特許第6277923号(P6277923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277923
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】ステアリングホイールの温度制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/06 20060101AFI20180205BHJP
【FI】
   B62D1/06
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-198277(P2014-198277)
(22)【出願日】2014年9月29日
(65)【公開番号】特開2016-68679(P2016-68679A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2016年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(72)【発明者】
【氏名】冨田 彰
(72)【発明者】
【氏名】中山 直子
(72)【発明者】
【氏名】梅村 紀夫
【審査官】 森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−076559(JP,A)
【文献】 特開2009−269480(JP,A)
【文献】 特開2008−051868(JP,A)
【文献】 特開2012−051300(JP,A)
【文献】 特開2010−215140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00−1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リム部の表面部に、第1意匠部、及び第2意匠部が設けられたステアリングホイールにおいて、
前記第1意匠部の内部に設けられ通電により前第1意匠部に対して発熱を行う第1温度調節部を前記第2意匠部の内部に設けられ通電により前第2意匠部に対して発熱を行う第2温度調節部より優先的に昇温させる第1制御段階と、
第1温度調節部の温度が第1の所定温度に達したときに、第1温度調整部の温度を前記第1の所定温度とこれより低い第2の所定温度の間を維持しつつ第2温度調節部の温度を昇温させる第2の温度制御段階と、
第2温度調節部の温度が第3の所定温度に達したときに、第1温度調整部の温度を前記第1の所定温度とこれより低い第2の所定温度の間を維持しつつ、第2温度調節部の温度を第3の所定温度とこれより低い第4の所定温度との間に維持する第3の制御段階を有し、
第1乃至第3の制御段階において第1温度調節部と第2温度調節部に対する給電量が最大電力量以下に制御されていることを特徴とするステアリングホイールの温度制御方法。
【請求項2】
前記第1の温度制御段階と前記第2の温度制御段階において、常時前記最大電力量が第1温度調節部ないし第2温度調節部に供給されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイールの制御方法。
【請求項3】
前記第1の温度制御段階と前記第2の温度制御段階において、第1温度調節部又は第2温度調節部の一方にのみ最大電力量が供給されていることを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載のステアリングホイールの制御方法。
【請求項4】
前記ステアリングホイールには、前記第1温度調節部の温度を検出する温度調節素子と、前記第1温度調節部及び前記第2温度調節部に対する給電を制御する制御手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載のステアリングホイールの制御方法。
【請求項5】
リム部の表面部に、第1意匠部、及び第2意匠部が設けられたステアリングホイールにおいて、
前記第1意匠部の内部に設けられ通電により前記第1意匠部に対して発熱を行う第1温度調節部を前記第2意匠部の内部に設けられ通電により前記第2意匠部に対して発熱を行う第2温度調節部より優先的に昇温させる第1制御段階と、
第1温度調節部の温度が第1の所定温度に達したときに、第1温度調整部の温度を前記第1の所定温度とこれより低い第2の所定温度の間を維持しつつ第2温度調節部の温度を昇温させる第2の温度制御段階と、
前記第1温度調節部の温度が第1の所定温度から第2の所定温度に下降するのに要した時間が所定の時間を越えたときに、第1温度調整部の温度を前記第1の所定温度とこれより低い第2の所定温度の間を維持しつつ、第2温度調節部の温度を第3の所定温度とこれより低い第4の所定温度との間に維持する第3の制御段階を有し、
第1乃至第3の制御段階において第1温度調節部と第2温度調節部に対する給電量が最大電力量以下に制御されていることを特徴とするステアリングホイールの温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調節機能を有するステアリングホイールの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両に搭載されたステアリングホイールの場合、車両が寒冷地で使用されると車内は低温になりステアリングホイールの温度は低下する。このような状態で運転者が車両に乗って運転を開始すると冷たいステアリングホイールを握ることになり運転がしづらくなる。そこでステアリングホイールに温度調節部を設けることが従来から提案されており、例えば、特許文献1にはステアリングホイールのリム部の表面を温度調整部としてのヒータ部で覆ったステアリングホイールが記載されている。また特許文献1に記載のステアリングホイールのリム部は合成樹脂からなる円弧状部材と木材からなる円弧状部材とから形成されている。合成樹脂部と木材部では熱伝導率が異なるためそれぞれに別々のヒータ部が設置されており温度差が感じないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−76559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記特許文献1に記載のステアリングホイールでは、ヒータ部に供給できる電力値の上限が制限されているためステアリングホイール全体をすばやく暖めることが出来ないという問題がある。
【0005】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ステアリングホイールの全周をすばやく暖めることのできるステアリングホイールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、リム部の表面部に、第1意匠部、及び第2意匠部が設けられたステアリングホイールにおいて、
前記第1意匠部の内部に設けられ通電により前第1意匠部に対して発熱を行う第1温度調節部を前記第2意匠部の内部に設けられ給電により前第2意匠部に対して発熱を行う第2温度調節部より優先的に昇温させる第1制御段階と、
第1温度調節部の温度が第1の所定温度に達したときに、第1温度調整部の温度を前記所定温度とこれより低い第2の所定温度の間を維持しつつ第2温度調節部の温度を昇温させる第2の温度制御段階と、
第2温度調節部の温度が第3の所定温度に達したときに、第1温度調整部の温度を前記所定温度とこれより低い第2の所定温度の間を維持しつつ、第2温度調節部の温度を第3の所定温度とこれより低い第4の所定温度との間に維持する第3の制御段階を有し、
第1乃至第3の制御段階において第1温度調節部と第2温度調節部に対する給電量が最大電力量以下に制御されていることを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明は、ステアリングホイールへの温度制御方法の第1制御段階において、始めは乗員が乗車した際に握りやすい把持部としての第1意匠部の内部に設けられた第1温度調節部を優先的に給電することで第1意匠部のみをすばやく加熱することができる。第1温度調節部のみを加熱することで乗員がステアリングホイールを握った際には第1意匠部を冷たく感じることがなくなり快適に握ることができる。
そして第2制御段階においては、第1温度調節部の温度が第1の所定温度に達したときに、第1温度調整部の温度を前記所定温度とこれより低い第2の所定温度の間を維持しつつ第2温度調節部の温度を昇温させることで第2意匠部も加熱することができ、ステアリングホイール全周を効果的に加熱していくことが出来る。
次に第3の制御段階では、第2温度調節部の温度が第3の所定温度に達したときに、第1温度調整部の温度を前記所定温度とこれより低い第2の所定温度の間を維持しつつ、第2温度調節部の温度を第3の所定温度とこれより低い第4の所定温度との間に維持することでステアリングホイール全体の温度を一定に保つことができ乗員に不快感をあたえることなく快適に運転することができる。
なお、第1乃至第3の制御段階において第1温度調節部と第2温度調節部に対する給電量が最大電力量以下に制御されており、ステアリングホイールに給電できる電力値には限りがあるため所定の最大電力量で効率的にステアリングホイールを加熱することが出来る。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のステアリングホイールにおいて前記第1の温度制御段階と前記第2の温度制御段階において、常時前記最大電力量が第1温度調節部ないし第2温度調節部に供給されていることを特徴とする
【0009】
上記の制御方法によれば、前記第1温度調節部ないし前記第2温度調節部に常時最大電力量が給電されているために短時間で効率的にステアリングホイールを加熱することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のステアリングホイールにおいて、前記第1の温度制御段階と前記第2の温度制御段階において、第1温度調節部又は第2温度調節部の一方にのみ最大電力量が供給されていることを特徴とする。
【0011】
上記の制御方法によれば、第1温度調節部又は第2温度調節部の一方にのみ最大電力量が供給されているために、第1温度調節部と第2温度調節部それぞれの温度を所定の値にまで短時間で上げることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3に記載のステアリングホイールには、前記第1温度調節部の温度を検出する温度調節素子と、前記第1温度調節部及び前記第2温度調節部に対する給電を制御する制御手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
上記のステアリングホイールには、温度調節素子と、第1温度調節部及び第2温度調節部に対する給電を制御する制御手段が備わっていることで第1温度調節部及び第2温度調節部への給電を制御するができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、リム部の表面部に、第1意匠部、及び第2意匠部が設けられたステアリングホイールにおいて、
前記第1意匠部の内部に設けられ通電により前記第1意匠部に対して発熱を行う第1温度調節部を前記第2意匠部の内部に設けられ通電により前記第2意匠部に対して発熱を行う第2温度調節部より優先的に昇温させる第1制御段階と、
第1温度調節部の温度が第1の所定温度に達したときに、第1温度調整部の温度を前記第1の所定温度とこれより低い第2の所定温度の間を維持しつつ第2温度調節部の温度を昇温させる第2の温度制御段階と、
前記第1温度調節部の温度が第1の所定温度から第2の所定温度に下降するのに要した時間が所定の時間を越えたときに、第1温度調整部の温度を前記第1の所定温度とこれより低い第2の所定温度の間を維持しつつ、第2温度調節部の温度を第3の所定温度とこれより低い第4の所定温度との間に維持する第3の制御段階を有し、
第1乃至第3の制御段階において第1温度調節部と第2温度調節部に対する給電量が最大電力量以下に制御されていることを要旨とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、ステアリングホイールへの温度制御方法の第1制御段階において、始めは乗員が乗車した際に握りやすい把持部としての第1意匠部の内部に設けられた第1温度調節部を優先的に給電することで第1意匠部のみをすばやく加熱することができる。第1温度調節部のみを加熱することで乗員がステアリングホイールを握った際には第1意匠部を冷たく感じることがなくなり快適に握ることができる。
そして第2制御段階においては、第1温度調節部の温度が第1の所定温度に達したときに、第1温度調整部の温度を前記所定温度とこれより低い第2の所定温度の間を維持しつつ第2温度調節部の温度を昇温させることで第2意匠部も加熱することができ、ステアリングホイール全周を効果的に加熱していくことが出来る。
次に第3の制御段階では、前記第1温度調節部の温度が第1の所定温度から第2の所定温度に下降するのに要した時間が所定の時間を越えたときに、第1温度調整部の温度を前記所定温度とこれより低い第2の所定温度の間を維持しつつ、第2温度調節部の温度を第3の所定温度とこれより低い第4の所定温度との間に維持することでステアリングホイール全体の温度を一定に保つことができ乗員に不快感をあたえることなく快適に運転することができる。
なお、第1乃至第3の制御段階において第1温度調節部と第2温度調節部に対する給電量が最大電力量以下に制御されており、ステアリングホイールに給電できる電力値には限りがあるため所定の最大電力量で効率的にステアリングホイールを加熱することが出来る。
また、第1温度調節部の温度が第1の所定温度から第2の所定温度に下降するのに要した時間さえ判明すれば所定の時間と比較し第2の制御段階から第3の制御段階へ移行することが出来るため、第2温度調節部の温度を検出しなくてもステアリングホイールの温度制御が可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1温度調節部への通電を優先的に開始することで、握った際に冷たさを感じることがなくなるとともにステアリングホイール全体も効果的に暖めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施携帯におけるステアリングホイールの概略正面図。
図2】(a)はA−A線に沿ったリム部の概略断面図、(b)は第1温度調節部を示す概略部分平面図。
図3】(a)はB−B線に沿ったリム部の概略断面図、(b)は第2温度調節部を示す概略部分平面図。
図4】ステアリングホイールの電気的構成を示すブロック図。
図5】ECUが第1温度調節部及び第2温度調節部に対して行う制御のフローチャート。
図6】第1、第2、第3制御段階における供給電力と温度の相関図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態について、図1図6を参照して説明する。
図1に示すように、車両の運転席に装備されるステアリングホイール11は、正面視円形状であると共にステアリングホイール11の中心部には操舵輪に連結された操舵軸12が一体回転可能に連結されている。そして、ステアリングホイール11を構成するリム部13は、操舵軸12の軸線Lを中心とした円環状に形成されると共に、リム部13の内周面にはリム部13によって囲まれているパッド14が複数のスポーク部15を介して連結されている。パッド14の内部には電子制御ユニット(以下、ECUという。)16が設けられている。そして、リム部13及びスポーク部15にはその内部にステアリングホイール11全体の骨格部分をなす芯体17が設けられている。
【0019】
リム部13は、その表面部が皮革19からなる第1意匠部20と表面部が加飾された一対の加飾部材31からなる第2意匠部18とによって構成されている。なお、第1意匠部20及び第2意匠部18はそれぞれ操舵軸12の軸線Lを中心として対称に設けられている。そして芯体17のうちリム部13と対応する部分は、リム部芯体21として構成されている。
【0020】
図2(a)に示すように第1意匠部20は、自身の軸線Pと直交する断面形状が円形状に形成されている。そしてリム部芯体21は断面形状が略コ字状に形成されたリム部芯金22と、リム部芯金22を覆うように設けられた発泡ポリウレタン等の軟質材料からなる充填材23からなる。そして第1意匠部20ではリム部芯体21の外周部21aが第1温度調節部としての第1ヒータ部24によって覆われている。そしてリム部芯体21及び第1ヒータ部24が皮革19によって覆われている。
【0021】
第1ヒータ部24は不織布からなる断熱シート25にヒータ線26が縫いこまれていることで構成されている。図2(b)に示すように断熱シート25は平面状に展開した状態で略細長矩形状に形成されている。ヒータ線26は、途中で自身と重なることなく連続して波状に延びている。そしてヒータ線26の両端末は第1ヒータ部用端末部27を介して第1ヒータ部用電線28に電気的に接続されている。第1ヒータ部用端子部27には温度が上昇するにつれて抵抗が下がる特性を有する温度検出素子29が設けられている。
【0022】
温度検出素子29は、本実施形態ではサーミスタによって構成されているとともに検知部がヒータ線26に接しておりヒータ線26の温度に応じて出力が変化するようになっている。なお温度検出素子29が実際に検出する温度は皮革19の表面温度とは異なる。これはヒータ線26からの熱が皮革19の内側から皮革19の表面に伝わるまでに皮革19の蓄熱性及び熱伝導性の影響を受けることで皮革19の内部の温度と皮革19の表面の温度とが変わるためである。第1ヒータ部用電線28には第1ヒータ部用端子部27側とは反対側の端部に第1コネクタ30が接続されている。
【0023】
一方図3(a)に示すように第2意匠部18ではリム部芯体21の外側に加飾部材31が設けられている。加飾部材31はリム部芯体21の軸線Pに直交する断面が略円弧状に形成された合成樹脂性の基部31aと基部31aの外側面31bに貼り付けられた木製の加飾板31cとによって構成されている。加飾部材31の内側面31dには第2温度調節部としての第2ヒータ部32が取り付けられている。
【0024】
第2ヒータ部32はリム部芯体21と加飾部材31とによって挟まれると共に、不織布からなる断熱シート33にヒータ線34が縫いこまれていることで構成されている。図3(b)に示すように断熱シート33は平面状に展開した状態で略細長矩形状に形成されている。ヒータ線34は、途中で自身と重なることなく連続して波状に延びている。そしてヒータ線34の両端末は第2ヒータ部用端末部35を介して第2ヒータ部用電線36に電気的に接続されている。第2ヒータ部用電線36には第2ヒータ部用端子部35側とは反対側の端部に第2コネクタ38が接続されている。そして第2コネクタ38はECU16に設けられた図示しない第2カプラに接続されるようになっている。
【0025】
次に第1ヒータ部24及び第2ヒータ部32を制御する電気的構成を説明する。
図4に示すようにステアリングホイール11に設けられたアクチュエータを制御するECU16には制御動作を所定の手順で実行することができるCPU(中央処理装置)40とROM(読み出し専用メモリ)41とが設けられている。ROM41にはアクチュエータの各種動作を制御するための制御プログラム等が記憶されている。
【0026】
ECU16には温度検出素子29が電気的に接続されている。ECU16は温度検出素子29の抵抗変化に応じた出力電圧を電圧値Vとして取り入れるように構成されている。そしてECU16は電圧値Vに基づいて皮革19の温度を把握するように構成されている。
【0027】
またECU16には第1ヒータ部24と第2ヒータ部32が電気的に接続されている。ECU16は第1ヒータ部24と第2ヒータ部32に対して別々の指令を出力可能に構成されている。ECU16は第1ヒータ部24と第2ヒータ部32のONとOFFとを切り替え可能に構成されている。ECU16は第1ヒータ部24をONにした場合ヒータ線26に対して第1供給電力量の通電を行ってヒータ線26のジュール熱により皮革19を昇温させる通電制御を実行し、第1ヒータ部24をOFFにした場合通電制御を終了しヒータ線26に対する通電を行わないように構成されている。また、ECU16は第2ヒータ部32をONにした場合ヒータ線26に対して第1供給電力量の通電を行ってヒータ線26のジュール熱により加飾部材31を昇温させる通電制御を実行し、第2ヒータ部32をOFFにした場合通電制御を終了しヒータ線26に対する通電を行わないように構成されている。
【0028】
またROM41には第1ヒータ部24をOFFにするための第1規定電圧v1、第1規定電圧v1に到達した後に第1ヒータ部24をONにするための第2規定電圧v2が記憶されている。第1規定電圧v1、第2規定電圧v2は皮革19の蓄熱性及び熱伝導性を考慮して電圧値Vが第1規定電圧v1、第2規定電圧v2に達したときに皮革19の表面が目標温度になったときの皮革19の内側における温度を推定し、その推定した温度に対応する温度検出素子29の出力値が第1規定電圧v1、第2規定電圧v2として設定されている。
【0029】
次にECU16が第1ヒータ部24と第2ヒータ部32に対して通電制御を行う場合の制御処理について説明する。
エンジン始動のためのスイッチ操作が行われて図示しない車載ECUからECU16に起動指令が入力されるとECU16は図5のフローチャートに従って第1ヒータ部24と第2ヒータ部32に対する制御を開始する。制御開始後の第1ヒータ部24と第2ヒータ部32の供給電力量変化と温度の変化を図6に示す。まずECU16は第1制御段階としてステップ(以下、Sとする。)1において第1ヒータ部24のみへの通電を開始する指令を入力する。その際、第1ヒータ部24へ通電される電力量は常時最大電力量が供給されている。次にS2においてECU16は電圧値Vが第1規定電圧v1より高いと判断するとS3に移行し第1ヒータ部24をOFFにした後、第2制御段階へ移行する。
【0030】
第2制御段階のS4においてECU16は第2ヒータ部32への通電を開始する指令を入力するとともにタイマーをONにして経過時間を測定し始める。次にS5においてECU16は電圧値が第2規定電圧v2よりも低いと判断すると、S6に移行する。S6ではタイマーをOFFにして、経過時間tが所定時間t0より長いかどうかを判定する。経過時間tが所定時間t0より長い場合には後述するS9へ移行する。経過時間tが所定時間t0より短い場合にはS7へ移行する。S7では第2ヒータ部32への通電をOFFにすると共に第1ヒータ部24への通電を開始する。次にS8においてECU16は電圧値が第2規定電圧v1よりも高いと判断するとS4へ戻る。第2制御段階での第1ヒータ部24と第2ヒータ部32への供給電力量は常時最大電力量となるようにどちらかのヒータ部へと通電されている。
【0031】
S6において経過時間tが所定時間t0より長いと判断された場合には第3制御段階に移行しS9として第1ヒータ部24への通電を開始し、第2ヒータ部32への通電をOFFにする。次にS10においてECU16は電圧値Vが第1規定電圧v1より高いと判断するとS11に移行し第1ヒータ部24をOFFにした後、第2ヒータ部32への通電を開始する。次にS12においてECU16は電圧値が第2規定電圧v2よりも低いと判断すると、再びS9に移行する。その後は第1意匠部20と第2意匠部18の表面温度が第1の所定温度と第2の所定温度の間、第3の所定温度と第4の所定温度の間を維持するようにECUが第3制御段階のフローに従って第1ヒータ部24と第2ヒータ部32への通電を制御し続ける。第3制御段階での第1ヒータ部24と第2ヒータ部32への供給電力量は最大供給電力量を通電せずに第1意匠部20と第2意匠部18が所定温度に留まる程度の電力量を供給するように制御されている。
【0032】
なお車載ECUからECU16に停止指令が入力されるとECU16は第1ヒータ部24と第2ヒータ部32をそれぞれOFFにして第1ヒータ部24と第2ヒータ部32に対する制御を停止する。
【0033】
次に本実施形態におけるステアリングホイールの作用を説明する。
車両が冬季の厳寒下で駐車されると車内の温度が低くなりリム部13を含むステアリングホイー11の温度も低くなる。この状態で運転者が運転席に座って運転を開始する場合、運転者によってエンジン始動のためのスイッチ操作とステアリングホイール11のヒータスイッチ操作が行われる。するとECU16によって第1ヒータ部24に対する通電制御が開始される。第1ヒータ部への通電が開始されるとヒータ線26からは供給電力量に応じたジュール熱が発生しその熱が皮革19に伝熱されて皮革19は暖められる。そのため第1意匠部20は直ぐに暖められ運転者は快適に把持することが出来る。その後第1意匠部20の温度が温まると第2ヒータ部への通電も開始されるために第2意匠部18も皮革と同様に暖められ、所定時間経過後には皮革19の表面と加飾部材31の表面はほぼ同時に同じ温度にまで達する。従ってその後運転者がステアリングホール11を操作するために第1意匠部20と第2意匠部18を跨ぐように把持しても運転者が違和感を覚えることはない。
【0034】
この実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)リム部13の第1意匠部20には第1ヒータ部24が設けられている。リム部13の第2意匠部18には第2ヒータ部32が設けられている。ECU16は第1ヒータ部24及び第2ヒータ部32と電気的に接続され第1ヒータ部24と第2ヒータ部32それぞれに対する通電を制御可能に構成されている。
【0035】
(2)皮革19の温度は温度検出素子29によって検出され、温度検出素子29による検出結果はECU16に入力されるようになっている。従って温度検出素子29を用いて第1ヒータ部24と第2ヒータ部32をフィードバッグ制御することが出来るためより正確に皮革19ならびに加飾部材31の温度を調節することが出来る。
【0036】
(3)第1ヒータ部24をOFFにし、第2ヒータ部32をONにするか決定するための第1規定電圧v1は皮革19の温度が目標とする温度に達したとみなすことが出来る値に設定されている。第1ヒータ部24をOFFにした後に再びONにするか決定するための第2規定電圧v2は皮革19の温度が目標とする温度を下回ったとみなすことが出来る値に設定されている。従って皮革19の温度を目標温度域に留まらせることができ、皮革19の温度と加飾部材31の温度を同じ温度にまで昇温させることができ、より効率的にステアリングホイール11を加熱することができる。
【0037】
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具現化することができる。
(a)リム部13の第1意匠部20と第2意匠部18を同じ部材で構成しても良い。例えばリム部13の第1意匠部20と第2意匠部18を皮革19のみで構成しても良い。
(b)上記実施例では、温度検出素子29は第1ヒータ部24にのみ設けられていたが、第2ヒータ部32にも別の温度検出素子29を設けてもよい。その場合には第2意匠部18の温度を温度検出素子29で検出することができるので第2ヒータ部32が第3規定電圧v3に到達した時点で第2ヒータ部32への通電を停止すればよくなり、より効率的にステアリングホイール11を加熱することができる。
(c)上記実施例中の第2制御段階では第1ヒータ部24が第2規定電圧v2を下回った際には第2ヒータ部32への通電をOFFにし、第1ヒータ部24へ最大供給量の通電をしているが、第2ヒータ部32への通電をOFFにせずに第1ヒータ部24と第2ヒータ部32への通電を同時にしてもよい。その際には第1ヒータ部24への供給電力量と第2ヒータ部32への供給電力量の和が最大供給電力量を超えないように制御する必要がある。
(d)上記実施例では、温度検出素子29は温度上昇とともに抵抗値が上がる素子を使用しているが、温度上昇とともに抵抗値が下がる素子でも同様なことが可能である。
【符号の説明】
【0038】
11 : ステアリングホイール 12 : 操舵軸 13 : リム部 14 : パッド 15 : スポーク部 16 : 電子制御ユニット(ECU) 17 : 芯体 18 : 第2意匠部 19 : 皮革 20 : 第1意匠部 21 : リム部芯体 22 : リム部芯金 23 : 充填材 24 : 第1ヒータ部 25 : 断熱シート 26 : ヒータ線 27 : 第1ヒータ部用端末部 28 : 第1ヒータ部用電線 29 : 温度検出素子 30 : 第1コネクタ 31 : 加飾部材 32 : 第2ヒータ部 33 : 断熱シート 34 : ヒータ線 35 : 第2ヒータ部用端末部 36 : 第2ヒータ部用電線 40 : CPU(中央処理装置) 41 : ROM(読み出し専用メモリ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6