特許第6278439号(P6278439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6278439
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】無線防災システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/48 20090101AFI20180205BHJP
   H04W 28/04 20090101ALI20180205BHJP
   H04W 84/18 20090101ALI20180205BHJP
【FI】
   H04W52/48
   H04W28/04 110
   H04W84/18 110
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-169048(P2013-169048)
(22)【出願日】2013年8月16日
(65)【公開番号】特開2015-37293(P2015-37293A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】島 裕史
【審査官】 羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−069067(JP,A)
【文献】 特開2009−225043(JP,A)
【文献】 特開2004−128993(JP,A)
【文献】 特開2007−214920(JP,A)
【文献】 特開2007−306423(JP,A)
【文献】 特開2009−251905(JP,A)
【文献】 特開2012−190227(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/040928(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0147274(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の送信割当時間に続いて所定の送信休止時間を必要とする通信方式に基づき、子ノードと親ノードの間で無線信号を送受信し、前記子ノードから前記送信割当時間の間に無線信号を間欠的に送信可能とした無線防災システムに於いて、
前記子ノードは、前記送信割当時間内に、所定の送信電力により当該所定の送信電力の送信電力情報を含めて無線信号を送信した後に、前記親ノードから確認応答の無線信号が受信されない場合は、前記送信割当時間の残り時間の間に、前記確認応答の無線信号が受信されるまで、前記所定の送信電力を段階的に増加させて当該増加した送信電力の送信電力情報を含めて前記無線信号の再送信を繰り返すことを特徴とする無線防災システム。
【請求項2】
所定の送信割当時間に続いて所定の送信休止時間を必要とする通信方式に基づき、子ノードと親ノードの間で無線信号を送受信し、前記子ノードから前記送信割当時間の間に無線信号を間欠的に送信可能とした防災無線システムに於いて、
前記子ノードは、前記送信割当時間内に、所定の送信電力により当該所定の送信電力の送信電力情報を含めて無線信号を送信した後に、前記親ノードから確認応答の無線信号が受信されない場合は、前記送信割当時間の残り時間の間に、前記確認応答の無線信号が受信されるまで、前記所定の送信電力を段階的に増加させて当該増加した送信電力の送信電力情報を含めて前記無線信号再送信を繰り返し、
前記親ノードは、受信した無線信号に含まれる送信電力情報に応じて送信電力を変化させて前記確認応答の無線信号を送信することを特徴とする無線防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線式感知器などのノードから無線送信された電文を別のノードに伝送する無線防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、警戒区域の火災等の異常を監視する無線式の防災監視システムにあっては、ビルの各フロアといった警戒区域にセンサノードとしての複数の無線式感知器を設置し、無線式感知器で火災を検出した場合、火災を示す電文信号(以下、単に「電文」という)をフロア単位に設置した無線防災ノードとしての無線受信用中継器に無線送信する。また途中に無線中継ノードとなる電波中継器を設置し、無線式感知器からの電文を中継する。
【0003】
無線受信用中継器は受信機からの感知器回線に接続されており、火災を示す電文を受信すると、リレー接点やスイッチング素子のオンにより感知器回線に発報電流を流して火災発報信号を受信機に送信する。受信機は、この火災発報信号を受信すると、音響等の手段により火災警報を出す。
【0004】
このような無線防災システムによれば、一般的に天井裏等に敷設される感知器回線の一部を不要にでき、配線工事が簡単になり、感知器の設置場所も配線等の制約を受けずに決めることができる。また、感知器増設等のシステム変更にも容易に対応できる。
【0005】
無線防災システムを構成する無線式感知器、電波中継器及び無線受信用中継器は、426MHz帯の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD−30(小電力セキュリティシステム無線局の無線設備標準規格)に基づき無線信号を送受信している。
【0006】
STD−30は空中線電力が10mW以下であり、426.250MHz以上で426.8375MHz以下の周波数の電波を使用する場合はキャリアセンスが義務づけられていないことから、この周波数の電波を使用することで、キャリアセンスを行うことなく無線送信を行っている。なお、キャリアセンスとは、無線送信を行う際に、他局が送信した同一の搬送周波数の電波の受信レベルを検知し、この受信レベルが所定閾値以上である場合には無線送信を行わず、受信レベルが所定閾値未満の場合に無線送信を行い、同一の搬送周波数の電波の衝突を回避することをいう。
【0007】
また、STD−30では、キャリアセンスが義務づけられていないことに伴い、電波を発射してから3秒以内にその電波の発射を停止し、且つ、2秒を経過した後でなければその後の発射を行わないことが義務付けられている。以下、電波を発射することのできる3秒以内の時間を送信割当時間といい、電波の発射を停止する2秒の時間を送信休止時間という。このためSTD−30は、所定の送信割当時間に続いて所定の送信休止時間を必要とする通信方式ということができる。
【0008】
また、無線防災システムでセンサノードとして使用する無線式感知器は、電源の確保を不要にして設置の自由度を高めるために電池電源としており、監視状態における消費電力の低減等により例えば10年を超える電池寿命を保証している。また、無線式感知器の送信電力は十分な通信可能距離を確保するために現在のSTD−30で使用可能な最大電力である10mWに固定して使用し、無線受信用中継器までの通信距離が長い場合には、電波中継器を間に設置して中継送信を行うことで対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−274580号公報
【特許文献2】特開2001−292089号公報
【特許文献3】特開2011−071598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、このような無線式の防災監視システムにおいては、無線式感知器で火災を検知した場合に、火災を示す電文を生成し、この電文を送信割当時間内に送信電力10mWにより送信し、受信側となる無線受信用中継器又は電波線中継器から確認応答信号として知られたACK信号(以下「ACK」という)を受信した場合、正常に送信できたと判断して送信動作を終了している。
【0011】
これに対し無線式感知器から火災を示す電文を送信しても、受信側となる無線受信用中継器又は電波中継器からのACKを受信できなかった場合には、2秒の送信休止時間を経過した後に、再び火災を示す電文を複数個連続して送信するリトライ動作を行い、ACKが受信できなければ、所定のリトライ回数に達するまで、送信休止時間を空けて同じ送信動作を繰り返す。
【0012】
このため電文送信に失敗した場合のリトライ動作によるリカバリに時間がかかり、無線式感知器で火災を検知してから受信機で火災警報を出力するまでの時間遅れが大きくなる場合がある。
【0013】
また無線防災システムにおける電文送信の失敗原因となる通信障害は、監視エリアに設置している機器からの一時的な雑音や、人や物の移動により電波環境が変化するといった一時的な原因による場合が多く、電文送信でACKが受信できなかった場合の送信休止時間のタイミングで通信障害が回復していることが想定されるが、送信休止時間を必要とする分、正常に通信できるまでに時間がかかる問題がある。
【0014】
本発明は、所定の送信割当時間に続いて所定の送信休止時間を必要とする通信方式を対象に、通信障害に対する通信の信頼性を向上可能とする無線防災システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、所定の送信割当時間に続いて所定の送信休止時間を必要とする通信方式に基づき、子ノードと親ノードの間で無線信号を送受信し、子ノードから送信割当時間の間に無線信号を間欠的に送信可能とした防災無線システムに於いて、
子ノードは、送信割当時間内に、所定の送信電力により当該所定の送信電力の送信電力情報を含めて無線信号を送信した後に、親ノードから確認応答の無線信号が受信されない場合は、送信割当時間の残り時間の間に、確認応答の無線信号が受信されるまで、所定の送信電力を段階的に増加させて当該増加した送信電力の送信電力情報を含めて無線信号再送信を繰り返すことを特徴とする。
【0016】
本発明は、所定の送信割当時間に続いて所定の送信休止時間を必要とする通信方式に基づき、子ノードと親ノードの間で無線信号を送受信し、子ノードから送信割当時間の間に無線信号を間欠的に送信可能とした防災無線システムに於いて、
子ノードは、送信割当時間内に、所定の送信電力により当該所定の送信電力の送信電力情報を含めて無線信号を送信した後に、親ノードから確認応答の無線信号が受信されない場合は、送信割当時間の残り時間の間に、確認応答の無線信号が受信されるまで、所定の送信電力を段階的に増加させて当該増加した送信電力の送信電力情報を含めて無線信号の再送信を繰り返し、
親ノードは、受信した無線信号に含まれる送信電力情報に応じて送信電力を変化させて確認応答の無線信号を送信することを特徴とする
【発明の効果】
【0020】
本発明の無線防災システムによれば、例えば子ノードをセンサノード、親ノードを無線防災ノードとした場合、子ノードとして機能するセンサノードは、無線信号を親ノードとして機能する無線防災ノードに送信する場合、送信割当時間内に、所定の送信電力により無線信号を送信し、送信後に、無線防災ノードから確認応答の無線信号(ACK)が受信されない場合は、確認応答の無線信号が受信されるまで、初期設定した送信電力を増加させて無線信号の送信を繰り返すようにしたため、電波環境の変化や通信障害が発生等により火災を示す無線信号の送信に失敗しても、送信電力を上げながら再送信することで、最初に送信に失敗した同じ電波環境であっても受信側となる無線防災ノードにおけるS/N比が改善して火災を示す無線信号を確実に受信でき、送信失敗による無線信号の再送回数を低減することで、センサノードで火災を検知してから無線送信先にて火災警報を出力するまでの時間遅れを抑制することを可能とする。
【0021】
これらの効果は子ノードをセンサノード、親ノードを電波中継ノードとした場合又は、子ノードを電波中継ノード、親ノードを無線防災ノードとした場合も同様である。
【0022】
また、送信電力を変更可能としたセンサノード及び電波中継ノードの機器を製造販売するためには、技術基準適合証明(技術基準適合認定)の取得が義務づけられるが、各ノードの送信電力を、最小送信電力から最大送信電力の範囲で、多段階の送信電力に変更可能とした場合、多段階の送信電力を使用する特定小電力無線局としての各ノード機器の申請を可能とし、送信電力を所定電力に固定した場合と同等の扱いにより、その認定取得を可能として実用化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明による無線防災システムの実施形態を示した説明図
図2】無線式感知器の機能構成の概略を示したブロック図
図3】電波中継器の機能構成の概略を示したブロック図
図4】無線受信用中継器及びP型受信機の機能構成の概略を示したブロック図
図5】無線防災システムで使用する電文フォーマットを示した説明図
図6】火災電文の送信動作を示したタイムチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
[無線防災システム]
(無線防災システムの概要)
図1は本発明による無線防災システムの実施形態を示した説明図である。図1に示すように、監視対象となる建物11の各階には無線防災ノードとして機能する無線受信用中継器12−1〜12−3が設置され、火災受信機であるP型受信機10から階別に引き出された感知器回線18−1〜18−3に接続されている。また、P型受信機10から引き出された電源線15には無線受信用中継器12−1〜12−3が接続されている。
【0025】
1F〜3Fの各階には、センサノードとして機能する無線式感知器16−11〜16−14、16−21〜16−24、及び16−31〜16−34が設置されている。また本実施形態にあっては、無線受信用中継器12−1〜12−3に対し、距離が離れている無線式感知器からの電波の減衰による信号喪失を防ぐために、電波中継ノードとして機能する電波中継器14−1〜14−3を設置している。
【0026】
尚、無線式感知器16−11〜16−34、電波中継器14−1〜14−3、無線受信用中継器12−1〜12−3を区別しない場合は、無線式感知器16、電波中継器14、無線受信用中継器12と呼ぶ。
【0027】
ここで、親子関係をみると、無線式感知器16と無線受信用中継器12は親子関係にあり、無線式感知器16は子ノードであり、無線受信用中継器12は親ノードとなる。また、無線式感知器16と電波中継器14も親子関係にあり、無線式感知器16は子ノードであり、電波中継器14は親ノードとなる。更に、電波中継器14と無線受信用中継器12も親子関係にあり、電波中継器14は子ノードであり、無線受信用中継器12は親ノードとなる。
【0028】
無線式感知器16、電波中継器14及び無線受信用中継器12は、セキュリティ用の特定小電力無線局の標準規格であるSTD−30に従い、426.250MHz以上で426.8375MHz以下の周波数の電波を使用することで、キャリアセンスを行うことなく無線送信を行う。
【0029】
また、STD−30では、キャリアセンスが義務づけられていないことに伴い、電波を発射してから3秒以内にその電波の発射を停止し、且つ、2秒を経過した後でなければその後の発射を行わないことが義務付けられおり、所定の送信割当時間例えばT1=2秒に続いて所定の送信休止時間T2=2秒を必要とする通信方式である。
【0030】
更に、STD−30では、電波を発射してから連続する3秒以内に限り、その発射を停止した後、2秒以上の送信休止時間を設けずに再送信できるものとする、ことが検討されている。このため送信割当時間T1=3秒以内であれば、再送信を必要に応じて繰り返すことができる。
【0031】
無線式感知器16及び電波中継器14のそれぞれには、機器IDを使用した固有のノードIDが予め登録されている。
【0032】
また無線受信用中継器12,電波中継器14及び無線式感知器16には、階別に無線ネットワークを構築していることから、階毎に異なるネットワークアドレス(以下、単に「アドレス」という)を設定している。
【0033】
電波中継器14−1と無線受信用中継器12−1のそれぞれには、親子関係に基づいて電文を受信する子ノードとしての送信元を特定するノードIDが予め登録されている。即ち、無線受信用中継器12−1には子ノードとなる無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDが予め登録されている。また電波中継器14−1には、子ノードとなる無線式感知器16−11,16−12のノードIDが予め登録されている。
【0034】
また、無線受信用中継器12−1においては、無線式感知器16−11,16−12からの各種無線信号を通常は電波中継器14−1を介して受信する状況において、電波中継器14−1を経由せずに無線式感知器16−11,16−12から送信した電文を直接受信した場合であっても有効な電文としての処理を可能とするため、無線受信用中継器12−1の記憶部に、同じ階(グループ)に設置された無線式感知器16−11、16−12のノードIDも登録されている。無線受信用中継器12の記憶部への各機器のノードIDの登録は、無線受信用中継器12とその他の子ノードを相互に通信することで各子ノードのIDを登録してもよいし、先に電波中継器14に登録した無線式感知器16のノードIDを、電波中継器14から無線受信用中継器12に無線転送することにより無線受信用中継器12の記憶部に追加登録する構成でもよい。
【0035】
なお、2F及び3Fの無線受信用中継器12−2,12−3及び電波中継器14−2,14−3についても同様の構成である。
【0036】
無線式感知器16は、無線信号として、火災を示す火災電文、火災復旧を示す火災復旧電文、障害、試験、起動等のシステム管理に使用する電文などを送信する。
【0037】
また、無線式感知器16は、最大送信電力1W(=1000mW)以下で且つ所定の最小送信電力例えば10mW以上となる範囲で多段階の異なる送信電力に変更可能としている。
【0038】
無線式感知器16で変更可能な送信電力は例えば次のように3段階に設定し送信電力を変更可能としている。
【0039】
【表1】
【0040】
ここで、送信電力P1〜P3は[mW]と[dBm]を単位として示しており、[dBm]は1[mW]を基準とする対数表現の単位であり、
dBm=10×log(受信強度[mW])
として計算できる。
【0041】
この場合、無線式感知器16は、例えば送信電力P1=10mWを初期設定しており、送信要求が発生した場合、初期設定した送信電力P1=10mWにより電文を送信する。
【0042】
また、無線式感知器16は、初期設定した送信電力P1=10mWにより電文を送信した後に、親ノードとなる電波中継器14又は無線受信用中継器12からACKを受信した場合は送信を正常終了する。
【0043】
また、無線式感知器16は、電文を送信した後に、電波中継器14又は無線受信用中継器12からのACKが受信されない場合は、送信割当時間T1の残り時間の間に、ACKが受信されるまで、初期設定した送信電力P1=10mWを、送信電力P2=100mW、P3=1000mWと段階的に増加させながら電文の再送信を繰り返す。
【0044】
このように送信電力を多段階に変更可能な無線式感知器16を、STD−30に従った無線機器として技術基準適合証明(技術基準適合認定)を取得する場合には、10mW、100mW及び1000mWの送信電力を使用する特定省電力無線機器としての申請を行うことで、送信電力を固定した場合と同等の扱いにより、その認定を取得して実用化することを可能とする。
【0045】
また、無線式感知器16で変更可能な送信電力の段数は任意であり、例えば更に段数を増やして次の5段階に設定しても良い。
【0046】
【表2】
【0047】
この場合にも、無線式感知器16は、例えば送信電力P1=10mWを初期設定しており、初期設定した送信電力P1=10mWにより電文を送信した後に、ACKが受信されない場合は、送信割当時間T1の残り時間の間に、ACKが受信されるまで、初期設定した送信電力P1=10mWを、送信電力P2(=50mW)〜P5(=1000mW)と段階的に増加させながら電文の再送信を繰り返す。
【0048】
このようにACKが受信できない場合に、送信電力を段階的に増加させながら再送信を繰り返す送信は、電波中継器14も同様となる。
【0049】
ここで、無線式感知器16−11を例にとってその送信動作の概要を説明すると次のようになる。無線式感知器16−11は、火災を検知した場合、火災データを含む所定形式の電文「以下「火災電文」という」を生成し、この火災電文を初期設定している送信電力P1=10mWで電波中継器14−1へ通信経路15aで示すように送信し、送信を終了すると受信動作に切り替える。
【0050】
電波中継器14−1は連続送信された火災電文を受信した場合、この火災電文に含まれる送信元IDと予め登録したノードIDとを比較し、両者の一致で有効な火災電文として処理し、初期設定した送信電力P1=10mWによりACKを無線式感知器16−11へ送信する。
【0051】
無線式感知器16−11は送信動作を停止して受信動作に切り替えた状態で、電波中継器14−1が送信したACKを受信した場合、火災電文は正常に送信できたと判断し、送信動作を正常終了する。
【0052】
これに対し無線式感知器16−11がACKを受信できなかった場合、初期設定している送信電力P1=10mWを、例えば前記表1の次に大きな送信電力P2=100mWに変更し、最初の送信開始からの時間が送信割当時間T1以内であることを条件に、変更した送信電力P2=100mWにより火災電文を電波中継器14−1へ再送信する。
【0053】
これに対しても無線式感知器16−11がACKを受信できなかった場合、送信電力P2=100mWを更に大きな送信電力P3=1000mWに変更し、最初の送信開始からの時間が送信割当時間T1以内であることを条件に、変更した送信電力P3=1000mWにより火災電文を電波中継器14−1へ再送信する。
【0054】
電波中継器14−1は、無線式感知器16−11からの電文を受信した際に、電文の送信元IDと登録しているノードIDとを比較し、両者が一致したときに有効な電文として無線受信用中継器12−1に対し通信経路15bで示すように中継送信する。
【0055】
この電波中継器14−1の中継送信は、初期設定した送信電力P1=10mWにより無線受信用中継器12−1へ送信し、送信を終了すると受信動作に切り替える。
【0056】
この火災電文の連続送信を行った後に、電波中継器14−1は、無線受信用中継器12−1からACKを受信した場合は送信動作を正常終了するが、ACKを受信できなかった場合、最初の送信開始からの時間が送信割当時間T1以内であることを条件に、初期設定している送信電力P1=10mWを、例えば前記表1の次に大きな送信電力P2=100mWに変更して再送信し、それでもACKが受信できなかった場合は、更に大きな送信電力P3=1000mWに変更して再送信する。
【0057】
無線受信用中継器12−1は、子ノードとして割り当てられた電波中継器14−1からの火災電文を受信した際に、火災電文の送信元IDと登録しているノードIDとを比較し、両者の一致で有効な電文として受信処理し、P型受信機10に対し感知器回線18−1に対する接点出力として発報電流を流すことで火災発報信号を送信する。
【0058】
また、無線受信用中継器12−1は、子ノードとしてノードIDを登録している無線式感知器16−13,16−14から火災電文を受信した場合、受信した電文の送信元IDと追加登録されたノードIDと比較し、両者の一致で有効な電文として受信処理し、P型受信機10に対し感知器回線18−1に対する接点出力として発報電流を流すことで火災発報信号を送信する。
【0059】
この親子関係にある無線式感知器16−13,16−14の無線受信用中継器12−1に対する送信動作も、電波中継器14−1と親子関係にある無線式感知器16−11,16−12の場合と同様であり、例えば無線式感知器16−13は火災電文を初期設定している送信電力P1=10mWにより無線受信用中継器12−1へ送信し、無線受信用中継器12−1からACKを受信した場合は送信動作を正常終了するが、ACKを受信できなかった場合、最初の送信開始からの時間が送信割当時間T1以内であることを条件に、初期設定している送信電力P1=10mWを、例えば前記表1の次に大きな送信電力P2=100mWに変更して再送信し、それでもACKが受信できなかった場合は、更に大きな送信電力P3=1000mWに変更して再送信する。
【0060】
更に無線受信用中継器12−1は、割り当て対象となっていない無線式感知器16−11,16−12より直接、電文を受信した場合についても、受信した電文の送信元IDと追加登録されたノードIDと比較し、両者が一致したときに有効な電文として処理し、処理結果をP型受信機10に送信することになる。
【0061】
このような無線式感知器16及び電波中継器14による火災電文の送信動作は、火災復旧電文、定期通報電文などの他の電文についても同様とする。しかしながら、送信電力を増加させると、無線式感知器16や電波中継器14の電池寿命に影響することから、重要度の比較的高い火災復旧電文は同じでよいが、定期通報、障害、試験、起動等のシステム管理に使用する重要度の低い電文については、初期設定している送信電力P=10mWに固定するか、変更する送信電力の上限をP2=100mWに制限することが望ましい。
【0062】
ここで、定期通報電文は、電波中継器14及び無線式感知器16が正常に動作していること、即ち持ち去りや電池切れが発生していないことを監視するため、電波中継器14及び無線式感知器16が定期的に送信する。無線式感知器16及び電波中継器14からの定期通報電文の送信に対し、無線受信用中継器12は、電文の送信元IDと登録したノードIDの一致で有効な電文として受信し、登録したノードIDごとに設けている定期通報タイマをリセットスタートしている。
【0063】
しかしながら、定期的に定期通報電文が受信されずに定期通報タイマが所定時間を超えてタイムアップした場合には、そのノードが正常に動作していない疑いがあるとして定期通報異常であることを判断し、P型受信機10に対し障害発生を通知する。この障害発生通知は、例えばP型受信機10からの感知器回線18に接続している終端抵抗を切り離して擬似的に断線状態を作り出すことで、定期通報異常による障害発生を通知する。
【0064】
[無線式感知器の構成]
(無線式感知器の概略)
図2図1に設けた1Fの無線式感知器16−11を取り出して、その機能構成の概略を示したブロック図である。なお、他の無線式感知器16−12〜16−34も同様となる。
【0065】
図2に示すように、センサノードとして機能する無線式感知器16−11は、感知器制御部20、無線通信部22、アンテナ24、センサ部26、試験用・登録用スイッチなどの操作部28及びバッテリー30で構成される。
【0066】
センサ部26は温度検出部または検煙部(煙検出部)である。センサ部26として温度検出部を設けた場合、温度検出素子として例えばサーミスタを使用し、この場合、温度による抵抗値の変化に対応した電圧検出信号を感知器制御部20へ出力する。またセンサ部26として検煙部を設けた場合、公知の散乱光式検煙構造をもち、感知器制御部20の指示により、所定周期でLEDを用いた発光部を間欠的に発光駆動し、フォトダイオードなどの受光部で受光した散乱光の受光信号を増幅し、煙濃度に応じた検出信号を感知器制御部20へ出力する。
【0067】
感知器制御部20は、例えばプログラムの実行により実現する機能である。ハードウェアとしてはCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。
【0068】
(無線通信部の構成)
無線通信部22は、通信制御部32、送信部34、受信部36を備え、セキュリティ用の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD−30(小電力セキュリティシステム無線局の無線設備標準規格)となる426MHz帯の無線信号(電文)を送受信する。
【0069】
通信制御部32は、ハードウェアとしてCPU、メモリ、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用し、例えばプログラムの実行により実現する機能である。
【0070】
送信部34は、空中線電力が1W以下とし、426.250MHz以上で426.8375MHz以下の周波数の電波を使用することで、キャリアセンスを行うことなく無線送信を行う。
【0071】
通信制御部32は、STD−30の規格に従い、送信部34に指示して電文の送信開始から送信休止を必要とするまでの送信割当時間(例えばT1=2秒)の間、例えば前記表1に示したように、初期設定した送信電力P1=10mWにより電文を送信させ、送信終了で受信部36を受信状態に切り替え、この状態でACKを受信した場合は送信を正常終了し、一方、ACKが受信できない場合は、送信割当時間T1の残り時間の間に、ACKが受信できるまで、例えば送信電力をP2=100mW、P3=1000mWと段階的に増加させながら電文の再送信を繰り返す制御を行う。
【0072】
また、通信制御部32は、送信部34に指示して、送信電力を増加させながら再送信を繰り返している途中で、送信割当時間T1=2秒に達した場合は、途中であっても送信を停止させ、送信休止時間T2=2秒を経過した後に、同様な送信を繰り返し、所定のリトライ回数、例えば7回に達したら送信異常終了とする制御を行う。
【0073】
(感知器制御部の構成)
感知器制御部20は、センサ部26から出力される例えば煙濃度検出信号を予め定めた閾値と比較し、閾値を超えたときに火災と判断し、無線通信部22に指示して火災電文を送信させる制御を行う。
【0074】
また、感知器制御部20は、センサ部26から出力される例えば煙濃度検出信号が閾値を下回る状態が例えば所定時間継続した場合或いは例えば所定回数連続した場合、火災の復旧(火災検知状態が解消したこと)を検知し、無線通信部22に指示し、火災復旧電文を送信させる制御を行う。
【0075】
また、感知器制御部20は、定期的に無線通信部22に定期通報を指示し、定期通報電文を送信させる制御を行う。
【0076】
また、感知器制御部20は、操作部28により登録モードのセットを検知した場合、機器IDとして知られたノードIDを送信元IDにセットした起動電文または試験電文を生成し、無線通信部22に定期通報を指示して送信させる制御を行い、これにより電波中継器14−1にノードIDを登録させる。
【0077】
[電波中継器の構成]
(電波中継器の概要)
図3図1に設けた1Fの電波中継器14−1を取り出して、その機能構成の概略を示したブロック図である。なお、他の電波中継器14−2,14−3も同様の構成となる。
【0078】
図3に示すように、中継ノードとして機能する電波中継器14−1は、中継制御部38、無線通信部40、アンテナ42、操作部44、表示部46、メモリ48及びバッテリー50で構成される。
【0079】
中継制御部38は、例えばプログラムの実行により実現する機能であり、ハードウェアとしてはCPU、メモリ48、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。またメモリ48には中継制御テーブル58が設けられ、図1に示すように、電波中継器14−1に子ノードとして割り当てられた無線式感知器16−11,16−12のノードIDを登録している。
【0080】
バッテリー50は商用AC100ボルトを受けて直流電源に変換する電源部としてもよい。
【0081】
(無線通信部の構成)
無線通信部40は、通信制御部52、送信部54、受信部56を備え、セキュリティ用の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD−30(小電力セキュリティシステム無線局の無線設備標準規格)となる426MHz帯の電文を送受信する。
【0082】
無線通信部40に設けた送信部54、受信部56は、図2の無線通信部22に設けた送信部34、受信部36の場合と基本的に同様であることから、その説明を省略する。
【0083】
通信制御部52は、例えば前記表1に示したように、初期設定した送信電力P1=10mWにより電文を中継送信させ、送信終了で受信部56を受信状態に切り替え、この状態でACKを受信した場合は中継送信を正常終了し、一方、ACKが受信できない場合は、送信割当時間T1の残り時間の間に、ACKが受信できるまで、例えば送信電力をP2=100mW、P3=1000mWと段階的に増加させながら電文の中継再送信を繰り返す制御を行う。
【0084】
また、通信制御部52は、送信部54に指示して、送信電力を増加させながら中継再送信を繰り返している途中で、送信割当時間T1=2秒に達した場合は、途中であっても送信を停止させ、送信休止時間T2=2秒を経過した後に、同様な中継再送信を繰り返し、所定のリトライ回数、例えば7回に達したら送信異常終了とする制御を行う。
【0085】
また、通信制御部52は、電文受信に基づき中継制御部38からACKの指示を受けた場合、初期設定した送信電力によりACKを送信する制御を行う。
【0086】
(中継制御部の構成)
中継制御部38は、プログラムの実行により実現される制御機能として、中継制御を行う。
【0087】
中継制御部38は、無線通信部40を介して無線式感知器から送信された火災電文、火災復旧電文、又は定期通報電文を受信した際に、各電文に含まれる送信元IDを取得し、中継制御テーブル58に登録しているノードIDと比較し、両者が一致した場合に、無線通信部40に指示してACKを送信させ、続いて受信した電文を中継送信させる制御を行い、一方、不一致の場合には中継送信を行わない。
【0088】
また、中継制御部38は、定期的に無線通信部40に定期通報を指示し、定期通報電文を送信させる制御を行う。
【0089】
[無線受信用中継器の構成]
(無線受信用中継器の概要)
図4図1に設けた1Fの防災無線ノードとして機能する無線受信用中継器12−1を取り出して、その機能構成の概略をP型受信機と共に示したブロック図である。なお、他の無線受信用中継器12−2,12−3も同様となる。
【0090】
無線受信用中継器12−1は、受信中継制御部60、無線通信部62、アンテナ64、有線通信部75、操作部66、表示部68、メモリ70及び電源部72で構成される。
【0091】
受信中継制御部60は、例えばプログラムの実行により実現する機能である。ハードウェアとしてはCPU、メモリ70、各種の入出力ポート等を備えたコンピュータ回路等を使用する。またメモリ70には中継制御テーブル80が設けられ、図1に示すように、無線受信用中継器16−1に子ノードとして割り当てられた無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDを登録し、更に通常は電波中継器14を介して無線信号を授受する無線式感知器16−11,16−12のノードIDを追加登録している。
【0092】
電源部72は、図1に示したように、P型受信機10からの電源線15による直流電力の供給を受けているが、商用AC100ボルトから直流電力を変換して電源を作り出してもよいし、電池電源を採用してもよい。
【0093】
(無線通信部の構成)
無線通信部62は、通信制御部74、送信部76、受信部78を備え、セキュリティ用の特定小電力無線局の標準規格として知られたSTD−30(小電力セキュリティシステム無線局の無線設備標準規格)となる426MHz帯の電文を送受信する。
【0094】
無線通信部62に設けた通信制御部74、送信部76、受信部78は、送信電力を固定設定している点を除き、図2の無線通信部22に設けた通信制御部32、送信部34、受信部36の場合と基本的に同様の構成であることから、その説明を省略する。
【0095】
(受信中継制御部の構成)
受信中継制御部60は、無線通信部62を介して火災電文を受信した場合に、この電文に含まれる送信元IDと中継制御テーブル80に登録及び追加登録しているノードIDとを比較し、両者が一致した場合に、無線通信部62に指示してACKを送信させ、また、有線通信部75に指示し、感知器回線18−1に発報電流を流す接点出力動作により火災発報信号をP型受信機10に送信する制御を行う。
【0096】
また、受信中継制御部60は、火災発報信号をP型受信機10に送信した後に、無線通信部62を介して火災復旧電文を受信した場合、この電文に含まれる送信元IDと中継制御テーブル80に登録及び追加登録しているノードIDとを比較し、両者が一致した場合に、無線通信部62に指示してACKを送信させ、また、有線通信部75に指示し、感知器回線18−1に発報電流を流す接点出力動作を解除し、P型受信機10に対する火災報知信号の送信を停止する制御を行う。
【0097】
また、受信中継制御部60は、無線通信部62を介して定期通報電文を受信した場合に、この電文に含まれる送信元IDと中継制御テーブル80に登録及び追加登録しているノードIDとを比較し、両者が一致した場合に、無線通信部62に指示してACKを送信させ、また、ノードIDごとに設けている定期通報タイマをリセットスタートし、定期通報電文が受信されずに定期通報タイマが所定時間を越えてタイムアップした場合は、P型受信機10からの感知器回線18−1に接続している終端抵抗を切り離して擬似的に断線状態を作り出すことで、定期通報異常の検出による障害発生を通知する制御を行う。
【0098】
[P型受信機の構成]
図4において、P型受信機10は、受信制御部82、回線受信部84−1〜84−3、電源供給部86、表示部88、音響警報部90、操作部92、移報部94及び不揮発メモリ96を備えている。なお自身の動作電源は、適切にバックアップされた商用電源を使用している(図示せず)。
【0099】
回線受信部84−1〜84−3からは感知器回線18−1〜18−3が図1に示したようにそれぞれ引き出され、感知器回線18−1には無線受信用中継器12−1が接続されている。
【0100】
回線受信部84−1は、無線受信用中継器12−1に設けた有線通信部75による接点動作で流れる発報電流を検知し、受信制御部82に対し火災検出信号を出力する。また回線受信部84−1は、無線受信用中継器12−1の有線通信部75における定期通報異常の検出に基づく終端抵抗の切り離しを、感知器回線の断線による監視電流の遮断として看做して検出し、障害検出信号を受信制御部82に出力する。
【0101】
受信制御部82はCPU、ROM、RAM、AD変換ポート及び各種の入出力ポートを備えたコンピュータ回路等であり、CPUによるプログラムの実行で受信制御部82の機能を実現している。
【0102】
受信制御部82は回線受信部84−1〜84−3のいずれかによる発報電流の検出で火災発報信号の受信出力が得られると、対応する感知器回線の火災発報と判断し、表示部88に代表火災表示を行うと共に、回線単位の地区表示による火災発生地区の表示を行う。また音響警報部90より音響火災警報を出力する。
【0103】
また受信制御部82は、回線受信部84−1〜84−3により感知器回線18−1〜18−3の断線を検出した場合、表示部88に代表障害表示を行うと共に、障害を発生した地区を回線単位に表示し、更に音響警報部90から音響障害警報を出力する。
【0104】
[電文フォーマット]
図5図1の無線防災システムで送受信する電文フォーマットを示した説明図である。
【0105】
図5に示すように、電文フォーマットは、位相修正信号、連番、送信元ID、データコード及びエラーチェックコードで構成される。位相修正信号は所定ビット長の「101010・・・・10」で繰り返すプリアンブル信号であり、これにより無線通信部に設けた受信用PLLの位相同期による受信準備を行うことが出来る。
【0106】
連番は電文の送信ごとに0〜255の範囲で順番に変化する値を格納し、受信側で電文送信の順序を知ることができる。送信元IDには送信元となる機器のノードIDが設定される。
【0107】
データコードは電文内容を示す情報であり、火災、火災復旧、定期通報、障害、起動、試験、ACKなどの内容を示す所定のコードが設定される。
【0108】
図1の無線防災システムに設けた無線式感知器16、電波中継器14、無線受信用中継器12は、送信要求が発生した場合、この電文フォーマットに従った電文を生成し、1回の送信で同じ電文を例えば4回連続して送信する。
【0109】
[送信動作]
図6は無線式感知器で火災を検知した場合の送信動作を示したタイムチャートであり、図6(A)は火災検知を示し、図6(B)は送信規格を示し、図6(C)は正常送信時の送信とACK受信を示し、図6(D)は通信障害が発生した場合の送信とACK受信を示し、更に図6(E)は送信電力の変更を示す。なお、図6における送信割当時間T1の時間幅は、図6(C)、(D)の電文を記載するスペースを確保するため、送信休止期間T2の時間幅の縮尺とは一致していない。
【0110】
図6において、無線式感知器16が時刻t1で火災を検知したとすると、時刻t1で、火災検知に基づき生成した火災電文を、初期設定している送信電力P1=10mWで4回連続して送信し、送信終了で受信状態に切り替わる。無線式感知器16の送信した火災電文が例えば電波中継器14で正常に受信されると、ACKが送信され、これを受信することで、送信を正常終了とする。
【0111】
一方、通信障害の発生により、時刻t1からの初期設定した送信電力P1=10mWによる火災電文の送信に対し、受信状態に切り替えても点線で示すタイミングでACKが受信できなかった場合は、初期設定した送信電力P1=10mWを次に大きい送信出力P2=100mWに変更して火災電文の再送信し、それでもACKが受信できない場合は、最も大きい送信出力P3=1000mWに変更して火災電文を再送信する。この場合、通信障害が一時的なものであれば、2回目の送信電力P2=100mWによる火災電文の送信又は3回目の送信電力P3=1000mWによる火災電文の再送信に対しACKが受信され、送信を正常終了できる。
【0112】
図6(D)は、再送信を繰り返してもACKが受信できない極端な場合を例示しており、送信電力P3=1000mWに変更してACKが受信できずに火災電文を繰り返し送信している途中の時刻t2で送信割当時間T1=2秒が経過した場合、送信を終了し、送信休止時間T2=2秒を空け、時刻t3から再送信を繰り返し、再送信のリトライ回数が所定回数例えば7回に達し、それでもACKが受信できない場合は、リトライオーバーとして送信動作を異常終了とする。このようにリトライオーバーとなるのは例えば送信先の電波中継器14が故障停止しているように場合等が想定される。
【0113】
[本発明の変形例]
(無線防災システム)
上記の実施形態は、無線式感知器、電波中継器、無線受信用中継器及び受信機で無線防災システムを構成しているが、無線受信用中継器と通信可能な比較的短い通信距離の範囲に無線式感知器を設置している場合には、電波中継器を除き、無線式感知器、無線受信用中継器及び受信機で無線防災システムを構成するようにしても良い。無線受信用中継器と受信機は一体の機器としてもよい。
【0114】
また、上記の実施形態においては、無線式感知器から電波中継器へ、電波中継から無線受信用中継器へ、あるいは無線式感知器から無線受信用中継器へと、子ノードから親ノードへ無線信号を送信する形態としているが、これに限らず、無線式火災感知器同士で無線信号を授受するシステムであっても本発明を適用することができ、火災検知元の感知器から火災移報先の感知器へ信号を送る際に、ACK信号ができないときは、送信電力を変化させる様にしてもよい。
【0115】
(R型受信機)
上記の実施形態は、火災受信機としてP型受信機からの感知器回線に無線受信用中継器を接続しているが、データ伝送機能を持つR型受信機に無線受信用中継器を接続するようにしてもよい。
【0116】
(制御部)
上記の実施形態では、無線式感知器16、電波中継器14及び無線受信用中継器12は、無線中継部の通信制御部と別に感知器用制御部、中継制御部、受信中継制御部を設けているが、両者を一つの制御部としても良い。
【0117】
また、図6の実施形態においては、4回の送信が終了して、ACKが受信できないときに、送信電力を変更しているが、最初の送信割当時間T1は初期設定した送信電力P1=10mWで繰り返し送信し、最初の送信割当時間T1が経過してもACKが受信できないときに、次の送信割当時間T1のときに次に大きい送信出力P2=100mWに変更して再送信するように、送信割当時間T1毎に送信電力を異ならせても良い。無線信号を送信する際に、現在の送信電力段階情報を付加して親ノードに送信して、電波状況を親ノード側に認識させる様にしても良い。送信電力段階の情報を受けた親ノードは、ACKの返信を、子ノードからの送信電力段階情報に応じて、送信電力を変化させて返信するようにしてもよく、電波状況が悪いときには、ACKの送信においても電波状況が悪い可能性があるために、送信電力を高くして返信して、子ノードに確実に応答信号が受信されるように制御してもよい。

【0118】
(その他)
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0119】
12−1〜12−3:無線受信用中継器
14−1〜14−3:電波中継器
16−11〜16−34:無線式感知器
18−1〜18−3:感知器回線
20:感知器制御部
22,40,62:無線通信部
24,42,64:アンテナ
26:センサ部
32,52,74:通信制御部
34,54,76:送信部
36,56,78:受信部
38:中継制御部
60:受信中継制御部
82:受信制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6