(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セルロース繊維を5〜98質量%含む原料繊維(Zs)から形成された不織布(γ)からなる吸水層をさらに有し、該吸水層と前記表面層との間に、前記吸収層が位置していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の吸収体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態例を挙げて、本発明を詳細に説明する。
(1)第1の実施形態
図1は、本発明の第1の実施形態の吸収体10Aの構成を示す縦断面図である。
この例の吸収体10Aは、吸収層12の一方の表面の全面に、表面層11が積層した2層構成である。吸収体10Aにおいて、たとえば体液、排泄物、廃インク、化粧料、油、液体芳香剤・忌避剤等の吸収対象物は、表面層11側から吸収される。そのため、吸収体10Aをおむつ、生理用品等として人体等に装着する際には、表面層11が肌に接触する。
【0012】
<吸収層(不織布α)>
吸収層12は、吸収対象物を吸収、保持する層であり、水解性および生分解性を有する不織布(α)からなる。
詳しくは後述するように、不織布(α)は、ウェブ形成工程としてエアレイド法が採用され、エアレイドウェブから得られた不織布であり、嵩高く、低密度である。不織布(α)を形成するエアレイドウェブは、下記の繊維(x1)および下記の繊維(x2)から選ばれる少なくとも1種の生分解性熱融着性繊維(X)を2〜50質量%含有する原料繊維(Xs)から形成される。そして、不織布(α)は、繊維結合工程として、サーマルボンド法(熱処理)が採用された不織布であるため、原料繊維(Xs)同士は主に点で接着されている。
そのため、不織布(α)は、高粘度の液体、固形分を含有する液体(以下、「高粘度吸収対象物」ともいう。)の浸透性に優れ、高粘度吸収対象物を効果的に吸収、保持できる。また、不織布(α)は、生分解性熱融着性繊維(X)を上記範囲で含有する原料繊維(Xs)から形成されたものであり、適度な量の生分解性熱融着性繊維(X)による上述の点接着に基づき結合力が過度にならないことから、水解性も有する。
【0013】
繊維(x1):ポリブチレンサクシネート、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)およびポリエチレンサクシネートから選ばれる少なくとも1種の樹脂(A)からなる生分解性熱融着性繊維。
繊維(x2):ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリグリコール酸および酢酸セルロースから選ばれる少なくとも1種の樹脂(B)と、前記樹脂(A)とからなり、表面の少なくとも一部が前記樹脂(A)である生分解性熱融着性繊維。
【0014】
なお、図示例では、吸収層12は1枚の不織布(α)により構成されているが、吸収対象物の質、量等に応じて、2枚以上の不織布(α)を重ねて吸収層を形成してもよい。
【0015】
[樹脂(A)および樹脂(B)]
樹脂(A)は、上述のとおり、ポリブチレンサクシネート(融点:114℃)、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)(融点:100〜110℃)、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)(融点:104℃)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)(融点:95℃)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)(融点:106℃)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)およびポリエチレンサクシネート(融点:119℃)から選ばれる少なくとも1種である。
樹脂(A)は生分解性に優れるとともに、融点が低い。樹脂(A)は低融点であるため、樹脂(A)を含む生分解性熱融着性繊維(X)を含有する原料繊維(Xs)を用い、エアレイドウェブを形成し、熱処理した場合、樹脂(A)の少なくとも一部が溶融し、原料繊維(Xs)同士を融着する。すなわち、樹脂(A)がバインダー成分として機能し、不織布(α)の保形性向上に寄与する。
また、樹脂(A)は、融点が90〜120℃の範囲にあり、融点が低すぎないため、熱融着させる際の温度コントロールがし易く、接着強度のバラつきが大きくなりすぎることを防止できる。また、融点が高すぎないため、熱融着させる際の熱エネルギーを抑えることができてコスト的に有利である。さらに、熱処理の温度も過度に高くする必要がないため、原料繊維(Xs)中の熱融着性樹脂成分以外の部分の軟化や熱変形を防止でき、形態の安定したシート形成を行える。
【0016】
樹脂(B)は、上述のとおり、ポリ乳酸(融点:175℃)、ポリヒドロキシブチレート(融点:175℃)、ポリグリコール酸(融点:230℃)および酢酸セルロース(融点:230℃)から選ばれる少なくとも1種である。
樹脂(B)は、生分解性に優れるとともに、樹脂(A)よりも融点が高く、170℃以上の範囲にある。そのため、樹脂(A)とともに樹脂(B)を含み、樹脂(A)が表面の少なくとも一部に存在する繊維(x2)の少なくとも1種を生分解性熱融着性繊維(X)として用い、これを含有する原料繊維(Xs)からエアレイドウェブを形成し、熱処理した場合、繊維(x2)中の樹脂(A)はバインダー成分として機能し、不織布(α)の保形性向上に寄与する。一方、樹脂(B)は溶融せずに、繊維形態の維持に寄与する。
樹脂(B)の融点が170℃以上であれば、熱処理の際、繊維(x2)中の樹脂(B)により構成される部分の軟化や熱変形による、ウェブの変形を防止できる。
【0017】
なお、本明細書において、樹脂の融点は、DSC(走査熱量計)を用いた微量融点測定法等により測定される値である。
【0018】
[原料繊維(Xs)]
原料繊維(Xs)は、繊維(x1)および繊維(x2)から選ばれる少なくとも1種の生分解性熱融着性繊維(X)を2〜50質量%含有する。また、原料繊維(Xs)は、詳しくは後述する非熱融着性繊維を50〜98質量%含有する。
【0019】
(生分解性熱融着性繊維(X))
生分解性熱融着性繊維(X)として使用される繊維(x1)は、上記した樹脂(A)からなるものであれば特に限定されず、市販品を使用しても、公知の方法で製造したものを用いてもよい。
【0020】
繊維(x1)を構成する樹脂(A)は1種以上が使用され、2種以上である場合、繊維(x1)は、2種以上の繊維の混合物であっても、2種以上の樹脂(A)を複合化した複合繊維であってもよい。
複合繊維の繊維形態としては、例えば、異なる2種の樹脂(A)を複合化させて得られるサイドバイサイド型構造、芯鞘型構造などが挙げられる。芯鞘型構造は、同芯芯鞘型構造でも偏芯芯鞘型構造でもよい。
また、種類は同じであっても分子量の異なる2種以上の樹脂の混合物、複合繊維であってもよい。
【0021】
生分解性熱融着性繊維(X)として使用される繊維(x2)は、上記した樹脂(B)と、上記した樹脂(A)とからなり、繊維の表面の少なくとも一部が樹脂(A)からなるものであれば特に限定されず、市販品を使用しても、公知の方法で製造したものを用いてもよい。
表面の少なくとも一部が樹脂(A)である繊維形態としては、樹脂(A)と樹脂(B)を複合化させて得られるサイドバイサイド型構造、芯鞘型構造などが挙げられる。芯鞘型構造の場合、樹脂(A)が鞘部分を構成し、樹脂(B)が芯部分を構成する。芯鞘型構造は、同芯芯鞘型構造でも、偏芯芯鞘型構造でもよい。
繊維(x2)を構成する樹脂(A)、樹脂(B)はそれぞれ1種以上が使用される。
【0022】
繊維(x2)における樹脂(A)と樹脂(B)との質量比(たとえば、芯鞘型構造における芯鞘複合比。)は、樹脂(A)/樹脂(B)=2/8〜8/2が好ましく、4/6〜6/4がより好ましい。質量比が上記範囲内であれば、樹脂(A)のバインダー成分としての機能と、樹脂(B)の繊維形態を維持する機能とがともに優れる。
【0023】
繊維(x2)は、潜在捲縮繊維であってもよい。
潜在捲縮繊維は、熱により捲縮(クリンプ、カール、スパイラル)が顕在化する繊維である。潜在捲縮繊維を含んで形成されたエアレイドウェブを熱処理すると、捲縮が顕在化する。そのため、得られる不織布(α)はより嵩高くなる。
繊維(x2)として用いられる潜在捲縮繊維の繊維形態としては、例えば、樹脂(A)と樹脂(B)を複合化させて得られるサイドバイサイド型構造、偏芯芯鞘型構造の合成繊維などが挙げられる。
潜在捲縮繊維は、あらかじめ緩やかな捲縮を有しているものでもよいし、有していないものでもよい。
【0024】
繊維(x1)および繊維(x2)の繊維長は、2〜20mmが好ましく、2〜10mmがより好ましく、2〜6mmがさらに好ましい。このような繊維長であると、エアレイドウェブを形成する際に、これらの繊維が3次元的にランダムに積層する。その結果、嵩高く、高粘度吸収対象物に対しても優れた浸透性を発現し、高粘度吸収対象物を充分に吸収、保持できる不織布(α)が得られやすい。また、得られた不織布(α)は、高粘度吸収対象物の重さによる厚みの減少といった型崩れもしにくくなる。繊維長が上記範囲の下限値未満では、繊維が密になりすぎて、得られる不織布(α)の浸透性が低下したり、風合いが硬くなったり、ゴワゴワ感が生じたりする懸念がある。繊維長が上記範囲の上限値を超えると、繊維が寝てしまい、3次元的に積層しにくくなる。
優れた浸透性を有する不織布(α)を吸収層12として備えた吸収体10Aは、高粘度吸収対象物を速やかに吸収し、表面層11上に残留させないため、高粘度吸収対象物の拡散面積を小さくできる。
【0025】
繊維(x1)および繊維(x2)の繊度は、0.5〜74dtexが好ましく、0.8〜35dtexがより好ましく、1.0〜20dtexがさらに好ましい。このような繊度であると、嵩高く、高粘度吸収対象物に対しても優れた浸透性を発現し、高粘度吸収対象物を充分に吸収、保持する不織布(α)が得られやすい。また、不織布(α)は風合いにも優れる。繊度が上記範囲の下限値未満では、風合いは良好になるが、繊維間の空隙のサイズが小さくなり、高粘度吸収対象物を吸収する際の抵抗が大きくなる等して、浸透性に劣る傾向がある。繊度が上記範囲の上限値を超えると、繊維自体が剛直になるためにチクチク感が増し、風合いが悪くなる傾向にある。
【0026】
なお、本明細書において、繊維長は、任意に選択した50本の繊維をサンプルとし、これらについて電子顕微鏡観察により測定した長さの平均値である。
繊度は、単位「dtex(デシテックス)」で表す。1dtexとは、長さ10000mで1gの重さの糸の太さである。
【0027】
生分解性熱融着性繊維(X)としては、繊維(x1)のみを使用しても、繊維(x2)のみを使用しても、これらを併用してもよい。また、繊維(x1)として2種以上のものを併用しても、繊維(x2)として2種以上のものを併用してもよい。
なかでも、生分解性熱融着性繊維(X)としては、少なくとも繊維(x2)を使用することが好ましい。繊維(x2)は、樹脂(A)よりも融点が高く、エアレイドウェブを熱処理する際の熱処理温度では溶融しない樹脂(B)を有している。そのため、生分解性熱融着性繊維(X)として少なくとも繊維(x2)を使用し、その使用比率を高くするほど、より嵩高く、高粘度吸収対象物に対しても優れた浸透性を発現し、高粘度吸収対象物をより充分に吸収、保持する不織布(α)が得られやすい。
また、上述のとおり、繊維(x2)として潜在捲縮繊維を用いると、さらに嵩高く、高粘度対象物の吸収、保持に適した不織布(α)が得られやすい。
【0028】
原料繊維(Xs)中の生分解性熱融着性繊維(X)の含有量は、2〜50質量%である。生分解性熱融着性繊維(X)の含有量が上記範囲の下限値以上であると、繊維間の結着点が充分に存在するため、不織布(α)の保形性が良好となり、高粘度吸収対象物に対しても優れた浸透性が発揮される。また、型崩れしにくく、生分解にも優れる。一方、上記範囲の上限値以下であると、嵩高く、高粘度吸収対象物に対しても優れた浸透性を有し、かつ、水解性も良好な不織布(α)が得られやすい。
【0029】
ただし、原料繊維(Xs)中の生分解性熱融着性繊維(X)の含有量を10質量%以上とする場合には、後述する非熱融着性繊維として、ポリビニルアルコール(PVA)繊維を少なくとも使用することが好ましい。これにより、不織布(α)の水解性がより優れる。すなわち、原料繊維(Xs)が、非熱融着性繊維としてPVA繊維を含有しない場合には、原料繊維(Xs)中の生分解性熱融着性繊維(X)の含有量は、2質量%以上10質量未満%がより好ましく、5〜8質量%が特に好ましい。
【0030】
(非熱融着性繊維)
原料繊維(Xs)は、50〜98質量%の範囲で、非熱融着性繊維を含有する。
非熱融着性繊維は、エアレイドウェブの熱処理時に溶融しない樹脂からなる繊維であり、上述の樹脂(B)からなる繊維(以下、単に「高融点繊維」ともいう。);PVA繊維;高融点繊維およびPVA繊維以外の任意の繊維:が挙げられる。非熱融着性繊維は、不織布(α)の生分解性の観点から、高融点繊維を含有することが好ましく、水解性の観点から、PVA繊維を含有することが好ましい。そのため、生分解性と水解性の両方の観点からは、非熱融着性繊維として、高融点繊維およびPVA繊維を使用することが好ましい。
【0031】
高融点繊維としては、樹脂(B)の1種以上からなるものであれば特に限定されず、市販品を使用しても、公知の方法で製造したものを用いてもよい。
高融点繊維を構成する樹脂(B)が2種以上である場合、高融点繊維は、2種以上の繊維の混合物であっても、2種以上の樹脂(B)を複合化した複合繊維であってもよい。
複合繊維の繊維形態としては、たとえば、異なる2種の樹脂(B)を複合化させて得られるサイドバイサイド型構造、芯鞘型構造などが挙げられる。芯鞘型構造は、同芯芯鞘型構造でも偏芯芯鞘型構造でもよい。
また、種類は同じであっても分子量の異なる2種以上の樹脂の混合物、複合繊維であってもよい。
高融点繊維は、1種以上を使用できる。
【0032】
高融点繊維は、中実であっても中空であってもよく、また、潜在捲縮繊維であっても、捲縮性を有していない繊維であってもよいが、潜在捲縮繊維が好ましく、中空潜在捲縮繊維が特に好ましい。
潜在捲縮繊維は、熱により捲縮が顕在化するため、潜在捲縮繊維を含んで形成されたエアレイドウェブを熱処理すると、捲縮が顕在化する。そのため、得られる不織布(α)はより嵩高くなる。
さらに、潜在捲縮繊維が、軸方向に沿う中空部を有する中空潜在捲縮繊維であると、中空部を有することにより、不織布(α)の坪量を低減できるとともに、不織布(α)にクッション性を付与できる。その結果、吸収体10Aの剛性を低減でき、吸収体10Aの使用感が優れる。
【0033】
高融点繊維として使用される中空潜在捲縮繊維としては、熱収縮性の異なる樹脂(B)をたとえばサイドバイサイド型に配置して、潜在捲縮性を付与した中空の複合繊維が挙げられる。なかでも、分子量の異なるポリ乳酸をサイドバイサイド型に配した中空潜在捲縮繊維が好ましい。
【0034】
高融点繊維の繊維長は、上述した生分解性熱融着性繊維(X)と同様の理由から、2〜20mmが好ましく、2〜10mmがより好ましく、2〜6mmがさらに好ましい。
【0035】
高融点繊維の繊度は、上述した生分解性熱融着性繊維(X)と同様の理由から、0.5〜74dtexが好ましく、0.8〜35dtexがより好ましく、1.0〜20dtexがさらに好ましい。ただし、中空潜在捲縮繊維の場合には、繊度は、5〜50dtexが好ましく、8〜35dtexがより好ましく、10〜25dtexがさらに好ましい。
【0036】
PVA繊維は水溶性繊維であり、市販品を使用しても、公知の方法で製造したものを用いてもよい。
PVA繊維を構成するPVA樹脂としては、生分解プラスチックのJIS規格K6950(ISO14851)を満たすものが望ましい。
PVA繊維の繊維長は、生分解性熱融着性繊維(X)と同様の理由から、2〜20mmが好ましく、2〜10mmがより好ましく、2〜6mmがさらに好ましい。
PVA繊維の繊度は、生分解性熱融着性繊維(X)と同様の理由から、0.5〜74dtexが好ましく、0.8〜35dtexがより好ましく、1.0〜20dtexがさらに好ましい。
【0037】
高融点繊維やPVA繊維には該当しない任意の繊維としては、不織布(α)の生分解性を損なわない繊維を使用できる。具体的には、セルロース繊維(パルプ、レーヨン、キュプラ、コットンなど)、天然繊維等が挙げられる。ただし、セルロース繊維は親水性であるため、原料繊維(Xs)中の含有量が多すぎると、吸収層の浸透性を損なうおそれがある。そのため、原料繊維(Xs)中のセルロース繊維の含有量は、5質量%未満であることが好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下が特に好ましい。
【0038】
(原料繊維(Xs)の好適な構成)
原料繊維(Xs)は、生分解性熱融着性繊維(X)と非熱融着性繊維とからなり、非熱融着性繊維は、上述のとおり、不織布(α)の生分解性と水解性の両方の観点から、高融点繊維とPVA繊維とを含むことが好ましい。高融点繊維は、少なくとも中空潜在捲縮繊維を含むことが好ましく、高融点繊維として中空潜在捲縮繊維のみを使用することがより好ましい。
【0039】
原料繊維(Xs)中の生分解性熱融着性繊維(X)の含有量は、2〜50質量%であり、3〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
原料繊維(Xs)中の高融点繊維の含有量は、10〜98質量%が好ましく、20〜95質量%がより好ましく、50〜90質量%がさらに好ましい。
原料繊維(Xs)中のPVA繊維の含有量は、0〜98質量%が好ましく、3〜50質量%がより好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。
原料繊維(Xs)中の生分解性熱融着性繊維(X)、高融点繊維、PVA繊維の各含有量が上記範囲であると、不織布(α)は、嵩高く、低密度で、高粘度吸収対象物に対しても特段に優れた浸透性を有し、かつ、水解性、生分解性にも非常に優れる。
【0040】
生分解性熱融着性繊維(X)とPVA繊維との比率としては、水解性の観点から、PVA繊維の含有量は生分解性熱融着性繊維(X)の含有量を100質量%とした際にその50質量%以上であることが好ましく、100〜200質量%であることがより好ましい。
【0041】
[原料繊維(Xs)以外の成分]
不織布(α)からなる吸収層12は、本発明の効果を損なわない範囲で、原料繊維(Xs)以外の他の成分を必要に応じて含有してもよい。
該他の成分としては、液体等を吸収する物品において使用される公知の機能性添加剤を使用できる。
具体的には、例えばゼオライト、活性炭、キチン、キトサン、ホタテ貝殻、酸化チタン、二酸化チタン、酸化マグネシウム、植物抽出物、キノコ抽出物、カテキン、フラボノール、シクロデキストリン、コラーゲン繊維、酸化鉄、クエン酸、ジンクピリチオン、ヒノキチオール、ユーカリエキス等の、消臭機能、抗菌機能、抗ウイルス機能、抗アレルゲン機能、防カビ機能、芳香機能等のいずれか1種以上の機能を有する添加物が挙げられる。
これらの添加剤は、たとえば、エアレイド法によりエアレイドウェブを形成する際に、原料繊維(Xs)に混合する方法等、各添加剤に適した方法で付与できる。
【0042】
[見かけ密度、坪量、厚み]
吸収層を構成する不織布(α)は、見かけ密度が0.015〜0.045g/cm
3であり、0.016〜0.020g/cm
3であることが好ましい。見かけ密度が上記範囲の上限値を超えると、不織布(α)中の空隙が少ない、または、空隙のサイズが小さいため、高粘度吸収対象物に対しての浸透性が不充分となり、高粘度吸収対象物を充分に吸収、保持することが困難となる。また、吸収体10Aの使用感も低下する。見かけ密度が上記範囲の下限値未満であると、不織布(α)中の空隙が多い、または、空隙のサイズが大きいため、高粘度吸収対象物の自重により、不織布(α)が潰れて吸収性が著しく低下する。また、高粘度吸収対象物を仮に一旦吸収したとしても、保持しにくく、高粘度吸収対象物の逆戻りが生じるおそれがある。
【0043】
吸収層が2枚以上の不織布(α)を重ねたものである場合、それぞれの不織布(α)の見かけ密度は、上記範囲内である限り、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0044】
吸収層12の坪量には制限はないが、50〜1200g/m
2であることが好ましく、60〜1000g/m
2であることがより好ましく、80〜800g/m
2であることがさらに好ましく、80〜120g/m
2が特に好ましい。坪量が上記範囲の上限値以下であると、吸収体10Aをたとえばおむつ、生理用品等として人体等に装着する際の取扱性、着用感に優れ、また、吸収体10Aの生産性にも優れる。坪量が上記範囲の下限値以上であると、高粘度吸収対象物を充分に吸収、保持できる。
【0045】
吸収層が2枚以上の不織布(α)を重ねたものである場合、吸収層の坪量とは、2枚以上の不織布(α)の合計の坪量である。それぞれの不織布(α)の坪量は、2枚以上の不織布(α)の合計の坪量が上記範囲内である限り、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0046】
吸収層12の厚みには制限はないが、3〜40mmであることが好ましく、4〜30mmであることがより好ましく、5〜20mmであることがさらに好ましく、5〜7mmが特に好ましい。厚みが上記範囲の上限値以下であると、吸収体10Aをたとえばおむつ、生理用品等として人体等に装着する際の取扱性、着用感に優れる。厚みが上記範囲の下限値以上であると、高粘度吸収対象物を充分に吸収、保持できる。
【0047】
吸収層が2枚以上の不織布(α)を重ねたものである場合、吸収層の厚みとは、2枚以上の不織布(α)の合計の厚みである。それぞれの不織布(α)の厚みは、吸収層としての厚みが上記範囲内である限り、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0048】
<表面層(不織布β)>
表面層11は、吸収層12の表面の少なくとも一部に積層される層である。
図1の例では、表面層11は、吸収層12の一方の表面の全面に積層した構成を有する。吸収体10Aにおいて、吸収対象物は、表面層11側から吸収される。
【0049】
表面層11は、吸収体10Aの表面の風合い、肌触り、強度等を向上させるために設けられる。また、表面層11は、吸収層12からの繊維の脱落を防止する効果も奏する。すなわち、上述の吸収層12は、エアレイドウェブを熱処理して得られた不織布(α)からなることに起因して、原料繊維(Xs)が脱落しやすい場合がある。これに対して、吸収層12の表面に表面層11を設けることにより、不織布(α)からの原料繊維(Xs)の脱落を防止できる。
高粘度吸収対象物などの対象物は、吸収層12で吸収、保持される。そのため、表面層11は、対象物を速やかに透過させる必要がある。
【0050】
不織布(β)は、生分解性ポリエステル繊維(Y1)およびセルロース繊維(Y2)を含有する原料繊維(Ys)と、水溶性樹脂(Y3)とを含有し、見かけ密度が0.005〜0.045g/cm
3で、坪量が10〜100g/m
2の不織布である。
【0051】
[原料繊維(Ys)]
生分解性ポリエステル繊維(Y1)としては、たとえば、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート)、ポリカプロラクトン、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート/カーボネート)、ポリ(ブチレンアジペート/テレフタレート)、ポリエチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリヒドロキシブチレートおよびポリグリコール酸等の生分解性ポリエステルからなる繊維が挙げられる。
【0052】
生分解性ポリエステル繊維(Y1)は、1種以上の生分解性ポリエステルからなる繊維であり、2種以上の生分解性ポリエステルからなる場合、生分解性ポリエステル繊維(Y1)は、2種以上の生分解性ポリエステル繊維の混合物であっても、2種以上の生分解性ポリエステルを複合化した複合繊維であってもよい。
複合繊維の繊維形態としては、異なる2種の生分解性ポリエステルを複合化させて得られるサイドバイサイド型構造、芯鞘型構造などが挙げられる。芯鞘型構造は、同芯芯鞘型構造でも偏芯芯鞘型構造でもよい。
また、種類は同じであっても分子量の異なる2種以上の樹脂の混合物、複合繊維であってもよい。
生分解性ポリエステル繊維(Y1)は、1種以上を使用できる。
【0053】
生分解性ポリエステル繊維(Y1)は、中実であっても、中空であってもよく、また、潜在捲縮繊維であっても、捲縮性を有していない繊維であってもよいが、潜在捲縮繊維が好ましく、中空潜在捲縮繊維が特に好ましい。
潜在捲縮繊維は、熱により捲縮が顕在化するため、詳しくは後述するように、不織布(β)の乾燥工程などで熱を与えることにより、捲縮が顕在化する。そのため、得られる不織布(β)はより嵩高くなり、風合い、肌触りにも優れることに加え、高粘度吸収対象物を表面上に残存させることなく、良好に透過させることができる。
さらに、潜在捲縮繊維が、軸方向に沿う中空部を有する中空潜在捲縮繊維であると、不織布(β)の坪量を低減できる。
潜在捲縮繊維としては、熱収縮性の異なる生分解性ポリエステル樹脂が、たとえばサイドバイサイド型に配置された中空の複合繊維が好ましく、なかでも、分子量の異なるポリ乳酸をサイドバイサイド型に配した中空繊維が好ましい。
【0054】
生分解性ポリエステル繊維(Y1)の繊維長は、20〜100mmであり、30〜90mmが好ましく、50〜80mmがより好ましい。繊維長が上記範囲の下限値以上であると、不織布(β)の単位面積あたりに存在する生分解性ポリエステル繊維(Y1)の末端が少なくなり、不織布(β)の表面が滑らかになる。そのため、風合い、肌触りに優れ、表面層11の形成に適した不織布(β)が得られる。生分解性ポリエステル繊維(Y1)の繊維長が上記範囲の上限値以下であると、不職布の地合が取りやすく、均一な面感で風合いの優れた不職布(β)が得られる。
【0055】
生分解性ポリエステル繊維(Y1)の繊度は、0.5〜74dtexが好ましく、0.8〜35dtexがより好ましく、1.0〜20dtexがさらに好ましい。ただし、中空潜在捲縮繊維の場合には、繊度は、5〜50dtexが好ましく、8〜35dtexがより好ましく、10〜25dtexがさらに好ましい。繊度が上記範囲の下限値未満では、肌触りは良好になるが、繊維間の空隙のサイズが小さくなり、高粘度吸収対象物の透過性が低下し、表面層11上に高粘度吸収対象物が残存する可能性がある。繊度が上記範囲の上限値を超えると、繊維自体が剛直になるためにチクチク感が増し、肌触りが悪くなる傾向にある。
【0056】
セルロース繊維(Y2)は、原料繊維(Ys)全体の親水性を高めるために使用される。原料繊維(Ys)の親水性が高まると、詳しくは後述するように、バインダー成分として使用される水溶性樹脂(Y3)が原料繊維(Ys)に充分に付着し、原料繊維(Ys)同士を充分に結合させることができる。その結果、強度に優れた不織布(β)を得ることができる。
セルロース繊維(Y2)としては、たとえばパルプ繊維、レーヨン繊維(酢酸レーヨン繊維等のレーヨン誘導体繊維を含む。)、コットン繊維、キュプラ繊維等が挙げられ、なかでも、上述の親水性を高める効果だけでなく、繊維設計の多様性が高い点から、レーヨン繊維が好ましい。
セルロース繊維(Y2)は1種以上を使用できる。
【0057】
セルロース繊維(Y2)は、上述した生分解性ポリエステル繊維(Y1)に比較して柔らかいため、繊維長が短くても不織布(β)の表面の滑らかさに影響は及ぼしにくいが、生分解性ポリエステル繊維(Y1)と同様に、20〜100mmであることが好ましい。さらには30〜90mmが好ましく、40〜80mmがより好ましい。
【0058】
セルロース繊維(Y2)の繊度は、0.5〜74dtexが好ましく、1.5〜50dtexがより好ましく、2〜30dtexがさらに好ましい。繊度が上記範囲の下限値未満では、肌触りは良好になるが、繊維間の空隙のサイズが小さくなり、高粘度吸収対象物の透過性が低下し、表面層11上に高粘度吸収対象物が残存する可能性がある。繊度が上記範囲の上限値を超えると、肌触りが悪くなる可能性がある。
【0059】
原料繊維(Ys)は、生分解性ポリエステル繊維(Y1)およびセルロース繊維(Ys)に該当しない任意の繊維を含んでもよい。任意の繊維としては、セルロース繊維以外の天然繊維等が挙げられる。原料繊維(Ys)中の任意の繊維の含有量は、30質量%以下であることが好ましい。
【0060】
[水溶性樹脂(Y3)]
水溶性樹脂(Y3)は、上述のとおり、原料繊維(Ys)同士を結合させるバインダー成分として使用される。詳しくは後述するが、不織布(β)の製造工程において、水溶性樹脂(Y3)の水溶液を付与し、乾燥することにより、原料繊維(Ys)同士を結合させることができる。水溶性樹脂(Y3)をバインダー成分として使用することにより、不織布(β)の水解性が優れる。
【0061】
水溶性樹脂(Y3)としては、たとえば、PVA、デンプン、デンプンの誘導体、アルギン酸ナトリウム、トラントガム、グアーガム、キサンタンガム、アラビアゴム、カラギーナン、ガラクトマンナン、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、プルプラン、ポリエチレンオキシド、PVA、ビスコース、ポリビニルエチルエーテル、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸のヒドロキシル化誘導体、ポリビニルピロリドン/ビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロースの塩、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースの塩等が挙げられ、1種以上を使用できるが、接着性能と水解性に優れる点から、PVAが好ましい。
【0062】
[各成分の含有量および比率]
不織布(β)中において、原料繊維(Ys)を構成する生分解性ポリエステル繊維(Y1)およびセルロース繊維(Y2)と、水溶性樹脂(Y3)とは、下記式(1)および(2)で表される質量比率を満たす。
0.75≦Y1/Y2≦30…(1)
0.002≦Y3/(Y1+Y2)≦0.3…(2)
【0063】
なお、式(1)および(2)中の略号は以下を意味する。
Y1:不織布(β)中の生分解性ポリエステル繊維(Y1)の質量
Y2:不織布(β)中のセルロース繊維(Y2)の質量
Y3:不織布(β)中の水溶性樹脂(Y3)の質量
【0064】
質量比(Y1/Y2)が上記式(1)を満たすと、生分解性ポリエステル繊維(Y1)とセルロース繊維(Y2)との比率が適度であるため、強度、水解性、風合い等に優れた不織布(β)が得られる。具体的には、質量比(Y1/Y2)が上記範囲の下限値未満であると、バインダー成分として使用される水溶性樹脂(Y3)の多くがセルロース繊維(Y2)に付着することになり、その結果、水解性が低下する。また、バインダー成分の乾燥による風合い低下(ゴワゴワ感)を生じやすい。一方、質量比(Y1/Y2)が上記範囲の上限値を超えると、セルロース繊維(Y2)の量が少なすぎ、そのため、原料繊維(Ys)全体の親水性が不充分となる。その結果、詳しくは後述するように、バインダー成分として使用される水溶性樹脂(Y3)が原料繊維(Ys)に充分に付着しにくくなり、不織布(β)の強度が不足する。
【0065】
質量比(Y3/(Y1+Y2))が上記式(2)で示される下限値未満であると、水溶性樹脂(Y3)の量が少なすぎ、原料繊維(Ys)を充分に結合させることができず、不織布(β)の強度が不足する。質量比(Y3/(Y1+Y2))が上記式(3)で示される上限値を超えると、水溶性樹脂(Y3)の量が多すぎ、不織布(β)にゴワゴワ感が生じ、風合い、肌触りが低下する。また、水溶性樹脂(Y3)が不織布(β)の空隙を閉塞し、対象物の透過を妨げ、高粘度吸収対象物が表面層上に大きく拡散することがある。
【0066】
質量比(Y1/Y2)は、下記式(3)を満たすことが好ましく、質量比(Y3/(Y1+Y2))は、下記式(4)を満たすことが好ましい。
0.8≦Y1/Y2≦9…(3)
0.025≦Y3/(Y1+Y2)≦0.3…(4)
【0067】
[原料繊維(Ys)および水溶性樹脂(Y3)以外の成分]
不織布(β)からなる表面層11は、本発明の効果を損なわない範囲で、原料繊維(Ys)および水溶性樹脂(Y3)以外の他の成分を必要に応じて含有してもよい。
該他の成分としては、上述した公知の機能性添加剤等を使用できる。
【0068】
[見かけ密度、坪量、厚み]
表面層11を構成する不織布(β)は、見掛け密度が0.005〜0.045g/cm
3であり、0.005〜0.04g/cm
3が好ましい。見かけ密度が上記範囲の上限値を超えると、高粘度吸収対象物が不織布(β)からなる表面層を速やかに透過できず、表面層が吸収層による高粘度吸収対象物の吸収、保持を妨げてしまう。その結果、高粘度吸収対象物は、表面層上に大きく拡散する。また、不織布(β)の水解性も低下する。見かけ密度が上記範囲の下限値未満であると、高粘度吸収対象物の自重によっては、不職布(β)がつぶれてしまい、シートとしての吸収性、保持性を保てない。
【0069】
表面層11を構成する不織布(β)は、坪量が10〜100g/m
2であり、15〜60g/m
2が好ましい。坪量が上記範囲の上限値を超えると、高粘度吸収対象物が不織布(β)からなる表面層を速やかに透過できず、表面層が吸収層による高粘度吸収対象物の吸収、保持を妨げてしまう。その結果、高粘度吸収対象物は、表面層上に大きく拡散する。また、不織布(β)の水解性も低下する。坪量が上記範囲の下限値未満であると、吸収体を構成する層としての作用を奏さず、不織布(β)を設けることによる効果が期待できない。
【0070】
表面層11の厚みには制限はないが、1.0〜10mmが好ましく、1.5〜5mmがより好ましい。厚みが上記範囲の上限値を超えると、高粘度吸収対象物が不織布(β)からなる表面層を速やかに透過できず、表面層が吸収層による高粘度吸収対象物の吸収、保持を妨げてしまう。その結果、高粘度吸収対象物は、表面層上に大きく拡散する。また、不織布(β)の水解性も低下する。厚みが上記範囲の下限値未満であると、吸収体を構成する層としての作用を奏さず、不織布(β)を設けることによる効果が期待できない。
【0071】
<吸収体の製造方法>
図1の吸収体10Aは、吸収層12を構成する不織布(α)と、表面層11を構成する不織布(β)とをそれぞれ製造し、これらを重ねる方法等により製造できる。
【0072】
(不織布(α)の製造)
不織布(α)は、原料繊維(Xs)からエアレイドウェブを形成し、該エアレイドウェブを熱処理して繊維同士を結合させる方法により、製造できる。
【0073】
具体的には、まず、メッシュ状無端ベルト上に透気性キャリアシートを配置し、該透気性キャリアシート上に、エアレイド方式のウェブ形成装置にて、原料繊維(Xs)を空気中で混合しつつ堆積させてウェブを形成することによりエアレイドウェブを得る(ウェブ形成工程)。
エアレイド方式のウェブ形成装置は、一般的に、原料繊維(Xs)を空気中で均一に混合するための吸気流を吐出するノズルと、メッシュ状無端ベルトの下側に配置されたサクションボックスを備えており、吸気流が、メッシュ状無端ベルトを通過してサクションボックスに吸引されるようになっている。このウェブ形成装置に原料繊維(Xs)を供給すると、吸気流により原料繊維(Xs)が混合されつつメッシュ状無端ベルト上に落下し、メッシュ状無端ベルト上に繰り出された透気性キャリアシート上に堆積し、エアレイドウェブが形成される。
【0074】
透気性キャリアシートとしては、吸気流が通過可能で、かつエアレイドウェブを保持できるものであれば特に限定されない。
【0075】
ついで、エアレイドウェブを熱処理し、繊維同士を結合させる(繊維結合工程)。熱処理は、たとえば、エアレイドウェブを加熱炉に導入する方法、エアレイドウェブを熱風処理する方法等の一般的なサーマルボンド法により行える。
熱風処理としては、ウェブが、周面に通気性を有する回転ドラムを備えたスルーエアードライヤを通過することにより熱処理される方法(熱風循環ロータリードラム方式)や、ウェブが、熱風をウェブに貫通させることのできるボックスタイプドライヤを通過することにより熱処理される方法(熱風循環コンベアオーブン方式)などが挙げられる。
なお、熱風処理によるサーマルボンド法は、エアスルー法あるいはスルーエア法などと呼称されることがある。
【0076】
熱処理温度は、エアレイドウェブに含まれる樹脂(A)の融点以上であり、エアレイドウェブが樹脂(B)を含有する場合には、樹脂(B)の融点未満の温度とする。このような温度で熱処理することにより、樹脂(A)の少なくとも一部が溶融してバインダーとして作用し、溶融した樹脂(A)を介して繊維同士が結合する。
エアレイドウェブが潜在捲縮繊維を含む場合、繊維結合工程での熱処理は、該潜在捲縮繊維の捲縮を顕在化させるための熱処理を兼ねてもよい。または、繊維結合工程の前後に、潜在捲縮合成繊維の捲縮を顕在化させるための熱処理工程を別途設けてもよい。
【0077】
不織布(α)の見かけ密度、坪量、厚み等は、原料繊維(Xs)に用いる各繊維の種類、使用比率、透気性キャリアシート単位面積あたりの原料繊維(Xs)の堆積量等を調整することにより、制御できるが、繊維結合工程の後、不織布の密度、厚みを微調整する目的などで、熱プレス処理を行ってもよい。その場合のプレス圧は、例えば線圧80kg/cm以下、好ましくは線圧20kg/cm以下の低圧とされ、繊維同士を結合させる繊維結合工程として一般に行われる熱プレス処理よりも小さい圧力で行われる。
このようにして得られた不織布から透気性キャリアシートを剥離することで、吸収層12をなす不織布(α)が得られる。
なお、透気性キャリアシートは、剥離せずそのまま残してもよい。剥離せずにそのまま残す場合は、透気性キャリアシートとして、生分解性を有するものを用いることが好ましい。このようなシートとしては、例えばティッシュペーパーが挙げられる。なお、透気性キャリアシートを残す場合には、表面層11側から適用された吸収対象物の吸収を該透気性キャリアシートが阻害しないように、吸収層12からみて、表面層11が配置されていない側となるように配置することが必要である。
【0078】
以上のように、エアレイドウェブを熱処理して得られた不織布(α)は、ウェブ形成工程としてエアレイド法を採用し、かつ、繊維結合工程としてサーマルボンド法を採用したものであるため、吸収性能に優れる。
仮に、ウェブ形成工程として、カーディング法を採用したとする。カーディング法は、ローラーカード機(カーディングマシン)を用い、繊維塊を機械的に梳って得られた繊維長の長い原料繊維により、シート状のウェブを形成する方法である。カーディング法は、エアレイド法と同じ乾式法ではあるが、カーディング法を経て得られる不織布は、たとえエアレイド法を経て得られる不織布と密度、厚みが同じであっても、優れた吸収性能を有しない。
これは以下の理由によるものと考えられる。すなわち、エアレイド法では、空気流を利用して繊維長の短い原料繊維を積層させてウェブを形成するため、得られたエアレイドウェブ中では、原料繊維が3次元的にランダムに配向する。このようなウェブに対し、サーマルボンド法を適用することで、得られるエアレイドウェブ中に、高粘度吸収対象物の吸収、保持に適した空隙が多く形成されるものと考えられる。一方、ウェブをカーディング法で形成した場合、得られたカードウェブ中では、繊維がほぼ2次元に配向するため、空隙が少なくなると考えられる。
また、エアレイドウェブの繊維結合工程としてサーマルボンド法を採用することにより、エアレイドウェブ中の空隙を維持したまま、繊維同士を結合できるものと考えられる。
【0079】
(不織布(β)の製造)
不織布(β)は、原料繊維(Ys)からウェブを製造し(ウェブ形成工程)、ついで、得られたウェブに、バインダー成分として水溶液樹脂(Ys)の水溶液を付与、乾燥し、繊維同士を結合させる(繊維結合工程)ことにより、製造できる。
【0080】
ウェブ形成工程としては、原料繊維(Ys)が繊維長20〜100mmの生分解性ポリエステル繊維(Y1)を含むことから、ローラーカード機(カーディングマシン)を用い、繊維塊を機械的に梳って得られた原料繊維からシート状のウェブを形成するカーディング法を採用することが好ましい。ローラーカード機としては、通常の装置を使用できる。
【0081】
カーディング法により得られたウェブ(以下、「カードウェブ」という。)に対して、水溶性樹脂(Y3)の水溶液を付与する方法としては、カードウェブを該水溶液中に浸漬するディッピング法、カードウェブに該水溶液中を吹き付けるスプレー法が好ましい。このようにバインダー成分の水溶液を付与、乾燥することで繊維同士を結合させる方法は、ケミカルボンド法と呼ばれる。
水溶液樹脂(Ys)の水溶液中の水溶性樹脂(Y3)の濃度は、2.0〜20.0g/Lが好ましく、5.0〜10.0g/Lがより好ましい。濃度が上記範囲内であれば、原料繊維(Ys)を充分に結合させることができ、かつ、ゴワゴワ感がなく、風合い、肌触りに優れた不織布(β)が得られやすい。
【0082】
付与した水溶性樹脂(Y3)の水溶液の乾燥は、一般の乾燥装置を用いて行うことができ、たとえば、不織布(α)において説明した熱風循環ロータリードラム方式、熱風循環コンベアオーブン方式などを採用してもよい。
乾燥温度は、たとえば100〜140℃が好ましい。
【0083】
カーディングウェブが潜在捲縮繊維を含む場合、繊維結合工程中における水溶性樹脂(Y3)の水溶液を乾燥させる工程は、該潜在捲縮繊維の捲縮を顕在化させるための熱処理を兼ねてもよい。または、繊維結合工程の前後に、潜在捲縮合成繊維の捲縮を顕在化させるための熱処理工程を別途設けてもよい。
【0084】
このようにして、表面層11をなす不織布(β)が得られる。
なお、不織布(β)の見かけ密度、坪量、厚み等は、原料繊維(Ys)に用いる各繊維の種類、使用比率、水溶性樹脂(Y3)の使用比率等を調整することにより、制御できる。
【0085】
以上のようにして得られた不織布(α)を吸収層12とし、その一方の表面の全面に、表面層11をなす不織布(β)を重ねることにより、
図1の吸収体10Aが得られる。
不織布(α)と不織布(β)とは、単に重ねられているだけでも、少なくとも一部が接着していてもよい。接着させる場合には、たとえば樹脂(A)からなる粉体などの熱融着性の接着成分を別途用いて接着させる方法、このような接着成分を用いずに、不織布(α)と不織布(β)とを重ねて熱処理することにより、不織布(α)に含まれている樹脂(A)の熱融着性を利用して、不織布(α)と不織布(β)の少なくとも一部を接着させる方法等が挙げられる。
【0086】
また、以上の説明では、吸収層12を構成する不織布(α)と、表面層11を構成する不織布(β)とをそれぞれ製造し、これらを重ねる方法を例示したが、不織布(α)を製造する際の透気性キャリアシートとして不織布(β)を用い、不織布(β)を剥離せずそのまま配置する方法によっても、
図1の吸収体10Aを製造できる。
【0087】
(2)第2の実施形態
図2は、本発明の第2の実施形態の吸収体10Bの構成を示す縦断面図である。
この例の吸収体10Bは、吸収層12の一方の表面の全面に、表面層11が積層し、吸収層12の他方の表面の全面に、以下に説明する吸水層13が積層した3層構成である。第2の実施形態の吸収体10Bは、吸水層13を有する点が、第1の実施形態と異なる。
【0088】
<吸水層>
この例の吸水層13は、セルロース繊維を含有する原料繊維(Zs)から形成されたエアレイドウェブが熱処理され、原料繊維(Zs)が含有する熱融着性繊維で熱融着された不織布(γ)からなる。吸水層13は、表面層11側から適用された吸収対象物に含まれ、吸収層12には保持されにくい水分を主に吸水する目的で設けられる。そのため、吸収層12が表面層11と吸水層13との間に位置するように、各層が配置される。
【0089】
不織布(γ)は、親水性であるセルロース繊維を含むため、吸水性に優れるとともに、生分解性にも優れる。また、この例のようにエアレイドウェブから得られた不織布であると、嵩高く、吸水性に優れる。また、エアレイドウェブが熱融着性繊維で熱融着された不織布であると、原料繊維(Zs)同士が主に点接着する。そのため、熱融着性繊維の配合率により結合力がコントロールされ、水解性を付与することもできる。
【0090】
セルロース繊維としては、従来、吸収体に用いられている各種セルロース繊維を使用でき、上述のとおり、パルプ、レーヨン、コットン、キュプラ等が挙げられ、1種以上を使用できる。なかでも、原料繊維(Zs)に使用されるセルロース繊維としては、繊維長、生産性、原料価格などの点で、パルプ繊維が好ましい。また、パルプ繊維は、含有する異物が少ない点でも好ましい。
パルプ繊維としては、木材パルプ(針葉樹、広葉樹)、ラグパルプ、リンターパルプ、リネンパルプ、楮・三椏・雁皮パルプなどの非木材パルプ、古紙パルプなどの原料パルプから得られたものが例示できる。また、原料パルプとしては、機械パルプ(GP、RGP、TMPなど。)、化学パルプ(亜硫酸パルプ、クラフトパルプなど。)のいずれも使用できる。これらのなかでは、供給量、品質の安定性、コストなどの点から、クラフトパルプが好ましい。
【0091】
パルプ繊維の繊維長は、4mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。
パルプ繊維としては、通常の木材パルプ等が使用できるが、低密度の不織布とするため、また、他の繊維との混綿のし易さのため等から、長さ平均加重で求められるコースネスが0.1mg/mから0.3mg/m、好ましくは0.12mg/m〜0.25mg/mのものが好適に使用される。
【0092】
原料繊維(Zs)は、バインダーとして作用し、不織布(γ)の保形性に寄与する熱融着性繊維を含有することが好ましい。熱融着性繊維としては、たとえば吸収層12において説明した上述の生分解性熱融着性繊維(X)を含有することが好ましい。また、原料繊維(Zs)は、必要に応じて、熱融着性繊維およびセルロース繊維以外の任意の繊維(たとえば、上述の高融点繊維、PVA繊維、セルロース繊維以外の天然繊維等。)を含んでもよい。
【0093】
原料繊維(Zs)中のセルロース繊維の含有量は、5〜98質量%であることが好ましく、50〜95質量%がより好ましい。原料繊維(Zs)中の熱融着性繊維の含有量は、5〜15質量%であることが好ましく、5〜10質量%がより好ましい。
各繊維の含有量が上記範囲内であると、不織布(γ)の吸水性、生分解性、水解性、保形性が優れる。不織布(γ)の保形性が優れると、不織布(γ)の液体吸収量が飽和状態になった場合でも、液体自重による厚み減少が小さく、かつ、不織布(γ)に外部から力が加わったときにも厚みが減少しにくい。そのため、厚みの減少による、吸液可能な液体量の低下を抑制できる。
【0094】
原料繊維(Zs)中のセルロース繊維と熱融着性繊維の合計の割合は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。該合計の割合が50質量%以上であると、不織布(γ)の保液性、水解性、生分解性が良好となる。該割合の上限は特に限定されず、100質量%であってもよく、任意に配合される他の繊維を考慮して適宜設定できる。任意の繊維として、上述の高融点繊維を含有する場合、原料繊維(Zs)中の高融点繊維の含有量は、3〜48質量%が好ましい。
【0095】
原料繊維(Zs)に使用される熱融着性繊維の繊維長は、上述した生分解性熱融着性繊維(X)と同様に、2〜20mmが好ましく、2〜10mmがより好ましく、2〜6mmがさらに好ましい。このような繊維長であると、エアレイドウェブを形成する際に、これらの繊維が3次元的にランダムに積層し、その結果、嵩高く、優れた保液性を発現する不織布(γ)が得られやすい。また、型崩れもしにくくなる。
原料繊維(Zs)に使用される熱融着性繊維の繊度は、上述した生分解性熱融着性繊維(X)と同様に、0.5〜74dtexが好ましく、0.8〜35dtexがより好ましく、1.0〜20dtexがさらに好ましい。このような繊度であると、嵩高く、優れた保液性を発現する不織布(γ)が得られやすい。また、型崩れもしにくくなるとともに、肌触りにも優れる。
熱融着性繊維は1種以上を使用できる。
【0096】
不織布(γ)の坪量は、30〜1000g/m
2が好ましく、40〜700g/m
2がより好ましく、50〜500g/m
2がさらに好ましい。坪量が上記範囲の下限値以上であると、液体を保持する能力に優れ、上記範囲の上限値以下であると、吸収体10Bの着用感、取扱性等に優れる。
不織布(γ)の密度は、0.01〜0.1g/cm
3が好ましく、0.01〜0.08g/cm
3がより好ましく、0.02〜0.06g/cm
3がさらに好ましい。密度が上記範囲の上限値を超えると、不織布(γ)中の空隙が少ない、または空隙のサイズが小さすぎて、吸収速度が遅くなるおそれがある。密度が上記範囲の下限値未満であると、不織布(γ)中の空隙が多くなりすぎたり、空隙のサイズが大きくなりすぎたりする可能性がある。そのため、不織布(γ)の液体吸収量が飽和状態になった場合、液体自重による厚み減少が大きくなり、かつ不織布(γ)中に外部から力が加わったときに厚みが減少しやすくなる。その結果、不織布(γ)が吸液可能な液体量が低下し、液体を仮に一旦吸収したとしても保持しにくく、逆戻りが生じるおそれがある。
【0097】
吸水層13は、上述した公知の機能性添加剤等の、原料繊維(Zs)以外の他の成分を必要に応じて含有してもよい。
【0098】
(3)第3の実施形態
図3は、本発明の第3の実施形態の吸収体10Cの構成を示す縦断面図である。
この例の吸収体10Cは、吸収層12の両面全体を覆うように、表面層11が設けられている。表面層11が吸収層12の両面全体を覆う具体的な形態としては、表面層11をなす不織布(β)を袋状に成形し、その中に吸収層12をなす不織布(α)を配置する形態、不織布(α)に不織布(β)を巻き付ける形態等が挙げられる。
【0099】
(4)その他の実施形態
本発明の吸収体は、第1〜第3の実施形態に限定されない。たとえば、吸水層を有する態様において、袋状の表面層の中に、吸収層と吸水層との積層体が配置された形態等も挙げられる。
【0100】
以上説明したように、本発明の吸収体は、高粘度吸収対象物を良好に吸収、保持する吸収層の表面の少なくとも一部に、特定の表面層が積層した構成を有する。そのため、風合い、肌触りが優れる。また、該表面層は、高粘度吸収対象物の透過性に優れ、高粘度吸収対象物が表面層上に残存しない。よって、表面層が、吸収層による高粘度吸収対象物の吸収、保持を妨げることもない。また、本発明の吸収体は、水解性および生分解性も備えるため、廃棄が容易であり、環境にもやさしい。
【実施例】
【0101】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
(実施例1〜8、比較例1〜9)
各例において、
図1に示す吸収体10Aと同様の2層構成の吸収体を製造した。なお、比較例1は、吸収層のみからなる。
まず、表1〜表3に示す各配合にて、吸収層(不織布(α))を製造した。
具体的には、コンベアに装着されて走行するメッシュ状無端ベルト上に、ティッシュペーパー(透気性キャリアシート)を繰り出しつつ、エアレイド法のウェブフォーミング機に、表1〜表3に示す配合の原料繊維(Xs)を表1〜表3に示す吸収層の坪量となるように供給した。ついで、原料繊維(Xs)を空気中で均一に混合しつつ、メッシュ状無端ベルト上に吸気流とともに下降させて落下堆積させることにより、ティッシュペーパー上にエアレイドウェブを形成した。
ついで、このエアレイドウェブを、熱風をウェブに貫通させることのできるボックスタイプドライヤ(熱風循環コンベアオーブン)を通過させて熱風処理し、不織布とした。熱風処理温度(熱風循環コンベアオーブン温度)は、120〜140℃とした。その後、不織布からティッシュペーパーを剥がし取り、表1〜表3に示す坪量、厚さ、見かけ密度の不織布(α)を得た。
なお、厚さおよび坪量は実測値であり、厚さと坪量から、見かけ密度を算出した。厚さはノギスにより測定した。
【0102】
一方、表1〜表3に示す各配合にて、表面層(不織布(β))を製造した。
具体的には、ローラーカード機(カーディングマシン)を用い、繊維塊を機械的に梳って得られた原料繊維(Ys)からシート状のカードウェブを形成した。
ついで、水溶性樹脂(Y3)であるPVA樹脂の水溶液(PVA樹脂濃度:5.0g/L)が投入された槽中に、得られたカードウェブを浸漬し、水溶性樹脂(Y3)を付着(ディッピング法)させた後、ドラム式の乾燥装置で乾燥した。この際、表面層の単位面積当たりのPVA質量(乾燥後)が、表1〜表3の値となるように、PVA樹脂の水溶液を付着させた。乾燥温度は、130℃とした。このようにして、表1〜表3に示す坪量、厚さ、見かけ密度の不織布(β)を得た。
なお、厚さおよび坪量は実測値であり、厚さと坪量から、見かけ密度を算出した。厚さはノギスにより測定した。
【0103】
上述のようにして得られた不織布(α)および不織布(β)を1枚ずつ重ねて、各例の吸収体を得た。
各例の吸収体について、以下の方法により、高粘度液体吸収性、風合い、水解性を評価した。結果を表1〜表3に示す。
【0104】
表中の略号は以下の内容を示す。
なお、PLAはポリ乳酸、PBSはポリブチレンサクシネートである。
PLA/PLA繊維(1):分子量の異なるPLAのサイドバイサイド型中空潜在捲縮繊維、繊度17dtex、繊維長5mm
PLA/PLA繊維(2):分子量の異なるPLAのサイドバイサイド型中空潜在捲縮繊維、繊度17dtex、繊維長64mm
PLA/PLA繊維(3):分子量の異なるPLAのサイドバイサイド型中空潜在捲縮繊維、繊度6.6dtex、繊維長64mm
PBS/PLA繊維:芯鞘型潜在捲縮繊維、繊度17dtex、質量比(PBS/PLA)=6/4、繊維長5mm(鞘:PBS、芯:PLA)
PLA繊維:繊度1.7dtex、繊維長51mm
PVA繊維:繊度2.2dtex、繊維長6mm
レーヨン繊維(1):繊度17dtex、繊維長44mm
レーヨン繊維(2):繊度5.5dtex、繊維長44mm
レーヨン繊維(3):繊度3.3dtex、繊維長44mm
【0105】
<高粘度液体吸収性>
(1)各例で得られた吸収体を10×10cmに裁断したものを試料とし、これを水平な面に固定した。なお、表面層が上方に位置し、吸収層が水平な面に接するように固定した。
(2)シリンジに2mlの高粘度液体を入れ、試料中央の表面に滴下した。高粘度液体としては、ベントナイト、グリセリン、水および高分子増粘剤を混合し、23℃での粘度500mPa・sに調整した水溶液を用いた。
(3)滴下した液の上に、表面を撥水処理した直径100mmのローラをゆっくりと(1回転/秒)転がした。ローラの荷重(線圧)は7g/cmとした。
(4)試料面で拡がった高粘度液体の幅(a)と長さ(b)を測定し、拡散した液体の面積(拡散面積)を計算した。なお、拡散した液体の形状を楕円とみなし、面積は、「面積=π×a×b/4」の計算式により求めた。
上記(4)で算出された拡散面積が小さい方が、高粘度液体吸収性に優れる。
本実施例においては、拡散面積が50cm
2以下であれば、高粘度液体吸収性に優れると判断できる。
【0106】
<風合い>
風合いは、評価項目として、触ったときの、腰、はり、ぬめり、ふんわり感、しなやかさ、ソフトさを採用し、これらについて総合的に判断し、下記のような5段階の官能評価とした。
◎◎:すべての点で好ましく、優れた風合いである。
◎ :やや反発があり、ふんわり感がやや劣るなど、1つの項目でやや劣る。
○ :反発性があり、ふんわり感が低いなど、1つの項目で劣る。
△ :2つの項目で劣る、あるいは1つの項目で著しく劣る。
× :3以上の項目で劣る、あるいは2つ以上の項目で著しく劣る。
【0107】
<水解性>
各例で得られた吸収体を3×3cmに裁断した試料と、水300mlを入れた300mlビーカーをマグネティックスターラーに載せ、直径35mm、厚さ12mmの円盤状回転子を用いて、回転数800rpmで3分攪拌した。攪拌前後のサンプルの崩壊状態を目視で確認し、以下の5段階で評価した。
◎◎:試料が崩壊して水解している。
◎ :試料が崩壊してほぼ水解している。
○ :試料がほとんど崩壊して原型を留めていない。
△ :試料が崩壊しているが、わずかに形状が残存している。
× :試料の崩壊は一部であり、原型が残存している。
【0108】
【表1】
【0109】
【表2】
【0110】
【表3】
【0111】
表1〜表3に示すように、各実施例の吸収体によれば、高粘度液体吸収性に優れ、風合い、水解性にも優れていた。
これに対して、各比較例の吸収体は、表面層を有しないか、有していても、その表面層の構成が適切なものではないため、高粘度液体吸収性、風合い、水解性のうちの少なくとも1つが劣った。
比較例1は表面層を有しないため、風合いの評価項目のうち、特に「ぬめり」が著しく劣った。
比較例2は、表面層の密度が高いため、高粘度液体が表面層を速やかに透過できず、拡散面積が大きい。比較例3も同様の傾向である。
比較例4は、表面層に含まれる水溶性樹脂(Y3)の量が多いため、水溶性樹脂(Y3)が不織布(β)の空隙を閉塞するなどして、高粘度液体吸収性が悪い。なお、比較例4の表面層は、坪量が小さく、かつ、比較的薄いため、風合いは比較的良好である。
比較例5は、表面層に含まれるセルロース繊維(Y2)の量が多く、セルロース繊維(Y2)の繊度が小さいため、表面層の見かけ密度が大きくなるとともに、接着が強くなりすぎる。そのため、水解性低下、風合い低下(ゴワゴワ感)、高粘度液体吸収性低下が認められる。
比較例6は、表面層に含まれる生分解性ポリエステル繊維(Y1)およびセルロース繊維(Y2)の繊度が小さいため、表面層の見かけ密度が高く、風合いに劣る。しかしながら、表面層の厚みが薄いため、高粘度液体吸収性は良好である。また、セルロース繊維(Y2)が比較例5よりは少ないため、水溶性樹脂(Y3)の多くが生分解性ポリエステル繊維に付着しセルロース繊維(Y2)に過度に付着しないため、水解性は比較的良好である。 比較例7は、比較例5および6の特徴を併せ持つ傾向にある。
比較例8は、表面層に繊度が高いセルロース繊維(Y2)を多く含むため、見かけ密度は低いが、水溶性樹脂(Y3)の量が多く、水解性に劣る。
比較例9は、表面層として、比較例5よりも坪量、見かけ密度が低いものを有しているが、表面層に含まれるセルロース繊維(Y2)の量が多いため、水溶性樹脂(Y3)の多くがセルロース繊維(Y2)に過度に付着し、水解性に劣る。