(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
有機系表面処理剤が、(I)アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸から選ばれる少なくとも1 種のα、β不飽和モノカルボン酸100重量部、(II)イタコン酸、マレイン酸、フマール酸から選ばれる少なくとも1種のα、β不飽和ジカルボン酸0〜200重量部、及び(III)α、βモノエチレン性不飽和カルボン酸又はその塩と共重合性を有する単量体の少なくとも1種10〜200重量部の共重合物のアンモニウム塩又はアミン塩からなる水溶性ポリカルボン酸塩であることを特徴とする請求項1又は2記載の表面処理炭酸カルシウム。
水酸化カルシウム水スラリーに炭酸ガスを導通して調整した炭酸カルシウム水スラリーに0.1〜10重量%の錯体形成物質を添加した後、さらに有機系表面処理剤で表面処理することを特徴とする請求項1記載の表面処理炭酸カルシウムの製造方法。
有機系表面処理剤が、(I)アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸から選ばれる少なくとも1 種のα、β不飽和モノカルボン酸100重量部、(II)イタコン酸、マレイン酸、フマール酸から選ばれる少なくとも1種のα、β不飽和ジカルボン酸0〜200重量部、及び(III)α、βモノエチレン性不飽和カルボン酸又はその塩と共重合性を有する単量体の少なくとも1種10〜200重量部の共重合物のアンモニウム塩又はアミン塩からなる水溶性ポリカルボン酸塩であることを特徴とする請求項4記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
(a)式は、本発明の表面処理炭酸カルシウムの窒素吸着法によるBET比表面積(Sw)であり、10〜100m
2 /gが必要である。BET比表面積(Sw)が10m
2 /g未満の場合は、粉体物性に問題はないが、チタン酸バリウム等のセラミック粒子と均一に分散するには粒子が大き過ぎるため緻密性の面で不向きである。一方、BET比表面積(Sw)が100m
2 /gを越えると、一次粒子が小さ過ぎるために経時安定性が悪く分散性の面で問題が生じる。従って、好ましくは15〜75m
2 /g、より好ましくは20〜60m
2 /gである。
BET比表面積(Sw)の測定装置と主な測定条件を下記に示す。
<測定装置>
Mountech社製Macsorb
<測定条件>
前処理温度と時間=200℃−10分
【0013】
(b)式は、本発明の表面処理炭酸カルシウムの単位比表面積当たりの有機系表面処理剤量(As)で、200℃〜500℃の表面処理された炭酸カルシウム1g当たりの熱減量Tg(mg/g)/Sw(g/m
2 )により求められる。単位比表面積当たりの有機系表面処理剤量(As)は0.1〜5.0mg/m
2 が必要である。従来の炭酸カルシウムの中には、(a)式を満足する1次粒子が細かいパウダーはいくつか市販されているが、1 次粒子が細かい炭酸カルシウムは、粒子の自重より粒子間結合の方が強いために、1次粒子が凝集形成して2次粒子を形成させたり、また、さらに2次粒子同士が凝集して3次粒子を形成するため、凝集パウダーを水系で再分散させるには問題がある。従って、有機系表面処理剤で炭酸カルシウムを覆い、水への再分散性を良くする必要がある。単位比表面積当たりの有機系表面処理剤量(As)が0.1mg/m
2 未満では、水系での再分散性を十分に得ることができず、例えばセラミック誘電体用のチタン酸バリウム等セラミック粒子の表面を、表面処理炭酸カルシウムで混合処理しようとしても均一に処理することはできない。
一方、単位比表面積当たりの有機系表面処理剤量(As)が5.0mg/m
2 を超えると、例えば本発明の目的用途である誘電体セラミックへ配合した場合、結晶の緻密性を損なわせるという問題がある。従って、好ましくは0.3〜4.0mg/m
2 、より好ましくは0.5〜2.0mg/m
2 である。
単位比表面積当りの有機系表面処理剤量(As)の測定装置と主な測定条件を下記に示す。
<測定装置>
リガク社製TG−8110型
<測定条件>
熱天秤(リガク社製TG−8110型)にて、直径10mmで0.5mlの白金製容器に表面処理した炭酸カルシウム粒子1gを入れ、15℃/分の昇温速度で昇温して200℃から500℃までの熱減量を測定し、表面処理した炭酸カルシウム粒子1g当りの熱減量(Tg)(mg/g)を求め、BET比表面積(Sw)(g/m
2 )で除して求める。
【0014】
(c)式、(d)式は、例えば誘電体セラミック中における本発明の表面処理炭酸カルシウムの分散状態を示すもで、(c)式はレーザー回折式(マルバーン社製:MS−2000)における粒度分布において、大きな粒子側から起算した重量累計50%平均粒子径(Dxs)(μm)、(d)式は上記粒度分布において、3μmを越える粒子径の重量累計(Dys)(重量%)である。
【0015】
前記(c)式の50%平均粒子径(Dxs)は0.03〜3.0μmである必要がある。50%平均粒子径(Dxs)が0.03未満の場合、1次もしくは2次粒子の経時安定性が悪くなる。一方、3.0μmを越えると、前記した如く3次粒子凝集体の再分散性不良が多くなり、チタン酸バリウム等セラミック粒子への均一混合の面で問題となる。従って、好ましくは0.05〜2.0μm 、より好ましくは0.1〜1.0μmである。
前記(d)式の粒度分布において、3μmを越える粒子径の重量累計(Dys)は30重量%以下である必要がある。該重量累計(Dys)が30重量%を越えると、誘電体セラミック中での十分な分散性、均一性が得られず、所望の誘電特性が得られにくい。従って、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。
【0016】
粒度分布測定条件:下記の配合材(I)と(II)を140mlマヨネーズ瓶に秤量し、超音波分散機にて予備分散させたものを試料としてレーザー回折式粒度分布計(マルバーン社製:MS−2000)により測定を行う。
(I)本発明の表面処理炭酸カルシウム 1g
(II)水 60g
特に、前処理として前記した配合で調整後、予備分散として用いる超音波分散は、一定条件で行う方が好ましく、本発明の合成例で用いる超音波分散機は、チップ式超音波US−300T(日本精機製作所社製)を用い、電流値300μAの下、180秒間の一定条件で予備分散させる。
なお、超音波の予備分散時間は、水分散性での指標であり、通常180秒であるが、好ましくは120秒、より好ましくは60秒で所望の分散性が得られる。
【0017】
(e)式は、本発明の表面処理炭酸カルシウム中に含有される、単位比表面積当たりのアルカリ金属含有量(Is)で、0.5μmol/m
2 以下であることが必要である。アルカリ金属は、焼成しても残留物として存在するため、MLCCの電気特性に悪影響を及ぼす。また下限値は特に限定されないが、例えば0.001μmol/m
2 未満にするには、炭酸カルシウムの生成量を極めて少なくするか、生成した炭酸カルシウムを過度に水洗する必要性がある。この結果、生産量が極端に少なくなったり、多量の水を必要とするため、生産性が低くコスト高となる。従って、好ましくは0.005〜0.3μmol/m
2 、より好ましくは0.01〜0.1μmol/m
2 である。
単位比表面積当たりのアルカリ金属含有量(Is)の測定装置と主な測定条件を下記に示す。
<測定装置>
島津製作所社製原子吸光分光光度計AA-677F 型
<測定条件>
検量線法によりアルカリ金属含有量を求める。
【0018】
本発明有表面処理炭酸カルシウムは、更に下記の式(g)、(f)を満足することが好ましい。
(f) Im≦0.2 (μmol/m
2 )
(g) Ir≦0.2 (μmol/m
2 )
但し、
I m :次式により算出される単位比表面積当たりのマグネシウム金属含有量
炭酸カルシウム1g当たりの金属含有量(μmol/g)/Sw(m
2 /g)
I r :次式により算出される単位比表面積当たりのストロンチウム金属含有量
炭酸カルシウム1g当たりの金属含有量(μmol/g)/Sw(m
2 /g)
前記(f)式、(g)式は、それぞれ本発明の表面処理炭酸カルシウム中に含有される、単位比表面積当たりのマグネシウム金属の含有量(Im)、ストロンチウム金属の含有量(Ir)を示している。
【0019】
マグネシウムやストロンチウムは、カルシウムと同族なアルカリ土類金属であるため、他の金属と比べ含有量が比較的多くなり易く、本発明の目的用途である誘電体セラミックへ配合した場合、格子欠陥による誘電率の低下や品質係数(Q値)の低下を招く場合があるため、0.2μmol/m
2 以下であることが好ましい。また(Im)や(Ir)の下限値は特に限定されないが、例えば0.0001μmol/m
2 未満にするには、前記したように、生産性やコストの面で問題が生じ易い。従って、(Im)のより好ましい範囲は0.0001〜0.1μmol/m
2 、さらに好ましくは0.0001〜0.05μmol/m
2 である。(Ir)のより好ましい範囲は、0.0001〜0.01μmol/m
2 、さらに好ましくは0.0001〜0.001μmol/m
2 である。
単位比表面積当たりのマグネシウム金属含有量(I m)及び単位比表面積当たりのストロンチウム金属含有量(I r)の測定装置と主な測定条件を下記に示す。
<測定装置>
島津製作所社製原子吸光分光光度計AA-6700F型
<測定条件>
検量線法により、Mg金属、Sr金属の含有量を求める。
【0020】
本発明の表面処理炭酸カルシウムの表面処理を行う前の炭酸カルシウムの調整方法は水酸化カルシウム水スラリーに炭酸ガスを導通する炭酸ガス法が好ましく、炭酸化反応で粒子径を調整した後、錯体形成物質を所定量添加し、微細な炭酸カルシウム粒子を保持調整する方法が例示できる。但し、原料となる石灰石は、一般的な緻密質石灰石を利用しても構わないが、前記した(e)式を満たすために、カルシウムと同族元素であるマグネシウムやストロンチウム等の不純物金属元素が除去された水酸化カルシルシウム懸濁液が好ましく、例えば特開平10−130020に記載の如く、不純物金属元素が比較的少ない溶液反応を利用した炭酸カルシウムを原料として用いるのが好ましい。
【0021】
また、錯体形成物質を添加する場合、焼成後の灰分が残存しないものが好ましい。具体的には、クエン酸、シュウ酸、リンゴ酸等のヒドロキシカルボン酸とそのアンモニウム塩及びアミン塩;グルコン酸、酒石酸等のポリヒドロキシカルボン酸とそのアンモニウム塩及びアミン塩;イミノジ酢酸、エチレンジアミン4酢酸、ニトリロトリ酢酸等のアミノポリカルボンとアンモニウム塩及びアミン塩;アセルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸アリル等のケトン類等が挙げられ、これらは単独であるいは2種類以上組み合わせて使用される。中でもヒドロキカルボン酸類は、カルシウムとの結合性が高く、特にクエン酸で代表されるヒドロキシカルボン酸系が、カルシウムの錯体形成効果が高く好適に使用することができる。
【0022】
錯体形成物質の添加量は、(a)式に示した表面処理炭酸カルシウムのBET比表面積(Sw)や、(b)式に示した単位比表面積当たりの有機系表面処理剤量(As)により左右されるため、一概には測定できないが、通常0.1〜10重量%である。錯体形成物質の添加量が、0.1重量%未満の場合は、カルシウムとのキレート効果が低く、10重量%を超えると錯体形成物質の劣化で炭酸カルシウムの分散安定性を低下させる場合がある。従って、好ましくは0.3〜5重量%、より好ましくは0.5〜3重量%である。
錯体形成物質は、炭酸化反応を終了した直後の炭酸カルシウム水スラリーに添加され、5〜60分程度攪拌する。
【0023】
上記の如き方法で炭酸カルシウム水スラリーを調整した後、炭酸カルシウムは有機系表面処理剤で表面処理(表面被覆)される。
本発明で用いられる有機系表面処理剤は、セラミック誘電体の混合系が主に水系である場合が多いため、数平均分子量(ゲル浸透圧クロマトグラフ測定)が500〜50000程度の親水性界面活性剤であることが好ましい。数平均分子量が500未満の場合は炭酸カルシウムへの表面処理率が低下する傾向があり、また50000を越える場合、疎水化により炭酸カルシウムの均一な処理が悪化する場合がある。従って、より好ましくは2000〜30000の範囲である。
【0024】
具体的には、α、βモノエチレン性不飽和カルボン酸系が例示できる。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等から選ばれるα、β不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマール酸等から選ばれるα、β不飽和ジカルボン酸を例示することができる。
また本発明の有機表面処理剤の重合体は、(I)α、βモノエチレン性不飽和カルボン酸又はその塩の1種又は2種以上の単独重合体、及び(II)α、βモノエチレン性不飽和カルボン酸又は共重合体、及びα、βモノエチレン性不飽和カルボン酸又は共重合体、及び(III)α、βモノエチレン性不飽和カルボン酸又はその塩と共重合性を有する単量体を1種以上共重合した有機系表面処理剤が例示できる。
【0025】
また、(III)の共重合性を有する具体的な単量体としては、下記の(A)〜(E)のものが例示できる。
(A)アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステル系。
(B)メトキシエチルアクリレート、メトシキエチルメタクリレート、エトキシエチルアクリレート、エトキシエチルメタクリレート等のアルコキシ基を有するアクリレート及びメタクリレート系。
(C)シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等のシクロヘキシル基を有するアクリレート及びメタクリレート系。
(D)2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート等のα、βモノエチレン性不飽和ヒドロキシエステル系。
(E)ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールポリテトラメチレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート等のポリアルキレングリコールモノアクリレート及びモノメタクリレート系。
中でも(E)群の重合性単量体は、炭酸カルシウムの分散性において、好適に用いることができる。
【0026】
α、βモノエチレン系不飽和モノカルボン酸から選ばれる少なくとも1種に、該α、βモノエチレン系不飽和ジカルボン酸との共重合性を有するその他の単量体との共重合体において、該α、βモノエチレン系不飽和ジカルボン酸の占める割合は、α、βモノエチレン不飽和モノカルボン酸100重量部当たり、0〜200重量部であることが好ましい。 α、βモノエチレン系不飽和モノカルボン酸から選ばれる少なくとも1種に、前記(A)〜(E)の共重合性を有する単量体の占める割合は、α、βモノエチレン不飽和モノカルボン酸100重量部当たり、10〜200重量部であることが好ましい。当該単量体の効果を十分に発揮させるためには、5〜150重量が好ましく、10〜100重量部がより好ましい。
【0027】
表面処理剤の表面処理量は、炭酸カルシウムのBET比表面積によって左右されるため、(b)式に示した単位比表面積当たりの有機系表面処理剤量(As)の範囲内の吸着量であれば特に限定されないが、通常0.1〜10重量%である。表面処理剤量が0.1重量%未満の場合、本発明の微細で高分散性である炭酸カルシウムの表面を十分に覆うことができず、乾燥・粉末化の際、未処理面同士で2次凝集を形成し易いため、該表面処理炭酸カルシウムとしての効果が十分発揮できにくくなる。また、10重量%を越えると、焼成の際に表面処理剤過多によるセラミック誘電体に空孔ができ、製品の安定性や信頼性に影響を与える原因となる場合がある。従って、より好ましくは0.5〜7重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。
【0028】
表面処理後、さらに分散効果を高めるために、湿式であればサンドグラインダーミルや湿式ジェット粉砕機、ホモジナイザー等を、乾式であれば振動ボールミルや乾式ジェット粉砕機を通過させ、所望の粒度になるよう調整する方法は好ましい態様である。
【0029】
次に、本発明のセラミック組成物について説明する。
先ず本発明の表面処理炭酸カルシウムが使われるセラミック組成物は、誘電体もしくは圧電体構造であれば特に限定されるものでなく、BaTiO
3系、SrTiO
3系、CaTiO
3系、PbTiO
3系、PbZrO
3系、CaZrO
3系、CaCu
3Ti
4O
12 系などのセラミック組成物が例示できる。中でも特に、ニッケル(Ni)を内部電極に用いたチタン酸バリウム(BaTiO
3)系積層セラミックコンデンサで知られる強誘電体用途に効果が極めて高く、本発明の目的用途から、X7R特性やX8R特性を満足したセラミック組成物として例示することができる。
また、各種センサーやフィルター用途に使われる焦電体も強誘電体セラミックとして問題なく、本発明の表面処理炭酸カルシウムを使用することができる。
【0030】
BaTiO
3系セラミックの構造は、BaTiO
3系に炭酸カルシウム(CaCO
3 )を含む各種添加剤を固溶させるのが一般的である。俗にいう、コア層にBaTiO
3系、シェル層にCaCO
3 を含む添加剤を配合したコア−シェル構造を有する構造体であってもよい。
具体的に各種添加剤としては、CaCO
3 以外に、BaCO
3 、SrCO
3 、SiO
2等のガラス系焼結材の他、Y
2O
3、Dy
2O
3 、Ho
2O
3 等の希土類酸化物で代表される絶縁抵抗材、MgO で代表される拡散制御材、MnCO
3 やCr
2O
3 で代表される電気抵抗材等が例示できる。
BaTiO
3系セラミック組成物は、固相法、水熱合成法、蓚酸法、ゾルゲル法等で調整することができる。さらにキュリー点等を制御する目的等でBaサイトにCaやSr、Pb、Bi、Zn等の酸化物を添加し固溶させても問題ない。
本発明の表面処理炭酸カルシウムを含む、各種主剤や添加剤を混合分散した水懸濁液を乾燥後、任意の大きさに調整し、任意の焼成条件で還元焼成等を行い、本発明のセラミック組成物を得ることができる。
【実施例】
【0031】
実施例1
特開平10−130020号公報に記載の実施例3に従い、濃度1.6mol/L の炭酸アンモニウム水溶液と、濃度0.8mol/L の液体塩化カルシウム水溶液を各100L用意し共に液温10℃に温調した。次に、炭酸アンモニウム水溶液側に塩化カルシウム水溶液100Lを動力0.5kwの攪拌条件で、滴下混合を開始し、600秒後に炭酸化反応を終了した。
該炭酸カルシウム水スラリーを遠心脱水機を用いて濃縮し、濃縮液に水を加えて再度希釈し攪拌した希釈液を遠心脱水機を用いて濃縮し、遠心脱水機の濾液の電気伝導度が200μS/cm以下に降下するまで水洗濃縮し、平均系2.6μmの炭酸カルシウム(カルサイト結晶)を得た。
該炭酸カルシウムをロータリーキルンで焼成し生石灰を得、純水で消化して水酸化カルシム水スラリーを調整した。
次に、濃度7重量%に調整した水酸化カルシウム水スラリーを20L用意し、温度15℃に冷却後、水酸化カルシウム1kg当たり600L/hrの二酸化炭素ガスを導入し、pH7.0まで炭酸化反応を行った。炭酸化反応を終了した直後の炭酸カルシウム水スラリーに、錯体形成物質としてクエン酸を炭酸カルシウムに対し0.5重量%添加し10分間攪拌した。その後、フィルタープレスを用いて含水率約60%に脱水し、攪拌下で表1に示す表面処理剤を炭酸カルシウムに対して2重量%添加し表面処理した後、常法に従い、粉砕、乾燥を行うことにより本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0032】
実施例2
濃度5重量%に調整した水酸化カルシウム水スラリーを20L用意し、温度10℃に冷却後、水酸化カルシウム1kg当たり600L/hrの二酸化炭素ガスを導入し、pH7.0まで炭酸化反応を行った。炭酸化反応を終了した直後の炭酸カルシウム水スラリーに、錯体形成物質としてクエン酸を炭酸カルシウムに対し1.0重量%添加に変更した以外は、実施例1と同様の方法で炭酸カルシウムを調整した。
その後、表1に示す表面処理剤を炭酸カルシウムに対して4重量%添加した以外は実施例1と同様の方法により本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0033】
実施例3
濃度3重量%に調整した水酸化カルシウム水スラリーを20L用意し、温度8℃に冷却後、水酸化カルシウム1kg当たり600L/hrの二酸化炭素ガスを導入し、pH7.0まで炭酸化反応を行った。炭酸化反応を終了した直後の炭酸カルシウム水スラリーに、錯体形成物質としてクエン酸を炭酸カルシウムに対し2.0重量%添加に変更した以外は、実施例1と同様の方法で炭酸カルシウムを調整した。
その後、表1に示す表面処理剤を炭酸カルシウムに対して5.5重量%添加した以外は実施例1と同様の方法により本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0034】
実施例4
濃度10重量%に調整した水酸化カルシウム水スラリーを20L用意し、錯体形成物質としてクエン酸を炭酸カルシウムに対し0.1重量%添加に変更した以外は、実施例1と同様の方法で炭酸カルシウムを調整した。
【0035】
実施例5
濃度0.8mol/L の工業用塩化カルシウム水溶液と、濃度1.6mol/L の液体苛性ソーダ水溶液を各100L用意した。塩化カルシウム水溶液側の液温を95℃に温調し、動力0.5kwの攪拌条件で苛性ソーダ水溶液を滴下混合開始し、約200分に消化反応を終了した。
得られた水酸化カルシウム水スラリーを、遠心脱水機を用いて濃縮し、該濃縮液に純水を加えて希釈し攪拌した後、再度希釈液を遠心脱水機で濃縮し、遠心脱水機の濾液の電気伝導度が1000μS/cm以下に降下するまで水洗濃縮し、水酸化カルシウム水スラリーを得た。それ以降は、実施例1と同様の方法で本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
次に濃度5重量%に調整した水酸化カルシウム水スラリーを20L用意し、温度13℃に冷却後、水酸化カルシウム1kg当たり600L/hrの二酸化炭素ガスを導入しpH7.0まで炭酸化を行った。調整した炭酸カルシウム水スラリーに、錯体形成物質としてクエン酸を炭酸カルシウムに対し0.5重量%添加し十分撹拌した。
その後、表1に示す表面処理剤を炭酸カルシウムに対して2重量%添加した以外は、実施例1と同様の方法により本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0036】
実施例6
得られた水酸化カルシウム水懸濁液を、遠心脱水機を用いて濃縮し、濃縮液に純水を加えて希釈し攪拌した後、再度希釈液を遠心脱水機で濃縮し、遠心脱水機の濾液の電気伝導度が600μS/cm以下に降下するまで水洗濃縮し、水酸化カルシウム水懸濁液を得た以外は、実施例5と同様の方法で本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0037】
実施例7
錯体形成物質としてクエン酸の添加量を炭酸カルシウムに対して6重量%に変更した以外は、実施例5と同様の方法で表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0038】
実施例8
都市ガスを熱源に灰色緻密質石灰石をキルンで焼成し、得られた生石灰を水道水で溶解して水酸化カルシウム水スラリーを得た。それ以降は、実施例1と同様の方法で本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0039】
実施例9
表面処理剤の重合性単量体として、アクリル酸マレイン酸の共重合体に変更した以外は、実施例1と同様の方法で本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0040】
実施例10
表面処理剤の重合性単量体として、ポリエチレングリコールモノメタクリレートをアクリル酸メチルに変更した以外は、実施例1と同様の方法で本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0041】
実施例11
表面処理剤の重合性単量体として、ポリエチレングリコールモノメタクリレートをメトキシエチルアクリレートに変更した以外は、実施例1と同様の方法で本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0042】
実施例12
表面処理剤の重合性単量体として、ポリエチレングリコールモノメタクリレートをシクロヘキシルアクリレートに変更し、さらにアンモニウム塩をアミン塩に変更した以外は、実施例1と同様の方法で本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0043】
実施例13
表面処理剤の重合性単量体として、ポリエチレングリコールモノメタクリレートを2−ヒドロキシエチルアクリレートに変更した以外は、実施例1と同様の方法で本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0044】
比較例1
錯体形成物質としてクエン酸を添加しない以外は、実施例1と同様の方法で炭酸化反応を行った。次いで、該炭酸カルシウム水スラリーを、温度50〜55℃で48時間撹拌熟成を行った。その後、表1に示す表面処理剤を炭酸カルシウムに対して1.2重量%添加した以外は実施例1と同様の方法により本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0045】
比較例2
濃度7重量%に調整した水酸化カルシウム水スラリーを20L用意し、温度15℃に冷却後、錯体形成物質としてクエン酸を水酸化カルシウムに対し3.0重量%添加し、水酸化カルシウム1kg当たり600L/hrの二酸化炭素ガスを導入し、pH7.0まで炭酸化反応を行った。次いで該炭酸カルシウム水スラリーを、温度50〜55℃で50時間撹拌熟成を行った。その後、表1に示す表面処理剤を炭酸カルシウムに対して6.5重量%添加した以外は実施例1と同様の方法により本発明の表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0046】
比較例3
錯体形成物質としてクエン酸の添加量を炭酸カルシウムに対して11重量%に変更した以外は、実施例5と同様の方法で表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0047】
比較例4
試薬(和光純薬社製:3N)の炭酸カルシウムを用いて焼成した以外は実施例1と同様にして調整して得た水酸化カルシウム水スラリーを、濃度7.5%重量%、温度16℃に調整後、撹拌しながら水酸化カルシウム1kg当たり300L/hrとなるよう二酸化炭素ガスを導入しpH7.0まで炭酸化反応を行った。炭酸化後のBET比表面積は29.6m
2 /g であった。さらに3時間攪拌熟成した後、表2に示す表面処理剤を3.4重量%添加した後、常法に従い、粉砕、乾燥を行うことにより表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0048】
比較例5
特開平10−130020号公報に記載の比較例6に従い、濃度0.5mol/L の工業用炭酸ナトリウム水溶液と25重量%アンモニア水を4.5L加えた混合水溶液と、濃度0.5mol/L の液体塩化カルシウム水溶液を各100L用意し共に液温17℃に温調した。次に、炭酸ナトリウム水溶液側に塩化カルシウム水溶液100Lを動力0.5kwの攪拌条件で滴下混合を開始し、250秒後に炭酸化反応を終了した。
該炭酸カルシウム水スラリーを遠心脱水機を用いて濃縮し、濃縮液に水を加えて希釈し攪拌した後、再度希釈液を遠心脱水機を用いて濃縮し、遠心脱水機の濾液の電気伝導度が200μS/cm以下に降下するまで水洗濃縮し、平均径11.3μmの炭酸カルシウム(カルサイト結晶)を得た。
該炭酸カルシウムをロータリーキルンで焼成し生石灰を得、純水で消化して水酸化カルシム水スラリーを調整した。その後、実施例1と同様の操作を行い、表面処理炭酸カルシウムを得た。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
実施例14〜26、比較例6〜10
CaTiO
3-NdAlO
3 系誘電体の作製
下記に示した配合系で混合し、ポットミルにてジルコニアボールと共に1時間粉砕した。
次に、400 ℃で乾燥させた後、1320℃で10時間仮焼させた。
さらに、仮焼したものを再び純水と混合し、再度ポットミルにてジルコニアアボールと共に5時間粉砕した。次に、純水を100℃で乾燥後、直径10mm×厚み2mm の錠剤を作製し、1420℃で2時間で本焼し、NdAlO
3を含有したCaTiO
3系マイクロ波誘電体を作製した。
表3に、実施例14〜26及び比較例6〜10で得られたマイクロ波誘電体について、誘電率(ε)と品質係数(Q値)を示した。
誘電率と品質係数の測定装置と主な測定条件を下記に示す。
<測定装置>
ウイルトロン社製ネットワクークアナライザー360B。
<測定条件>
空洞共振器を使用し、中心周波数(f0)、中心周波数から10db低下した高周波数側の周波数(fH)、低周波数側の周波数(fL)、中心周波数での挿入損失(dB)から誘電率(ε)、誘電損失(tan δ)、Qf値はQxf0で求めた。但し、品質係数(Q) は、1/tan δである。
表3から明らかなように、実施例14〜26のマイクロ波誘電体は比較例6〜10のマイクロ波誘電体に比べ、誘電率(ε)と品質係数(Q)共に高いことが認められた。
<CaTiO
3-NdAlO
3 の配合>
(混合〜仮焼)
実施例1〜13、比較例1〜5の炭酸カルシウム:41.26g
酸化チタン(東邦チタニウム社製:3N) :23.94g
Nd
2O
3 (和光純薬社製:3N) :14.82g
Al
2O
3 (和光純薬社製:3N) : 4.51g
純水 :250ml
(混合〜本焼)
CaTiO
3/(NdAl)O
3 :84.55g
純水 :250ml
【0052】
【表3】
【0053】
実施例27〜39、比較例11〜15
BaTiO
3系コア−シェル誘電体の作製
下記に示した配合系で、(1)表面処理炭酸カルシウム、(2)MgO 、(3)MnCO
3 、(4)Y
2O
3、(5)BaCO
3 、(6)SiO
2の順に個々を純水に分散混合し、最後に(7)BaTiO
3を投入した。
(混合系)
(1)実施例1〜13、比較例1〜5の表面処理炭酸カルシウム:116.737g
(2)MgO (和光純薬社製:純度3N) : 0.403g
(3)MnCO
3 (和光純薬社製:純度3N) : 0.058g
(4)Y
2O
3(日本イットリウム社製:純度3N : 1.695g
(5)BaCO
3 (和光純薬社製:純度3N) : 1.781g
(6)SiO
2(和光純薬社製:純度3N) : 0.902g
(7)BaTiO
3(富士チタン社製:蓚酸法) : 0.902g
ジルコニアボールと共に1時間混合分散後、バインダーを加えて直径10mm×厚み2mm の錠剤を成形した。
焼成1 段目は、水素3%濃度の還元雰囲気で1300℃で2 時間焼成し、その後400 ℃まで降下させ、酸化性雰囲気で2 時間エージングさせた。
焼成2 段目は、酸化性雰囲気囲のまま1100℃で5 時間焼成して焼結体(錠剤)を得た。 表4に、(a)50℃の誘電率(ε’)及び(b)125℃の誘電率(ε”)と、(b)/(a)により求められる誘電率の損失率を示す。
誘電率と品質係数の測定装置と主な測定条件を下記に示す。
<測定装置>
回路設計ブッロク社製LCR メ−タ−ZM2353。
<測定条件>
測定周波数10KHz 、測定温度(室温〜150 ℃) まで可変し、1℃間隔にLCR メータで誘電率(ε)、誘電損失(tan δ)を測定した。
表4から明らかなように、実施例
27〜
39のコア−シェル誘電体は比較例11〜15のコア−シェル誘電体に比べ、誘電率が高く損失率も低いことが認められた。
【0054】
【表4】