特許第6278096号(P6278096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6278096
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】車両用懸架装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 9/04 20060101AFI20180205BHJP
【FI】
   B60G9/04
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-225788(P2016-225788)
(22)【出願日】2016年11月21日
【審査請求日】2017年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083013
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 正明
(72)【発明者】
【氏名】西野 誠
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−244430(JP,A)
【文献】 特開2016−159770(JP,A)
【文献】 特開平11−301229(JP,A)
【文献】 特開平06−055918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と車体との間で伸縮可能に設けられたダンパと、前記ダンパの一端部を回転可能に支持する軸部材と、前記軸部材の外側に嵌合された筒状の弾性部材からなり前記軸部材及び前記ダンパの間に介在するブッシュとを備えた車両用懸架装置であって、
車体上下方向における車体に対する車輪のストローク位置が第1位置であるときに前記ダンパの軸心に直交する仮想の第1面と、前記ストローク位置が前記第1位置とは異なる第2位置であるときに前記ダンパの軸心に直交する仮想の第2面との交線又は該交線に平行な直線に沿って、前記ブッシュの軸心が配置されていることを特徴とする車両用懸架装置。
【請求項2】
前記第1位置は、所定の基準位置よりもバンプ側の位置であり、前記第2位置は、前記基準位置よりもリバウンド側の位置であることを特徴とする請求項1に記載の車両用懸架装置。
【請求項3】
前記第2位置は、前記ダンパが最も伸張した状態となるときのストローク位置であることを特徴とする請求項2に記載の車両用懸架装置。
【請求項4】
前記第1位置は、水平な路面上に停車された車両の前席に所定重量を有する2名の乗員が着座したときのストローク位置であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用懸架装置。
【請求項5】
前記第1位置は、前記ダンパが最も収縮した状態となるときのストローク位置であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用懸架装置。
【請求項6】
車輪を支持するナックルと、
前記ナックルに連結されて、車体前後方向に延設されたトレーリングアームと、
前記トレーリングアームの車体前方側部分を車体に連結させる連結部と、を更に備え、
前記ダンパの軸心は、車体上方側に向かって車体幅方向内側に傾斜しており、
前記ブッシュは、前記ダンパの下端部を前記トレーリングアームの車体後方側部分に連結させる軸部材に嵌合されており、
前記ブッシュの軸心は、車体幅方向内側に向かって車体前方側に傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用懸架装置。
【請求項7】
車輪を支持するナックルと、
前記ナックルに連結されて、車体前後方向に延設されたトレーリングアームと、
前記トレーリングアームの車体前方側部分を車体に連結させる連結部と、を更に備え、
前記ダンパの軸心は、車体上方側に向かって車体幅方向外側に傾斜しており、
前記ブッシュは、前記ダンパの下端部を前記トレーリングアームの車体後方側部分に連結させる軸部材に嵌合されており、
前記ブッシュの軸心は、車体幅方向内側に向かって車体後方側に傾斜していることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体と車輪との間で伸縮可能に設けられたダンパを備えた車両用懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、車両用懸架装置の伸縮式ダンパは、その下端部においてナックル等を介して車輪に連結され、上端部において車体に連結されている。そのため、車体に対して車輪が車体上下方向にストローク(バンプ又はリバウンド)すると、ダンパは、その上端部及び下端部間の相対位置の変化に応じて、姿勢(車体上下方向に対する傾斜角度)を適宜変化させながら伸縮する。
【0003】
この種のダンパは、その下端部及び上端部の一方又は両方において、ゴム等の弾性材料からなるブッシュを介して、所定の軸部材の外側に嵌合されて、該軸部材に回転可能に支持されることがある。
【0004】
この場合、車輪がバンプ又はリバウンドするとき、ブッシュの軸心周りにダンパが回動することでブッシュのねじりが生じたり、ブッシュの軸心とダンパの軸心とが交差する角度が変化することでブッシュのこじりが生じたりする。このようなねじりやこじりによるブッシュの反力によって、ダンパのフリクションが増大すると、ダンパのスムーズな作動が阻害されることで、車両の乗り心地や操縦安定性が悪化することがある。
【0005】
一般に、ブッシュのばね定数は、その軸心周りの回転方向のものに比べて、軸心に直交する方向のものが2倍程度大きいため、バンプ又はリバウンドによって生じるブッシュの反力は、ねじりによるものに比べて、こじりによるものの方が大きくなる。したがって、ダンパをスムーズに作動させるためには、ブッシュのこじりを抑制することがより効果的である。
【0006】
ブッシュのこじりは、ダンパの軸心に直交する方向に対してブッシュの軸心が傾斜して配置されているときに生じ得る。そのため、車体上下方向における車体に対する車輪のストローク位置に関わらず、ダンパの軸心に直交する方向に沿ってブッシュの軸心が配置された状態が常に維持されるように構成できれば、ブッシュのこじりを常に防止することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−301229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、車両用懸架装置の設計においては、周辺部品との関係からレイアウト上の種々の制約を受けることから、ダンパは、車体上下方向に対して傾斜して配置されることが多く、その傾斜角度は、車輪のバンプ又はリバウンドに応じて変化することになる。
【0009】
したがって、所定のストローク状態において、ダンパの軸心に直交する方向に沿ってブッシュの軸心を配置できたとしても、別のストローク状態では、ダンパの軸心に直交する方向に対してブッシュの軸心が傾斜した姿勢となってしまうため、ブッシュのこじりを常に効果的に抑制することは困難であるのが実情である。
【0010】
そこで、本発明は、車体上下方向における車体に対する車輪のストローク位置に関わらず、ダンパ端部の支持に用いられるブッシュのこじりを効果的に抑制し得る車両用懸架装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用懸架装置は次のように構成したことを特徴とする。
【0012】
本願の請求項1に記載の発明は、車輪と車体との間で伸縮可能に設けられたダンパと、前記ダンパの一端部を回転可能に支持する軸部材と、前記軸部材の外側に嵌合された筒状の弾性部材からなり前記軸部材及び前記ダンパの間に介在するブッシュとを備えた車両用懸架装置であって、
車体上下方向における車体に対する車輪のストローク位置が第1位置であるときに前記ダンパの軸心に直交する仮想の第1面と、前記ストローク位置が前記第1位置とは異なる第2位置であるときに前記ダンパの軸心に直交する仮想の第2面との交線又は該交線に平行な直線に沿って、前記ブッシュの軸心が配置されていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明に係る車両用懸架装置は、前記請求項1に記載の発明において、
前記第1位置は、所定の基準位置よりもバンプ側の位置であり、前記第2位置は、前記基準位置よりもリバウンド側の位置であることを特徴とする。
【0014】
ここでいう「基準位置」は任意に設定され得るが、例えば、水平な路面上に停車された状態において車両の積載量が所定積載量であるときのストローク位置を「基準位置」としてもよい。なお、ここでいう「所定積載量」は任意に設定され得るが、例えば、一人も乗車しておらず、荷物が全く載せられておらず、燃料が満タンであるときの車両の積載量を「所定積載量」としてもよい。
【0015】
また、本明細書でいう「バンプ側」とは、車体に対して車輪が車体上方側にストロークする側を意味し、「リバウンド側」とは、車体に対して車輪が車体下方側にストロークする側を意味する。
【0016】
請求項3に記載の発明に係る車両用懸架装置は、前記請求項2に記載の発明において、
前記第2位置は、前記ダンパが最も伸張した状態となるときのストローク位置であることを特徴とする。
【0017】
請求項4に記載の発明に係る車両用懸架装置は、前記請求項2又は請求項3に記載の発明において、
前記第1位置は、水平な路面上に停車された車両の前席に所定重量を有する2名の乗員が着座したときのストローク位置であることを特徴とする。
【0018】
請求項5に記載の発明に係る車両用懸架装置は、前記請求項2又は請求項3に記載の発明において、
前記第1位置は、前記ダンパが最も収縮した状態となるときのストローク位置であることを特徴とする。
【0019】
請求項6に記載の発明に係る車両用懸架装置は、前記請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、
車輪を支持するナックルと、
前記ナックルに連結されて、車体前後方向に延設されたトレーリングアームと、
前記トレーリングアームの車体前方側部分を車体に連結させる連結部と、を更に備え、
前記ダンパの軸心は、車体上方側に向かって車体幅方向内側に傾斜しており、
前記ブッシュは、前記ダンパの下端部を前記トレーリングアームの車体後方側部分に連結させる軸部材に嵌合されており、
前記ブッシュの軸心は、車体幅方向内側に向かって車体前方側に傾斜していることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明に係る車両用懸架装置は、前記請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の発明において、
車輪を支持するナックルと、
前記ナックルに連結されて、車体前後方向に延設されたトレーリングアームと、
前記トレーリングアームの車体前方側部分を車体に連結させる連結部と、を更に備え、
前記ダンパの軸心は、車体上方側に向かって車体幅方向外側に傾斜しており、
前記ブッシュは、前記ダンパの下端部を前記トレーリングアームの車体後方側部分に連結させる軸部材に嵌合されており、
前記ブッシュの軸心は、車体幅方向内側に向かって車体後方側に傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、車体上下方向における車体に対する車輪のストローク位置が第1位置であるとき、及び、第2位置であるときのいずれにおいても、ブッシュの軸心に対してダンパの軸心が直角に配置されることで、ブッシュのこじりを防止できる。また、前記ストローク位置が第1位置と第2位置との間の位置であるストローク状態においても、ブッシュの軸心に対してダンパの軸心が常に直角に近い角度で交差するため、ブッシュのこじりを効果的に抑制できる。
【0022】
したがって、前記ストローク位置として第1位置と第2位置を適切に設定することで、車両走行中に生じ得る様々なストローク状態において、ブッシュのこじりを効果的に抑制でき、これにより、ブッシュの反力に起因するダンパのフリクション増大を効果的に抑制できる。よって、ダンパがスムーズに作動することで、車両の乗り心地及び操縦安定性の向上を図ることができる。
【0023】
請求項2に記載の発明によれば、前記ストローク位置が所定の基準位置よりもバンプ側の第1位置であるとき、及び、基準位置よりもリバウンド側の第2位置であるときに、ブッシュの軸心に対してダンパの軸心が直角に配置され、ブッシュのこじりが防止される。そのため、車両走行中におけるバンプ時及びリバウンド時のいずれにおいても、ブッシュのこじりが効果的に抑制されることで、ダンパのスムーズな作動によって、良好な乗り心地及び操縦安定性を得ることができる。
【0024】
請求項3に記載の発明を請求項2に記載の発明に適用すれば、前記ストローク位置が、ダンパが最も伸張した状態となる第2位置であるときに、ブッシュの軸心に対してダンパの軸心が直角に配置されるとともに、前記ストローク位置が前記基準位置と第2位置との間の位置となるリバウンド側の全ストローク領域に亘って、ブッシュの軸心に対してダンパの軸心が常に直角に近い角度で交差することになり、これによって、リバウンド時におけるブッシュのこじりを効果的に抑制できる。
【0025】
また、車両生産時において、ダンパが伸びきった状態でブッシュを所定位置に組み付ける場合、ブッシュの組み付けを、こじりが無い状態で行うことができるとともに、この組み付けを利用して前記第2位置を決定できる。
【0026】
請求項4に記載の発明を請求項2又は請求項3に記載の発明に適用すれば、車両の前席に2名の乗員が着座するという一般的に高頻度の乗車態様において、前記ブッシュのこじりが防止され、ダンパの作動の円滑化が図られるため、当該乗車態様での乗り心地及び操縦安定性の向上を図ることができる。
【0027】
請求項5に記載の発明を請求項2又は請求項3に記載の発明に適用すれば、前記ストローク位置が、ダンパが最も収縮した状態となる第1位置であるときに、ブッシュの軸心に対してダンパの軸心が直角に配置されるとともに、前記ストローク位置が前記基準位置と第1位置との間の位置となるバンプ側の全ストローク領域に亘って、ブッシュの軸心に対してダンパの軸心が常に直角に近い角度で交差することになり、これによって、バンプ時におけるブッシュのこじりを効果的に抑制できる。
【0028】
請求項6に記載の発明によれば、ダンパの軸心が車体上方側に向かって車体幅方向内側に傾斜しており、該ダンパの下端部が軸部材とブッシュを介してトレーリングアームの車体後方側部分に連結される場合、ブッシュの軸心は、車体幅方向内側に向かって車体前方側に傾斜して配置されることで、上述のように2つのストローク位置において、ブッシュの軸心に対してダンパの軸心を直角に配置することが可能になり、これによって、上述の効果を具体的に実現できる。
【0029】
請求項7に記載の発明によれば、ダンパの軸心が車体上方側に向かって車体幅方向外側に傾斜しており、該ダンパの下端部が軸部材とブッシュを介してトレーリングアームの車体後方側部分に連結される場合、ブッシュの軸心は、車体幅方向内側に向かって車体後方側に傾斜して配置されることで、上述のように2つのストローク位置において、ブッシュの軸心に対してダンパの軸心を直角に配置することが可能になり、これによって、上述の効果を具体的に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施形態に係る車両用懸架装置を示す斜視図である。
図2】バンプ時及びリバウンド時における車体左側のダンパ及びその周辺部を車体後方側から見た模式図である。
図3】バンプ時及びリバウンド時における車体左側のダンパ及びその周辺部を車体幅方向内側から見た模式図である。
図4】ダンパの軸心に直交する第1面及び第2面を示す斜視図である。
図5】車体に対する懸架装置の組付け手順の一例を示す図である。
図6】車体左側のダンパ下端のブッシュ及びその周辺部を車体上方側から見た模式的な平面図である。
図7】変形例に係る車両用懸架装置において、バンプ時及びリバウンド時における車体左側のダンパ及びその周辺部を車体後方側から見た模式図である。
図8】変形例に係る車両用懸架装置において、車体左側のダンパ下端のブッシュ及びその周辺部を車体上方側から見た模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両用懸架装置について説明する。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、「下」等の方向を示す用語は、特段の説明がある場合を除いて、車両の前進走行時の進行方向を「前」とした場合における車体の各方向を指すものとする。
【0032】
図1に示すように、本実施形態に係る車両用懸架装置は、車両の後輪と車体との間に設けられたリヤサスペンション(以下、単に「サスペンション」という)10である。サスペンション10は、車体前後方向に延びる左右一対のトレーリングアーム12と、車体幅方向に延びて左右のトレーリングアーム12間を連結するトーションビーム18とを備えた所謂トーションビーム式のサスペンションである。
【0033】
トレーリングアーム12の車体前方側の端部にはブッシュ14が取り付けられている。ブッシュ14は、ゴム等の弾性材料からなる。なお、ブッシュ14の内周面及び外周面は、例えば金属製の内筒及び外筒で構成されている。
【0034】
ブッシュ14は、スイング軸線を構成する軸部材16の外側に嵌合されており、これにより、軸部材16とトレーリングアーム12との間にブッシュ14が介在されている。軸部材16及びブッシュ14の軸心は、車体幅方向の外側に向かって車体後方側に傾斜した方向に沿って配置されている。
【0035】
軸部材16は、例えば、サイドフレーム(図示せず)内に配設された支持部材82(図2)に取り付けられることで、車体側に支持されている。この軸部材16によって、トレーリングアーム12の前端部が車体に連結されている。
【0036】
トーションビーム18は、例えば、車体下方側に向かって開放した断面逆U字状の鋼材で構成されている。トーションビーム18の両端部は、トレーリングアーム12の長さ方向の中央と前端部との間の部分に連結されている。該トーションビーム18のねじれが許容されることで、左右の車輪がある程度個別に車体に対して車体上下方向にストロークすることができるとともに、トーションビーム18のねじれ剛性を利用して、アンチロール効果が得られる。
【0037】
サスペンション10は、トレーリングアーム12及びトーションビーム18に加えて、車輪(後輪)24(図2及び図3参照)のハブ25を支持するナックル20、車輪24と車体との間に介在されて衝撃を吸収するコイルスプリング32、及び、車輪24と車体との間で伸縮可能に設けられてコイルスプリング32の振動を吸収するダンパ40を、それぞれ車輪24毎に備えている。
【0038】
左右の各ナックル20は、軸受26を介してハブ25を回転可能に支持している。ナックル20には、トレーリングアーム12の車体後方側部分がブラケット22を介して固定されている。
【0039】
左右の各コイルスプリング32は、車輪側に設けられたロアスプリングシート30と、車体側に設けられたアッパスプリングシート(図示せず)とによって、車体上下方向の両側から挟み込まれた状態で設けられている。ロアスプリングシート30は、トレーリングアーム12の車体幅方向内側、及び、トーションビーム18の車体後方側にそれぞれ隣接して配置されており、トレーリングアーム12に固定されている。
【0040】
ダンパ40は、シリンダ41とピストンロッド42を備えた伸縮式のものである。本実施形態におけるダンパ40では、シリンダ41が車体側に連結されてピストンロッド42が車輪側に連結されているが、ピストンロッドが車体側に連結されてシリンダが車輪側に連結されてもよい。
【0041】
図2及び図3を参照しながら、本実施形態の更に詳細な構成について説明する。
【0042】
図2(a)及び図2(b)は、車体左側のダンパ40及びその周辺部を車体後方側から見た模式図であり、図3(a)及び図3(b)は、同ダンパ40及びその周辺部を車体幅方向内側(右側)から見た模式図である。また、図2(a)及び図3(a)は、車体に対して車輪24が車体上方側にストローク(バンプ)した状態を示し、図2(b)及び図3(b)は、車体に対して車輪24が車体下方側にストローク(リバウンド)した状態を示している。
【0043】
図2及び図3に示すように、ダンパ40の上端部は、車体の例えばリヤホイールハウス81に固定されている。ダンパ40の下端部は、軸部材50及びブラケット51,52を介してトレーリングアーム12の車体後方側部分に連結されている。これにより、ダンパ40は、トレーリングアーム12及びナックル20(図1参照)を介して車輪24に連結されている。
【0044】
軸部材50は、例えばトレーリングアーム12の車体上方側に配置されており、一対のブラケット51,52間に架設されている。軸部材50の外側には、ブッシュ60が嵌合されている。ブッシュ60は、ダンパ40の下端部に取り付けられている。これにより、ダンパ40の下端部は、ブッシュ60を介して軸部材50に回転可能に支持されている。
【0045】
ブッシュ60は、ゴムからなる筒状部材である。ただし、ブッシュ60の材料は、ゴム以外の弾性材料であってもよい。なお、ブッシュ60の内周面及び外周面は、例えば金属製の内筒及び外筒で構成されている。
【0046】
図2(a)及び図2(b)に示すように、ダンパ40の軸心C1は、車体前後方向から見て、車体上下方向に対して傾斜して配置されている。具体的に、ダンパ40の軸心C1は、車体上方側に向かって車体幅方向の内側に傾斜して配置されている。
【0047】
また、図3(a)及び図3(b)に示すように、ダンパ40の軸心C1は、車体幅方向から見ても、車体上下方向に対して傾斜して配置されている。具体的に、ダンパ40の軸心C1は、車体上方側に向かって車体前後方向の後方側に傾斜して配置されている。
【0048】
ダンパ40は、車体上下方向における車体に対する車輪24のストロークに応じて伸縮するため、これに応じて、ダンパ40の軸心C1の傾きは変化する。
【0049】
バンプ状態を示す図2(a)及びリバウンド状態を示す図2(b)のように、車体前後方向から見たダンパ40の軸心C1の傾きは、車輪24がバンプ側にストロークするほど大きくなる。
【0050】
また、バンプ状態を示す図3(a)及びリバウンド状態を示す図3(b)のように、車体幅方向から見たダンパ40の軸心C1の傾きも、車輪24がバンプ側にストロークするほど大きくなる。
【0051】
これに対して、ダンパ40の下端部を支持する軸部材50及びこれに嵌合されるブッシュ60の軸心C2(以下、単に「ブッシュ60の軸心C2」ともいう)は、後述する向きで配置され、この軸心C2の方向は、車体に対する車輪24のストローク状態に関わらず一定である。そのため、車輪24のバンプ又はリバウンドに応じて、ブッシュ60の軸心C2に対してダンパ40の軸心C1が交差する角度は変化する。
【0052】
ブッシュ60のこじりを抑制する上で、ブッシュ60の軸心C2に対するダンパ40の軸心C1の交差角度は直角であることが望ましいが、車輪24のバンプ又はリバウンドに応じて交差角度が変化することから、該交差角度を常に直角に維持することはできない。
【0053】
そこで、本実施形態では、車輪24がバンプ又はリバウンドしても、ブッシュ60の軸心C2に対するダンパ40の軸心C1の交差角度が直角な状態ないし直角に近い状態に維持されるように、ブッシュ60の軸心C2が配置されており、これにより、ブッシュ60のこじりの抑制が図られている。
【0054】
図4を参照しながら、ブッシュ60の軸心C2の配置について説明する。
【0055】
図4には、車体上下方向における車体に対する車輪24のストローク位置が第1位置であるときにダンパ40の軸心C1に直交する仮想の第1面S1(実線で囲まれた着色部分)、及び、車輪24のストローク位置が第1位置よりもリバウンド側の第2位置であるときにダンパ40の軸心C1に直交する仮想の第2面S2(二点鎖線で囲まれた部分)が図示されている。
【0056】
第1面S1及び第2面S2は、それぞれ、ダンパ40の長さ方向においてブッシュ60の軸心C2が通るべき位置において、ダンパ40の軸心C1に直交する面である。そして、第1面S1と第2面S2との交線上に、ブッシュ60の軸心C2が配置されている。これにより、車輪24のストローク位置が第1位置及び第2位置のいずれであるときも、ダンパ40の軸心C1に対してブッシュ60の軸心C2が直交して配置されることで、ブッシュ60のこじりを防止できる。
【0057】
また、車輪24のストローク位置が第1位置と第2位置との間の位置であるストローク状態においても、ブッシュ60の軸心C2に対するダンパ40の軸心C1の交差角度は、常に直角に近い角度になることから、ブッシュ60のこじりを効果的に抑制できる。
【0058】
したがって、車輪24のストローク位置として第1位置と第2位置を適切に設定することで、車両走行中に生じ得る様々なストローク状態において、ブッシュ60のこじりを効果的に抑制できる。
【0059】
例えば、第1面S1を形成する第1位置は、所定の基準位置よりもバンプ側の位置であることが好ましく、第2面S2を形成する第2位置は、前記基準位置よりもリバウンド側の位置であることが好ましい。
【0060】
ここでいう「基準位置」は、例えば、水平な路面上に停車された状態において車両の積載量が所定積載量であるときのストローク位置である。ここでいう「所定積載量」は、例えば、一人も乗車しておらず、荷物が全く載せられておらず、燃料が満タンであるときの車両の積載量である。
【0061】
このように第1位置及び第2位置を設定することで、基準位置よりもバンプ側の第1位置であるとき、及び、基準位置よりもリバウンド側の第2位置であるときに、ブッシュ60の軸心C2に対してダンパ40の軸心C1が直角に配置されることから、ブッシュ60のこじりが防止される。そのため、車両走行中におけるバンプ時及びリバウンド時のいずれにおいても、ブッシュ60のこじりが効果的に抑制されることで、ダンパ40のスムーズな作動によって、良好な乗り心地及び操縦安定性を得ることができる。
【0062】
より具体的に、第1面S1を形成する第1位置は、水平な路面上に停車された車両の前席に所定重量を有する2名の乗員が着座したときのストローク位置であってもよい。この場合、車両の前席に2名の乗員が着座するという一般的に高頻度の乗車態様において、ブッシュ60のこじりが防止され、これによってダンパ40の作動の円滑化が図られるため、当該乗車態様での乗り心地及び操縦安定性の向上を図ることができる。
【0063】
別の例として、第1面S1を形成する第1位置は、ダンパ40が最も収縮した状態となるときのストローク位置であってもよい。この場合、最もバンプ側のストローク位置において、ブッシュ60の軸心C2に対してダンパ40の軸心C1が直角に配置されるとともに、上記の基準位置よりもバンプ側の全ストローク領域に亘って、ブッシュ60の軸心C2に対してダンパ40の軸心C1が常に直角に近い角度で交差することになり、これによって、バンプ時におけるブッシュ60のこじりを効果的に抑制できる。
【0064】
さらに別の例として、第1面S1を形成する第1位置は、水平な路面上に停車された車両に、所定重量を有する最大乗車人数の乗員が乗車したときのストローク位置であってもよい。この場合、最大乗車人数の乗員が乗車したバンプ状態のストローク位置において、ブッシュ60の軸心C2に対してダンパ40の軸心C1が直角に配置されるとともに、当該ストローク位置付近のバンプ状態において、ブッシュ60の軸心C2に対してダンパ40の軸心C1が常に直角に近い角度で交差することになり、これによって、バンプ時におけるブッシュ60のこじりを効果的に抑制できる。
【0065】
また更なる別の例として、第1面S1を形成する第1位置は、水平な路面上に停車された車両の積載量が最大積載量であるときのストローク位置であってもよい。この場合、積載量が最大となるバンプ状態のストローク位置において、ブッシュ60の軸心C2に対してダンパ40の軸心C1が直角に配置されるとともに、当該ストローク位置付近のバンプ状態において、ブッシュ60の軸心C2に対してダンパ40の軸心C1が常に直角に近い角度で交差することになり、これによって、バンプ時におけるブッシュ60のこじりを効果的に抑制できる。
【0066】
また、第2面S2を形成する第2位置は、ダンパ40が最も伸張した状態となるときのストローク位置であってもよい。この場合、最もリバウンド側のストローク位置において、ブッシュ60の軸心C2に対してダンパ40の軸心C1が直角に配置されるとともに、上記の基準位置よりもリバウンド側の全ストローク領域に亘って、ブッシュ60の軸心C2に対してダンパ40の軸心C1が常に直角に近い角度で交差することになり、これによって、リバウンド時におけるブッシュ60のこじりを効果的に抑制できる。
【0067】
さらに、この場合、車両生産時において、図5に示すような手順でサスペンション10の組み付けを行う場合、この組み付けを利用して、ブッシュ60のこじりが完全に防止され得る第2位置を決定できる。
【0068】
具体的には、図5(a)に示すように、左右一対のトレーリングアーム12、トーションビーム18及び左右一対のナックル20が一体化されたアセンブリ体90をリフト100に載せて、該リフト100を上昇させることで、先に車体80に組み付けられた左右のダンパ40及びブッシュ60に対して、アセンブリ体90を下方から近づける。
【0069】
このとき、車体80から吊り下げられた状態の各ダンパ40は、ピストンロッド42の自重やシリンダ41の内部のガスの圧力等の影響によって、最も伸張した状態となっている。
【0070】
続いて、トレーリングアーム12の前端側のブッシュ14(図3参照)を車体80に組み付けた後、図5(b)に示すように、ダンパ40の下端側のブッシュ60を、トレーリングアーム12側のブラケット51,52に組み付ける。このとき、ブッシュ60に全くこじりが無い状態で、ブラケット51,52及びブッシュ60の穴に軸部材50を差し込んで、該軸部材50をボルト等で固定する。このような手順でサスペンション10の組み付けを行うことにより、この組み付けを利用して、ブッシュ60のこじりが完全に防止され得る第2位置を決定できる。
【0071】
本実施形態において、ダンパ40の軸心C1との位置関係が上記のように設定されたブッシュ60の軸心C2は、図2の後面図に示されるように、車体幅方向の内側に向かって車体下方側に傾斜して配置されている。また、図6の平面図に示されるように、ブッシュ60の軸心C2は、車体幅方向の内側に向かって車体前方側に傾斜して配置されている。
【0072】
以上のようにブッシュ60の軸心C2が配置されることで、車輪24のストローク状態に関わらず、常にブッシュ60のこじりを効果的に抑制できる。また、ブッシュ60のねじりが従来よりも増大することも抑制できる。したがって、ブッシュ60の反力に起因するダンパ40のフリクション増大を効果的に抑制できる。よって、本実施形態によれば、ダンパ40がスムーズに作動することで、車両の乗り心地及び操縦安定性の向上を図ることができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、上記のようにブッシュ60の軸心C2が配置されることで、ブッシュ60のこじりを効果的に抑制しつつ、ダンパ40を車体上方側に向かって車体幅方向の内側に傾斜させて配置することができる。これにより、ダンパ40と車輪24のタイヤとの接触を確実に回避しつつ、車体幅方向において、車輪24のハブに対してダンパ40の下端部を近づけて配置しやすくなる。そのため、路面から車輪24のハブに荷重が入力されたときに、ダンパ40の下端連結部を通って車体前後方向に延びる軸心周りに生じるモーメントを低減しやすくなる。したがって、該モーメントに起因するトーションビーム18の曲げを抑制できるため、トーションビーム18の折損を抑制しやすくなる。
【0074】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0075】
例えば、上述の実施形態では、ダンパ40の軸心C1が車体上方側に向かって車体幅方向の内側に傾斜して配置される例を説明したが、図7(a)及び図7(b)の後面図に示すように、ダンパ40の軸心C1は、車体上方側に向かって車体幅方向外側に傾斜して配置されていてもよい。
【0076】
この場合において、ダンパ40の軸心C1が、上述の実施形態と同様に車体上方側に向かって車体後方側に傾斜して配置される場合(図3参照)、上述の実施形態と同様に仮想の第1面S1と仮想の第2面S2との交線(図4参照)に沿って配置されたブッシュ60の軸心C2は、図7の後面図に示されるように車体幅方向の内側に向かって車体上方側に傾斜し、且つ、図8の平面図に示されるように車体幅方向の内側に向かって車体後方側に傾斜して配置されることになる。
【0077】
この場合も、上述の実施形態と同様、車輪24のストローク状態に関わらず、常にブッシュ60のこじりを効果的に抑制でき、これにより、ブッシュ60の反力に起因するダンパ40のフリクション増大を効果的に抑制して、ダンパ40をスムーズに作動させることができる。
【0078】
また、上述の実施形態では、ダンパ40の軸心C1が車体上方側に向かって車体後方側に傾斜して配置される例を説明したが、本発明は、ダンパの軸心が車体上方側に向かって車体前方側に傾斜して配置される場合にも同様に適用可能である。
【0079】
さらに、上述の実施形態では、スイング軸線(図3の軸部材16参照)がブッシュ60よりも車体前方側に位置する例を説明したが、本発明は、スイング軸線がブッシュよりも車体後方側に位置する場合にも同様に適用可能である。
【0080】
また、上述の実施形態では、ダンパの「下端部」と軸部材との間にブッシュが介在する場合において、該ブッシュの軸心の配置に関して説明したが、ダンパの「上端部」と軸部材との間にブッシュが介在する場合において、該ブッシュの軸心の配置に関しても本発明を同様に適用することができ、これにより、当該ブッシュのこじりを効果的に抑制することができる。
【0081】
さらに、上述の実施形態では、所謂トーションビーム式のサスペンションを例に挙げて本発明を説明したが、本発明は、ダンパの少なくとも一端部がブッシュを介して軸部材に支持されるものであれば、トーションビーム式以外の種々の形式のサスペンションに適用可能である。
【0082】
またさらに、上述の実施形態では、リヤサスペンションを例に挙げて本発明を適用したが、本発明において、車両におけるサスペンションの設置部位は特に限定されるものでなく、例えばフロントサスペンションにも、本発明を同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
以上のように、本発明によれば、車体上下方向における車体に対する車輪のストローク位置に関わらず、ダンパ端部を支持する軸部材とダンパとの間に介在するブッシュのこじりを効果的に抑制することが可能となるから、ダンパの少なくとも一端部がブッシュを介して軸部材に支持されるように構成された車両用懸架装置を備えた自動車の製造産業分野において好適に利用される可能性がある。
【符号の説明】
【0084】
10 リヤサスペンション(車両用懸架装置)
12 トレーリングアーム
16 軸部材(連結部)
18 トーションビーム
20 ナックル
24 車輪(後輪)
40 ダンパ
41 シリンダ
42 ピストンロッド
50 軸部材
60 ブッシュ
81 リヤホイールハウス(車体)
C1 ダンパの軸心
C2 ブッシュの軸心
S1 第1面
S2 第2面
【要約】
【課題】車体上下方向における車体に対する車輪のストローク位置に関わらず、ダンパ端部を支持する軸部材とダンパとの間に介在するブッシュのこじりを効果的に抑制する。
【解決手段】車輪24と車体81との間で伸縮可能に設けられたダンパ40と、ダンパ40の一端部を回転可能に支持する軸部材50と、軸部材50の外側に嵌合された筒状の弾性部材からなり軸部材50及びダンパ40の間に介在するブッシュ60とを備えた車両用懸架装置10において、車体上下方向における車体81に対する車輪24のストローク位置が第1位置であるときにダンパ40の軸心C1に直交する仮想の第1面S1と、ストローク位置が第1位置とは異なる第2位置であるときにダンパ40の軸心C1に直交する仮想の第2面S2との交線又は該交線に平行な直線に沿って、ブッシュ60の軸心C2を配置する。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8