(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記回転軸の軸方向に沿った前記磁石の切断面において、前記凹側面は、前記磁石の径方向外側に向かって開口する略U字状、略V字状又は略コの字状であることを特徴とする請求項1に記載の回転角度検出装置。
前記回転軸の軸方向に沿った前記磁石の切断面において、前記回転軸の軸方向の一方側に位置する前記凹側面部上の点であって前記回転軸から最も遠い位置にある点を第1点とし、前記回転軸の軸方向の他方側に位置する前記凹側面部上の点であって前記回転軸から最も遠い位置にある点を第2点とし、前記凹側面部上における前記回転軸に最も近い位置にある点を第3点としたときに、前記第1点及び前記第3点を結ぶ第1直線と、前記第2点及び前記第3点を結ぶ第2直線とのなす角度が40〜90°であることを特徴とする請求項2に記載の回転角度検出装置。
前記磁石は、前記回転軸の軸方向における前記磁石の中心点を通る、前記回転軸に直交する面を対称面とする面対称形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の回転角度検出装置。
前記磁気センサ部は、前記第1仮想平面と前記第2仮想平面との間における前記回転軸の軸方向略中央に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の回転角度検出装置。
前記磁気センサ部は、前記第1磁石及び前記第2磁石の前記第1面の外縁部よりも前記回転軸から遠い位置に設けられていることを特徴とする請求項6又は7に記載の回転角度検出装置。
前記第1磁石及び前記第2磁石は、前記回転軸の軸方向における前記各第1面間の中心点を通る、前記回転軸に直交する平面を対称面とする面対称形状であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の回転角度検出装置。
前記回転軸に直交する平面を設定し、前記第1磁石の磁化方向及び前記第2磁石の磁化方向をそれぞれ第1矢印及び第2矢印により表し、前記平面上に前記第1矢印及び前記第2矢印を投影したときに、前記平面上に前記第1矢印が投影された第1投影矢印の方向と前記第2矢印が投影された第2投影矢印の方向とは、互いに異なることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の回転角度検出装置。
前記第1投影矢印に沿った第1線分と前記第2投影矢印に沿った第2線分とのなす角度が、(180/(N+1))°又は180×N/(N+1))°(Nは1以上の整数である。)であることを特徴とする請求項10に記載の回転角度検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成を示す断面図であり、
図2は、第1の実施形態における磁石の概略構成を示す断面図である。
【0024】
図1に示すように、第1の実施形態に係る回転角度検出装置1は、シャフト5に支持・固定され、シャフト5と一体に回転する磁石2と、磁石2の回転に伴う磁場の方向の変化に基づいてセンサ信号を出力する磁気センサ部3と、磁気センサ部3により出力されたセンサ信号に基づき、回転体の回転角度を検出する回転角度検出部4(
図15参照)とを備える。
【0025】
磁石2は、シャフト5の回転軸C(軸心)に実質的に直交する第1面2Aと、第1面2Aに対向する第2面2Bと、周方向の全周に亘って連続する凹側面2Cを有し、磁石2の第1面2A及び第2面2Bの重心(中心)とシャフト5の回転軸Cとを一致させるようにして、シャフト5に支持・固定されている。なお、磁石2は、シャフト5の回転軸Cに直交する方向(第1面2A及び第2面2Bの面内方向)に磁化されている。第1の実施形態において、回転軸Cに直交する方向に磁化されている磁石2を例に挙げるが、このような態様に限定されるものではない。例えば、磁石2は、回転軸Cに直交する方向の磁化ベクトル成分を有するものであればよいが、磁石2の磁化方向が回転軸Cに実質的に直交するもの(磁化方向の回転軸Cに対する角度が90±10°程度)が好適である。
【0026】
第1の実施形態において、磁石2における凹側面2Cの形状は、シャフト5の回転軸Cを含む平面にて磁石2を切断したときの断面において、磁石2の径方向外側に向かって開口する略U字状である(
図1及び
図2(A)参照)が、このような態様に限定されるものではなく、例えば、略V字状(
図2(B)参照)、略コの字状(
図2(C)参照)であってもよい。当該形状が略U字状、略V字状又は略コの字状であることで、後述するように、当該凹側面2Cによって囲まれる空間内に回転軸Cに直交し、回転軸Cを中心とする円形の仮想平面Vfを設定したときに、当該仮想平面Vf上の所定の位置における径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θの振幅が互いに実質的に同一となる領域が形成される。仮想平面Vfは、磁石2の凹側面2Cによって囲まれる空間内を通るように任意に設定される平面である。
【0027】
磁石2の厚さT
2は、特に限定されるものではなく、例えば、5〜15mm程度に設定され得る。磁石2の厚さT
2が5mm未満であると、円形の仮想平面Vf上の所定の位置における径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θの振幅が小さくなり、回転角度の検出感度が低下してしまうおそれがあり、15mmを超えると、回転角度検出装置1の製造コストを低減させるのが困難となるおそれがある。
【0028】
図2に示すように、第1の実施形態における磁石2は、第1面2Aを含む第1大径部21と、第2面2Bを含む第2大径部22と、凹側面2C及び最小径部2
MIN(凹側面2C上におけるシャフト5に最も近い部分)を含み、第1大径部21及び第2大径部22の間に位置する小径部23とにより構成される。
【0029】
図3(A)〜(C)に示すように、回転軸Cを含む平面にて磁石2を切断したときの断面において、回転軸Cの軸方向の一方側(磁石2の第1面2A側,
図3(A)〜(C)中の上側)に位置する凹側面2C上の点であって、回転軸Cから最も遠い位置にある点を第1点P1とし、回転軸Cの軸方向の他方側(磁石2の第2面2B側,
図3(A)〜(C)中の下側)に位置する凹側面2C上の点であって、回転軸Cから最も遠い位置にある点を第2点P2とする。そして、凹側面2C上における回転軸Cに最も近い位置にある点を第3点P3とする。なお、磁石2の凹側面2Cが略コの字状である場合(
図3(C)参照)、第3点P3は、凹側面2Cのうちの回転軸Cに略平行な側面2Ca上における回転軸Cの軸方向の中央に位置する点である。
【0030】
このとき、第1点P1及び第3点P3を結ぶ第1直線L1と、第2点P2及び第3点P3を結ぶ第2直線L2とのなす角度θ
12は、40〜90°であるのが好ましい。当該角度θ
12が40°未満であると、凹側面2Cによって囲まれる空間内における径方向の磁場強度H
rの振幅と周方向の磁場強度H
θの振幅とに差異が生じ、回転角度の検出誤差が大きくなるおそれがある。当該角度θ
12が90°を超えると、凹側面2C近傍の磁性体に由来する径方向の磁場強度H
rが強くなり、径方向の磁場強度H
rの振幅と周方向の磁場強度H
θの振幅とに差異が生じるおそれがある。また、磁石2の体積が大きくなってしまい、製造コストの増大を招くおそれがある。一方、角度θ
12が上記範囲内であれば、円形の仮想平面Vf上の所定の位置における径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θの振幅を互いに実質的に同一にすることができる。なお、最小径部2
MINの直径D
MINは、例えば、10〜20mm程度に、最大径部2
MAXの直径D
MAXは、例えば、10〜50mm程度に設定され得る。
【0031】
図2に示すように、第1の実施形態における磁石2は、シャフト5の回転軸Cの軸方向における磁石2の中心点(シャフト5の回転軸Cの軸方向における第1面2Aと第2面2Bとの間の中間点)Cpを通る、回転軸Cに直交する面Sfを対称面とする面対称形状である。磁石2がこのような面対称形状であることで、断面略U字形状、略V字状、略コの字状の凹側面2Cにて囲まれる空間内に、円形の仮想平面Vf上の所定の位置における径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θの振幅が互いに実質的に同一となる領域を形成することができる。
【0032】
なお、第1の実施形態における磁石2は、
図1及び
図2に示す態様に限定されるものではない。例えば、第1大径部21及び第2大径部22が、それぞれ磁石2の最外縁部よりも磁石2の径方向内側の位置から又は当該最外縁部から第1面2A側及び第2面2B側に向けて傾斜面2D,2Eを介して傾斜しながら突出する構造であってもよい(
図4〜5,
図7〜8参照)。また、第1大径部21及び第2大径部22が、厚さを実質的に有しない構造であってもよい(
図6参照)。
【0033】
第1の実施形態における磁気センサ部3は、円形の仮想平面Vf上の所定の位置における径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θの振幅が互いに実質的に同一である位置に設けられている。なお、本実施形態においては、
図9(A)に示すように、径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θを検出可能な1個の磁気センサ部3を備える態様を例に挙げるが、この態様に限定されるものではない。例えば、
図9(B)及び(C)に示すように、シャフト5の回転軸Cを中心として90°の間隔で配置されてなる2個の磁気センサ部3を備えていてもよい。この場合において、2個の磁気センサ部3のそれぞれが径方向の磁場強度H
rを検出するものであってもよいし(
図9(B)参照)、周方向の磁場強度H
θを検出するものであってもよい(
図9(C)参照)。また、複数の磁気センサ部3が設けられる場合において、複数の磁気センサ部3のうちの少なくとも2つは、シャフト5の回転軸Cを中心として実質的に(180/M)°(Mは2以上の整数、好ましくは2〜5の整数である。)の間隔で設けられていればよい。磁気センサ部3から出力される信号には、M次の高周波誤差成分が含まれるが、回転軸Cを中心とした(180/M)°の間隔で磁気センサ部3が設けられることで、当該M次の高周波誤差成分を除去することができるため、回転角度の検出誤差をより低減することができる
【0034】
第1の実施形態において、磁石2の凹側面2Cによって囲まれる空間内において、円形の仮想平面Vf上における径方向の磁場強度H
rは、磁石2の第1面2Aを含む第1大径部21により生成される径方向の磁場M
r21と、第2面2Bを含む第2大径部22により生成される径方向の磁場M
r22と、最小径部2
MINを含む小径部23により生成される径方向の磁場M
r23との和として扱うことができる。また、周方向の磁場強度H
θは、第1大径部21により生成される周方向の磁場M
θ21と、第2大径部22により生成される周方向の磁場M
θ22と、小径部23により生成される周方向の磁場M
θ23との和として扱うことができる(
図10参照)。
【0035】
第1の実施形態のように磁石2の面内方向に磁化されている場合、円形の仮想平面Vf上における径方向の磁場強度H
rの大きさ、N極側端部NP近傍及びS極側端部SP近傍のそれぞれにおいて最大になり、N極側端部NP及びS極側端部SPのそれぞれからシャフト5を中心に90°回転した位置において最小になる。一方、周方向の磁場強度H
θの大きさ、N極側端部NP及びS極側端部SPのそれぞれからシャフト5を中心に90°回転した位置において最大になり、N極側端部NP近傍及びS極側端部SP近傍のそれぞれにおいて最小になる。
【0036】
第1の実施形態において、N極側端部NP及びS極側端部SPのそれぞれにおける、第1大径部21及び第2大径部22により生成される径方向の磁場M
r21,M
r22の方向は磁石2の磁化方向DMと反平行であるが、小径部23により生成される径方向の磁場M
r23の方向は磁石2の磁化方向DMと平行である。そして、小径部23により生成される径方向の磁場M
r23の大きさ(磁場強度H
r23)は、第1大径部21及び第2大径部22により生成される径方向の磁場M
r21,M
r22の大きさ(磁場強度H
r21,H
r22)よりも小さい(H
r23<H
r21,H
r22)。なお、
図10において、各磁場M
r21,M
r22,M
r23,M
θ21,M
θ22,M
θ23の大きさ(磁場強度H
r21,H
r22,H
r23,H
θ21,H
θ22,H
θ23)は、矢印の長さにより表されている。
【0037】
一方、N極側端部NP及びS極側端部SPからシャフト5を中心に90°回転した位置における第1大径部21及び第2大径部22により生成される周方向の磁場M
θ21,M
θ22の方向、並びに小径部23により生成される周方向の磁場M
θ23の方向は、ともに磁石2の磁化方向DMと反平行であって、各磁場M
θ21,M
θ22,M
θ23の大きさ(磁場強度H
θ21,H
θ22,H
θ23)は、N極側端部NP及びS極側端部SPにおける第1大径部21及び第2大径部22、並びに小径部23により生成される径方向の磁場M
r21,M
r22,M
r23の大きさ(磁場強度H
r21,H
r22,H
r23)よりも小さい(H
r21>H
θ21,H
r22>H
θ22,H
r23>H
θ23)。これにより、径方向の磁場強度H
rの振幅と、周方向の磁場強度H
θの振幅とは、実質的に同一となる。
【0038】
上述したように、第1の実施形態における磁石2の凹側面2Cによって囲まれる空間においては、円形の仮想平面Vf上の所定の位置における径方向及び周方向の磁場強度H
r,H
θの振幅が互いに実質的に同一となる領域(磁気センサ配置可能領域6)が生成される(
図11(A)及び(B)参照)。特に、磁石2の中心点Cpを通る、シャフト5の回転軸Cに直交する面Sf(対称面)上において、径方向及び周方向の磁場強度H
r,H
θの振幅がより一致する。したがって、この磁気センサ配置可能領域6に磁気センサ部3を設けることで、円形の仮想平面Vf上の所定の位置における径方向の磁場強度H
rの振幅と、周方向の磁場強度H
θの振幅とを実質的に同一にすることができるため(
図12参照)、第1の実施形態に係る回転角度検出装置1による回転角度の検出誤差を低減することができる。
【0039】
第1の実施形態における磁気センサ部3は、少なくとも1つの磁気検出素子を含む。磁気センサ部3は、少なくとも1つの磁気検出素子として、直列に接続された一対の磁気検出素子を含んでいてもよい。この場合において、磁気センサ部3は、直列に接続された第1の一対の磁気検出素子と、直列に接続された第2の一対の磁気検出素子とを含む、第1及び第2の検出回路を有する。
【0040】
図13に示すように、磁気センサ部3が有する第1の検出回路31は、電源ポートV1と、グランドポートG1と、2つの出力ポートE11,E12と、第1のホイートストンブリッジ回路311とを有する。第1のホイートストンブリッジ回路311は、直列に接続された第1の一対の磁気検出素子R11,R12を含む第1の信号生成部31Aと、直列に接続された第2の一対の磁気検出素子R13,R14を含む第2の信号生成部31Bとを有する。磁気検出素子R11,R13の接続点J12は電源ポートV1に接続されている。磁気検出素子R11,R12の接続点J11は出力ポートE11に接続されている。磁気検出素子R13,R14の接続点J14は出力ポートE12に接続されている。磁気検出素子R12,R14の接続点J13はグランドポートG1に接続されている。電源ポートV1には、所定の大きさの電源電圧が印加され、グランドポートG1はグランドに接続される。第1の信号生成部31Aにより生成された第1の信号S1が出力ポートE11から出力され、第2の信号生成部31Bにより生成された第2の信号S2が出力ポートE12から出力される。
【0041】
また、磁気センサ部3が有する第2の検出回路32は、電源ポートV2と、グランドポートG2と、2つの出力ポートE21,E22と、第2のホイートストンブリッジ回路312とを有する。第2のホイートストンブリッジ回路312は、直列に接続された第3の一対の磁気検出素子R21,R22を含む第3の信号生成部32Aと、直列に接続された第4の一対の磁気検出素子R23,R24を含む第4の信号生成部32Bとを有する。磁気検出素子R21,R23の接続点J22は電源ポートV2に接続されている。磁気検出素子R21,R22の接続点J21は出力ポートE21に接続されている。磁気検出素子R23,R24の接続点J24は出力ポートE22に接続されている。磁気検出素子R22,R24の接続点J23はグランドポートG2に接続されている。電源ポートV2には、所定の大きさの電源電圧が印加され、グランドポートG2はグランドに接続される。第3の信号生成部32Aにより生成された第3の信号S3が出力ポートE21から出力され、第4の信号生成部32Bにより生成された第4の信号S4が出力ポートE22から出力される。
【0042】
第1の実施形態において、第1及び第2の検出回路31,32に含まれるすべての磁気検出素子R11〜R14,R21〜R24として、TMR素子、GMR素子、AMR素子等の磁気抵抗効果素子(MR素子)を用いることができ、特にTMR素子を用いるのが好ましい。TMR素子及びGMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、印加される磁界の方向に応じて磁化方向が変化する自由層と、磁化固定層及び自由層の間に配置される非磁性層とを有する。
【0043】
具体的には、
図14に示すように、TMR素子及びGMR素子は、複数の下部電極61と、複数のMR膜50と、複数の上部電極62とを有する。複数の下部電極61は、基板(図示せず)上に設けられている。各下部電極61は細長い形状を有する。下部電極61の長手方向に隣接する2つの下部電極61の間には、間隙が形成されている。下部電極61の上面における、長手方向の両端近傍にそれぞれMR膜50が設けられている。MR膜50は、下部電極61側から順に積層された自由層51、非磁性層52、磁化固定層53及び反強磁性層54を含む。自由層51は、下部電極61に電気的に接続されている。反強磁性層54は、反強磁性材料により構成され、磁化固定層53との間で交換結合を生じさせることで、磁化固定層53の磁化の方向を固定する役割を果たす。複数の上部電極62は、複数のMR膜50上に設けられている。各上部電極62は細長い形状を有し、下部電極61の長手方向に隣接する2つの下部電極61上に配置され、隣接する2つのMR膜50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。なお、MR膜50は、上部電極62側から順に自由層51、非磁性層52、磁化固定層53及び反強磁性層54が積層されてなる構成を有していてもよい。
【0044】
TMR素子においては、非磁性層52はトンネルバリア層である。GMR素子においては、非磁性層52は非磁性導電層である。TMR素子、GMR素子において、自由層51の磁化の方向が磁化固定層53の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°(互いの磁化方向が平行)のときに抵抗値が最小となり、180°(互いの磁化方向が反平行)のときに抵抗値が最大となる。
【0045】
図13において、磁気検出素子R11〜R14の磁化固定層の磁化方向を塗りつぶした矢印で表す。第1の検出回路31において、磁気検出素子R11,R14の磁化固定層53の磁化方向と、磁気検出素子R12,R13の磁化固定層53の磁化方向とは、互いに反平行方向であり、磁石2の径方向に直交する。
【0046】
第1の信号生成部31Aにおいて、磁石2の回転により径方向の磁場強度H
rが変化すると、それに応じて磁気検出素子R11,R12の自由層51の磁化方向が変化し、当該自由層51の磁化方向と磁化固定層53の磁化方向との相対角度に基づいて、接続点J11の電位が変化する。また、第2の信号生成部31Bにおいても同様に、磁気検出素子R13,R14の自由層51の磁化方向と磁化固定層53の磁化方向との相対角度に基づいて、接続点J14の電位が変化する。したがって、第1の信号生成部31Aは、径方向の磁場強度H
rに対応した第1の信号S1を生成し、第1の信号S1は出力ポートE11から出力される。第2の信号生成部31Bは、径方向の磁場強度H
rに対応した第2の信号S2を生成し、第2の信号S2は出力ポートE12から出力される。
【0047】
同様に、
図13において、磁気検出素子R21〜R24の磁化固定層の磁化方向を塗りつぶした矢印で表す。第2の検出回路32において、磁気検出素子R21,R24の磁化固定層53の磁化方向と、磁気検出素子R22,R23の磁化固定層53の磁化方向とは、互いに反平行方向であり、磁石2の磁化方向DMに平行である。
【0048】
第3の信号生成部32Aにおいて、磁石2の回転により周方向の磁場強度H
θが変化すると、それに応じて磁気検出素子R21,R22の自由層51の磁化方向が変化し、当該自由層51の磁化方向と磁化固定層53の磁化方向との相対角度に基づいて、接続点J21の電位が変化する。また、第4の信号生成部32Bにおいても同様に、磁気検出素子R23,R24の自由層51の磁化方向と磁化固定層53の磁化方向との相対角度に基づいて、接続点J24の電位が変化する。したがって、第3の信号生成部32Aは、磁石2の周方向の磁場強度H
θに対応した第3の信号S3を生成し、第3の信号S3は出力ポートE21から出力される。第4の信号生成部32Bは、磁石2の周方向の磁場強度H
θに対応した第4の信号S4を生成し、第4の信号S4は出力ポートE22から出力される。
【0049】
第1の実施形態における回転角度検出部4は、
図15に示すように、第1の演算回路41と、第2の演算回路42と、第3の演算回路43とを有し、第1〜第4の信号S1〜S4に基づいて、回転角度検出値θsを生成する。
【0050】
第1の演算回路41の2つの入力端には、それぞれ出力ポートE11,E12が接続されている。第2の演算回路42の2つの入力端には、それぞれ出力ポートE21,E22が接続されている。第3の演算回路43の2つの入力端には、それぞれ第1及び第2の演算回路41,42の各出力端が接続されている。
【0051】
第1の演算回路41は、第1及び第2の信号S1,S2に基づき、第1の演算後信号Sa1を生成する。第2の演算回路42は、第3及び第4の信号S3,S4に基づき、第2の演算後信号Sa2を生成する。第3の演算回路43は、第1及び第2の演算後信号Sa1,Sa2に基づき、回転角度検出値θsを算出する。
【0052】
第1の演算後信号Sa1は、第1の信号S1と第2の信号S2との差分(S1−S2)を求める演算によって生成される。第2の演算後信号Sa2は、第3の信号S3と第4の信号S4との差分(S3−S4)を求める演算によって生成される。
【0053】
第3の演算回路43は、正規化回路N1〜N4と、加算回路43Aと、減算回路43Bと、演算部43Cとを有する。正規化回路N1〜N4は、それぞれ入力端と出力端とを有する。加算回路43A、減算回路43B及び演算部43Cは、それぞれ2つの入力端と1つの出力端とを有する。
【0054】
正規化回路N1の入力端には、第1演算回路41の出力端が接続されている。正規化回路N2の入力端には、第2演算回路42の出力端が接続されている。加算回路43Aの2つの入力端には、それぞれ正規化回路N1,N2の各出力端が接続されている。減算回路43Bの2つの入力端には、それぞれ正規化回路N1,N2の各出力端が接続されている。正規化回路N3の入力端には、加算回路43Aの出力端が接続され、正規化回路N4の入力端には、減算回路43Bの出力端が接続されている。演算部43Cの2つの入力端には、それぞれ正規化回路N3,N4の各出力端が接続されている。
【0055】
正規化回路N1は、第1の演算後信号Sa1を正規化した値を加算回路43A及び減算回路43Bに出力する。正規化回路N2は、第2の演算後信号Sa2を正規化した値を加算回路43A及び減算回路43Bに出力する。正規化回路N1,N2は、例えば、第1及び第2の演算後信号Sa1,Sa2の最大値がともに1になり、最小値がともに−1になるように、第1及び第2の演算後信号Sa1,Sa2を正規化する。本実施形態において、第1の演算後信号Sa1を正規化した値は、sin(θ+π/4)となり、第2の演算後信号Sa2を正規化した値は、sin(θ−π/4)となる。なお、θは、接続点J12,14を結ぶ線分と外部磁場とのなす角度である。
【0056】
加算回路43Aは、第1の演算後信号Sa1を正規化した値と第2の演算後信号Sa2を正規化した値との和を求める演算を行い、加算信号S11を生成する。減算回路43Bは、第1の演算後信号Sa1を正規化した値と第2の演算後信号Sa2を正規化した値との差を求める演算を行い、減算信号S12を生成する。加算信号S11及び減算信号S12は、下記式により表される。
【0057】
S11=sin(θ−π/4)+sin(θ+π/4)
=2sinθ・cos(−π/4)
=1.41sinθ
S12=sin(θ+π/4)−sin(θ−π/4)
=2cosθ・sin(π/4)
=1.41cosθ
【0058】
正規化回路N3は、加算信号S11を正規化した値S21を演算部43Cに出力する。正規化回路N4は、減算信号S12を正規化した値S22を演算部43Cに出力する。正規化回路N3,N4は、例えば、加算信号S11及び減算信号S12の最大値がともに1になり、最小値がともに−1になるように、加算信号S11及び減算信号S12を正規化する。本実施形態において、加算信号S11を正規化した値S21はsinθとなり、減算信号S12を正規化した値S22はcosθとなる。
【0059】
演算部43Cは、値S21,S22に基づいて、角度θと対応関係を有する回転角度検出値θsを算出する。例えば、演算部43Cは、下記式により、回転角度検出値θsを算出する。
θs=arctan(S21/S22)
【0060】
回転角度検出値θsが0°以上360°未満の範囲内において、上記式による回転角度検出値θsの解には、180°異なる2つの値がある。しかし、値S21,S22の正負の組み合わせにより、回転角度検出値θsの真の値が、2つの解のいずれであるかを判別することができる。すなわち、値S21が正の値のとき、回転角度検出値θsは0°よりも大きく180°よりも小さい。値S21が負の値のとき、回転角度検出値θsは180°よりも大きく360°よりも小さい。値S22が正の値のとき、回転角度検出値θsは0°以上90°未満、及び270°より大きく360°以下の範囲内である。値S22が負の値のとき、回転角度検出値θsは90°よりも大きく270°よりも小さい。演算部43Cは、上記式により求めた回転角度検出値θsと、値S21,S22の正負の組み合わせとにより、0°以上360°未満の範囲内で回転角度検出値θsの真の値を求めることができる。
【0061】
上述したように、第1の実施形態に係る回転角度検出装置1においては、磁石2の凹側面2Cによって囲まれる空間内において、径方向及び周方向の磁場強度H
r,H
θの振幅が実質的に同一となる領域(磁気センサ配置可能領域6)が形成される。そして、この磁気センサ配置可能領域6に磁気センサ部3が設けられているため、回転角度の検出誤差を低減することができる。また、径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θにより回転角度を算出するように構成され、磁気センサ配置可能領域6が磁気センサ部3に比して十分に大きいため、シャフト5の軸ブレによる回転角度の検出誤差が生じるのを抑制することができる。さらに、径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θにより回転角度検出値θsが算出されるため、磁石2の体積を低減することも可能となる。
【0062】
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図16は、第2の実施形態に係る回転角度検出装置の概略構成を示す断面図であり、
図17は、第2の実施形態における磁石の要部を示す部分拡大側面図である。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
【0063】
図16に示すように、第2の実施形態に係る回転角度検出装置1’は、シャフト5に支持・固定され、シャフト5と一体に回転する第1磁石21’及び第2磁石22’と、第1磁石21’及び第2磁石22’の回転に伴う磁場の変化に基づいてセンサ信号を出力する磁気センサ部3と、磁気センサ部3により出力されたセンサ信号に基づき、回転体の回転角度を検出する回転角度検出部4(
図15参照)とを備える。
【0064】
第1磁石21’は、シャフト5の回転軸C(軸心)に実質的に直交する第1面21A’と、第1面21A’に対向する第2面21B’とを有し、シャフト5の回転軸Cの軸方向に沿って見たときに第1面21A’及び第2面21B’は略円形状であり、第1面21A’は第2面21B’を物理的に包含する大きさである。
【0065】
第2磁石22’は、シャフト5の回転軸C(軸心)に実質的に直交する第1面22A’と、第1面22A’に対向する第2面22B’とを有し、シャフト5の回転軸Cの軸方向に沿って見たときに第1面22A’及び第2面22B’は略円形状であり、第1面22A’は第2面22B’を物理的に包含する大きさである。
【0066】
第1磁石21’及び第2磁石22’は、それぞれの第1面21A’,22A’及び第2面21B’22B’の重心(中心)とシャフト5の回転軸Cとを一致させ、かつ各第1面21A’,22A’を、所定の間隔を空けて対向させるようにして、シャフト5に支持・固定されている。
【0067】
第1磁石21’及び第2磁石22’は、シャフト5の回転軸Cに直交する方向(第1面21A’,22A’及び第2面21B’,22B’の面内方向)に磁化されている。なお、第2の実施形態において、回転軸Cに直交する方向に磁化されている第1磁石21’及び第2磁石22’を例に挙げるが、このような態様に限定されるものではない。例えば、第1磁石21’及び第2磁石22’は、回転軸Cに直交する方向の磁化ベクトル成分を有するものであればよいが、第1磁石21’及び第2磁石22’の磁化方向が回転軸Cに実質的に直交するもの(磁化方向の回転軸Cに対する角度が90±10°程度)が好適である。
【0068】
回転軸Cに直交する平面を設定し、第1磁石21’の磁化方向を表す第1矢印DM
21'と第2磁石22’の磁化方向を表す第2矢印DM
22'とを当該平面上に投影したときに、当該平面上に投影された第1矢印DM
21'の方向と第2矢印DM
22'の方向とは、互いに同一であってもよいが、
図18に示すように、互いに異なるのがより好ましく、当該平面上に投影された第1矢印DM
21'に沿った第1線分と第2矢印DM
22'に沿った第2線分とのなす角度θ
DM(回転軸Cに平行な方向から見たときの角度)は、好適には(180/(N+1))°又は(180×N/(N+1))°(Nは1以上の整数である。)である。磁気センサ部3にかかる径方向の磁場M
rと周方向の磁場M
θとから、磁気センサ部3にかかる磁場角度θ
Mは、式「θ
M=arctan(M
θ/M
r)」により定義される。そして、シャフト5に設けられた第1及び第2磁石21’,22’の回転角度θと磁場角度θ
Mとが同一であることが、回転角度検出装置1において理想的である。しかし、実際には、第1及び第2磁石21’,22’による各磁場の高次成分の影響により、磁気センサ部3にかかる磁場(M
r、M
θ)に歪みが生じ、磁気センサ部3により検出される回転角度に誤差が生じてしまう。しかしながら、上記平面上に投影された第1矢印DM
21'に沿った第1線分と第2矢印DM
22'に沿った第2線分とが所定の角度θ
DMを形成していることで、第1及び第2磁石21’,22’による磁場の高次成分を相互に打ち消すことができるため、磁気センサ部3により検出される回転角度誤差を低減することができる。
【0069】
第2の実施形態における第1磁石21’及び第2磁石22’は、第1面21A’,22A’を有する基部211’,221’と、第2面21B’,22B’を有し、基部211’,221’から第2面21B’,22B’側に向けて突出する凸部212’,222’とを有する。基部211’,221’は、第1面21A’,22A’の外周縁部21E’,22E’に連続し、シャフト5の回転軸Cに実質的に平行な側面21C’,22C’(
図17参照)を有する。凸部212’,222’は、基部211’,221’の側面21C’,22C’よりも第1磁石21’及び第2磁石22’の径方向内方の位置P
21',P
22'(
図17参照)から第2面21B’,22B’側に向けて突出しており、第1磁石21’及び第2磁石22’の径方向内方に所定の角度θ
21D',θ
22D'で傾斜する傾斜側面21D’,22D’を有する。
【0070】
第1磁石21’及び第2磁石22’の基部211’,221’の厚さT
211',T
221'は、特に限定されるものではなく、例えば、1〜4mm程度に設定され得る。凸部212’,222’の厚さT
212',T
222'もまた、特に限定されるものではなく、例えば、1〜4mm程度に設定され得る。
【0071】
第1磁石21’及び第2磁石22’の第2面21B’,22B’の直径D
21B',D
22B'と第1面21B’,22B’の直径D
21B',D
22B'との比は、1:2以上であるのが好ましい。それらの比が上記範囲内であれば、第1磁石21’及び第2磁石22’の回転に伴って磁気センサ部3により検出される、径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θの振幅を互いに実質的に同一にすることができる。なお、第2面21B’,22B’の直径D
21B',D
22B'は、例えば、8〜20mm程度に、第1面21A’,22A’の直径D
21A',D
22A'は、例えば、16〜40mm程度に設定され得る。
【0072】
基部211’,221’の側面21C’,22C’から凸部212’,222’の傾斜側面21D’,22D’の立ち上がり位置(第1磁石21’及び第2磁石22’の径方向内方の位置P
21',P
22')までの長さL
21',L
22'(第1磁石21’及び第2磁石22’の径方向に沿った長さ)は、例えば、8mm以下程度、好ましくは1〜4mm程度に設定され得る。
【0073】
第2の実施形態の第1磁石21’及び第2磁石22’において、基部211’,221’の体積V
211',V
221'と凸部212’,222’の体積V
212',V
222'との比(V
211':V
212',V
221':V
222')が、1: 0.2以上であるのが好ましく、1:0.2〜5であるのがより好ましく、1:0.2〜1であるのが特に好ましい。当該体積比(V
211':V
212',V
221':V
222')が上記範囲内であれば、凸部212’,222’外周円の直径D
21B',D
22B'と基部211’,221’外周円の直径D
21A',D
22A'との間に、径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θの振幅を互いに実質的に同一とする領域が生成される。
【0074】
第2の実施形態における第1磁石21’及び第2磁石22’は、シャフト5の回転軸Cの軸方向における第1面21A’,22A’間の中心点Cp’を通る、回転軸Cに直交する面Sf’を対称面とする面対称形状である(
図16参照)。第1磁石21’及び第2磁石22’がこのような面対称形状であることで、第1面21A’を含む第1仮想平面VF1(
図23参照)と第1面22A’を含む第2仮想平面VF2(
図23参照)とによって挟まれる空間内に、回転軸Cに直交し、回転軸Cを中心とする円形の第3仮想平面VF3を設定したときに、当該第3仮想平面VF3上の所定の位置における径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θの振幅が互いに実質的に同一となる領域を形成することができる。
【0075】
なお、第2の実施形態における第1磁石21’及び第2磁石22’は、
図16及び
図17に示す態様に限定されるものではない。例えば、
図19に示すように、第1磁石21’及び第2磁石22’は、第1面21A’,22A’の外周縁部に連続する側面21C’,22C’を含む基部211’,221’と、側面21C’,22C’の上端に連続する傾斜側面21D’,22D’及び第2面21B’,22B’を含む凸部212’,222’とを有する態様であってもよい。また、
図20に示すように、第1磁石21’及び第2磁石22’は、第1面21A’,22A’を含む基部211’,221’と、第1面21A’,22A’の外周縁部に連続する傾斜側面21D’22D’及び第2面21B’,22B’を含む凸部212’222’とを有する、断面略台形状の態様であってもよい。さらに、
図21に示すように、第1磁石21’及び第2磁石22’は、第1面21A’,22A’及び第1面21A’,22A’の外周縁部に連続する側面21C’,22C’を含む基部211’,221’と、側面21C’,22C’よりも第1磁石21’及び第2磁石22’の径方向内方の位置からシャフト5の回転軸Cに実質的に平行な方向に立ち上がる側面及び第2面21B’,22B’を含む凸部212’,222’とを有する、断面略階段形状の態様であってもよい。さらにまた、
図22に示すように、第1磁石21’及び第2磁石22’は、第1面21A’及びそれに対向する第2面21B’を有する、略円板状の態様であってもよい。
【0076】
第2の実施形態における磁気センサ部3は、第1磁石21’及び第2磁石22’の回転に伴って磁気センサ部3により検出される、径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θの振幅が互いに実質的に同一である位置に設けられている。
【0077】
図23(A)及び(B)に示すように、第2の実施形態における第1磁石21’の第1面21A’を含む第1仮想平面VF1と第2磁石22’の第1面22A’を含む第2仮想平面VF2とによって挟まれた空間内においては、当該空間内に回転軸Cに直交し、回転軸Cを中心とする円形の第3仮想平面VF3を設定したときに、第3仮想平面VF3上の所定の位置における径方向及び周方向の磁場強度H
r,H
θの振幅が互いに実質的に同一となる領域(磁気センサ配置可能領域6’)が生成される。
【0078】
この磁気センサ配置可能領域6’は、第1磁石21’及び第2磁石22’の側面21C’,22C’よりも径方向内側の位置と、側面21C’,22C’よりも径方向外側の位置との間に生成される。より具体的には、径方向内側の位置は、側面21C’,22C’から径方向に沿って1〜15mm程度の位置であり、径方向外側の位置は、側面21C’,22C’から径方向に沿って1〜5mm程度の位置である。
【0079】
第2の実施形態においては、この磁気センサ配置可能領域6’に磁気センサ部3を設けることで、円形の第3仮想平面VF3上の所定の位置における磁場強度H
rの振幅と、周方向の磁場強度H
θの振幅とを実質的に同一にすることができるため(
図12参照)、第2の実施形態に係る回転角度検出装置1による回転角度の検出誤差を低減することができる。
【0080】
特に好ましくは、磁気センサ配置可能領域6’のうち、第1磁石21’及び第2磁石22’の側面21C’,22C’よりも径方向外側の領域に磁気センサ部3が設けられる。すなわち、磁気センサ部3は、第1磁石21’及び第2磁石22’により挟まれない。磁気センサ部3がこのような位置に設けられることで、回転角度検出装置1による回転角度の検出誤差を効果的に低減することができる。
【0081】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0082】
例えば、第1及び第2の実施形態において、磁気センサ部3は、径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θのいずれか一方と、シャフト5の回転軸Cに沿った方向の磁場強度H
zとを検出し、径方向の磁場強度H
r及び周方向の磁場強度H
θのいずれか一方と、シャフト5の回転軸Cに沿った方向の磁場強度H
zとに基づいて、回転角度検出部4により回転角度検出値θsが算出されてもよい。
【実施例】
【0083】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0084】
〔実施例1〕
図1、
図2(A)及び
図3(A)に示す構成を有する回転角度検出装置1において、磁石2の磁場分布及びそれに基づく角度誤差分布を、有限要素法(FEM)を用いたシミュレーションにより求めた。なお、磁石2の厚さT
2を10mm、第1直線L1と第2直線L2とのなす角度θ
12を50°とした。結果を
図24に示す。
【0085】
〔実施例2〕
第1直線L1と第2直線L2とのなす角度θ
12を90°とした以外は、実施例1と同様にして磁石2の磁場分布及びそれに基づく角度誤差分布をシミュレーションにより求めた。結果を
図25に示す。
【0086】
〔実施例3〕
磁石2の厚さT
2を8mmとし、第1直線L1と第2直線L2とのなす角度θ
12を40°とした以外は、実施例1と同様にして磁石2の磁場分布及びそれに基づく角度誤差分布をシミュレーションにより求めた。結果を
図26に示す。
【0087】
〔実施例4〕
図16及び
図17に示す構成を有する第1磁石21’及び第2磁石22’を用い、第1磁石21’及び第2磁石22’における基部211’,221’の厚さT
211',T
221'を2.25mm、凸部212’,222’の厚さT
212',T
222'を2.75mm、側面21C’,22C’から立ち上がり位置P
21',P
22'までの長さL
21',L
22'を2.0mm、第1面21A’22A’の直径D
21A',D
22A'を28mm、第2面21B’,D22B’の直径D
21B',D
22B'を12mm、傾斜側面21D’,22D’の傾斜角度θ
21D',θ
22D'を25°、体積を1.86cm
3(基部211’,221’と凸部212’,222’との体積比(V
211':V
212',v
221':V
222')=1:0.46)、第1磁石21’の磁化方向DM21’と第2磁石22’の磁化方向DM22’を平行とした以外は、実施例1と同様にして、第1及び第2磁石21’,22’による磁場分布及びそれに基づく角度誤差分布をシミュレーションにより求めた。結果を
図27に示す。
【0088】
〔実施例5〕
図22に示す構成を有する第1磁石21’及び第2磁石22’を用い、第1磁石21’及び第2磁石22’の厚さを3mm、第1面21A’,22A’及び第2面21B’,22B’の直径D
21A',D
22A',D
21B',D
22B'を28mm、第1磁石21’の磁化方向DM21’と第2磁石22’の磁化方向DM22’を平行とした以外は、実施例1と同様にして、第1及び第2磁石21’,22’による磁場分布及びそれに基づく角度誤差分布をシミュレーションにより求めた。結果を
図28に示す。
【0089】
〔比較例1〕
図31に示す構成を有する磁石200を用い、磁石200の厚さを3mm、第1面201及び第2面202の直径を28mmとした以外は、実施例1と同様にして、磁石200による磁場分布及びそれに基づく角度誤差分布をシミュレーションにより求めた。結果を
図29に示す。
【0090】
図24〜29は、実施例1〜5及び比較例1のシミュレーションにより求められた、磁石2,200、第1及び第2磁石21’,22’の外周縁部近傍における角度誤差分布を示す図である。
図24〜29において、磁石2,200、第1及び第2磁石21’,22’の周囲における明度の最も低い領域(濃いグレーの領域)は径方向及び周方向の磁場強度H
r,H
θが15mT未満の領域であり、明度の最も高い領域(明るい領域)は径方向及び周方向の磁場強度H
r,H
θが20mT以上の領域であり、それらの中間の明度の領域(薄いグレーの領域)は径方向及び周方向の磁場強度H
r,H
θ が15mT以上20mT未満の領域である。破線で囲まれた領域は、角度誤差が良好な領域であって、かつ磁気センサ部3により検出可能な磁場強度(磁場強度H
r,H
θ=20〜80mT)を有する領域であり、磁気センサ配置可能領域6,6’となり得る領域である。
【0091】
図24〜29に示す結果から、実施例1〜3においては、磁石2の凹側面2Cにより囲まれた空間内にて、径方向及び/又は周方向の磁場強度H
r,H
θに基づき回転角度を精確に検出可能であることが明らかとなった。
【0092】
また、実施例4〜5においては、第1磁石21’の第1面21A’を含む第1仮想平面VF1と第2磁石22’の第1面22A’を含む第2仮想平面VF2とによって挟まれる空間内にて、径方向及び/又は周方向の磁場強度H
r,H
θに基づき回転角度を精確に検出可能であることが明らかとなった。また、比較例1の結果と対比すると、実施例3においては、径方向及び/又は周方向の磁場強度H
r,H
θに基づき回転角度を精確に検出可能な領域(磁気センサ配置可能領域6’)が大きくなることが確認された。
【0093】
〔試験例1〕
実施例4において、回転軸Cに直交する平面を設定し、第1磁石21’の磁化方向を表す第1矢印DM
21'と第2磁石22’の磁化方向を表す第2矢印DM
22'とを当該平面上に投影したときにおける当該平面上に投影された第1矢印DM
21'に沿った第1線分と第2矢印DM
22'に沿った第2線分とのなす角度θ
DMを30〜150°の範囲内で15°間隔で変動させたときに、第1及び第2磁石21’,22’の回転角度θと、磁気センサ部3にかかる磁場角度θ
M(=arctan(M
θ/M
r))との関係をシミュレーションにより求めた。結果を
図30に示す。
【0094】
図30に示すグラフにおいて、横軸は第1及び第2磁石21’,22’の回転角度θを、縦軸は磁気センサ部3にかかる磁場角度θ
Mと回転角度θとの差分(磁場角度θ
Mの回転角度θからのずれ量)を表す。
図30に示すグラフから、回転軸Cに直交する平面を設定し、第1磁石21’の磁化方向を表す第1矢印DM
21'と第2磁石22’の磁化方向を表す第2矢印DM
22'とを当該平面上に投影したときにおける当該平面上に投影された第1矢印DM
21'に沿った第1線分と第2矢印DM
22'に沿った第2線分とのなす角度θ
DMを所定の角度にすることで、回転角度θからの磁場角度θ
Mのずれ量の振幅は極小を有することが確認された。この結果から、回転軸Cに直交する平面を設定し、第1磁石21’の磁化方向を表す第1矢印DM
21'と第2磁石22’の磁化方向を表す第2矢印DM
22'とを当該平面上に投影したときにおける当該平面上に投影された第1矢印DM
21'に沿った第1線分と第2矢印DM
22'に沿った第2線分とのなす角度θ
DMを所定の角度にすることで、磁気センサ部3による回転角度の検出誤差を低減可能であることが明らかとなった。