【実施例】
【0035】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、物性の測定方法、効果の評価方法は以下の方法で行った。
【0036】
(1)環状三量体含有量
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットをo−クロロフェノールに溶解し、内部標準を添加する。さらにメタノールを加えてポリマーを析出させて遠心分離によって上澄みを採取し、液体クロマトグラフを用いて定量した。
【0037】
(2)固有粘度
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットをo−クロロフェノールに加熱溶解した後、ウベローデ型粘度計を用いて25℃で測定した。
【0038】
(3)アンチモン元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、リン元素の含有量
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットを溶融プレス機で円柱状に成型し、蛍光X線元素分析装置を用いて測定した。
【0039】
(4)環状三量体の再生速度
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットを175℃で7.5時間真空乾燥した後、窒素雰囲気下300℃で30分間加熱溶解し、次いで常温まで戻し固化させて試料を採取する。加熱溶解処理前の試料の環状三量体含有量(A)および加熱溶解処理後の試料の環状三量体含有量(B)を定量し、次式から環状三量体の再生速度(C)を算出した。
【0040】
C(wt%/分)=(B−A)/30 。
【0041】
(5)色調b値
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットを円柱状の粉体測定用セルに充填し、色差計を用いて、反射法にて測定した。
【0042】
(6)透明性(ヘイズ)
ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の試料ペレットをフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(60:40wt%)の混合溶媒に加熱溶解した後、ガラスセルに移し、ヘイズメーターを用いて測定した。得られた透明性(ヘイズ)は、0.5%未満のものを良好、0.5%以上1.0%未満のものを合格とし、1.0%以上のものを不合格とした。
【0043】
(7)環状三量体の析出性
フィルムを5cm×5cmの大きさに切り出し、150℃で60分間熱風乾燥機内にて加熱した後、フィルム表面を走査型電子顕微鏡で1,000倍にて観察し、任意に選び撮影したフィルム表面の環状三量体の析出物個数をカウントした。環状三量体の析出性は、5個未満のものを良好(○)、5個以上10個未満のものを合格(△)、10個以上の ものを不合格(×)とし、下記の基準で判断した。
【0044】
[実施例1]
(エステル化反応)
テレフタル酸とエチレングリコールの反応物であるエステル化反応物を予め255℃の溶融状態で貯留させ、さらにテレフタル酸とエチレングリコールとをテレフタル酸に対するエチレングリコールのモル比が1.15になるようにスラリー状にしてエステル化反応槽の温度を保ちながら定量供給し、水を留出させながらエステル化反応を行い、エステル化反応物を得た。得られたエステル化反応物を、重合反応槽に移送した。
【0045】
(溶融重合反応)
リン酸を含むエチレングリコール溶液と酢酸マグネシウム4水和物を含むエチレングリコール溶液、三酸化アンチモンを含むエチレングリコール溶液、水酸化カリウムを含むエチレングリコール溶液を別々に、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対して、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、リン元素をM/Pが2.8に、アンチモン元素として60ppmとなるように添加し、引き続いて重合反応槽内を除々に減圧にし、30分で0.13kPa以下とし、それと同時に除々に昇温して280℃とし、目標の固有粘度まで重合反応を実施した。その後、窒素ガスによって重縮合反応槽を常圧に戻し、口金より冷水中にストランド状に吐出し、押し出しカッターによって円柱状にペレット化し、表面結晶化装置によって予備結晶化し、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。得られた液相ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の固有粘度は0.50であった。
【0046】
(固相重合)
重縮合反応で得られた液相ポリエチレンテエフタレート樹脂組成物を、回転式真空乾燥装置を用いて、0.13kPaの減圧下、215℃の温度で20時間固相重合を行い、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。結果を表1に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、固有粘度が0.65、環状三量体含有量が0.40wt%、アンチモン元素の含有量が60ppm、M/Pが2.8、環状三量体の再生速度が0.007wt%/分、色調b値が3.2、透明性(ヘイズ)が0.3であり、良好であった。
【0047】
(フィルム成形)
固相重合処理の終わったポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を160℃で4時間乾燥し、押し出し機に供給し、285℃で溶融押し出しを行い、静電印加された20℃のキャストドラム上にキャストし未延伸シートを得た。この未延伸シートを90℃に加熱された延伸ロールによって長手方向に3.1倍延伸し、次いでテンター式延伸機によって120℃で幅方向に3.7倍延伸し、その後230℃で熱固定してロールに巻き取った。フィルムの成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性は良好であった。
【0048】
[実施例2]
固相重合時間を30時間と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.4%で、フィルム特性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性は良好であった。
【0049】
[
参考例3]
固相重合時間を50時間と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.4%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性は良好であった。
【0050】
[実施例4〜7]
三酸化アンチモン、水酸化カリウム、酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量を変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。
【0051】
実施例4においては、得られるポリチレンテエフタレート樹脂組成物に対してアンチモン元素が45ppmとなるよう三酸化アンチモンの添加量を変更し、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.2%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性は良好であった。
【0052】
実施例5においては、得られるポリチレンテエフタレート樹脂組成物に対してアンチモン元素が75ppmとなるよう三酸化アンチモンの添加量を変更し、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.6%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性は良好であった。
【0053】
実施例6においては、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のM/Pが2.0となるよう水酸化カリウム、酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量を変更し、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.3%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性は良好であった。
【0054】
実施例7においては、得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物のM/Pが5.0となるよう水酸化カリウム、酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量を変更し、得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.5%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性は良好であった。
【0055】
[実施例8]
固相重合前の固有粘度を0.45、固相重合温度を220℃と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.4%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性は良好であった。
【0056】
[
参考例9]
固相重合温度を190℃、固相重合時間を60時間と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は、透明性(ヘイズ)が0.4%で、フィルム成形性は良好であり、得られたフィルムの環状三量体の析出性は良好であった。
【0057】
[実施例10
、12
、参考例11]
固相重合前の固有粘度、固相重合温度、固相重合時間を変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。
【0058】
実施例10においては、固相重合温度を230℃、固相重合時間を10時間と変更したことにより、環状三量体含有量が0.50wt%となったため、得られたフィルムの環状三量体の析出性は増加したが、使用できる範囲のものであった。
【0059】
参考例11においては、固相重合前の固有粘度を0.35、固相重合温度を240℃と変更したことにより、色調b値が5.0に増加し、環状三量体の再生速度が0.011wt%に増加したため、環状三量体の析出性は増加したが、使用できる範囲のものであった。
【0060】
実施例12においては、固相重合前の固有粘度を0.55、固相重合時間を15時間と変更したことにより、環状三量体含有量が0.50wt%となったため、得られたフィルムの環状三量体の析出性は増加したが、使用できる範囲のものであった。
【0061】
[比較例1]
固相重合を実施しない以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。結果を表1に示す。得られたフィルムの環状三量体の析出性は不良であった。
【0062】
[比較例2]
固相重合温度を190℃と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。固相重合後の固有粘度が0.55と低いため、フィルム成形時、押し出しシートの幅が一定せず、また押し出しシートが非常にもろいため延伸することができなかった。
【0063】
[比較例3]
固相重合時間を225℃と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。固相重合後の固有粘度が0.75と高いため、押し出し機でのせん断発熱による溶融ポリマーの劣化が進み、フィルム成形時に破れが頻発し、延伸することができなかった。
【0064】
[比較例4]
固相重合温度を220℃、固相重合時間を10時間と変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。環状三量体含有量が0.60wt%と高いため、得られたフィルムの環状三量体の析出性は不良であった。
【0065】
[比較例5]
三酸化アンチモンの添加量を得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対してアンチモン元素として20ppmと変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施したが、溶融重合において、目的の固有粘度に到達しなかったため途中で中断した。
【0066】
[比較例6]
三酸化アンチモンの添加量を得られるポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に対してアンチモン元素として100ppmと変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。環状三量体の再生速度が0.015wt%/分と増加したため、得られたフィルムの環状三量体の析出性は不良であった。
【0067】
[比較例7]
水酸化カリウム、酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量をM/Pが1.5となるように変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。M/Pが低いため、静電印加キャスト性が悪く印加ムラが多数発生し、製品フィルムを得ることができなかった。
【0068】
[比較例8]
水酸化カリウム、酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量をM/Pが6.0となるように変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。M/Pが高いため、環状三量体の再生速度が0.015wt%/分と増加し、また得られたフィルムの環状三量体の析出性は不良であった。
【0069】
[比較例9]
固相重合前の固有粘度を0.65、三酸化アンチモンの添加量をアンチモン元素として250ppm、水酸化カリウム、酢酸マグネシウム4水和物、リン酸の添加量をM/Pが1.0となるように変更する以外は、実施例1と同様の方法で実施した。結果を表1に示す。透明性(ヘイズ)が1.5と得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は不良であり、また固相重合後の固有粘度が0.85と高いため、押し出し機でのせん断発熱による溶融ポリマーの劣化が進み、フィルム成形時に破れが頻発し、延伸することができなかった。
【0070】
[比較例10]
三酸化アンチモンの添加量をアンチモン元素として120ppmと変更する以外は、実施例1と同様の方法で溶融重合反応を行い、固有粘度が0.65の液相ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得、次いで回転式熱処理機に仕込み、窒素ガス雰囲気中で230℃の温度で20時間加熱処理を行い、ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物を得た。結果を表1に示す。透明性(ヘイズ)が1.0と得られたポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の品質は不良であり、また得られたフィルムの環状三量体の析出性も不良であった。
【0071】
【表1】