(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面の凹凸平均間隔Sm、表面の算術表面粗さRa、BET比表面積A、及び体積平均粒径D50vが、下記式(1)乃至(4)を満たす磁性粒子を含む静電荷像現像用キャリア。
(1)0.8μm≦Sm≦1.0μm
(2)0.3μm≦Ra≦1.2μm
(3)0.14m2/g≦A≦0.20m2/g
(4)18μm≦D50v≦32μm
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一例である実施形態について詳細に説明する。
【0017】
<静電荷像現像用キャリア>
本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアは、表面の凹凸平均間隔Sm、表面の算術表面粗さRa、BET比表面積A、及び体積平均粒径D50vが、それぞれ下記式(1)乃至(4)を全て満たす磁性粒子を含んで構成されている。
(1)0.5μm≦Sm≦2.5μm
(2)0.3μm≦Ra≦1.2μm
(3)0.14m
2/g≦A≦0.20m
2/g
(4)18μm≦D50v≦32μm
【0018】
本実施形態に係る静電荷像現像用キャリア(以下、「キャリア」と称する場合がある。)を含む静電荷像現像剤(以下、「現像剤」と称する場合がある。)を用いれば、高温高湿(30℃、RH88%)下で高濃度画像を連続で形成した場合に画像の濃度ムラが抑制される。その理由は定かでないが、以下のように推測される。
【0019】
電子写真方式による画像形成は一般に現像器内の現像剤が攪拌され現像剤が帯電する。帯電した現像剤は現像器の現像剤保持体に搬送され、対向する電子写真感光体の表面に形成されている静電潜像がトナーによって現像され、トナー画像が形成される。このとき、トナーに帯電不良があると、必要以上にトナーによって現像されたり、現像されないなどの現象が生じ、結果として印刷面の濃度ムラや画像欠損などが生じる。
【0020】
二成分現像においてトナーの帯電は主に現像器内でのトナーとキャリアの攪拌により生じる。そのため、現像器内で十分な攪拌が行われないと、帯電不良のトナーが生じてしまう。トナーが多く供給され続ける高濃度での連続印刷ではトナーの供給量が多くなり、現像器内でのトナーとキャリアの混合攪拌が追い付かずにトナー帯電不良が起こりやすい。
また、高温高湿下では帯電しにくいため、特に高温高湿下で高濃度印刷を連続して行うと濃度ムラ等の画像不良が顕著に表れやすい。
【0021】
本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアでは、キャリアを構成する磁性粒子の表面粗さと粒径が上記範囲(1)、(2)、(4)を満たすことで、現像剤の攪拌時にトナーにかかるストレスが好適になり、トナー供給量が多くなってもトナーに対して安定な帯電が付与されると考えられる。
更に、磁性粒子のBET比表面積が上記範囲(3)を満たすことで、高温高湿時に磁性粒子に付着する水分とトナーとの接触が少なくなるために高温高湿時の帯電不良が抑えられると考えられる。
結果、磁性粒子の物性が上記(1)乃至(4)の条件を満足すると、特に高温高湿下での連続高濃度印刷での画像濃度の変動(濃度ムラ)が抑制されると考えられる。
【0022】
以下、本実施形態に係るキャリアを構成する磁性粒子の各物性について具体的に説明する。なお、磁性粒子の表面の凹凸平均間隔Sm、表面の算術表面粗さRa、BET比表面積A、及び体積平均粒径D50vは、それぞれ実施例として後述する方法によって測定される値である。
【0023】
・表面粗さ(表面の凹凸平均間隔Sm及び表面の算術表面粗さRa)
現像器内の攪拌は、現像器の形状や輸送手段などにより調整されるが、トナーとキャリアの接触による帯電を行うためにはトナーとキャリアが十分に接触し擦れることが必要である。磁性粒子の表面凹凸が、0.5μm≦Sm≦2.5μm、且つ、0.3μm≦Ra≦1.2μmであると、現像剤が流動するときのトナーとキャリアの摩擦が好適になり良好な帯電を得ることができる。
【0024】
磁性粒子の表面の凹凸平均間隔Smが0.5μmより小さいとキャリアの接触面積が小さくなり、適度な接触帯電が得られない。Smが2.5μmより大きいと表面の凹凸が大き過ぎて流動性が悪くなり、帯電し難くなる場合がある。
磁性粒子のSmは、0.8μm以上1.5μm以下であることが望ましく、0.8μm以上1.0μm以下であることがより望ましい。
【0025】
また、磁性粒子の表面の算術表面粗さRaが0.3μmより小さいとキャリアの表面が滑りやすく適度な接触帯電が得られない。Raが1.2μmより大きいと現像剤が固定され動きにくくなるためトナーとキャリアの接触機会が減ってしまい帯電不良となる場合がある。
磁性粒子のRaは、0.5μm以上1.0μm以下であることが望ましく、0.5μm以上0.6μm以下であることがより望ましい。
【0026】
・体積平均粒径D50v
磁性粒子の体積平均粒径D50vが好適な範囲にあると、現像剤の攪拌性と現像剤に掛かる攪拌ストレスによる劣化のバランスが取れる。磁性粒子の体積平均粒径D50vが18μm以上32μm以下の範囲であると、前記の表面凹凸の付与によるストレスを低減しながら攪拌による帯電付与を良好とすることが可能となる。磁性粒子の体積平均粒径D50vが18μmより小さいと、現像剤の攪拌不良となる場合がある。磁性粒子の体積平均粒径D50vが32μmより大きいと、現像剤への攪拌ストレスによりトナー劣化が進み、同様に帯電不良となる場合がある。
磁性粒子の体積平均粒径D50vは、20μm以上30μm以下であることが望ましく、24μm以上30μm以下であることがより望ましい。
【0027】
・BET比表面積A
高温高湿では、現像剤の電荷が不安定となりやすいが、BET比表面積が0.14m
2/g以上0.20m
2/g以下の範囲であると、湿度による水分の影響がキャリアのくぼみに集中しやすくなり、トナーとの接触面での影響を抑える場合がある。よって、高温高湿下で良好な画像を得ることができる。BET比表面積が0.14m
2/gより小さいと、上記効果が得られない場合がある。0.20m
2/gより大きいと、全体に水分量が多くなり、電荷リークを起こし帯電不良となる場合がある。
磁性粒子のBET比表面積Aは、0.15m
2/g以上0.18m
2/g以下であることが望ましく、0.16μm以上0.18μm以下であることがより望ましい。
【0028】
本実施形態における磁性粒子を製造する方法は特に限定されないが、例えば以下のようにして製造することができる。
【0029】
キャリアの磁性粒子の表面粗さ(表面の凹凸平均間隔Sm及び表面の算術表面粗さRa)は、焼成時の温度と酸素濃度である程度調整されるが、焼成の主目的は磁性粒子に磁化を持つ構造に変化させることである。また、特に表面粗さ及び粒径とBET比表面積は相関し、焼成時の温度と酸素濃度によって本実施形態に係るキャリアの表面粗さSm、RaとBET比表面積Aを達成することは難しい。
【0030】
そこで、本実施形態に係るキャリアを構成する磁性粒子は、以下の(A)乃至(E)の組み合わせによって好適に製造することができる。
(A)焼成前に仮焼成を行う。
(B)更に粉砕し、粉砕粒径を調整したスラリーから造粒を行う。
(C)表面性調整剤としてSiO
2、SrCO
3等を用いる。
(D)焼成時の温度、酸素濃度を調整する
(E)焼成によって得られた磁性粒子を、流動させながら温度を与える。
【0031】
焼成前に仮焼成を行った後、粉砕して粒径を制御する。目的の粒度を有する粉砕物に造粒し、体積平均粒径を決める。仮焼成後の粉砕粒径によって磁性粒子の基本となる粒界の大きさを制御する。また、添加剤としてSiO
2、SrCO
3等を用いて、表面の凹凸を微調整しながらBET比表面積との両立を図る。SiO
2を加えると粒界の面積が広くなりSmが大きくなるように調整できる。SrCO
3はRaを大きくする作用がある。
【0032】
次に焼成を行い、温度と酸素濃度を調整し、磁化を合わせフェライトとする。焼成温度と酸素濃度によって粒界全体の大きさを調整する。焼成温度が高いとSmが大きく、酸素濃度が高いとRaが大きくなりやすい。また、焼成温度、酸素濃度は抵抗及び磁化に強く影響する。温度が高く酸素濃度が低い程、磁化が高く抵抗が低くなる。
【0033】
焼成を終了してフェライト化が行われた後に、フェライト化反応が生じない程度の温度で内部空隙を減らす。これにより、目的の磁性粒子が得られる。流動させながら温度を掛けると、粒界間の隙間が小さくなるためSm、Raにあまり変化なくBET比表面積を下げることができる。
【0034】
以下に、具体的な材料、条件を示して本実施形態に係る磁性粒子の製造方法の一例を説明するが、本実施形態に係る磁性粒子は以下に記載する材料や数値に限定されるものではない。
【0035】
例えば、Fe
2O
3、Mn(OH)
2、Mg(OH)
2をそれぞれモル比で2:0.8:0.2になるように混合し、SiO
2を全体の0.1質量%加え、更に混合する。
次に、分散剤と水とを加えメディア径1mmのジルコニアビーズで混合粉砕を行う。水分を乾燥した後、900℃の温度のもと仮焼成を行う。
【0036】
上記仮焼成物を、分散剤、水、結着樹脂としてのポリビニルアルコールとともに、湿式ボールミルで混合粉砕を行う。粉砕粒径が体積平均粒径で1.2μmとなったところで粉砕を止める。
次に、スプレードライヤーで体積平均粒径28μmの粒子になるように造粒、乾燥を行う。
乾燥粒子を電気炉で1240℃とし、酸素と窒素の混合気体の中、酸素濃度が1%になるように調整しながら焼成を行う。
【0037】
焼成後、解砕工程、分級工程を経て、体積平均粒径35μmのフェライト粒子を得る。更に、ロータリーキルンで15ppmの条件のもと900℃で加熱する。
出来上がった粒子を再び解砕工程、分級工程、を経た後、26μmの目的の磁性粒子が得られる。
【0038】
本実施形態に係るキャリアは、磁性粒子のみで構成されていてもよいし、磁性粒子の表面の少なくとも一部を樹脂で被覆した被覆キャリアでもよい。
【0039】
磁性粒子を被覆する樹脂(被覆樹脂)としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、シクロヘキシルアクリレート樹脂、シクロヘキシルメタクリレート樹脂、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0040】
被覆樹脂には、例えば、導電材料等その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、例えば、カーボンブラック、各種金属粉、酸化チタン、酸化すず、マグネタイト、フェライト等の金属酸化物が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、製造安定性、コスト、導電性等の良好な点で、カーボンブラック粒子が望ましい。カーボンブラックの種類としては、特に制限はないが、DBP吸油量が50ml/100g以上250ml/100g以下程度であるカーボンブラックが製造安定性に優れて望ましい。
【0041】
磁性粒子の表面を被覆樹脂で被覆するには、例えば、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、磁性粒子を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、磁性粒子を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの磁性粒子と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる
【0042】
ここで、被覆樹脂層の磁性粒子に対する被覆量は、例えば、キャリア全体の質量に対して0.5質量%以上(望ましくは0.7質量%以上6質量%以下、より望ましくは1.0質量%以上5.0質量%以下)であることがよい。
【0043】
キャリアの場合、被覆樹脂層の磁性粒子に対する被覆量が6質量%以下であれば、キャリアの表面形状は磁性粒子の表面形状(表面の凹凸平均間隔Sm、表面の算術表面粗さRa、BET比表面積A、及び体積平均粒径D50v)が保たれる。
【0044】
ここで、被覆量は、次のようにして求められる。
溶剤可溶の被覆樹脂の場合は、精量したキャリアを可溶溶剤(例えば、トルエン)に溶解させ、磁性粉を磁石で保持し、被覆樹脂が溶解した溶液を洗い流す。これを数度繰り返す事により、被服樹脂が取り除かれた磁性粉が残る。乾燥させ、磁性粉の質量を測定し、差分をキャリア量で割ることにより被覆量が算出される。
具体的には、キャリア20.0gを計り取り、ビーカーに入れ、トルエン100gを加え攪拌翼で10分攪拌する。ビーカーの底に磁石をあて、芯材(磁性粉)が流れ出さないようにトルエンを流す。これを4回繰り返し、洗い流した後のビーカーを乾燥させる。乾燥後磁性粉量を測定し、式[(キャリア量−洗浄後の磁性粉量)/キャリア量]で被覆量を算出する。
一方、溶剤不溶の被覆樹脂の場合は、Rigaku社製Thermo plus EVOII 差動型示差熱天秤 TG8120を用い、窒素雰囲気下で、室温(25℃)以上1000℃以下の範囲で加熱し、その質量減少から被覆量を算出する。
【0045】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤(以下、適宜、現像剤と称する)は、静電荷像現像用トナーと上述した静電荷像現像用キャリアとを含んで構成される。
本実施形態に係る現像剤に含まれるトナーは、トナー粒子と、必要に応じて、外添剤と、を含んで構成される。
【0046】
(トナー粒子)
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、必要に応じて、着色剤と、離型剤と、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0047】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上95質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上85質量%以下がさらに好ましい。
【0049】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0051】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0052】
−離型剤−
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
【0053】
離型剤の融解温度は、50℃以上110℃以下が好ましく、60℃以上100℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
【0054】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0055】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0056】
−トナー粒子の特性等−
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0057】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、4μm以上8μm以下がより好ましい。
【0058】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマンーコールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積平均粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)
1/2、数平均粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)
1/2として算出される。
【0059】
トナー粒子の形状係数SF1としては、110以上150以下が好ましく、120以上140以下がより好ましい。
【0060】
なお、形状係数SF1は、下記式により求められる。
式:SF1=(ML
2/A)×(π/4)×100
上記式中、MLはトナーの絶対最大長、Aはトナーの投影面積を各々示す。
具体的には、形状係数SF1は、主に顕微鏡画像又は走査型電子顕微鏡(SEM)画像を画像解析装置を用いて解析することによって数値化され、以下のようにして算出される。すなわち、スライドガラス表面に散布した粒子の光学顕微鏡像をビデオカメラによりルーゼックス画像解析装置に取り込み、100個の粒子の最大長と投影面積を求め、上記式によって計算し、その平均値を求めることにより得られる。
【0061】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO
2、TiO
2、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)n、Al
2O
3・2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等が挙げられる。
【0062】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部である。
【0063】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、PMMA、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0064】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上5質量%以下が好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。
【0065】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0066】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0067】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レディーゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動師分機、風力師分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0068】
本実施形態に係る現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0069】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0070】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0071】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0072】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0073】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0074】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0075】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0076】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0077】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0078】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10
−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0079】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0080】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーと本実施形態に係るキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0081】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0082】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0083】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0084】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。
【0085】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0086】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0087】
<プロセスカートリッジ/現像剤カートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0088】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0089】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0090】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0091】
次に、本実施形態に係る現像剤カートリッジについて説明する。
本実施形態に係る現像剤カートリッジは、本実施形態に係る現像剤を収容し、画像形成装置に着脱される現像剤カートリッジである。
例えば、
図1に示す画像形成装置において、トナーカートリッジ8Y,8M,8C,8Kは、本実施形態に係る現像剤カートリッジでもよい。該カートリッジ内に収納されている現像剤が少なくなった場合には、該カートリッジが交換される。
【実施例】
【0092】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、特に断りがない限り、「部」とは「質量部」を意味する。
【0093】
<実施例1>
(コート液の調製)
シクロヘキシルアクリレート樹脂(重量平均分子量5万) 36質量部
カーボンブラック VXC72(キャボット社製) 4質量部
トルエン 250質量部
イソプロピルアルコール 50質量部
【0094】
上記成分と、トルエンと同量のガラスビーズ(粒径:1mm)とを関西ペイント社製サンドミルに投入し、回転速度1200rpmで30分間攪拌し、固形分11質量%のコート液を調製した。
【0095】
(磁性粒子1の作製)
Fe
2O
3を1318質量部、Mn(OH)
2を586質量部、Mg(OH)
2を96質量部、及びSrCO
3を1質量部混合し、さらに分散剤としてポリビニルアルコール、水、及びメディア径1mmのジルコニアビーズを加え、サンドミルで解砕混合した。
【0096】
‐仮焼成‐
次いで、ジルコニアビーズをろ過により除去し、乾燥後、更にロータリーキルンで20rpm、900℃、60分間の条件で混合酸化物とした。
【0097】
‐スラリー粉砕‐
次に、分散剤としてポリビニルアルコール、水を加え、更にポリビニルアルコールを6.6質量部加え、湿式ボールミルで体積平均粒径が1.2μmになるまで粉砕を行った。
【0098】
‐造粒‐
次に、スプレードライヤーで乾燥粒径が28μmになるように造粒し、乾燥させた。
【0099】
‐本焼成‐
更に、電気炉で温度1240℃、酸素濃度1%の酸素窒素混合雰囲気のもとで5時間の焼成を行った。
【0100】
‐追加工程‐
得られた粒子の解砕工程、分級工程を経た後、ロータリーキルンで15rpm、900℃の条件で2時間加熱し、さらに分級工程を経て磁性粒子1を得た。
【0101】
(キャリア1の作製)
真空脱気型5Lニーダーに磁性粒子1を2000g入れ、更にコート液1を560g入れ、攪拌しながら、60℃にて−200mmHgまで減圧し15分混合した後、昇温/減圧させ94℃/−720mmHgで30分間攪拌乾燥させ、樹脂被覆粒子を得た。次に75μmメッシュの篩分網で篩分を行い、キャリア1を得た。
キャリア1の被覆樹脂層の磁性粒子に対する被覆量は3.5質量%であった。
【0102】
<実施例2乃至10、比較例1乃至8>
(磁性粒子2乃至18の作製)
磁性粒子1の作製において製造条件を表1に示すように変更した以外は磁性粒子1の作製と同様にして磁性粒子2乃至18をそれぞれ作製した。
作製した磁性粒子の構成材料及び製造条件を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
(キャリア2乃至18の作製)
キャリア1の作製において磁性粒子1をそれぞれ磁性粒子2乃至18にそれぞれ変更したこと以外はキャリア1の作製と同様にしてキャリア2乃至18を作製した。
【0105】
[磁性粒子の物性測定]
上記作製したキャリア1乃至18について、以下のようにして被覆樹脂を除去後、磁性粒子の表面の凹凸平均間隔Sm、表面の算術表面粗さRa、BET比表面積A、及び体積平均粒径D50vをそれぞれ以下の方法によって測定した。
【0106】
(被覆樹脂の除去)
キャリア20gをトルエン100mlに入れる。40kHzの条件で超音波を30秒あてる。粒径に合わせたろ紙を用いて磁性粒子と樹脂溶液を分離する。ろ紙に残った磁性粒子に20mlのトルエンを上から流し、洗浄する。次に、ろ紙に残った磁性粒子を回収する。回収した磁性粒子を同様にトルエン100mlに入れ、40kHzの条件で超音波を30秒あてる。同様にろ過し、20mlのトルエンで洗ったのち、回収する。これを合計10回行う。最後に回収した磁性粒子を乾燥させた。
【0107】
(表面の凹凸平均間隔Sm及び算術平均粗さRa)
磁性粒子の表面の凹凸平均間隔Sm及び算術平均粗さRaの測定は、磁性粒子50個について、超深度カラー3D形状測定顕微鏡(VK−9500、キーエンス社製)を用い、倍率3000倍で表面を換算して求める方法を用いる。
凹凸平均間隔Smは、観察した磁性粒子表面の3次元形状から粗さ曲線を求め、該粗さ曲線が平均線と交差する交点から求めた山谷一周期の間隔の平均値を求める。Sm値を求める際の基準長さは10μmであり、カットオフ値は0.08mmである。
算術平均粗さRaは、粗さ曲線を求め、該粗さ曲線の測定値と平均値までの偏差の絶対値を合計し平均することでRa値を求める。Ra値を求める際の基準長さは10μmであり、カットオフ値は0.08mmである。
上記Sm値、Ra値の測定はJIS B0601(1994年度版)に準じて行う。
【0108】
(体積平均粒径D50v)
磁性粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置「LA−700((株)堀場製作所製)」を用いて測定する。
なお、磁性粒子を製造する途中の粉砕粒子等の粒径についても同様にして測定する。
【0109】
(BET比表面積)
磁性粒子のBET比表面積は、SA3100比表面積測定装置(ベックマンコールター社製)を用いて窒素置換、3点法にて行う。具体的には、磁性粒子5gをセルに入れ、60℃、120分の脱気処理を行い、窒素とヘリウムの混合ガス(30:70)を用いて行う。
【0110】
磁性粒子1乃至18の表面の凹凸平均間隔Sm、表面の算術表面粗さRa、BET比表面積A、及び体積平均粒径D50vを表2にそれぞれ示す。
【0111】
【表2】
【0112】
[トナー1の作製]
【0113】
(着色剤分散液1)
シアン顔料:銅フタロシアニンB15:3(大日精化工業社製) 50質量部
アニオン性界面活性剤:ネオゲンSC(第一工業製薬社製) 5質量部
イオン交換水 200質量部
【0114】
上記を混合し、IKA社製ウルトラタラックスにより5分間、更に超音波バスにより10分間分散し、固形分21質量%の着色剤分散液1を得た。堀場製作所製粒度測定器LA−700にて体積平均粒径を測定したところ160nmであった。
【0115】
(離型剤分散液1)
パラフィンワックス:HNP−9(日本精鑞社製) 19質量部
アニオン性界面活性剤:ネオゲンSC(第一工業製薬社製) 1質量部
イオン交換水 80質量部
【0116】
上記を耐熱容器中で混合し、90℃に昇温して30分、攪拌を行った。次いで、容器底部より溶融液をゴーリンホモジナイザーへと流通し、5MPaの圧力条件のもと、3パス相当の循環運転を行った後、圧力を35MPaに昇圧し、更に3パス相当の循環運転を行った。こうして出来た乳化液を前記耐熱溶液中で40℃以下になるまで冷却し、離型剤分散液1を得た。堀場製作所製粒度測定器LA−700にて体積平均粒径を測定したところ240nmであった。
【0117】
(樹脂粒子分散液1)
−油層−
スチレン(和光純薬工業(株)製) 30質量部
アクリル酸n−ブチル(和光純薬工業(株)製) 10質量部
β−カルボキシエチルアクリレート(ローディア日華(株)製) 1.3質量部
ドデカンチオール(和光純薬工業(株)製) 0.4質量部
【0118】
−水層1−
イオン交換水 17質量部
アニオン性界面活性剤(ダウファックス、ダウケミカル社製) 0.4質量部
【0119】
−水層2−
イオン交換水 40質量部
アニオン性界面活性剤(ダウファックス、ダウケミカル社製) 0.05質量部
ペルオキソ二硫酸アンモニウム(和光純薬工業(株)製) 0.4質量部
【0120】
上記の油層成分と水層1の成分をフラスコに入れて攪拌混合し単量体乳化分散液とした。反応容器に上記水層2の成分を投入し、容器内を窒素で十分に置換し、攪拌をしながらオイルバスで反応系内が75℃になるまで加熱した。反応容器内に上記の単量体乳化分散液を3時間かけて徐々に滴下し、乳化重合を行った。滴下終了後更に75℃で重合を継続し、3時間後に重合を終了させた。
【0121】
得られた樹脂粒子は、レーザー回折式粒度分布測定装置LA−700(株)堀場製作所製)で樹脂粒子の体積平均粒径D50vを測定したところ250nmであった。また、示差走査熱量計(DSC−50 島津製作所社製)を用いて昇温速度10℃/分で樹脂のガラス転移点を測定したところ53℃であった。また、分子量測定器(HLC−8020東ソー社製)を用い、THFを溶媒として数平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ13,000であった。これにより体積平均粒径250nm、固形分42質量%、ガラス転移点52℃、数平均分子量Mnが13,000の樹脂粒子分散液1を得た。
【0122】
(トナー1の作製)
樹脂粒子分散液1 150質量部
着色剤粒子分散液1 30質量部
離型剤分散液1 40質量部
ポリ塩化アルミニウム 0.4質量部
【0123】
上記の成分をステンレス製フラスコ中でIKE社製のウルトラタラックスを用い十分に混合、分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で80分保持した後、ここに上記と同じ樹脂粒子分散液1を緩やかに70質量部追加した。
【0124】
その後、濃度0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを6.0に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、攪拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら97℃まで加熱して3時間保持した。反応終了後、降温速度を1℃/分で冷却し、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行った。これをさらに40℃のイオン交換水3Lを用いて再分散し、15分間300rpmで攪拌・洗浄した。この洗浄操作をさらに5回繰り返し、濾液のpHが6.54、電気伝導度6.5μS/cmとなったところで、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5A ろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続してトナー粒子を得た。
【0125】
トナー粒子の体積平均粒径D50vをコールターカウンターで測定したところ6.2μmであり、体積平均粒度分布指標GSDvは1.20であった。ルーゼックス社製のルーゼックス画像解析装置で形状観察を行ったところ、粒子の形状係数SF1は135でポテト形状であることが観察された。
トナー粒子のガラス転移点は52℃であった。
【0126】
更に、このトナー粒子に、ヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」と略す場合がある)で表面疎水化処理した一次粒子平均粒径40nmのシリカ(SiO
2)粒子と、メタチタン酸とイソブチルトリメトキシシランの反応生成物である一次粒子平均粒径20nmのメタチタン酸化合物粒子とを、トナー粒子の表面に対する被覆率が40%となるように添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、トナー1を作製した。
【0127】
[トナー2の作製]
トナー1の作製において、シリカ粒子を、HMDSで表面疎水化処理した一次粒子平均粒径20nmのシリカ(SiO
2)粒子に変更し、シリカ粒子とメタチタン酸化合物粒子とをトナー粒子の表面に対する被覆率が70%となるように添加した以外はトナー1の作製と同様にして、トナー2を作製した。
【0128】
[評価]
DCC400改造機をプリントスピード90枚/分になるように調整した。次にキャリア1とトナー1をトナー濃度が9質量%になるように混合し、Cyan位置に仕込み、30℃、相対湿度(RH)88%の環境下で24時間放置し、A4サイズの全ベタ画像(画像濃度100%)の形成を10000枚行った。その後、20cm四方の全ベタ画像の形成を1枚行い、目視で画像観察(カブリの発生)と色差(ΔE)の測定により濃度ムラを評価した。以下の基準により評価を行った。
【0129】
色差(ΔE)は、反射濃度計X−rite939(X−rite社製)にて測定した。
色差(ΔE)とは、CIE1976(L*a*b*)表色系におけるL*a*b*空間における距離差の2乗和の平方根を取ったものである。CIE1976(L*a*b*)表色系は、CIE(国際照明委員会)が1976年に推奨した色空間で、日本工業規格で「JIS Z 8729」に規定されたものである。
【0130】
(色差)
A:ΔE≦1.0
B:1<ΔE≦2
C:2<ΔE≦4
D:4<ΔE≦5
E:ΔE>5
【0131】
(カブリ)
A:目視でも25倍拡大鏡でもカブリなし
B:目視でカブリなし
C:目視でわずかにカブリが発生
D:目視で全体に薄らカブリが発生
E:全体に明らかにカブリが発生
【0132】
キャリア1を用いた実施例1では、目視で画像にカブリは認められず、ΔE=0.5で良好であった。
【0133】
実施例1においてキャリア1を下記表3に示すキャリアに変更したこと以外は実施例1と同様にして全ベタ画像の形成を行い、評価を行った。
【0134】
<実施例11>
実施例1において、キャリア1を磁性粒子1に対して樹脂コートしないキャリア19に、トナー1をトナー2にそれぞれ変更した現像剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして画像形成して評価を行った。
【0135】
<比較例9>
実施例1において、キャリア1を磁性粒子11に対して樹脂コートしないキャリア20に、トナー1をトナー2にそれぞれ変更した現像剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして画像形成して評価を行った。
【0136】
実施例及び比較例の評価結果を表3に示す。
【0137】
【表3】