【実施例】
【0106】
<例1:p−ジメチルアミノアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートの合成>
次の手順に従ってp−ジメチルアミノアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートを合成した。アセトニトリル{純正化学株式会社}25ミリリットル中にN,N−ジメチルアミノ−p−フェニレンジアミン{和光純薬工業株式会社}535mg(5ミリモル)を溶解させ、滴下漏斗に入れた。炭酸N,N’−ジスクシンイミジル(DSC){和光純薬工業株式会社}1.28g(5ミリモル)をアセトニトリル50ミリリットル中に溶解させ、攪拌した。この溶液に、N,N−ジメチルアミノ−p−フェニレンジアミン溶液を2時間かけて滴下した。滴下が完了した後に、更に22時間攪拌し、反応混合物からアセトニトリルを留去した。5ミリリットルのアセトニトリルに溶解させ、析出物を濾取した。収量は597mg(収率48%)であった。
【0107】
1H−NMRスペクトル(CD
3CN、ppm):δ; 7.22(d、9.0Hz 、2H)、6.72(d、9.0Hz、2H)、2.88(s、6H)、2.76(s、4H)。
QTOFMS:m/z 278[M+H]
+、Molecular formula:C
13H
16N
3O
4(高分解能QTOFMS;m/z 278.1141,[M+H]
+,Δ−4.4ppm)。
【0108】
<例2:p−トリメチルアンモニウムアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートアイオダイドの合成>
次の手順に従って、p−トリメチルアンモニウムアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートアイオダイドを合成した。アセトニトリル8mL、ジクロロメタン{純正化学株式会社}2mLの混合溶媒中に、p−ジメチルアミノアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート264mg(1.1ミリモル)を溶解させ、攪拌した。この溶液にヨウ化メチル{ナカライテスク株式会社}0.4mL(8当量)添加し、23時間攪拌し、析出物を濾取した。収量:354mg(収率76%)。
【0109】
1H−NMRスペクトル(DMSO−d6、ppm):δ;7.97(d、8.4Hz、2H)、7.62(d、8.4Hz、2H)、3.58(s、9H)、2.83(s、4H)。
QTOFMS:m/z 292[M]
+、Molecular formula:C
14H
18N
3O
4(高分解能QTOFMS;m/z 292.1297,[M]
+,Δ−2.9ppm)。
【0110】
<例3:3−アミノピリジルカルバメートの合成>
次の手順に従って、2−アミノピリジルカルバメートを合成した。アセトニトリル25ミリリットル中に3−アミノピリジン{和光純薬工業株式会社}470mg(5ミリモル)を溶解させ、滴下漏斗に入れた。炭酸N,N’−ジスクシンイミジル(DSC)1.28g(5ミリモル)をアセトニトリル50ミリリットル中に溶解させ、攪拌した。この溶液に、3−アミノピリジン溶液を2時間かけて滴下した。滴下が完了した後に、更に21時間攪拌し、反応混合物からアセトニトリルを留去した。得られた、非結晶性固体の112mgを2ミリリットルのジエチルエーテル{純正化学株式会社}に溶解させ、12時間、冷暗所に放置し、析出物を濾取した。収量:32mg(収率29%)。
【0111】
1H−NMRスペクトル(CDCl
3、ppm):δ;8.52(d、2.4Hz、1H)、8.33(dd、1.2 and 4.8Hz、1H)、8.03(ddd、1.2, 2.4 and 8.8Hz、1H)、7.32(dd、4.8 and 8.8Hz、1H)、2.91(s、4H)。
QTOFMS:m/z 236[M+H]
+、Molecular formula:C
10H
9N
3O
4(高分解能QTOFMS;m/z 236.0671,[M+H]
+,Δ−1.5ppm)。
【0112】
<例4:1−ナフチルアミノ−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート合成>
次の手順に従って、1−ナフチルアミノ−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート[N. Nimura, K. Iwaki, T. Kinoshita, K. Takeda and H. Ogura , Anal. Chem., 58 (1986) 2372参照。]を合成した。アセトニトリル25ミリリットル中に1−ナフチルアミン{ICN}715mg(5ミリモル)を溶解させ、滴下漏斗に入れた。炭酸N,N’−ジスクシンイミジル(DSC)1.28g(5ミリモル)をアセトニトリル50ミリリットル中に溶解させ、攪拌した。この溶液に、1−ナフチルアミン溶液を2時間かけて滴下した。滴下が完了した後に、更に18時間攪拌し、反応混合物からアセトニトリルを留去し目的の化合物558mg(収率28%)を得た。
【0113】
<例5:スクシンイミドフェニルカルバメート(PAHS)の合成>
次の手順に従ってPAHS [N. Nimura, K. Iwaki, T. Kinoshita, K. Takeda and H. Ogura , Anal. Chem., 58 (1986) 2372参照。]を合成した。アセトニトリル25ミリリットル中にアニリン{和光純薬}467mg(5ミリモル)を溶解させ、滴下漏斗に入れた。炭酸N,N’−ジスクシンイミジル(DSC)1.28g(5ミリモル)をアセトニトリル50ミリリットル中に溶解させ、攪拌した。この溶液にアニリン溶液を2時間かけて滴下した。滴下が完了した後に、更に23時間攪拌し、反応混合物からアセトニトリルを留去し、目的の化合物を混合物として得た。
【0114】
<例6:芳香族カルバメート化合物によるアミンの標識化について具体的手順>
アミノ官能性化合物の標識は、芳香族カルバメートの極性の違いにより、以下の二つの方法(反応条件)を用いた。
【0115】
(1)アミノ官能性化合物を含む試料としてのアミン標準溶液20μLに、硼酸塩緩衝液(硼酸塩0.2M、EDTA5mM)60μLを添加した。この混合物に、標識試薬溶液(HPLC等級アセトニトリル1mL中にカルバメート化合物3mg)20μLを添加した。得られた混合物を55℃に10分間加熱した。
【0116】
(2)アミノ官能性化合物を含む試料としてのアミン標準溶液20μLに、硼酸塩緩衝液(硼酸塩0.2M、EDTA5mM)80μLとアセトニトリル80μLを添加した。この混合物に試薬溶液(HPLC等級アセトニトリル1mL中にカルバメート化合物3mg)20μLを添加した。得られた混合物を55℃に10分間加熱した。
【0117】
前記アミン標準液としてアミノ酸混合液を用いて、同様に調製した標識アミノ酸混合物について逆相カラムを用いて分離後、質量分析装置に導入した。一般的な条件は次の通りである。
【0118】
a)HPLC:Ajilent HP1100;
b)Columun:Develosil C30 UG 5μm 4.6mmI.D×250mm;
c)検出器:質量分析装置 Sciex API365;
d)移動相;
移動相A:0.2% AcOH
移動相B:0.2% AcOH in CH
3CN;及び
e)温度:40℃。
【0119】
<例7:分析例1>
p−トリメチルアンモニウムアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートアイオダイド(TAHS)により、前記例6に記載した(1)の反応条件によって調製した標識アミノ酸を逆相カラムによりHPLC分離し、Selected Reaction Monitoringにおいて検出した。
【0120】
HPLC分離の勾配条件は、移動相B 0min 0%→20min 30%を用いた。
SRMモードによる測定は、第一のマスアナライザー(Q1)で指定アミノ酸の標識体である質量(アミノ酸+標識化試薬−HOSu)を選択し、第二のマスアナライザー(Q3)では試薬由来のフラグメントイオンm/z=177を選択し検出する。(HOSuはN−ヒドロキシスクシンイミドを意味する。)
【0121】
例えば、Gluの場合 Q1:m/z=324/Q3:m/z=177を用いた。
但し、Arg, His, Lys, CysにおいてはQ1で標識アミノ酸の2価イオンを選択する。
【0122】
例えば、Arg(試薬の1結合体)の場合 Q1:m/z =176/Q3:m/z =177であり、Lys(試薬の2結合体)の場合 Q1:m/z =250/Q3:m/z =177とした。分析した結果を
図1に示す。
【0123】
図1の結果から明らかな如く、試料中に含まれるアミノ酸を定量することができる。
【0124】
<例8:分析例2>
p−トリメチルアンモニウムアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートアイオダイド(TAHS)により、前記例6に記載した(1)の反応条件によって調製した標識アミノ酸を逆相カラムによりHPLC分離し、Precursor Ion Scan において検出した。
【0125】
HPLC分離の勾配条件は、移動相B 0min 0%→20min 30%を用いた。
Precursor Ion Scanモードによる測定は、第一のマスアナライザー(Q1)ではm/z =100〜600の質量範囲を設定した。第二のマスアナライザー(Q3)では試薬由来のフラグメントイオンm/z =177を設定した。分析した結果を
図2に示す。
【0126】
図2の結果から明らかな如く、試料中に含まれるアミノ酸の質量を知ることができる。
【0127】
<例9:分析例3>
p−ジメチルアミノアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(DAHS)により、前記例6に記載した(2)の反応条件によって調製した標識アミノ酸を逆相カラムによりHPLC分離し、Selected Reaction Monitoringにおいて検出した。
【0128】
HPLC分離の勾配条件は、移動相B 0min 0%→20min 30%を用いた。
質量分析装置の設定方法については前記例7と同様であるが、試薬由来のフラグメントイオンを検出するQ3はm/z=163を設定した。
【0129】
例えば、Gluの場合、Q1:m/z=310/Q3:m/z=163を用いた。
但し、Arg, His, Lys, CysにおいてはQ1で標識アミノ酸の2価イオンを選択する。
【0130】
例えば、Arg(試薬の1結合体)の場合、Q1:m/z =169/Q3:m/z =163であり、Lys(試薬の2結合体)の場合、Q1:m/z =236/Q3:m/z =163とした。分析の結果を
図3に示す。
【0131】
図3の結果から明らかな如く、試料中に含まれるアミノ酸を定量することができる。
【0132】
<例10:分析例4>
3−アミノピリジルカルバメート(APDS)により、前記例6に記載した(1)の反応条件によって調製した標識アミノ酸を逆相カラムによりHPLC分離し、Selected Reaction Monitoringにおいて検出した。
【0133】
HPLC分離の勾配条件は、移動相B 0min 0%→20min 30%を用いた。
質量分析装置の設定方法については、前記例7と同様であるが、試薬由来のフラグメントイオンを検出するQ3はm/z=121を設定した。
【0134】
例えば、Gluの場合、Q1:m/z=148/Q3:m/z=121とした。
但し、Lys,CysにおいてはQ1で標識アミノ酸の2価イオンを選択する。
【0135】
例えば、Lys(試薬の2結合体)の場合、Q1:m/z =194/Q3:m/z =121とした。分析の結果を
図4に示す。
【0136】
図4の結果から明らかな如く、試料中に含まれるアミノ酸を定量することができる。
【0137】
<例11:分析例5>
6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(AQC)により、前記例6に記載した(1)の反応条件によって調製した標識アミノ酸を逆相カラムによりHPLC分離し、Selected Reaction Monitoringにおいて検出した。
HPLC分離の勾配条件は、移動相B 0min 0%→20min 30%を用いた。
【0138】
質量分析装置の設定方法については、前記例7と同様であるが、試薬由来のフラグメントイオンを検出するQ3はm/z=171を設定した。
【0139】
例えば、Gluの場合、Q1:m/z=318/Q3:m/z=171とした。
但し、Arg, His, Lys, CysにおいてはQ1で標識アミノ酸の2価イオンを選択する。
【0140】
例えば、Arg(試薬の1結合体)の場合、Q1:m/z =173/Q3:m/z =171、Lys(試薬の2結合体)の場合は、Q1:m/z =244/Q3:m/z =171とした。分析の結果を
図5に示す。
【0141】
図5の結果から明らかな如く、試料中に含まれるアミノ酸を定量することができる。
【0142】
<例12:分析例6>
1−ナフチルアミノ−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(NAHS)により、前記例6に記載した(2)の反応条件によって調製した標識アミノ酸を逆相カラムによりHPLC分離し、Constant neutral loss Scan において検出した。
【0143】
HPLC分離の勾配条件については、移動相B 0min 10%→25min 60%→25.1min 80%→37min 80%を用いた。
【0144】
Constant neutral loss Scanモードは、第一マスアナライザー(Q1)では、m/z =200〜600の質量範囲を設定した。第二マスアナライザー(Q3)は、試薬骨格に相当する質量170をニュートラルロスとして設定し、m/z =200〜600の質量範囲をスキャンした。分析の結果を
図6に示す。
【0145】
図6の結果から明らかな如く、試料中に含まれるアミノ酸の質量を知ることができる。
【0146】
<例13:分析例7>
PAHSにより、前記例6に記載した(2)の反応条件によって調製した標識アミノ酸を逆相カラムによりHPLC分離し、Constant neutral loss Scan において検出した。
【0147】
HPLC分離の勾配条件は、移動相B 0min 10%→25min 60%→25.1min 80%→37min 80%を用いた。
Constant neutral loss Scanモードは、第一マスアナライザー(Q1 )では、m/z =150〜400の質量範囲を設定した。第二マスアナライザー(Q3)は、試薬骨格に相当する質量119をニュートラルロスとして設定し、m/z =150〜400の質量範囲をスキャンした。分析の結果を
図7に示す。
【0148】
<例14:分析例8>
p−トリメチルアンモニウムアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートアイオダイド(TAHS)により、前記例6に記載した(1)の反応条件によって調製した標識アミノ酸を逆相カラムによりHPLC分離し、Selected Reaction Monitoringにおいて検出した。
分離用カラムには野村化学Develosil C30−UG(粒子径3μm、4.6I.D×30mm)を用い、HPLC分離の勾配条件には、移動相B 0min→3min = 0%→56%を用いた。
SRMモードによる測定は、第一のマスアナライザー(Q1)で指定アミノ酸の標識体である質量(アミノ酸+標識化試薬−HOSu)を選択し、第二のマスアナライザー(Q3)では試薬由来のフラグメントイオンm/z=177を設定した。
【0149】
例えば、Gluの場合 Q1:m/z=324/Q3:m/z=177を用いた。
但し、Arg、Lys、及びCysにおいてはQ1で標識アミノ酸の2価イオンを選択する。
【0150】
例えば、Arg(試薬の1結合体)の場合 Q1:m/z =176/Q3:m/z =177であり、Lys(試薬の2結合体)の場合 Q1:m/z =250/Q3:m/z =177とした。
結果を
図8に示す。
【0151】
実験条件に従い、各アミノ酸の溶液濃度は0.5nmo1/mLとし、10uLを注入したときに得られたクロマトグラムを
図8に示した。その検出限界は2〜40fmolであった。
20種類のアミノ酸が3min(洗浄・平衡化時間を含めて8min/cycle)で分析を終了させることができた。
尚、Ile/Leuは識別できなかった。
【0152】
以上から、本発明方法において、例えばTAHS試薬を用いることにより分析時間を大幅に短縮できることが示された(短時間分析の事例)。
【0153】
<例15:検出限界の測定>
Selected Reaction Monitoring法でのアミノ酸の検出限界を下記の通り測定した。
【0154】
Selected Reaction Monitoring法を用いて、17種類のアミノ酸(ヒスチジン、アルギニン、セリン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、スレオニン、アラニン、プロリン、シスチン、リジン、チロシン、メチオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、及びフェニルアラニンを含む。)の検出限界を求めた。
【0155】
検出限界は、アミノ酸の種類によって異なったが、検出器としてAPI365(アプライドバイオシステム)を用いた場合、p−トリメチルアンモニウムアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートアイオダイド(TAHS)で2〜40fmol、p−ジメチルアミノアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(DAHS)で3〜2000fmol、3−アミノピリジル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(APDS)で3〜180fmol、6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミドカルバメート(AQC)で2〜200fmolであった。
【0156】
検出器としてAPI4000(アプライドバイオシステム)を用いた場合、6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミドカルバメート標識後のアミノ酸の検出限界は0.03〜3fmolであった。(fmol=10
−15mol)結果を下記表1に示した。
【0157】
【表1】
単位 fmol
*1: API365(Applied Biosystems)タイプ質量分析計を用いた場合
*2: API4000(Applied Biosystems)タイプ質量分析計を用いた場合
【0158】
以上の結果から、アミノ酸等のアミノ官能性化合物を、簡便かつ高感度に分析(定量)できることが分かる。
【0159】
<例16:AQC試薬を用いたアミノ酸標準品の同位体比分析>
6−アミノキノリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(AQC){ウォーターズ}により、前記例6に記載した(1)の反応条件によって調製した標識アミノ酸を逆相カラムによりHPLC分離し、Selected Reaction Monitoringにおいて検出した。
【0160】
HPLC分離の勾配条件は、移動相B 0min 0%→20min 30%を用いた。
SRMモードによる測定は、第一のマスアナライザー(Q1)で指定アミノ酸の標識体である質量(アミノ酸+標識化試薬−HOSu)を選択し、第二のマスアナライザー(Q3)では試薬由来のフラグメントイオンm/z=171.1を選択し検出する。(HOSu: N−ヒドロキシスクシンイミド)
【0161】
同位体比分析の測定では、第一のマスアナライザー(Q1)及び第二のマスアナライザー(Q3)の分解能を1マスユニットが識別できる高分解能条件(Q1/Q3=unit/unit)で分析を行った。
【0162】
例えば、Leuの場合で分子内の
13Cの数を考慮すると
Q1:m/z=302.2(m、
13Cが0個)/Q3:m/z=171.1
Q1:m/z=303.2(m+1、
13Cが1個)/Q3:m/z=171.1
Q1:m/z=304.2(m+2、
13Cが2個)/Q3:m/z=171.1
Q1:m/z=305.2(m+3、
13Cが3個)/Q3:m/z=171.1
Q1:m/z=306.2(m+4、
13Cが4個)/Q3:m/z=171.1
Q1:m/z=307.2(m+5、
13Cが5個)/Q3:m/z=171.1
Q1:m/z=308.2(m+6、
13Cが6個)/Q3:m/z=171.1
を用いた。
結果を表2に示す。
【0163】
【表2】
【0164】
以上の結果から、本発明においてアミノ官能性化合物の同位体を高感度に簡便に測定することが理解される。また、その同位体比率を高感度にかつ補正計算することなく求められることも分かる。
【0165】
<例17:フェニルアラニンの同定>
フェニルアラニンが質量、フラグメントイオン、組成式が未知であると仮定して、以下の実験操作を行った。以下、標品として用いたフェニルアラニンを未知化合物と表記し、フェニルアラニンと同定するまでの工程を記す。
【0166】
未知化合物のm/zを336であると求められ、精密質量が測定可能な装置(四重極−飛行時間型質量分析計)では、目的の標識された未知化合物の精密質量m/zが336.1373と求められる。得られた精密質量から未知化合物の組成式の候補はC9H11NO2(最も理論値に近い組成式=errorが最小)であった。これ等の情報を元に、KEGG(http://www.genome.ad.jp/kegg/)の化合物データベースから検索を行ない未知化合物はフェニルアラニン及びベンゾカインが候補化合物となった。
【0167】
<例18:p−トリメチルアンモニウムアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートアイオダイド−d3の合成>
次の手順に従って、p−トリメチルアンモニウムアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートアイオダイド−d3を合成した。アセトニトリル8mL、ジクロロメタン{純正化学株式会社}2mLの混合溶媒中にp−ジメチルアミノアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート264mg(1.1ミリモル)を溶解させ、攪拌した。この溶液にヨウ化メチル−d3{日本酸素株式会社}0.4mL(8当量)添加し、50時間攪拌し、析出物を濾取した。
【0168】
<例19:分析例9>
p−トリメチルアンモニウムアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートアイオダイド−d3(TAHS−d3)により、前記例6に記載した(1)の反応条件によって調製した標識アミノ酸(アミノ酸の濃度は5nmol/mL)及びp−トリメチルアンモニウムアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートアイオダイド(TAHS)により、前記例6に記載した(1)の反応条件によって調製した標識アミノ酸(アミノ酸の濃度は濃度は10nmol/mL)の反応液を混合したものを逆相カラムによりHPLC分離し、Selected Reaction Monitoringにおいて検出した。
【0169】
HPLC分離の勾配条件は、移動相B 0min 0%→20min 30%を用いた。
SRMモードによる測定は、第一のマスアナライザー(Q1)で指定アミノ酸の標識体である質量(アミノ酸+標識化試薬−HOSu)を選択し、第二のマスアナライザー(Q3)では試薬由来のフラグメントイオンを選択し検出する。
【0170】
例えば、Pheの場合
TAHS−d3により標識されたPheはQ1:m/z=345/Q3:m/z=180
TAHSにより標識されたPheはQ1:m/z=342/Q3:m/z=177を用いた。
結果を
図9に示す。
【0171】
<例20:分析例10>
p−トリメチルアンモニウムアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートアイオダイド−d3(TAHS−d3)により、前記例6に記載した(1)の反応条件によって調製したサンプルA及びp−トリメチルアンモニウムアニリル−N−ヒドロキシスクシンイミジルカルバメートアイオダイド(TAHS)により、前記例6に記載した(1)の反応条件によって調製した試料(サンプル)Bの反応混合液の分析結果を、例えば、視覚的に代謝マップ上に表現した結果を
図10に示す。
【0172】
この結果から複数のサンプルを同時に測定し、分析間の感度補正等を行うことなく簡便な処理により、例えば、複数のサンプルの状態間差を相対的に半定量的な結果を視覚的に表現することが可能である。
なお本発明は、以下の様にも記載される。
(形態1)
複数種のアミノ官能性化合物を混合した複数種混合物を質量分析で測定するための質量分析用標識試薬であって、下記一般式(1)で示されるカルバメート化合物を含有することを特徴とする質量分析用標識試薬。
上記式中、Arは、アルキル基、芳香族基、ハロゲン原子、カルボキシル基、水酸基、ニトロ基、ジアゾ基、シアノ基、アルコキシ基、アシル基、スルホン酸基、リン酸基、グアニジル基、ジアルキルアミノ基、若しくはトリアルキルアンモニウム基を有している、芳香族性を示す炭素環化合物残基、又は芳香族性を示す複素環化合物残基を表し、
前記芳香族性を示す炭素環化合物残基が、フェニル基又はナフチル基であり、
カルバメート基の窒素原子は、前記炭素環化合物残基又は複素環化合物残基を構成する炭素原子と結合することにより、Arと結合しており、
当該カルバメート化合物は塩の形態でもよい。
(形態2)
上記式中、Arは、スルホン酸基、リン酸基、グアニジル基、ジアルキルアミノ基、若しくはトリアルキルアンモニウム基を有している、形態1記載の標識試薬。
(形態3)
前記芳香族性を示す複素環化合物残基の環構成原子が、炭素原子及び窒素原子である、形態1記載の標識試薬。
(形態4)
前記芳香族性を示す複素環化合物残基が、ピリジル基、ピラジル基、キノリル基、アクリジル基、又はクマリル基である、形態1記載の標識試薬。
(形態5)
前記質量分析用標識試薬が、タンデム質量分析用標識試薬である、形態1〜4のいずれか一つに記載の標識試薬。
(形態6)
前記タンデム質量分析用標識試薬が、プリカーサーイオンスキャン法、セレクテッドリアクションモニタリング法、又はコンスタントニュートラルスキャン法によるタンデム質量分析用標識試薬である、形態5記載の標識試薬。
(形態7)
前記複数種のアミノ官能性化合物が、アミン類、アミノ酸、ペプチド及びタンパク質からなる群より選ばれるアミノ官能性化合物の混合物である、形態1〜6のいずれか一つに記載の標識試薬。
(形態8)
前記アミン類が、1級アミン、又は2級アミンである、形態7記載の標識試薬。
(形態9)
複数試料の同時測定用である、形態1〜8のいずれか一つに記載の標識試薬。
(形態10)
少なくともアミノ官能性化合物を含む試料中のアミノ官能性化合物を質量分析法により分析する方法であって、当該アミノ官能性化合物を請求項1〜9記載の標識試薬により標識し、質量分析に付すことを特徴とするアミノ官能性化合物の分析方法。
(形態11)
前記標識後であって質量分析前に分離に付される、形態10記載の分析方法。
(形態12)
前記分離が液体クロマトグラフィーにより行われる、形態11記載の分析方法。
(形態13)
前記分離が、逆相カラムを用いて行われる、形態11または12記載の分析方法。
(形態14)
アミノ官能性化合物と形態1〜9記載の標識試薬とを反応させることを特徴とする質量分析に適したアミノ官能性化合物の標識化方法。
(形態15)
アミノ官能性化合物に対して10〜1000倍モル当量の標識試薬を使用する、形態14に記載の標識化方法。
(形態16)
下記一般式(1)で示されるカルバメート化合物。
上記式中、Arは、ジアルキルアミノ基若しくはトリアルキルアンモニウム基を有している、芳香族性を示す炭素環化合物残基、又はジアルキルアミノ基若しくはトリアルキルアンモニウム基を有している、芳香族性を示す複素環化合物残基を表し、
前記芳香族性を示す炭素環化合物残基が、フェニル基又はナフチル基であり、
カルバメート基の窒素原子は、前記炭素環化合物残基又は複素環化合物残基を構成する炭素原子と結合することにより、Arと結合しており、
当該カルバメート化合物は塩の形態でもよい。
(形態17)
前記ジアルキルアミノ基及びトリアルキルアンモニウム基のアルキルはそれぞれ独立的に、炭素数1〜5のアルキルを表す、形態16記載のカルバメート化合物。