(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上軸受部材および前記下軸受部材のそれぞれは、外周面が径方向外方に膨らむ曲面を有しており、前記上軸受保持部および前記下軸受保持部のそれぞれの突出方向の反対側から前記蓋部および前記底部に固定された弾性を有する上リテーナおよび下リテーナによって外周面が前記上軸受保持部側および前記下軸受保持部側に押される請求項1から9のいずれかに記載のモータ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書では、モータの中心軸方向における
図1の上側を単に「上側」と呼び、下側を単に「下側」と呼ぶ。なお、上下方向は、実際の機器に組み込まれたときの位置関係や方向を示すものではない。また、中心軸に平行な方向を「軸方向」と呼び、中心軸を中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸を中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の例示的な第1の実施形態に係るモータ1の断面図である。モータ1は、アウタロータ型であり、空気清浄機や扇風機、換気扇等の家電製品の駆動源として用いられる。モータ1は、
図1に示すモータ部11と、ハウジング120と、を備える。モータ部11は、回転部111と、静止部112と、軸受と、を備える。軸受は、スリーブ軸受であり、軸受部材15と軸受部材16を備える。以下、モータ1の上側に位置する軸受部材15を「上軸受部材15」という。下側に位置する軸受部材16を「下軸受部材16」という。回転部111は、静止部112に対して上下方向を向く中心軸J1を中心に回転する。
【0011】
回転部111は、シャフト21と、ロータホルダ22と、ロータマグネット23と、を備える。ロータホルダ22は、軸方向下側に開口する有蓋略円筒状であり、薄板をプレス加工することにより形成される。ロータホルダ22のロータ蓋部221の中央に設けられた孔部には、シャフト21が固定される。ロータマグネット23は、ロータホルダ22の円筒部222の内周面に固定される。ロータマグネット23は、円筒状であってもよく、複数のマグネットが周方向に配列されてもよい。
【0012】
静止部112は、ブッシュ31と、ステータ32と、回路基板33と、を備える。ブッシュ31は、中心軸J1を中心とする略円筒状である。
【0013】
ステータ32は、ステータコア321と、コイル322と、を備える。ステータコア321は、中心軸J1を中心とする環状部と、環状部から径方向外側に突出する複数のティース部と、を備えており、複数の薄板の磁性鋼板を上下方向に積層して形成される。ステータ32は、ブッシュ31に固定される。詳述すると、ステータコア321の径方向内側の部位は、ブッシュ31の外周面に固定される。ステータコア321は、ブッシュ31に間接的に固定されてもよい。例えば、ステータコア321は、ブッシュ31に接着剤によって、間接的に固定されてもよい。コイル322は、導線がステータコア321のティース部に巻回されることにより形成される。ステータ32の径方向外側には、ロータマグネット23が位置し、ステータ32とロータマグネット23との間にてトルクが発生する。
【0014】
モータ1では、シャフト21の回転部111よりも上側および回転部111よりも下側がそれぞれ、上軸受部材15および下軸受部材16に挿入され、中心軸J1を中心に回転可能に支持される。シャフト21の上下端部は、ハウジング120の上方および下方のそれぞれから突出する。
【0015】
ハウジング120は、上側ハウジング12と、下側ハウジング13と、を備える。上側ハウジング12は、金属にて成型される。上側ハウジング12は有蓋略円筒状である。上側ハウジング12は、円筒部121と、蓋部122と、を備える。円筒部121は、蓋部122の外縁部から下方に向かって延びる。蓋部122は、ロータホルダ22の軸方向上方において中心軸J1を中心とする貫通孔を有し、貫通孔から径方向外方に広がる板状である。
【0016】
下側ハウジング13は、金属にて成型される。下側ハウジング13は、有底略円筒状である。下側ハウジング13は、底部132と、円筒部131と、を備える。円筒部131は、底部132の外縁部から上方に向かって伸びる。底部132は、ロータホルダ22の軸方向下方において中心軸J1を中心とする貫通孔を有し、貫通孔から径方向外方に広がる板状である。モータ1では、上側ハウジング12の円筒部121の下端部が、下側ハウジング13の円筒部131の上端部に固定される。この構成により、ハウジング120が構成される。この際、円筒部121と円筒部131とでロータホルダ22を径方向外方から覆う側壁部1201が構成される。つまり、側壁部1201は、蓋部122と底部132とを繋いでいる。
【0017】
ハウジング120は、蓋部122の中央に中心軸J1を中心として軸方向に突出する上軸受保持部123と、底部132の中央に中心軸J1を中心として軸方向に突出する下軸受保持部133と、を備える。本実施形態においては、上軸受保持部123は、蓋部122の中央に位置し、軸方向上側に向かって内径が小さくなる傾斜面を有する略円錐面を有している。また、下軸受保持部133は、底部132の中央に位置し、軸方向下側に向かって内径が小さくなる傾斜面を有する略円錐面を有している。上軸受部材15および下軸受部材16のそれぞれは、外周面が径方向外方に膨らむ曲面を有している。上軸受保持部123および下軸受保持部133のそれぞれの突出方向の反対側から蓋部122および底部132には、弾性を有する上リテーナ1231および下リテーナ1331が固定される。上リテーナ1231によって、上軸受部材15の外周面が、上軸受保持部123側に押されている。下リテーナ1331によって、下軸受部材16の外周面が、下軸受保持部133側に押されている。すなわち、上軸受部材15および下軸受部材16のそれぞれは、外周面が径方向外方に膨らむ曲面を有しており、上軸受部材15および下軸受部材16の外周面は、上軸受保持部123および下軸受保持部133のそれぞれの突出方向の反対側から蓋部122および底部132に固定された弾性を有する上リテーナ1231および下リテーナ1331によって、上軸受保持部123側および下軸受保持部133側に押される。
【0018】
上リテーナ1231は、蓋部122の下面に固定されている。上リテーナ1231は、蓋部122へ固定されるリテーナ固定部1241から径方向内方に突出し、軸方向に撓むことが可能である。上リテーナ1231の径方向内端は、上軸受部材15の外周面を軸方向上側に向けて押す。上リテーナ1231と上軸受保持部123との間で、上軸受部材15は保持される。つまり、上軸受部材15は、上軸受保持部123の内周面に保持される。
【0019】
下リテーナ1331は、底部132の下面に固定されている。下リテーナ1331は、底部132へ固定されるリテーナ固定部1341から径方向内方に突出し、軸方向に撓むことが可能である。下リテーナ1331の径方向内端は、下軸受部材16の外周面を軸方向下側に向けて押す。下リテーナ1331と下軸受保持部133との間で、下軸受部材16は保持される。つまり、下軸受部材16は、下軸受保持部133の内周面に保持される。
【0020】
上軸受保持部123は、蓋部122の中央が上方に向かって突出することで構成される。上軸受保持部123の先端部の内径は、上軸受部材15の最外端の外径よりも小さい。つまり、上軸受部材15は、上軸受保持部123により軸方向上側への移動が規制される。そのため、上軸受部材15は、上軸受保持部123に保持される。蓋部122は、上軸受保持部123の径方向外方において、中心軸方向の下方に向かって窪む凹部124を有している。本実施形態においては、上軸受保持部123は、凹部124から軸方向上方に向かって突出している。尚、上軸受保持部123の突出方向、凹部124の窪む方向については、上記に限定されない。上軸受保持部123は中心軸方向の上下方向一方側に突出し、凹部124は上下方向他方側に窪む構成であればよい。
【0021】
下軸受保持部133は、底部132の中央が下方に向かって突出することで構成される。下軸受保持部133の先端部の内径は、下軸受部材16の最外端の外径よりも小さい。つまり、下軸受部材16は、下軸受保持部133により軸方向下側への移動が規制される。そのため、下軸受部材16は、下軸受保持部133に保持される。底部132は、下軸受保持部133の径方向外方において、中心軸方向の上方に向かって窪む凹部134を有している。本実施形態においては、下軸受保持部133は、凹部134から軸方向下方に向かって突出している。すなわち、下軸受保持部133は、中心軸方向の上下方向一方側に突出しており、底部132は、下軸受保持部133の径方向外方において中心軸方向の上下方向他方側に窪む凹部134を有している。尚、下軸受保持部133は中心軸方向の上下方向一方側に突出し、凹部134は上下方向他方側に窪む構成であればよい。すなわち、下軸受保持部133の突出方向、凹部134の窪む方向については、上記に限定されない。
【0022】
図2は、上スペーサ17、下スペーサ18を示すモータ1の部分拡大断面図である。シャフト21は、ロータホルダ22と上軸受部材15との間において、軸方向に伸びる上スペーサ17が保持されている。また、シャフト21は、ロータホルダ22と下軸受部材16との間において、軸方向に伸びる下スペーサ18が保持されている。
【0023】
ロータホルダ22は、シャフト21側から径方向外方に広がるロータ蓋部221と、ロータ蓋部221から軸方向に伸びる略円筒状のシャフト保持部2211と、を有している。上スペーサ17は、ロータ蓋部221の上面と接触し、下スペーサ18は、ロータ蓋部221の下面と接触している。シャフト保持部2211はロータ蓋部221の径方向内側から軸方向に伸びる。本実施形態においては、シャフト保持部2211は、軸方向上側に向かって突出している。上スペーサ17は、大内径部173と、小内径部174と、を有する。大内径部173は、シャフト保持部2211の径方向外方を覆っている。また大内径部173と、シャフト保持部2211と、の間には間隙が存在する。シャフト保持部2211は、バーリング加工により精度が低いため、上スペーサ17が、ロータ蓋部221と接触することが望ましい。小内径部174は、シャフト21の外周面と接触している。大内径部173は、シャフト保持部2211の上端面よりも軸方向上側まで伸びている。よって、小内径部174とシャフト保持部2211の上端面とは軸方向において離れている。すなわち、シャフト保持部2211が突出している側に位置する上スペーサ17または下スペーサ18は、シャフト保持部2211の径方向外方を覆う大内径部173と、シャフト保持部2211の端面と離れており、シャフト21の外周面と接触する小内径部174と、を有している。
【0024】
上スペーサ17と、上軸受部材15の下面との間には、略円環状の上摺動部材172が介在されている。また、上スペーサ17と上摺動部材172との間には、環状またはC字状の弾性部材171が介在される。シャフト21が回転することにより、上スペーサ17と、上摺動部材172と、弾性部材171は、シャフト21と共に回転する。上リテーナ1231の内端よりも径方向内方において上軸受部材15の下端面は、露出している。これにより、シャフト21が回転した際に、上摺動部材172は、上軸受部材15の下端面と隙間を介して対向しながら回転する。また、シャフト21が軸方向上側に移動した際には、上摺動部材172は、上軸受部材15の下端面と擦れながら回転する。ここで、上摺動部材172と上軸受部材15との間に更に、摺動部材を設け、上摺動部材172が摺動部材に擦れながら回転しても良い。シャフト21が軸方向上側に移動した際、弾性部材171は、上摺動部材172と上スペーサ17とに挟まれることで弾性収縮する。これにより、弾性部材171が外部からの振動や衝撃を吸収することができるため、モータ1の耐衝撃性や耐振動性が向上される。なお、上スペーサ17が弾性を有する場合には、弾性部材171を削除することができる。また、上スペーサ17が摺動性を有する場合には、上摺動部材172を削除することができる。
【0025】
下スペーサ18と、下軸受部材16の上面との間には、略円環状の下摺動部材182が介在されている。また、下スペーサ18と下摺動部材182との間には、環状またはC字状の弾性部材181が介在される。シャフト21が回転することにより、下スペーサ18と、下摺動部材182と、弾性部材181は、シャフト21と共に回転する。下リテーナ1331の内端よりも径方向内方において下軸受部材16の上端面は、露出している。これにより、シャフト21が回転した際に、下摺動部材182は、下軸受部材16の上端面と擦れながら回転する。下摺動部材182と下軸受部材16との間に更に、摺動部材を設け、下摺動部材182が摺動部材に擦れながら回転しても良い。本実施形態においては、外部から衝撃が加えられた瞬間を除いては、下摺動部材182と下軸受部材16とは接触している。この際、弾性部材181は、下摺動部材182と下スペーサ18とに挟まれることで弾性収縮している。これにより、下摺動部材182が下軸受部材16に対して安定して荷重をかけることができる。また、弾性部材181が外部からの振動や衝撃を吸収することができるため、モータ1の耐衝撃性や耐振動性が向上される。下スペーサ18が弾性を有する場合には、弾性部材181を削除することができる。また、下スペーサ18が摺動性を有する場合には、下摺動部材182を削除することができる。下摺動部材182は、下軸受部材16と常時接触する必要はなく、シャフト21が下方に移動しようとした際に、接触するような構成でも良い。
【0026】
本実施形態においては、下軸受部材16は、回転体であるシャフト21に常時弾性的に押されているため、軸受剛性が高くなる。これにより、モータ1の耐衝撃性や耐振動性が向上される。
【0027】
図3は、ブッシュ31を示すモータ1の部分拡大断面図である。ブッシュ31は、中心軸J1を中心として、中央にシャフト21が貫通される略円筒状である。ブッシュ31は、軸方向下端に、固定部311を有する。固定部311は、下軸受保持部133よりも径方向外方において、ハウジング120に対して固定される。より具体的には、固定部311は、凹部134の上面側に接触する状態で固定される。すなわち、固定部311は、底部132に固定される。但し、固定部311は、凹部134の下面側で固定されてもよい。固定方法は、ビス締めやかしめによる固定などの一般的な方法であればよい。また、固定部311は、下リテーナ1331よりも径方向外方において底部132に固定される。つまり、本実施形態において、下リテーナ1331と固定部311とは、離間して配置されており、接触していない。
【0028】
凹部134が構成されることにより底部132の周方向、径方向の断面二次モーメントが高くなる。本実施形態においては、凹部134よりも径方向外方の領域は、径方向に広がる平面状であり、凹部134の径方向の幅よりも大きい。よって、底部132における断面二次モーメントは、凹部134よりも径方向外方の領域に比べて凹部134の方が高くなる。つまり、固定部311が凹部134に固定されることにより、固定部311が底部132に固定される強度が高くなる。外部からモータ1に衝撃を与えた場合、ステータ32の自重により、ブッシュ31に衝撃が伝播される。伝播された衝撃は、ブッシュ31を通じて、底部132に伝播される。しかし、上記で示す通り固定部311と底部132との固定強度が高くなっているため、底部132は、変形しにくい。よって、下軸受保持部133は、変形しにくい。これにより、下軸受部材16は、保持精度の悪化等の影響を受けにくい。また、ステータ32に生ずる励磁振動は、ブッシュ31を介して底部132に伝播されるため、下軸受保持部133に伝播されにくい。これにより、ステータ32に生ずる励磁振動は、下軸受部材16に伝播されにくい。
【0029】
ブッシュ31は、ステータ32が保持される小径部312を有する。本実施形態においては、小径部312の外周面に対してステータ32の内周面が圧入固定される。ブッシュ31は、小径部312の軸方向下側から径方向外側に伸び、小径部312と固定部311とを接続する接続部313を有する。つまり、固定部311は、ステータ32が保持される小径部312よりも径方向外方に位置することが可能である。接続部313は、回路基板33を支持する支持部3121を有する。モータ1に衝撃が加わった際に、ステータ32の自重によってブッシュ31に対して与えられる衝撃荷重の作用点が小径部312となる。小径部312に与えられる衝撃荷重は、接続部313を通じて固定部311に伝播される。ここで、理論的には、固定部311の中央である中心軸J1と、固定部311が固定される凹部134の上面を含む中心軸J1に垂直な平面と、の交点Pを中心に中心軸J1が倒れる方向のトルクが生ずる。このトルクは、固定部311に生ずるモーメント荷重の総和により相殺される。つまり、固定部311に生ずるモーメント荷重は、交点Pと固定部311との距離で割ることで、固定部311に生ずる荷重となる。上記構成により、交点Pと固定部311との距離を長くすることが可能であるため、固定部311に生ずる荷重を小さくすることができる。よって、底部132の変形量が低減され、下軸受保持部133への影響を低減できる。また、上記構成によりブッシュ31の剛性が高くなっており、外部衝撃によるブッシュ31の弾性変形が小さくなる。そのため、回路基板33の保持精度は悪化しにくい。回路基板33には、回転部111の回転位置をセンシングするホールセンサが実装されている。回路基板33の保持精度が悪化すると、回転部の111の回転精度も悪化する。
【0030】
小径部312の内周面の内径は、下軸受部材16の最外端の外径よりも小さい。これにより、小径部312の外周面の外径を小さくすることができる。そのため、モータ1に外部から衝撃が加えられた場合において、ステータ32の自重によってブッシュ31に対して与えられる交点Pを中心したトルクを小さくすることができる。
【0031】
固定部311の径方向内側のエッジ3111は、下軸受保持部133の径方向外側のエッジ1332よりも径方向外方に位置する。これにより、固定部311を可能な限り径方向外方で底部132に対して固定できる。また、万が一、モータ1に外部から衝撃が加わり、底部132に弾性変形が及んだとしても、下軸受保持部133に弾性変形が及びにくい。
【0032】
凹部134の上端面は中心軸J1に略垂直になる平面部1341を有している。固定部311は、平面部1341の径方向中央よりも径方向外側に固定される。また、下リテーナ1331は、平面部1341の径方向中央よりも径方向内側に固定される。
【0033】
図1のとおり、回路基板33は、ハウジング120に収容され、ロータマグネット23の軸方向下側に位置する。また、回路基板33は、ロータマグネット23に軸方向に対向するホール素子41を備えている。ホール素子41は、モータ1の駆動中にロータマグネット23の回転位置を検出する。ところで、本実施形態では、ロータマグネット23には、ネオジムマグネットに比べて磁力の小さいフェライトマグネットを用いる。このために、ホール素子41は、ロータマグネット23からの磁気信号を読み取りにくく、ロータマグネット23の回転位置検出精度が悪化する虞がある。回転位置検出精度が悪化しないようにするためには、ホール素子41とロータマグネット23との距離をできるだけ近づける必要がある。
【0034】
図1を参照して、コイル322の軸方向下端は、ロータマグネット23の軸方向下端よりも軸方向上側に位置している。したがって、コイル322が回路基板33に接触することを配慮せずに、ロータマグネット23を回路基板33に近づけることができる。これにより、ロータマグネット23の回転位置検出精度を維持できる。
【0035】
また、
図1において、ロータマグネット23の軸方向高さの中心は、ステータコア321の軸方向高さの中心よりも軸方向上方にある。つまり、ロータマグネット23の磁気中心と、ステータコア321の磁気中心がずれており、ロータマグネット23の磁気中心は、ステータコア321の磁気中心に引っ張られる。したがって、ロータマグネット23は回路基板33側に引っ張られる。したがって、ホール素子41とロータマグネット23との距離を近づけることができ、回転位置検出精度を維持できる。
【0036】
また、ロータマグネット23の軸方向下端のほうが、ロータホルダ22の軸方向下端よりも軸方向下側に位置する。したがって、ロータホルダ22の軸方向下端が回路基板33に接触することを配慮せずに、ロータマグネット23を回路基板33に近づけることができる。その結果、ロータマグネット23の回転位置検出精度を維持できる。
【0037】
ここで、回路基板33は片面実装基板である。したがって、両面実装基板に比べてコストが低減できる。また、回路基板33の実装面は、軸方向下側に向いている面である。また、ホール素子41の軸方向上側の面は、回路基板33の軸方向上側の面よりも軸方向下側、あるいは、軸方向において同じ高さに位置する。したがって、ロータマグネット23がホール素子41に接触することを配慮せずに、ロータマグネット23を回路基板33に近づけることができる。
【0038】
図2において、モータ1の中心軸J1が水平方向に伸びているときには、上軸受部材15の下面と略円環状の上摺動部材172との間には隙間がある。下軸受部材16の上面と、下摺動部材182とは接触している。また、シャフト21に対して上スペーサ17および下スペーサ18は圧入されている。以上の構成により、上軸受部材15と下軸受部材16との間にある部材の組付精度が悪くても、上軸受部材15の下面と上摺動部材172とが干渉しあって軸損が生じることを防止できる。
ところで、上述したように、ロータマグネット23には常に回路基板33側から離れないような力がかかっているため、下軸受部材16の上面と略円環状の下摺動部材182とは接触している。したがって、モータ1の中心軸J1が水平方向に伸びているときに、シャフト21に外力がかかった場合は、シャフト21は軸方向においてインペラ20が固定されている方向にのみ移動可能である。つまり、回転部111の自重を無視できる際には、シャフト21は軸方向上側にのみ移動可能である。
ここで、シャフト21の軸方向において、インペラ20が固定されている方向にのみ移動可能な距離は、ロータマグネット23と回路基板33との距離よりも小さい。したがって、シャフト21に外力がかかったとしても、ロータマグネット23と回路基板33との距離は小さく維持できる。
【0039】
(第2の実施形態)
図4は、本発明の例示的な第2の実施形態に係るモータ1aの断面図である。第2の実施形態は、第1の実施形態に対してブッシュ31aの形状及びハウジング120aに対するブッシュ31aの固定方法が異なっている。固定部311aが接続部312aから、径方向外方に向かって伸びている。ブッシュ31aの外周面は、下側ハウジング13aの円筒部131aに接触している。固定部311aは、径方向外端において軸方向に突出する突出部311bを有している。モータ1aでは、上側ハウジング12aの円筒部121aの下端部が、下側ハウジング13aの円筒部131aの上端部に固定される。この構成により、ハウジング120aが構成される。この際、円筒部121aと円筒部131aとでロータホルダ22を径方向外方から覆う側壁部1201aが構成される。つまり、側壁部1201aは、蓋部122aと底部132aとを繋いでいる。固定部311aは、接続部312aから径方向外方に向かって伸びている。固定部311aは、径方向外端において軸方向に突出する突出部311bを有する。突出部311bは、側壁部1201aに固定される。突出部311bは、中心軸を中心とする環状である。突出部311bの外周面は、中心軸に垂直であり、円筒部131aと接触することによって、円筒部131aに対するブッシュ31aの垂直度を小さくすることができる。これにより、ステータ321とロータマグネット23との同軸度を小さくすることができる。
【0040】
また、下側ハウジング13aは、底部132aと円筒部131aとの間において、底部132aから軸方向上方に向かって突出する固定部311aの下面と接触する固定部座部132bを有している。固定部座部132bは、下側ハウジング13aをプレス加工にて形成する際に、一連のプレス工程にて形成される。本実施形態においては、固定部座部132bは、周方向に配列されているが、周方向に繋がった環状でも良い。また、固定部座部132bは、別部材として形成されても良い。固定部座部132bに固定部311aの下面が接触することにより、ブッシュ31aの軸方向の位置が定められる。すなわち、ハウジング120aは、底部132aと側壁部1201aとの間において、底部132aから軸方向上方に向かって突出する固定部座部132bを有する。固定部311aの下面は、固定部座部132bに接触する。そのため、モータ1aに外部から衝撃が加わったとしても、円筒部131aに対して突出部311bの位置が移動しにくい。また、組立工程において、円筒部131aにブッシュ31aを圧入しつつ、固定部311aの下面が固定部座部132bに接触するまで押すことで軸方向の位置決めがなされる。
【0041】
(第3の実施形態)
図5は、本発明の例示的な第3の実施形態に係るモータ1bの断面図である。第3の実施形態は、第1の実施形態に対して、下リテーナ1331bの配置が異なっている。下リテーナ1331bは、リテーナ環状部1333と、リテーナ環状部1333から径方向内方に延伸する複数の押圧部1334とを有する。複数の押圧部1334の径方向内端部は、下軸受部材16bに接する。下リテーナ1331bは、ブッシュ31bに接触する。以下の説明において、ブッシュ31bに接触する下リテーナ1331bにおける最も径方向内側に位置する部分を接触部1335とする。すなわち、下リテーナ1331bは、接触部1335を有する。下リテーナ1331bは、ブッシュ31bによって押圧される。このとき、押圧部1334の径方向内端部によって、下軸受部材16bの外周面は、下軸受保持部133b側に押される。すなわち、弾性を有する下リテーナ1331bは、ブッシュ31bに接触し、下リテーナ1331bの径方向内端によって、下軸受部材16bの外周面は、下軸受保持部133b側に押される。下リテーナ1331bの内端よりも径方向内方において下軸受部材16bの上端面は、露出している。また、リテーナ環状部1333は、接続部313bを上方に向かう力で押す。リテーナ環状部1333の径方向外端は、接触部1335よりも径方向外側に位置するため、剛性が高い。その結果、リテーナ環状部1333は、接続部313bを上方に向かう力で押すことが出来る。
図5においては、リテーナ環状部1333は、接続部313bの下面に接し、かつ固定部311cの径方向内側に位置している。これは、ハウジングから伝わる振動を、リテーナが軸受部材に伝わることを防止することができ、軸受部材の高寿命化させることができる。なお、接触部1335は、押圧部1334に位置してもよい。この場合においてもリテーナ環状部1333の径方向外端は、接触部1335よりも径方向外側に位置する。よって、リテーナ環状部1333は、接続部313bを上方に向かう力で押すことが出来る。
【0042】
図5において、ブッシュ31bと、下側ハウジング13bとは、ビスによって固定されている。なお、別の実施形態では、下リテーナ1331bは、ブッシュ31bと下側ハウジング13bとの間に介在し、下リテーナ1331bをビスが貫通することにより、下リテーナ1331bとブッシュ31bとが固定されてもよい。また、下リテーナ1331bは、ブッシュ31bと下側ハウジング13bとの間に介在する。また、下リテーナ1331bは、ブッシュ31bと下側ハウジング13bとにより挟まれて固定されてもよい。すなわち、リテーナ環状部1333は、固定部311cに接触してもよい。少なくとも、接触部1335は、固定部311cよりも径方向内側に位置するか、又は径方向において重なり、ブッシュ31bの下面と接触している。
【0043】
ブッシュ31bは、接続部313bの下面と固定部311cの内周面とをつなぐ、案内部314を備える。案内部314の内周面の一部と下リテーナ1331bの外周面の一部とは、少なくとも接触している。
図5において、案内部314の内周面は、下方に向かい拡径するテーパ形状である。このとき、下リテーナ1331bは、ブッシュ31bの接続部313bの下面に接触していなくてもよい。このとき、リテーナ環状部1333の径方向外端と、案内部314とは接触する。なお、案内部314はテーパ状であることが望ましい。これにより、下リテーナ1331bおよびブッシュ31bを下側ハウジング13bに固定する際に、下リテーナ1331bの径方向の位置を中心軸J1が中心となるように案内することができる。
【0044】
また、案内部314は、固定部311cの内周面の径より小さい円筒状であってもよい。なお、案内部314は、かしめ部を有し、下リテーナ1331bは、接続部313bの下面に接し、かしめ固定されてもよい。このとき、案内部314は、下リテーナ1331bの径方向へのがたつきを低減することができる。
【0045】
モータ1、1a、1bは、主に扇風機や換気扇等の送風機に用いられることが好ましい。
図6は、モータ1を扇風機に用いた断面図である。
図6を参照して、ロータホルダ22の円筒部222は、ロータ蓋部221の径方向外端から軸方向下方に向けて延伸している。シャフト21は、蓋部122より軸方向上方に突出し、先端にインペラ取付部19を備えている。インペラ取付部19には、インペラ20が固定される。つまり、インペラ20は、蓋部122の軸方向上側において、シャフト21に固定される。
【0046】
シャフト21が回転すると、それに伴いインペラ20が回転し、軸方向下側から軸方向上側へ向かう空気流を発生する。これにより、空気流が発生することに伴い、インペラ20に揚力が発生する。その結果、シャフト21に対して、軸方向下向きの反力が発生する。これにより、インペラ20の回転時において、シャフト21は軸方向下向きに押し付けられる。その結果、ホール素子41とロータマグネット23との距離を近づけることができ、回転位置検出精度を維持できる。
【0047】
図7は、モータ1を用いた扇風機51の断面図である。扇風機51は、基部511と、柱部512と本体部513とを有する。基部511は平板状であり、柱部512および本体部513を支持する。柱部512は基部511と本体部513とを連結する柱状の部位である。本体部513は、柱部512に支持され、前述したモータ1と、インペラ20と、フィンガーガード201と、首振り機構202と、筐体部205と、を有する。フィンガーガード201は、柱部512と連結されている。フィンガーガード201はインペラ20を覆う籠状、または網状の部材である。
本体部513において、モータ1のハウジング120は、フィンガーガード201に固定されている。ハウジング120の蓋部122は、第一ビス125の取り付け穴127を備えている。取り付け穴127に挿入されたビス125によって、ハウジング120の蓋部122がフィンガーガード201に固定され、ハウジング120全体がフィンガーガード201に固定される。
ところで、フィンガーガード201はハウジング120より径が大きい。ここで、第一ビス125の位置は、ロータホルダ22の円筒部222よりも径方向外側であることが望ましい。モータ1はフィンガーガード201を介して基部511および柱部512に支持されるため、大きな荷重がかかる。そのため、ハウジング120を安定して固定するためには、第一ビス125は大型のものを用いることが多い。第一ビス125をロータホルダ22の円筒部222よりも径方向外側に配置することで、第一ビス125が大型であっても、第一ビス125とロータホルダ22との径方向位置が重ならないので、第一ビス125がロータホルダ22を傷つけることはない。
【0048】
ハウジング120の底部には、首振り機構202が固定されている。首振り機構202には、減速機構203が含まれる。シャフト21の後ろ側には、ギア等の出力伝達機構が配置され、シャフト21の出力を減速機構203に伝える。減速機構203により減速されたシャフト21の出力により首振り機構202が作動する。首振り機構202が作動することにより、基部511に対して本体部513が中心軸を含む平面上において回転運動、または往復運動する。本発明の実施形態では、扇風機51の首振りにモータ1の回転を利用しているので、首振り用のモータを別途追加するよりもコストが低減できる。
尚、首振り機構202の固定手段は、第二ビス126である。ここで、首振り機構202固定用の第二ビス126は、フィンガーガード201固定用の第一ビス125に比べて小さくすることができる。首振り機構202の外径のほうが、フィンガーガード201の外径よりも小さいためである。したがって、第二ビス126を小さいものとした場合は、第二ビス126を底部132に挿入しても、ハウジング120内へ突出する部分が少ない。したがって、ハウジング120内のモータ部品を傷つけづらい。
【0049】
上側ハウジング12の円筒部121には、スタッド棒42が固定されている。扇風機51の本体部513は、スタッド棒42を中心に首振りする。また、スタッド棒42の位置は、モータ1と首振り機構202とフィンガーガード201を含めた構成における、重心の位置に近い。したがって、扇風機51の本体部513が首振りしてもスタッド棒42は安定してモータ1を支持できる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。モータ1では、上軸受部材15および下軸受部材16の外周面が中心軸J1と平行な円筒状でも良い。ブッシュ31、31aは、実施形態においては、切削加工または、鋳造で形成されるが、プレス加工で形成しても良い。底部132は、凹部134を有さず、中心軸J1に垂直な平面状でも良い。
また、ステータ32は、ブッシュ31、31aに固定されていなくても、直接ハウジング120に固定されていてもよい。つまり、ステータ32は、ハウジング120に直接的または間接的に固定されロータマグネット23の径方向内側に位置していればよい。
また、
図8のとおり、上軸受部材15cおよび下軸受部材16cは、ボールベアリングであってもよい。ボールベアリングの場合も、モータ1cの中心軸が水平方向に伸びているときに、シャフト21cに外力がかかった場合は、シャフト21cは軸方向においてインペラ20cが固定されている方向にのみ移動可能である。
図8を参照して、シャフト21cに外力がかかった場合は、下軸受部材16cの内輪の軸方向下端に予圧ばね161cが作用して、シャフト21cがインペラ20cが固定されている方向に移動する。
【0051】
<4.上記の実施形態から抽出される他の発明>
「磁気特性が低いマグネットを使用することで、モータの価格を低減しつつ、界磁用マグネットの回転位置検出精度を維持できる扇風機を提供すること」を第1の課題として設定すれば、発明の主題を例えば「扇風機」とし、「ブッシュ」を必須要件とせず、それに代えて、「インペラ」を必須要件とする発明を、上記の実施形態から抽出することができる。当該発明は、例えば、扇風機であって、モータと、インペラとを備える。前記インペラは、前記モータの中心軸を中心として回転するシャフトに固定される。また、前記インペラは、前記モータの回転により前記モータの軸方向下側から軸方向上側に向かって空気流を発生させる。前記モータは、軸受と、静止部と、前記シャフトを含む回転部と、を備える。前記軸受は、前記シャフトを回転可能に支持する。前記回転部は、前記シャフトに固定される。また前記回転部は、軸方向下側に開口する有蓋円筒状のロータホルダと、前記ロータホルダの円筒部の内側に固定されるロータマグネットとを備える。前記静止部は、ハウジングとステータと回路基板とを有する。前記ハウジングは、蓋部と、底部と、側壁部とを有する。前記蓋部は、前記ロータホルダの軸方向上方において前記中心軸を中心とする貫通孔を有し、前記貫通孔から径方向外方に広がる板状である。前記底部は、前記ロータホルダの軸方向下方において前記中心軸を中心とする貫通孔を有し、前記貫通孔から径方向外方に広がる板状である。前記側壁部は、前記蓋部と前記底部とを繋ぎ、前記ロータホルダを径方向外方から覆う。前記ステータは、前記ハウジングに直接的または間接的に固定され前記ロータマグネットの径方向内側に位置する。前記回路基板は、前記ハウジングに収容され、前記ロータマグネットの軸方向下側に位置する。前記回路基板は、ホール素子を備える。前記扇風機の特徴は、以下の通りである。前記軸受は、前記ハウジングの蓋部側と、底部側とにそれぞれ配置される。前記インペラは、前記蓋部の軸方向上側において、前記シャフトに固定される。前記シャフトは、軸方向においてインペラが固定されている方向にのみ移動可能に前記軸受に支持されている。
【0052】
上記実施形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。