特許第6277514号(P6277514)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277514
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】ディスクブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/18 20060101AFI20180205BHJP
   B60T 13/38 20060101ALI20180205BHJP
   F16D 121/10 20120101ALN20180205BHJP
   F16D 125/04 20120101ALN20180205BHJP
   F16D 125/06 20120101ALN20180205BHJP
   F16D 125/28 20120101ALN20180205BHJP
   F16D 125/64 20120101ALN20180205BHJP
   F16D 127/02 20120101ALN20180205BHJP
【FI】
   F16D65/18
   B60T13/38
   F16D121:10
   F16D125:04
   F16D125:06 A
   F16D125:28
   F16D125:64
   F16D127:02
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-267828(P2013-267828)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-124794(P2015-124794A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100152261
【弁理士】
【氏名又は名称】出口 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和宏
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05076401(US,A)
【文献】 特開2010−064569(JP,A)
【文献】 特開平07−054885(JP,A)
【文献】 特表2012−527582(JP,A)
【文献】 特開2010−116935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/18
B60T 13/38
F16D 121/10
F16D 125/04
F16D 125/06
F16D 125/28
F16D 125/64
F16D 127/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリパボディに形成されたシリンダ内に配置されたピストンが作動ばねからの押圧力を受けることにより、一方の端面を介してブレーキパッドを押圧するディスクブレーキ装置において、
回転力の入力により、前記ピストンに対する前記押圧力を解放する反力を発生させて前記ピストンを押し戻すと共に、前記回転力の入力が解除された際に前記押圧力を受けて初期位置に押し戻らせるカム部を有するカムシャフトの軸心が、前記キャリパボディにおけるブリッジ部の延長線上に位置する背肉部の範囲を避けて配置されていることを特徴とするディスクブレーキ装置。
【請求項2】
前記軸心は、少なくとも前記カムシャフトの一部が前記シリンダの中心を通り、かつ前記背肉部の配置面と前記ブレーキパッドの配置面の双方に平行となるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ装置に係り、特に、ネガティブタイプと呼ばれる非作動時に制動力を生じさせるタイプのディスクブレーキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来ネガティブタイプのディスクブレーキ装置では、押圧力を生じさせる動力源として、ばね機構(作動ばね)が採用されており、その解放機構としては、油圧機構が採用されていた(特許文献1)。これに対し、本願出願人は、解放機構として機械的な力を利用することを思案し、特許文献2に開示されているようなカム機構を、押圧力を解放する機構として採用することを試み、特許文献3に開示しているディスクブレーキ装置を考案した。なお、特許文献2に開示されているカム機構は、制動力を生じさせるための機構である。
【0003】
特許文献3に開示しているディスクブレーキ装置は、ボディ本体と爪部、および両者を連結するブリッジ部から成る小型のフローティングキャリパを備えた装置である。当該ディスクブレーキ装置では、ブリッジ部の延長線上におけるボディ本体に、カム機構を作動させるためのカムシャフトを突出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭52−113187号公報
【特許文献2】特開2011−27132号公報
【特許文献3】特願2013−110246号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に開示したようなカム機構により作動ばねの押圧力を解放させるディスクブレーキ装置は、小型化や付帯設備の簡易化、メンテナンス性の向上等、種々の好適な効果をもたらした。
【0006】
しかし、特許文献3に開示したような構成のディスクブレーキ装置では、ブリッジ部の延長線上に位置する背肉部に、カムシャフトを突出させるための貫通孔を設けているため、キャリパボディの剛性が低下するといった新たな課題が生じることとなった。
【0007】
具体的には、図7に示すように、背肉部には、爪部の反力が作用するため、当該部分の剛性が低下すると、ロータの軸方向に力が付与された際に、ボディ本体と爪部との間に生ずる開きが大きくなってしまう可能性がある。
【0008】
キャリパボディの構成を特許文献2に開示されているディスクブレーキ装置のように、ブリッジ部を複数(特許文献2では、ロータの回入側と回出側の2か所)設ける構成とすれば、背肉部に貫通孔を設けた場合であっても、キャリパボディの剛性を保つことができると考えられる。しかし、この場合には、キャリパボディの大型化が懸念される。
【0009】
そこで本発明では、作動ばねにより生ずる押圧力を解放する機構としてカム機構を採用した場合であっても、キャリパボディを小型としつつ、ロータの軸方向に対する力への剛性を低下させることのないディスクブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係るディスクブレーキ装置は、キャリパボディに形成されたシリンダ内に配置されたピストンが作動ばねからの押圧力を受けることにより、一方の端面を介してブレーキパッドを押圧するディスクブレーキ装置において、回転力の入力により、前記ピストンに対する前記押圧力を解放する反力を発生させて前記ピストンを押し戻すと共に、前記回転力の入力が解除された際に前記押圧力を受けて初期位置に押し戻らせるカム部を有するカムシャフトの軸心が、前記キャリパボディにおけるブリッジ部の延長線上に位置する背肉部の範囲を避けて配置されていることを特徴とする。
【0011】
また、上記特徴を有するディスクブレーキ装置において前記軸心は、少なくとも前記カムシャフトの一部が前記シリンダの中心を通り、かつ前記背肉部の配置面と前記ブレーキパッドの配置面の双方に平行となるように配置されている構成とすることが望ましい。
【0012】
このような構成とすることによれば、爪部からの反力に対する影響がほとんどなくなる。また、ロータの回入側と回出側における重量バランスを良好に保つことができる。
【発明の効果】
【0013】
上記のような特徴を有するディスクブレーキ装置によれば、作動ばねにより生ずる押圧力を解放する機構としてカム機構を採用した場合であっても、ブリッジ部を一か所としてキャリパボディを小型化しつつ、ロータの軸方向に対する力への剛性を低下させることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係るディスクブレーキ装置の側面構成を示す図である。
図2図1におけるA−A断面を示す図である。
図3図2におけるB−B断面を示す図である。
図4】カムシャフトとコネクティングロッドとの関係を説明するための部分断面拡大図である。
図5図1におけるA´−A´断面を示すキャリパボディの模式図である。
図6】キャリパボディに加わる力の関係を説明するための模式図である。
図7】背肉部に貫通孔を設けた場合に、ロータの軸方向に対する力が加えられた場合に、背肉部の剛性に影響があることを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のディスクブレーキ装置に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、図1は、第1の実施形態に係るディスクブレーキ装置の側面図であり、図2は、図1におけるA−A断面を示す図である。また、図3は、図2におけるB−B断面を示す図である。さらに、図4は、カムシャフトとコネクティングロッドとの関係を説明するための部分断面拡大図である。
【0016】
本実施形態に係るディスクブレーキ装置10は、キャリパボディ12と、インナパッド60、アウタパッド62、およびエアチャンバ50を有することを基本として構成され、サポート66を介して図示しない固定部に支持される。
【0017】
キャリパボディ12は、ボディ本体14と爪部18、およびブリッジ部16を有することを基本としている。ボディ本体14は、内部にシリンダ20と、ボア22、および軸受け孔24を備える。シリンダ20には、ピストン26が配置され、ボア22には、作動ばね28やガイド30が配置されている。
【0018】
ピストン26は、シリンダ20内を摺動し、一方の端面により、後述する爪部18との間に配置されているインナパッド60を押圧する役割を担う。実施形態に係るピストン26は、押圧方向と直交する方向に貫通孔26aを有する。また、ピストン26の他方の端面には、貫通孔26aの側壁に貫通する軸線方向孔26bが形成されている。
【0019】
作動ばね28は、ピストン26をインナパッド60の配置方向(押圧方向)へ押圧する押圧力を生じさせる要素である。作動ばね28の具体的構成としては、皿ばねを挙げることができる。皿ばねは、小さな撓みで大きな荷重をかけることが可能であるため、制動力を生じさせるための押圧力発生手段として好適だからである。なお、皿ばねを採用する場合には、複数枚の皿ばねを表裏互い違いに重ね合わせるように積層配置する構成とすると良い。
【0020】
ボア22におけるシリンダ20との連結側端部と反対側の端部は解放端とし、ここに、作動ばね28の厚みと押圧力を調整するためのスペーサとしてのプラグ32を配置する。このような構成とすることで、作動ばね28の撓みや厚み(皿ばねを採用した場合には、その枚数)等を変更することができ、押圧力の調整が可能となる。なお、本実施形態においてプラグ32は、ボア22の解放端に形成された雌ねじ部に螺合可能な雄ねじ部を有し、これを締め込むことにより位置決めが成される構成とされている。また、プラグ32は、ボア22の解放端を覆うカバーである締結板34により、封止されている。なお、実施形態に係るプラグ32には、中心に貫通孔32aが形成されており、詳細を後述するガイド30におけるアジャスタ31のスライダ31aが摺動可能な構成とされている。
【0021】
ガイド30は、作動ばね28による押圧力をピストン26に伝達すると共に、詳細を後述するカムシャフト36による反力を受ける伝達要素である。実施形態に係るガイド30は、外観上、凸部30aとフランジ部30bを有する。凸部30aは、作動ばね28に皿ばねを採用した場合に、皿ばねに形成されている中心孔の径よりも若干小さな径となるように、その外形形状が形成されている。また、フランジ部30bは、凸部30aの一方の端部で、凸部30aの外形よりも外周側に突出するように形成されており、作動ばね28による押圧力を受ける要素となる。また、ガイド30の一方の端部、すなわちフランジ部30b形成側端部には、底面を半球状に形成した凹部30cが設けられている。
【0022】
また、ガイド30の他方の端部には、雌ねじが形成された凹部が設けられており、当該凹部には、アジャスタ31が螺合可能とされている。アジャスタ31は、作動ばね28の厚みとガイド30の高さを調整する役割を担い、プラグ32と対向する端面にはスライダ31aが突出している。スライダ31aは、プラグ32に形成された貫通孔32aに摺動可能な要素であり、軸線方向におけるガイド30の位置決め作用を担う。
【0023】
このような構成とされるガイド30は、本実施形態では、凸部30aが、積層配置された皿ばね(作動ばね28)の中心孔を貫くように配置する。このような配置形態を採ることで、積層配置した皿ばねがラジアル方向にずれることを防ぐことができる。
【0024】
軸受け孔24には、カムシャフト36が配置される。カムシャフト36は、回転軸36aと、大径部36bを基本として構成されている。実施形態に係るカムシャフト36では、大径部36bを貫くように、回転軸36aが設けられている。また、実施形態に係るカムシャフト36における大径部36bは、図4に示すように、円弧状の底部を有する凹状のカム部36cに、コネクティングロッド42が摺接するように構成されている。このような構成のカム機構では、円弧状の底部の厚みを変化させることにより、回転軸36aの回転に起因して、回転軸36aと直交する方向への力を生じさせることが可能となる。
【0025】
軸受け孔24は、ボディ本体14のシリンダ20の形成方向と直交する方向に配置されている孔である。また、本実施形態に係るディスクブレーキ装置では、軸受け孔24は、キャリパボディ12における背肉部の幅Wの範囲を避けるようにして配置されている。ここで、背肉部とは、ブリッジ部16およびボディ本体14において、ロータの軸方向に作用する力を伝達する部位である。具体的には、爪部18からの反力が伝達される部位であり、図5に示すように、ブリッジ部16、およびブリッジ部16の幅の延長線上に位置するボディ本体14の部位である。背肉部の幅Wの範囲内に軸受け孔24を設けた場合、キャリパボディ12における軸方向に作用する力が伝達される部位の剛性が低下する。このため、制動時に、軸方向の反力が付与されると、キャリパボディ12の撓みが大きくなってしまい、撓みを抑制しようとすると、キャリパボディ12を大きくすることとなる。
【0026】
このため、軸受け孔24は、上記背肉部の幅Wの範囲となる位置を避け、図5に示すAの範囲にカムシャフト36の軸心が位置するように形成する。軸受け孔24の形成範囲をこのような範囲とすることによれば、図6に示すように爪部18からの反力の影響を受け難くすることができる。本実施形態では、少なくともカムシャフト36の一部がシリンダ20の中心を通り、その軸心が、背肉部の配置面およびインナパッド60の配置面の双方と平行となるように、軸受け孔24を形成している。軸受け孔24をこのような配置形態とすることで、最も反力の影響を受け難くすることができるからである。
【0027】
軸受け孔24に配置されるカムシャフト36は、回転軸36aが、ピストン26に形成された貫通孔26aを貫通するように配置される。このような配置形態とすることにより、カムシャフト36は、ピストン26の回り止めとしての役割も担うこととなる。ピストン26が押圧するインナパッド60には、制動時に生ずる偶力により、回転運動が生ずることとなる。このため、制動時にインナパッド60と接触しているピストン26にも、回転方向の力が加えられることとなる。ピストン26が回転すると、シリンダ20とピストン26の間に配置されるブーツやシール、あるいは作動ばね28などに、規定外の力が作用することとなる。よって、ピストン26の回転を抑止することで、これらの要素の破損や不具合を防ぐことができる。
【0028】
また、回転軸36aの一端は、軸受け穴24の開口部から、ボディ本体14の外部に露出し、ボディ本体14の外部から、回動動作の付与が可能な構成とされる。カムシャフト36を構成する大径部36bは、軸受け穴24への配置状態において、ピストン26の貫通孔26aの内部に位置するように配置形成されている。そして、貫通孔26aと大径部36bとの間には、ピストン26が軸線方向へ移動した際に大径部36bと貫通孔26aの内壁面とが接触しないように、隙間が設けられている。
【0029】
なお、軸受け孔24の穴径は、大径部36bを内部に挿入する必要性から、回転軸36aよりも十分に大きくなるように形成されている。このため、軸受け孔24の内壁と回転軸36aとの間には、シャフトホルダ38を介在させることで、カムシャフト36の抜け止めと、ガタツキ防止との双方の効果を発揮させることができる。
【0030】
ピストン26の貫通孔26aに配置されたカムシャフト36の大径部36bのカム部36cと、作動ばね28の押圧力を受けるガイド30の凹部30cとの間には、軸線方向孔26bを介してコネクティングロッド42が配置されている。このような配置構成とすることで、回転軸36aの回動に伴い大径部36bが回動することで、カム部36cとコネクティングロッド42の接触部位が変化する。そして、この作用に伴い、コネクティングロッド42の一部が軸線方向孔26bから押し出され、ガイド30を押し戻す反力を発生させる。これにより、作動ばね28の押圧力が解放され、ロータに対するインナパッド60の付勢力も解放される。このとき、作動ばね28の押圧力は、カムシャフト36の回転軸36aを介して、軸受け穴24の内周壁、すなわちボディ本体14が受けることで、反力の発生が可能となる。
【0031】
ここで、実施形態に係るピストン26は図2に示すように、連結ピン44を介してガイド30と連結されている。このため、コネクティングロッド42によりガイド30が、作動ばね28の配置側へ押し戻されることで、ピストン26も、引き戻されることとなる。これにより、ピストン26によってロータに押し当てられるインナパッド60の引き摺りを防止することもできる。
【0032】
また、カムシャフト36は、コネクティングロッド42の軸心を通る直線Lの延長線上から、回転軸36aの回転中心O1がずれることとなるように配置構成している。このため、カムシャフト36に対する回動力が解除された場合には、コネクティングロッド42が作動ばね28の押圧力をカム部36cに伝達し、カム部36cを所定の初期位置(凹状に形成されたカム部36cの底面の肉厚が薄くなる位置)に押し戻すこととなる。
【0033】
上記のような動作を実現させるためには、カムシャフト36における回転軸36aに、回動力を付与することが可能な構成とする必要がある。このため、カムシャフト36の回転軸36aにおける軸受け孔24からの露出部分には、カムレバー46の一方の端部が取り付けられている。ここで、カムシャフト36とコネクティングロッド42から成るカム機構と、カムレバー46とにより構成される倍力機構は、支点である回転軸36aの中心O1から力点であるピンの中心O3までの距離lと(図1参照)、支点である回転軸36aの中心O1から作用点であるコネクティングロッド42の円弧中心O2までの距離lとの比に基づいて、梃子比(l/l)が定まる。このため、カムレバー46の実効長さlをlよりも長くすることで、小さな作動力により大きな力を得ることができる。よって、大きな荷重を生じさせる作動ばね28の押圧力に対向してガイド30を押し戻す反力を発生させることが可能となる。
【0034】
カムレバー46の他方の端部には、エアチャンバ50により稼動する直動ロッド48が連結されている。エアチャンバ50の稼動により直線的に運動する直動ロッド48をカムレバー46の他方の端部に連結することにより、エアチャンバの稼動によって生ずる直線運動を、カムシャフト36の回転軸36aを回動させる回転運動に変換することができる。なお、カムレバー46を回転運動させる際には、回転角度が小さい場合であっても、その軌跡は、僅かに円弧状となる。このため、カムレバー46と直動ロッド48の連結をクレビス52を介したピン結合とすることで、移動軌跡の相違による歪を吸収することができる。
【0035】
爪部18は、ボディ本体14に対向する反力受けであり、インナパッド60に対向する位置に、アウタパッド62を配置可能に構成されている。実施形態における爪部18には、爪部18の外側面から、アウタパッド62を配置する内側面に向けて、貫通孔18aが設けられている。貫通孔18aには、少なくとも外側面側に、雌ネジ加工が施されている。貫通孔18aには、アジャスタボルト64が配置可能とされており、爪部18の内側面に組付けられるアウタパッド62(実際には、詳細を後述するサポート66により支持される)のロータの軸線方向位置の調整が可能な構成とされている。
【0036】
実施形態に係るディスクブレーキ装置10の押圧力は、作動ばね28の変位によって生ずるものであるため、ピストン26の摺動量(突出量)が小さい。このため、アジャスタボルト64の締め込みにより、パッド摩耗分の隙間を調整することができる。なお、ブリッジ部16は、ボディ本体14と爪部18とを連結する連結部である。
【0037】
上記のような構成のキャリパボディ12は、ロータの軸線方向と並行に配置されたガイドピン68を介して、サポート66に組付けられる。このような構成とすることで、キャリパボディ12は、サポート66を基点として、ロータの軸線方向への摺動が可能となる。なお、インナパッド60、およびアウタパッド62は、サポート66のトルク受け部により、ロータの軸方向への摺動が可能なように支持されている。
【0038】
上記のような構成のディスクブレーキ装置10では、カム機構を構成するカムシャフト36を配置するための軸受け孔24を、キャリパボディ12における背肉部の幅Wの範囲を避けて配置する構成としている。このため、キャリパボディ12を小型なものとしつつ、爪部18からの反力に対する剛性が不足することの無いディスクブレーキ装置10を構成することができる。
【0039】
次に、上記のような構成のディスクブレーキ装置10の作動について説明する。
まず、エアチャンバ50が非稼動な状態では、作動ばね28の押圧力により、ガイド30、ピストン26が押圧され、ピストン26がロータ側に押し出される状態が維持される。この状態では、インナパッド60は、ピストン26からの押圧力を受けることによりロータ側へ押し出され、ロータへ付勢する。インナパッド60がロータに付勢すると、キャリパボディ12は、その反力により、ガイドピン68を介して押し戻される。この作用により爪部18に配置されたアウタパッド62がロータ側へ押し出され、インナパッド60とアウタパッド62で、ロータを挟み込み、制動力を生じさせる。
【0040】
次に、エアチャンバ50を稼動させると、直動ロッド48がエアチャンバ50から突出する方向に動作し、カムレバー46を矢印B(図1参照)の方向へ回動(揺動)させる。これにより回転軸36aが回動し、大径部36bの回動が成される。大径部36bが回動すると、カム部36cに摺接しているコネクティングロッド42が作動ばね28側へ押し出され、ガイド30を押し戻す反力が発生する。
【0041】
反力の発生によりガイド30が押し戻されると、ガイド30に連結ピン44により連結されたピストン26への押圧力も解放される。これにより、インナパッド60とアウタパッド62により挟持されることにより生じていたロータの制動が解除される。
【0042】
一方、エアチャンバ50の稼動が解除されると、コネクティングロッド42を介した反力が解除される。これにより、作動ばね28による押圧力でガイド30と共に、コネクティングロッド42、およびピストン26が押し戻され、インナパッド60に対する押圧力を生じさせることとなる。この時、大径部36bは、コネクティングロッド42を介して初期位置へと押し戻される。
【0043】
また、上記実施形態では、アクチュエータとして、エアチャンバ50を例に挙げているが、モータ等を採用することもできる(不図示)。なお、モータをアクチュエータとして採用する場合には、回転方向の力を直線方向の力に変換するために、直動ロッド48とモータの回転軸との間に、クランクレバー(不図示)等を介在させるようにすれば良い。
【符号の説明】
【0044】
10………ディスクブレーキ装置、12………キャリパボディ、14………ボディ本体、16………ブリッジ部、18………爪部、18a………貫通孔、20………シリンダ、22………ボア、24………軸受け孔、26………ピストン、26a………貫通孔、26b………軸線方向孔、28………作動ばね、30………ガイド、30a………凸部、30b………フランジ部、31………アジャスタ、31a………スライダ、32………プラグ、32a………貫通孔、34………締結板、36………カムシャフト、36a………回転軸、36b………大径部、36c………カム部、38………シャフトホルダ、42………コネクティングロッド、44………連結ピン、46………カムレバー、48………直動ロッド、50………エアチャンバ、52………クレビス、60………インナパッド、62………アウタパッド、64………アジャストボルト、66………サポート、68………ガイドピン。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7