(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
下記一般式(1)で表され、かつ下記(a)、(b)、(c)、(d1)、(d2)、および(e)からなる群より選択される少なくとも1つの条件を満たすパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物。
(a)下記一般式(1)におけるB
1およびB
2の少なくとも一方が、下記(B−1)乃至(B−3)からなる群より選択される2価の基である。
(b)下記一般式(1)におけるA
1およびA
2の少なくとも一方が、下記(A−4)乃至(A−11)からなる群より選択される2価の基である。
(c)下記一般式(1)において[−(CF
2)
n1−(C(R
1)(R
2))
n2−O−]
mで表される構造が、下記(m−3)、(m−4)および(m−8)からなる群より選択される構造である。
(d1)下記一般式(1)におけるX
1が、下記一般式(1−1)で表される基を1つ以上有する1価の基である。
(d2)下記一般式(1)におけるX
2が、下記一般式(1−2)で表される基を1つ以上有する1価の基である。
(e)下記一般式(1)におけるX
1およびX
2の少なくとも一方が、下記(X−7)および(X−8)からなる群より選択される少なくとも1種の反応性の架橋基を有する1価の基である。
【化1】
(上記一般式(1)において、R
1およびR
2は、それぞれ独立にフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表す。但し、R
1とR
2の両方がフッ素原子であることはない。
n1は、1以上5以下の整数を、n2は、0以上2以下の整数を表し、n1とn2の総数は5以下である。mは、1以上の整数を表す。
A
1およびA
2は、それぞれ独立に下記一般式(2)で表される2価の基を表す。
B
1およびB
2は、それぞれ独立に単結合および下記(B−1)乃至(B−3)からなる群より選択される2価の基を表す。
X
1は、下記(X−1)乃至(X−8)からなる群より選択される少なくとも1種の反応性の架橋基
と、アルキル鎖、芳香族鎖、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、およびエステル基(−CO−O−)から選択される1種の鎖または2種以上の鎖を組合わせた構造からなる2価以上の有機基と、からなる1価の基を表す
か、あるいは下記(X−1)乃至(X−8)からなる群より選択される少なくとも1種の反応性の架橋基
と、下記一般式(1−1)で表される基
と、アルキル鎖、芳香族鎖、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、およびエステル基(−CO−O−)から選択される1種の鎖または2種以上の鎖を組合わせた構造からなる2価以上の有機基と、からなる1価の基を表す。但し、前記B
1が単結合または下記(B−1)である場合におけるX
1は、前記反応性の架橋基を2つ以上有するかまたは前記反応性の架橋基を1つ以上有し且つ下記一般式(1−1)で表される基を1つ以上有する1価の基を表す。
X
2は、下記(X−1)乃至(X−8)からなる群より選択される少なくとも1種の反応性の架橋基
と、アルキル鎖、芳香族鎖、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、およびエステル基(−CO−O−)から選択される1種の鎖または2種以上の鎖を組合わせた構造からなる2価以上の有機基と、からなる1価の基を表す
か、あるいは下記(X−1)乃至(X−8)からなる群より選択される少なくとも1種の反応性の架橋基
と、下記一般式(1−2)で表される基
と、アルキル鎖、芳香族鎖、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、およびエステル基(−CO−O−)から選択される1種の鎖または2種以上の鎖を組合わせた構造からなる2価以上の有機基と、からなる1価の基を表す。但し、前記B
2が単結合または下記(B−1)である場合におけるX
2も、前記反応性の架橋基を2つ以上有するかまたは前記反応性の架橋基を1つ以上有し且つ下記一般式(1−2)で表される基を1つ以上有する1価の基を表す。)
【化2】
(上記一般式(2)において、R
3およびR
4は、それぞれ独立にフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表す。但し、R
3とR
4の両方がフッ素原子であることはない。
n3は、0以上5以下の整数を、n4は、0以上2以下の整数を、n5は、0以上の整数を、n6は、0または1を、n7は、0以上の整数を表す。但しn3、n4、n5、およびn6の全てが0であることはない。
尚、上記一般式(2)で表される2価の基は(*1)部分でパーフルオロアルキレンエーテル構造と結合する。)
【化3】
(上記(B−1)乃至(B−3)はそれぞれ(#2)部分でX
1またはX
2と結合する。)
【化4】
(上記(X−1)におけるR
X1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表す。上記(X−6)におけるR
X2は水素原子、またはアルキル基を表す。上記(X−8)におけるR
X3はアルキル基を表す。)
【化5】
(上記一般式(1−1)および一般式(1−2)における、R
1、R
2、n1、n2、m、A
1、A
2、B
1、B
2、X
1、およびX
2は、前記一般式(1)におけるR
1、R
2、n1、n2、m、A
1、A
2、B
1、B
2、X
1、およびX
2と同義である。)
【化6】
(上記(A−6)におけるoは1以上の整数を表す。尚、上記(A−4)乃至(A−11)はそれぞれ(*1)部分でパーフルオロアルキレンエーテル構造と結合する。)
【化7】
(上記(m−3)および(m−4)におけるm1およびm2は、それぞれ独立に1以上の整数を表し、且つm1とm2の総数が前記一般式(1)におけるmである。上記(m−8)におけるmは、前記一般式(1)におけるmと同義である。)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
本実施形態に係るパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物は、下記一般式(1)で表される。
【0025】
上記一般式(1)において、R
1およびR
2は、それぞれ独立にフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表す。但し、R
1とR
2の両方がフッ素原子であることはない。
n1は、1以上5以下の整数を、n2は、0以上2以下の整数を表し、n1とn2の総数は5以下である。mは、1以上の整数を表す。
A
1およびA
2は、それぞれ独立に下記一般式(2)で表される2価の基を表す。
B
1およびB
2は、それぞれ独立に単結合および下記(B−1)乃至(B−3)からなる群より選択される2価の基を表す。
X
1およびX
2は、それぞれ独立に下記(X−1)乃至(X−8)からなる群より選択される少なくとも1種の反応性の架橋基を有する1価の基を表す。尚、X
1およびX
2はそれぞれ独立に上記一般式(1)からX
1またはX
2を除いた構造の基を1つ以上有していてもよい。但し、前記B
1が単結合または下記(B−1)である場合におけるX
1は、前記反応性の架橋基を2つ以上有するかまたは前記反応性の架橋基を1つ以上有し且つ上記一般式(1)からX
1を除いた構造の基を1つ以上有する1価の基を表す。また、前記B
2が単結合または下記(B−1)である場合におけるX
2も、前記反応性の架橋基を2つ以上有するかまたは前記反応性の架橋基を1つ以上有し且つ上記一般式(1)からX
2を除いた構造の基を1つ以上有する1価の基を表す。
【0026】
【化6】
上記一般式(2)において、R
3およびR
4は、それぞれ独立にフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表す。但し、R
3とR
4の両方がフッ素原子であることはない。
n3は、0以上5以下の整数を、n4は、0以上2以下の整数を、n5は、0以上の整数を、n6は、0または1を、n7は、0以上の整数を表す。但しn3、n4、n5、およびn6の全てが0であることはない。
尚、上記一般式(2)で表される2価の基は(*1)部分でパーフルオロアルキレンエーテル構造と結合する。
【0028】
上記(B−1)乃至(B−3)はそれぞれ(#2)部分でX
1またはX
2と結合する。
【0030】
上記(X−1)におけるR
X1は水素原子、メチル基、またはトリフルオロメチル基を表す。上記(X−6)におけるR
X2は水素原子、またはアルキル基を表す。上記(X−8)におけるR
X3はアルキル基を表す。
【0031】
近年、様々な分野で表面での傷付きを抑制する観点から表面保護膜を設けることが行われている。表面保護膜においては、耐傷性に加えて更に表面の防汚性の観点から離型性が求められることがあり、例えば架橋型のフッ素樹脂材料が用いられることがあった。具体的には、3価以上のポリイソシアネート系化合物中のイソシアネート基と、フッ素含有アルコール系化合物の水酸基及び水酸基含有(メタ)アクリレート系化合物の水酸基と、がそれぞれウレタン結合を形成してなるウレタン(メタ)アクリレート系化合物を用いることが試されている。
しかし、上記のフッ素樹脂材料ではウレタン結合を含むために耐熱性が得られず、高温環境での使用が行えないことがあった。
【0032】
これに対し、本実施形態に係るパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物は前記一般式(1)で表される構造を有しており、耐熱性を奏すると共に、パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物を架橋重合して得られる架橋物においては優れた耐傷性をも実現し得る。
これは、パーフルオロアルキレンエーテル構造部分([ ]
mで囲われている部分)と、末端の反応性の架橋基を有する部分(X
1およびX
2)とを結合するB
1およびB
2が、単結合および前記(B−1)乃至(B−3)からなる群より選択される2価の基で表され、B
1およびB
2にウレタン結合を含んでおらず、上記の単結合および(B−1)乃至(B−3)の何れかの構造であることにより、本実施形態では優れた耐熱性を奏するものと考えられる。
【0033】
また、本実施形態に係る化合物においては、B
1(またはB
2)が前記(B−2)または(B−3)で表される2価の基である場合、X
1(またはX
2)が前記(X−1)乃至(X−8)からなる群より選択される少なくとも1種の反応性の架橋基を有する1価の基である。つまり、B
1(またはB
2)に反応性の架橋基でもある炭素−炭素二重結合を有し、且つX
1(またはX
2)に反応性の架橋基を1つ以上有しており、片側の末端に少なくとも2つの架橋基を有している。従って、上記の化合物を架橋重合することで、−B
1−X
1(または−B
2−X
2)を起点として、一般式(1)からX
1(またはX
2)を除いた構造の基が少なくとも三つ又に架橋重合された架橋物が得られる。
更に、本実施形態に係る化合物においてB
1(またはB
2)が単結合または前記(B−1)で表される2価の基である場合、X
1(またはX
2)が前記反応性の架橋基を2つ以上有するか、または前記反応性の架橋基を1つ以上有し且つ前記一般式(1)からX
1を除いた構造の基を1つ以上有する。従って、この化合物を架橋重合することで、X
1(またはX
2)を起点として、一般式(1)からX
1(またはX
2)を除いた構造の基が少なくとも三つ又に架橋重合された架橋物が得られる。
【0034】
離型性に優れるパーフルオロアルキレンエーテルは、更に柔軟性に優れるとの特性も有しており、この柔軟性に優れたパーフルオロアルキレンエーテル構造を有する主鎖の末端を、上記の通り少なくとも三つ又の架橋重合が形成されるよう固定した構造とすることで、本実施形態では優れた耐傷性が発現されるものと考えられる。
【0035】
〔パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物〕
本実施形態に係る一般式(1)で表されるパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物の構造について、より詳細に説明する。
【0036】
まず前記一般式(1)は、[ ]
mで囲われるパーフルオロアルキレンエーテル構造部分を有する。このパーフルオロアルキレンエーテル構造部分において、R
1およびR
2は、それぞれ独立にフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表す。但し、R
1とR
2の両方がフッ素原子であることはない。
n1は、1以上5以下の整数を、n2は、0以上2以下の整数を表し、n1とn2の総数は5以下である。n1は更に1以上3以下が好ましく、n2は更に0以上1以下が好ましく、n1とn2の総数は更に1以上3以下が好ましい。
【0037】
パーフルオロアルキレンエーテル構造部分を囲う[ ]の数であるmは、1以上の整数を表す。尚、mが2以上である場合における複数のパーフルオロアルキレンエーテル構造(−(CF
2)
n1−(C(R
1)(R
2))
n2−O−)は、同じ構造であっても異なる構造であってもよい。mは更に2以上100以下であることが好ましく、5以上50以下であることがより好ましい。
【0038】
パーフルオロアルキレンエーテル構造部分([−(CF
2)
n1−(C(R
1)(R
2))
n2−O−]
m)の具体例としては、例えば下記(m−1)乃至(m−8)の構造が挙げられる。尚、(m−2)、(m−3)、および(m−4)に示されるm1およびm2は、それぞれ独立に1以上の整数を表し、且つm1とm2の総数がmである。
【0040】
尚、上記(m−1)乃至(m−8)の構造の中でも、(m−2)、(m−6)、(m−7)、(m−8)の構造が好ましく、(m−2)の構造がより好ましい。
【0041】
前記一般式(1)において、A
1およびA
2は、それぞれ独立に一般式(2)で表される2価の基を表す。
【0043】
上記一般式(2)において、R
3およびR
4は、それぞれ独立にフッ素原子またはトリフルオロメチル基を表す。但し、R
3とR
4の両方がフッ素原子であることはない。
n3は、0以上5以下の整数を、n4は、0以上2以下の整数を、n5は、0以上の整数を、n6は、0または1を、n7は、0以上の整数を表す。但しn3、n4、n5、およびn6の全てが0であることはない。
尚、上記一般式(2)で表される2価の基は(*1)部分でパーフルオロアルキレンエーテル構造と結合し、(*2)部分で(−O−B
1−X
1)または(−O−B
2−X
2)と結合する。
【0044】
また、一般式(2)において、n5とn6の総数は2以下であることが好ましく、更にn5とn6の総数は1以下であることがより好ましい。
【0045】
上記一般式(2)で表される2価の基の好ましい構造を以下に表す。
【0047】
上記(A−6)におけるoは1以上の整数を表し、更に1以上50以下であることが好ましく、1以上20以下であることがより好ましい。
【0048】
尚、上記(A−1)乃至(A−12)の構造の中でも、特に(A−1)、(A−2)、(A−3)、(A−6)、(A−8)、(A−11)、(A−12)の構造がより好ましい。
【0049】
前記一般式(1)において、B
1およびB
2は、それぞれ独立に単結合および下記(B−1)乃至(B−3)からなる群より選択される2価の基を表す。
【0051】
上記(B−1)乃至(B−3)はそれぞれ(#2)部分でX
1またはX
2と結合し、(#1)部分で(−O−A
1・・・)または(−O−A
2・・・)側と結合する。
【0052】
尚、B
1およびB
2としては上記群の中でも、特に(B−1)の構造がより好ましい。
【0053】
前記一般式(1)においてX
1(またはX
2)は、前記B
1(またはB
2)が前記(B−2)または(B−3)である場合、即ちB
1(またはB
2)が反応性の架橋基を有する場合には、下記(X−1)乃至(X−8)からなる群より選択される少なくとも1種の反応性の架橋基を有する1価の基を表す。
また、X
1(またはX
2)は、前記B
1(またはB
2)が単結合または前記(B−1)である場合、即ちB
1(またはB
2)が反応性の架橋基を有しない場合には、下記反応性の架橋基を2つ以上有するか、または反応性の架橋基を1つ以上有し且つ前記一般式(1)からX
1(またはX
2)を除いた構造の基を1つ以上有する1価の基を表す。
【0054】
X
1、X
2およびB
1、B
2が上記の構成を満たすことにより、この化合物を架橋重合して得られる架橋物において、−B
1−X
1、−B
2−X
2を起点として、一般式(1)からX
1(またはX
2)を除いた構造の基が少なくとも三つ又に架橋重合された構造が得られる。
【0056】
上記(X−1)におけるR
X1は水素原子(つまり架橋基=アルキル基)、メチル基(つまり架橋基=メタクリル基)、またはトリフルオロメチル基を表す。
尚、R
X1としては上記の中でも水素原子、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0057】
上記(X−3)で表される架橋基はエポキシ基を、(X−4)で表される架橋基は水酸基を、(X−5)で表される架橋基はアミノ基を、表す。
【0058】
上記(X−6)におけるR
X2は水素原子(つまり架橋基=カルボキシ基)、またはアルキル基(つまり架橋基=エステル基)を表す。
尚、(X−6)においてR
X2で表されるアルキル基としては、炭素数1以上18以下のものが好ましく、更には炭素数1以上4以下のものがより好ましい。
R
X2で表されるアルキル基は直鎖状、分子鎖状、環状の何れであってもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロエキシル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル等が挙げられる。
R
X2としては上記の中でもメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルがより好ましい。
【0059】
上記(X−7)で表される架橋基はチオール基を表す。
【0060】
上記(X−8)におけるR
X3はアルキル基(つまり架橋基=トリアルコキシシリル基)を表す。
尚、(X−8)においてR
X3で表されるアルキル基としては、炭素数1以上10以下のものが好ましく、更には炭素数1以上4以下のものがより好ましい。
R
X3で表されるアルキル基は直鎖状、分子鎖状、環状の何れであってもよく、その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル等が挙げられる。
R
X3としては上記の中でもメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチルがより好ましい。
【0061】
X
1およびX
2が有する反応性の架橋基としては、上記(X−1)乃至(X−8)の構造の中でも、特に(X−1)、(X−2)、(X−3)、(X−5)、(X−6)(X−8)の構造が好ましく、更には(X−1)、(X−2)、(X−3)、(X−8)がより好ましい。
【0062】
X
1およびX
2が有する反応性の架橋基の数としては、1以上20以下が好ましく、更には2以上10以下がより好ましい。
【0063】
X
1およびX
2においては、1つ以上の反応性の架橋基と、B
1(またはB
2)と結合する箇所と、の間に他の連結基を有していてもよい。つまり、X
1およびX
2は、1つ以上の反応性の架橋基と、他の2価以上の連結基と、で構成されていてもよい。
【0064】
X
1およびX
2が有する連結基は2価以上の有機基であり、例えばアルキル鎖、芳香族鎖、エーテル基(−O−)、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−CO−O−)から選択される1種の鎖または2種以上の鎖を組合わせた構造からなる2価以上の有機基が挙げられる。
【0065】
上記連結基の具体例としては、例えば以下の(1)乃至(6)の有機基が挙げられる。尚、以下に示す連結基の具体例では、*部分でB
1またはB
2と結合し、#部分で反応性の架橋基と結合する。
【0067】
尚、例えば上記(3)の連結基は反応性の架橋基を1つしか有していないため、本実施形態ではX
1(またはX
2)が前記(B−2)または(B−3)である場合に用い得る。
【0068】
また、X
1およびX
2は、既に述べた通り、前記一般式(1)からX
1またはX
2を除いた構造の基を1つ以上有していてもよく、この場合における前記連結基の具体例としては、例えば以下の(7)乃至(12)の有機基が挙げられる。尚、以下に示す連結基の具体例においても、*部分でB
1またはB
2と結合し、#部分で反応性の架橋基と結合する。
【0070】
ここで、X
1およびX
2の具体例を以下に示す。
まず、X
1およびX
2の具体例として、一般式(1)からX
1またはX
2を除いた構造の基を有しない態様の例を挙げる。反応性の架橋基として前記(X−1)の架橋基を有する例としては、下記(X−1a)乃至(X−1f)が挙げられる。尚、下記(X−1a)乃至(X−1f)におけるR
X1は、前記(X−1)におけるR
X1と同義である。
【0072】
また、反応性の架橋基として前記(X−2)の架橋基を有する例としては、下記(X−2a)乃至(X−2f)が挙げられる。
【0074】
同様に、反応性の架橋基として前記(X−3)乃至(X−8)の架橋基を有する例としては、前記(1)乃至(6)で表される連結基の「#」部分に前記(X−3)乃至(X−8)の架橋基が結合した1価の基が挙げられる。
【0075】
次いで、X
1およびX
2の具体例として、一般式(1)からX
1またはX
2を除いた構造の基を1つ以上有する態様の例を挙げる。反応性の架橋基として前記(X−1)の架橋基を有する例としては、下記(X−1g)乃至(X−1l)が挙げられる。尚、下記(X−1g)乃至(X−1l)におけるR
X1は、前記(X−1)におけるR
X1と同義である。
【0077】
同様に、反応性の架橋基として前記(X−2)乃至(X−8)の架橋基を有する例としては、前記(7)乃至(12)で表される連結基の「#」部分に前記(X−2)乃至(X−8)の架橋基が結合した2価以上の基が挙げられる。
【0078】
ここで、前記一般式(1)で表されるパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物の具体例を示す。但し、本実施形態に係るパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物は、下記の例に限定されるものではない。
【0080】
〔パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物の合成方法〕
次いで、本実施形態に係る一般式(1)で表されるパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物の合成方法の一例について説明する。尚、本実施形態に係るパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物を合成する方法は、下記の方法に限定されるものではない。
【0081】
例えば一般式(1)におけるB
1およびB
2として前記(B−1)で表される2価の基を有する化合物を合成する場合であれば、下記の合成スキームに示すごとく、X
*の末端にOH基を有する化合物(尚、X
*は一般式(1)におけるX
1またはX
2を表す)と無水コハク酸とを反応させて中間体を合成し、この中間体と一般式(1)におけるA
1およびA
2の外側にOH基を有する化合物とを反応させることで、前記一般式(1)で表されるパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物が合成される。
【0083】
尚、B
1およびB
2として前記(B−2)および(B−3)で表される2価の基を有する化合物を合成する場合には、前記の合成スキームにおける無水コハク酸を無水イタコン酸、または無水マレイン酸に替えることで合成し得る。
【0084】
また、B
1およびB
2が単結合を有する化合物を合成する場合には、前記X
*−OHで表される化合物を無水コハク酸と反応させて前記中間体を得る工程を行わず、X
*−OHと、一般式(1)におけるA
1およびA
2の外側にOH基を有する化合物と、を直接反応させることで合成し得る。
【0085】
また、X
1およびX
2が、前記一般式(1)からX
1またはX
2を除いた構造の基を1つ以上有する態様の化合物の合成方法については、例えばX
1およびX
2における「連結基」として前記(10)や(11)で示される連結基を有する化合物であれば、前記(5)で示される連結基を有する化合物を合成する際に、併せて合成される。
【0086】
〔表面保護膜〕
次いで、本実施形態に係る表面保護膜について説明する。
本実施形態に係る表面保護膜は、前述の本実施形態に係るパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物が架橋重合された構造を有する。
【0087】
・表面保護膜の形成方法(架橋重合の方法)
本実施形態に係る表面保護膜は、少なくとも本実施形態に係るパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物(以下単に「本実施形態に係る化合物」と称す)を含有する塗布液を基材上に塗布して架橋重合することで形成される。
【0088】
尚、本実施形態に係る表面保護膜は、本実施形態に係る化合物が架橋剤を介して架橋重合されていてもよい。
【0089】
ここで、例えば本実施形態に係る化合物としてX
1およびX
2における反応性の架橋基に前記(X−1)や(X−2)で示される架橋基(アクリル基等)を有するものを用いる場合には、架橋剤を用いずとも架橋重合を行い得る。
一方、本実施形態に係る化合物として、X
1およびX
2における反応性の架橋基に前記(X−3)乃至(X−8)で示される架橋基(つまり、エポキシ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基等)を有するものを用いる場合には、硬化剤として架橋剤を用いる方法や、反応性の架橋基同士が互いに反応し合う組合せ(例えばX
1およびX
2にエポキシ基を有する化合物と、X
1およびX
2にアミノ基、水酸基またはカルボキシル基を有する化合物との組合せ)で用いる方法により、架橋重合を行い得る。
【0090】
・架橋剤
反応性の架橋基として(X−3)で示される基(エポキシ基)を有する化合物に対して用い得る架橋剤としては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0091】
反応性の架橋基として(X−4)(X−5)または(X−6)で示される基(水酸基、アミノ基、カルボキシル基等)を有する化合物に対して用い得る架橋剤としては、2つ以上のエポキシ基を含有する架橋剤が好ましい。例えば、1,5−ヘキサジエンジエポキシド、1,7−オクタジエンジエポキシド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、トリグリシジルイソシアヌレート、1,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ナフタレン等が挙げられる。
【0092】
また、反応性の架橋基として(X−1)または(X−2)で示される基(アクリル基等)を有する化合物に対して用い得る架橋剤としては、2つ以上アクリル基を含有する架橋剤が好ましい。例えば、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0093】
架橋剤を用いる場合における、本実施形態に係る化合物に対する添加量としては、本実施形態に係る化合物の質量に対して、1%から500%となるよう調整することが好ましく、更には5%から200%とすることがより好ましい。
【0094】
また、本実施形態に係る化合物として、液体のものを用いる場合には、そのまま前記塗布液として使用してもよい。
本実施形態に係る化合物として、固体、液体に関わらず溶媒に溶解し得るものを用いる場合には、本実施形態に係る化合物や、硬化剤(架橋剤)を要する場合であれば更にその硬化剤(架橋剤)、その他の添加剤等を溶媒に溶解して塗布液を調製し、基材上に塗布して架橋重合することで形成される。
また、本実施形態に係る化合物として、固体で溶媒に溶解しないものを用いる場合には、本実施形態に係る化合物や、硬化剤(架橋剤)を要する場合であれば更にその硬化剤(架橋剤)、その他の添加剤等を、溶解し得る温度にまで加熱し、架橋重合することで形成される。
但し、製造性の点からは、溶媒に溶解し得る化合物、または常温(25℃)で液体の化合物を用いて、表面保護膜を形成することが好ましい。
【0095】
前記塗布液に用いられる溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、テトラヒドロフラン、2H,3H−デカフルオロペンタン、1−メトキシヘプタフルオロプロパン、1−メトキシノナフルオロブタン、1−エトキシノナフルオロブタン等が挙げられる。
【0096】
前記架橋重合を行う際には、外部からエネルギーを供給してもよく、例えば紫外線を照射する手段、電子線を照射する手段、加熱する手段等によるエネルギーの供給が挙げられる。
【0097】
また、前記架橋重合を行うための重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤の具体例としては、例えばラジカル型として、IRGACURE184、IRGACURE651、IRGACURE123、IRGACURE819、DAROCURE1173、IRGACURE784、IRGACURE OXE01、IRGACURE OXE02、カチオン型として、IRGACURE250、IRGACURE270(何れもBASF社製)等が挙げられる。
【0098】
・表面保護膜の物性
本実施形態に係る化合物を架橋重合して得られる架橋物(本実施形態に係る表面保護膜等)は、前述の通り耐熱性に優れた材料となる。尚、優れた耐熱性とは、具体的には高温環境下においても優れた耐傷性を示すことを意味する。
ここで、本実施形態に係る化合物を架橋重合して得られる架橋物における耐熱温度(使用し得る温度域)としては、60℃以上200℃以下であることが好ましく、80℃以上160℃以下であることがより好ましい。
【0099】
本実施形態に係る表面保護膜は、25℃での水の接触角が90°以上であることが好ましく、更には100°以上がより好ましい。
【0100】
尚、上記接触角の測定は、フイルム上に塗布された表面保護膜サンプルを、水を使用し接触角計を用いて、25℃においてθ/2法で行われる。また、後述するヘキサデカンに対する接触角は、前記水をヘキサデカンに変更して測定される。
【0101】
前記表面保護膜の厚さとしては、特に限定されるものではないが1μm以上500μm以下が好ましく、10μm以上50μm以下がより好ましい。
【0102】
[用途]
上記のようにして得られる本実施形態に係る表面保護膜は、使用環境が常温(25℃)よりも高い温度となることが想定され、且つ異物との接触により表面に擦り傷が発生し得る物に対してであれば、特に限定されることなく用い得る。
例えば、画像形成装置における定着部材、中間転写部材、記録媒体搬送部材等に用いられる画像形成装置用の無端ベルトやロール、車のボディや窓ガラス、太陽光電池パネルや太陽光を反射させるパネル等が挙げられる。
【0103】
[無端ベルト]
ここで、本実施形態に係る表面保護膜の使用用途の一例である、画像形成装置用の無端ベルトについて説明する。
本実施形態に係る画像形成装置用無端ベルトは、ベルト状の基材と、前記ベルト状の基材上に設けられた、前述の本実施形態に係る表面保護膜と、を有する。
【0104】
図1は、本実施形態に係る無端ベルトを示す斜視図(一部、断面で表わしている)であり、
図2は、
図1において矢印Aの方向から見た、無端ベルトの端面図である。
図1および
図2に示すように、本実施形態の無端ベルト1は、基材2と、基材2の表面に積層された表面層3と、を有する無端状のベルトである。
尚、上記表面層3としては、前述の本実施形態に係る表面保護膜が適用される。
【0105】
無端ベルト1の用途としては、例えば、画像形成装置内における定着ベルト、中間転写ベルト、記録媒体搬送ベルト等が挙げられる。
【0106】
以下、無端ベルト1を定着ベルトとして用いる場合について説明する。
基材2に用いられる材質としては、耐熱性の材料が好ましく、具体的には、公知の各種プラスチック材料および金属材料のものの中から選択して使用される。
【0107】
プラスチック材料のなかでは一般にエンジニアリングプラスチックと呼ばれるものが適しており、例えばフッソ樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリベンズイミダゾール(PBI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルフォン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)、全芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)などが好ましい。また、この中でも機械的強度、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性等に優れる熱硬化性ポリイミド、熱可塑性ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂などが好ましい。
【0108】
また、基材2に用いられる金属材料としては、特に制限は無く、各種金属や合金材料が使用され、例えばSUS、ニッケル、銅、アルミ、鉄などが好適に使用される。また、前記耐熱性樹脂や前記金属材料を複数積層してもよい。
【0109】
以下、無端ベルト1を中間転写ベルトまたは記録媒体搬送ベルトとして用いる場合について説明する。
【0110】
基材2に用いる素材としては、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらの中でもポリイミド系樹脂およびポリアミドイミド系樹脂を用いることがより好ましい。なお、基材は環状(無端状)であればつなぎ目があってもなくてもよく、また基材2の厚さは、通常0.02から0.2mmが好ましい。
【0111】
無端ベルト1を画像形成装置の中間転写ベルトや記録媒体搬送ベルトとして用いる場合、1×10
9Ω/□から1×10
14Ω/□の範囲に表面抵抗率を、1×10
8から1×10
13Ωcmの範囲に体積抵抗率を制御することが好ましい。そのため前記のごとく、基材2や表面層3に、導電剤として、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどのカーボンブラック、グラファイト、アルミニウム、ニッケル、銅合金などの金属または合金、酸化スズ、酸化亜鉛、チタン酸カリウム、酸化スズ−酸化インジウムまたは酸化スズ−酸化アンチモン複合酸化物などの金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなどの導電性ポリマーなどを添加することが好ましい(ここで、前記ポリマーにおける「導電性」とは体積抵抗率が10
7Ω・cm未満を意味する)。これら導電剤は、単独または2種以上が併用して使用される。
【0112】
ここで、上記表面抵抗率および体積抵抗率は、(株)ダイヤインスツルメント製ハイレスタUPMCP−450型URプローブを用いて、22℃、55%RHの環境下で、JIS−K6911に従い測定される。
【0113】
定着用途の場合において、無端ベルト1は、基材2と表面層3との間に弾性層を含んでもよい。弾性層の材料としては、例えば、各種ゴム材料が用いられる。各種ゴム材料としては、例えば、ウレタンゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPM)、シリコーンゴム、フッ素ゴム(FKM)などが挙げられ、特に耐熱性、加工性に優れたシリコーンゴムが好ましい。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。
【0114】
電磁誘導方式の定着装置における定着ベルトとして無端ベルト1を用いる場合は、基材2と表面層3との間に、発熱層を設けてもよい。
発熱層に用いられる材料としては、例えば非磁性金属が挙げられ、具体的には、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、錫、鉛、ビスマス、ベリリュウム、アンチモン、およびこれらの合金(これらを含む合金)等の金属材料が挙げられる。
発熱層の膜厚としては、5から20μmの範囲とすることが好ましく、7から15μmの範囲とすることがより好ましく、8から12μmの範囲とすることが特に好ましい。
【0115】
[ロール]
本実施形態に係る画像形成装置用ロールは、円筒状の基材と、前記円筒状の基材上に設けられた、前述の本実施形態に係る表面保護膜と、を有する。
【0116】
ついで、本実施形態に係るロールについて説明する。本実施形態のロールは、基材と、基材の表面に積層された表面層と、を有する円筒状のロールである。
尚、上記表面層としては、前述の本実施形態に係る表面保護膜が適用される。
【0117】
上記円筒状のロールの用途としては、例えば、画像形成装置内における定着ロール、中間転写ロール、記録媒体搬送ロール等が挙げられる。
【0118】
以下、円筒状ロールを定着ロールとして用いる場合について説明する。
図4に示す定着部材としての定着ロール610としては、その形状、構造、大きさ等について特に制限はなく、円筒状のコア611上に表面層613を備えてなる。また、
図4に示す通り、コア611と表面層613との間に弾性層612を有していてもよい。
【0119】
円筒状のコア611の材質としては、例えば、アルミニウム(例えば、A−5052材)、SUS、鉄、銅等の金属、合金、セラミックス、FRMなどが挙げられる。本実施形態の定着装置72では外径φ25mm、肉厚0.5mm、長さ360mmの円筒体で構成されている。
【0120】
弾性層612の材質としては、公知の材質の中から選択されるが、耐熱性の高い弾性体であればどの材料を用いてもよい。特に、ゴム硬度が15から45°(JIS−A)程度のゴム、エラストマー等の弾性体を用いるのが好ましく、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。
【0121】
本実施形態においては、これらの材質の中でも、表面張力が小さく、弾性に優れる点でシリコーンゴムが好ましい。該シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)などが挙げられる。
【0122】
なお、弾性層612の厚みとしては、3mm以下であることが好ましく、0.5から1.5mmの範囲であることがより好ましい。定着装置72では、ゴム硬度が35°(JIS−A)のHTVシリコーンゴムを72μmの厚さでコアに被覆している。
【0123】
表面層613の厚みとしては、例えば5μm以上50μm以下が挙げられ、10μm以上30μm以下であってもよい。
【0124】
定着ロール610を加熱する加熱源としては、例えばハロゲンランプ660が用いられ、上記コア611の内部に収容する形状、構造のものであれば特に制限はなく、目的に応じて選択される。ハロゲンランプ660により加熱された定着ロール610の表面温度は、定着ロール610に設けられた感温素子690により計測され、制御手段によりその温度が制御される。感温素子690としては、特に制限はなく、例えば、サーミスタ、温度センサなどが挙げられる。
【0125】
[画像形成装置]
次に、本実施形態の無端ベルトおよび本実施形態のロールを用いた本実施形態の画像形成装置について説明する。
図3は、本実施形態に係る無端ベルトを定着装置の加圧ベルトとして備え、本実施形態に係る無端ベルトを中間転写ベルトとして備え、且つ本実施形態に係るロールを定着装置の定着ロールとして備えたタンデム式の、画像形成装置の要部を説明する模試図である。
【0126】
具体的には、画像形成装置101は、感光体79(静電潜像保持体)と、感光体79の表面を帯電する帯電ロール83と、感光体79の表面を露光し静電潜像を形成するレーザー発生装置78(静電潜像形成手段)と、感光体79表面に形成された潜像を、現像剤を用いて現像し、トナー像を形成する現像器85(現像手段)と、現像器85により形成されたトナー像が感光体79から転写される中間転写ベルト86(中間転写体)と、トナー像を中間転写ベルト86に転写する1次転写ロール80(一次転写手段)と、感光体79に付着したトナーやゴミ等を除去する感光体清掃部材84と、中間転写ベルト86上のトナー像を記録媒体に転写する2次転写ロール75(二次転写手段)と、記録媒体上のトナー像を定着する定着装置72(定着手段)と、を含んで構成されている。感光体79と1次転写ロール80は、
図3に示すとおり感光体79直上に配置していてもよく、感光体79直上からずれた位置に配置していてもよい。
【0127】
さらに、
図3に示す画像形成装置101の構成について詳細に説明する。
画像形成装置101においては、感光体79の周囲に、反時計回りに帯電ロール83、現像器85、中間転写ベルト86を介して配置された1次転写ロール80、感光体清掃部材84が配置され、これら1組の部材が、1つの色に対応した現像ユニットを形成している。また、この現像ユニット毎に、現像器85に現像剤を補充するトナーカートリッジ71がそれぞれ設けられており、各現像ユニットの感光体79に対して、帯電ロール83の(感光体79の回転方向)下流側であって現像器85の上流側の感光体79表面に画像情報に応じたレーザー光を照射するレーザー発生装置78が設けられている。
【0128】
4つの色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)に対応した4つの現像ユニットは、画像形成装置101内において水平方向に直列に配置されており、4つの現像ユニットの感光体79と1次転写ロール80との転写領域を挿通するように中間転写ベルト86が設けられている。中間転写ベルト86は、その内面側に以下の順序で反時計回りに設けられた、支持ロール73、支持ロール74、および駆動ロール81により支持され、ベルト支持装置90を形成している。なお、4つの1次転写ロールは支持ロール73の(中間転写ベルト86の回転方向)下流側であって支持ロール74の上流側に位置する。また、中間転写ベルト86を介して駆動ロール81の反対側には中間転写ベルト86の外周面を清掃する転写清掃部材82が駆動ロール81に対して接触するように設けられている。
【0129】
また、中間転写ベルト86を介して支持ロール73の反対側には用紙供給部77から用紙経路76を経由して搬送される記録用紙の表面に、中間転写ベルト86の外周面に形成されたトナー像を転写するための2次転写ロール75が、支持ロール73に対して接触するように設けられている。
【0130】
また、画像形成装置101の底部には記録媒体を収容する用紙供給部77が設けられ、用紙供給部77から用紙経路76を経由して2次転写部を構成する支持ロール73と2次転写ロール75との接触部を通過するように、記録媒体が供給される。この接触部を通過した記録媒体は、更に定着装置72の接触部を挿通するように不図示の搬送手段により搬送され、最終的に画像形成装置101の外へと排出される。
【0131】
次に、
図3に示す画像形成装置101を用いた画像形成方法について説明する。トナー像の形成は各現像ユニット毎に行なわれ、帯電ロール83により反時計方向に回転する感光体79表面を帯電した後に、レーザー発生装置78(露光装置)により帯電された感光体79表面に潜像(静電潜像)を形成し、次に、この潜像を現像器85から供給される現像剤により現像してトナー像を形成し、1次転写ロール80と感光体79との接触部に運ばれたトナー像を矢印C方向に回転する中間転写ベルト86の外周面に転写する。なお、トナー像を転写した後の感光体79は、その表面に付着したトナーやゴミ等が感光体清掃部材84により清掃され、次のトナー像の形成に備える。
【0132】
各色の現像ユニット毎に現像されたトナー像は、画像情報に対応するように中間転写ベルト86の外周面上に順次重ね合わされた状態で、2次転写部に運ばれ2次転写ロール75により、用紙供給部77から用紙経路76を経由して搬送されてきた記録用紙表面に転写される。トナー像が転写された記録用紙は、更に定着装置72の接触部を通過する際に加圧加熱されることにより定着され、記録媒体表面に画像が形成された後、画像形成装置外へと排出される。
【0133】
―定着装置(画像定着装置)―
図4は、本実施形態に係る画像形成装置101内に設けられた定着装置72の概略構成図である。
図4に示す定着装置72は、回転駆動する回転体としての定着ロール610と、無端ベルト620(加圧ベルト)と、無端ベルト620を介して定着ロール610を加圧する圧力部材である圧力パッド640とを備えて構成されている。なお、圧力パッド640は、無端ベルト620と定着ロール610とが相対的に加圧されていればよい。従って、無端ベルト620側が定着ロール610に加圧されてもよく、定着ロール610側が無端ベルト620に加圧されてもよい。
【0134】
定着ロール610の内部には、挟込領域において未定着トナー像を加熱する加熱手段の一例としてのハロゲンランプ660が配設されている。加熱手段としては、ハロゲンランプに限られず、発熱する他の発熱部材を用いてもよい。
【0135】
一方、定着ロール610の表面には感温素子690が接触して配置されている。この感温素子690による温度計測値に基づいて、ハロゲンランプ660の点灯が制御され、定着ロール610の表面温度が設定温度(例えば、150℃)に維持される。
【0136】
無端ベルト620は、内部に配置された圧力パッド640とベルト走行ガイド630と、図示しないエッジガイドによって回転自在に支持されている。そして、挟込領域Nにおいて定着ロール610に対して加圧された状態で接触して配置されている。
【0137】
圧力パッド640は、無端ベルト620の内側において、無端ベルト620を介して定着ロール610に加圧される状態で配置され、定着ロール610との間で挟込領域Nを形成している。圧力パッド640は、幅の広い挟込領域Nを確保するためのプレ挟込部材641を挟込領域Nの入口側に配置し、定着ロール610に歪みを与えるための剥離挟込部材642を挟込領域Nの出口側に配置している。
【0138】
さらに、無端ベルト620の内周面と圧力パッド640との摺動抵抗を小さくするために、プレ挟込部材641および剥離挟込部材642の無端ベルト620と接する面に低摩擦シート680が設けられている。そして、圧力パッド640と低摩擦シート680とは、金属製のホルダ650に保持されている。
【0139】
さらに、ホルダ650にはベルト走行ガイド630が取り付けられ、無端ベルト620がスムーズに回転するように構成されている。すなわち、ベルト走行ガイド630は、無端ベルト620内周面と摺擦するため、静止摩擦係数の小さな材質で形成されている。また、ベルト走行ガイド630は、無端ベルト620から熱を奪い難いよう熱伝導率の低い材質で形成されている。
【0140】
そして定着ロール610は、図示しない駆動モータにより矢印C方向に回転し、この回転に従動して無端ベルト620は、定着ロール610の回転方向と反対の方向へ回転する。すなわち、定着ロール610が
図4における時計方向へ回転するのに対して、無端ベルト620は反時計方向へ回転する。
【0141】
未定着トナー像を有する用紙Kは、定着入口ガイド560によって導かれて、挟込領域Nに搬送される。そして、用紙Kが挟込領域Nを通過する際に、用紙K上のトナー像は挟込領域Nに作用する圧力と、定着ロール610から供給される熱とによって定着される。
【0142】
上記定着装置72では、定着ロール610の外周面に倣う凹形状のプレ挟込部材641により挟込領域Nが確保される。
【0143】
また、本実施形態に係る定着装置72では、定着ロール610の外周面に対し突出させて剥離挟込部材642を配置することにより、挟込領域Nの出口領域において定着ロール610の歪みが局所的に大きくなるように構成されている。この構成により、定着後の用紙Kが定着ロール610から剥離する。
【0144】
また、剥離の補助手段として、定着ロール610の挟込領域Nの下流側に、剥離部材700が配設されている。剥離部材700は、剥離バッフル710が定着ロール610の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に定着ロール610と近接する状態でホルダ720によって保持されている。
【実施例】
【0145】
以下、実施例を交えて本発明を詳細に説明するが、以下に示す実施例のみに本発明は限定されるものではない。尚、以下において「部」は特に断りのない限り質量基準である。
【0146】
(パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物1a、1bの合成)
下記合成スキームに従って、パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物1a、1bを合成した。尚、パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物1a、1bの合成スキームに示されるR
X1は水素原子を表す。また、フッ素原料1の水酸基含有量は830g/molである。
【0147】
【化21】
【0148】
(パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物2の合成)
下記合成スキームに従って、パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物2を合成した。尚、パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物2の合成スキームに示されるR
X1は水素原子を表す。また、フッ素原料2の水酸基含有量は830g/molである。
【0149】
【化22】
【0150】
(パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物3の合成)
下記合成スキームに従って、パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物3を合成した。尚、パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物3の合成スキームに示されるR
X1は水素原子を表す。また、フッ素原料3の水酸基含有量は830g/molである。
【0151】
【化23】
【0152】
(パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物4の合成)
下記合成スキームに従って、パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物4を合成した。尚、パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物4の合成スキームに示されるR
X1は水素原子を表す。また、フッ素原料4の水酸基含有量は830g/molである。
【0153】
【化24】
【0154】
ここで、上記により得られたパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物4の同定データとして、IRチャートを
図5に、1H−NMRチャートを
図6に示す。
【0155】
(パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物5の合成)
前記化合物4の合成スキームに従い、且つフッ素原料4の水酸基含有量を「1970g/mol」のものに変更し、パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物5を合成した。尚、合成スキームに示されるR
X1は水素原子を表す。
【0156】
ここで、上記により得られたパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物5の同定データとして、IRチャートを
図7に示す。
【0157】
(パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物6の合成)
下記合成スキームに従って、パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物6を合成した。尚、パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物6の合成スキームに示されるR
X1は水素原子を表す。また、フッ素原料6の水酸基含有量は1970g/molである。
【0158】
【化25】
【0159】
〔実施例1〕
<表面保護膜形成用塗布液の調製>
下記の組成物を混合して、塗布液を調製した。
・前記パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物1aおよび1b:10部
・重合開始剤(BASF社製、商品名:DAROCURE1173):0.1部
・溶媒(2−ブタノン):10部
【0160】
<表面保護膜の形成(架橋重合)>
上記塗布液を90μm厚のポリイミドフィルムに塗布(キャスト)して、100℃で5分間乾燥することで溶剤を揮発させ、紫外線硬化装置にて紫外線照射を行い、硬化膜を得た。紫外線の照射条件は、窒素雰囲気下(酸素濃度1%以下)、高圧水銀灯を用い、1000mmJ/cm
2の光量を照射した。
【0161】
〔実施例2〜6〕
実施例1において用いたパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物1aおよび1bを、前記パーフルオロアルキレンエーテル含有化合物2、3、4、5、6にそれぞれ変更した以外は、実施例1に記載の方法により、表面保護膜を形成した。
【0162】
〔比較例1〕
実施例1において用いたパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物1を、下記に示す構造の化合物(ウレタン結合を有し且つパーフルオロアルキレンエーテル構造を有する化合物)に変更した以外は、実施例1に記載の方法により、表面保護膜を形成した。
【0163】
【化26】
【0164】
〔比較例2〕
実施例1において用いたパーフルオロアルキレンエーテル含有化合物1を、下記に示す構造の化合物(−B
1−X
1および−B
2−X
2にそれぞれ反応性の架橋基を1つしか有さず、且つ一般式(1)からX
1またはX
2を除いた構造の基も有しない化合物)に変更した以外は、実施例1に記載の方法により、表面保護膜を形成した。
【0165】
【化27】
【0166】
[評価]
耐傷性と耐熱性を評価するため、上記実施例および比較例で得られた表面保護膜サンプルを200℃で10時間加熱した。加熱前(初期)、および加熱経時後、両方のサンプルについて以下の評価を行った。
【0167】
・耐傷性評価
上記実施例および比較例で得られた表面保護膜サンプル、およびこれらを200℃で10時間加熱したサンプルについて、引っ掻き式硬度計(ERICHSEN社製、先端直径0.75mm)を用いて、常温(25℃)において荷重2Nで引っ掻き試験を実施し、80℃で30秒加熱後に引っ掻き箇所を観察して、傷発生の有無を評価した。
B:保護膜サンプルに傷あり
A:保護膜サンプルに傷なし
【0168】
・接触角評価
上記実施例および比較例で得られた表面保護膜サンプル、およびこれらを200℃で10時間加熱したサンプルについて、水またはヘキサデカンを用いて、接触角を測定した。尚、上記接触角の測定は、接触角計(協和界面科学社製、型番:CA−S−ルガタ)を用いて、25℃においてθ/2法で行った。結果を表1に示す。
【0169】
・トナー剥離性
上記実施例および比較例で得られた表面保護膜サンプル、およびこれらを200℃で10時間加熱したサンプルについて、定着機の定着ロール表面にはりつけ、黒の未定着ベタ画像を通紙して定着性を確認した。なお、上記定着機として富士ゼロックス社製の商品名:DocuCentre C2101を用いた。評価基準は以下の通りであり、結果を表1に示す。
C:保護膜サンプルの全面にトナー付着
B:保護膜サンプルの約半分にトナー付着
A:保護膜サンプルにトナーの付着なし
【0170】
・IR評価(初期と加熱経時後のIRチャートの差)
上記実施例および比較例で得られた表面保護膜サンプル、およびこれらを200℃で10時間加熱したサンプルについて、ATR−IRを用いてスペクトルを測定し、加熱前(初期)および加熱経時後のIRチャートの差を比べた。尚、ATRプリズムとして、ダイヤモンドプリズムを用いた。
実施例4および比較例1で得られた表面保護膜サンプル(加熱前(初期))におけるIRチャートを
図8および
図9に示す。
【0171】
【表1】