(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、保持手段がアース端子を押圧して保持する状態を維持するために、ネジ孔にねじ棒をねじ込む必要があるため、端子の固定作業が面倒である。
【0007】
また、特許文献2では、上枠で端子嵌合凹部を覆った後、クランプレバーを操作して下枠と上枠とを挟持する必要があるため、やはり、端子の固定作業が面倒である。
【0008】
そこで、本発明は、電線と端子との接続部に熱収縮チューブを装着する際に、熱収縮チューブの内側の止水剤が端子の相手側接続部に流れ込むことを抑制可能な状態で、端子を容易に固定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、第1の態様は、端子の電線接続部と電線との接続部に熱収縮チューブを装着する際に、前記端子を固定するための端子固定治具であって、外側に向けて開口する端子挿入凹部が形成され、前記端子挿入凹部が、前記開口から前記端子の板状の相手側接続部を挿入可能な形状に形成されると共に、前記端子挿入凹部の開口周縁部の少なくとも一部が、前記接続部に被せられた熱収縮チューブの一方端部に当接可能に形成された端子挿入支持部と、前記端子挿入凹部内に向けて徐々に突出する曲面が形成され、前記相手側接続部に形成された孔に嵌め込み可能な嵌込部と、前記嵌込部を進出方向に付勢しつつ進退移動可能に支持する嵌込部支持部とを含み、前記端子挿入凹部に対する前記相手側接続部の挿入及び退避移動に応じて、前記嵌込部が前記相手側接続部に接触して進退移動し、かつ、前記相手側接続部が前記端子挿入凹部の奥側に挿入された状態で前記嵌込部が前記相手側接続部の孔に嵌り込み可能なように、前記端子挿入支持部に固定された端子嵌込固定部とを備える。
【0010】
第2の態様は、第1の態様に係る端子固定治具であって、前記端子挿入凹部は、間隔をあけて対向する一対の対向面と、前記一対の対向面の両側部で前記一対の対向面同士を繋ぐ一対の側面とで囲まれた形状に形成され、前記嵌込部は、前記一対の対向面の一方から他方に向けて付勢されており、前記相手側接続部の一方主面を前記一対の対向面の一方に対向させると共に、前記相手側接続部の他方主面を前記一対の対向面の他方に対向させた状態で、前記相手側接続部が前記端子挿入凹部に挿入されると、前記嵌込部が前記相手側接続部の前記孔に嵌り込みつつ、前記相手側接続部を前記一対の対向面の他方に押付けるものである。
【0011】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係る端子固定治具であって、前記端子挿入凹部の開口周縁部は、前記相手側接続部の2つの主面のうちの少なくとも一方側から前記端子に接触した状態で、前記接続部に被せられた熱収縮チューブの一方端部に当接可能に形成されたせき止め部を含むものである。
【0012】
第4の態様は、第1又は第2の態様に係る端子固定治具であって、前記端子挿入凹部の開口周縁部は、前記相手側接続部の2つの主面のうちの一方側から前記端子に接触した状態で、前記接続部に被せられた熱収縮チューブの一方端部に当接可能に形成されたせき止め部と、前記相手側接続部の2つの主面のうちの他方側から前記熱収縮チューブの一方端部を前記端子に向けて押え付ける押付部とを含むものである。
【0013】
第5の態様は、第1〜第4のいずれか1つの態様に係る端子固定治具であって、前記端子挿入凹部の反対側から前記熱収縮チューブの他方端部に当接する端部位置決め部材をさらに備えるものである。
【0014】
第6の態様は、第1〜第5のいずれか1つの態様に係る端子固定治具であって、前記端子挿入支持部から離れた位置で、前記端子挿入凹部に挿入された相手側接続部を含む端子から延出する電線を保持する電線保持部さらに備える。
【0015】
第7の態様は、第1〜第6のいずれか1つの態様に係る端子固定治具であって、前記端子挿入支持部に、前記端子挿入凹部が複数並列状態で形成され、前記端子嵌込固定部が、前記複数の端子挿入凹部のそれぞれに設けられているものである。
【0016】
第8の態様は、第1〜第7のいずれか1つの態様に係る端子固定治具を用いた熱収縮チューブ付電線の製造方法であって、(a)前記端子挿入凹部内に前記相手側接続部を挿入し、前記嵌込部を前記相手側接続部の前記孔部に嵌め込んで、前記相手側接続部を支持する工程と、(b)前記熱収縮チューブの一端部を前記端子挿入凹部の開口周縁部の少なくとも一部に当接させる工程と、(c)前記熱収縮チューブを熱収縮させる工程とを備える。
【発明の効果】
【0017】
第1の態様によると、相手側接続部が端子挿入凹部に挿入された状態で、熱収縮チューブの一方端部が端子挿入凹部の開口周縁部の少なくとも一部に当接する。これにより、熱収縮チューブの内側の止水剤が開口周縁部によってせき止められ、相手側接続部側に流れ込むことが抑制される。また、相手側接続部を端子挿入凹部に挿入すると、嵌込部が相手側接続部に接触して退避移動する。そして、相手側接続部を端子挿入凹部の奥に挿入し、相手側接続部の孔が嵌込部に対応する位置に配設されると、嵌込部が進出し、相手側接続部の孔に嵌り込む。これにより、端子を容易に固定できる。
【0018】
第2の態様によると、嵌込部が相手側接続部の孔に嵌り込みつつ、相手側接続部を前記一対の対向面の他方に押付けるため、相手側接続部をがたつきなく保持できる。
【0019】
第3の態様によると、せき止め部によって、止水剤が相手側接続部側に流れ込むことが抑制される。
【0020】
第4の態様によると、せき止め部によって、止水剤が相手側接続部側に流れ込むことを抑制できる。また、押付部によって、熱収縮チューブの位置ずれを抑制しつつ、その一方端部から止水剤が漏れ出ることを抑制できる。
【0021】
第5の態様によると、端部位置決め部材によって、熱収縮チューブの位置ずれを抑制できる。
【0022】
第6の態様によると、端子挿入支持部から離れた位置で、電線を保持することができる。このため、端子をより確実に一定姿勢に保つことができる。
【0023】
第7の態様によると、複数の端子を固定できる。これにより、複数の端子に対する熱収縮チューブの装着を効率よく実施できる。
【0024】
第8の態様によると、端子を容易に固定することができる。また、止水剤が相手側接続部に流れ込むことを抑制しつつ、熱収縮チューブを熱収縮させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態に係る端子固定治具及びその端子固定治具を用いた熱収縮チューブ付電線の製造方法について説明する。
【0027】
<熱収縮チューブ付電線について>
図1は製造対象となる熱収縮チューブ付電線10を示す平面図であり、
図2は同熱収縮チューブ付電線10を示す側面図である。
【0028】
熱収縮チューブ付電線10は、電線12と、端子20と、熱収縮チューブ18とを備える。
【0029】
電線12は、芯線部14と、芯線部14の周囲に形成された被覆部16とを備える。芯線部14は、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等の導電性材料によって線状に形成されている。ここでは、芯線部14は、複数の素線が撚り合わされた構成とされている。もっとも、芯線部は、単線によって構成されていてもよい。被覆部16は、絶縁性樹脂材料が押出装置等により芯線部14の周りに押し出されることによって形成される。この電線12の先端部には、芯線部14が露出しており、所定長の露出芯線部14aが形成されている。
【0030】
端子20は、例えば、銅又は銅合金等によって形成された板材をプレス加工等することによって形成された部材である。端子20の表面には、錫メッキ等が施されていてもよい。
【0031】
この端子20は、相手側接続部22と、電線接続部24と、連結部28とを備える。相手側接続部22と電線接続部24とが連結部28を介して直線状に連なっている。
【0032】
相手側接続部22は、板状に形成されている。ここでは、相手側接続部22は、楕円板状に形成されている。相手側接続部22は、円形板状、四角板状等に形成されていてもよい。相手側接続部22には、孔22hが形成されている。孔22hには、ボルト34が挿通される。孔22hは円形に形成されているが、必ずしもその必要はない。ここでは、端子20として、アース端子が想定される。
【0033】
電線接続部24は、芯線圧着部25と、被覆圧着部26とを備える。芯線圧着部25に対して相手側接続部22とは反対側に被覆圧着部26が形成されている。芯線圧着部25は、底部25aの両側部に一対の圧着片25bが延出形成された構成とされている。そして、底部25a上に露出芯線部14aを配設した状態で、一対の圧着片25bが露出芯線部14aにかしめられる。また、被覆圧着部26は、底部26aの両側部に一対の圧着片26bが延出形成された構成とされている。底部26aは、底部25aと連なっている。そして、底部26a上に被覆部16の端部を配設した状態で、一対の圧着片26bが被覆部16にかしめられる。これにより、電線12の端部が端子20の電線接続部24に接続される。
【0034】
なお、被覆圧着部26は省略されてもよい。また、露出芯線部が電線接続部24に対して超音波溶接、抵抗溶接、半田付等によって接続されてもよい。
【0035】
連結部28は、板状に形成されており、相手側接続部22と電線接続部24の底部25aとを繋いでいる。相手側接続部22と連結部28とは、同一面状に延在している。ここでは、連結部28は、相手側接続部22よりも細く形成されているが、これは必須ではない。
【0036】
熱収縮チューブ18は、端子20と電線12との接続部11を覆う部材である。ここでは、熱収縮前の熱収縮チューブ18B(以下、名称の後に付する符号を、熱収縮前の熱収縮チューブ18B、熱収縮後の熱収縮チューブ18と区別する。)が接続部11を覆った状態で熱収縮することによって、熱収縮チューブ18が形成されている。なお、熱収縮チューブ18Bは、押出成形により管状に成形された樹脂部材が、加熱された状態で太い管状へ引き伸ばされた後に冷却されることによって得られる。このようにして得られた熱収縮チューブ18Bは、加熱された場合、引き伸ばされる前の細い管状まで収縮する形状記憶特性を有する。
【0037】
熱収縮チューブ18は、接続部11の外形状に応じた形状で熱収縮しており、当該接続部11の表面に可及的に密着している。また、熱収縮チューブ18Bの内側には、止水剤としてホットメルト19が設けられている。ホットメルト19は、例えば、熱収縮チューブ18Bの内周面全体に形成されている。熱収縮チューブ18Bが熱収縮する際に、本ホットメルト19が軟化又は溶融して接続部11の表面と熱収縮チューブ18の内面との隙間を可及的に埋める。この熱収縮チューブ18Bが熱収縮する際に、前記隙間に収らなかった余剰分のホットメルト19は、熱収縮チューブ18の端部からはみ出ることがある。ここでは、余剰分のホットメルト19は、熱収縮チューブ18のうち被覆部16側の端部から外方にはみ出ている。また、熱収縮チューブ18のうち相手側接続部22側の端部では、後に説明する端子固定治具40を用いて熱収縮することによって、ホットメルト19のはみ出しが抑制されている。
【0038】
なお、止水剤としては、ホットメルト19の他、熱硬化性の止水剤、湿気硬化性の止水剤等が用いられてもよい。これらの場合には、接続部11に事前に止水剤を塗布しておくとよい。
【0039】
上記端子20は、次のようにして接続対象となる部位に接続される。すなわち、接続対象となる部位30(例えば、アース接続部位)上に、ボルト34が立設されている。部位30におけるボルト34が立設された部分の周縁部は、金属等によって導電性部分に形成されている。そして、ボルト34を孔22hに通すようにして、部位30上に相手側接続部22を配設する。この後、ナット36を、ボルト34に締付け、部位30とナット36との間に、相手側接続部22を挟込む。これにより、相手側接続部22が部位30に対して一定姿勢で固定されると共に、相手側接続部22が部位30、ボルト34、ナット36に接触し、もって、端子20が部位30に電気的に接続される。
【0040】
端子20は、上記のように部位30及びナット36に接触して、当該部位30に電気的に接続されるため、相手側接続部22の表面にホットメルト19が付着していると、相手側接続部22と部位30又はナット36との電気的な接続が不安定となる。
【0041】
次に説明する端子固定治具40は、熱収縮チューブ18Bを熱収縮させる際に、その内部のホットメルト19が相手側接続部22側に流れ込むことを抑制しつつ、端子20を固定するための治具である。
【0042】
<端子固定治具について>
図3は端子固定治具40を示す平面図であり、
図4は端子固定治具40を示す正面図である。
【0043】
端子固定治具40は、端子20の電線接続部24と電線12との接続部11に熱収縮チューブ18を装着する際に、端子20を固定するための治具である。端子固定治具40は、端子挿入支持部50と、端子嵌込固定部70と、電線保持部80とを備えている。端子挿入支持部50と端子嵌込固定部70とによって端子20が固定され、電線保持部80によって電線12が保持される。
【0044】
図5は端子挿入支持部50及び端子嵌込固定部70の部分平面図であり、
図6は端子挿入支持部50及び端子嵌込固定部70の部分正面図であり、
図7は
図5のVII−VII線断面図である。
【0045】
端子挿入支持部50は、治具フレーム42に固定されている。治具フレーム42は、金属等によって形成された部材であり、方形枠状に形成されている。
【0046】
端子挿入支持部50は、長尺形状に形成されており、治具フレーム42の一対の側部43間に掛渡すように当該治具フレーム42にネジS等によって固定されている。
【0047】
端子挿入支持部50には、外側に向けて開口する端子挿入凹部52が形成されている。端子挿入凹部52は、側部43の一方側に開口しており、当該開口から端子20の相手側接続部22を挿入可能な形状に形成されている。また、端子挿入凹部52の開口の周縁部54の少なくとも一部が、接続部11に被せられた熱収縮チューブ18の一方の端部に当接可能に形成されている。
【0048】
より具体的には、端子挿入支持部50は、基部60と、蓋部66とを備える。これらの基部60及び蓋部66は、ホットメルト19がくっつきにくい材料によって形成されていることが好ましい。例えば、テフロン(登録商標)等の樹脂によって形成されていることが好ましい。また、基部60及び蓋部66のうち熱収縮チューブ18Bと接触する部分、即ち、後述する端子挿入凹部52の開口の周縁部54のみテフロン(登録商標)等の樹脂によって形成されていてもよい。また、基部60及び蓋部66の全体が、熱収縮チューブ18Bを熱収縮させる際の温度に耐え得る材料によって形成されていることが好ましい。テフロン(登録商標)樹脂はこの要請を満たす。
【0049】
基部60は、一対の側部43間に掛渡すように配設可能な細長い方形板状に形成されている。基部60の上面には、凹部62が形成されている。凹部62は、底面62aと、一対の側面62bによって3方を囲まれた、横断面方形状の溝状に形成されている。凹部62の一方側は、奥面62cによって閉ざされており、他方側は外側に開口している。また、凹部62のうち底面62aの反対側は開口している。
【0050】
凹部62の深さ寸法は、相手側接続部22の厚み寸法と同じかこれよりも大きく(僅かに大きく)設定されている。凹部62の幅寸法は、相手側接続部22の最大幅寸法と同じかこれよりも大きく(僅かに大きく)設定されている。凹部62の幅寸法は、凹部62内で相手側接続部22がその幅方向にがたつかない程度の大きさに設定されていることが好ましい。凹部62の開口から奥面62cまでの寸法は、相手側接続部22を収容可能な程度の大きさに設定されている。なお、奥面62cが省略され、この部分でも凹部62が開口していてもよい。
【0051】
ここでは、基部60に、上記凹部62が基部60の延在方向に沿って間隔をあけて複数(ここでは5つ)形成されている。基部60の上面のうち上記各凹部62が形成された箇所以外は、同一平面上に揃うように形成されている。
【0052】
蓋部66は、一対の側部43間に掛渡すように配設可能な細長い方形板状に形成されている。蓋部66の長さ寸法は、基部60の長さ寸法と同じに設定されている。また、蓋部66の幅寸法(凹部62の延在方向に沿った寸法)は、基部60の同方向の幅寸法よりも大きく設定されている。また、蓋部66の下面は、平面に形成されている。
【0053】
この蓋部66は、その一方の側部を、基部60の一方の側部(凹部62の側方開口とは反対側の側部)と一致させた状態で、基部60の上面に重ねられている。これにより、上記凹部62の上方開口が蓋部66によって閉じられる。蓋部66の下面のうち凹部62の上方開口を塞ぐ部分が天面63aである。なお、蓋部66を基部60に重ね合せた状態で、蓋部66及び基部60が治具フレーム42に対してネジS等によって固定されている。
【0054】
このように、基部60に形成された凹部62の上方開口が蓋部66によって塞がれることによって、外方に向けて開口する端子挿入凹部52が形成される。ここでは、複数の凹部62が並列状態で形成されているので、端子挿入支持部50には、複数の端子挿入凹部52が並列状態で形成される。
【0055】
この端子挿入凹部52に着目すると、底面62aと天面63aとが間隔をあけて対向する一対の対向面であり、上記一対の側面62bが、当該一対の底面62a、天面63a(一対の対向面)の両側部でそれら同士を繋いでいる。端子挿入凹部52は、これらの一対の底面62a、天面63a(一対の対向面)と一対の側面とで囲まれる有底角孔状の凹部として形成されている。
【0056】
この端子挿入凹部52に対して、相手側接続部22は次のように挿入される。すなわち、相手側接続部22の一方主面(電線12が配設される側である上面)を一対の対向面の一方である天面63aに対向させると共に、相手側接続部22の他方主面(下面)を一対の対向面の他方である底面62aに対向させた状態で、相手側接続部22が端子挿入凹部52内に挿入される。
【0057】
なお、相手側接続部22の他方主面(電線12が配設されない側の面)を一対の対向面の天面63aに対向させると共に、相手側接続部22の一方主面を一対の対向面の底面62aに対向させた状態で、相手側接続部22が端子挿入凹部52内に挿入されてもよい。この場合でも、せき止め部55と押付部56とによって、相手側接続部22側へのホットメルトの流れ出しが抑制されるからである。
【0058】
相手側接続部22が端子挿入凹部52内に奥まで挿入された状態で、端子挿入凹部52の開口の周縁部54の少なくとも一部は、接続部11に被せられた熱収縮チューブ18Bの一方端部に当接可能に形成されている。
【0059】
ここでは、端子挿入凹部52の開口の周縁部54は、せき止め部55と、押付部56とを含む。
【0060】
より具体的には、端子挿入凹部52の開口の周縁部54のうち基部60によって構成される部分がせき止め部55である。すなわち、端子挿入凹部52の側方開口の周縁部のうち底面62a側の部分55aは、せき止め部55の一部として、相手側接続部22の2つの主面のうちの少なくとも一方側(ここでは、下面側)から端子20に接触する。ここでは、せき止め部55のうち底面62a側の部分55aが連結部28の下面に面接触する。また、端子挿入凹部52の側方開口の周縁部のうち外向き面の部分55bは、せき止め部55の他の一部として、接続部11に被せられた熱収縮チューブ18Bの端部に相手側接続部22側から当接する。
【0061】
このように、せき止め部55と端子20の連結部28の下面とを接触させた状態で、せき止め部55を熱収縮チューブ18Bの端部に当接させることによって、熱収縮チューブ18Bの端部から流れ出ようとするホットメルト19が相手側接続部22側に流れ込むことを抑制できる。
【0062】
また、端子挿入凹部52の開口の周縁部54のうち蓋部66によって構成される部分が押付部56である。すなわち、蓋部66は、凹部62の側方開口よりも外方に突出しており、この突出部分が押付部56となる。相手側接続部22を端子挿入凹部52内に奥まで挿入した状態では、上記のように、熱収縮チューブ18Bの端部がせき止め部55に接触している。このため、押付部56は、相手側接続部22の上面側から熱収縮チューブ18Bの端部に被さって、当該熱収縮チューブ18Bの端部を端子20(より具体的には連結部28の上面)に向けて押付ける。換言すれば、端子20の連結部28の上面と押付部56との間に、熱収縮チューブ18Bの端部が挟み込まれ保持される。
【0063】
もっとも、このように押付部56が形成されていることは必須ではない。熱収縮チューブ18Bの端部の開口の全体が、端子挿入凹部52の開口の周縁部に当接してもよい。
【0064】
端子嵌込固定部70は、端子挿入凹部52内に挿入された相手側接続部22を、その孔22hを利用して固定するものである。
【0065】
端子嵌込固定部70は、嵌込部72と、嵌込部支持部74とを備える。
【0066】
嵌込部72は、端子挿入凹部52内に向けて徐々に突出する曲面が形成され、相手側接続部22に形成された孔22hに嵌込可能に形成されている。ここでは、嵌込部72は、球体に形成されており、その球体の表面が端子挿入凹部52内に向けて徐々に突出する曲面をなす。嵌込部72の直径寸法は、好ましくは、孔22hの外径寸法よりも大きい。嵌込部72が球状であることは必須ではない。例えば、嵌込部の先端部のみが半球状又は徐々に突出する山状に形成されていてもよい。
【0067】
嵌込部支持部74は、上記嵌込部72を進出方向に付勢しつつ進退移動可能に支持可能に構成されている。より具体的には、嵌込部支持部74は、筒部75と、付勢部としてのコイルバネ76とを備える。筒部75は、有底筒状に形成されており、嵌込部72がその一部を筒部75の開口から突出させた状態で、筒部75に保持されている。好ましくは、筒部75の開口部が嵌込部72の直径寸法よりも小さく狭まるように形成されており、球体をなす嵌込部72が筒部75から脱しない状態で、当該筒部75によって進退移動可能に保持されている。また、筒部75内において、底部と嵌込部72との間にコイルバネ76が圧縮状態で配設されている。このコイルバネ76によって、嵌込部72が進出方向に付勢されている。かかる端子嵌込固定部70としては、ボールプランジャー等を用いることができる。
【0068】
上記端子嵌込固定部70は、次の態様で端子嵌込固定部70に固定されている。
【0069】
すなわち、蓋部66のうち各凹部62を塞ぐそれぞれの部分に、固定孔66hが形成されている。固定孔66hは、端子挿入凹部52内に相手側接続部22側を奥まで挿入した状態で、孔22hが配設される位置にある。嵌込部72を端子挿入凹部52内に突出させるようにして、筒部75が固定孔66hに、嵌め込まれて固定されている。ここでは、複数の端子挿入凹部52のそれぞれに端子嵌込固定部70が設けられる。この固定状態では、端子挿入凹部52に対する相手側接続部22の挿入及び退避移動に応じて、嵌込部72が相手側接続部22に接触して進退移動し、かつ、相手側接続部22が端子挿入凹部52の奥側に挿入された状態で嵌込部72が相手側接続部22の孔22hに嵌り込むようになる。また、嵌込部72が孔22hに嵌り込んだ状態では、嵌込部72が孔22hの周縁部に接触して、相手側接続部22を一対の対向面の他方である底面62aに押付ける。詳しくは、後でさらに説明する。
【0070】
電線保持部80は、端子挿入支持部50から離れた位置で、端子挿入凹部52に挿入された相手側接続部22を含む端子20から延出する電線12を保持可能に構成されている。
【0071】
より具体的には、電線保持部80は、治具フレーム42のうち一対の側部43の一方側端部のフレーム部分に固定されている。電線保持部80は、端子挿入支持部50の長さ寸法と同じ長さ寸法の長尺部材に形成されている。電線保持部80の上部には、端子挿入凹部52のそれぞれに対応する位置に電線保持溝部82が形成されている。ここでは、電線保持部80に、一対の電線支持突部83を形成すると共に、当該一対の電線支持突部83間の部分を弧状に凹ませることによって、電線保持溝部82が形成されている。電線保持溝部82は、電線12の径寸法と同じかこれよりも大きい(僅かに大き)幅寸法に設定されている。また、電線保持溝部82の上方は開口している。そして、電線12を電線保持溝部82の上方開口から電線保持溝部82内に挿入することによって、電線12がその幅方向において一定位置に保持される。
【0072】
電線12を支持する構成はこれに限られない。電線保持部には、単なる溝が形成されていてもよい。また、電線保持部は、電線を挟込んで保持するものであってもよい。
【0073】
<製造方法>
上記端子固定治具40を用いて熱収縮チューブ付電線10を製造する方法について説明する。
【0074】
図8では、左から右側に向けて、相手側接続部22を端子挿入凹部52に挿入する工程を経時的に示している。
【0075】
まず、
図8の左側に示すように、端子付電線の接続部11に熱収縮チューブ18Bが被せられたものを準備し、相手側接続部22を端子挿入凹部52に挿入する。
【0076】
図8の中央及び
図9に示すように、相手側接続部22を端子挿入凹部52に途中まで嵌め込むと、相手側接続部22の先端部が嵌込部72に接触する。すると、
図10に示すように、嵌込部72が相手側接続部22によって押退けられるように退避移動する。これにより、相手側接続部22を端子挿入凹部52に対してさらに奥に挿入することができる。
【0077】
図8の右側及び
図11に示すように、相手側接続部22の孔22hが嵌込部72に達するまで、相手側接続部22を端子挿入凹部52に挿入すると、コイルバネ76の付勢力によって嵌込部72が進出移動する。この際、嵌込部72が底面62aに接する手前で、嵌込部72が孔22hの周縁部に接触する。これにより、嵌込部72が相手側接続部22を底面62aに向けて押え付ける。この状態では、相手側接続部22の他方主面及び連結部28の同じ側の面が、底面62aに押付けられ面接触した状態となる。なお、嵌込部72が底面62aに接した状態で、孔22hに嵌り込んでもよい。
【0078】
また、熱収縮チューブ18Bのうち相手側接続部22側の端部であって基部60側の部分は、せき止め部55に接触した状態となるまで、端子挿入支持部50に押込まれる。この際、熱収縮チューブ18Bのうち相手側接続部22側の端部であって蓋部66側の部分を、押付部56の内側に配設し、当該押付部56が熱収縮チューブ18Bの端部を端子20に向けて押付けるようにする。
【0079】
なお、相手側接続部22を端子挿入凹部52に挿入する際、電線12は、電線保持溝部82に嵌め込まれその長手方向に沿って移動可能であるため、相手側接続部22の挿入作業を容易に行える。
【0080】
この状態で、熱収縮チューブ18Bを、加熱装置100によって加熱し、熱収縮させる。熱収縮チューブ18Bが熱収縮すると、接続部11の外形に応じた形状に熱収縮する。熱収縮チューブ18B内のホットメルト19は、加熱装置100の熱によって軟化又は溶融し、接続部11と熱収縮チューブ18との隙間を埋めると共に、余剰分が熱収縮チューブ18の端部から流れ出ようとする。
【0081】
熱収縮チューブ18のうち端子挿入支持部50側の端部では、当該端部の一部は、せき止め部55に接触している。しかも、せき止め部55は、連結部28の他方主面にも接触している。このため、その部分では、余剰分のホットメルト19は相手側接続部22に流れ込み難い。
【0082】
また、熱収縮チューブ18のうち端子挿入支持部50側の端部の他の一部は、押付部56によって端子20の連結部28に向けて押付けられているため、当該熱収縮チューブ18の端部の他の一部と端子20との間が塞がれている。このため、この部分でも、余剰分のホットメルト19は相手側接続部22に流れ込み難い。
【0083】
このため、余剰分のホットメルト19が相手側接続部22側に流れ込むことが抑制されている。なお、余剰分のホットメルト19が、熱収縮チューブ18のうち電線12側の端部から外方に流れ出る分は、機能上特に問題はない。
【0084】
なお、上記加熱を行う際、治具フレーム42を持って、加熱装置100の近くに移動させてもよいし、加熱装置100を治具フレーム42に支持された熱収縮チューブ18Bの近くに移動させてもよい。
【0085】
<効果等>
以上のように構成された端子固定治具40及び熱収縮チューブ付電線10の製造方法によると、相手側接続部22が端子挿入凹部52に挿入された状態で、熱収縮チューブ18Bの一方の端部が端子挿入凹部52の開口周縁部54の少なくとも一部であるせき止め部55に当接する。これにより、熱収縮チューブ18の内側のホットメルト19がせき止め部55によってせき止められ、相手側接続部22側に流れ込むことが抑制される。また、相手側接続部22を端子挿入凹部52に挿入すると、嵌込部72が相手側接続部22に接触して退避移動する。そして、相手側接続部22を端子挿入凹部52の奥に挿入し、相手側接続部22の孔22hが嵌込部72に対応する位置に配設されると、嵌込部72が進出し孔22hに嵌り込む。これにより、相手側接続部22を端子挿入凹部52に挿入するという簡易な作業で、端子20を容易に固定できる。
【0086】
また、嵌込部72が相手側接続部22の孔22hに嵌り込みつつ、相手側接続部22を底面62aに押付けるため、相手側接続部22をがたつきなく保持できる。もっとも、嵌込部72が相手側接続部22を底面62aに押付けることは必須ではない。嵌込部72が孔22hに嵌り込めば、端子20をある程度位置決めできるからである。
【0087】
また、せき止め部55が、連結部28の下向き面に接触した状態で、熱収縮チューブ18Bの端部に当接するため、当該せき止め部55によってホットメルト19が相手側接続部22に流れ込むことがより確実に抑制される。もっとも、端子挿入凹部52の開口の周縁部が端子20のいずれかの主面に接触しない場合でも、熱収縮チューブ18Bの端部に当接していれば、ある程度ホットメルト19が相手側接続部22に流れ込むことが抑制される。このため、端子挿入凹部52の開口の周縁部が端子20のいずれかの主面に接触していることは必須ではない。
【0088】
さらに、押付部56によって、熱収縮チューブ18Bの端部の一部を端子20の連結部28に向けて押付けているため、熱収縮チューブ18Bの位置ずれを抑制できると共に、その端部と端子20との隙間が塞がれ、ホットメルト19が漏れ出ることが抑制される。
【0089】
また、端子挿入支持部50から離れた位置で、電線12を保持しているため、端子20がより確実に一定姿勢に保たれる。
【0090】
また、端子挿入凹部52が並列状に複数形成されているため、各端子挿入凹部52に相手側接続部22を保持した状態で、複数の熱収縮チューブ18Bを一括して熱収縮させることができ、端子20に対する熱収縮チューブ18の装着を効率よく実施できる。
【0091】
{変形例}
なお、上記実施形態において、
図12に示す変形例のように、端子挿入凹部52の反対側から、熱収縮チューブ18Bの他方端部に当接する端部位置決め部材90を設けてもよい。ここでは、端部位置決め部材90は、端子挿入支持部50と同じ長さ寸法の長方形板状に形成されている。端部位置決め部材90は、熱収縮チューブ18Bの長さ寸法分、端子挿入支持部50から離れた位置で、治具フレーム42の一対の側部43間に掛渡すように、ネジS等によって固定されている。この端部位置決め部材90は、電線12の下側から熱収縮チューブ18Bの他方端部に当接して、熱収縮チューブ18Bが端子挿入支持部50から離れる方向に移動することを規制する。
【0092】
これにより、熱収縮チューブ18Bをより確実に一定位置で熱収縮させることができる。
【0093】
上記実施形態及び変形例として説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【0094】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。