時間を計測するタイマーによる設定時間の経過、停電時のAC電源電圧の低下などを含む。また、
図4に示すように、電源オフ操作の検出により、制御部2の動作は、通常表示の制御からオフシーケンスの制御に移行する。
【0061】
電源オフ操作が検出されたとき、制御部2は、特定の処理を行う、すなわち、複数の画素回路60のそれぞれにおける駆動トランジスタ61への電気的ストレスを抑制するために、容量素子67の2つの電極に同じ電位を設定する(S30)。駆動トランジスタのソースまたはドレインとゲートとの間の電圧が0Vになることにより、電気的なストレスを抑制することができる。
【0062】
さらに、制御部2からの制御によって電源部4は、電圧の設定直後に表示パネル6、走査線駆動回路3、データ線駆動回路5への電力供給を止める(S40)。これにより表示装置1は電源オフの状態になる。
【0063】
上記のステップS30における電圧の設定は、例えば、ステップS31〜S33のように設定することができる。
【0064】
すなわち、電源オフ操作が検出されたとき、まず、制御部2は、表示パネル6の全行について、画素回路60へのゲート信号をローレベルする制御をし、スイッチをオフにする。ここでいうゲート信号は、走査信号(Scan)、REF信号、イネーブル信号(ENB)、init信号(INI)の全てでもよいが、少なくともイネーブル信号を含んでいればよい。これにより少なくともイネーブルスイッチ65がオフになり、EL素子66にもはや電流が供給されないようにしている。
【0065】
次に制御部2は、電源部4に対して、基準電圧電源線68、ELアノード電源線69、ELカソード電源線70、初期化電源線71の電位を0Vにするよう制御する。これにより、これらに電源線の電圧は接地レベル(つまり0V)に変更される(S31)。
図4のオフシーケンスの区間に示すように、これらの電源線は配線容量(浮遊容量)が大きいため、他の信号線よりもなだらかに0Vに変化する。
【0066】
そのため、制御部2は、上記の電源線の電圧レベルが0Vに確定するまでの待ち時間を設けている(S32)。待ち時間は、電源部4の駆動能力および上記の配線容量に依存して定まるが、例えば数mSである。
【0067】
電源線のレベルが0Vに確定した後(待ち時間経過後)、制御部2は、全ての画素回路を対象に、Ref線73、Init線74、Enable線75をハイレベルにしてから、一定時間経過後にローレベルにする(S33)。これによりスイッチ63、64、65を一定時間オン状態になり、0Vの電源線と導通するので、容量素子67の両電極が0Vに設定される。この一定時間は、容量素子67の容量、EL素子66の寄生容量、上記の配線容量および電源部4の駆動能力に依存して定めることができ、上記の待ち時間と同じ程度でよい。これにより、少なくとも容量素子67の電位が0Vに安定してから次のステップS40に進むようにしている。
【0068】
このように、
図4のシーケンスによれば、全ての画素回路の容量素子67に対して同時に一括して0Vを設定することができる。これにより、電源オフ後の駆動トランジスタ61にかかる電気的ストレスを抑制することができる。
【0069】
なお、上記のS33の動作について、全行全画素に対して同時に一括して行う例を説明したが、行走査により行毎に順次行ってもよい。
【0070】
また、
図7に示すように、Ref線73、Init線74、Enable線75、SCAN線72の信号レベルを0Vに設定してから電源を落とすと、上記の信号線に接続されたスイッチ動作を行うトランジスタ62〜65についても、ゲートソース間電圧を0Vにすることができ、電気的ストレスを抑制し、閾値電圧のシフトを抑制できる。
【0071】
[1−3、効果等]
以上説明してきたように本開示における表示装置の終了方法の一態様は、行列状に配置された複数の画素回路を有する表示パネルを備える表示装置の電源断方法であって、前記複数の画素回路のそれぞれは、供給される電流量に応じて発光する発光素子と、前記発光素子に電流を供給する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのゲートに接続され輝度を表す電圧を保持する容量素子とを有し、前記表示装置の電源断方法は、前記表示装置に対する電源オフ操作を検出するステップと、前記電源オフ操作が検出されたとき、前記複数の画素回路それぞれにおける前記容量素子の一方の電極と他方の電極とに同じ電位を設定するステップと、前記同じ電位の設定直後に前記表示パネルへの電力供給を止めるステップとを有する。
【0072】
これによれば、表示装置の電源がオフの期間における駆動トランジスタの閾値電圧シフトを抑制することができる。
【0073】
また、前記同じ電位を設定するステップにおいて、前記複数の画素回路おいて、前記同じ電位として接地電位を設定してもよい。
【0074】
これによれば、電源オフの間に駆動トランジスタのゲート・ソース間の電圧を0Vにすることにより電気的ストレスを抑制し、閾値電圧シフトを抑制することができる。
【0075】
また、前記同じ電位を設定するステップにおいて、前記複数の画素回路おいて前記同じ電位を同時に設定してもよい。
【0076】
これによれば、全画素回路の容量素子に一括設定するので電力供給を止めるまでの時間を短縮可能である。
【0077】
また、画素回路は、さらに、前記容量素子の一方の電極に接続された第1のスイッチトランジスタ(スイッチ63)と、第1のスイッチトランジスタ(スイッチ63)を介して容量素子67の一方の電極に接続された第1の配線(基準電圧電源線68)と、容量素子67の他方の電極に接続された第2のスイッチトランジスタ(スイッチ64)と、第2のスイッチトランジスタ(スイッチ64)を介して容量素子67の他方の電極に接続された第2の配線(初期化電源線71)とを有し、同じ電位を設定するステップにおいて、第1および第2の配線(基準電圧電源線68および初期化電源線71)に0Vを供給し、第1および第2の配線の電位が0Vになった後第1および第2のスイッチトランジスタ(スイッチ63、64)をオン状態にしてもよい。
【0078】
これによれば、全ての画素回路の容量素子67に対して同時に一括して0Vを設定することができる。
【0079】
また、本開示における表示装置の一態様は、行列状に配置された複数の画素回路を有する表示パネルを備える表示装置であって、前記複数の画素回路のそれぞれは、供給される電流量に応じて発光する発光素子と、前記発光素子に電流を供給する駆動トランジスタと、前記駆動トランジスタのゲートに接続され輝度を示す電圧を保持する容量素子とを有し、前記表示装置は、電源オフ操作が検出されたとき、前記複数の画素回路のそれぞれにおける前記容量素子の一方の電極と他方の電極とに同じ電位を設定する制御部と、特定の処理完了直後に前記表示パネルへの電力供給を止める電源部とを備える。
【0080】
これによれば、表示装置の電源がオフの期間における駆動トランジスタの閾値電圧シフトを抑制することができる。
【0081】
(変形例)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前述した実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、実施の形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0082】
図5は、実施の形態の変形例における表示画素の回路例を示す図である。
図5の画素回路は、駆動トランジスタ61と、スイッチ62と、EL素子66と、容量素子67とを備え、
図2に示した画素回路よりも簡素化された構成である。
【0083】
同図の駆動トランジスタ61はn型TFTではなくp型TFTが用いられ、そのドレインは電圧V1の電源線に接続されている。
【0084】
容量素子67の一方の電極は電圧V2の電源線に接続されている。電圧V1は電圧V2と同じでもよい。
【0085】
スイッチ62のソースおよびドレインの一方はData線76に接続され、ソースおよびドレインの他方は容量素子67の他方の電極に接続されている。スイッチ62のゲートはScan線72に接続されている。この構成において、オフシーケンスでは、まず電圧V1の電源線、電圧V2の電源線およびData線76の電位を0Vに設定し、次にスイッチ61、62をオンにする。
【0086】
これにより、容量素子67の2つの電極の電位は0Vになり、EL素子66の寄生容量の電位も0Vになる。駆動トランジスタ61のドレイン・ゲート間電圧およびソース・ゲート間電圧が0Vになる。この状態で電源部4は表示パネル6への電力供給を停止する。
【0087】
このように、画素回路60は、
図2の回路例に限らず
図5の回路例でもよい。例えば、
図5の回路例に対して、電圧V1の電源線と駆動トランジスタ61の間にスイッチを追加し、そのゲートにEnable線75を接続した回路構成としてもよい。また、
図5の回路例に対して、電圧V2の電源線と駆動トランジスタ61の間にスイッチを追加し、そのゲートにRef線73を接続した回路構成としてもよい。また、
図5の回路例に対して、EL素子66のアノードにスイッチを介して初期化電源線71を接続し、そのスイッチのゲートにInit線74を接続した回路構成としてもよい。また、
図2のように、駆動トランジスタ61はn型であってもp型であってもよい。
【0088】
(他の実施の形態)
次に、本開示における他の実施の形態について
図6を用いて説明する。この実施の形態における表示装置および画素回路の構成は、
図1および
図2と同じである。また、この実施の形態における電源断方法およびタイムチャートも、
図3および
図4のレベルでは同じである。ただし、表示装置1は、いわゆる4kテレビ対応であり、横3840画素×縦2160画素以上の有効画素を有するものとする。
【0089】
まず、他の実施の形態における通常表示の駆動タイミング例について説明する。
【0090】
図6は、他の実施の形態における通常表示動作の詳細なタイミング例を示すタイムチャートである。
図6では、1フレーム期間(つまり垂直同期信号の期間1V)が 2250水平期間(つまり水平同期信号の期間の2250倍)であるものとする。
図6では、初期化期間、閾値電圧補償期間、書込期間、発光期間の各動作がこの順に行われる。
【0091】
時刻t01において、Ref線73がローレベルからハイレベルに遷移する。この立ち上がりにより、EL素子66が非発光になる。
【0092】
期間T11の幅を調整することによりEL素子66の非発光期間を調整することができる。
【0093】
時刻t02において、Init線74がローレベルからハイレベルに遷移する。この立ち上がりにより、初期化期間が開始する。
【0094】
期間T12は、初期化期間である。初期化期間では、節点Bの寄生容量(EL素子66の容量)をInit線74に十分に放電させるための期間が設けられている。また、初期化期間は、節点Aの寄生容量を放電して電位を確定させるための期間でもある。この期間は、寄生容量への充電と駆動トランジスタ61を流れる電流とのトレードオフにより決められる。期間T12の終了時には、駆動トランジスタ61の閾値電圧補償を行うためにドレイン電流を流すのに必要な初期電圧が容量素子67に保持される。
【0095】
時刻03において、Init線74がハイレベルからローレベルに遷移し、閾値電圧補償期間が開始する。
【0096】
期間T14は、閾値電圧補償期間である。閾値電圧補償とは、画素回路のそれぞれにおける容量素子67に、対応する駆動トランジスタ61の閾値電圧に相当する電圧を設定する動作である。
【0097】
時刻t04において、Ref線73の立ち下りによるスイッチ63がオン状態からオフ状態に変化し、閾値電圧補償期間が終了する。この時点で、節点Aと節点Bとの電位差(駆動トランジスタ61のゲート・ソース間電圧)は駆動トランジスタ61の閾値に相当する電位差となっており、この電圧は容量素子67に保持される。
【0098】
期間T15は、時刻t04でスイッチ63がオン状態からオフ状態に変化する時に、駆動トランジスタ61のゲート電位が変動するので、行内のゲート電位が確定するための期間としている。この期間を、REF遷移期間と呼ぶ。
【0099】
時刻t05において、Enable線75がハイレベルからローレベルに遷移し、イネーブルスイッチ65がオフ状態になり、駆動トランジスタ61への電流供給を停止する。
【0100】
期間T16は、イネーブルスイッチ65がオフ状態になってから、行内の全ての画素においてELアノード電源線69(VTFT)の電位を同じにするための期間である。
【0101】
期間T17は、書込期間であり、Scan線72のパルスの立ち下りをオーバードライブ駆動している。すなわち、時刻t07において、パルスの立ち下り時に通常のローレベルよりも低い電位に下げている。これは、Scan線72のパルスは実際にはかなりなまった波形であるので、立ち下り時間を短縮し、容量素子67への書き込みを早期に確定させるためである。
【0102】
期間T18は、オーバードライブの期間である。
【0103】
期間T19は、時刻t07でスイッチ62がオン状態からオフ状態に変化した、駆動トランジスタ61のゲート電位が変動するので、行内のゲート電位が確定するための期間としている。この期間を、SCN遷移期間と呼ぶ。
【0104】
時刻t09において、Enable線75がローレベルからハイレベルに遷移する。これにより発光期間を開始する。
【0105】
期間T20は、発光期間である。この期間は例えば1フレーム期間(2250H)の約95%である。つまり、1フレーム期間の約95%の期間は発光させることができる。
【0106】
このように、
図6に示した通常表示の駆動タイミング例は、4kテレビ等の画素数の多い表示装置に適しており、1フレーム期間のほとんど(約95%)を発光させることができる。
【0107】
また、各画素に設けられている駆動トランジスタ61のゲートとソースを電気的に接続させるか否かを制御するトランジスタスイッチを設けないので、通常表示時において、トランジスタのゲート容量によるブートストラップ効率の低下(駆動トランジスタの閾値電圧補償における補償率の低下)の問題を発生させない。
【0108】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これらに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0109】
例えば、本開示の発光画素において使用される駆動トランジスタ及びスイッチングトランジスタの半導体層の材料は、特に限定されないが、例えば、IGZO(In−Ga−Zn−O)などの酸化物半導体材料が採用され得る。IGZOなどの酸化物半導体からなる半導体層を備えるトランジスタは、リーク電流が少ない。また、スイッチとして、IGZOなどの酸化物半導体からなる半導体層を備えるトランジスタを用いる場合、閾値電圧を正とできるため、駆動トランジスタのゲートからのリーク電流を抑制することができる。
【0110】
また、上記各実施の形態においては、発光素子として有機EL素子を用いたが、電流に応じて発光量が変化する発光素子であれば任意の発光素子を用いることができる。
【0111】
また、上述した有機EL表示装置などの表示装置については、フラットパネルディスプレイとして利用することができ、テレビジョンセット、パーソナルコンピュータ、携帯電話など、表示装置を有するあらゆる電子機器に適用することができる。