(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0020】
まず、第1実施形態の車載機器制御システム100の構成を、
図1および
図2を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、車載機器制御システム100の構成図である。
図2は、車載機器制御システム100が適用される車両30の平面図である。
【0022】
図1に示すように、車載機器制御システム100は、車載制御装置10と携帯機20とから構成されている。車載機器制御システム100では、車載制御装置10と携帯機20との間で送受信される無線信号に基づいて、車両30(
図2)に搭載された車載機器の制御が実行される。本例において、車載機器の制御とは、自動四輪車から成る車両30のドアの施解錠や、エンジンの始動のことである。車両30には、施解錠可能なドアが複数設けられている。
【0023】
車載機器制御システム100は、携帯機20が車両30に接近した状態において、利用者のドアノブに対する接近や接触により、携帯機20と自動的に通信を行ってドアの施解錠などを行うパッシブエントリシステムから成る。また、車載機器制御システム100は、携帯機20でのスイッチ操作によりドアの施解錠を行うキーレスエントリの機能も備えている。但し、キーレスエントリの機能は、本発明にとって必須のものではない。
【0024】
図1に示す、車載制御装置10、車載操作部4、ドアロック装置5、およびエンジン装置6は、車両30に搭載されている。携帯機20は、車両30の利用者により携帯される。
【0025】
車載制御装置10は、制御部1、車載送信部2、および車載受信部3を備えている。制御部1は、CPUとメモリなどから構成されている。制御部1には、位置判定部1aとID照合部1bが備わっている。
【0026】
車載送信部2は、周波数設定部2a、変調部2b、および車載送信アンテナ2cから構成されている。車載送信部2は、携帯機20へLF(Low Frequency;長波)信号を送信する。そのLF信号には、車載送信部2が携帯機20に対して応答を要求する第1応答要求信号と第2応答要求信号が含まれている。車載送信部2は、第1周波数の搬送波で第1応答要求信号を送信し、かつ第1周波数と異なる第2周波数の搬送波で第2応答要求信号を送信する。
【0027】
詳しくは、周波数設定部2aが第1周波数および第2周波数を設定する。変調部2bは、周波数設定部2aで設定された第1周波数の搬送波を第1応答要求信号に応じて変調するとともに、第2周波数の搬送波を第2応答要求信号に応じて変調する。そして、車載送信アンテナ2cが、変調部2bで変調された第1周波数の搬送波で第1応答要求信号を送信し、かつ、変調部2bで変調された第2周波数の搬送波で第2応答要求信号を送信する。なお、変調方式としては、ASK(Amplitude Shift Keying:振幅偏移変調)やPSK(Phase Shift Keying:位相偏移変調)のような、公知のデジタル変調方式が用いられる。
【0028】
車載送信アンテナ2cは、車両30の車室内と車室外に分散するように複数設けられている。このため、車両30の周囲(車室外)近傍と車室内に、車載送信アンテナ2cから送信されたLF信号が行き渡る。
【0029】
車載受信部3は、RF(Radio Frequency;高周波)信号受信回路と受信用アンテナとから構成されている。車載受信部3は、携帯機20から送信されたRF信号を受信する。制御部1は、車載送信部2と車載受信部3を制御して、携帯機20と無線通信し、携帯機20に対して信号や情報の送受信を行う。
【0030】
携帯機20は、FOBキーから成り、制御部21、携帯機受信部22、携帯機送信部23、および携帯機操作部24を備えている。制御部21は、CPUとメモリなどから構成されている。制御部1には、受信強度測定部21aと信号生成部21bが備わっている。
【0031】
携帯機受信部22は、LF信号受信回路と携帯機受信アンテナ22aから構成されている。携帯機受信部22は、車載制御装置10の車載送信部2から送信されたLF信号を受信する。そのLF信号には、前述した第1応答要求信号と第2応答要求信号が含まれている。
【0032】
受信強度測定部21aは、携帯機受信部22により受信した第1応答要求信号のRSSI値(第1受信強度)を測定し、かつ第2応答要求信号のRSSI値(第2受信強度)を測定する。
【0033】
携帯機送信部23は、RF信号送信回路と送信用アンテナとから構成されていて、車載制御装置10に対してRF信号を送信する。携帯機送信部23が送信するRF信号には、携帯機受信部22で第1応答要求信号と第2応答要求信号を受信したことに応じて車載制御装置10に対して返信する応答信号が含まれている。
【0034】
信号生成部21bは、車載制御装置10へ送信する応答信号を生成する。この応答信号には、受信強度測定部21aで測定した第1応答要求信号と第2応答要求信号の各RSSI値と、携帯機20に付与されたIDコードとが含まれる。
【0035】
携帯機操作部24には、車両30のドアを施解錠するために操作するドアSW(スイッチ)24aが備わっている。利用者がドアSW24aを操作すると、信号生成部21bがその操作に応じた操作信号を生成し、該操作信号が携帯機送信部23から車載制御装置10へ送信される。制御部21は、携帯機受信部22と携帯機送信部23を制御して、車載制御装置10と通信し、車載制御装置10に対して信号や情報の送受信を行う。
【0036】
車載制御装置10と携帯機20とは、
図2に破線で示す通信可能領域R内において相互に通信可能となる。車載制御装置10の位置判定部1aは、後述するように、携帯機20が車両30に対して通信可能領域R内にあるか否かを判定する。通信可能領域Rは、本発明の「所定領域」の一例である。
【0037】
車載制御装置10には、車載操作部4、ドアロック装置5、およびエンジン装置6が接続されている。車載操作部4には、パッシブリクエストSW(スイッチ)4aとエンジンSW(スイッチ)4bが備わっている。
【0038】
パッシブリクエストSW4aは、車両30のドアの外側面にあるドアノブに設置されていて、車両30のドアを施解錠するために操作される。エンジンSW4bは、車両30の車室内の運転席の近傍に設置されていて、エンジンを始動・停止するために操作される。利用者がパッシブリクエストSW4aまたはエンジンSW4bを操作すると、その操作に応じたリクエスト信号が車載制御装置10の制御部1へ送信される。
【0039】
ドアロック装置5は、車両30の各ドアの施解錠を行うための機構と、該機構の駆動回路から成る。エンジン装置6は、車両30のエンジンを駆動するためのスタータモータと、該スタータモータの駆動回路から成る。
【0040】
携帯機20を携帯した利用者がパッシブリクエストSW4aを操作すると、その操作に応じたリクエスト信号が制御部1に入力される。すると、制御部1が、車載送信部2と車載受信部3により携帯機20と通信し、ID照合部1bにより予め記憶されたIDコードと携帯機20に付与されたIDコードとの照合を行う。そして、双方のIDコードが一致した場合、すなわち照合が成功した場合、制御部1が、ドアロック装置5を制御して、車両30の各ドアの施解錠を行う(パッシブエントリ方式)。
【0041】
また、携帯機20を携帯した利用者が車両30に接近した状態で、携帯機操作部24のドアSW24aを操作した場合は、該操作に応じた操作信号が携帯機送信部23により送信される。車両制御装置10では、その操作信号を車載受信部3により受信すると、制御部1がID照合部1bによりIDコードの照合を行う。そして、照合が成功すると、制御部1が、ドアロック装置5を制御して、車両30のドアの施解錠を行う。(キーレスエントリ方式)
【0042】
また、携帯機20を携帯した利用者がエンジンSW4bを操作すると、その操作に応じたリクエスト信号が制御部1に入力される。すると、制御部1が携帯機20と通信して、ID照合部1bによりIDコードの照合を行う。そして、照合が成功すると、制御部1が、エンジン装置6を制御して、車両30のエンジンの始動または停止を行う。
【0043】
なお、車両制御装置10と携帯機20との間の通信方式としては、パッシブエントリ方式に代えて、ポーリング方式を採用してもよい(後述する他の実施形態においても同様)。
【0044】
ところで、リレーアタックで用いられる中継器51、52(後述する
図8)は、携帯機20が車両30から遠く離れた場所にあっても、車載制御装置10と携帯機20との間で、信号の送受信を中継する機能を備えている。このため、遠方にある携帯機20が車両30の近傍にあるかのように偽装されて、不正な通信行為が行われる。
【0045】
次に、第1実施形態の車載制御装置10と携帯機20の動作を、
図3〜
図8を参照しながら説明する。
【0046】
図3は、第1実施形態による車載制御装置10の動作を示したフローチャートである。
図4は、第1実施形態による携帯機20の動作を示したフローチャートである。
図5は、第1実施形態による車載制御装置10と携帯機20とが通信する信号を示した図である。
【0047】
なお、本例では、携帯機20が車両30の車室外にあって、車両30のエンジンが停止状態でかつドアが施錠状態にあることを前提とする(後述する他の実施形態も同様)。
【0048】
たとえばパッシブエントリ方式の場合、利用者によりパッシブリクエストSW4aが操作されることで、車両制御装置10の制御部1は、車載送信部2の周波数設定部2aにより第1周波数αを設定する(
図3のステップS1)。そして、変調部2bにおいて第1周波数αの搬送波を第1応答要求信号に応じて変調し、車載送信アンテナ2cによりその第1周波数αの搬送波で第1応答要求信号を送信する(
図3のステップS2)。
【0049】
次に、制御部1は、周波数設定部2aにより第2周波数βを設定する(
図3のステップS3)。そして、変調部2bにおいて第2周波数βの搬送波を第2応答要求信号に応じて変調し、車載送信アンテナ2cによりその第2周波数βの搬送波で第2応答要求信号を送信する(
図3のステップS4)。
【0050】
図5に示すように、第1応答要求信号は、第1周波数α(kHz)のLF信号であって、先頭からプリアンブル(同期信号)、ヘッダー、データ、および連続波1で構成されている。このうち、データには、車載制御装置10から携帯機20に対して応答を求める情報が含まれている。連続波1は、第1応答要求信号の信号強度を測定するための第1測定用信号である。第1周波数αは、携帯機受信アンテナ22a(
図1)の共振周波数と同値に設定されている。
【0051】
第2応答要求信号は、第2周波数β(kHz)のLF信号であって、連続波2だけで構成されている。連続波2は、第2応答要求信号の信号強度を測定するための第2測定用信号である。第1応答要求信号の連続波1の送信後、所定の間隔をおいて、第2応答要求信号は送信される。第2周波数βは、第1周波数αをn分の1倍(nは2以上の自然数)した値に設定されている(β=α/n)。
【0052】
このように、車載送信部2から第1周波数αの搬送波で第1応答要求信号を送信し、第2周波数βの搬送波で第2応答要求信号を送信することで、第2応答要求信号の信号強度が第1応答要求信号の信号強度より低くなる。これは、第2周波数βの高調波成分に、信号強度がn分の1倍となる第1周波数αが含まれているからである。
【0053】
図6は、携帯機20が車両30に対して通信可能領域R内にある場合の、車載制御装置10と携帯機20の通信状態を示した図である。
図6に示すように、車両30を基準として、車載制御装置10の車載送信部2により送信されるLF信号の到達距離より、携帯機20の携帯機送信部23により送信されるRF信号の到達距離の方が長い。このため、通信可能領域Rは、車両30からLF信号の到達距離までの範囲内である。
【0054】
携帯機20が通信可能領域R内にある場合は(
図6)、携帯機20の携帯機受信部22が、車載送信部2により送信された第1応答要求信号と第2応答要求信号を連続して受信する(
図4のステップS21、S22)。すると、制御部21は、受信強度測定部21aにより、第1応答要求信号のRSSI値(RSSI1)を測定し(
図4のステップS23)、第2応答要求信号のRSSI値(RSSI2)を測定する(
図4のステップS24)。このとき、
図6に示したように、第2応答要求信号のRSSI値(RSSI2)は、第1応答要求信号のRSSI値(RSSI1)より低くなる。次に、制御部21は、信号生成部21bにより、第1応答要求信号と第2応答要求信号の各RSSI値と、携帯機20に付与されたIDコードとを含めた応答信号を生成する(
図4のステップS25)。そして、その応答信号を携帯機送信部23により車載制御装置10に対して送信する(
図4のステップS26)。車載制御装置10では、車載送信部2により第1応答要求信号と第2応答要求信号を送信してから(
図3のステップS2、S4)、所定時間内に車載受信部3により携帯機20からの応答信号を受信する(
図3のステップS5:YES)。
【0055】
応答信号は、
図5に示すようにRF信号である。応答信号には、携帯機20のIDコードと、第1応答要求信号のRSSI値(RSSI1)と、第2応答要求信号のRSSI値(RSSI2)とが含まれている。
【0056】
図7は、携帯機20が車両30に対して通信可能領域R内になく、リレーアタックで使用される中継器も通信可能領域R内にない場合の、車載制御装置10と携帯機20の通信状態を示した図である。この場合、車載制御装置10の車載送信部2により第1応答要求信号と第2応答要求信号とが送信されても(
図3のステップS2、S4)、携帯機20の携帯機受信部22が第1応答要求信号と第2応答要求信号を受信することはない。このため、携帯機20の携帯機送信部23により応答信号が送信されることもなく、車載制御装置10の車載受信部3により所定時間内に応答信号を受信することもない(
図3のステップS5:NO)。したがって、車載制御装置10の制御部1は、位置判定部1aにより携帯機20が通信可能領域R内にないと判定し(
図3のステップS6)、車載機器(本例では、ドアロック装置5)の制御を禁止する(
図3のステップS7)。その結果、ドアロック装置5がドアを解錠することはない。
【0057】
図8は、携帯機20が車両30に対して通信可能領域R内にない状態でリレーアタックされた場合の、車載制御装置10と携帯機20と中継器51、52の通信状態を示した図である。
図8において、リレーアタックで使用される中継器51、52のうち、一方の中継器51は通信可能領域R内にある。他方の中継器52は、通信可能領域R内にないが、一方の中継器51と携帯機20に対して通信可能な位置にある。このため、車載制御装置10の車載送信部2により第1応答要求信号と第2応答要求信号とが送信されると(
図3のステップS2、S4)、一方の中継器51が、第1応答要求信号と第2応答要求信号を受信して、これらを模倣した偽の第1応答要求信号と第2応答要求信号を送信する。すると、他方の中継器52が、偽の第1応答要求信号と第2応答要求信号を受信して、さらに偽の第1応答要求信号と第2応答要求信号を携帯機20へ送信する。
【0058】
車載送信部2により送信される第1応答要求信号と第2応答要求信号は、前述したように搬送波の周波数が異なるため、両応答要求信号の信号強度に差が生じる。詳しくは、第2応答要求信号の信号強度が第1応答要求信号の信号強度より低くなる。しかし、リレーアタックで使用される中継器51、52は、受信した第1応答要求信号と第2応答要求信号の各信号強度までは模倣できないため、送信する偽の第1応答要求信号と第2応答要求信号の各信号強度に差がなくなる。
【0059】
他方の中継器52から偽の第1応答要求信号と第2応答要求信号が送信されると、携帯機20の携帯機受信部22が、その偽の第1応答要求信号と第2応答要求信号を受信する(
図4のステップS21、S22)。そして、制御部21が、受信強度測定部21aにより、偽の第1応答要求信号のRSSI値を測定し(
図4のステップS23)、偽の第2応答要求信号のRSSI値を測定する(
図4のステップS24)。このとき、測定された各応答要求信号のRSSI値に差はない。次に、制御部21は、信号生成部21bにより、各RSSI値と携帯機20のIDコードとを含めた応答信号を生成する(
図4のステップS25)。そして、その応答信号が、携帯機送信部23により送信されて(
図4のステップS26)、車載制御装置10の車載受信部3により所定時間内に受信される(
図3のステップS5:YES)。
【0060】
車載制御装置10の制御部1は、応答信号を受信すると、位置判定部1aにより、応答信号に含まれる第1応答要求信号のRSSI値が所定の閾値C以上であるか否かを判定する(
図3のステップS8)。閾値Cは、本発明の「第3閾値」である。このとき、第1応答要求信号のRSSI値が所定の閾値Cより小さい場合(
図3のステップS8:NO)、位置判定部1aは、携帯機20が通信可能領域R内にないと判定し(
図3のステップS6)、制御部1が車載機器の制御を禁止する(
図3のステップS7)。これにより、ドアロック装置5がドアを解錠することはない。
【0061】
対して、第1応答要求信号のRSSI値が所定の閾値C以上である場合(
図3のステップS8:YES)、位置判定部1aは、第1応答要求信号のRSSI値(RSSI1)と、応答信号に含まれる第2応答要求信号のRSSI値(RSSI2)との差を算出する(RSSI1−RSSI2)。そして、位置判定部1aは、その差が閾値Aより大きくかつ閾値Bより小さいか否かを判定する(
図3のステップS9)。
【0062】
図6に示したような、携帯機20と車載制御装置10との正当な通信の場合、第1応答要求信号のRSSI値と第2応答要求信号のRSSI値との差が閾値Aより大きくかつ閾値Bより小さくなる(
図3のステップS9:YES)。このため、位置判定部1aは、携帯機20が通信可能領域R内にあると判定する(
図3のステップS10)。すると、ID照合部1bが、応答信号に含まれる携帯機20のIDコードと、予め車載制御装置10に記憶されたIDコードとの照合を行う。このとき、両IDコードが一致して、ID照合部1bが、IDコードの照合が成功したと判定すると(
図3のステップS11:YES)、制御部1が車載機器の制御を許可する(
図3のステップS12)。これにより、ドアロック装置5がドアを解錠する。
【0063】
一方、携帯機20のIDコードと車載制御装置10のIDコードが一致せず、ID照合部1bが、IDコードの照合が不成功であると判定すると(
図3のステップS11:NO)、制御部1が車載機器の制御を禁止する(
図3のステップS7)。これにより、ドアロック装置5がドアを解錠することはない。
【0064】
また、
図8に示したようなリレーアタックの場合、第1応答要求信号のRSSI値と第2応答要求信号のRSSI値との差が、閾値A以下になる(
図3のステップS9:NO)。このため、位置判定部1aが、携帯機20が通信可能領域R内にないと判定し(
図3のステップS6)、制御部1が車載機器の制御を禁止する(
図3のステップS7)。これにより、ドアロック装置5がドアを解錠することはない。
【0065】
また、たとえば携帯機受信部22で第1応答要求信号を受信した後、利用者により携帯された携帯機20が移動したため、携帯機受信部22で第2応答要求信号を受信したときの第2応答要求信号のRSSI値が極めて小さくなったとする。この場合、その後携帯機20からの応答信号を車載受信部3で受信し、該応答信号に含まれる第1応答要求信号のRSSI値が閾値C以上であっても(
図3のステップS8:YES)、第1応答要求信号のRSSI値と第2応答要求信号のRSSI値との差が、閾値B以上になる(
図3のステップS9:NO)。このため、位置判定部1aが、携帯機20が通信可能領域R内にないと判定し(
図3のステップS6)、制御部1が車載機器の制御を禁止する(
図3のステップS7)。これにより、ドアロック装置5がドアを解錠することはない。
【0066】
なお、上記では、携帯機20が車両30の車室外にある状態で、パッシブリクエストSW4aが操作された場合に、ドアロック装置5の制御が許可または禁止されて、ドアが解錠または施錠されたままとなる例を説明した。然るに、携帯機20のドアSW24aが操作された場合も、同様の手順でドアロック装置5の制御を許可または禁止することで、ドアを解錠または施錠したままにすることができる。
【0067】
また、携帯機20が車両30の車室内にある状態で、エンジンSW4bが操作された場合も、同様の手順でエンジン装置6の制御を許可または禁止することで、車両30のエンジンを始動または停止したままにすることができる。さらに、パッシブエントリ方式に代えて、ポーリング方式を採用して、車載送信部2により所定の周期で間欠的に第1応答要求信号および第2応答要求信号を送信してもよい。
【0068】
上記第1実施形態によると、車載制御装置10の車載送信部2により、第1周波数αの搬送波で第1応答要求信号を送信し、第1周波数αと異なる第2周波数βの搬送波で第2応答要求信号を送信するので、第1応答要求信号と第2応答要求信号の各信号強度に差が生じる。そして、携帯機20の携帯機受信部22で受信したときの第1応答要求信号のRSSI値と、第2応答要求信号のRSSI値にも差が生じる。このため、送信信号の強度を変えるための複雑な送信用回路を車載制御装置10に設けたり、車載制御装置10や携帯機20の信号処理を複雑にしたりすることなく、各応答要求信号の搬送波の周波数を変えるだけで、各応答要求信号のRSSI値の差と閾値A、Bとの比較結果から、携帯機20が通信可能領域R内にあるか否かを精度良く判定することができる。そして、携帯機20が通信可能領域R内にあると判定した場合に、車載機器の制御を許可し、携帯機20が通信可能領域R内にないと判定した場合に、車載機器の制御を禁止することで、中継器51、52を用いたリレーアタックに対する防犯性を向上させることができる。
【0069】
また、上記第1実施形態では、第1応答要求信号と第2応答要求信号のRSSI値の差が、閾値Aより大きくかつ閾値Bより小さい場合に、携帯機20が通信可能領域R内にあると判定し、第1応答要求信号と第2応答要求信号のRSSI値の差が、閾値A以下または閾値B以上の場合に、携帯機20が通信可能領域R内にないと判定している(
図3のステップS9、S10、S6)。このため、通信可能領域R内で携帯機20と車載制御装置10とが正当に通信した場合に、携帯機20が通信可能領域R内にあると精度良く判定することができる。また、リレーアタックにより、車載制御装置10と携帯機20とが中継器51、52を介して通信した場合に、携帯機20が通信可能領域R内にないと精度良く判定することができる。さらに、たとえば、携帯機20が第1応答要求信号を受信した後、車両30から遠ざかるように移動して、第2応答要求信号を受信したため、第2応答要求信号のRSSI値が極めて小さくなった場合に、第1および第2応答要求信号のRSSI値の差が閾値B以上になるので、携帯機20が通信可能領域R内にないと精度良く判定することができる。
【0070】
また、上記第1実施形態では、第1応答要求信号と第2応答要求信号のRSSI値の差と閾値A、Bとを比較する前に、第1応答要求信号のRSSI値と閾値Cとを比較している(
図3のステップS8)。そして、第1応答要求信号のRSSI値が閾値Cより小さい場合に、携帯機20が通信可能領域R内にないと判定している(
図3のステップS6)。このため、車載制御装置10と携帯機20との通信感度が低い場合に、第1応答要求信号と第2応答要求信号のRSSI値の差を算出したり、該差を閾値A、Bと比較したりしないので、その分車載制御装置10の処理負担を軽減することができる。
【0071】
また、上記第1実施形態では、第1応答要求信号を送信するための搬送波の第1周波数αを、携帯機受信アンテナ22aの共振周波数と同値に設定している。また、第2応答要求信号を送信するための搬送波の第2周波数βを、第1周波数αをn分の1倍した値に設定している。このため、車載送信部2により送信した第1応答要求信号を、携帯機受信アンテナ22aで受信し易くすることができる。また、第2周波数βの高調波成分に、信号強度がn分の1倍となる第1周波数αが含まれているため、信号強度の異なる2つの搬送波を変調部2bで容易に生成することができる。そして、従来のような、送信信号の強度を変えるための複雑な送信用回路を設けることなく、第1応答要求信号よりも強度が低い(n分の1倍)第2応答要求信号を、車載送信アンテナ2cから容易に送信することができる。
【0072】
さらに、上記第1実施形態では、車載制御装置10の位置判定部1aにより、携帯機20が通信可能領域R内にあると判定された場合に、応答信号に含まれる携帯機20のIDコードと、車載制御装置10のIDコードとの照合を行っている(
図3のステップS10、S11)。そして、IDコードの照合が成立したときに、車載機器の制御を許可し、IDコードの照合が成立しなかったときに、車載機器の制御を禁止している(
図3のステップS12、S7)。このため、正当なIDコードを有する携帯機20が通信可能領域R内にある場合にのみ、車載機器の制御を許可して、リレーアタックに対する防犯性を一層向上させることができる。
【0073】
次に、第2実施形態の車載制御装置10と携帯機20について、
図9〜
図11を参照しながら説明する。
【0074】
図9は、第2実施形態による車載機器制御システム100の構成図である。
図10は、第2実施形態による車載制御装置10の動作を示したフローチャートである。
図11は、第2実施形態による携帯機20の動作を示したフローチャートである。
図10および
図11では、
図3および
図4と同じ処理を実行するステップに、同じ符号を付してある。
【0075】
第2実施形態では、
図9に示すように位置判定部21cが、車載制御装置10ではなく、携帯機20の制御部21に備わっている。このため、携帯機20では、
図11に示すように、第1応答要求信号と第2応答要求信号の各RSSI値を受信強度測定部21aで測定した(
図11のステップS23、S24)後、位置判定部21cが、第1応答要求信号のRSSI値(RSSI1)が所定の閾値C以上であるか否かを判定する(
図11のステップS24a)。このとき、第1応答要求信号のRSSI値が所定の閾値Cより小さい場合(
図11のステップS24a:NO)、位置判定部21cは、携帯機20が通信可能領域R内にないと判定する(
図11のステップS24d)。
【0076】
対して、第1応答要求信号のRSSI値が所定の閾値C以上である場合(
図11のステップS24a:YES)、位置判定部21cは、第1応答要求信号のRSSI値(RSSI1)と、第2応答要求信号のRSSI値(RSSI2)との差を算出する(RSSI1−RSSI2)。そして、位置判定部21cは、その差が閾値Aより大きくかつ閾値Bより小さいか否かを判定する(
図11のステップS24b)。このとき、第1応答要求信号のRSSI値と第2応答要求信号のRSSI値との差が閾値Aより大きくかつ閾値Bより小さい場合(
図11のステップS24b:YES)、位置判定部21cは、携帯機20が通信可能領域R内にあると判定する(
図11のステップS24c)。また、第1応答要求信号のRSSI値と第2応答要求信号のRSSI値との差が、閾値A以下または閾値B以上である場合(
図11のステップS24b:NO)、位置判定部21cは、携帯機20が通信可能領域R内にないと判定する(
図11のステップS24d)。
【0077】
上記のように、位置判定部21cが携帯機20の位置を判定すると、次に、信号生成部21b’が、位置判定部21cの判定結果と携帯機20に付与されたIDコードとを含めた応答信号を生成する(
図11のステップS25a)。このとき、応答信号に第1応答要求信号と第2応答要求信号の各RSSI値を含めてもよい。そして、その応答信号が、携帯機送信部23により送信されて(
図11のステップS26)、車載制御装置10の車載受信部3により所定時間内に受信される(
図10のステップS5:YES)。
【0078】
車載制御装置10の制御部1は、応答信号を受信すると、応答信号に含まれる位置判定部21cの判定結果を参照して、携帯機20の位置を確認する(
図10のステップS13)。そして、携帯機20が通信可能領域R内になければ(
図10のステップS13:NO)、制御部1が車載機器の制御を禁止する(
図10のステップS7)。対して、携帯機20が通信可能領域R内にあれば(
図10のステップS13:YES)、ID照合部1bが、応答信号に含まれる携帯機20のIDコードと、予め車載制御装置10に記憶されたIDコードとの照合を行う(
図10のステップS11)。そして、ID照合部1bが、IDコードの照合が成功したと判定すると(
図10のステップS11:YES)、制御部1が車載機器の制御を許可する(
図10のステップS12)。また、ID照合部1bが、IDコードの照合が不成功であると判定すると(
図10のステップS11:NO)、制御部1が車載機器の制御を禁止する(
図10のステップS7)。
【0079】
上記第2実施形態によると、正当なIDコードを有する携帯機20が車両30に対して通信可能領域R内にある場合にのみ、位置判定部21cで、携帯機20が通信可能領域R内にあると精度良く判定することができる。そして、その判定結果を受けて、車載制御装置10のID照合部1bで、携帯機20とのIDコードの照合が成立したと判定すると、車載機器の制御を許可するので、リレーアタックに対する防犯性を一層向上させることができる。
【0080】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、以上の実施形態では、携帯機受信アンテナ22aの共振周波数である第1周波数αを、n分の1倍した値を第2周波数βとして設定した例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、FSK(周波数偏移変調)方式により第1周波数αを所定量だけ偏移させた周波数を、第2周波数βとして設定してもよい。詳しくは、車載送信部2の周波数設定部2aにおいて、たとえば
図12および
図13に示す第3実施形態のように、第1周波数αを基準として低い方へ偏移した低域側偏移周波数α−γ、または高い方へγだけ偏移した高域側偏移周波数α+γを、第2周波数として設定してもよい。あるいは、低域側偏移周波数α−γと高域側偏移周波数α+γの両方を、第2周波数として設定し、それらを切り替えてもよい。
【0081】
このように、FSK方式で搬送波の周波数を変化させて、第2応答要求信号を送信すると、
図13に示すように、第1応答要求信号の周波数αの電界強度より、第2応答要求信号の周波数αの電界強度の方が低くなる。このため、車載制御装置や携帯機の回路構成および信号処理を複雑にすることなく、第2応答要求信号のRSSI値を、第1応答要求信号のRSSI値に対して容易に異ならせる(本例では、低くする)ことができる。そして、第1応答要求信号のRSSI値と第2応答要求信号のRSSI値の差と、所定の閾値A、Bとを比較することにより、携帯機20が通信可能領域R内にあるか否かを精度良く判定することができる。
【0082】
また、第1実施形態では、
図3に示したように、車載制御装置10において、携帯機20が通信可能領域Rにあると判定した後、携帯機20のIDコードの照合を行った例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば、携帯機20が通信可能領域Rにあるか否かの判定の前に、車載制御装置10と携帯機20のIDコードの照合が成功したか否かを判定してもよい。また、これら両方の判定を同時に行ってもよい。
【0083】
また、以上の実施形態では、車載機器制御システム100で許可または禁止する車載機器の制御として、ドアの施解錠やエンジンの始動を例に挙げたが、本発明はこれのみに限定するものではない。たとえば、車両のエアコンやオーディオシステムなどのような、他の車載機器の制御を許可または禁止するようにしてもよい。
【0084】
さらに、以上の実施形態では、自動四輪車用の車載機器制御システム100、車載制御装置10、および携帯機20に本発明を適用した例を挙げたが、たとえば自動二輪車や大型自動車などの他の車両用の車載機器制御システム、車載制御装置、および携帯機に対しても、本発明を適用することは可能である。