(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277478
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】車両の車輪監視システムの通信装置および通信方法
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20180205BHJP
G08C 17/00 20060101ALI20180205BHJP
【FI】
B60C23/04 N
G08C17/00 B
【請求項の数】9
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-130900(P2013-130900)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2014-4995(P2014-4995A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2016年5月27日
(31)【優先権主張番号】1255960
(32)【優先日】2012年6月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】513156777
【氏名又は名称】エルディーエル テクノロジー エスエーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ブラック マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ルフォール フィリップ
【審査官】
高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−154193(JP,A)
【文献】
特開2008−011385(JP,A)
【文献】
特表2009−535699(JP,A)
【文献】
特開2005−300227(JP,A)
【文献】
特開2006−125892(JP,A)
【文献】
特開2004−069360(JP,A)
【文献】
特表2015−525171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/04
G01L 17/00
G08C 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(C)の車輪監視システムの通信装置であって,車輪(R)は、電子チップ(200)を埋め込んだタイヤを装備し、前記タイヤは、タイヤのベルトである金属構造(S)を有する装置において、
前記車両(C)の前記車輪(R)内に収容された電子モジュール(110)を備え、
前記電子モジュール(110)は、既定の周波数範囲で電波(O)を発信して、前記電波を前記金属構造(S)に反射させ、
前記チップが前記モジュール(110)に対してどのような位置であっても前記電波(O)が前記チップ(200)に到達して、書き込みおよび/または読み出しのためにデータを作動および/または送信することを目的に、前記モジュール(110)が前記チップ(200)と連絡できるようにする
ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記周波数範囲は、100MHzを超える範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記チップ(200)は、前記チップが埋め込まれた前記タイヤの動的測定を実施することを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記チップ(200)は、無線タグであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記車両(C)のシャシに取り付けられた無線周波数受信器(120)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記モジュール(110)は、100MHzを超える範囲の電波を発信・受信する手段、低周波数範囲の電波を発信・受信する手段を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記モジュール(110)は、等方性アンテナを装備していることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記チップが前記シャシに取り付けられた前記無線周波数受信器(120)と通信するように、前記電子モジュール(110)を介して前記チップ(200)を作動させることからなることを特徴とする、請求項5に記載の装置の通信方法。
【請求項9】
ユーザが利用する携帯型モジュール(160)を搭載したタイプの請求項1に記載の装置の通信方法であって、ユーザの制御により、前記携帯型モジュール(160)を介して車輪の前記電子モジュール(110)に信号を送らせて、識別子を発信する前記チップ(200)を作動する電波を発信するよう命令することからなることを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車輪の監視分野に関し、とりわけ前記システムを構成する様々な機能的サブアンサンブル同士の通信を改良できる適応方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、機器で読み出すことのできる単一のメモリを内蔵する電子チップを、ゴム自体の中に受け入れるタイヤが存在する。これらのチップは、データを格納できるだけでなく、データに問い合わせがあった際にこのデータを返すこともできる。タイヤメーカーにとっての利点は、タイヤのトレーサビリティを確保できること、タイヤの再生、整備実施日を特定できること、および模造タイヤの使用をさらによく監視しようと試みることができることである。
【0003】
これらのチップの利用に関連する問題は、メンテナンス作業の過程で、あるリムから別のリムへ移されることのあるこれらのタイヤの追跡および位置特定にあるだけでなく、使用中の車両に装備された車輪の位置特定にもある。実際、タイヤの摩耗は、特に重量車ではすべてが同じようにはならず、車輪に割り当てられた車両上の位置によって異なる。
【0004】
現時点では、このような欠点を解消するために、車輪の通路近辺にある車両のシャシに巻き付けて設置されたアンテナ(一般に125Khz前後の低周波数を利用)を備える通信装置が存在し、これらのアンテナは、このアンテナを操作できる車載電子機器に接続されている。これらのアンテナは、タイヤに組み込まれた電子チップに問い合わせ、電子チップは、問題のタイヤに関するデータを送信して応答する。すると、タイヤは、識別され、この例では位置を特定されるが、これには、車両に設置するにはコストがかかる上に重い完全な電子装置があることが必須であり、車輪の通路に曝露されているアンテナの脆弱性は考慮されていない。さらに、(電池から給電されない)いわゆる受動のチップを主力とするこのシステムは、タイヤを一周するアンテナを備えて、車輪が回転する間は360度の角度を範囲に含め、シャシに固定されたアンテナと常に通信できるようにする必要がある。
【0005】
そのため、この対策は、車輪ごとに1つのアンテナを必要とし、設置が複雑で脆弱なこの用途に特化した車載コンピュータを必要とするため、コストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この事実に基づき、本出願者は、先行技術の問題を解消できる通信方法を提供することに焦点を当てて研究した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この研究の結果、車両の車輪監視システムの通信装置であって、前記車輪は電子チップを有するタイヤを装備し、前記タイヤは金属構造を有する装置において、車両の車輪内に収容された電子モジュールを備え、前記電子モジュールは、既定の周波数範囲で電波を発信して、前記電波を金属構造に反射させ、チップがモジュールに対してどのような位置であっても前記電波が前記チップに到達して、書き込みおよび/または読み出しのためにデータを作動および/または送信することを目的に、モジュールがチップと連絡できるようにすることが傑出している、装置の構想に至った。
【0008】
この特徴により、例えばチップの識別子のような、前記チップから出されるタイヤのパラメータを、リアルタイムかつ移動中に読み出せるようになる。この通信は、目標物の方へ直接届かない電波が、電波の性質により反射して受信されるという事実により可能になる。この多経路の反射を介した送信方式により、タイヤ内部の圧力および/または温度のパラメータを測定する目的で、最初に車輪に装備する前記チップと前記モジュールとの間の距離を最大限短縮することに焦点を当てた面倒な作業をなくすことができ、この種のピアリングは、例えば重量車の車輪の場合は、決して単純ではない。したがって、この特徴により、発信器と受信器のアンテナのサイズを縮小でき、これによって製造コストを下げることができる。
【0009】
もう1つの利点は、タイヤの履歴を追跡できること、走行時間を把握できること、使用済みタイヤのリファレンス番号を把握できること、およびタイヤの製造元を証明できること、などである。
【0010】
タイヤの構造を使用することで、電波の反射が確保されるだけでなく、電波を閉じ込めて外部からのあらゆる妨害が回避される。
【0011】
したがって、もう1つの特徴によれば、前記周波数範囲は、100MHzを超える範囲であり、この周波数範囲は、他の用途ではタイヤの外部で使用できる範囲だが、電波の伝搬領域が閉じ込められているために妨害されることのない範囲である。
【0012】
本発明の特に有利なもう1つの特徴によれば、前記チップは、このチップが埋め込まれたタイヤの動的測定を実施する。そのため、モジュールに送信されるメッセージは、測定された摩耗に関連するパラメータを含んでいる。もう1つの特徴によれば、前記チップは、無線タグである。
【0013】
車輪監視システムの一部を成しているような車輪に装備されているモジュールに、電波を発信・受信する追加の可能性を付与することで、本発明の装置により、パラレル通信網を必要とせずに先行技術の課題に応えることができる。
【0014】
上記の特徴の全体または一部を基にして、複数の通信方法が考案された。したがって、本発明のもう1つの目的は、前記装置の動作方法である。特に有利な特徴によれば、車両のシャシに取り付けられた無線周波数受信器を備える装置に基づく前記通信方法は、電子モジュールを介して前記チップを作動させて、チップがシャシに取り付けられた無線周波数受信器と通信するようにすることからなる。電子モジュールは、チップに光を当て、前記チップが発信した信号を検波するのは、シャシに取り付けられた受信器である。そのため、電子モジュールは、チップが発信した信号の読み出し手段を装備しておらず、これによって、設置コストが軽減される。
【0015】
特に有利なもう1つの特徴によれば、ユーザが利用する携帯型問い合わせ電子モジュールを搭載したタイプの装置の通信方法は、ユーザの制御により、携帯型モジュールを介して車輪の電子モジュールに信号を送らせて、識別子を発信するチップを作動させる電波を発信するよう命令することからなる点が傑出している。この識別子は、上記の方法によれば、前記受信モジュールに送信されてよい。このような方法であれば、この送信が自発的なものになり、タイヤまたは車輪の生涯に起こるイベントに左右される発信戦略は必要ない。
【0016】
以上に最も初歩的な形で明らかにした本発明の基本概念、その他の詳細および特徴は、本発明に係る装置の実施形態を非限定的な例として挙げた以下の説明文を読み、添付の図面を参照することでさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】タイヤ圧監視装置およびRFIDタグを装備したタイヤを装備したトラックの概略図である。
【
図1a】
図1のトラックの様々な発信・受信サブアンサンブル間で起こり得る通信を示す図である。
【
図2】モジュールおよびチップを装備した車輪の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1および
図1aに示したように、車両Cには、計測モジュール110で構成されるタイヤ圧監視装置が装備され、この計測モジュールは、各車輪Rに固定され、車両Cのシャシに固定された受信部120と通信し、この受信部は、中央受信部130と通信する。この中央受信部130は、無線または有線でコンピュータ141、リレーアンテナ142、またはGSM、GPSなどのタイプのネットワーク150を有するあらゆる接続手段と通信することができる。
【0019】
図2に示したように、車輪Rは、チップまたはRFIDタグ200タイプの識別子を担持するタイヤを受け入れる。好適だが非限定的な実施形態によれば、計測モジュール110は、リムに固定され、チップ200は、タイヤの側面を構成するゴム厚の中に埋め込まれる。計測モジュールに対するチップ200の位置は、本発明の装置ではそれほど重要ではない。計測モジュールは、タイヤに接着されてもよいし、リムにくくり付けられてもよいし、あるいはバルブに固定されてもよい。
【0020】
図3に示したように、第1の通信方法によれば、チップ200の識別子に関連する識別子および/またはデータ(例えば摩耗の測定値)が計測モジュール110の通信フレーム内で送信されるように、本発明の装置は、一連の発信O1、O2、O3で表記した通信を介して受信モジュール120に格納または送信することを目的に、識別子および/またはタイヤの識別子に関連するデータを計測モジュール110に送信することを提供する。本発明によれば、モジュール110の作動および/またはチップ200との通信は、タイヤの金属構造S(
図2を参照)に反射する電波を介して実現される。
【0021】
このようにするために、前記モジュール110は、チップ200と通信するための100MHzを超える範囲の電波を発信・受信する手段、および受信モジュール120または130と通信するための低周波数範囲の電波を発信・受信手段を備える。さらに、電波があらゆる方向に確実に発信・受信されるようにするため、前記モジュールは、等方性アンテナを装備している。
【0022】
通信方法のもう1つの実施形態によれば、電子モジュール110は、O1で表記した電波を介して前記チップを作動させ(よってこの電波は作動用電波でしかない)、このチップが、車両のシャシに取り付けられた無線周波数受信器120と通信するようにする(電波O4)。そのため、車輪のモジュール120は、もはや検波器を装備する必要がない。
【0023】
最初の2つを始動させることができる通信方法のもう1つの実施形態によれば、携帯型問い合わせモジュール160が、ユーザの制御により、信号(O5)を車輪の電子モジュール110に送り、識別子を発信する(O2またはO4)チップを作動させる電波(O1)を発信するよう命令する。
【0024】
以上に記載し、図示した装置および方法は、限定ではなく開示を目的とするものであることがわかる。当然ながら、上記の例には、本発明の範囲を逸脱しないかぎり、様々な調整、修正および改良を加えてよい。