特許第6277789号(P6277789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6277789特許ランキング装置及び特許ランキング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277789
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】特許ランキング装置及び特許ランキング方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 17/30 20060101AFI20180205BHJP
   G06Q 50/18 20120101ALI20180205BHJP
【FI】
   G06F17/30 380E
   G06F17/30 170Z
   G06Q50/18 310
【請求項の数】10
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2014-50185(P2014-50185)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2014-199661(P2014-199661A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2017年1月24日
(31)【優先権主張番号】特願2013-52778(P2013-52778)
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】古澄 英男
(72)【発明者】
【氏名】林 明峰
【審査官】 山本 俊介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/053949(WO,A1)
【文献】 特開2002−149190(JP,A)
【文献】 特開2012−123555(JP,A)
【文献】 特開2005−174313(JP,A)
【文献】 特開2011−138331(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0057533(US,A1)
【文献】 永田 健太郎ほか,特許の有効性に影響を与える要因の検討,情報処理学会研究報告,日本,社団法人情報処理学会,2009年 2月 6日,Vol.2009 No.11,p.31−38
【文献】 佐藤 祐介ほか,特許固有の引用情報を考慮した特許文献の重要度算出方式の検討,情報管理,日本,独立行政法人科学技術振興機構,2008年 8月 1日,Vol.51 No.5,p.334−344
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 17/30
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の特許を、特許価値の高い順に順位付けする特許ランキング装置であって、
前記複数の特許の各々に関して、複数の特許経過情報項目データを抽出する手段、
前記特許経過情報項目データ毎にランク値Rを付与する手段、
前記ランク値を用い、関数Fに基づいてS値に変換する手段、
前記S値を変数として、因子分析を行う手段、
前記因子分析により算出された各々の特許の因子得点により、特許価値の順位づけをおこなう手段を含み、
前記関数Fは単調増加又は単調減少であり、S値の最大値と最小値の中点に位置するプロットにおけるランク値Rの絶対値は、前記複数の特許の中の最大のランク値Rの絶対値の2分の1以上である、
ことを特徴とする特許ランキング装置。
【請求項2】
ランク値Rが1以上n以下の範囲内の値をとり、前記関数Fは数1のように表現される、請求項1に記載の特許ランキング装置。
【数1】
ここで、関数Fは、1≦R≦nの区間で定義され、F(1)<F(n)である。また、F(R)を縦軸、Rを横軸としてプロットしたときに、下に凸であり、かつ単調増加である。nは前記複数の特許の数である。
【請求項3】
前記関数Fは、数2のように表現される、請求項2に記載の特許ランキング装置。
【数2】
ここで、aとbは、
【数3】
とした時に、f(1)=100、f(c)=50となるように定められる値である。ここで、cは0.7≦c<1.0の範囲内にある定数である。
【請求項4】
前記因子分析は、少なくとも3つの因子による、請求項1〜3のいずれか1項に記載の特許ランキング装置。
【請求項5】
前記複数の特許経過情報項目データには、出訴上告の有無、訟務判決の有無、無効審判被請求回数、発明者被引用文献数、請求項の数、全ページ数、早期審査請求出願の有無、異議申立の有無、情報提供回数、分割出願回数、被引用文献数、面接回数、閲覧請求回数、外国出願の有無、優先権主張数及び不服審判回数のうちの何れか5以上の項目のデータが含まれる、請求項1〜4の何れか1項に記載の特許ランキング装置。
【請求項6】
複数の特許を、特許価値の高い順に順位付けする特許ランキング装置による特許ランキング方法であって、
前記特許ランキング装置の制御部が、
前記複数の特許の各々に関して、複数の特許経過情報項目データを抽出する工程、
前記特許経過情報項目データ毎にランク値Rを付与する工程、
前記ランク値を用い、関数Fに基づいてS値に変換する工程、
前記S値を変数として、因子分析を行う工程、
および、前記因子分析により算出された各々の特許の因子得点により、特許価値の順位づけをおこなう工程を実行し
前記関数Fは単調増加又は単調減少であり、S値の最大値と最小値の中点に位置するプロットにおけるランク値Rの絶対値は、前記複数の特許の中の最大のランク値Rの絶対値の2分の1以上である、
ことを特徴とする特許ランキング方法。
【請求項7】
ランク値Rが1以上n以下の範囲内の値をとり、前記関数Fは数1のように表現される、請求項6に記載の特許ランキング方法。
【請求項8】
前記関数Fは、数2のように表現される、請求項7に記載の特許ランキング方法。
【請求項9】
前記因子分析は、少なくとも3つの因子による、請求項6〜8の何れか1項に記載の特許ランキング方法。
【請求項10】
前記複数の特許経過情報項目データには、出訴上告の有無、訟務判決の有無、無効審判被請求回数、発明者被引用文献数、請求項の数、全ページ数、早期審査請求出願の有無、異議申立の有無、情報提供回数、分割出願回数、被引用文献数、面接回数、閲覧請求回数、外国出願の有無、優先権主張数及び不服審判回数のうちの何れか5以上の項目のデータが含まれる、請求項6〜9の何れか1項に記載の特許ランキング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の特許のランキング装置及びランキング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
技術の進歩とそれに伴う特許出願件数の増加に伴い、膨大な特許情報を客観的かつ正確に活用する必要性が増大している。特に、複数の特許、例えば同一技術分野に属する複数の特許の価値を、価値の高いものから客観的にランク付けできるようにする手法を確立することができれば、第三者にとっては技術情報をより有効に活用できる上に、権利者や利害関係人にとってもライセンス交渉等をより円滑に進めることができる。
【0003】
こうした背景から、特許1件当たりの価値を数値化して算出するような方法が提案されている(特許文献1参照)。特許の経過情報やコスト表、陳腐化関数を基に特許権の価値を評価する方法である。しかしながら、ここで用いられている陳腐化関数とは、発明者独自の仮説に則ったものであり(特許文献1段落[0029]参照)、同評価方法の妥当性を立証する明確な根拠に乏しい。加えてコスト表において手続きに要した費用を考慮しているが、手続に要した費用と特許権の価値とは必ずしも相関関係を有しているわけではない。このように、本手法には発明者独自の主観や仮説が複数入り込んでおり、特許権の価値判断をおこなう際における客観性の確保という点で、多くの課題を残していた。
【0004】
そこで、特性の異なる複数の特許データを、技術分野ごと、出願時期ごとの特性を加味した評価をおこなうことにより、より客観性を持たせた状態で特許データの価値を評価する手法が提案されている(特許文献2参照)。対象特許の特許属性情報から評価点を算出し、更に前記評価点から評価値を算出する。この評価値の偏差値に応じてクラス分けする方法であるが、これらの算出過程において逐一数式の処理が必要であり、なお且つ、その数式処理方法は当該発明の発明者による主観的なものである上にクラスごとにそれぞれの数式が異なっており、やはり特許データの評価をするに際し、主観が色濃く残存しているということには変わりがなかった。
【0005】
このように、多くの特許の中から、各特許権の価値評価をおこなうに際して、既存の評価方法においては客観性の担保という点で改善すべき余地があり、より主観を排除した特許価値評価方法の確立が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−3727号公報
【特許文献2】国際公開第2008−054001号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような事情に鑑み、本発明の目的とするところは、主観の入り込む余地を極力排除し、なお且つ簡便な、特許価値のランキング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕 複数の特許を、特許価値の高い順に順位付けする特許ランキング装置であって、
前記複数の特許の各々に関して、複数の特許経過情報項目データを抽出する手段、
前記特許経過情報項目データ毎にランク値Rを付与する手段、
前記ランク値を用い、関数Fに基づいてS値に変換する手段、
前記S値を変数として、因子分析を行う手段、
前記因子分析により算出された各々の特許の因子得点により、特許価値の順位づけをおこなう手段を含み、
前記関数Fは単調増加又は単調減少であり、S値の最大値と最小値の中点に位置するプロットにおけるランク値Rの絶対値は、前記複数の特許の中の最大のランク値Rの絶対値の2分の1以上である、
ことを特徴とする特許ランキング装置、
〔2〕ランク値Rが1以上n以下の範囲内の値をとり、前記関数Fは数4のように表現される、前記〔1〕に記載の特許ランキング装置、
【数4】
ここで、関数Fは、1≦R≦nの区間で定義され、F(1)<F(n)である。また、F(R)を縦軸、Rを横軸としてプロットしたときに、下に凸であり、かつ単調増加である。nは前記複数の特許の数である。
〔3〕前記関数Fは、数5のように表現される、前記〔2〕に記載の特許ランキング装置、
【数5】
ここで、aとbは、
【数6】
とした時に、f(1)=100、f(c)=50となるように定められる値である。ここで、cは0.7≦c<1.0の範囲内にある定数である。
〔4〕前記因子分析は、少なくとも3つの因子による、前記〔1〕〜〔3〕の何れかに記載の特許ランキング装置、
〔5〕前記複数の特許経過情報項目には、出訴上告の有無、訟務判決の有無、無効審判被請求回数、発明者被引用文献数、請求項の数、全ページ数、早期審査請求出願の有無、異議申立の有無、情報提供回数、分割出願回数、被引用文献数、面接回数、閲覧請求回数、外国出願の有無、優先権主張数及び不服審判回数のうちの何れか5以上が含まれる、前記〔1〕〜〔4〕の何れかに記載の特許ランキング装置、
〔6〕複数の特許を、特許価値の高い順に順位付けする特許ランキング方法であって、
前記複数の特許の各々に関して、複数の特許経過情報項目データを抽出する工程、
前記特許経過情報項目データ毎にランク値Rを付与する工程、
前記ランク値を用い、関数Fに基づいてS値に変換する工程、
前記S値を変数として、因子分析を行う工程、
前記因子分析により算出された各々の特許の因子得点により、特許価値の順位づけをおこなう工程を含み、
前記関数Fは単調増加又は単調減少であり、S値の最大値と最小値の中点に位置するプロットにおけるランク値Rの絶対値は、前記複数の特許の中の最大のランク値Rの絶対値の2分の1以上である、
ことを特徴とする特許ランキング方法、
〔7〕ランク値Rが1以上n以下の範囲内の値をとり、前記関数Fは数4のように表現される、前記〔6〕に記載の特許ランキング方法
〔8〕前記関数Fは、数5のように表現される、前記〔7〕に記載の特許ランキング方法、
〔9〕前記因子分析は、少なくとも3つの因子による、前記〔6〕〜〔8〕の何れかに記載の特許ランキング方法、
〔10〕前記複数の特許経過情報項目には、出訴上告の有無、訟務判決の有無、無効審判被請求回数、発明者被引用文献数、請求項の数、全ページ数、早期審査請求出願の有無、異議申立の有無、情報提供回数、分割出願回数、被引用文献数、面接回数、閲覧請求回数、外国出願の有無、優先権主張数及び不服審判回数のうちの何れか5以上が含まれる、前記〔6〕〜〔9〕の何れかに記載の特許ランキング方法、
である。
【発明の効果】
【0009】
以上にしてなる本願発明に係る特許ランキング装置及び特許ランキング方法は、画一的な機械処理によってなされるので、ランキング評価に際して、重要な特許の“抜け”を無くすことができる。また、所定の関数計算により、ランク値から因子分析に使用する変数を取得することで、それぞれの特許経過情報項目の観点から見た際に価値の高い特許になればなるほど、微小なランク値の相違であっても変数に大きく反映される。そしてそのような変数を用いて因子分析を行うことにより、ノイズの影響の少ない妥当な因子負荷量及び因子得点を算出することができ、分析対象となったそれぞれの特許の特性をより明確に把握することができる。また、各種の特許経過情報に機械的にランク値を付与して得られる関数から変数を得た後、ごく一般的な統計解析方法である因子分析を行うのみであるので、大掛かりな計算が不要であり、迅速かつ簡便に評価をおこなうことができる。更には全ての特許情報について画一的に処理をおこなうので、得られる解析結果に恣意性がない。
【0010】
特に、前記所定の関数としては、下に凸であり、かつ単調増加の関数を採用することにより、価値の高い特許のランク値をより効果的に変数に反映させることができる。
【0011】
更には前記所定の関数として下記数7を使用すれば、各特許経過情報項目データより得られたランク値がとりわけ高値を示すものを積極的にS値に反映させ、そうでないものはS値にあまり反映されないようにメリハリをつけることにより、よりノイズの影響の少ない妥当な因子負荷量及び因子得点を得ることができる。
【0012】
【数7】
ここで、aとbは、
【数8】
とした時に、f(1)=100、f(c)=50となるように定められる値である。ここで、cは0.7≦c<1.0の範囲内にある定数である。
【0013】
また、因子分析に際しては、少なくとも3つの因子で因子分析を行えば、分析対象となる特許の性質を的確に把握することができる。
【0014】
また、使用する特許経過情報項目としては、出訴上告の有無、訟務判決の有無、無効審判被請求回数、発明者被引用文献数、請求項の数、全ページ数、早期審査請求出願の有無、異議申立の有無、情報提供回数、分割出願回数、被引用文献数、面接回数、閲覧請求回数、外国出願の有無、優先権主張数及び不服審判回数のうちの何れか5以上を抽出することにより、対象特許についてより妥当かつ正確にランク付けすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の代表的実施形態に係る特許ランキング装置のブロック図。
図2】上記実施形態の特許ランキング装置の概略処理を示すフローチャート。
図3】関数Fのグラフの実施例。
図4】関数Fのグラフの変形例。
図5】因子分析の代表的実施形態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る特許ランキング装置は、複数の特許を、特許価値の高い順に順位付けするものであって、図1に示すように、検索キーワードを入力するための入力部110、制御部120、及び表示部140を含んで構成されており、必要に応じて記憶部130も備える。そして前記制御部120は特許検索部121、特許経過情報抽出部122、ランク値付与部123、変数変換部124、因子分析部125、及び集計部126を含む。
【0017】
入力部110は、キーボードやタッチパネル、又はマウス等で実現され、ユーザーによる技術分野やキーワードの指定等、特許ランキング装置100に対する指示を受け付ける機能を有する。
【0018】
記憶部130は、ハードディスクやCD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc Read Only Memory)等の記録媒体であり、後述する制御部120の各工程におけるデータを記憶する機能を有する。
【0019】
表示部140は、液晶ディスプレイなどの表示装置であり、ユーザーから技術分野やキーワードの指定を受け付けるための画像や各工程における画像等を表示する機能を有する。
【0020】
制御部120はCPUとROMやRAM等のメモリで実現され、メモリに格納されたプログラムをCPUが読みだして実行することにより特許ランキング装置100の各部を制御する機能を有する。
【0021】
以下、制御部120の各部について説明する。
【0022】
特許検索部121は、入力部110を介してユーザーからの指示を受け、ランキングの対象となる同一企業や同一製品群、または同一技術分野などに属する複数の特許を検索し、検索されてきた特許を特定するための情報(特許番号等)を特許経過情報抽出部122に送出する機能を有する。また、ユーザーの必要に応じて前記情報を記憶部130に送出する機能も有する。
【0023】
特許経過情報抽出部122は、特許検索部121により検索された複数の特許についての各種特許経過情報項目を調査、抽出し、得られたデータをランク値付与部123に送出する機能を有する。また、ユーザーの必要に応じて前記情報を記憶部130に送出する機能も有する。こうした各種特許経過情報項目の情報源としては、具体的には独立行政法人工業所有権情報・研修館の提供する整理標準化データが好適である。
【0024】
ランク値付与部123は特許経過情報抽出部から送出されてきた情報得を基に、各特許におけるぞれぞれの特許経過情報項目データについてランク値Rを付与し、得られたランク値Rに関するデータを変数変換部124に送出する機能を有する。またランク値付与部123は、ユーザーの必要に応じて前記情報を記憶部130に送出する機能も有する。
【0025】
変数変換部124は、ランク値付与部123から送出されてきたランク値Rに関するデータを基に、因子分析の際に使用する変数S値を算出し、得られた変数S値を因子分析部125に送出する機能を有する。また、ユーザーの必要に応じて前記情報を記憶部130に送出する機能も有する。
【0026】
因子分析部125は、変数変換部124より送出されてきたS値を変数として使用して因子分析をおこない、得られた分析結果(因子得点等)を集計部126に送出する機能を有する。また、ユーザーの必要に応じて前記情報を記憶部130に送出する機能も有する。因子分析部125は、因子分析を行うことの可能な計算機能を有していれば特に限定はないが、例えば公知の統計解析用ソフトを使用することもできる。このような統計解析用ソフトとしては、例えばSPSS(登録商標)やR、SYSTAT(登録商標)、SAS(登録商標)、JMP(登録商標)などがあげられるが、これらに限定されない。
【0027】
集計部126は、因子分析部125より送出されてきた因子分析結果(因子得点等)を基に、対象となっている複数の特許をランク付けする機能を有する。また、ユーザーの必要に応じて得られた結果を記憶部130に送出する機能も有する。
【0028】
以下、図2に基づき、本発明に係る特許ランキング方法の手順を説明する。
【0029】
まず、対象とする技術分野における特許を検索して選出する。ここで、検索する方法としては、例えば特許調査のためのウェブサイトや電子ソフトを利用することがあげられるが、少なくとも目的とする複数の特許情報を得ることができればよく、これらに限定されない。また、ここで検索対象とする特許としては、特許査定が下りて権利化されているもののみを対象としてもよいが、少なくとも出願番号や公開番号が付与されているもの全てを対象としてもよく、その目的に応じて適宜調整すればよい。
【0030】
ここで、検索して選出されてきた複数の特許の中から、今後権利化される可能性がないと機械的に判断できるものは、評価の対象から除いておいてもよい。このような特許としては、例えば法定期間内に所定の手続きがされなかったものがあげられるが、これに限定されない。
【0031】
また、複数の特許を抽出する際に技術分野や製品分野で抽出する場合には、技術分野や製品分野によっては、検索の際に出願人を限定するのも好ましい。近年の出願の多くが、会社や企業を出願人とするものであることに鑑みれば、同業の会社名や企業名に出願人を限定して検索することにより、同じ技術分野や製品分野の特許を選出することが容易となり、さらにはノイズとなるような公報がランキング評価対象内に混入してくる可能性を低減でき、的を絞った評価をすることが可能となることが考えられる。
【0032】
データベースから検索されてきた中には、明らかに調査対象の技術分野と無関係と判断できるようなものも含まれる場合もあり、検索後、これらを予め評価の対象から除いておいてもよい。こうした明確に無関係な技術分野の特許が、価値の高いものである場合、ランキング評価の際の大きなノイズとなる蓋然性が高いためである。
【0033】
次いで、対象となる複数の特許についての各種特許経過情報項目を調査し、情報を抽出する。ここで、因子数を3以上にして因子分析を行う場合は、対象となる複数の特許の数は、500以上が望ましい。500に満たない場合、3つ以上の独立した因子にならなかったり、無理に3つ以上の因子となるようにしても意図する意味づけが可能な因子とならなかったりする場合も想定されるためである。逆に、対象となる同一技術分野に属する複数の特許の数が500未満である場合、因子数を2にして分析をおこなう等、適宜調整すればよい。
【0034】
本発明における複数の特許は同一技術分野に属する特許が好ましく、具体的には特許を検索する際にユーザーが指定する技術分野に属する特許である。より具体的には同一の国際特許分類に属する特許であってもよいし、特許検索のためのデータベースにおいて同一の検索ワードで導き出される特許であってもよく、勿論これらに限定されない。前述の特許を検索してくる工程において、一緒にこれらの特許経過情報項目に関するデータについても付随して得られるような態様であってもよい。こうした情報源としては、例えば独立行政法人工業所有権情報・研修館の提供する整理標準化データが好適である。
【0035】
これらの特許経過情報項目は、対象となる特許についての各種の情報であり、具体的には出訴上告の有無、訟務判決の有無、無効審判被請求回数、発明者被引用文献数、請求項の数、全ページ数、早期審査請求出願の有無、異議申立の有無、情報提供回数、分割出願回数、被引用文献数、面接回数、閲覧請求回数、外国出願の有無、優先権主張数及び不服審判回数等があげられるが、これらに限定されるものではなく、特許にランキングする際の目的に応じて、他の項目を抽出してもよい。また、これらの中から5つ以上を抽出して解析を行うことにより、対象特許についてより妥当かつ正確にランク付けすることができる。
【0036】
こうした特許経過情報項目についての情報を抽出した後、解析の対象となる複数の特許の間で、特許経過情報項目ごとに順位付けを行い、ランク値Rを得る。
【0037】
ランク値Rを付与する方法としては、解析の対象となる複数の特許の中で、各種特許経過情報項目について順位付けを行ったときに、その特許経過情報の性質を鑑みて、価値が低いと判断される特許から順に1位、2位、3位、…と順位付けを行い、その順位に現れた数値をランク値Rとする。具体的に後述するように、この順位付けに際して、各種特許経過情報におけるデータがそもそも数値で表示されるものである場合には、その数値に則り順位付けをすればよく、各種特許経過情報におけるデータが、何かの有無のみである場合には、解析の対象となる複数の特許の数に関係なく、ランク値Rは2種類のみということになる。
【0038】
以下、整理標準化データにおける特許経過情報項目を利用してランク値Rを算出する方法について具体的に説明する。なお、本発明における特許経過情報としては、何ら整理標準化データのみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、他のデータベース由来の情報を使用して実施することも可能である。本発明における特許価値のランキングに際しては、前述したように、既に権利化されているもののみでのランキングをおこなってもよいが、少なくとも出願番号や公開番号が付与されているものも対象とすることができる。従って、権利化されたものと、それ以外のものとを混在させたランキングをすることも可能である。また、以下に詳述する特許経過情報項目データの中には、例えば手続補正が行われたり新たに無効審判が請求されたりして時々刻々と変化していくものも存在する。従って特許経過情報項目データは、そのランキング時点におけるデータを採用したり、出願からある一定期間経過時におけるデータに統一して採用したりするなど適宜調整すればよく、これらに限定されない。
【0039】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として出訴上告記事の有無を採用する場合には、そのデータ自体は出訴上告記事の「有無」のみである。そこで、出訴上告記事がない特許には、全てランク値“1”を付与する。ここで、解析対象となる複数の特許の中で、出訴上告記事がない特許がX件である場合、出訴上告記事がある特許には全てランク値“X+1”を付与する。
【0040】
ここで、例えば、表1に示すような、特許P1号〜特許P8号の8つの特許に対し、本発明に係る特許ランキングをおこなうためのランク値Rを付与するとする。これらの8つの特許のうち、表1に示したように2つの特許において出訴上告がなされた場合、出訴上告のなされていない他の6つの特許についてはランク値“1”を、出訴上告のなされた特許についてはランク値“7”を付与することになる。
【0041】
【表1】
【0042】
同じく、例えば整理標準化データにおける特許経過情報項目として訟務判決の有無を採用する場合には、そのデータ自体は訟務判決の「有無」のみである。そこで、訟務の判決記事のなかった特許には、全てランク値“1”を付与する。ここで、解析対象となる複数の特許の中で、訟務判決がない特許がX件である場合、訟務判決がある特許には全てランク値“X+1”を付与する。
【0043】
また、例えば整理標準化データにおける特許経過項目として無効審判回数を採用する場合には、整理標準化データにおいてその中間記録の中間コードに「60:審判請求書(その他の請求書・申立書を含む)」が格納されている場合、それを1としてカウントする。そして審判記事の審判種別の「10:無効審判」、「11:全部無効(延長・更新登録以外)」、「111:全部無効(新実用)」、「112:全部無効(新無効)」、「113:全部無効(新々無効)」、「114:全部無効(新々無効新実用)」、「12:一部無効(延長・更新登録以外)」、「121:一部無効(新実用)」、「122:一部無効(新無効)」、「123:一部無効(新々無効)」、「124:一部無効(新々無効新実用)」、「13:更新登録無効(全部)」、「14:更新登録無効(一部)」、「15:存続期間延長登録の全部(全期間)無効」、「16:存続期間延長登録の全部(一部期間)無効」、「17:書換登録無効(全部)」、「18:書換登録無効(一部)」をそれぞれ1としてカウントする。これらのカウントを合算して得られた数値の小さい特許から順位付けをし、得られた順位をランク値Rとする。
【0044】
ここで、例えば、表2に示すような、特許P1号〜特許P10号の10の特許に対し、本発明に係る特許ランキングをおこなうためのランク値Rを付与するとする。これらの10の特許に対して前述のカウント合算を行い、各特許について表2に示したような、カウントの合算値が得られた場合、カウント合算値が0となる6つの特許についてはランク値“1”を、カウント合算値が1となる2つの特許に対してはランク値“7”を、カウント合算値が2、3となるそれぞれ1の特許に対してはランク値“9”、“10”を付与することになる。
【0045】
【表2】
【0046】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として、発明者被引用文献数を採用する場合には、解析対象となるそれぞれの特許が、他の国内特許文献から、「先行技術文献」として引用された回数を算出し、この回数の少ない特許から順に順位付けをし、得られた順位をランク値Rとする。
【0047】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として、請求項の数を採用する場合には、請求項の数記事における発明・区分の数にて集計し、この数の少ない特許から順に順位付けをおこない、得られた順位をランク値Rとする。評価対象となる特許の中に、特許公報の発行されたものと、それ以外のもの(例えば、査定が下りていない等)とが混在している場合には、特許公開公報が発行された時点における請求項の数で統一したり、ランキング時における請求項の数で統一したり、ランキング評価の目的を勘案の上、適宜調整すればよく、これらに限定されない。
【0048】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として、全ページ数を採用する場合には、特許公報の全頁数を確認し、この頁数の少ない特許から順に順位付けをおこない、得られた順位をランク値Rとする。ここでも、評価対象となる特許の中に、特許公報の発行されたものと、それ以外のもの(例えば、査定が下りていない等)とが混在している場合には、特許公開公報における全ページ数で統一したり、特許公報の発行されているものに関してのみは特許公報の全ページ数を採用したり、ランキング評価の目的を勘案の上、適宜調整すればよく、これらに限定されない。
【0049】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として、早期審査請求の有無を採用する場合には、そのデータ自体は早期審査請求の有無のみである。整理標準化データにおいて「早期審査マーク」がある場合、又は登録公報において「早期審査対象出願」の記載がある場合には、早期審査請求がなされていたものと判断し、早期審査請求がされなかった特許には、全てランク値“1”を付与する。ここで、解析対象となる複数の特許の中で、早期審査請求がされなかった特許がX件である場合、早期審査請求がなされた特許には全てランク値“X+1”を付与する。
【0050】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として、異議申立の有無を採用する場合にも、そのデータ自体は異議申立の有無のみである。そこで整理標準化データの中間記録の中間コードに「A641:異議申立書」又は「A642:意見申立書」の何れかがあれば、異議申立がなされていたものと判断し、異議申立がされなかった特許には、全てランク値“1”を付与する。ここで、解析対象となる複数の特許の中で、異議申立がされなかった特許がX件である場合、異議申立がなされた特許には全てランク値“X+1”を付与する。
【0051】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として、情報提供回数を採用する場合には、整理標準化データの中間記録における、中間コードの「A831:刊行物等提出書」、「A832:情報提供書」をカウントし、得られた合算結果の小さい特許から順に順位付けを行い、得られた順位をランク値Rとする。
【0052】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として、分割出願回数を採用する場合には、その特許が分割出願の原出願となっている場合や、他の特許公報の「分割の表示」に当該特許が記載されている場合に、いずれの場合であっても1としてカウントし、合算する。集計後、この数の少ない特許から順に順位付けをおこない、得られた順位をランク値Rとする。
【0053】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として、被引用文献数を採用する場合には、他の特許の整理標準化データにおいて、引用調査データ記事の引用種別が「07:異議証拠(異議申立の引用文献情報)」、「09:異議採用証拠(異議決定の引用文献情報)」、「19:拒絶理由通知(拒絶理由の引用文献情報)」、「22:拒絶査定(拒絶査定の引用文献情報)」、「31:特許査定(特許査定の参考文献情報)または登録査定(登録査定の参考文献情報)」、「67:技術評価書(新実用新案の引用文献情報)」、「75:補正却下(補正却下決定の引用文献情報)」、「77:審判請求証拠(無効審判請求の引用文献情報)」、「79:審決採用証拠(無効審判審決の引用文献情報)」、「89:先行技術調査(先行技術調査結果の参考文献情報)」のいずれかで引用されている場合を、それぞれ1としてカウントし、合算する。得られた合算結果の小さい特許から順に順位付けを行い、得られた順位をランク値Rとする。
【0054】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として、面接回数を採用する場合には、整理標準化データの中間記録における中間コード「A971001:面接記録」から集計し、得られた集計結果の小さい特許から順に順位付けを行い、得られた順位をランク値Rとする。
【0055】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として、閲覧請求回数を採用する場合には、整理標準化データの中間記録における中間コード「A86:閲覧請求」、「A861:ファイル記録事項の閲覧(縦覧)請求書」、「A862:登録事項の閲覧請求」から集計、合算し、得られた合算結果の小さい特許から順に順位付けを行い、得られた順位をランク値Rとする。
【0056】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として、外国出願の有無を採用する場合には、対象特許のファミリーにおいて外国特許出願が存在する場合には、外国出願がなされていたものと判断し、外国出願がされなかった特許には、全てランク値“1”を付与する。ここで、解析対象となる複数の特許の中で、外国出願がされなかった特許がX件である場合、外国出願がなされた特許には全てランク値“X+1”を付与する。
【0057】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として、優先権主張数を採用する場合には、整理標準化データの「国内優先記事」における出願番号の数、又は「優先権記事」の優先権主張番号の数をカウントし、得られたカウント数の小さい特許から順に順位付けを行い、得られた順位をランク値Rとする。
【0058】
整理標準化データにおける特許経過情報項目として、査定不服審判の回数を採用する場合には、整理標準化データにおける中間記録に「60:審判請求書(その他の請求書・申立書を含む)」を含む場合にカウントする。更に審判記事の審判種別の「7:補正却下不服審判」、「70:補正却下不服審判」、「8:査定不服審判」、「80:査定不服審判」、「書換査定不服審判」をカウントし、合算する。得られた合算値の小さい特許から順に順位付けを行い、得られた順位をランク値Rとする。
【0059】
次いで、関数Fによる関数計算を行うことにより、因子分析の際に使用する変数S値を得る。
【0060】
【数9】
【0061】
以下、nは複数の特許の数である。
【0062】
関数Fとしては単調増加又は単調減少であるという前提のもと、なお且つ、ランク値Rを横軸、S値を縦軸としてプロットした際に、S値の最大値と最小値の中点に位置するプロットにおけるランク値Rの絶対値が、ランキング対象となっている特許に付与された中で最大となるランク値の絶対値の2分の1以上となるような関数を採用する。ここで、単調増加とは、関数FにおけるR1<R2を満たす任意のランク値R1、R2に対して、F(R1)<F(R2)を満たすことをいう。一方で単調減少とは、関数FにおけるR3<R4を満たす任意のランク値R3、R4に対して、F(R3)>F(R4)を満たすことをいう。
【0063】
なかでも数9において、ランク値Rが1以上n以下の範囲内の値をとり、関数Fが1≦R≦nの区間で定義され、F(1)<F(n)であるのが好ましい。そして、F(R)を縦軸、Rを横軸としてプロットしたときに、下に凸であり、且つ単調増加であることが好ましい。
【0064】
より好ましい実施態様として、関数Fが、ランク値Rを横軸、S値を縦軸としてプロットした際に、そのグラフが図3に示したように、単調増加且つ下に凸である性質を示し、ランク値“1”に対してはS値が“0”、ランク値“n”に対してはS値が“100”を示すような実施態様があげられる。ここでいう「下に凸である」とは、関数FにおけるR5<R6<R7を満たす任意のランク値R1、R2、R3に対して、{F(R6)−F(R5)}/(R6−R5)<{F(R7)−F(R6)}/(R7−R6)を満たすことをいう。このような、関数式を採用することにより、各特許経過情報項目におけるより重要度の高い特許について、当該特許経過情報項目における変数の変動をより大きくすることができる。そして、それがひいては因子分析による解析において、よりノイズの排除された因子負荷量及び因子得点を得るための布石となるのである。
【0065】
更に好ましい実施態様として、関数Fとして、下記数10を採用してもよい。そして、下記数11における“c”の値としては、0.7≦c<1.0が望ましく、0.85≦c≦0.95であることがより望ましい。このように、各特許経過情報項目のランク値Rがとりわけ高値を示すものを積極的にS値に反映させ、そうでないものはS値にあまり反映されないようにメリハリをつけることにより、よりノイズが排除された妥当な因子分析結果を得ることができる(図4参照)。
【0066】
【数10】
ここで、aとbは、
【数11】
とした時に、f(1)=100、f(c)=50となるように定められる値である。
【0067】
以上のようにして得られたS値を変数として使用して、因子分析をおこなう。
【0068】
図5に示したように、因子分析に際しての因子は、基本的には3つの因子で行うのが望ましいが、状況に応じてはそれ以上であってもよい。因子分析をおこなった際、因子負荷行列を見て因子に命名することが好ましい。それぞれの因子が、どのような経過情報項目データに影響を与えているかを見て、因子に適切な名前を命名する。因子への命名例としては、例えば牽制度、注目度、出願時期待度などがあげられるが、これらに限定されない。
【0069】
因子負荷量の算出に当たっては、因子分析における公知の手法を用いればよく、例えば主因子法や最尤法、最小二乗法などがあげられるが、これらに限定されない。因子軸を回転させて因子負荷行列を求める方法としても、直交回転又は斜交回転における公知の手法を用いればよく、例えばバリマックス法やプロマックス法があげられるが、これに限定されない。
【0070】
得られた因子負荷行列を用いて、対象となる特許の因子得点を算出し、この値の高低により、対象特許の価値評価を行う。この際、例えば因子得点ごとに対象特許の価値評価を行う場合には、対象特許について各因子の因子得点の値により評価をおこなうことにより、それぞれの因子の因子特性に特化した価値評価を行うことが可能である。このように、得られた各因子得点に基づいて並べ替えることにより、ランキング評価をおこなうのが好適であるが、それ以外にも各因子得点に基づいてレーダーチャート化する等、特許価値の解析の目的に応じて適宜の表示方法を採用することができる。
【0071】
一方で、例えば3つの因子で因子分析を行った後、それぞれの特許における「牽制度」、「注目度」、及び「出願時期待度」の全てを考慮した総体的な評価を目的とする場合には、得られた3つの因子得点を和して、その合算値により対象特許の価値評価を行うことも可能である。因子得点は平均値を0、標準偏差を1と規格化して算出されるため、評価対象の特許全ての因子得点を0から100の値に規格化するようにするのも好適である。また、因子得点としては負の値が生じることも想定される。このような場合、データを見やすくするために、全ての因子得点に同一の計算処理をする等の微調整を、適宜おこなってもよい。このような計算処理方法としては、特に限定はないが、例えば全ての因子得点に同一の数値を加算する等の方法があげられる。このようにして重要な、或いは価値の高い特許を把握することにより、企業の視点からは、権利取引において重要な知的財産(特許)を知ることができるし、中でも当業者の視点からは、ランキング上位の特許のFターム等についての情報を解析することで、技術開発のトレンドを知ることができると考えられる。また投資家の視点からは投資におけるメリットやリスクに関する材料を得ることができると考えられる。
【0072】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例】
【0073】
以下、実施例に基づき、本発明の実施形態をより具体的に説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0074】
(実施例1:発泡樹脂の技術分野に属する特許のランキング)
発泡樹脂事業をおこなっている4社A、B、C、及びD社の1992年〜2011年の20年間に公開された特許(=特許査定がおりたものだけでなく出願中のものも含む。)を、出願人又は権利者名をA、B、C、D社とすることにより検索し、またC社に関しては発泡樹脂関連の事業以外もおこなっているため、C社のみについては、更に発泡樹脂に関する特許を検索することにより、総計5828件抽出した。これらの中から今後権利化される可能性がないと機械的に判断されるものを除くことにより、2925件(=n)をランキング評価対象とした。その後、独立行政法人工業所有権情報・研修館の提供する整理標準化データから、その時点における前記2925件の各特許出願の各特許経過情報項目(閲覧請求回数、情報提供回数、異議申立の有無、無効審判被請求回数、早期審査請求出願の有無、発明者被引用文献数、被引用文献数、分割出願回数、面接回数、全ページ数、請求項の数、外国出願の有無)に関する情報を取得し、これらに対してランク値を付与した後に、下記数12に基づいてS値を算出し、変数とした。尚、特許公報の発行されている特許に関しては、前記“全ページ数”のデータは特許公報の、それ以外については特許公開公報の、全ページ数をデータとして採用した。その後因子数を3、因子負荷行列の計算方法をMinres法、因子得点の計算方法を回帰法として因子分析をおこなった結果、各変数に対する3つの因子(f1、f2及びf3とする)の因子負荷量は表3のようになった。更に、ここで得られた因子負荷量を基に、評価対象とした特許全てについて、3つの因子得点を算出した上で前記3つの因子得点について合算した後、降順に並べ替えて特許の順位付けをおこなった。合算値の上位20の特許について、各特許経過情報項目データとともに、表4に示した。尚、今後権利化される可能性がないものを除くステップから特許の順位付けまでのステップは、統計解析ソフトRを用いて行った。この際のRのスクリプトは、下記のとおりである。

#=====================================================================
# patent5.R
#=====================================================================
#
#
library( psych )


#
# データを変換するための準備
#
find.a = function( x, p=0.9 ) {
fval = 2.0*exp( p*x ) - exp( x ) - 1.0
return( fval )


trans.data = function( x, a, b ) {
ba = b/a
y = ba * exp( a*x ) - ba
return( y )


a = uniroot( find.a, lower=0.1, upper=200, p=0.9 )$root
b = 100*a / (exp(a) - 1.0)



#
# データの読み込み
#
x = read.csv( "../Data/発泡樹脂.csv" )
cat( nrow(x), "observations are loaded.\n" )


#
# 以下,データの整理
#

# 出願番号
patent = strsplit( as.character( x$出願番号 ), "-", fixed=TRUE )
patent = unlist( patent )
patent = as.integer( matrix( patent, ncol=2, byrow=T )[,-1] )
patent.no = as.character( x$出願番号 )

# 出願日
date = strsplit( as.character( x$出願日 ), ".", fixed=TRUE )
date = unlist( date )
date = matrix( date, ncol=3, byrow=T )
year = as.integer( date[,1] )
month = as.integer( date[,2] )
day = as.integer( date[,3] )

# 発明の名称 & 出願人
name = as.character( x$発明の名称 )
fname = as.character( x$出願人.権利者名 )

# ST (status)
st = x$ST
levels( st ) = 1:3

# 出願人グループ
group = x$出願人グループ

# 早期請求出願
early.exam = as.character( x$早期請求出願有無 )
early.exam[ early.exam == "有" ] = "1"
early.exam[ early.exam != "1" ] = "0"
early.exam = as.integer( early.exam )

# 請求項の数
nrequest = x$請求項の数

# 全頁数
pages = x$全頁数

# 被引用文献数
quoted = x$被引用文献数

# 発明者被引用文献数
inv.quoted = x$発明者被引用文献数

# 外国出願有無
foreign = as.character( x$外国出願有無 )
foreign[ foreign == "あり" ] = "1"
foreign[ foreign != "1" ] = "0"
foreign = as.integer( foreign )

# 分割出願回数
divide = x$分割出願回数

# 異議申立有無
object = as.character( x$異議申立有無.経. )
object[ object == "有" ] = "1"
object[ object != "1" ] = "0"
object = as.integer( object )

# 無効審判回数
invalid = x$無効審判回数.経.
invalid[ is.na( invalid ) ] = 0

# 閲覧回数
reading = x$閲覧請求回数.経.
reading[ is.na( reading ) ] = 0

# 情報提供回数
info = x$情報提供回数.経.
info[ is.na( info) ] = 0

# 面接回数
interview = x$面接回数.経.
interview[ is.na( interview ) ] = 0

# 出訴上告
bring.act = as.character( x$出訴上告.経. )
bring.act[ bring.act == "" ] = "0"
bring.act[ bring.act != "0" ] = "1"
bring.act = as.integer( bring.act )

# 訟務判決
lawsuit = as.character( x$訟務判決.経. )
lawsuit[ lawsuit == "" ] = "0"
lawsuit[ lawsuit != "0" ] = "1"
lawsuit = as.integer( lawsuit )


#
# data frame の作成
#
patent.data = data.frame(
No = as.character( x$No ),
patent.no,
date = as.character( x$出願日 ),
# year,
# month,
# day,
#
name,
fname,
group,
st,
#
nrequest,
foreign,
pages,
early.exam,
#
bring.act,
invalid,
object,
reading,
lawsuit,
#
divide,
quoted,
inv.quoted,
info,
interview
)

#
# データの削除(権利があるもの,または権利になる可能性があるもの)
#
patent.data = patent.data[ st !=1, ]
nobs = nrow( patent.data )

#
# データ行列
#
y = cbind(
nrequest = trans.data( (rank( patent.data$nrequest, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b ),
foreign = trans.data( (rank( patent.data$foreign, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b ),
pages = trans.data( (rank( patent.data$pages, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b ),
early.exam = trans.data( (rank( patent.data$early.exam, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b ),
#
bring.act = trans.data( (rank( patent.data$bring.act, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b ),
lawsuit = trans.data( (rank( patent.data$lawsuit, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b ),
invalid = trans.data( (rank( patent.data$invalid, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b ),
object = trans.data( (rank( patent.data$object, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b ),
reading = trans.data( (rank( patent.data$reading, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b ),
#
divide = trans.data( (rank( patent.data$divide, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b ),
quoted = trans.data( (rank( patent.data$quoted, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b ),
inv.quoted = trans.data( (rank( patent.data$inv.quoted, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b ),
info = trans.data( (rank( patent.data$info, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b ),
interview = trans.data( (rank( patent.data$interview, ties.method="min" ) - 1.0) / (nobs - 1.0), a, b )
)

#
# 因子分析の実行
#
y = y[,-c(5,6)]
r = cor( y )
out = fa( y, nfactors=3, n.obs=nobs, scores="regression" )
print( out, sort=TRUE )


#
# ranking --- 単純平均
#
value = apply( y, 1, mean )
patent.data$value = value
indx = order( value, decreasing=TRUE )


#
# 因子分析の結果から価値を評価
#
score = apply( out$scores, 1, sum )
patent.data$score = score
patent.data$f1 = out$scores[,1]
patent.data$f2 = out$scores[,2]
patent.data$f3 = out$scores[,3]


#
# データの要約を表示
#
cat( "\nDATA SUMMARY\n\n" )
cat( nobs, "observations are used for analysis.\n\n" )
print( summary( y ) )
cat( "\n\ngroup" )
cat( "\n" )
print( patent.data[ indx[1:50], ], right=FALSE )


#
# ファイルへ保存
#
write.csv( patent.data[indx,], file="ranking.csv", row.names=FALSE )
【0075】
【数12】
ここで、aとbは、a=6.92162,b=0.006833099であり、
【数13】
とした時に、f(1)=100、f(0.9)=50となるように定められる値である。
【0076】
【表3】
【0077】
表3に示したように、因子f1は閲覧請求回数及び情報提供回数に大きな影響を与えることが確認されたことから、因子f1は他者から見た脅威を反映、いわゆる“牽制度”の評価を反映する因子であると考えられた。因子f2は被引用文献数及び発明者被引用文献数に大きな影響を与えることが確認されたことから、いわゆる“注目度”の評価を反映する因子であると考えられた。また、因子f3は全ページ数、請求項の数、外国出願の有無に大きな影響を与えることが確認され、いわゆる出願人の“出願時期待度”を反映する因子であると考えられた。表3で得られた因子負荷量を基に、評価対象とした各特許の因子(f1、f2及びf3)の因子得点を算出し、各特許における因子得点の合算値の上位20の特許を表4に示した。表中における“牽制度”、“注目度”、及び“出願時期待度”は、それぞれ因子f1、f2、及びf3の因子得点を意味する。同じく “スコア”とは、3つの因子f1、f2及びf3の合算値を意味し、これを降順に並べることで順位付け、つまりランキングをおこなっている。また、“牽制度”や“注目度”、“出願時期待度”のそれぞれについて順位付けをしたい場合には、特に合算値は算出せずに、各因子得点ごとに並べ替え、評価すればよい。
【0078】
【表4】
【0079】
(実施例2:カテーテルの技術分野に属する特許のランキング)
カテーテルの技術分野に属する1992年〜2011年に公開された特許(=特許査定がおりたものだけでなく出願中のものも含む。)を、IPCコードA61M25/00に基づいて検索し、8333件を抽出した。ここから、今後権利化される可能性がないと機械的に判断されるものを除くことにより、4400件(=n)をランキング評価対象とした。その後、独立行政法人工業所有権情報・研修館の提供する整理標準化データから、その時点における前記4400件の各特許出願の各特許経過情報項目(出訴上告の有無、訟務判決の有無、無効審判被請求回数、早期審査請求出願の有無、被引用文献数、閲覧請求回数、発明者被引用文献数、情報提供回数、分割出願回数、異議申立の有無、面接回数、請求項の数、全ページ数、外国出願の有無)に関する情報を取得し、これらに対してランク値を付与した後に、前記数12に基づいてS値を算出し、変数とした。尚、特許公報の発行されている特許に関しては、前記“全ページ数”のデータは特許公報の、それ以外については特許公開公報の、全ページ数をデータとして採用した。その後、因子数を3、因子負荷行列の計算方法をMinres法、因子得点の計算方法を回帰法として因子分析をおこなった結果、各変数に対する3つの因子(f1、f2及びf3とする)の因子負荷量は表5のようになった。更に、ここで得られた因子負荷量を基に、評価対象とした特許全てについて、3つの因子得点を算出した上で前記3つの因子得点について合算した後、降順に並べ替えて特許の順位付けをおこなった。合算値の上位20の特許について、各特許経過情報項目データとともに、表6に示した。
【0080】
【表5】
【0081】
表5に示したように、因子f1は出訴上告の有無及び訟務判決の有無に大きな影響を与えることが確認された。これらは他者からのアクションを示すものであるので、因子f1は“牽制度”の評価を反映する因子であると考えられた。因子f2は被引用文献数及び発明者被引用文献数に大きな影響を与えることが確認されたことから、“注目度”の評価を反映する因子であると考えられた。また、因子f3は全ページ数、請求項の数、外国出願の有無に大きな影響を与えることが確認され、出願人の“出願時期待度”を反映する因子であると考えられた。表5で得られた因子負荷量を基に、評価対象とした各特許の因子(f1、f2及びf3)の因子得点を算出し、各特許における因子得点の合算値の上位20の特許を表6に示した。表中における“牽制度”、“注目度”、及び“出願時期待度”は、それぞれ因子f1、f2、及びf3の因子得点を意味する。同じく表中における“スコア”とは、3つの因子f1、f2及びf3の合算値を意味し、これを降順に並べることで順位付け、つまりランキングをおこなっている。また、“牽制度”や“注目度”、“出願時期待度”のそれぞれについて順位付けをしたい場合には、特に合算値は算出せずに、因子得点ごとに並べ替え、評価すればよい。
【0082】
【表6】
【0083】
(実施例3:グラファイトシートの技術分野に属する特許のランキング_因子数3)
グラファイトシートの技術分野に属し、1993年4月1日以降に出願され、2013年3月31日までに公報(特許公報、特許公開公報含む)が発行された特許について検索をおこない、その中から無効でない271件を抽出して、評価対象とした。その後、独立行政法人工業所有権情報・研修館の提供する整理標準化データから、その時点における前記271件の各特許出願の各特許経過情報項目(出訴上告の有無、訟務判決の有無、無効審判被請求回数、早期審査請求出願の有無、被引用文献数、閲覧請求回数、発明者被引用文献数、情報提供回数、分割出願回数、異議申立の有無、面接回数、請求項の数、全ページ数、外国出願の有無)に関する情報を取得し、これらに対してランク値を付与した後に、前記数12に基づいてS値を算出し、変数とした。その後、因子数を3、因子負荷行列の計算方法をMinres法、因子得点の計算方法を回帰法として因子分析をおこなった結果、各変数に対する3つの因子(f1、f2及びf3とする)の因子負荷量は表7のようになった。更に、ここで得られた因子負荷量を基に、評価対象とした特許全てについて、3つの因子得点を算出した上で前記3つの因子得点について合算した後、降順に並べ替えて特許の順位付けをおこなった。合算値の上位20の特許について、各特許経過情報項目データとともに、表8に示した。
【0084】
【表7】
【0085】
表7に示したように、因子f1には被引用文献数、発明者被引用文献数が大きく影響していた。これは他社からの注目度を表す因子と考えられた。因子f2には早期請求出願、面接回数が大きく影響している。これは出願時期待度を表す因子と考えられた。因子f3には請求項の数、全ページ数が大きく影響している。これも出願時期待度を表す因子と考えられた。
【0086】
【表8】
【0087】
(実施例4:グラファイトシートの技術分野に属する特許のランキング_因子数2)
グラファイトシートの技術分野に属し、1993年4月1日以降に出願され、2013年3月31日までに公報(特許公報、特許公開公報含む)が発行された特許について検索をおこない、その中から無効でない271件を抽出して、評価対象とした。その後、独立行政法人工業所有権情報・研修館の提供する整理標準化データから、その時点における前記271件の各特許出願の各特許経過情報項目(出訴上告の有無、訟務判決の有無、無効審判被請求回数、早期審査請求出願の有無、被引用文献数、閲覧請求回数、発明者被引用文献数、情報提供回数、分割出願回数、異議申立の有無、面接回数、請求項の数、全ページ数、外国出願の有無)に関する情報を取得し、これらに対してランク値を付与した後に、前記数12に基づいてS値を算出し、変数とした。その後、因子数を2、因子負荷行列の計算方法をMinres法、因子得点の計算方法を回帰法として因子分析をおこなった結果、各変数に対する2つの因子(f1及びf2とする)の因子負荷量は表9のようになった。更に、ここで得られた因子負荷量を基に、評価対象とした特許全てについて、2つの因子得点を算出した上で前記2つの因子得点について合算した後、降順に並べ替えて特許の順位付けをおこなった。合算値の上位20の特許について、各特許経過情報項目データとともに、表10に示した。
【0088】
【表9】
【0089】
表9に示したように、因子f1には被引用文献数、発明者被引用文献数が大きく影響していた。これは他社からの注目度を表す因子と考えられた。因子f2には早期請求出願、外国出願、請求項の数、面接回数、全ページ数が大きく影響していた。これは出願時期待度を表す因子と考えられた。このように、対象となる同一技術分野に属する複数の特許の数が500未満である場合、実施例3のように因子数を3として因子分析をおこなうよりも、因子数を2として因子分析をおこなった方が、因子に対する意味づけをより明確かつ適切にすることができると考えられた。
【0090】
【表10】
【0091】
(実施例5:毛髪用合成繊維の技術分野に属する特許のランキング)
1993年4月1日以降に出願され、2013年3月31日までに公報(特許公報、特許公開公報含む)が発行された特許のうち、合成繊維の特許分類が付与されたものを選別し、さらに「ヘアー」、「毛髪」、「かつら」等のキーワードで絞り込み、そのうち無効でない95件を抽出して、評価対象とした。その後、独立行政法人工業所有権情報・研修館の提供する整理標準化データから、その時点における前記95件の各特許出願の各特許経過情報項目(出訴上告の有無、訟務判決の有無、無効審判被請求回数、早期審査請求出願の有無、被引用文献数、閲覧請求回数、発明者被引用文献数、情報提供回数、分割出願回数、異議申立の有無、面接回数、請求項の数、全ページ数、外国出願の有無)に関する情報を取得し、これらに対してランク値を付与した後に、前記数12に基づいてS値を算出し、変数とした。その後、因子数を3、因子負荷行列の計算方法をMinres法、因子得点の計算方法を回帰法として因子分析をおこなった結果、各変数に対する3つの因子(f1、f2及びf3とする)の因子負荷量は表11のようになった。更に、ここで得られた因子負荷量を基に、評価対象とした特許全てについて、3つの因子得点を算出した上で前記3つの因子得点について合算した後、降順に並べ替えて特許の順位付けをおこなった。合算値の上位20の特許について、各特許経過情報項目データとともに、表12に示した。
【0092】
【表11】
【0093】
表11に示したように、因子f1には被引用文献数、発明者被引用文献数が大きく影響している。これは他社からの注目度を表す因子と考えた。2番目の因子は請求項の数、全ページ数、外国出願有無が大きく影響している。これは出願時期待度を表す因子と考えた。3番目の因子は閲覧請求回数、情報提供回数が大きく影響している。これは他社から見た脅威の反映、いわゆる牽制度の評価を表す因子と考えられた。これらの因子に対しての意味づけについては、妥当なものであると考えられたが、表11のランキング中、1位の特願2001−×××××はブラシ用の糸の発明であり、用途の一つにヘアーブラシがあるために検索されたものである。同じく8位の特願2005−××××××はスキンケア効果を有する重合体、および合成繊維の発明であり、明細書中にヘアシャンプーの文言があるために検索されたものである。また同じく9位の特願平7―××××××は遠赤外線を放射する合成繊維の発明であり、用途の一つにヘアーキャップがあるために検索されたものである。ランキング評価の際には、これら3つの明らかに毛髪用合成繊維の技術分野に属さない技術分野に属する発明を除外して評価することにより、妥当なランキング評価が可能であると考えられた。
【0094】
【表12】
【0095】
(実施例6:毛髪用合成繊維の技術分野に属する特許のランキング_ノイズ除去)
1993年4月1日以降に出願され、2013年3月31日までに公報(特許公報、特許公開公報含む)が発行された特許のうち、合成繊維の特許分類が付与されたものを選別し、さらに「ヘアー」、「毛髪」、「かつら」等のキーワードで絞り込み、そのうち無効でない95件を抽出した。さらにその中から、明らかに毛髪用合成繊維の技術分野に属さないと判別できる3つの公報(特願2001−×××××、特願2005−××××××、特願平7―××××××であり、実施例5のランキングにおいてそれぞれ第1、8、9位となっていたものである。)を除外した。その後、独立行政法人工業所有権情報・研修館の提供する整理標準化データから、その時点における前記95件から3件を除外した全92件の各特許出願の各特許経過情報項目(出訴上告の有無、訟務判決の有無、無効審判被請求回数、早期審査請求出願の有無、被引用文献数、閲覧請求回数、発明者被引用文献数、情報提供回数、分割出願回数、異議申立の有無、面接回数、請求項の数、全ページ数、外国出願の有無)に関する情報を取得し、これらに対してランク値を付与した後に、前記数12に基づいてS値を算出し、変数とした。その後、因子数を3、因子負荷行列の計算方法をMinres法、因子得点の計算方法を回帰法として因子分析をおこなった結果、各変数に対する3つの因子(f1、f2及びf3とする)の因子負荷量は表13のようになった。更に、ここで得られた因子負荷量を基に、評価対象とした特許全てについて、3つの因子得点を算出した上で前記3つの因子得点について合算した後、降順に並べ替えて特許の順位付けをおこなった。合算値の上位20の特許について、各特許経過情報項目データとともに、表14に示した。
【0096】
【表13】
【0097】
表13に示したように、因子f1には被引用文献数、発明者被引用文献数が大きく影響している。これは他社からの注目度を表す因子と考えられた。因子f2には請求項の数、全ページ数、外国出願有無が大きく影響している。これは出願時期待度を表す因子と考えられた。因子f3には閲覧請求回数、情報提供回数が大きく影響している。これは他社から見た脅威の反映、いわゆる牽制度の評価を表す因子と考えられた。このように、実施例5のように明らかなノイズとなる公報の除去をおこなわずに因子分析をおこなっても、ランキング結果を評価する際に、その公報を除外して評価すればよい。しかし、因子分析を行う前にあらかじめそういった明らかなノイズとなり得る公報を除去しておくことにより、ランキング結果が視覚的により評価しやすくすることができるだけでなく、因子負荷量もより正確な値で算出できると考えられる。
【0098】
【表14】
【0099】
(実施例7:ポリイミドフィルムの技術分野に属する特許のランキング_出願人の限定)
1993年4月1日以降に出願され、2013年3月31日までに公報(特許公報、特許公開公報含む)が発行された特許について、出願人をポリイミドフィルムの製造業を営むA社、B社、C社、D社(仮名)の4社に限定し、さらに「ポリイミド」のキーワードを用いて検索をおこない、その中から無効でない1057件を抽出して、評価対象となるポリイミドフィルムの技術分野に属する特許の集合を得た。その後、独立行政法人工業所有権情報・研修館の提供する整理標準化データから、その時点における前記1057件の各特許出願の各特許経過情報項目(出訴上告の有無、訟務判決の有無、無効審判被請求回数、早期審査請求出願の有無、被引用文献数、閲覧請求回数、発明者被引用文献数、情報提供回数、分割出願回数、異議申立の有無、面接回数、請求項の数、全ページ数、外国出願の有無)に関する情報を取得し、これらに対してランク値を付与した後に、前記数12に基づいてS値を算出し、変数とした。その後、因子数を3、因子負荷行列の計算方法をMinres法、因子得点の計算方法を回帰法として因子分析をおこなった結果、各変数に対する3つの因子(f1、f2及びf3とする)の因子負荷量は表15のようになった。更に、ここで得られた因子負荷量を基に、評価対象とした特許全てについて、3つの因子得点を算出した上で前記3つの因子得点について合算した後、降順に並べ替えて特許の順位付けをおこなった。合算値の上位20の特許について、各特許経過情報項目データとともに、表16に示した。
【0100】
【表15】
【0101】
表15に示したように、因子f1には閲覧請求回数、情報提供回数が大きく影響していた。これは他社から見た脅威の反映、牽制度の評価を表す因子と考えられた。因子f2には、請求項の数、全ページ数が大きく影響しているため、出願時期待度を表す因子と考えられた。因子f3には、被引用文献数、発明者被引用文献数が大きく影響しているため、注目度を表す因子と考えられた。このように出願人を、目的とする技術分野に属する製品の製造業を営む代表的な4社に限定して特許の選出をおこなうことにより、ノイズとなるような公報が混入する可能性を低減させることができるとともに、より的を絞ったランキング評価をすることが可能となる。
【0102】
【表16】
【符号の説明】
【0103】
100 本発明に係る特許ランキング装置
110 入力部
120 制御部
121 特許検索部
122 特許経過情報抽出部
123 ランク値付与部
124 変数変換部
125 因子分析部
126 集計部
130 記憶部
140 表示部
図1
図2
図3
図4
図5