(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6277967
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】エアフィルタ及びその製造方法並びにこのエアフィルタを備えた空気調和機
(51)【国際特許分類】
B01D 46/12 20060101AFI20180205BHJP
F24F 13/28 20060101ALI20180205BHJP
F24F 1/00 20110101ALI20180205BHJP
【FI】
B01D46/12
F24F1/00 371A
F24F1/00 371Z
F24F13/28
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-26761(P2015-26761)
(22)【出願日】2015年2月13日
(65)【公開番号】特開2016-147250(P2016-147250A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2017年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佑
【審査官】
関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭62−050415(JP,U)
【文献】
実開平07−012856(JP,U)
【文献】
特開平10−246504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 46/10−12
F24F 1/00
F24F 13/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタ枠と、前記フィルタ枠内を複数の領域に区切る補強桟と、前記複数の領域に張られる複数のフィルタ網とを有し、
前記フィルタ網は、異なる機能を有するエアフィルタであって、
前記複数のフィルタ網は、各々のフィルタ網の隣接する部分が重なり合うように配置され、
前記補強桟は、前記複数のフィルタ網の重なり合う部分に樹脂で一体成型されていることを特徴とするエアフィルタ。
【請求項2】
異なる機能を有する複数のフィルタ網の隣接する部分を互いに重なり合うように溶着する第1工程と、
第1工程で溶着された前記複数のフィルタ網の外周縁部分にフィルタ枠を樹脂で成型し、かつ、前記複数のフィルタ網の重なり合う部分に補強桟を前記フィルタ枠と連続するように樹脂で成型する第2工程とで構成されることを特徴とするエアフィルタの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のエアフィルタが、室内の空気を吸込む空気吸込口と吸込んだ空気を冷媒と熱交換する熱交換器との間に配置されていることを特徴とする空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタ及びその製造方法並びにこのエアフィルタを備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機の室内機には、室内の空気から塵埃を捕捉するため、空気吸込口と熱交換器の間にエアフィルタが装着されている。このエアフィルタは、塵埃を捕捉するフィルタ網と、フィルタ網が張られるフィルタ枠と、フィルタ網を補強する補強桟とを備え、例えば、フィルタ網にフィルタ枠や補強桟を樹脂で一体成型(インサート成型)したものが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−208416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような空気調和機の室内機に空気清浄や脱臭などの機能を持たせるには、エアフィルタとは別に空気清浄フィルタや脱臭フィルタなどを取付ける必要があるという問題があった。
本発明は上記問題点に鑑み、1つのエアフィルタに複数の機能を持たせることができるエアフィルタ及びその製造方法並びにこのエアフィルタを備えた空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のエアフィルタは、フィルタ枠と、前記フィルタ枠内を複数の領域に区切る補強桟と、前記複数の領域に張られる複数のフィルタ網とを有し、前記フィルタ網は、異なる機能を有することを特徴とする。
また、前記複数のフィルタ網は、各々のフィルタ網の隣接する部分が重なり合うように配置され、前記補強桟は、前記複数のフィルタ網の重なり合う部分に樹脂で一体成型されていることを特徴とする。
また、本発明のエアフィルタの製造方法は、異なる機能を有する複数のフィルタ網の隣接する部分を互いに重なり合うように溶着する第1工程と、第1工程で溶着された前記複数のフィルタ網の外周縁部分にフィルタ枠を樹脂で成型し、かつ、前記複数のフィルタ網の重なり合う部分に補強桟を前記フィルタ枠と連続するように樹脂で成型する第2工程とで構成されることを特徴とする。
さらに、本発明の空気調和機は、前記エアフィルタが、室内の空気を吸込む空気吸込口と吸込んだ空気を冷媒と熱交換する熱交換器との間に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のエアフィルタによれば、1つのエアフィルタに複数の機能を持たせることができる。
本発明のエアフィルタの製造方法によれば、複数のフィルタ網の重なり合う部分が剥がれるのを防止し、この重なり合う部分が目隠しされ外観をきれいにすることができる。
本発明の空気調和機によれば、複数の異なる機能を有する1つのエアフィルタを配置することにより、室内機の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】
図1のエアフィルタの製造方法を示す図であり、(a)は第1工程を説明する説明図、(b)は第2工程を説明する説明図である。
【
図3】
図1のエアフィルタを備えた空気調和機の室内機を示す断面図である。
【
図4】本発明のエアフィルタの他の実施例を示す斜視図である。
【
図5】本発明のエアフィルタの他の実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
図1乃至
図3は、本実施形態におけるエアフィルタ及びその製造方法並びにこのエアフィルタを備えた空気調和機を説明する図である。
【0009】
エアフィルタ1は、
図1及び
図2に示すように、矩形状のフィルタ枠11と、フィルタ枠11内を複数の格子状の領域61〜70に区切る補強桟12と、複数の格子状の領域61〜70に張られた異なる機能を有する2種のフィルタ網132、133とを備えている。各々の格子状の領域61〜70には2種のフィルタ網132、133のいずれか一方が張られている。エアフィルタ1は、後述する空気調和機の室内機Aに装着されている。フィルタ枠11は、2種のフィルタ網132、133で形成されるフィルタ13の外周縁部分131に樹脂で一体成型されている。
【0010】
フィルタ13は、例えば、フィルタ枠11と補強桟12とで10区画に区画された1つの領域61内にあるフィルタ網132と、他の領域62〜70内にあるフィルタ網133とを有している。フィルタ網132は、例えば、室内の空気から塵埃を捕捉するとともに室内の空気を脱臭する脱臭機能を有するものであり、臭気成分を吸着する吸着剤が塗布されている。フィルタ網133は、例えば、室内の空気から塵埃を捕捉する塵埃捕捉機能を有するものである。フィルタ網132とフィルタ網133の隣接する部分132a、133aは互いに重なり合うように配置されている。
【0011】
補強桟12は、フィルタ網132とフィルタ網133を補強するため、フィルタ網132とフィルタ網133の重なり合う部分Kとフィルタ網133とに、フィルタ枠11と連続するようにフィルタ枠11と同一の樹脂で一体成型されている。
【0012】
このように構成されたエアフィルタ1の製造方法は、
図2に示すような、後述する第1工程と第2工程からなる。第1工程では、
図2(a)に示すように、脱臭機能を有するフィルタ網132と塵埃捕捉機能を有するフィルタ網133の隣接する部分132a、133aを互いに重なり合うように溶着する。第1工程を実施すると、1枚に一体化された矩形状かつ平面形状のフィルタ13が完成する。
【0013】
第2工程では、
図2(b)に示すように、第1工程で1枚に溶着され一体化されたフィルタ13を上下一対の金型51、52内に配置し、フィルタ13の表裏の両面にフィルタ枠11と補強桟12を樹脂で一体成型する。ここで、1枚になったフィルタ網132とフィルタ網133の重なり合う部分Kに、格子状の補強桟12が形成される。
【0014】
第1工程において、フィルタ網132とフィルタ網133を溶着し1枚のフィルタ13にすることで、第2工程において、金型51、52内にフィルタ13を配置し、フィルタ枠11や補強桟12を一体成型する際、フィルタ網132とフィルタ網133との位置ずれを防ぐことができる。以上のように第1工程と第2工程を実施することにより、
図2(b)に示すように、矩形状のフィルタ枠11と、フィルタ枠11内を格子状に区切る補強桟12と、脱臭機能と塵埃捕捉機能を有する2種のフィルタ網132、133とを備えたエアフィルタ1が完成する。
【0015】
上述のエアフィルタ1を備えた空気調和機は、
図3に示すように、壁掛型の室内機Aを例に挙げて説明する。室内機Aは、箱状の本体2を備え、本体2の上部には空気吸込口21が形成され、本体2の下部には空気吹出口22が形成されている。本体2の内部には、空気吸込口21と空気吹出口22とを結ぶ空気通路23に上流から下流に向かってエアフィルタ1と熱交換器3と送風ファン4がそれぞれ配置されている。
【0016】
室内機Aは、送風ファン4の回転により空気吸込口21から吸込んだ室内の空気を熱交換器3で冷媒と熱交換し、熱交換された空気を空気吹出口22から室内に吹出す構造になっている。このとき、空気吸込口21と熱交換器3との間に装着されているエアフィルタ1は、フィルタ網132では空気吸込口21から吸込んだ空気に含まれる塵埃を捕捉するとともに吸込んだ空気を脱臭し、フィルタ網133では空気吸込口21から吸込んだ空気に含まれる塵埃を捕捉する。
【0017】
なお、本実施形態によるエアフィルタ1では、脱臭機能と塵埃捕捉機能を有する2種のフィルタ網132、133を備えているが、本発明はこの2種のフィルタ網の組合せに限らず、例えば、上述の脱臭機能と空気清浄機能を有する2種のフィルタ網を備えてもよい。空気清浄機能を有するフィルタ網は、空気を清浄にするために細かな塵埃を捕捉する細かい網目に形成したものである。
【0018】
また、複数のフィルタ網の異なる機能は上述した機能の他に、例えば、送風ファン4による吸込み空気の風速分布に合わせて塵埃の捕捉量を変える機能や通風抵抗を調節する機能を有してもよい。この場合、例えば、塵埃の捕捉量を変える機能を実現したエアフィルタ8は、
図4に示すように、速い風速になる送風ファン4の前側41と後側42に配置されるフィルタ網81、82を細かい網目に形成し、遅い風速になる送風ファン4の中間部43に配置されるフィルタ網83を粗い網目に形成したものである。エアフィルタ8は、
図3に示すように、空気調和機の室内機Aの空気吸込口21と熱交換器3との間に空気吸込口21に沿って配置される。このとき、送風ファン4の前側41、中間部43、後側42のそれぞれより空気通路23に沿って空気吸込口21に至る延長線上に、フィルタ網81、フィルタ網83、フィルタ網82が位置するように装着される。この結果、フィルタ網83のように粗い網目でも十分に塵埃を捕捉することができるが、フィルタ網81、82のように風速の速い部分について網目を密にすることで、風量を確保しながら、より多くの塵埃を捕捉することができる。
【0019】
また、エアフィルタ1ではフィルタ網を2種のフィルタ網132、133としたが、例えば、上述した空気清浄機能と脱臭機能と塵埃捕捉機能を有する3種のフィルタ網としてもよい。この場合、例えば、エアフィルタ9は、
図5に示すように、フィルタ枠11と補強桟12とで10区画に区画された各々の領域61〜70のうち、2つの連続した領域61、68内にあるフィルタ網91と、4つの連続した領域62、63、66、67内にあるフィルタ網92と、4つの連続した領域64、65、69、70内にあるフィルタ網93とを有している。フィルタ網91は脱臭機能を有するものであり、フィルタ網92は空気清浄機能を有するものであり、フィルタ網93は塵埃捕捉機能を有するものである。
【0020】
さらに、エアフィルタ1を製造する際、金型51、52内にフィルタ13を配置する前にフィルタ網132とフィルタ網133の隣接する部分132a、133aを重なり合うように溶着するようにしたが、本発明はこれに限らず、上下一対の金型51、52内にフィルタ網132とフィルタ網133の隣接する部分132a、133aを重なり合うように位置決めする位置決め部を、フィルタ網132とフィルタ網133に設けておけば、フィルタ網132とフィルタ網133との溶着を省略することができる。
【0021】
以上説明してきた実施形態によるエアフィルタ1及びエアフィルタ1の製造方法によれば、フィルタ枠11と、フィルタ枠11内を複数の領域61〜70に区切る補強桟12と、複数の領域61〜70に張られる複数のフィルタ網132、133とを有し、複数のフィルタ網132、133は、異なる機能を有する。このため、複数の異なる機能を1枚のエアフィルタ1で実現することができる。この結果、空気調和機の室内機Aに、エアフィルタ1とは別に空気清浄フィルタや脱臭フィルタなどを取付ける必要がなく、複数の異なる機能を持たせたエアフィルタ1を安価に実現することができる。
【0022】
また、複数のフィルタ網132、133は、各々のフィルタ網132、133の隣接する部分132a、133aが重なり合うように配置され、補強桟12は、複数のフィルタ網132、133の重なり合う部分Kに樹脂で一体成型されている。このため、複数のフィルタ網132、133の重なり合う部分Kが剥がれるのを防止することができる。また、この重なり合う部分Kが目隠しされた状態になるので、エアフィルタ1の外観をきれいに見せることができる。
【0023】
さらに、空気調和機の室内機Aによれば、上述のエアフィルタ1が、室内の空気を吸込む空気吸込口21と吸込んだ空気を冷媒と熱交換する熱交換器3との間に配置されているため、室内機Aに異なる機能を有する複数のエアフィルタを別々に取付けるよりも、室内機Aの小型化を実現することができる。
【符号の説明】
【0024】
1 エアフィルタ
11 フィルタ枠
12 補強桟
13 フィルタ
131 外周縁部分
132、133 フィルタ網
132a、133a 隣接する部分
2 本体
21 空気吸込口
22 空気吹出口
23 空気通路
3 熱交換器
4 送風ファン
41 前側
42 後側
43 中間部
51、52 金型
61〜70 領域
8 エアフィルタ
81〜83 フィルタ網
9 エアフィルタ
91〜93 フィルタ網
A 室内機
K 重なり合う部分