特許第6278174号(P6278174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6278174
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】管継手構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 27/12 20060101AFI20180205BHJP
【FI】
   F16L27/12 F
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-33349(P2013-33349)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-163425(P2014-163425A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100069981
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 精孝
(74)【代理人】
【識別番号】100087860
【弁理士】
【氏名又は名称】長内 行雄
(74)【代理人】
【識別番号】100166224
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 成夫
(72)【発明者】
【氏名】高野 哲郎
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−300490(JP,A)
【文献】 実開昭50−55222(JP,U)
【文献】 特開昭63−180794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の配管部材の一端側に設けられた円筒状の第1の継手部材と、他方の配管部材の一端側に設けられた円筒状の第2の継手部材とを備え、第1の継手部材の内周面側に第2の継手部材を配置するとともに、第1の継手部材と第2の継手部材とを軸方向複数箇所に配置された第1、第2及び第3のシール部材を介して軸方向に摺動自在に結合した管継手構造において、
前記第2の継手部材を径方向に一直線状に貫通する連通孔を介して第2の継手部材内に連通し、第1の継手部材内で第2の継手部材が受ける軸方向の流体圧力と反対方向の流体圧力を各継手部材に付与する圧力室を備え、
前記第1の継手部材を、一方の配管部材側に設けられる管状部材と、管状部材の一端側に設けられた円筒状部材とから形成するとともに、管状部材の一端側の外周面に設けた拡径部に円筒状部材の一端側の内周面を接合し、
前記圧力室を、第1の継手部材の円筒状部材の内周面と、第2の継手部材の外周面と、第1の継手部材の円筒状部材の他端側の内周面に設けた縮径部と、第2の継手部材の外周面に設けた拡径部によって囲まれた空間に形成し、
圧力室内の軸方向の受圧面と第1の継手部材内における第2の継手部材の軸方向の受圧面とを互いに等しい面積になるように形成し、
第1の継手部材の円筒状部材の内周面と、第2の継手部材の外周面と、第1の継手部材の管状部材の前記拡径部と、第2の継手部材の前記拡径部によって囲まれた空間に、第1の継手部材の円筒状部材を径方向に一直線状に貫通する通気孔を介して空気が外部との間で出入りするように構成し、
前記第1のシール部材を第1の継手部材の前記拡径部の内周面に設けた環状凹部と第2の継手部材の外周面との間に配置し、
前記第2のシール部材を第1の継手部材の前記縮径部の内周面に設けた環状凹部と第2の継手部材の外周面との間に配置し、
前記第3のシール部材を第2の継手部材の前記拡径部の外周面に設けた環状凹部と第1の継手部材の円筒状部材の内周面との間に配置し
ことを特徴とする管継手構造。
【請求項2】
前記圧力室の受圧面を縮径部の軸方向一端面によって形成した
ことを特徴とする請求項記載の管継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車内の配管に用いられ、配管同士を軸方向に移動自在に接続する管継手構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のブレーキオイル、空気調和装置の冷媒、燃料電池車の水素等の流体の移送に用いられる配管は、車内の狭い空間内に配置されるため、配管取付スペースを広くすることができない。このため、取付時の寸法誤差、取付後の振動や外力による撓み、温度変化による熱膨張や熱収縮などを小スペースで吸収する必要がある。この場合、配管の曲げや捻りは、ある程度配管の弾性変形により吸収可能であるが、高剛性材料からなる配管は軸方向の伸縮を吸収することができないため、配管の寿命低下や破損を生ずるおそれがあった。また、高剛性配管同士をゴム等のエラストマー材で接続すれば、配管同士の軸方向の伸縮を吸収することが可能であるが、エラストマー材は高剛性材料よりも弾性率が大幅に低いため、補強層を設けたホース状に形成する必要がある。このため、配管の外径が大きくなるとともに、不純物が混入し易くなり、水素や超純水等の配管には適さないという欠点がある。
【0003】
そこで、一方の配管部材の一端側に設けた継手部材と、他方の配管部材の一端側に設けた継手部材とを互いにシール部材を介して軸方向に摺動自在に結合し、各継手部材の摺動によって配管同士の軸方向の伸縮を吸収するようにした管継手構造が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−14179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記管継手構造では、継手部材の摺動方向に流体の圧力が加わるため、一方の摺動方向においては流体の圧力に抗して継手部材が摺動することになる。このため、伸長方向と収縮方向の摺動抵抗が配管の内圧によって不均一になり、継手部材を円滑に摺動させることができないという問題点があった。
【0006】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、配管の内圧を受けても継手部材を軸方向の何れにも円滑に摺動させることのできる管継手構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記目的を達成するために、一方の配管部材の一端側に設けられた円筒状の第1の継手部材と、他方の配管部材の一端側に設けられた円筒状の第2の継手部材とを備え、第1の継手部材の内周面側に第2の継手部材を配置するとともに、第1の継手部材と第2の継手部材とを軸方向複数箇所に配置された第1、第2及び第3のシール部材を介して軸方向に摺動自在に結合した管継手構造において、前記第2の継手部材を径方向に一直線状に貫通する連通孔を介して第2の継手部材内に連通し、第1の継手部材内で第2の継手部材が受ける軸方向の流体圧力と反対方向の流体圧力を各継手部材に付与する圧力室を備え、前記第1の継手部材を、一方の配管部材側に設けられる管状部材と、管状部材の一端側に設けられた円筒状部材とから形成するとともに、管状部材の一端側の外周面に設けた拡径部に円筒状部材の一端側の内周面を接合し、前記圧力室を、第1の継手部材の円筒状部材の内周面と、第2の継手部材の外周面と、第1の継手部材の円筒状部材の他端側の内周面に設けた縮径部と、第2の継手部材の外周面に設けた拡径部によって囲まれた空間に形成し、圧力室内の軸方向の受圧面と第1の継手部材内における第2の継手部材の軸方向の受圧面とを互いに等しい面積になるように形成し、第1の継手部材の円筒状部材の内周面と、第2の継手部材の外周面と、第1の継手部材の管状部材の前記拡径部と、第2の継手部材の前記拡径部によって囲まれた空間に、第1の継手部材の円筒状部材を径方向に一直線状に貫通する通気孔を介して空気が外部との間で出入りするように構成し、前記第1のシール部材を第1の継手部材の前記拡径部の内周面に設けた環状凹部と第2の継手部材の外周面との間に配置し、前記第2のシール部材を第1の継手部材の前記縮径部の内周面に設けた環状凹部と第2の継手部材の外周面との間に配置し、前記第3のシール部材を第2の継手部材の前記拡径部の外周面に設けた環状凹部と第1の継手部材の円筒状部材の内周面との間に配置している。
【0008】
これにより、第2の継手部材内に連通する圧力室により、第1の継手部材内で第2の継手部材が受ける軸方向の流体圧力と反対方向の流体圧力が各継手部材に付与されるとともに、圧力室内の軸方向の受圧面と第1の継手部材内における第2の継手部材の軸方向の受圧面とが互いに等しい面積になっていることから、各継手部材の軸方向に加わる圧力を釣り合わせることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配管の内圧により各継手部材の軸方向に加わる圧力を釣り合わせることができるので、各継手部材を軸方向の何れにも円滑に摺動させることができる。従って、小型で簡素な構成により配管の軸方向の伸縮を確実に吸収することができ、配管の寿命低下や破損を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示す管継手構造の斜視図
図2】管継手構造の部分側面断面図
図3】受圧面を示す図
図4】管継手構造の動作を示す部分側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図4は本発明の一実施形態を示すもので、図1は管継手構造の斜視図、図2はその部分側面断面図、図3は受圧面を示す図、図4は管継手構造の動作を示す部分側面断面図である。
【0012】
この管継手構造は、図示しない一方の配管部材と他方の配管部材とを円筒状の第1の継手部材10及び第2の継手部材20によって接続するものであり、各継手部材10,20は互いに軸方向に摺動自在に結合している。
【0013】
第1の継手部材10は、一方の配管部材の一端側に設けられた管状部材11と、管状部材11の一端側に設けられた円筒状部材12とからなり、管状部材11と円筒状部材12とは溶接等によって接合されている。管状部材11は図示しない一方の配管部材に接合または一体形成され、その一端側(円筒状部材12側)には外径が大きくなる拡径部11aが設けられている。拡径部11aの内周面には環状凹部11bが設けられ、環状凹部11b内には環状に形成された第1のシール部材13が設けられている。円筒状部材12は第2の継手部材20の外周面との間に隙間を有するように形成され、その一端側(管状部材11側)を管状部材11の拡径部11aの外周面に接合されている。また、円筒状部材12の他端側には内径が小さくなる縮径部12aが設けられている。縮径部12aの内周面には環状凹部12bが設けられ、環状凹部12b内には環状に形成された第2のシール部材14が設けられている。また、縮径部12aの軸方向一端面(円筒状部材12の内側の面)は配管の内圧を受ける受圧面15を形成している。更に、円筒状部材12の周面には径方向に貫通する通気孔12dが設けられている。
【0014】
第2の継手部材20は、他方の配管部材の一端側に設けられた管状部材21と、管状部材21の一端側に設けられた円筒状部材22とからなり、管状部材21と円筒状部材22とは溶接等によって接合されている。管状部材21は図示しない他方の配管部材に接合または一体形成され、その外周面には第2のシール部材14が圧接している。円筒状部材22は第1の継手部材10の円筒状部材12の内周面との間に隙間を有するように形成され、その一端を管状部材21に接合されるとともに、他端側の外周面には第1のシール部材13が圧接している。円筒状部材22の軸方向略中央には外径が大きくなる拡径部22aが設けられ、拡径部22aの外周面には環状凹部22bが設けられている。環状凹部22b内には環状に形成された第3のシール部材23が設けられ、第3のシール部材23は第1の継手部材10の円筒状部材12の内周面に圧接している。この場合、第2のシール部材14及び第3のシール部材23によって形成された空間、即ち第1の継手部材10の内周面、第2の継手部材20の外周面、縮径部12a及び拡径部22aによって囲まれた部分によって圧力室24が形成されており、圧力室24は受圧面15に加わる圧力により、第1の継手部材10内で第2の継手部材20が受ける軸方向の流体圧力と反対方向の流体圧力を各継手部材10,20に付与するようになっている。即ち、円筒状部材22の一端側の周面には径方向に貫通する連通孔22cが設けられており、連通孔22cによって第2の継手部材20内と圧力室24内が互いに連通している。更に、第1のシール部材13及び第3のシール部材23によって形成された空間、即ち第1の継手部材10の内周面、第2の継手部材20の外周面及び各拡径部11a,22aによって囲まれた空間26は、第1の継手部材10の通気孔12dを介して外部に連通している。
【0015】
また、各継手部材10,20においては、圧力室24内の受圧面15の面積S2 と、第1の継手部材10内における第2の継手部材20の受圧面25の面積S1 が互いに等しくなるように形成されている。この場合、第2の継手部材20の受圧面25の面積S1 は、図3(a) に示すように第2の継手部材20の円筒状部材22の外径D1 を直径とする円(円筒状部材22の内部空間を含む端面)の面積であり、圧力室24内の受圧面15の面積S2 は、図3(b) に示すように圧力室24の外径D2 を直径とする円の面積から圧力室24の内径D3 を直径とする円の面積を除いた面積である。
【0016】
以上のように構成された管継手構造においては、各継手部材10,20に接続された配管が収縮すると、図4(a) に示すように各継手部材10,20が互いに離れる方向に摺動する。また、配管が伸長すると、図4(b) に示すように各継手部材10,20が互いに接近する方向に摺動する。その際、圧力室24の受圧面15に加わる圧力により、第1の継手部材10内で第2の継手部材20が受ける軸方向の流体圧力と反対方向の流体圧力が各継手部材10,20に付与され、しかも圧力室24の受圧面15の面積S1 と第2の継手部材の受圧面25の面積S2 は互いに等しいので、各継手部材10,20の軸方向に加わる圧力が釣り合った状態となり、配管の内圧を受けても各継手部材10,20が軸方向の何れにも円滑に摺動する。また、第1の継手部材10の内周面、第2の継手部材20の外周面及び各拡径部11a,22aによって囲まれた空間26は、各継手部材10,20の摺動によって容積が変化するが、空間26には通気孔12dを介して空気が出入りするため、空間26の内圧が各継手部材10,20の摺動に影響を与えることはない。
【0017】
このように、本実施形態によれば、第2の継手部材20内に連通する圧力室24により、第1の継手部材10内で第2の継手部材20が受ける軸方向の流体圧力と反対方向の流体圧力を各継手部材10,20に付与するとともに、圧力室24内の軸方向の受圧面15と第1の継手部材10内における第2の継手部材20の軸方向の受圧面25とを互いに等しい面積になるように形成したので、各継手部材10,20の軸方向に加わる圧力を釣り合わせることができ、配管の内圧を受けても各継手部材10,20を軸方向の何れにも円滑に摺動させることができる。これにより、小型で簡素な構成により配管の軸方向の伸縮を確実に吸収することができ、配管の寿命低下や破損を効果的に防止することができる。
【0018】
また、圧力室24を、第1の継手部材10の内周面と、第2の継手部材20の外周面と、第1の継手部材10の内周面に設けた縮径部12aと、第2の継手部材20の外周面に設けた拡径部22aによって囲まれた空間により形成するようにしたので、圧力室24を簡素な構造により容易に構成することができる。
【0019】
更に、圧力室24の受圧面15を縮径部12aの軸方向一端面によって形成したので、第2の継手部材20の受圧面25と面積の等しい圧力室24の受圧面15を容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0020】
10…第1の継手部材、12a…縮径部、15…受圧面、20…第2の継手部材、22a…拡径部、24…圧力室、25…受圧面。
図1
図2
図3
図4