(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態に係る電池について、図面を参照しながら説明する。なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示したものではない。
【0028】
また、以下で説明する実施の形態は、本発明の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、生産工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0029】
(実施の形態1)
まず、
図1〜
図4を用いて、本発明の実施の形態1における蓄電装置100の全般的な説明を行う。
【0030】
図1は、実施の形態1における蓄電装置100の構成概要を示す斜視図であり、
図2は、蓄電装置100の分解斜視図である。なお、
図1では、蓄電装置100の内部の構成概要を図示するために、筐体105を透視した状態で図示されている。
【0031】
図3は、実施の形態1における蓄電素子101の外観を示す斜視図であり、
図4は、蓄電素子101が有する電極体120の構成を示す斜視図である。
【0032】
図1および
図2に示すように、本実施の形態の蓄電装置100は、蓄電素子101と、蓄電素子101に沿って配置されたスペーサ110とを備える。スペーサ110は、
図2に示すように、厚み方向(
図2おけるZ軸方向)に積層された第一部材111と第二部材112とを含む。
【0033】
本実施の形態の蓄電装置100はさらに、電気回路部材の一例である回路基板170を備え、スペーサ110は、蓄電素子101と回路基板170との間に配置されている。
【0034】
具体的には、蓄電装置100に備えられた4つの蓄電素子のうちの、回路基板170に最も近い蓄電素子101と回路基板170との間にスペーサ110が配置されている。
【0035】
なお、回路基板170に最も近い蓄電素子101を、他の蓄電素子101と区別するために、“蓄電素子101a”と表記する。
【0036】
つまり、蓄電装置100には、蓄電素子101aの、回路基板170とは反対側に配置された1以上(本実施の形態では3個)の蓄電素子101が備えられている。
【0037】
スペーサ110は、本実施の形態では、回路基板170と蓄電素子101aとの間の電気的な絶縁と、回路基板170および蓄電素子101aの相対的な位置決めの役割を担う部材である。
【0038】
スペーサ110の素材としては、ポリエチレンテレフタラート(PET)またはポリエチレン(PE)等の樹脂が例示される。
【0039】
また、スペーサ110は、厚み方向に積層された第一部材111と第二部材112とを含むことで、スペーサ110を介した、他の要素(本実施の形態では回路基板170)から蓄電素子101aへの熱伝導が抑制されるという効果が奏される。
【0040】
ここで、蓄電素子101は、
図3に示すように扁平型の電池であり、スペーサ110は、蓄電素子101aの幅の広い面に沿って配置されている。これにより、スペーサ110による、回路基板170と蓄電素子101aとの電気的な絶縁、および、回路基板170から蓄電素子101aへの熱伝導の抑制等がより確実に実現される。
【0041】
スペーサ110の構成の詳細については、
図5および
図6を用いて後述する。
【0042】
回路基板170は、電気回路部材の一例であり、本実施の形態では、蓄電装置100に供給される電圧の変換等を行う電気回路171が形成された基板である。
【0043】
本実施の形態ではフレキシブル基板の所定の領域に実装された、半導体素子、コンデンサおよび抵抗器等の各種の電子部品300によって、回路基板170上の電気回路171が構成されている。
【0044】
回路基板170には、
図2に示すように、複数のスリット173が形成されており、4つの蓄電素子101の両極それぞれがスリット173に挿入された状態で、電気回路171と電気的に接続されている。
【0045】
また、
図2に示すように、積層された4つの蓄電素子101において互いに隣り合う2つの蓄電素子101の間にはスペーサが配置されている。なお、2つの蓄電素子101の間のスペーサを、蓄電素子101aと回路基板170との間のスペーサ110と区別するために、“セル間スペーサ140”と表記する。
【0046】
つまり、蓄電装置100は、1つのスペーサ110と、3つのセル間スペーサ140とを有している。
【0047】
また、本実施の形態では、4つの蓄電素子101等を含む構造体が、筐体105に収容されている。筐体105は、例えば箱状の部材であり、4つの蓄電素子101等を含む構造体を所定の位置に配置し、外部から加えられる衝撃などから保護する。
【0048】
筐体105は、例えば樹脂などの絶縁性材料により構成されており、各蓄電素子101および回路基板170などが外部の金属部材などに接触することを回避する。
【0049】
また、本実施の形態では、筐体105は、本体105aと蓋体105bとを有している。本体105aの開口が蓋体105bによって閉じられることで、筐体105の内部への異物の侵入が抑制される。
【0050】
なお、筐体105には、回路基板170と電気的に接続された正極外部端子および負極外部端子(図示せず)が配置されており、これら端子を介して、外部からの電気を4つの蓄電素子101に充電し、また4つの蓄電素子101から外部へ電気を放電する。
【0051】
本実施の形態における蓄電素子101は、上記のように充放電することのできる二次電池であり、例えば、非水電解質二次電池である。
【0052】
非水電解質二次電池としては、例えば、正極活物質がコバルト酸リチウムなどのリチウム遷移金属酸化物であり、負極活物質が炭素材料であるリチウムイオン二次電池を挙げることができる。
【0053】
なお、蓄電素子101の種類は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよく、また、一次電池であってもよい。また、蓄電素子101は、キャパシタであってもよい。
【0054】
蓄電素子101は、
図3に示すように、外装体102と、電極体120と、正極リード板150および負極リード板160とを備える。
【0055】
外装体102は、本実施の形態では、複数の層で構成される筒状のラミネートフィルムの両端部が封止されることで構成されている。つまり、外装体102は、フィルム同士(本実施の形態ではラミネートフィルムの一部同士)が接合されることで形成された封止部103を両端に有している。
【0056】
蓄電素子101において、外装体102の内部には電解液などの液体が封入されているが、当該液体の図示および説明は省略する。
【0057】
電極体120と接続された正極リード板150および負極リード板160のそれぞれは、封止部103を貫通した状態で外装体102から露出している。これら正極リード板150および負極リード板160のそれぞれは、上述のように、回路基板170に接続されている。
【0058】
電極体120は、
図4に示すように、正極122および負極123と、2枚のセパレータ124、125とが交互に積層されるように捲回されることで形成されている。
【0059】
つまり、電極体120は、正極122と、セパレータ124と、負極123と、セパレータ125とがこの順に積層され、かつ、断面が長円形状になるように捲回されることで形成されている。
【0060】
正極122は、アルミニウムからなる長尺帯状の金属箔の表面に、正極活物質を含む合剤層が形成されたものである。
【0061】
正極122が有する合剤層に含まれる正極活物質としては、例えば、LiMPO
4、LiMSiO
4、LiMBO
3(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のポリアニオン化合物、チタン酸リチウム、マンガン酸リチウム等のスピネル化合物、LiMO
2(MはFe、Ni、Mn、Co等から選択される1種または2種以上の遷移金属元素)等のリチウム遷移金属酸化物等を用いることができる。
【0062】
負極123は、銅からなる長尺帯状の金属箔の表面に、負極活物質層を含む合剤層が形成されたものである。
【0063】
負極123が有する合剤層に含まれる負極活物質としては、例えばリチウムイオンを吸蔵放出可能な負極活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。例えば、リチウム金属、リチウム合金(リチウム−アルミニウム、リチウム−シリコン、リチウム−鉛、リチウム−錫、リチウム−アルミニウム−錫、リチウム−ガリウム、およびウッド合金等のリチウム金属含有合金)の他、リチウムを吸蔵・放出可能な合金、炭素材料(例えば黒鉛、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温焼成炭素、非晶質カーボン等)、金属酸化物、リチウム金属酸化物(Li
4Ti
6O
12等)、ポリリン酸化合物などが挙げられる。
【0064】
このように構成された電極体120において、より具体的には、正極122と負極123とは、セパレータ124、125を介し、捲回軸方向(X軸方向)に互いにずらして捲回されている。
【0065】
そして、正極122および負極123は、それぞれのずらされた方向の端縁部に、活物質を含む合剤層が形成されていない部分(合剤層非形成部)を有する。
【0066】
具体的には、正極122は、捲回軸方向の一端に、合剤層が形成されていない合剤層非形成部が積層された積層部122aを有している。また、負極123は、捲回軸方向の他端に、合剤層が形成されていない合剤層非形成部が積層された積層部123aを有している。
【0067】
つまり、正極122の露出した金属箔の層によって積層部122aが形成され、負極123の露出した金属箔の層によって積層部123aが形成されている。
【0068】
なお、正極122の金属箔および負極123の金属箔の厚みは、ともに、例えば5μm〜20μmのうちのいずれかの値である。
【0069】
正極リード板150は、積層部122aに取り付けられることで電極体120の正極122と接続される。
【0070】
具体的には、積層部122aにおいてZ軸方向に並ぶ金属箔の層と層のとの間に正極リード板150の端部が差し込まれ、例えば、正極リード板150を挟んで積層部122aの上下から加圧しながら超音波による振動が与えられる。つまり、超音波溶接によって、正極リード板150が電極体120の正極122と接続される。
【0071】
また、負極リード板160は、積層部123aに取り付けられることで電極体120の負極123と接続される。
【0072】
具体的には、正極リード板150と同様に、積層部123aにおける金属箔の層と層のとの間に負極リード板160の端部が差し込まれ、例えば超音波溶接によって、負極リード板160と電極体120の負極123とが接続される。
【0073】
なお、正極リード板150の素材は、例えば正極122の基材の金属箔と同じく、アルミニウムであり、負極リード板160の素材は、例えば負極123の基材の金属箔と同じく、銅である。
【0074】
また、電極体120と、正極リード板150および負極リード板160との接続の手法および態様に特に限定はなく、例えば、リベットまたはボルト等を用いて、電極体120と、正極リード板150および負極リード板160とが締結されてもよい。
【0075】
このように、溶接または締結等の手法によって、正極リード板150および負極リード板160が取り付けられた電極体120は、両端部に開口を有する筒状の外装体102に挿入され、その後、これら両端部が封止される。
【0076】
以上のように構成された蓄電装置100は、蓄電素子101に沿って配置されたスペーサ110に特徴を有する。
【0077】
以下、スペーサ110についての説明を中心に、実施の形態1における蓄電装置100の特徴を、
図5および
図6を用いて説明する。
【0078】
図5は、実施の形態1における蓄電装置100の構成概要を示す側面図である。
【0079】
図6は、実施の形態1におけるスペーサ110の構成を説明するための図である。具体的には、
図6は、
図5における部分Aの拡大図である。
【0080】
なお、
図5および
図6では、スペーサ110の形状等を視認し易くするために、筐体105の図示を省略し、ドットを付した領域でスペーサ110が表されている。後述する
図8についても同じである。
【0081】
図5および
図6に示すように、スペーサ110は、厚み方向に積層された第一部材111と第二部材112とを含む。また、第一部材111と第二部材112との間には空間が形成されている。
【0082】
本実施の形態では、第一部材111および第二部材112のそれぞれは、他方側に向かって配置された、少なくとも1つの凹または凸を有する非平坦面部を有しており、これら非平坦面部によって、スペーサ110自身に空間が形成されている。
【0083】
より詳細には、
図6に示すように、第一部材111は、非平坦面部111aを備え、第二部材112は、非平坦面部112aを備える。
【0084】
第一部材111の非平坦面部111aは、第二部材112側の面(Z軸正側の面)に、離散的に配置された複数の凸(2次元平面上に分布する複数の凸)によって形成されている。
【0085】
また、第二部材112の非平坦面部112aは、第一部材111側の面(Z軸負側の面)に、離散的に配置された複数の凸によって形成されている。
【0086】
ここで、所定の距離を開けて配置された2つの凸によって、当該2つの凸の間に1つの凹が形成される。そのため、非平坦面部111aおよび非平坦面部112aのそれぞれは、離散的に配置された複数の凹(2次元平面上に分布する複数の凹)により形成されている、と表現することもできる。
【0087】
また、本実施の形態では、離散的に配置された多数の凸(多数の凹)によって、非平坦面部111aおよび非平坦面部112aが形成されている。そのため、非平坦面部111aおよび非平坦面部112aのそれぞれは複数の凹凸を有する、と表現することもできる。
【0088】
このような態様の非平坦面部111aおよび非平坦面部112aのそれぞれは、例えば、ケミカルエッチングによって細かな凹凸が形成された金型により樹脂を成形すること、または、加熱された当該金型を樹脂の平板に押し当てること等で作製される。
【0089】
つまり、ケミカルエッチングを施した金型による樹脂成形の場合、非平坦面部111a、112aを、シボ面として第一部材111、第二部材112に形成することができる。この場合、表面が粗いシボ面が好ましい。
【0090】
つまり、非平坦面部111aおよび非平坦面部112aは、第一部材111および第二部材112それぞれの基材となる平板にランダムに形成された凹凸によって構成される。
【0091】
従って、非平坦面部111aと非平坦面部112aとを対向させて、第一部材111と第二部材112とを重ね合わせた場合、非平坦面部111aと非平坦面部112aの少なくとも一部は嵌合しない。
【0092】
より現実的には、非平坦面部111aおよび非平坦面部112aにおける凹凸はランダムな位置および形状で形成されるため、非平坦面部111aおよび非平坦面部112aのほとんどの領域で互いに嵌合しない。この状態で、
図6に示すように、第一部材111と第二部材112とが重ねられることで、内部に空間113を有するスペーサ110が得られる。なお、スペーサの内部の空間には、スペーサの表面に開口する空間も含まれる。
【0093】
ここで、第一部材111と第二部材112とは、蓄電装置100の組み立ての作業性を考慮し、部分的に接着剤で貼り合わせてもよい。また、係合用の爪と穴とを設けて、第一部材111と第二部材112とを接合してもよい。
【0094】
また、
図6では非平坦面部111aの凹凸形状と、非平坦面部112aの凹凸形状とは互いに異なっている。しかし、第一部材111と第二部材112とを重ね合わせた場合に、非平坦面部111aおよび非平坦面部112aの少なくとも一部が互いに嵌合しない関係にあれば、これらの凹凸形状は同一であってもよい。
【0095】
また、非平坦面部111aおよび非平坦面部112aが有する凹または凸の数は複数である必要なく、1以上であればよい。
【0096】
例えば、非平坦面部111aが1つの凹のみを有する場合、第二部材112の、当該凹に対向する位置に当該凹を埋める凸がない限り、当該凹の内部に空間113が生じる。
【0097】
また、例えば、非平坦面部111aが1つの凸のみを有する場合、第二部材112の、当該凸に対向する位置に当該凸が嵌入される凹がない限り、当該凸の外周領域に空間113が生じる。
【0098】
つまり、非平坦面部111aおよび非平坦面部112aのそれぞれは、1以上の凹または凸を有していれば、スペーサ110の内部には、非平坦面部111aまたは非平坦面部112aによる空間113が形成される。
【0099】
以上のように、本実施の形態におけるスペーサ110は、厚み方向に積層された第一部材111と第二部材112とを含んでいる。そのため、第一部材111と第二部材112との境界部分において、厚み方向における部材の不連続部分が存在する。
【0100】
つまり、スペーサ110の、少なくとも厚み方向における熱伝導のパスを切断する部分がスペーサ110に存在する。その結果、スペーサ110を介した熱伝導が抑制される。
【0101】
本実施の形態では、スペーサ110は、回路基板170と蓄電素子101aとの間に配置されているため、動作時に熱を発する回路基板170から蓄電素子101aへのスペーサ110を介した熱伝導が抑制される。
【0102】
ここで、蓄電装置100では、
図2に示すように筐体105の内部に、回路基板170および蓄電素子101a等で構成される構造体が収容されている。また、筐体105は、本体105aの開口が蓋体105bで閉じられることで、筐体105の内部への異物の侵入が抑制されている。そのため、筐体105の内部は熱がこもりやすい構造となっている。
【0103】
この場合、例えば、蓄電素子101の両極の部分は、筐体105の内壁に近いため、比較的に放熱され易い部分であると言える。しかし、回路基板170に最も近い蓄電素子101(蓄電素子101a)の中央部分(電極体120の部分(
図3参照))に着目すると、最も近い、筐体105の内壁(蓋体105bの内面)までの間に、熱源である回路基板170が存在する。そのため、蓄電装置100において、蓄電素子101aは、熱による劣化が進行し易い位置に配置されていると言える。
【0104】
このような構造を有する蓄電装置100において、回路基板170および蓄電素子101aの間にスペーサ110を配置する。これにより、スペーサ110は、回路基板170および蓄電素子101aの双方と接触した状態でこれらの電気的絶縁および位置決め等の役割を果たしつつ、熱源である回路基板170から蓄電素子101aへのスペーサ110を介した熱伝導を抑制することができる。
【0105】
その結果、熱による蓄電素子101aの劣化が抑制される。また、本実施の形態の蓄電装置100は4つの蓄電素子101を備えているため、蓄電素子101aの劣化が、他の蓄電素子101と比べて進行することが抑制される。つまり、回路基板170からの熱に起因する、4つの蓄電素子101の品質のばらつきが抑制される。
【0106】
また、本実施の形態では、第一部材111が非平坦面部111aを有し、第二部材112が非平坦面部112aを有する。非平坦面部111aおよび非平坦面部112aのそれぞれにおいて、複数の凹または凸が離散的に配置されている。これにより、例えば、スペーサ110内における熱伝導のパスの切断箇所(空間113)を離散的に存在させることができる。また、第一部材111と第二部材112との接触点が離散的に存在することになるため、これらの2つの部材の積層状態の安定性が向上される。
【0107】
より詳細には、非平坦面部111aおよび非平坦面部112aのそれぞれはランダムに形成された複数の凹凸で構成されている。
【0108】
従って、スペーサ110における第一部材111と第二部材112との境界部分には、ランダムな位置に配置された、ランダムな形状の空間113が存在する。これにより、スペーサ110の厚み方向の熱伝導がより確実に抑制される。
【0109】
また、
図6に示すように、非平坦面部111aまたは非平坦面部112aにおける凸の形状が山型の場合、第一部材111と第二部材112との接触箇所も点接触に近くなる。そのため、これら接触箇所においてもスペーサ110の厚み方向の熱伝導が抑制される。ここで、非平坦面部111aまたは非平坦面部112aにおける凸の頂点(山型の頂点)が鋭ければ、さらに熱伝導抑制の効果が高まる。
【0110】
なお、上記は非平坦面部111aおよび非平坦面部112aがランダムに形成された複数の凹凸で構成されていたが、凹凸は規則的な形状であってもよい。
【0111】
具体的には、非平坦面部112aおよび非平坦面部111aが、所定の方向に延設され、かつ、当該所定の方向と交差する方向に並べられた複数の凸であって、それぞれの頂点が鋭い複数の凸によって形成されていてもよい。つまり、非平坦面部112aおよび非平坦面部111aの両方が、複数の凸の並び方向に平行な断面が三角波形状(例えば
図6に示す非平坦面部112a参照)であってもよい。
【0112】
図7Aは、規則的な形状の凹凸で形成された非平坦面部を有する第一部材111および第二部材112の第1の例を示す図である。
【0113】
図7Bは、規則的な形状の凹凸で形成された非平坦面部を有する第一部材111と第二部材112の第2の例を示す図である。
【0114】
例えば、
図7Aに示す第1の例では、第一部材111および第二部材112として、断面が三角波形状の非平坦面部を備える同一形状の2枚の板材が作製されている。また、このとき、三角波形状を構成する複数の凸の稜線(延設方向)が、X軸方向およびY軸方向のいずれとも平行にならないように、2枚の板材が作製される。この結果、非平坦面部111aおよび非平坦面部112aは、複数の稜線、谷線がX軸方向およびY軸方向に対して斜めに形成される。
【0115】
このように作製された第一部材111と第二部材112とを、非平坦面部111aと非平坦面部112aとが対向するように重ねた場合、非平坦面部111aの凸の延設方向と非平坦面部112aの凸の延設方向とは一致しない。従って、仮に、非平坦面部111aの凸と非平坦面部112aの凸とが同一形状であっても、非平坦面部111aと平坦面部112aとは嵌合しない。その結果、非平坦面部111aと非平坦面部112aとの複数の接触箇所のそれぞれは、点接触に近くなる。これにより、これら接触箇所におけるスペーサ110の厚み方向の熱伝導が抑制される。上記第1の例では、第一部材111と第二部材112は全くの同一の形状でもよく、これにより、部材の共用が可能となる。
【0116】
また、例えば、
図7Bに示す第2の例では、第一部材111において、頂点が鋭い形状の凸をY軸方向に延設し、かつ、X軸方向に複数並べることで非平坦面部111aが形成されている。一方、第二部材112においては、頂点が鋭い形状の凸をX軸方向に延設し、かつ、Y軸方向に複数並べることで非平坦面部112aが形成されている。この結果、非平坦面部111aにはY軸方向と平行に複数の稜線と谷線とが形成され、非平坦面部112aにはX軸方向と平行に複数の稜線と谷線とが形成される。
【0117】
この場合、非平坦面部111aにおける凸の延設方向と、および非平坦面部112aにおける凸の延設方向とが互いに直交する関係になる。そのため、非平坦面部111aと非平坦面部112aとを対向させて第一部材111と第二部材112とを重ねた場合、仮に、非平坦面部111aの凸と非平坦面部112aの凸とが同一形状であっても、非平坦面部111aと非平坦面部112aとは嵌合しない。その結果、非平坦面部111aと非平坦面部112aとの複数の接触箇所のそれぞれは、点接触に近くなる。これにより、これら接触箇所におけるスペーサ110の厚み方向の熱伝導が抑制される。
【0118】
以上に示した実施の形態では、2枚の部材(第一部材111および第二部材112)を積層する、という簡易な構造および工程で、熱伝導を抑制する内部の空間113を有するスペーサ110が得られる。
【0119】
ここで、蓄電装置100は、
図5等に示すスペーサ110とは異なる構成のスペーサを備えてもよい。
【0120】
例えば、第一部材111および第二部材112の両方が、1以上の凹または凸を有する非平坦面部を備えていなくてもよい。
【0121】
つまり、ともに非平坦面部を備えない平板状の第一部材111と第二部材112とを重ねた場合であっても、例えば互いの全面を密着させるような加工または作業を行わない場合、第一部材111と第二部材112との間の少なくとも一部に隙間(空間113)が生じる。そのため、第一部材111および第二部材112の両方が非平坦面部を備えていない場合であっても、これら2つの部材を含むスペーサ110における熱伝導の抑制効果は奏される。
【0122】
また、上記以外にも、スペーサ110ついての各種の変形例が存在する。そこで、以下に、実施の形態1におけるスペーサ110に関する各種の変形例を、上記実施の形態1との差分を中心に説明する。
【0123】
(実施の形態1の変形例1)
図8は、実施の形態1の変形例1におけるスペーサ110の構成概要を示す図である。
【0124】
図8に示す実施の形態1の変形例1におけるスペーサ110は、非平坦面部112aを有する第二部材112と、非平坦面部を有しない第一部材111とを含んでいる。
【0125】
つまり、第一部材111および第二部材112の双方が非平坦面部を有する必要はなく、いずれか一方のみが非平坦面部を有していてもよい。
【0126】
この場合であっても、第二部材112の非平坦面部112aにおける凹または凸と、第一部材111の、第二部材112側の面とによって、熱伝導パスを切断する空間113が、スペーサ110に形成される。
【0127】
その結果、例えば回路基板170から蓄電素子101aへのスペーサ110を介した熱伝導が抑制される。この効果は、スペーサ110が、第一部材111が非平坦面部111a(
図6参照)を有し、第二部材112が、非平坦面部112aを有しない場合であっても奏される。
【0128】
(実施の形態1の変形例2)
図9は、実施の形態1の変形例2における第一部材111の構成概要を示す図である。
【0129】
図9に示す実施の形態1の変形例2における第一部材111は、平板部111bと、平板部111bに取り付けられた凸部111cとを有する。
【0130】
また、複数の凸部111cによって、第一部材111の非平坦面部111aが形成されている。
【0131】
つまり、非平坦面部111aは、第一部材111の基材となる部分(平板部111b)に後付けされた1以上の凸部111cによって形成されてもよい。
【0132】
なお凸部111cの平板部111bへの取り付けの手法に特に限定はない。例えば、接着剤による接着、ねじによる締結、または、平板部111bに設けられた穴と凸部111cとの嵌合等によって、凸部111cが平板部111bに取り付けられてもよい。
【0133】
このように構成された第一部材111を、例えば、非平坦面部112aを有するまたは有しない第二部材112と重ね合わせてスペーサ110を構成する。これにより、1以上の凸部111cによって形成される空間であって、熱伝導パスを切断する空間がスペーサ110に形成される。
【0134】
なお、平板部111bとば別体の部材であって、1次元的または2次元的に並べられた複数の凸を有する部材が、平板部111bに取り付けられることで、非平坦面部111aが形成されてもよい。
【0135】
また、本変形例における第一部材111と同様に、第二部材112が、基材となる平板部と、平板部とは別体の1以上の凸部とによって構成されてもよい。
【0136】
(実施の形態1の変形例3)
図10は、実施の形態1の変形例3におけるスペーサ180の構成概要を示す図である。
【0137】
図10に示す実施の形態1の変形例3におけるスペーサ180は、実施の形態1におけるスペーサ110と同じく、厚み方向に積層された2つの部材を含んでいる。
【0138】
具体的には、スペーサ180は、第一部材181と第二部材182が積層された構造を有している。なお、
図10では、第一部材181と第二部材182とが分離された状態が図示されている。
【0139】
つまり、スペーサ180は、スペーサ110と同じく、厚み方向において分割された構造を有していると言える。
【0140】
しかし、スペーサ180はさらに、厚み方向と交差する方向(
図10におけるXY平面に平行な方向、以下、「平面方向」という。)においても分割された構造(不連続な構造)を有している。
【0141】
より詳細には、
図10に示すように、スペーサ180は、4つの第一部材181と、4つの第二部材182とで構成され、
図10における、4組のペア(上下一対の第一部材181と第二部材182)のそれぞれが重ね合わされる。
【0142】
なお、4つの第一部材181は、4つの部分に分割された1つの第一部材と表現することもできる。また、4つの第二部材182は、4つの部分に分割された1つの第二部材と表現することもできる。
【0143】
このようにして得られる1つのスペーサ180を、回路基板170および蓄電素子101aとの間(例えば
図1参照)に配置する。これにより、回路基板170および蓄電素子101aとの間にスペーサ180が配置される。
【0144】
このように、スペーサ180が、平面方向において分割されている(平面方向において不連続な部分を有する)ことで、スペーサ180を平面視した場合(Z軸正の方向から見た場合、以下同じ)における、熱伝導のパスの切断線がスペーサ180に存在する。その結果、スペーサ180を介した熱伝導が抑制される。
【0145】
具体的には、例えば、回路基板170上の電気回路171の一部のみが高温になった場合、当該一部の熱が、当該一部の直下からスペーサ180を介して厚み方向だけでなく平面方向にも広がることになる。しかし、この場合において、スペーサ180には、平面視における部材の境界が存在するため、熱の平面方向の広がりがこの境界によって抑制される。つまり、スペーサ180では、厚み方向の部材の境界と平面方向の部材の境界とによってスペーサ180を介した熱の伝導が抑制される。
【0146】
なお、本変形例では、スペーサ180は、平面視において4つに分割された構造を有しているが、当該分割の数に限定はない。つまり、スペーサ180は、平面視において2つまたは3つに分割された構造を有していてもよく、また、5以上に分割された構造を有していてもよい。
【0147】
また、平面視における分割線は、平面視において矩形であるスペーサ180の長辺または短辺に平行でなくてもよい。スペーサ180は、例えば当該矩形の対角線で分割された構造を有していてもよい。
【0148】
また、厚み方向に積層される第一部材181および第二部材182それぞれの形状または大きさは一致しなくてもよい。
【0149】
例えば、実施の形態1における第一部材111に、4つの第二部材182を並べて重ね合わせることで、平面方向における不連続部分を有するスペーサ180が構成されてもよい。
【0150】
なお、第一部材181および第二部材182のそれぞれにおける非平坦面部の有無に特に限定はない。例えば、第一部材181および第二部材182のいずれか一方のみが非平坦面部を備えてもよい。
【0151】
(実施の形態1の変形例4)
図11は、実施の形態1の変形例4におけるスペーサ183の構成概要を示す図である。
【0152】
図11に示すスペーサ183は、実施の形態1におけるスペーサ110と同じく、厚み方向に積層された2つの部材を含んでいる。
【0153】
具体的には、スペーサ183は、第一部材183aと第二部材183bとが積層された構造を有している。つまり、スペーサ183は、スペーサ110と同じく、厚み方向において分割された構造(不連続な構造)を有している。
【0154】
しかし、スペーサ183は、スペーサ110とは異なり、厚み方向に積層された第一部材183aと第二部材183bとが互いの端部で連結されている。
【0155】
つまり、第一部材183aと第二部材183bのそれぞれは、1つの構造物の一部として、スペーサ183に備えられている。
【0156】
上記構成のスペーサ183は、例えば、板状の樹脂を折り曲げることで作製される。また、例えば、直方体の材料に切削加工を行うなどの他の手法によってスペーサ183が作製されてもよい。
【0157】
このように、スペーサ183は、厚み方向に積層された2つの部材であって、それぞれが1つの構造物の一部である第一部材183aと第二部材183bとを含んでいる。
【0158】
この場合であっても、スペーサ183には、厚み方向における部材の不連続部分(空間)が存在する。そのため、スペーサ183を、回路基板170および蓄電素子101aとの間(例えば
図1参照)に配置した場合、回路基板170から蓄電素子101aへの、スペーサ183を介した熱伝導は抑制される。
【0159】
なお、本変形例では、第一部材183aおよび第二部材183bのそれぞれが非平坦面部を備えていない場合が想定されているが、第一部材183aおよび第二部材183bの少なくとも一方が、他方側に向かって配置された非平坦面部を備えてもよい。
【0160】
例えば、上述のように、ケミカルエッチングによって細かな凹凸が形成された金型を用いた樹脂成形によって1枚の板材を作製し、当該板材を、凹凸が形成された面を内側にして折り曲げる。こうすることで、ともに他方側に向かって配置された非平坦面部を有する第一部材183aおよび第二部材183bを含むスペーサ183を作製することができる。
【0161】
(実施の形態1の変形例5)
図12Aは、実施の形態1の変形例5におけるスペーサ184の構成概要を示す図であり、
図12Bは、
図12Aに示すスペーサ184の断面の概要を示す図である。なお、
図12Bには、スペーサ184をYZ平面で切断した場合の断面が示されている。
【0162】
図12Aおよび
図12Bに示すスペーサ184は、第一部材184aと第二部材184bとが所定の間隔をあけて積層された構造を有している。
【0163】
つまり、スペーサ184は、スペーサ110と同じく、厚み方向において分割された構造を有していると言える。
【0164】
しかし、スペーサ184は、スペーサ110とは異なり、第一部材184aおよび第二部材184bの対向する両端部が連結されている。
【0165】
つまり、変形例5におけるスペーサ184は、上記変形例4におけるスペーサ183において、第一部材183aおよび第二部材183bの連結されていない端部(長辺部分)が連結された構造に相当する。
【0166】
つまり、第一部材184aと第二部材184bのそれぞれは、1つの構造物の一部として、スペーサ184に備えられている、と表現することができる。
【0167】
上記構成のスペーサ184は、例えば、板状の樹脂を折り曲げて、かつ、端部を溶着または接着等で連結することで作製される。また。例えば、直方体の材料に切削加工を行うことなどの他の手法によってスペーサ184が作製されてもよい。
【0168】
このように、スペーサ184は、厚み方向に積層された2つの部材であって、それぞれが1つの構造物の一部である第一部材184aと第二部材184bとを含んでいる。また、第一部材184aと第二部材184bとは、所定の間隔をあけて積層されている。
【0169】
従って、スペーサ184には、厚み方向における部材の不連続部分(空間)が存在する。そのため、スペーサ184を、回路基板170および蓄電素子101aとの間(例えば
図1参照)に配置した場合、回路基板170から蓄電素子101aへの、スペーサ184を介した熱伝導は抑制される。
【0170】
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、厚み方向に積層された2つの部材を含むスペーサ(110等)について説明した。しかし、回路基板170等の熱源と蓄電素子101との間に配置されるスペーサの構成であって、熱源から蓄電素子101へのスペーサを介した熱伝導を抑制するための構成は、厚み方向に積層された2つの部材を含む構成以外であっても実現可能である。
【0171】
そこで、実施の形態2として、スペーサ自身、または、スペーサの一方面側と他方面側のうちの少なくとも蓄電素子101と対向する面側には、閉塞されていない空間が形成されているスペーサを備える蓄電装置について説明する。
【0172】
なお、蓄電素子101など、実施の形態1で説明した要素についての説明は省略し、以下、実施の形態1との差分を中心に説明する。
【0173】
図13は、実施の形態2における蓄電装置100aの構成概要を示す図である。
【0174】
なお、
図13において、スペーサ210の形状等を視認し易くするために、筐体105(例えば
図2参照)の図示を省略し、ドットを付した領域でスペーサ210が表されている。後述する
図14〜
図16も同様である。
【0175】
また、実施の形態1と同じく、回路基板170に最も近い蓄電素子101を、他の蓄電素子101と区別するために、“蓄電素子101a”と表記する。
【0176】
図13に示す蓄電装置100aは、回路基板170と蓄電素子101aとの間に配置されたスペーサ210を備える。スペーサ210の素材としては、実施の形態1におけるスペーサ110と同じくPETまたはPE等の樹脂が例示される。
【0177】
ここで、実施の形態2における蓄電装置100aでは、スペーサ210の一方面側と他方面側のうちの蓄電素子101と対向する面側に、閉塞されていない空間215が形成されている。つまり、スペーサ210により、スペーサ210と蓄電素子101との間に、スペーサ210の外部空間と連通する空間215が形成されている。
【0178】
具体的には、スペーサ210は、回路基板170と当接する平板部211と、平板部211から蓄電素子101aの方向に突設された脚部212とを有する。
【0179】
本実施の形態では、一対の脚部212が平板部211の両端に配置されていることで、平板部211と一対の脚部212との間に、空間215が形成されている。つまり、スペーサ210では、一対の脚部212が、平板部211に面で支持される回路基板170を、平板部211とともに蓄電素子101aから離隔する構成が採用されている。
【0180】
上記構成のスペーサ210は、例えば、金型による樹脂成形によって作製される。また、例えば、平板部211と、平板部211とは別体の2つの脚部212とを溶着または接着等するなどの他の手法によってスペーサ210が作製されてもよい。
【0181】
スペーサ210は、このような構成を有することで、実施の形態1におけるスペーサ110と同じく、回路基板170と蓄電素子101aとの間の電気的な絶縁と、回路基板170および蓄電素子101aの相対的な位置決めの役割を担うことができる。
【0182】
また、閉塞されていない空間215が形成されていることで、回路基板170からスペーサ210に伝導した熱の一部は、空間215を介してスペーサ210の外部に放出される。これにより、回路基板170から蓄電素子101aへのスペーサ210を介した熱伝導が抑制される。
【0183】
なお、スペーサ210が備える脚部212の数に特に限定はなく、例えばスペーサ210は3以上の脚部212を備えてもよい。また、その他にも、実施の形態2における蓄電装置100aが備えるスペーサ210についての各種の変形例は存在する。
【0184】
そこで、以下に、実施の形態2におけるスペーサ210に関する各種の変形例を、上記実施の形態2との差分を中心に説明する。
【0185】
(実施の形態2の変形例1)
図14は、実施の形態2の変形例1における蓄電装置100aの構成概要を示す図である。
【0186】
図14に示す蓄電装置100aは、回路基板170と蓄電素子101aとの間に配置されたスペーサ220を備える。
【0187】
本変形例における蓄電装置100aでは、スペーサ220の一方面側と他方面側の両方に、閉塞されていない空間225が形成されている。つまり、スペーサ220の回路基板170側および蓄電素子101a側の双方に、閉塞されていない空間225が形成されている。
【0188】
具体的には、スペーサ220は、回路基板170と蓄電素子101aとの間を仕切る平板部221と、平板部221の両端に設けられ、一端が回路基板170に当接し、他端が蓄電素子101aに当接する脚部222とを有する。
【0189】
つまり、スペーサ220では、回路基板170と蓄電素子101aとを2つの脚部222で離隔させ、かつ、回路基板170と蓄電素子101aとの間の空間を平板部211で分断する構成が採用されている。
【0190】
上記構成のスペーサ220は、例えば、金型による樹脂成形によって作製される。また、例えば、平板部221と、平板部221とは別体の2つの脚部222とを溶着または接着等するなどの他の手法によってスペーサ220が作製されてもよい。
【0191】
スペーサ220は、このような構成を有することで、実施の形態1におけるスペーサ110と同じく、回路基板170と蓄電素子101aとの間の電気的な絶縁と、回路基板170および蓄電素子101aの相対的な位置決めの役割を担うことができる。
【0192】
また、スペーサ220によれば、回路基板170から蓄電素子101aへのスペーサ220を介した熱伝導が抑制される。具体的には、スペーサ220と、回路基板170および蓄電素子101aの双方との接触面積が上記スペーサ110およびスペーサ210等と比較する小さいため、その結果、スペーサ220を介した熱伝導が抑制される。
【0193】
また、スペーサ220の平板部221と、回路基板170および蓄電素子101aの双方との間に閉塞されていない空間225が形成されている。言い換えると、回路基板170と蓄電素子101aとの間の空間が平板部221によって仕切られている、これにより、回路基板170の熱の、気体の対流による蓄電素子101aへの伝導が抑制される。
【0194】
(実施の形態2の変形例2)
図15は、実施の形態2の変形例2における蓄電装置100aの構成概要を示す図である。
【0195】
図15に示す蓄電装置100aは、回路基板170と蓄電素子101aとの間に配置されたスペーサ230を備える。
【0196】
また、本変形例における蓄電装置100aでは、スペーサ230自身に、閉塞されていない空間232が形成されている。
【0197】
具体的には、平板状の部材の端面に1以上の穴を設けることで、1以上の空間232を有するスペーサ230が実現されている。この空間232により、スペーサ230において熱伝導のパスを切断する部分が形成されており、その結果、回路基板170から蓄電素子101aへのスペーサ230を介した熱伝導が抑制される。
【0198】
上記構成のスペーサ230は、例えば、金型を用いた樹脂成形によって作製される。また、例えば、板状の部材に切削加工で穴を形成するなどの他の手法によってスペーサ230が作製されてもよい。
【0199】
なお、空間232を形成する穴は、有底であっても無底であってもよい。つまり、
図15において、空間232が、奥方向(Y軸正の方向)に貫通していてもいなくてもよい。
【0200】
つまり、空間232は、少なくともスペーサ230の表面に開口しており、閉塞されていない空間を形成しているため、空間232の内部の熱を当該開口から外部に逃がすことができる。但し、貫通している方が熱を逃がしやすいので好ましい。
【0201】
なお、空間232を形成する穴の個数、位置、形状、および方向に特に限定はない。例えば、
図15におけるX軸方向に1以上の有底または無底の穴を設けることで1以上の空間232が形成されてもよい。
【0202】
(実施の形態2の変形例3)
図16は、実施の形態2の変形例3における蓄電装置100aの構成概要を示す図である。
【0203】
図16に示す蓄電装置100aは、回路基板170と蓄電素子101aとの間に配置されたスペーサ240を備える。
【0204】
本変形例における蓄電装置100aでは、スペーサ240の一方面側と他方面側の両方に、閉塞されていない空間242が形成されている。
【0205】
具体的には、スペーサ240は、波板状の部材によって実現されており、複数存在する波の頂点のそれぞれが、回路基板170または蓄電素子101aに当接した状態で、蓄電装置100aに配置されている。
【0206】
これにより、スペーサ240の回路基板170側および蓄電素子101a側の双方に、閉塞されていない空間242が形成されている。
【0207】
上記構成のスペーサ240は、例えば、板状の樹脂を、波形の面を有する金型に嵌めることで作製される。また、例えば、板状の材料を波型に切削加工するなどの他の手法によってスペーサ240が作製されてもよい。
【0208】
スペーサ240は、このような構成を有することで、実施の形態1におけるスペーサ110と同じく、回路基板170と蓄電素子101aとの間の電気的な絶縁と、回路基板170および蓄電素子101aの相対的な位置決めの役割を担うことができる。
【0209】
また、スペーサ240によれば、回路基板170から蓄電素子101aへのスペーサ240を介した熱伝導が抑制される。具体的には、スペーサ240と、回路基板170および蓄電素子101aの双方との接触面積が上記スペーサ110およびスペーサ210等と比較すると小さいため、その結果、スペーサ240を介した熱伝導が抑制される。
【0210】
また、スペーサ240により形成された空間242は閉塞されていないため、空間242の内部の熱を当該開口から外部に逃がすことができる。
【0211】
(他の実施の形態)
以上、本発明に係る蓄電装置について、実施の形態1、2およびそれらの変形例に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、実施の形態1、2およびそれらの変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態1もしくは2、またはそれらの変形例に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0212】
例えば、上記実施の形態1および2において、スペーサ110および210等のスペーサは、回路基板170と蓄電素子101との間に配置されるとした。しかしながら、蓄電装置100(100a)における熱源は回路基板170に限られず、上述のように、蓄電素子101が何らかの異常によって発熱することも考えられる。
【0213】
そのため、2つの蓄電素子101の間に、セル間スペーサ140に代えてスペーサ110または210等のスペーサが配置されてもよい。
【0214】
図17は、2つの蓄電素子101の間に実施の形態1のスペーサ110を配置した状態を示す図である。
【0215】
図17に示すように、2つの蓄電素子101間に、厚み方向に積層された第一部材111と第二部材112とを含むスペーサ110を配置することで、これら蓄電素子101の間の電気的な絶縁と、これら蓄電素子101の相対的な位置決めの役割を担うことができる。また、スペーサ110には、上述のように、少なくとも厚み方向の熱伝導パスを切断する空間が存在するため、一方の蓄電素子101から他方の蓄電素子101へのスペーサ110を介した熱伝導が抑制される。
【0216】
なお、スペーサ110に代えて、上述の各種のスペーサ(
図8〜
図16参照)が採用された場合であっても、上記の熱伝導が抑制等の効果は奏される。
【0217】
また、上記実施の形態1では、スペーサ110は厚み方向に積層された第一部材111と第二部材112とを含むとした。つまり、スペーサ110において、第一部材111と第二部材112に加えて、さらに厚み方向に他の部材が積層されていてもよい。
【0218】
図18は、厚み方向に積層された第一部材111、第二部材112、および第三部材115を含むスペーサ110の構成概要を示す図である。
【0219】
図18に示すスペーサ110は、実施の形態1における第一部材111と第二部材112との間に、第三部材115が挟まれた構造を有している。
【0220】
このように、3枚の部材を積層させることで、厚み方向における熱伝導のパスの切断部分が2つ形成される。そのため、例えばスペーサの厚みを変更せずに、第一部材111等の板材の積層枚数を増やすことで、スペーサにおける厚み方向の熱伝導の抑制効果を向上させることも可能である。
【0221】
なお、
図18では、第三部材115は、上下両方に非平坦面部を有しているが、第三部材115は非平坦面部を有していなくてもよい。つまり、第三部材115は両面がフラットな板材であってもよい。
【0222】
この場合であっても、第一部材111が第三部材115の側に配置された非平坦面部111a(
図6参照)を有しているため、第一部材111と第三部材115との間には、熱伝導のパスを切断する空間が確実に形成される。また、第二部材112が第三部材115の側に配置された非平坦面部112a(
図6参照)を有しているため、第二部材112と第三部材115との間には、熱伝導のパスを切断する空間が確実に形成される。
【0223】
また、上記実施の形態1におけるスペーサ110の素材として、PETまたはPE等の樹脂を例示したが、スペーサ110の素材は樹脂に限定されない。
【0224】
例えば、ガラスまたはセラミクス等の無機材料がスペーサ110の素材として採用されてもよい。
【0225】
また、例えば、蓄電素子101および回路基板170のそれぞれにおいて、スペーサ110の側の面に絶縁対策(例えば樹脂コーティング)がなされている場合など、スペーサ110が絶縁の役割を担わなくてもよい場合を想定する。この場合、スペーサ110の素材として金属が採用されていてもよい。
【0226】
なお、上記のスペーサ110の素材の自由度については、上述の各種のスペーサ(
図8〜
図16参照)についても適用される。
【0227】
また、上記実施の形態1および2では、電気回路部材として回路基板170を例示したが、電気回路部材はこれに限られず、例えば、回路基板を保持する回路ケースまたは回路保持体などであってもよい。回路保持体としては、回路基板が取り付けられた板状の部材またはフレーム構造体などが例示される。
【0228】
また、蓄電素子101は、
図3に示す構成および形状の電池であるとした。しかしながら、蓄電素子101の構成および形状はこれに限られない。
【0229】
例えば、1つの面に正極端子および負極端子が並んで設けられた角型電池が蓄電素子101として採用されてもよい。この場合であっても、角型電池における幅の広い面に沿って、例えばスペーサ110を配置することで、スペーサ110を挟んで当該角型電池と反対側に配置された電気回路部材等の熱源から当該角型電池への熱伝導が抑制される。
【0230】
また、蓄電素子101が有する電極体120の構造は捲回型ではなくてもよく、平板状の正極と負極とがセパレータを挟んで交互に積層された構造であってもよい。また、電極体120は、長尺帯状の正極と負極とがセパレータを挟んで蛇腹状に折り畳まれた構造であってもよい。