特許第6277756号(P6277756)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277756
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】操舵装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20180205BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20180205BHJP
   B62D 113/00 20060101ALN20180205BHJP
   B62D 119/00 20060101ALN20180205BHJP
   B62D 137/00 20060101ALN20180205BHJP
【FI】
   B62D6/00ZYW
   B62D5/04
   B62D113:00
   B62D119:00
   B62D137:00
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-22614(P2014-22614)
(22)【出願日】2014年2月7日
(65)【公開番号】特開2015-147547(P2015-147547A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2017年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】應矢 敏明
【審査官】 神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−149612(JP,A)
【文献】 特開2007−196808(JP,A)
【文献】 特開2004−034751(JP,A)
【文献】 特開2006−327421(JP,A)
【文献】 特開2009−208551(JP,A)
【文献】 特開平10−194150(JP,A)
【文献】 特開2008−290632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00 − 6/10
B62D 5/00 − 5/06
B62D 5/07 − 5/32
B60W 10/00 − 50/16
G08G 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行に関する情報である走行情報に基づいて車輪の転舵角を変更する自動操舵制御を実行する自動操舵制御部、および、操舵部材の操舵角に基づいて前記転舵角を変更する手動操舵制御を実行する手動操舵制御部を含む操舵制御部と、
前記自動操舵制御を実行しているときに切替条件が成立していることに基づいて前記自動操舵制御を前記手動操舵制御に切り替える切替制御を実行する切替制御部と、
運転者が視覚的または聴覚的に把握できる報知装置に情報を報知させる指令信号を生成する報知情報生成部とを備え、前記転舵角を前記操舵角と独立して変更可能な操舵装置の制御装置であって、
前記切替制御部は、前記転舵角に基づいて前記転舵角に対応する前記操舵角である対応操舵角を演算し、前記対応操舵角と前記操舵角との差である角度差が前記所定範囲に含まれることに基づいて前記自動操舵制御を前記手動操舵制御に切り替え、
前記報知情報生成部は、前記切替条件が成立したとき、前記報知装置に前記角度差に関連する情報を報知させる指令信号を生成し、
さらに、前記報知情報生成部は、前記角度差に関連する情報である前記操舵角および前記対応操舵角を含む角度情報、および、前記角度差の情報の少なくとも一方を報知させる指令信号を生成し、
さらに、前記報知情報生成部は、前記角度情報である前記操舵角および前記対応操舵角を同一のスケールにおいて並べてメータ表示させる指令信号を生成する
操舵装置の制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記自動操舵制御の実行中かつ前記切替条件が成立していないとき、前記操舵角を所定角に維持する操舵角維持制御を実行し、前記自動操舵制御の実行中かつ前記切替条件が成立したことに基づいて、前記操舵角維持制御を終了する操舵角制御部を有する
請求項1に記載の操舵装置の制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記切替条件が成立したとき、前記角度差が前記所定範囲に収められるように前記操舵部材を制御する操舵角調整部を有する
請求項1又は2に記載の操舵装置の制御装置。
【請求項4】
前記報知情報生成部は、前記自動操舵制御を前記手動操舵制御に切り替えたことを示す完了情報を前記報知装置に表示させるための指令信号を、前記角度差が前記所定範囲に含まれることに基づいて生成する
請求項1〜のいずれか一項に記載の操舵装置の制御装置。
【請求項5】
前記報知情報生成部は、前記自動操舵制御が前記手動操舵制御に切り替えられるまで、前記角度差に関連する情報を前記報知装置に表示させるための指令信号を一定の制御周期毎に生成する
請求項1〜のいずれか一項に記載の操舵装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪の転舵角を操舵部材の操舵角と独立して変更可能な操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、操舵部材と、車輪の転舵角を操舵部材の操舵角と独立して変更可能な転舵装置とを備える操舵装置の一例としてのステアバイワイヤ方式の操舵装置を開示している。特許文献1の操舵装置をはじめとする従来の操舵装置は、自動操舵制御および手動操舵制御を実行する。操舵装置は、手動操舵制御を実行しているとき、操舵部材の操舵角に基づいて車輪の転舵角を変更し、自動操舵制御を実行しているとき、操舵部材の操舵角とは別のパラメータである車両の走行情報に基づいて車輪の転舵角を変更する。車両の走行情報の一例は、車載カメラにより取得される車線に関する情報である。
【0003】
上記操舵装置を搭載した車両によれば、自動操舵制御が実行されることにより、操舵角および転舵角の関係が、手動操舵制御が実行されるときにおける操舵角および転舵角の関係と相違する。このため、操舵装置は、自動操舵制御を実行している場合に自動操舵制御を手動操舵制御に切り替えるための条件が成立したとき、操舵角および転舵角の関係を手動操舵制御に対応した関係と一致させている。
【0004】
具体的には、操舵装置は、そのときの転舵角に基づいて対応操舵角を設定する処理、および、操舵角が対応操舵角と一致するように操舵部材を制御する。制御装置は、操舵角が対応操舵角と一致したことに基づいて、手動操舵制御を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−196808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の操舵装置においては、自動操舵制御を手動操舵制御に切り替えるための条件が成立してから手動操舵制御に切り替えられるまでの期間について、運転者が、手動操舵制御が開始されるタイミングを、視覚または聴覚等により感覚的に把握することができない。このため、運転者が、自動操舵制御から手動操舵制御に切り替わる時間の長さを感覚的に把握していない場合、実際に手動操舵制御が開始されていることを認識するまでの期間において焦燥感を覚えることがある。
【0007】
本発明の目的は、自動操舵制御から手動操舵制御に切り替えるときに運転者が焦燥感を覚えにくい操舵装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔1〕本操舵装置の制御装置の独立した一形態は、車両の走行に関する情報である走行情報に基づいて車輪の転舵角を変更する自動操舵制御を実行する自動操舵制御部、および、操舵部材の操舵角に基づいて前記転舵角を変更する手動操舵制御を実行する手動操舵制御部を含む操舵制御部と、前記自動操舵制御を実行しているときに切替条件が成立していることに基づいて前記自動操舵制御を前記手動操舵制御に切り替える切替制御を実行する切替制御部と、運転者が視覚的または聴覚的に把握できる報知装置に情報を報知させる指令信号を生成する報知情報生成部とを備え、前記転舵角を前記操舵角と独立して変更可能な操舵装置の制御装置であって、前記切替制御部は、前記転舵角に基づいて前記転舵角に対応する前記操舵角である対応操舵角を演算し、前記対応操舵角と前記操舵角との差である角度差が前記所定範囲に含まれることに基づいて前記自動操舵制御を前記手動操舵制御に切り替え、前記報知情報生成部は、前記切替条件が成立したとき、前記報知装置に前記角度差に関連する情報を報知させる指令信号を生成する操舵装置の制御装置。
【0009】
本操舵装置の制御装置は、自動操舵制御を実行している場合に切替条件が成立したとき、切替制御を開始する。制御装置は、切替制御において、転舵角に基づいて対応操舵角を演算し、角度差に関連する情報を演算する。車両の報知装置は、制御装置から出力された指令信号に基づいて、角度差に関連する情報を報知する。このため、報知装置は、手動操舵制御が開始されるタイミングに関する情報を運転者に提供する。このため、運転者は手動操舵制御が開始されるタイミングに関する情報を感覚的に把握できる。このため、自動操舵制御から手動操舵制御に切り替えるときに運転者が焦燥感を覚えにくくなる。
【0010】
〔2〕前記操舵装置の制御装置に従属する一形態は、前記報知情報生成部は、前記角度差に関連する情報である前記操舵角および前記対応操舵角を含む角度情報、および、前記角度差の情報の少なくとも一方を報知させる指令信号を生成する。
【0011】
〔3〕前記操舵装置の制御装置に従属する一形態は、前記報知情報生成部は、前記角度情報である前記操舵角および前記対応操舵角を同一のスケールにおいて並べてメータ表示させる指令信号を生成する。
【0012】
報知装置は、操舵角のメータ表示と対応操舵角のメータ表示とを表示するため、運転者がどれくらい操舵角を変更すれば角度差が所定範囲に含まれるようになるかを視認しやすい。
【0013】
〔4〕前記操舵装置に従属する一形態は、前記制御装置は、前記自動操舵制御の実行中かつ前記切替条件が成立していないとき、前記操舵角を所定角に維持する操舵角維持制御を実行し、前記自動操舵制御の実行中かつ前記切替条件が成立したことに基づいて、前記操舵角維持制御を終了する操舵角制御部を有する。
【0014】
例えば、自動操舵制御の実行中に手動操舵制御を実行しているときの操舵角と対応操舵角との関係を維持する制御を実行する場合、自動操舵制御が実行されているときに操舵角が所定角に維持されない場合、操舵部材が動作することにより、運転者がそのような操舵部材の動作に煩わしさを覚えるおそれがある。
【0015】
一方、本操舵装置の制御装置は、自動操舵制御を実行しているとき、さらに操舵角維持制御を実行することにより、操舵部材の操舵角を所定角に維持する。このため、操舵部材の動作に起因して運転者に煩わしさを覚えさせるおそれが実質的に生じない。他方、操舵角維持制御を実行することにより、自動操舵制御を実行しているときにおいては手動操舵制御を実行しているときの操舵角と対応操舵角との関係が失われる。
【0016】
したがって、制御装置によれば、自動操舵制御が実行されているときに運転者に煩わしさを覚えさせるおそれを実質的に生じさせないことと、手動操舵制御に切り替えられるときに運転者に焦燥感を覚えさせるおそれを低くすることとを両立できる。
【0017】
〔5〕前記操舵装置の制御装置に従属する一形態は、前記制御装置は、前記切替条件が成立したとき、前記角度差が前記所定範囲に収められるように前記操舵部材を制御する操舵角調整部を有する。
【0018】
本操舵装置の制御装置は、角度差が前記所定範囲に含まれるようにするための操舵部材の操作が運転者に要求されない。このため、運転者の運転に関する負荷が軽くなる。
〔6〕前記操舵装置の制御装置に従属する一形態は、前記報知情報生成部は、前記自動操舵制御を前記手動操舵制御に切り替えたことを示す完了情報を前記報知装置に表示させるための指令信号を、前記角度差が前記所定範囲に含まれることに基づいて生成する。
【0019】
〔7〕前記操舵装置の制御装置に従属する一形態は、前記報知情報生成部は、前記自動操舵制御が前記手動操舵制御に切り替えられるまで、前記角度差に関連する情報を前記報知装置に表示させるための指令信号を一定の制御周期毎に生成する。
【発明の効果】
【0020】
本操舵装置の制御装置によれば、自動操舵制御から手動操舵制御に切り替えるときに運転者が焦燥感を覚えにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態の車両の構成を示す模式図。
図2】実施形態の車両の電気的な構成を示すブロック図。
図3】実施形態の切替時制御の手順を示すフローチャート。
図4】実施形態の報知装置が表示する情報の一例を示す模式図。
図5】変形例の報知装置が表示する情報の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1を参照して、車両1の構成について説明する。
車両1は、操舵装置10、操作部30、報知装置40、制御装置50、および、各種の検出装置が搭載されている。各種の検出装置には、操舵角センサ61、トルクセンサ62、ヨーレートセンサ63、および、カメラ64が含まれる。
【0023】
操舵装置10は、操舵部材であるステアリングホイール11、シャフト12、反力モータ13、および、転舵装置20を有する。操舵装置10は、転舵装置20がステアリングホイール11およびシャフト12と機械的に接続されていない。操舵装置10は、ステアバイワイヤ方式により制御装置50を介して車輪70の転舵角(以下、「転舵角α」)を変更する。このため、転舵装置20は、転舵角αをステアリングホイール11の回転角度(以下、「操舵角θ」)と独立して変更することができる。
【0024】
シャフト12には、ステアリングホイール11および反力モータ13が接続されている。シャフト12は、ステアリングホイール11と一体的に回転する。反力モータ13は、ステアリングホイール11の操作を妨げトルク(以下、「反力トルクτ」)をシャフト12に付与する。
【0025】
転舵装置20は、転舵シャフト21、タイロッド22、および、転舵モータ23を有する。転舵シャフト21は、その両端に連結されるタイロッド22およびナックル(図示略)を介して車輪70の支持部材(図示略)と連結されている。転舵モータ23の回転は、ギヤ機構(図示略)を介して転舵シャフト21の往復動へ変換され、転舵シャフト21の往復動により、車輪70の転舵角αが変化する。
【0026】
操作部30は、運転者が操作できる位置に取り付けられている。操作部30は、例えば、自動操舵制御を実行するモードと手動操舵制御を実行するモードとを切り替える切替スイッチであり、操作部30が切り替えられたとき、操作部30は、切替信号を制御装置50に出力する。
【0027】
報知装置40は、運転者が視認できるダッシュボードに配置されている。報知装置40は、車両1の運転状態を示す各種メータを表示する。
操舵角センサ61は、シャフト12に取り付けられ、ステアリングホイール11の操舵角θに応じた信号を制御装置50に出力する。
【0028】
トルクセンサ62は、シャフト12に取り付けられ、ステアリングホイール11、および、反力モータ13からシャフト12にかけられる反力トルクτに応じた信号を制御装置50に出力する。
【0029】
ヨーレートセンサ63は、車両1のヨーレート(以下、「ヨーレートφ」)に応じた信号を出力する。
カメラ64は、車両1の前方に取り付けられ、車両1の前方を撮影し、撮影画像を制御装置50に出力する。制御装置50は、カメラ64から受信した撮影画像に基づいて、車両1が走行している車線のレーンマーク、例えば、白色、および、黄色等の区画線を検出する。
【0030】
図2に示されるように、制御装置50は、転舵角αを変更する操舵制御部51、操舵角θを制御する反力制御部54、自動操舵制御と手動操舵制御を切り替える切替制御部55、および、報知装置40に表示する情報を生成する報知情報生成部56を有する。なお、反力制御部54は、操舵角制御部である。
【0031】
操舵制御部51は、自動操舵制御を実行する自動操舵制御部52、および、手動操舵制御を実行する手動操舵制御部53を有する。自動操舵制御部52は、自動操舵制御において、転舵モータ23を駆動させ、転舵角αを変更する。手動操舵制御部53は、手動操舵制御において、転舵モータ23を駆動させ、転舵角αを変更する。反力制御部54は、操舵角維持制御、および、操舵反力制御により、反力モータ13を駆動させ、シャフト12にトルクを付与する。
【0032】
操舵制御部51は、自動操舵制御、および、手動操舵制御において、転舵角αの目標角(以下、「目標転舵角β」)を演算する。操舵制御部51は、目標転舵角βに対応した転舵角αになるようにモータトルクを演算する。そして、操舵制御部51は、演算したモータトルクに基づいて転舵モータ23を制御し、転舵角αを変更する。
【0033】
自動操舵制御部52は、ヨーレートセンサ63、および、カメラ64の出力に基づいて目標転舵角βを演算する。自動操舵制御部52は、カメラ64の撮影画像から検出したレーンマークから走路の曲率を演算する。自動操舵制御部52は、ヨーレートφに基づいて車両1のヨー角を演算し、走路の曲率と車両1のヨー角とに基づいて目標転舵角βを演算する。なお、走路の曲率、および、ヨーレートφは、車両1の走行に関する情報であり、「走行情報」に相当する。
【0034】
手動操舵制御部53は、操舵角センサ61の出力に基づいて目標転舵角βを演算する。手動操舵制御部53は、操舵角θ、および、予め記憶している操舵角θと目標転舵角βの関係マップを用いて目標転舵角βを演算する。
【0035】
反力制御部54は、手動操舵装置の実行中、および自動操舵制御の実行中かつ操作部30から手動操舵制御に切り替える旨の切替信号を受信しているとき、操舵反力制御を実行する。操舵反力制御において、反力制御部54は、転舵角αの大きさ、および、転舵角αの変化速度等に基づいて、目標の反力トルクτを演算する。反力制御部54は、目標の反力トルクτに基づいて反力モータ13を駆動し、ステアリングホイールと転舵装置とが機械的に接続されている操舵装置と同様の操舵感を運転者に与えるようにシャフト12にトルクを付与する。
【0036】
反力制御部54は、自動操舵装置の実行中かつ操作部30から手動操舵制御に切り替える旨の切替信号を受信していないとき、操舵角θを所定角(例えば、ステアリングホイール11の中立位置としての「0」度)に維持する操舵角維持制御を実行する。操舵角維持制御においては、反力制御部54は、反力モータ13を駆動し、操舵角θが所定角に維持されるようにトルクをシャフト12に付与する。
【0037】
切替制御部55は、操作部30からの切替信号に基づいて、手動操舵制御と自動操舵制御とを切り替える。
切替制御部55は、手動操舵制御の実行中に、操作部30から切替信号を受信したとき、手動操舵制御から自動操舵制御に変更する旨の信号を操舵制御部51に送信する。また、切替制御部55は、自動操舵制御の実行中に操作部30から切替信号を受信したとき、自動操舵制御から手動操舵制御に変更する旨の信号を操舵制御部51に送信する。
【0038】
図3を参照して、自動操舵制御の実行中に制御装置50(図2参照)により実行される切替時制御の処理手順について説明する。この処理は、所定時間毎に繰り返し実行されている。
【0039】
制御装置50は、ステップS11において、自動操舵制御を実行中か否かを判定する。自動操舵制御が実行されていないとき、本処理を終了する。一方、自動操舵制御を実行中である旨判定したとき、ステップS12において、切替条件が成立しているか否かを判定する。切替条件は、操作部30から自動操舵制御から手動操舵制御に切り替える旨の切替信号が制御装置50に入力されることによって成立する。
【0040】
制御装置50は、切替条件が成立した旨判定したとき、ステップS13に進み、反力制御部54(図2参照)により操舵角維持制御を終了し、操舵反力制御を実行する。これにより、操舵装置10(図1参照)は、運転者に手動操舵制御と同様の操舵感を与えながら、ステアリングホイール11を操作させることができる。
【0041】
次に、制御装置50の切替制御部55(図2参照)は、ステップS14において目標転舵角βと対応する操舵角θ(以下、「対応操舵角θA」)を演算する。具体的には、切替制御部55は、自動運転制御において演算されている現在の目標転舵角βを抽出し、抽出された目標転舵角βと、手動操舵制御において用いられる操舵角θと目標転舵角βとの関係マップとに基づいて、対応操舵角θAを演算する。
【0042】
次に、切替制御部55は、ステップS15において、対応操舵角θAと操舵角θとの差である角度差を演算し、ステップS16に進む。ステップS16において、報知情報生成部56(図2参照)は、対応操舵角θA、操舵角θ、および、角度差を報知装置40(図3参照)に表示させるための指令信号を報知装置40に送信する。これにより、報知装置40が角度差を表示する。
【0043】
次に、制御装置50は、ステップS17において、対応操舵角θAと操舵角θとの差が所定範囲に含まれるか否かを判定する。所定範囲の一例は、対応操舵角θAと操舵角θとが実質的に一致する範囲である。
【0044】
制御装置50は、対応操舵角θAと操舵角θとの差が所定範囲に含まれるようになるまで、すなわち、対応操舵角θAと操舵角θとが一致するまでステップS14〜S17の処理を繰り返す。
【0045】
切替制御部55は、対応操舵角θAと操舵角θとの差が所定範囲に含まれる旨判定したとき、ステップS18に進み、自動操舵制御から手動操舵制御に切り替える。制御装置50の報知情報生成部56は、自動操舵制御が手動操舵制御に切り替えられるまで、対応操舵角θA、操舵角θ、および、角度差を報知装置40に表示させるための指令信号を一定の制御周期毎に生成し、報知装置40に送信する。
【0046】
そして、報知情報生成部56は、ステップS19において、手動操舵制御に切り替えた旨の完了情報を報知装置40に表示させるための信号を報知装置40に送信し、本処理を終了する。完了情報は、例えば、「手動運転モードに変更されました」という文字表示により行われる。
【0047】
図4を参照して、報知装置40に表示される表示内容の一例を説明する。
報知装置40は、操舵角θを表示する操舵角表示部41、および、対応操舵角θAを表示する対応操舵角表示部42を有する。操舵角表示部41、および、対応操舵角表示部42は、縦に並べられている。
【0048】
操舵角表示部41は、操舵角「0」度から、操舵角θまでをメータ表示する。また、操舵角表示部41は、アドバイス情報を表示する。アドバイス情報は、文字表示43、および、方向示唆表示44を含む。文字表示43は、操舵角θを対応操舵角θAに一致させるまでに必要な操舵角θの角度、すなわち角度差情報を含む。方向示唆表示44は、操舵角θを対応操舵角θAに一致させるための操舵角θの回転方向を矢印により示す。
【0049】
対応操舵角表示部42は、対応操舵角「0」度から、対応操舵角θAまでをメータ表示する。
操舵角表示部41の操舵角θのメータ表示および対応操舵角表示部42の対応操舵角θAのメータ表示のスケールは同一である。操舵角表示部41の両端部の横方向の位置、対応操舵角表示部42の両端部の横方向の位置は一致している。また、操舵角表示部41の操舵角「0」度の横方向の位置、および、対応操舵角表示部42の対応操舵角「0」度の横方向の位置は一致している。このため、操舵角表示部41に表示されるメータ、および、対応操舵角表示部42に表示されるメータは、角度差に関連する角度情報を示している。また、操舵角表示部41に表示されるメータと、対応操舵角表示部42に表示されるメータとの差は、角度差と対応している。
【0050】
操舵装置10は、以下の作用および効果を奏する。
(1)制御装置50は、切替条件が成立したとき、手動操舵制御が開始されるタイミングに関する情報としての角度差を報知装置40に表示させる。このため、運転者は、ステアリングホイール11をどれくらい操作すれば対応操舵角θAと操舵角θとが一致することができるのかを把握することができる。このため、運転者は手動操舵制御が開始されるタイミングに関する情報を感覚的に把握できる。また、操舵角θが対応操舵角θAに一致したことに基づいて自動操舵制御が手動操舵制御に切り替えられる。このため、操舵角θが対応操舵角θAに一致するまでの期間を把握することにより、運転者は手動操舵制御に切り替えられるタイミングを把握することができる。このため、自動操舵制御から手動操舵制御に切り替えるときに運転者が焦燥感を覚えにくくなる。
【0051】
(2)制御装置50は、切替条件が成立したとき操舵角維持制御を終了する。このため、運転者は、報知装置40に表示される角度差に基づいて、ステアリングホイール11を操作し、操舵角θを対応操舵角θAに近づける操作を行うことができる。このため、制御装置50がステアリングホイール11を制御して操舵角θを対応操舵角θAに一致させる構成と比較して、運転者が操舵角θが対応操舵角θAに一致するタイミング、および、自動操舵制御から手動操舵制御に切り替わるタイミングを把握しやすい。また、運転者は、対応操舵角θAと操舵角θとが一致するタイミングを調整することができる。
【0052】
(3)報知装置40は、操舵角表示部41のメータ表示と対応操舵角表示部42のメータ表示とが同一のスケールで並べられて表示するため、運転者がどれくらい操舵角θを変更すれば角度差が所定範囲に含まれるようになるかを視認しやすい。
【0053】
(4)例えば、自動操舵制御の実行中に手動操舵制御を実行しているときの操舵角θと対応操舵角θAとの関係を維持する制御を実行する場合、ステアリングホイール11が動作することにより、運転者がそのようなステアリングホイール11の動作に煩わしさを覚えるおそれがある。
【0054】
制御装置50は、自動操舵制御を実行しているとき、さらに操舵角維持制御を実行することにより、ステアリングホイール11の操舵角θを所定角に維持する。このため、ステアリングホイール11の動作に起因して運転者に煩わしさを覚えさせるおそれが実質的に生じない。他方、操舵角維持制御を実行することにより、自動操舵制御を実行しているときにおいては手動操舵制御を実行しているときの操舵角θと対応操舵角θAとの関係が失われる。
【0055】
したがって、制御装置50によれば、自動操舵制御が実行されているときに運転者に煩わしさを覚えさせるおそれを実質的に生じさせないことと、手動操舵制御に切り替えられるときに運転者に焦燥感を覚えさせるおそれを低くすることとを両立できる。
【0056】
(5)制御装置50は、自動操舵制御から手動操舵制御に切り替わった旨を報知装置40に表示させる。このため、運転者は手動操舵制御に切り替わったタイミングを認識できる。
【0057】
(6)制御装置50は、手動操舵制御において、操舵反力制御を実行し、ステアリングホイール11に所定の反力を発生させる。そして、切替時制御の実行中に運転者が操舵角θから対応操舵角θAに近づける操作を行うときにも操舵反力制御を実行し、ステアリングホイール11に反力を発生させる。このため、自動操舵制御から手動操舵制御に切り替わったときに、操舵感が変化したという感覚を運転者に与えることを抑制できる。
【0058】
なお、本操舵装置は、上記実施形態以外の実施形態を含む。以下、本操舵装置のその他の実施形態としての上記実施形態の変形例を示す。
・制御装置50は、報知装置40に目標転舵角βと転舵角αとの差を表示することもできる。具体的には、制御装置50は、自動操舵制御から手動操舵制御に切り替える切替信号を受信したとき、手動操舵制御において用いられる操舵角θと目標転舵角βとの関係マップを用いて、現在の操舵角θと対応する目標転舵角β(以下、「対応目標転舵角βA」)を演算する。対応目標転舵角βAと現在の転舵角αとの差は、対応操舵角θAと操舵角θとの差と対応している。このため、対応目標転舵角βAと転舵角αとを表示する構成においては、対応操舵角θAと操舵角θとの差の表示を省略することもできる。
【0059】
・報知装置40の表示内容を、図5に示す表示内容に変更することもできる。すなわち、操舵角表示部41を省略し、対応操舵角表示部42のメータ上に方向示唆表示44、および、対応操舵角θAの目印表示45を重ねて表示する。また、文字表示43のみを表示させることもできる。また、文字表示43を音声表示にして運転者に聴覚的に把握させることもできる。この場合、報知装置40に代えて、スピーカーを報知装置として採用することができる。要するに、操舵角θと対応操舵角θAとの差を運転者に視覚的または聴覚的に把握させることができる構成であれば、いずれの構成を採用することもできる。
【0060】
・制御装置50は、切替時制御において、対応操舵角θAと操舵角θとの差が小さくなったとき、表示部41,42のうちの、操舵角θ、および、対応操舵角θAを含む範囲を拡大して表示することもできる。この構成によれば、運転者は、操舵角θと対応操舵角θAとの差が小さくなったとき、手動操舵制御に切り替わるタイミングをより細かく認識できる。このため、運転者が操舵角θを対応操舵角θAに合わせやすくなる。
【0061】
・制御装置50は、切替時制御において対応操舵角θAと操舵角θとの差を報知装置40に表示させているが、自動操舵制御、および、手動操舵制御の実行中において、常に操舵角θと対応操舵角θAを表示することもできる。
【0062】
・制御装置50は、切替時制御において、手動操舵制御に切り替わった旨を音声、または、ステアリングホイール11を振動させる等により報知することもできる。要するに、運転者が自動操舵制御から手動操舵制御に切り替わったことを認識できる構成であれば、いずれの構成を採用することもできる。
【0063】
・ダッシュボードに搭載される報知装置40に代えて、フロントウィンドウに画像を投影する報知装置を採用することもできる。また、報知装置40に代えて、カーナビゲーションシステムのモニタ、または、スピーカーを採用することもできる。要するに、対応操舵角θAと運転者が操舵角θとの差を把握できる情報を表示できる構成であれば、いずれの構成を採用することもできる。
【0064】
・切替時制御のステップS13において、制御装置50が操舵角維持制御を終了した後、反力制御部54が反力モータ13を制御して、操舵角θを対応操舵角θAに変更する制御を実行する構成に変更することもできる。この場合、制御装置50は、操舵角θを対応操舵角θAに一致させる期間において、対応操舵角θAと操舵角θとの差を報知装置40に表示させる。なお、この変形例の反力制御部54は、操舵角調整部および操舵角制御部である。
【0065】
この変形例によれば、反力制御部54が反力モータ13を制御することにより、自動操舵制御から手動操舵制御に切り替えられる。このため、自動操舵制御を手動操舵制御に切り替えるためのステアリングホイール11の操作が運転者に要求されない。このため、運転者の運転に関する負荷が軽くなる。
【0066】
・制御装置50は、対応操舵角θAと操舵角θとの差、および、操舵角θの変化速度に基づいて、対応操舵角θAと操舵角θとの差が所定範囲に含まれるようになるまでの予測期間を演算し、この予測期間を数値等により報知装置40に表示させることもできる。この場合も、運転者は操舵角θが対応操舵角θAと一致するタイミングを把握できる。なお、予測期間は、「角度差に関連する情報」であり、「時間情報」に相当する。
【0067】
・制御装置50は、予測期間に、対応操舵角θAと操舵角θとが一致してから手動操舵制御が開始されるまでの期間を含めて表示することもできる。この場合も、予測期間は角度差と相関を持つ「角度差に関連する情報」である。そして、この変形例においては、運転者は自動操舵制御が手動操舵制御に切り替えられるタイミングを把握できる。このため、自動操舵制御から手動操舵制御に切り替えられるときの運転者の焦燥感を低減できる。
【0068】
・制御装置50は、自動操舵制御の実行が困難な旨を判定したときに切替条件を成立させることもできる。自動操舵制御の実行が困難とは、例えば、自動操舵制御に用いるレーンマークが認識できない、前方車両が認識できなくなった等の場合が挙げられる。
【0069】
・制御装置50は、自動操舵制御において、カメラ64の撮影画像から検出したレーンマークから車両1が走行している車線の幅方向の中央線を演算し、車両1の幅方向の中心と中央線との距離である横変位から目標転舵角βを演算することもできる。この場合、横変位は「走行情報」に相当する。
【0070】
・制御装置50は、自動操舵制御において、車両1の前方を走行する車両に追従するように転舵角αを変更するようにすることもできる。この場合は、カメラ64に代えて前方の車両の位置を検出できる赤外線レーダ等を用いることもできる。要するに、制御装置50が転舵角αを制御する自動操舵制御であれば適宜変更することができる。
【0071】
・操舵装置10を、ステアリングホイール11と転舵装置20とが伝達比可変装置を介して接続される操舵装置に変更することもできる。この操舵装置は、ステアリングホイール11の回転にともなって回転する第1シャフトと、ラックアンドピニオン機構を介して転舵シャフト21に連結される第2シャフトとを備える。伝達比可変装置は、モータを有する。モータのステータは第1シャフトに連結され、モータのロータは第2シャフトに連結される。このため、第2シャフトは第1シャフトおよびステアリングホイールに対して独立して回転することができる。このため、操舵装置は転舵角αを転舵角αと独立して変更することができる。制御装置50は、伝達比可変装置のモータを駆動することにより、転舵角αを変更する。要するに、転舵角αを転舵角αと独立して変更することができる操舵装置であれば、いずれの操舵装置に変更することもできる。
【0072】
(実施形態の記載に基づく付記事項)
上記実施形態に記載の事項を上位概念化した事項を以下に記載する。
(付記1)前記報知情報生成部は、前記操舵角の変化速度と前記角度差に基づいて前記角度差が前記所定範囲に含まれるようになるまでの予測時間を演算し、前記角度差に関する情報である前記予測時間を前記報知装置に報知させる指令信号を生成する請求項1に記載の操舵装置の制御装置。
【0073】
(付記2)前記操舵角制御部は、前記手動操舵制御の実行中に前記操舵部材に所定の反力を発生させる操舵反力制御を実行し、前記自動操舵制御の実行中であって前記切替条件が成立したとき、前記操舵角維持制御を終了し、前記操舵反力制御を開始する請求項4に記載の操舵装置の制御装置。
【符号の説明】
【0074】
1…車両、10…操舵装置、11…ステアリングホイール(操舵部材)、20…転舵装置、40…報知装置、50…制御装置、51…操舵制御部、52…自動操舵制御部、53…手動操舵制御部、54…反力制御部(操舵角制御部、操舵角調整部)、55…切替制御部、56…報知情報生成部、70…車輪。
図1
図2
図3
図4
図5