特許第6278478号(P6278478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6278478-セメント組成物およびコンクリート 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6278478
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】セメント組成物およびコンクリート
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/153 20060101AFI20180205BHJP
   C04B 28/08 20060101ALI20180205BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20180205BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20180205BHJP
【FI】
   C04B7/153
   C04B28/08
   C04B22/10
   C04B24/12 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-538831(P2015-538831)
(86)(22)【出願日】2013年12月20日
(86)【国際出願番号】JP2013084261
(87)【国際公開番号】WO2015045194
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2016年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2013-197994(P2013-197994)
(32)【優先日】2013年9月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 範彦
(72)【発明者】
【氏名】扇 嘉史
(72)【発明者】
【氏名】平尾 宙
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−137618(JP,A)
【文献】 特開平03−183647(JP,A)
【文献】 笠井芳夫,コンクリート総覧,1998年 6月10日,P.85−86
【文献】 JIS A 6206 コンクリート用高炉スラグ微粉末,2013年 3月21日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B2/00−32/02,
C04B40/00−40/06,
C04B103/00−111/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
JIS A 6206に規定する活性度指数(材齢7日、ブレーン比表面積が3500cm/g以上で5000cm/g未満の場合)が55未満である高炉スラグ粉末、セメント、石灰石粉末、およびトリアルカノールアミンを少なくも含むセメント組成物であって、
前記の高炉スラグ粉末、セメント、石灰石粉末、およびトリアルカノールアミンの合計を100質量%として、高炉スラグ粉末25〜60質量%、セメント35〜70質量%、石灰石粉末1〜10質量%、およびトリアルカノールアミン0.002〜0.2質量%含むセメント組成物。
【請求項2】
前記トリアルカノールアミンがトリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(慣用名:トリイソプロパノールアミン)である、請求項1に記載のセメント組成物。
【請求項3】
1日の平均気温が23℃以上の環境下で施工するコンクリートであって、請求項1または2のいずれかに記載のセメント組成物をコンクリート1mあたり200〜400kg含むコンクリート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉水砕スラグを含むセメント組成物およびコンクリートに関する。特に、活性度指数の低い高炉水砕スラグでも有効に利用でき、また、気温が高い環境下で強度発現性に優れたセメント組成物等に関する。
ここで、活性度指数とはJIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」に規定する指数で、高炉水砕スラグの潜在水硬性の程度を表す指標の一つである。
【背景技術】
【0002】
近年のセメント製造分野における主な課題は、産業副産物等の再資源化とCOの排出削減である。そして、従来、この課題の解決手段の一つとして、高炉セメントが挙げられている。
高炉セメントは、産業副産物である高炉水砕スラグ(以下「高炉スラグ」という。)を最大で70質量%含み、その分、セメントクリンカー(以下「クリンカー」という。)の使用量を削減できるため、高炉スラグの再資源化、COの排出削減、およびクリンカー原料である石灰石等の天然資源の節約に極めて有効である。
高炉セメンの中で最も多用されている高炉セメントB種(高炉スラグを約40質量%含有)を例にとれば、該セメントにおける石灰石とCOの削減率は、普通ポルトランドセメント(以下「普通セメント」という。)に比べ、いずれも40%程度と高い。
【0003】
しかし、高炉スラグは、クリンカーの水和によって生じる水酸化カルシウムの刺激により、水和が徐々に進む性質(潜在水硬性)があり、水と直接反応する水硬性のクリンカーと比べ水和速度が小さい。そのため、高炉スラグを含むセメントやコンクリートは、材齢28日までの初期の強度発現性が低いという短所がある。例えば、非特許文献1の93頁の図2に示すように、普通セメントを高炉セメントで逐次置換したセメント組成物を用いたJISモルタル(1997年改正前)の材齢3日の圧縮強さは、高炉スラグの増加に伴い顕著に低下し、高炉スラグの添加量(率)が70%ではプレーンの30〜35%程度にまで大きく低下する(後掲の図1参照)。
したがって、JIS A 6206「コンクリート用高炉スラグ微粉末」では、コンクリート等の混和材料に用いる高炉スラグの活性度指数は、モルタルの材齢7日で55以上、材齢28日で75以上と規定している。よって、該値を満たさない高炉スラグは、コンクリート等の混和材料として適さず、コンクリート等に混合することはできない。
【0004】
そこで、以前から、高炉セメントの使用量の拡大を目的として、高炉スラグを含むセメントの強度発現性を改善する手段が、いくつか提案されている。
例えば、特許文献1では、高炉スラグ含有セメントと塩素バイパスダストを含むセメント組成物が提案されている。しかし、該セメント組成物中の塩素バイパスダストの含有率が5%を超えると、塩素バイパスダストに由来するアルカリが過多となり、アルカリ骨材反応によるコンクリートのひび割れが発生するおそれがある。
また、特許文献2では、高炉水滓を400〜700℃で5〜30分間急熱処理した後に、100℃以下に急冷した高炉水滓と、これを含む低発熱セメントが提案されている。しかし、この方法では、高炉水滓の急熱処理と急冷処理を続けて行うため、熱の利用効率が悪く実用的ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】依田彰彦ほか「微粉末化した高炉スラグを混和材として用いたモルタル・コンクリートの強度」、セメント技術年報、Vol.42、pp.92-95、昭和63年
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−218657号公報
【特許文献2】特公平07−106929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、セメント製造分野における高炉スラグの使用量の拡大を目的として、強度発現性が向上した高炉スラグ含有セメント組成物等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは鋭意検討した結果、以下の発明は前記目的を達成できることを見い出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記の構成を有するセメント組成物等である。
[1]JIS A 6206に規定する活性度指数(材齢7日、ブレーン比表面積が3500cm/g以上で5000cm/g未満の場合)が55未満である高炉スラグ粉末、セメント、石灰石粉末、およびトリアルカノールアミンを少なくも含むセメント組成物であって、
前記の高炉スラグ粉末、セメント、石灰石粉末、およびトリアルカノールアミンの合計を100質量%として、高炉スラグ粉末25〜60質量%、セメント35〜70質量%、石灰石粉末1〜10質量%、およびトリアルカノールアミン0.002〜0.2質量%含むセメント組成物。
ただし、セメントが、JIS R 5210「ポルトランドセメント」に規定する少量混合成分として高炉スラグおよび石灰石を含む場合、[]に記載の高炉スラグおよび石灰石とは、それぞれ、この少量混合成分である高炉スラグおよび石灰石を含めたものをいい、一方、[]に記載のセメントとは、少量混合成分である高炉スラグおよび石灰石を除いた残りのセメント分をいう。
[2]前記トリアルカノールアミンがトリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(慣用名:トリイソプロパノールアミン)である、前記[1]に記載のセメント組成物。
[3]1日の平均気温が23℃以上の環境下で施工するコンクリートであって、前記[1]または[2]のいずれかに記載のセメント組成物をコンクリート1mあたり200〜400kg含むコンクリート。
【発明の効果】
【0009】
本発明のセメント組成物は、活性度指数が低い高炉スラグを含む場合でも強度発現性が高い。したがって、本発明のセメント組成物は、産業副産物(高炉スラグ)の再資源化、COの排出削減、および天然資源の節約に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】非特許文献1の93頁に掲載されたJIS R 5201によるモルタルの圧縮強さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のセメント組成物は、前記のとおり、高炉スラグ粉末、セメント、石灰石粉末、およびトリアルカノールアミンの各成分を少なくとも含むセメント組成物である。以下、本発明について前記各成分等に分けて説明する。
1.高炉スラグ粉末
本発明で用いる高炉スラグ粉末は、高炉で銑鉄を製造する際に副生する溶融状態のスラグを、水で急冷し破砕して得られる水砕スラグを粉末にしたものである。
また、前記高炉スラグ粉末のJIS A 6206に規定する活性度指数は、活性度指数の低い高炉スラグの有効利用の観点から、材齢7日、かつブレーン比表面積が3500cm/g以上で5000cm/g未満の場合に、85以下、好ましくは75以下、さらに好ましくは65以下、特に好ましくは55未満である。また、前記活性度指数の下限は50である。
ここで、活性度指数とは、普通セメントの50質量%を高炉スラグで置換した混合セメントを用いたモルタルの圧縮強さを、普通セメントを用いたモルタルの圧縮強さで割って得た比を100倍した値である。
【0012】
前記高炉スラグの含有率は、高炉スラグ粉末、セメント、石灰石粉末、およびトリアルカノールアミンの合計を100質量%として、好ましくは25〜60質量%である。該含有率が該範囲内にあれば、高炉スラグの有効利用が図れるとともに、セメント組成物の強度発現性も高く維持できる。なお、前記高炉スラグの含有率の下限は、より好ましくは30質量%、さらに好ましくは35質量%であり、その上限は、より好ましくは55質量%、さらに好ましくは50質量%である。
【0013】
前記高炉スラグ粉末のブレーン比表面積は、好ましくは3000cm/g以上である。該値が3000cm/g未満では、セメント組成物の初期強度発現性の向上効果が小さい。なお、前記高炉スラグ粉末のブレーン比表面積は、より好ましくは4000cm/g以上、さらに好ましくは5000cm/g以上、特に好ましくは6000cm/g以上である。また、該値の上限は、粉砕コストの観点から12000cm/gである。
また、高炉スラグ粉末は、高炉スラグをボールミルやジェットミルなどの粉砕機で粉砕して得ることができる。
前記高炉スラグ粉末の塩基度は、好ましくは1.6以上である。該値が1.6以上でセメント組成物の強度発現性の向上効果が高い。なお、該値は、より好ましくは1.7以上、さらに好ましくは1.8以上である。前記塩基度は下記(1)式を用いて算出する。
塩基度=〔(CaO+MgO+Al)/SiO〕 ・・・(1)
ただし、式中の化学式は、高炉スラグ粉末中の、該化学式が表す化合物の含有率(質量%)を表す。
【0014】
また、前記高炉スラグ粉末のガラス化率は、好ましくは90%以上である。該値が90%以上で、セメント組成物の強度発現性の向上効果は高い。該値は、より好ましくは95%以上である。ここで、前記ガラス化率は、例えば、以下の(i)と(ii)により求めることができる。
(i)62〜105μmの高炉スラグ粉末を篩分けして得た後、ここから400〜500個の粒子を無作為に抽出する。
(ii)次に、抽出した粒子をブロムナフタレン溶液に浸し、偏光顕微鏡を通してガラス粒子数を数え、全粒子数に対するガラス粒子数の比に100を乗じて得た値として、ガラス化率を求める。
【0015】
2.セメント
本発明で用いるセメントは、特に制限されず、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、石炭灰含有セメント、シリカセメント、白色セメント、およびエコセメント等から選ばれる1種以上が挙げられる。
ここで、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、および超早強ポルトランドセメントに含まれる少量混合成分としての高炉スラグと石灰石(JIS R 5210に記載のもの)、エコセメントで5%まで混合できる石灰石(JIS R 5214「エコセメント」に記載のもの)、混合セメントに含まれる少量混合成分としての高炉スラグと石灰石(JIS R 5211「高炉セメント」、JIS R 5212「シリカセメント」、およびJIS R 5213「フライアッシュセメント」に記載のもの)、および高炉セメントの主混合材である高炉スラグは、本発明において、それぞれ高炉スラグ粉末および石灰石粉末として扱う。
【0016】
前記セメントの含有率は、高炉スラグ粉末、セメント、石灰石粉末、およびトリアルカノールアミンの合計を100質量%として、好ましくは35〜70質量%である。該含有率が該範囲内にあれば、セメント組成物の強度発現性は高く維持できる。
なお、前記セメントの含有率の下限は、より好ましくは45質量%、さらに好ましくは50質量%であり、その上限は、より好ましくは65質量%、さらに好ましくは60質量%である。
【0017】
3.石灰石粉末
本発明で用いる石灰石粉末は、好ましくは炭酸カルシウムを90質量%以上含むものである。該値が90質量%以上で、セメント組成物の強度発現性の向上効果が高い。なお、該値は、より好ましくは95質量%以上である。
【0018】
前記石灰石粉末の含有率は、高炉スラグ粉末、セメント、石灰石粉末、およびトリアルカノールアミンの合計を100質量%として、好ましくは1〜10質量%である。該含有率が該範囲内にあれば、セメント組成物の強度発現性の向上効果が高い。なお、前記石灰石粉末の含有率の下限は、より好ましくは2質量%、さらに好ましくは3質量%であり、その上限は、より好ましくは9質量%、さらに好ましくは8質量%である。
【0019】
前記石灰石粉末のブレーン比表面積は、好ましくは4000cm/g以上である。該値が4000cm/g以上で、セメント組成物の強度発現性の向上効果は高い。なお、前記石灰石粉末のブレーン比表面積の下限は、より好ましくは5000cm/g、さらに好ましくは6000cm/g、特に好ましくは8000cm/gであり、その上限は、より好ましくは12000cm/g、さらに好ましくは11000cm/g、特に好ましくは10000cm/gである。
【0020】
4.トリアルカノールアミン
本発明で用いるトリアルカノールアミンは、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−2−プロパノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−(ヒドロキシエチル)アミン、およびトリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(慣用名:トリイソプロパノールアミン)等から選ばれる1種以上が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、強度の増進効果が高いトリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン(慣用名:トリイソプロパノールアミン)である。
【0021】
前記トリアルカノールアミンの含有率は、高炉スラグ粉末、セメント、石灰石粉末、およびトリアルカノールアミンの合計を100質量%として、好ましくは0.002〜0.2質量%である。該含有率が該範囲内にあれば、セメント組成物の強度発現性の向上効果が高く、また連行空気量が適正範囲内に維持できる。
なお、前記トリアルカノールアミンの含有率の下限は、より好ましくは0.005質量%、さらに好ましくは0.01質量%であり、その上限は、より好ましくは0.1質量%、さらに好ましくは0.05質量%である。
【0022】
5.セメント組成物
次に、本発明のセメント組成物について説明する。
本発明のセメント組成物は、前記のとおり、高炉スラグ粉末、セメント、石灰石粉末、およびトリアルカノールアミンを必須成分として含むものである。そして、該セメント組成物の製造方法は、例えば下記(1)〜(5)の方法が挙げられる。
(1)高炉スラグ粉末、セメント、石灰石粉末、およびトリアルカノールアミンを混合する方法。
(2)高炉スラグ(非粉末)、クリンカー(非粉末)、石膏(非粉末)、石灰石(非粉末)、およびトリアルカノールアミンを混合して同時に粉砕する方法。
(3)クリンカー(非粉末)、石膏(非粉末)、および石灰石(非粉末)を混合して同時に粉砕した後、高炉スラグ粉末を添加して混合する方法。
(4)クリンカー(非粉末)、石膏(非粉末)、および高炉スラグ(非粉末)を混合して同時に粉砕した後、石灰石粉末を添加して混合する方法。
(5)クリンカー(非粉末)、および石膏(非粉末)を同時に粉砕した後、高炉スラグ粉末と石灰石粉末を添加して混合する方法。
前記方法の中でも、高炉セメントの一般的な製造方法である(3)の方法が好適である。
なお、前記(3)〜(5)におけるトリアルカノールアミンの添加方法は、クリンカー等の混合粉砕時にクリンカー等に添加する、別途後添加する高炉スラグ粉末に添加する、または、全ての材料を混合する最終段階で添加する等のいずれの添加方法でも可能である。
また、粉砕装置は、ボールミル、ジェットミル等が使用でき、混合装置はボールミル、ヘンシェルミキサー等が使用できる。
【0023】
本発明のセメント組成物の粉末度は、強度発現性、作業性、および製造コスト等の点から、ブレーン比表面積で、好ましくは2000〜5000cm/gである。また、前記セメント組成物の粉末度の下限は、より好ましくは2500cm/g、さらに好ましくは3000cm/gであり、その上限は、より好ましくは4500cm/g、さらに好ましくは4000cm/gである。
なお、該セメント組成物は前記必須成分のほかに、少量混合成分として、さらにフライアッシュ、およびシリカ質混合材を、前記セメント組成物の物性が損なわれない範囲で含んでもよい。
【0024】
5.コンクリート
本発明のコンクリートは、前記のとおり、1日の平均気温が23℃以上の環境下で施工するコンクリートであって、前記セメント組成物をコンクリート1mあたり200〜400kg含むコンクリートである。本発明のセメント組成物は、後掲の表4に示すように、25℃の環境下では材齢7日における圧縮強さ比が83〜94(実施例1〜4)と、普通セメントとほぼ同等のレベルであり、強度発現性の向上効果が顕著である。
前記セメント組成物の含有量(単位量)は、好ましくはコンクリート1mあたり200〜400kgである。該単位量がこの範囲にあれば、強度発現性、流動性、ワーカビリティー等が良好である。
本発明のコンクリート配合は、特に制限されず、通常の、水セメント比、単位水量、単位細骨材量、および単位粗骨材量等を採用することができる。また、本発明のコンクリートには、高性能AE減水剤、高性能減水剤、減水剤、AE剤、遅延剤等の混和剤が使用できる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
1.使用材料
(1)高炉スラグ粉末
(i)高炉スラグ粉末A
JIS A 6206の適合品(活性度指数72)。ちなみに、ブレーン比表面積が3500cm/g以上5000cm/g未満である高炉スラグ粉末の場合、材齢7日における活性度指数は55以上が適合する。
(ii)高炉スラグ粉末B
高炉スラグ粉末Aを500℃で24時間加熱した後、徐冷してJIS A 6206の活性度指数に適合しない高炉スラグ粉末B(活性度指数54)を調製した。
なお、表1に、高炉スラグ粉末Aと高炉スラグ粉末Bの物性等を示す。
(2)セメント
(i)普通セメント(太平洋セメント社製)。表2にその化学組成を示す。なお、該セメントは少量混合成分を含まない。
(ii)高炉セメントB種相当品
前記普通セメントと高炉スラグ粉末Aを、それぞれ6:4の質量比で混合した高炉セメントB種の相当品(表3中では「高炉B種」と表示した。)
(3)石灰石粉末
JIS A 5008「舗装用石灰石粉」の規格品
(4)トリアルカノールアミン
トリイソプロパノールアミン(試薬1級、表3中では「TIPA」と表示した。)
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
2.セメント組成物の製造とモルタルの圧縮強さの測定
表3に示す配合に従い、前記材料を混合して実施例1〜4と比較例1〜5のセメント組成物を製造した。なお、参考例として、普通セメント(参考例1)と高炉セメントB種相当品(参考例2)を用いた。
次に、JIS R 5201「セメントの物理試験方法」に準拠して、前記セメント組成物等を用いてモルタル供試体を作製し、該供試体の圧縮強さを測定した。なお、モルタルの混練、成形、および養生は、20℃と25℃の2種類の条件下で行った。
普通セメントモルタル(参考例1)の圧縮強さを100とした場合の、各実施例と比較例の圧縮強さ比を表4に示す。
【0029】
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
3.圧縮強さについて
(1)JISの活性度指数に適合する高炉スラグ粉末Aを含むセメント組成物(実施例1、2)
表4に示すように、実施例1、2の圧縮強さ比は、材齢7日および28日において76〜98であり、高炉セメントB種相当品(参考例2)の69〜84と比べ大きい。
特に、環境温度が25℃では、実施例1、2の圧縮強さ比は87〜98とより大きくなり、さらに材齢28日では94、98と普通セメント(参考例1)と同等になった。
したがって、本発明のセメント組成物は、強度発現性の向上効果が格段に高いといえる。
【0032】
(2)JISの活性度指数に不適合の高炉スラグ粉末Bを含むセメント組成物(実施例3、4)
表4に示すように、実施例3、4の圧縮強さ比は、材齢7日および28日において63〜83であり、高炉セメントB種相当品(参考例2)の69〜84と比べ同等である。
特に、環境温度が25℃では、実施例3、4の圧縮強さ比は73〜83とより大きくなる。
したがって、前記のとおり、本発明のセメント組成物は、JISの活性度指数に適合しない高炉スラグ粉末を用いた場合でも、高炉セメントB種相当品と同等の強度発現性を示すことから、本発明のセメント組成物によれば、JISの活性度指数に適合しない高炉スラグの使用量の拡大を図ることができる。
なお、表4に示すように、本発明の必須成分である石灰石粉末等を含まない比較例1〜5は、実施例に比べ強度発現性に劣る。
図1