(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン等の内燃機関からの排ガス中に含まれる炭化水素(Hydro Carbon)濃度(以下、「成分濃度」という)を測定するために、FID(Flame Ionization Detector)法やNDIR(Non‐Dispersive Infrared Red)法と呼ばれる測定方法を用いた排ガス分析装置が知られている。
【0003】
また、気体中の酸素濃度を計測する方法の一つとして、酸素分子が特定波長領域(例えば761nm)の光のみを吸収することを利用した吸収分光法が知られている。この吸収分光法は、測定対象ガスに対し非接触での測定が可能であるため、測定対象ガスの場を乱さずに測定対象ガス中の酸素濃度を計測することができ、かつ、極めて短い応答時間で計測することができる。
【0004】
このような吸収分光法の中でも、特に光源に波長可変半導体レーザ(レーザ素子)を利用した「波長可変半導体レーザ吸収分光法」は、シンプルな装置構成で実現することができる。例えば、「波長可変半導体レーザ吸収分光法」を利用したガス分析装置では、測定対象ガスが所定方向に流れている配管に対して、配管に形成された入射用光学窓と出射用光学窓とを介して、配管を横切って光路(光路長l)が形成されるようにそれぞれ対向して設けられる波長可変半導体レーザと光検出センサ(受光部)とを追加することが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このようなガス分析装置によれば、波長可変半導体レーザから発振された所定波長のレーザ光(測定光)は、配管内を通過する過程で測定対象ガス中に存在する酸素分子の遮光作用によってレーザ光の進行が阻害され、測定対象ガス中における酸素分子の濃度に対応して光検出センサに入射する光量が減少することを利用して、波長可変半導体レーザから発振されたレーザ光の光量に対する光検出センサに入射するレーザ光の光量を計測することによって酸素分子の濃度が算出される。
図5は、ガス分析装置で得られた吸収スペクトルの一例を示すグラフである。縦軸は受光強度Iであり、横軸は周波数νである。なお、I
0(ν)(基準線)は周波数νにおいて酸素分子の吸収を受けなかった場合の受光強度であり、非吸収波長の受光強度Iに基づいて近似式を作成することで導出される。また、図中実線はI
0(ν)、一点鎖線はI(ν)を示している。
【0006】
ここで、
図5に示す吸収スペクトルを用いた演算処理の一例について説明する。Lambert-Beerの法則より下記式(1)が成り立つ。
【0007】
【数1】
【0008】
なお、I
0(ν)は周波数νにおいて酸素分子の吸収を受けなかった場合の光強度、I(ν)は周波数νにおける透過光強度、c(mol/cm
3)は酸素分子の数密度、l(cm)は測定対象ガスを通過する光路の長さ、S(T)(cm
−1/(mol/cm
−2))は所定の吸収線強度における温度Tの関数、f(ν)は吸収プロファイル関数である。
また、
図6は、縦軸を−log
10(I(ν
0)/I
0(ν
0))とし、横軸を周波数νとしたグラフ(吸光度曲線)である。
【0009】
このとき、測定対象ガスの全圧pが大気圧である場合には、吸収プロファイル関数f(ν)は下記式(2)のローレンツプロファイルで表される。
【0010】
【数2】
【0011】
なお、ν
0は吸収ピークの中心周波数、ν
Lは吸収ピークのローレンツ幅(半値全幅)である。
そして、式(1)に式(2)を代入すると、下記式(3)のようになる。
【0012】
【数3】
【0013】
よって、中心周波数ν
0の透過光強度I(ν
0)は、下記式(4)で表されることになる。
【0014】
【数4】
【0015】
したがって、温度Tと光強度変化I(ν)、I
0(ν)とを得ることができれば、式(4)を用いて酸素分子の数密度cが算出できることになる。
【0016】
次に、
図7は、波長可変半導体レーザ吸収分光法を利用したガス分析装置の一例を示す概略構成図である。なお、地面に水平な一方向をX方向、地面に水平でX方向と垂直な方向をY方向とし、X方向とY方向とに垂直な方向をZ方向とする。
ガス分析装置101は、光源部10と、受光部20と、温度Tを測定するガス温度センサ32と、マイコンやPCで構成される制御部140とを備える。
【0017】
このようなガス分析装置101は、エンジン(内燃機関)50の燃焼室内に存在する測定対象ガス中の酸素分子(特定ガス)の数密度(特定ガス量情報)cを計測するために用いられる。エンジン50は、シリンダ(筒)51と、シリンダ51内でZ方向と−Z方向とに摺動可能なピストン52と、コンロッド53を介してピストン52と連結されるクランクシャフト(図示略)と、ECU60とを備える。
【0018】
吸気ポートと排気ポートとは、シリンダ51のヘッドに形成され、燃焼室に対しては、吸気ポートと排気ポートとが連通する。吸気ポートは、吸気通路54に接続され、吸気ポートと燃焼室との間には吸気ポートの燃焼室に対する開閉を行う吸気バルブ56が設けられている。また、排気ポートは、排気通路55に接続され、排気ポートと燃焼室との間には、排気ポートの燃焼室に対する開閉を行う排気バルブ57が設けられている。
また、図示は省略するが、燃焼室には、燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタや、燃焼室内の混合気に点火するための点火プラグ等が設けられる。
【0019】
ECU60は、クランクシャフト近傍に設けられ、クランク位置やクランク角速度の検出を行う回転センサ等の各種センサからの情報が計測情報として入力され、エンジン50の燃料噴射量や点火時期等の制御を行う。
【0020】
このようなエンジン50によれば、ピストン52の下降とともに、吸気通路54からの吸気ガスが吸気バルブ56を介して燃焼室に吸入される吸気工程が行われる。吸気工程の後、吸気バルブ56が閉じ、下死点に達したピストン52の上昇により、吸入空気に燃料が噴射された混合気が燃焼室において圧縮される圧縮工程が行われる。ピストン52が上死点近くまで上昇すると、所定のタイミングでの混合気に対する点火によって燃焼工程が行われる。そして、燃焼の圧力によって下降したピストン52が、再度上昇する際に排気バルブ57が開かれ、燃焼室内の燃焼ガスが排気バルブ57を介して排気ガスとして排気通路55に排出される排気工程が行われる。これら吸気工程と圧縮工程と燃焼工程と排気工程との4つの一連の工程が1回のサイクルとなる。
【0021】
そして、シリンダ51の側壁には、入射用光学窓となるレンズ35と、レンズ(入射用光学窓)35に−X方向に距離lを空けて対向配置される出射用光学窓となるレンズ36とが形成されている。
また、燃焼室内には、ガス温度センサ32が設置されており、測定対象ガスの温度Tを所定時間間隔で測定する。このようなガス温度センサ32として、例えば熱電対や白金測温抵抗体やサーミスタ等が用いられる。
【0022】
光源部10は、半導体レーザ(例えば光通信用分布帰還系形(DFB:distributed feedback)半導体レーザダイオード等)11と、レンズ13と、D/Aコンバータ12とを備える。そして、半導体レーザ11からのレーザ光は、レンズ13と光ファイバ33を介してレンズ35から燃焼室内に−X方向で入射するようになっており、燃焼室内に存在する測定対象ガスに照射されるようになっている。
【0023】
また、このような光源部10は、酸素分子の数密度cの連続モニタリングに使用されるときには、半導体レーザ11の温度がペルチェモジュールで設定温度(一定)となるようにPI制御され、半導体レーザ11へ印加する駆動電流値を所定周期で変化させており、具体的には鋸歯形状となる駆動電流値が印加されることにより、所定波長範囲(スイープ幅)のレーザ光を所定周期で半導体レーザ11から発振している。
図8は、駆動電流値とレーザ光の発振波長との関係を示す概念図であり、
図8(a)は、半導体レーザ11へ印加する駆動電流値の波形図であり、
図8(b)は、その駆動電流値が印加された半導体レーザ11から発振されたレーザ光の発振波長の波形図である。
図8(a)に示すような駆動電流値の波形や設定温度は、連続モニタリングの開始に際してユーザによって入力されるか予め記憶されており、制御部140から制御信号として光源部10に出力されるようになっている。
【0024】
受光部20は、光強度を電気信号に変換できるものであればよく、例えばフォトダイオード21が用いられる。そして、フォトダイオード21は、レンズ36から燃焼室外に−X方向へ出射されたレーザ光を光ファイバ34とレンズ23とを介して受光するように配置されており、測定対象ガスを通過したレーザ光の強度I(ν)を受光する。そして、制御部140は、各周期においてフォトダイオード21からA/Dコンバータ22を介してレーザ光の強度I(ν)を取得することで、I
0(ν)とI(ν)とを算出するようになっている。
【0025】
制御部140は、CPU141とメモリ(データ記憶部)142とを備える。また、CPU141が処理する機能をブロック化して説明すると、光源部10を制御するレーザ制御部41aと、レーザ光の強度I
n(ν)を取得する取得部41bと、各周期nにおいて非吸収波長のレーザ光の強度I
n(ν)に基づいて近似式を作成することにより強度変化I
0n(ν)を作成する基準線作成部41cと、各周期nにおいて式(4)を用いて数密度c
nを算出する演算部41fとを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかしながら、上述したようなガス分析装置101では、燃焼室内の測定対象ガス中の酸素ガスの数密度c
nを算出する場合に、サイクル中において燃焼室内の温度Tや圧力pがダイナミックに変化するのに伴って酸素ガスの吸収ピーク(吸収線)も大きく変化するため、半導体レーザ11へ印加する駆動電流値(スイープ幅)を制御することが難しかった。
【0028】
さらに、酸素ガスの吸収ピークの吸収線幅が広がるとともに高さが低くなり、特にスイープ幅よりも吸収線幅が広がる(ブロードになる)と、第n周期の所定波長範囲の測定光の強度変化I
n(ν)から強度変化I
0n(ν)を作成することができなくなる場合があった。
図9は、ガス分析装置101で得られた吸収スペクトルの一例を示すグラフである。縦軸は受光強度Iであり、横軸は周波数νである。なお、図中実線はI
0(ν)、一点鎖線はI(ν)を示している。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本出願人は、燃焼室内の測定対象ガス中の酸素ガスの数密度c
nを算出する場合に、第n周期の強度変化I
0n(ν)を正確に作成する方法について検討した。
まず、圧縮工程では燃焼室内へのガスの出入りがなく、圧縮されたとしても燃焼室内の全てのガスが圧縮されるため酸素ガス濃度は変化しない。酸素ガス濃度が変化しなければ、吸光度曲線の形は変化しても、その吸収線の面積値D
nは温度Tによってのみ変化することになる。
【0030】
次に、吸収線の形状が大気圧もしくはそれ以上のときには、上述したようにローレンツ関数に支配されることを利用して、吸気工程の終了直後の温度Tが大きく変化しない状況であって、大気圧程度で吸収線が比較的に先鋭となる状況では、吸収線の面積値D
nを正確に算出することができる。
よって、第mサイクルにおいて吸気工程の終了後に吸収線の面積値D
mn、D
m(n+1)、・・・を計測していき、吸収線の面積値D
mn、D
m(n+1)、・・・が、基準面積値と比較して10%程度変化するまで(圧縮工程前半で圧縮率が低く吸収線が先鋭な際)の基準線I
0mn(ν)、I
0m(n+1)(ν)、・・・の平均を取り、その平均を第mサイクルの圧縮工程後半や燃焼工程のような吸収線がブロードとなり基準線I
0n(ν)が作成できない工程の基準線とすることを見出した。
【0031】
すなわち、本発明のガス分析装置は、内燃機関の筒内の測定対象ガスに測定光を照射するレーザ素子を有する光源部と、前記測定対象ガス中を通過した測定光の強度を受光する受光部と、所定波長範囲の測定光をレーザ素子から所定周期で発振させるレーザ制御部と、前記受光部で受光された第n周期の所定波長範囲の測定光の強度変化I
n(ν)を用いて、特定ガスの吸収を受けなかった場合の第n周期の所定波長範囲の測定光の強度変化I
0n(ν)を作成し、第n周期の特定ガスの吸収ピークを検出し、前記測定対象ガス中の特定ガス量情報を算出する演算部とを備えるガス分析装置であって、前記内燃機関は、吸気工程と圧縮工程と燃焼工程と排気工程とをこの順に所定サイクルで実行するものであり、第mサイクルの吸気工程後での各周期の所定波長範囲の測定光の強度変化I
mn(ν)、I
m(n+1)(ν)、・・・における特定ガスの吸収ピークの面積値D
mn、D
m(n+1)、・・・を算出する面積値算出部と、
前記面積値Dmn、Dm(n+1)、・・・と基準面積値Dm’との差分である面積変化量ΔDmn、ΔDm(n+1)、・・・を算出し、面積変化量ΔDmn、ΔDm(n+1)、・・・が閾値以内となる周期で作成された強度変化I0mn(ν)、I0m(n+1)(ν)、・・・を平均することにより、第mサイクルの代表光強度変化I
0m’(ν)を作成する代表基準線作成部とを備え、前記演算部は、第mサイクルの圧縮工程又は燃焼工程での第(n+a)周期では、第(n+a)周期の所定波長範囲の測定光の強度変化I
(n+a)(ν)と代表光強度変化I
0m’(ν)とを用いて、第(n+a)周期の特定ガスの吸収ピークを検出するようにしている。
【0032】
ここで、「所定周期」とは、測定者等によって決められる任意の時間であり、所定波長範囲の測定光をレーザ素子から発振させるために、例えば数十Hz〜数十kHzとなり、1kHz等が挙げられる。なお、「a」は、自然数であって吸収線がブロードとなる周期である。
また、「所定サイクル」とは、測定者等によって決められる任意の時間であって、1サイクル中には少なくとも3回の周期が実行されることになる。
さらに、「特定ガス」とは、測定者等によって決められる任意の成分であって、例えば酸素や水蒸気や二酸化炭素や一酸化炭素等である。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明のガス分析装置によれば、吸収曲線がブロードとなって基準線が作成できない状況下でも、直近の吸気工程や圧縮工程のときに算出された基準線を利用することで、特定ガス量情報を正確に算出することができる。また、ノイズに埋もれやすいブロードな吸収曲線であっても、吸収線の面積値D
mnが温度Tに依存し、急激には変化しないことを利用して、吸収線の面積値D
mnをフィッティングの評価パラメータとして利用できる。
【0034】
本発明では、前記代表基準線作成部は、面積値D
mn、D
m(n+1)、・・・と基準面積値D
m’との差分である面積変化量ΔD
mn、ΔD
m(n+1)、・・・を算出し、面積変化量ΔD
mn、ΔD
m(n+1)、・・・が閾値以内となる周期で作成された強度変化I
0mn(ν)、I
0m(n+1)(ν)、・・・を平均することにより、代表光強度変化I
0m’(ν)を作成するようにして
いる。
【0035】
ここで、「基準面積値D
m’」とは、測定者等によって決められる任意のものであり、例えば吸気工程の終了直後の周期nの面積値D
mn等が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0038】
図1は、本発明のガス分析装置の一例を示す概略構成図である。また、
図2は、本発明のガス分析装置で得られた吸収スペクトルの一例を示すグラフである。なお、上述した従来のガス分析装置101と同様のものについては、同じ符号を付している。
ガス分析装置1は、光源部10と、受光部20と、温度Tを測定するガス温度センサ32と、マイコンやPCで構成される制御部40とを備える。
【0039】
制御部40は、CPU41とメモリ(データ記憶部)42とを備える。また、CPU41が処理する機能をブロック化して説明すると、光源部10を制御するレーザ制御部41aと、レーザ光の強度I
n(ν)を取得する取得部41bと、各周期nにおいて非吸収波長のレーザ光の強度I
n(ν)に基づいて近似式を作成することにより強度変化I
0n(ν)を作成する基準線作成部41cと、酸素ガスの吸収ピークの面積値D
nを算出する面積値算出部41dと、第mサイクルの代表光強度変化I
0m’(ν)を作成する代表基準線作成部41eと、各周期nにおいて式(4)を用いて数密度c
nを算出する演算部41fとを有する。さらに、メモリ42には、面積値D
nを記憶するとともに閾値A(基準面積値の10%)を記憶するための面積値記憶領域42aを有する。
【0040】
面積値算出部41dは、第mサイクルの吸気工程の終了直後の第n周期の所定波長範囲の測定光の強度変化I
mn(ν)と強度変化I
0mn(ν)とを用いて、第n周期の強度変化I
mn(ν)における酸素ガスの吸収ピークを検出し、この酸素ガスの吸収ピークの面積値D
mnを算出して面積値記憶領域42aに記憶させる制御を行う。また、面積値算出部41dは、第mサイクルにおいて吸気工程の終了直後の第n周期の面積値D
mnを基準面積値D
m’として面積値記憶領域42aに記憶させる制御を行う。
【0041】
具体的には、まず、取得部41bで取得された第mサイクルの吸気工程の終了直後の第n周期の所定波長範囲のレーザ光の強度変化I
mn(ν)と、基準線作成部41cで作成された強度変化I
0mn(ν)とを用いて、第mサイクルの第n周期のレーザ光の強度変化I
mn(ν)における酸素ガスの吸収ピークを検出し、この酸素ガスの吸収ピークの面積値D
mnを算出して面積値記憶領域42aに記憶させる。そして、第mサイクルにおいて吸気工程の終了直後の第n周期の面積値D
mnを基準面積値D
m’として面積値記憶領域42aに記憶させる。次に、取得部41bで取得された第mサイクルの第(n+1)周期の所定波長範囲のレーザ光の強度変化I
m(n+1)(ν)と、基準線作成部41cで作成された強度変化I
0m(n+1)(ν)とを用いて、第mサイクルの第(n+1)周期のレーザ光の強度変化I
m(n+1)(ν)における酸素ガスの吸収ピークを検出し、この酸素ガスの吸収ピークの面積値D
m(n+1)を算出して面積値記憶領域42aに記憶させる。このようにして面積値D
mn、D
m(n+1)、・・・、D
(m+1)n、D
(m+1)(n+1)、・・・を算出して面積値記憶領域42aに記憶させていくとともに、基準面積値D
m’、D
(m+1)’、・・・を面積値記憶領域42aに記憶させていく。
【0042】
代表基準線作成部41eは、第mサイクルにおいて面積値D
mn、D
m(n+1)、・・・と基準面積値D
m’との差分である面積変化量ΔD
mn、ΔD
m(n+1)、・・・を算出し、面積変化量ΔD
mn、ΔD
m(n+1)、・・・、ΔD
m(n+a−1)が閾値A以内となる周期で作成された強度変化I
0mn(ν)、I
0m(n+1)(ν)、・・・、I
0m(n+a−1)(ν)を平均することにより、代表光強度変化I
0m’(ν)を作成する制御を行う。
例えば、まず、面積値D
mnと基準面積値D
m’との差分である面積変化量ΔD
mnを算出して、面積変化量ΔD
mが閾値A以内であるか否かを判定する。そして、面積変化量ΔD
mが閾値A以内であると、面積値D
m(n+1)と基準面積値D
m’との差分である面積変化量ΔD
m(n+1)を算出して、面積変化量ΔD
mが閾値A以内であるか否かを判定する。このようにして、面積変化量ΔD
m(n+a)が閾値Aを超えるまで、面積変化量ΔD
mn、ΔD
m(n+1)、・・・を算出する。その後、閾値A以内である面積変化量ΔD
mn、ΔD
m(n+1)、・・・、ΔD
m(n+a−1)となる周期で作成された強度変化I
0mn(ν)、I
0m(n+1)(ν)、・・・、I
0m(n+a−1)(ν)を平均することにより、代表光強度変化I
0m’(ν)を作成する。
【0043】
演算部41fは、第mサイクルの第(n+a−1)周期までは、第n周期の所定波長範囲のレーザ光の強度変化I
mn(ν)と、強度変化I
0m(ν)とを用いて、第n周期の酸素ガスの吸収ピークを検出し、式(4)を用いて数密度c
mnを得る一方、第mサイクルの第(n+a)周期からは、第n周期の所定波長範囲のレーザ光の強度変化I
mn(ν)と、代表光強度変化I
0m’(ν)とを用いて、第n周期の酸素ガスの吸収ピークを検出し、式(4)を用いて数密度c
mnを得る制御を行う。
【0044】
ここで、ガス分析装置1の使用方法の一例について説明する。
図3は、数密度c
nを計測する計測方法について説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS101の処理において、サイクルパラメータm=1(サイクル開始)とし、周期回数パラメータn=1(吸気工程開始)とする。
【0045】
次に、ステップS102の処理において、レーザ制御部41aは、制御信号を光源部10に出力する。
次に、ステップS103の処理において、取得部41bは、レーザ光の強度I
mn(ν)を取得するとともに、基準線作成部41cは、非吸収波長のレーザ光の強度I
mn(ν)に基づいて近似式を作成することにより、強度変化I
0mn(ν)を作成する。
次に、ステップS104の処理において、演算部41fは、第n周期の所定波長範囲のレーザ光の強度変化I
mn(ν)と、強度変化I
0mn(ν)とを用いて、第n周期の酸素ガスの吸収ピークを検出し、式(4)を用いて数密度c
mnを得る。
【0046】
次に、ステップS105の処理において、n=11(圧縮工程開始)であるか否かを判定する。n=11でないと判定したときには、ステップS106の処理において、n=n+1とした後、ステップS103の処理に戻る。
一方、n=11であると判定したときには、ステップS107の処理において、取得部41bは、レーザ光の強度I
mn(ν)を取得するとともに、基準線作成部41cは、非吸収波長のレーザ光の強度I
mn(ν)に基づいて近似式を作成することにより、強度変化I
0mn(ν)を作成する。
【0047】
次に、ステップS108の処理において、演算部41fは、第n周期の所定波長範囲のレーザ光の強度変化I
mn(ν)と、強度変化I
0mn(ν)とを用いて、第n周期の酸素ガスの吸収ピークを検出し、式(4)を用いて数密度c
mnを得る。また、面積値算出部41dは、酸素ガスの吸収ピークの面積値D
mnを算出して面積値記憶領域42aに記憶させる。
次に、ステップS109の処理において、代表基準線作成部41eは、面積値D
mnと基準面積値D
m’との差分である面積変化量ΔD
mnを算出する。
【0048】
次に、ステップS110の処理において、ΔD
mn≦Aであるか否かを判定する。ΔD
mn≦Aであると判定したときには、ステップS111の処理において、n=n+1とした後、ステップS107の処理に戻る。
一方、ΔD
mn≦Aでないと判定したときには、ステップS112の処理において、代表基準線作成部41eは、面積変化量ΔD
mn、ΔD
m(n+1)、・・・、ΔD
m(n+a−1)が閾値A以内となる周期で作成された強度変化I
0mn(ν)、I
0m(n+1)(ν)、・・・、I
0m(n+a−1)(ν)を平均することにより、代表光強度変化I
0mn’(ν)を作成する。
【0049】
次に、ステップS113の処理において、取得部41bは、レーザ光の強度I
mn(ν)を取得する。
次に、ステップS114の処理において、演算部41fは、第n周期の所定波長範囲のレーザ光の強度変化I
mn(ν)と、代表光強度変化I
0m’(ν)とを用いて、第n周期の酸素ガスの吸収ピークを検出し、式(4)を用いて数密度c
mnを得る。
【0050】
次に、ステップS115の処理において、n=31(排気工程開始)であるか否かを判定する。n=31でないと判定したときには、ステップS116の処理において、n=n+1とした後、ステップS112の処理に戻る。
一方、n=31であると判定したときには、ステップS117の処理において、取得部41bは、レーザ光の強度I
mn(ν)を取得するとともに、基準線作成部41cは、非吸収波長のレーザ光の強度I
mn(ν)に基づいて近似式を作成することにより、強度変化I
0mn(ν)を作成する。
【0051】
次に、ステップS118の処理において、演算部41fは、第n周期の所定波長範囲のレーザ光の強度変化I
mn(ν)と、強度変化I
0mn(ν)とを用いて、第n周期の酸素ガスの吸収ピークを検出し、式(4)を用いて数密度c
mnを得る。
次に、ステップS119の処理において、n=40(排気工程終了)であるか否かを判定する。n=40でないと判定したときには、ステップS120の処理において、n=n+1とした後、ステップS117の処理に戻る。
一方、n=40であると判定したときには、ステップS121の処理において、n=1、m=m+1とした後、ステップS103の処理に戻る。
【0052】
以上のように、本発明のガス分析装置1によれば、吸収曲線がブロードとなって基準線が作成できない状況においても、直近の吸気工程や圧縮工程のときに算出された基準線を利用することで、数密度c
nを正確に算出することができる。
【0053】
<他の実施形態>
上述したガス分析装置1では、シリンダ51の側壁には、レンズ(入射用光学窓)35と、レンズ(入射用光学窓)35に−X方向に距離lを空けて対向配置されるレンズ(出射用光学窓)36とが形成されている構成を示したが、これに代えて、シリンダ51の側壁にレンズ35が形成され、シリンダ51の内部には、レンズ35に−X方向に距離l/2を空けて対向配置される反射鏡236とが形成されているような構成としてもよい。
図4は、本発明のガス分析装置1に反射鏡236を配置した場合の実施例であるガス分析装置1’を示す概略構成図である。