(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277844
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】ナノ粒子材料製造装置
(51)【国際特許分類】
B01J 19/08 20060101AFI20180205BHJP
H05H 1/48 20060101ALI20180205BHJP
C01B 13/14 20060101ALN20180205BHJP
【FI】
B01J19/08 J
H05H1/48
!C01B13/14 Z
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-87768(P2014-87768)
(22)【出願日】2014年4月21日
(65)【公開番号】特開2015-205247(P2015-205247A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2016年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博
(72)【発明者】
【氏名】天野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】西 泰彦
【審査官】
関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−504057(JP,A)
【文献】
特開平07−187639(JP,A)
【文献】
特開2009−285537(JP,A)
【文献】
特表2013−532063(JP,A)
【文献】
特開平07−187631(JP,A)
【文献】
特開2013−082591(JP,A)
【文献】
特開2005−343784(JP,A)
【文献】
特開2009−097039(JP,A)
【文献】
特開昭60−251112(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00、19/08
H05H 1/48
C01B 13/14
C01B 32/00、33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放電電極が、内部に二次元又は三次元に配置された放電容器と、前記放電電極にそれぞれ位相差のある交流を印加して前記放電電極の間にアーク放電を発生させる交流電源を備えたナノ粒子材料製造装置であって、
前記放電電極によるアーク放電発生部に微粒子の原料を不活性ガスとともに供給する原料供給手段と、
前記アーク放電発生部から前記放電容器の流出口に向かって流れる、アーク放電による熱処理生成物を含む不活性ガス流を包囲するように流れる不活性ガスのシールドガス流を形成するシールドガス形成手段と、
前記放電容器の上方から不活性ガスとともに流出したアーク放電による熱処理生成物を捕集する生成物捕集手段と、
を有し、
前記不活性ガスのシールドガス流の流速が、前記アーク放電による熱処理生成物を含む不活性ガス流の流速よりも遅いことを特徴とするナノ粒子材料製造装置。
【請求項2】
複数の放電電極が、内部に二次元又は三次元に配置された放電容器と、前記放電電極にそれぞれ位相差のある交流を印加して前記放電電極の間にアーク放電を発生させる交流電源を備えたナノ粒子材料製造装置であって、
前記放電電極によるアーク放電発生部に微粒子の原料を不活性ガスとともに供給する原料供給手段と、
前記アーク放電発生部から前記放電容器の流出口に向かって流れる、アーク放電による熱処理生成物を含む不活性ガス流を包囲するように流れる不活性ガスのシールドガス流を形成するシールドガス形成手段と、
前記放電容器の上方から不活性ガスとともに流出したアーク放電による熱処理生成物を捕集する生成物捕集手段と、
を有し、
前記放電容器が、前記アーク放電で熱処理されなかった未熱処理原料を、該放電容器の下方から回収する回収手段を備えることを特徴とするナノ粒子材料製造装置。
【請求項3】
前記生成物捕集手段から流出する不活性ガスを前記原料供給手段及び/又はシールドガス形成手段に循環する不活性ガス循環手段を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のナノ粒子材料製造装置。
【請求項4】
前記不活性ガスが、希ガスであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のナノ粒子材料製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
、ナノ粒子材料を製造する際に用いるのに好適な、
ナノ粒子材料製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いことから、ハイブリッド車や電気自動車の電源として期待されているが、未だ十分な性能とは言えない。そこで近年、負極をカーボン材料の代わりにシリコン材料で構成することが検討されている。特にシリコン系ナノ材料は、高容量且つ充放電サイクルの繰り返しによる劣化が少ないとして、次世代リチウムイオン二次電池の負極材料として注目されている。
【0003】
ナノ粒子材料を製造する方法としては、特許文献1に、
図1に示す如く、点対称に配置し、間隔を空けて先端を突き合わせた複数本の電極棒2に、電源装置3から位相の異なる電圧を印加して、反応炉1内でマルチアークMを発生させ、キャリアガス供給管5の中に組み込まれた原料供給管4により、珪素及び炭素を含むガス状又は粉末状の原料を前記マルチアークMの中心部に連続的に供給し、前記マルチアークMにより前記原料を順次熱分解合成して炭化珪素の粉末とすることが記載されている。形成された炭化珪素の微粉末は、順次下方に降下し、反応炉1の下方に連結した冷却装置6を通る間に冷却されて、排出装置7により外部に取り出される。図において、8は、反応炉1内を真空引きするためのポンプ、9は、マルチアークMに投入されなかった原料を分離抽出するためのサイクロンである。
【0004】
又、特許文献2や3には、放電容器内に導入したヘリウム雰囲気中において、二次元又は三次元に配置された3つ以上の放電電極にそれぞれ位相差のある多相交流を印加して、アーク放電を発生させ、このアーク放電により形成されたプラズマ領域を用いて炭素原料又は複合炭素原料を蒸発せしめ、蒸発した全量を当該プラズマ領域内で凝縮させて、前記放電容器内壁に煤として付着させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−187639号公報
【特許文献2】特開2005−343784号公報
【特許文献3】特開2012−184128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、反応炉1の下方に連結した冷却装置6の壁面に熱処理生成物が付着し、場合によっては冷却装置6内を閉塞して、外部に取り出せなくなってしまうという問題点を有していた。
【0007】
一方、特許文献2や3に記載の技術は、放電終了後に放電容器内面に付着した煤から熱処理生成物を回収する必要があり、熱処理生成物を連続的に製造することは不可能であった。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、ナノ粒子材料
を連続的に生成することが可能な
ナノ粒子材料製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数の放電電極が、内部に二次元又は三次元に配置された放電容器と、前記放電電極にそれぞれ位相差のある交流を印加して前記放電電極の間にアーク放電を発生させる交流電源を備えたナノ粒子材料製造装置であって、前記放電電極によるアーク放電発生部に微粒子の原料を不活性ガスとともに供給する原料供給手段と、前記アーク放電発生部から前記放電容器の流出口に向かって流れる、アーク放電による熱処理生成物を含む不活性ガス流を包囲するように流れる不活性ガスのシールドガス流を形成するシールドガス形成手段と、前記放電容器の上方から不活性ガスとともに流出したアーク放電による熱処理生成物を捕集する生成物捕集手段と、を有
し、前記不活性ガスのシールドガス流の流速が、前記アーク放電による熱処理生成物を含む不活性ガス流の流速よりも遅いことにより前記課題を解決するものである。
本発明は、又、複数の放電電極が、内部に二次元又は三次元に配置された放電容器と、前記放電電極にそれぞれ位相差のある交流を印加して前記放電電極の間にアーク放電を発生させる交流電源を備えたナノ粒子材料製造装置であって、前記放電電極によるアーク放電発生部に微粒子の原料を不活性ガスとともに供給する原料供給手段と、前記アーク放電発生部から前記放電容器の流出口に向かって流れる、アーク放電による熱処理生成物を含む不活性ガス流を包囲するように流れる不活性ガスのシールドガス流を形成するシールドガス形成手段と、前記放電容器の上方から不活性ガスとともに流出したアーク放電による熱処理生成物を捕集する生成物捕集手段と、を有し、前記放電容器が、前記アーク放電で熱処理されなかった未熱処理原料を、該放電容器の下方から回収する回収手段を備えることにより同様に前記課題を解決するものである。
【0011】
又、前
記生成物
捕集手段から流出する不活性ガスを前記原料供給手段及び/又はシールドガス形成手段に循環する不活性ガス循環手段を有することができる。
【0012】
又、前記不活性ガスを、希ガスとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、アーク放電発生部のアークプラズマによって熱処理された原料を含む気体の周囲に気体の流れを生じさせ、シールドの役目をさせる。このようなシールドガスにより、放電容器内壁面への熱処理生成物の付着を抑制して、
ナノ粒子材料等の熱処理生成物を連続的に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】特許文献1で提案された製造装置の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。又、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0017】
本発明の第1実施形態は、
図2に示す如く、3つ以上の放電電極14が、内部に三次元に配置された放電容器10と、前記放電電極14にそれぞれ位相差のある交流を印加して前記放電電極14の間にアーク放電を発生させる交流電源18を備えたナノ材料製造装置であって、前記放電電極14によるアーク放電発生部(アークプラズマ場)16に微粒子の原料を希ガスと共に供給する原料供給ノズル(原料供給手段)20と、前記アーク放電発生部16から前記放電容器10上方の流出口12に向かって流れる、アーク放電による熱処理生成物を含む生成物ガス流22を包囲するように流れる希ガスのシールドガス流26を形成するシールドガス供給ノズル(シールドガス形成手段)24と、前記放電容器1
0から希ガスと共に流出したアーク放電による熱処理生成物を
捕集するための生成物捕集フィルタ(
捕集手段)30と、該生成物捕集フィルタ30から流出する希ガスを前記シールドガス供給ノズル24及び/又は原料供給ノズル20に循環するための循環ポンプ(希ガス循環手段)40と、前記アーク放電で熱処理されずに前記アーク放電発生部16から落下する未熱処理原料32を回収するための未熱処理原料回収器(回収手段)34を備えたものである。
【0018】
前記シールドガス供給ノズル24は、例えば先端が上向きに配置されたL字状ノズルとすることができる。
【0019】
前記アーク放電発生部16に形成されるアークプラズマ場で加熱された原料は、昇華されて生成物ガス流22と共に上方に移動し、その途中で冷却されて微粒子となる。
【0020】
ここで、前記希ガスのシールドガス流26の流速V
2は、熱処理生成物を含む生成物ガス流22の流速V
1よりも遅い流速とされている。同様な密度の流体に速度差がある場合、流速の遅い側の流体は流速の速い側の流体へ巻き込まれる。従って、アークプラズマ(16)によって加熱された原料を含む気体の拡散を抑制し、放電容器10内壁面への熱処理生成物の付着を確実に抑制することができる。
【0021】
前記シールドガス流26の流速V
2は、シールドガスの流量とシールドガス供給ノズル24の口径が決まれば速度分布が推定できるので、数値シミュレーションなどで、常にシールドガス流26の流速V
2が、生成物ガス流22の流速V
1より遅くなるようにシールドガスの流量を制御することができる。
【0022】
前記希ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンが含まれるが、希ガス以外の不活性ガスを用いることも可能である。
【0023】
前記放電電極14は、例えばカーボン製やタングステン製とすることができる。なお、タングステン電極は冷却が必要になるので、カーボン電極の方が望ましい。
【0024】
前記放電電極14の数は、交流電源18として商用の3相交流を使用した場合には、その位相差から電源を簡単に構成することができるので、例えば3、6、12とすることができる。
【0025】
又、前記放電電極14の段数は、実施形態の2段に限定されず、1段又は3段以上であってもよい。
【0026】
前記原料供給ノズル20の数は、放電電極14の数に合わせて、例えば3の倍数、又は2の倍数とすることができる。
【0027】
本実施形態においては、循環ポンプ40を設けて、希ガスを循環させているので、希ガスを再利用でき、無駄が少ない。なお、例えば原料を、再生希ガスでなく普通の希ガスで原料供給ノズル20に吹き込んでもよい。
【0028】
前記実施形態においては、シールドガス供給ノズル24が、先端が上向きに配置されたL字状ノズルとされていたが、
図3に示す第2実施形態のように、直管状ノズルを斜め上向きに配置することも可能である。
【0029】
前記実施形態は、例えば、シリコンからシリコン微粒子を製造する場合や、シリコンと二酸化珪素SiO
2を混合して、酸化珪素SiO
x(0<x<2)を製造する場合に好適であるが、本発明の製造対象は、これに限定されず、原料と生成物が同じ物質で
ナノ粒子化する場合や、生成物が原料の反応生成物である場合の両方に適用可能である。原料もシリコン系に限定されず、無機材料であれば何でも製造できる。
【符号の説明】
【0030】
10…放電容器
12…流出口
14…放電電極
16…アーク放電発生部
18…交流電源
20…原料供給ノズル
22…生成物ガス流
24…シールドガス供給ノズル
26…シールドガス流
30…生成物捕集フィルタ
32…未熱処理原料
34…未熱処理原料回収器
40…循環ポンプ