(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、吸気すると人体に悪影響を及ぼす粉じんの存在が社会問題となっている。このような粉体としては、例えば、微小粒子状物質(PM2.5)のような浮遊粒子状物質、肺がんを引き起こすものとして知られるアスベスト、シリカ、カーボンナノチューブ、抗がん剤など多数が挙げられる。そして、これらの危険な粉体を研究や分析する現場においては、これらを高濃度で長時間取り扱うことから、その研究者や作業者は、これらの危険物質による曝露に対して、よりリスクの高い環境下におかれている現状がある。
【0003】
特に、PM2.5の質量濃度測定は、大気中に設置した規定の捕集装置にフィルタを装着し、このフィルタに捕集された粒子状物質の重さを計量して求められている。このとき、フィルタの吸湿による粒子状物質の吸着を防ぎ、安定した計量を行う必要から、その計量環境は、温度摂氏21.5±1.5℃、湿度35±5%、天秤の精度は±1μgとするよう、規格で厳しく制限されている。よって、天秤を設置する空間は、温湿度を規格内にするべく制御しなければならない。
【0004】
図9は、PM2.5などの危険な粉体を測定する際に従来に用いられている、恒温恒湿を実現させた天秤室の模式図である。符号1は温湿度制御装置本体、符号2は温湿度制御装置室内機、符号3は作業空間、符号4は天秤室を覆う断熱チャンバー、符号5は天秤、である。矢印は、空気の流れを示している。すなわち、天秤室を断熱し、温湿度制御装置1、2によって温湿度管理された送風をおこして、作業空間3を均一な環境とした上で、計量を行うようにしたものである。
【0005】
しかし、この環境作りは、設備投資が大きいことに加え、人が入れる程の広い室内空気を攪拌させるための強い送風によって、天秤5の計量値が不安定化する問題がある。さらに問題なのは、送風によって危険な粉体が巻き上がり、作業空間3に拡散して、作業者が曝露してしまうことである。
【0006】
一方、危険な粉体の曝露を防ぐシステムとしては、密閉空間に危険物質を封じ込め、グローブを介して作業を行うグローブボックス(例えば特許文献1)や、作業空間を強制排気して、危険物質を強制的に吸引し外部流出を防ぐドラフトチャンバー(例えば特許文献2)が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、現実問題として、グローブボックスは、密閉空間を作ることから作業自由度が低いという問題があり、危険なウイルスなどを操作する場面に限定されて使用されている。
【0009】
ドラフトチャンバーは、作業空間の危険物質を吸引し排気する機構を備えているが、強い排気能力を規定しているだけで、粉体となる粒子状危険物質を封じ込める機能は保障されていない。また、装置構造上の設備として、ラインに繋がった排気管が必要であり、初期投資が大変で、任意の場所に新たに設置することが難しい。さらに、ドラフトチャンバーは、強制的に排気することから、チャンバー内の気流は激しく、天秤を設置した場合には、計量値の確定が困難となるケースが多い。このことは、高精度な天秤を設置した場合には、なおさら無視できない問題となる。
【0010】
上述のように、均一な計量環境を実現し、高精度な天秤の計量値を安定させるという、相反する条件を整え、かつ人の曝露も起こさない計量を、困難なく(装置の設置自由度や費用を含め)行うことは、現状では難しい問題がある。
【0011】
本発明は、前述した従来技術の問題を解決するために為されたものであって、危険かつ微小な粉体を、安定かつ安全に、容易に計量できる計量システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明に係る計量システムは、計量装置が設置可能な作業空間と、前記作業空間の前面に設けた開放部と、前記作業空間に設定したエアー入口及びエアー出口と、を除く他の部分を閉塞して作業空間を画成する封じ込め装置と、吸入した空気の温度と湿度を制御し、該空気を作業空間へ送風可能な温湿度制御装置と、粉体を集塵するフィルタユニットと、前記温湿度制御装置と前記封じ込め装置のエアー入口とを密閉状態で接続する第1の接続手段と、前記封じ込め装置のエアー出口と前記フィルタユニットとを密閉状態で接続する第2の接続手段と、前記フィルタユニットと前記温湿度制御装置とを密閉状態で接続する第3の接続手段と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この構成により、温湿度制御装置から送り出される温湿度制御された空気は、第1の接続手段を介して、封じ込め装置に導かれる。封じ込め装置では、空気は、封じ込め装置に設定されたエアー入口から作業空間に流入され、封じ込め装置に設定されたエアー出口から排出される。このとき、作業空間には、設計された空気の流れが発生し、計量システム内の唯一の開放空間となる封じ込め装置の開放部に、外部から見て相対的な負の圧力を発生させる。この結果、作業空間に流入した空気は、封じ込め装置の前面に設けた開放部から作業空間に流入した外気とともに、第2の接続手段を介して、フィルタユニットに導かれる。そして、フィルタユニット内でフィルタを通過した空気は、第3の接続手段を介して、温湿度制御装置に戻る。
【0014】
すなわち、温湿度制御された空気は、温湿度制御装置、封じ込め装置、フィルタユニットを循環し、この限定された空間のみを通過し、封じ込め装置内の温湿度を制御するため、空気の流量を減少させることができる。これにより、作業空間の風量が弱まり、設置した天秤の計量値が安定する。
【0015】
また、計量作業に伴って作業空間に浮遊する危険な粉体は、封じ込め装置と第2の接続手段及びフィルタユニットに留まるので、計量システム内に確実に封じ込められ、作業者の曝露を防ぐことができる。
【0016】
また、本計量システムの閉空間は、温湿度制御装置、封じ込め装置、フィルタユニットで完結するので、装置が小型で済むとともに、この設備以上の拡張工事を必要としない。また、温湿度制御装置、封じ込め装置、フィルタユニットを別ユニットとし、これらを接続する構成であるので、システムの新規設置、移動および後付けも容易である。
【0017】
好ましくは、前記封じ込め装置の前記エアー入口は、封じ込め装置の上面に設けられ、前記エアー出口は、前記封じ込め装置の左右いずれかの側面に設けられることを特徴とする。
【0018】
この構成により、作業空間には上方から下方へのダウンフローが発生し、要となる計量装置周辺での流量制御性および空気の攪拌性が向上する。
【0019】
好ましくは、前記作業空間の上方位置には、通気孔を備え、空気の流れを制御する上方水平バッフルが設けられることを特徴とする。
【0020】
この構成により、作業空間に流入した空気は、上方水平バッフルの上面を伝って通気口から流れるため、作業空間の空気の流路が天秤に対して層流となり、計量値を安定させることができる。
【0021】
好ましくは、前記通気孔は、前記封じ込め装置の前記エアー入口の下方域を除く位置に形成されることを特徴とする。
【0022】
この構成により、エアー入口から吹き出された比較的風速の強い段階の空気は、確実に上方水平バッフルに当たり、弱められてから流れることとなるため、計量値をいっそう安定させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、危険かつ微小な粉体を、安定かつ安全に、容易に計量できる計量システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は本発明に係る計量システムの右方斜視図である。
計量システム10は、温湿度制御装置11と、フィルタユニット12と、作業空間3を有する封じ込め装置13と、第1のダクト14と、第2のダクト15と、第3のダクト16と、を有する。封じ込め装置13は、本計量システム10の構成要素でない作業台の上に設置されている。作業空間3には、本計量システム10の構成要素でない、PM2.5などの危険な粉体を計量するのに適した、計量値の読み取り精度(最小表示)が1μg(0.001mg)となる天秤5が設置されている。
【0025】
温湿度制御装置11は、作業空間3に対して、設定された温度と湿度を実現するために使用される。温湿度制御装置11は、吸入口112と、排出口113とを有する。その筐体内には、冷却器、加熱器及び加湿器を有し、排出口113の内端口には、温湿度制御された空気を排出口113の外端口方向へ送風する、流量を制御可能な送風ファン18が配置されている。そして、作業空間3に設置される温湿度センサによって作業空間3の温湿度環境を検出し、例えばPID制御によって、吸入口112から取り入れた空気の温湿度を、設定された温湿度に調整する。
【0026】
フィルタユニット12は、作業空間3から排出された空気から危険な粉体を取り除くために使用される。フィルタユニット12は、吸入通気口122と排出通気口123を有し、その筐体内に、粉体を集塵できるフィルタを単数或いは複数内蔵している。
【0027】
フィルタには、HEPAフィルタ (High Efficiency Particulate Air Filter)、或いは、取り扱う粉体の危険有害性に応じてULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air Filter)を用いるのが好ましい。HEPAフィルタは、JIS Z8122によって、「定格風量において0.3μmの粒子に対して99.97%以上の捕集効率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を有するエアフィルタ」と規定されているものである。ULPAフィルタは、同規定により、「定格風量で粒径が0.15μmの粒子に対して99.9995%以上の粒子捕集率をもち、かつ初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタ」と規定されているものである。フィルタユニット12は、バグインバグアウト方式と呼ばれる、汚染されたフィルタに直接触れることのない安全な交換が可能な構造となっている。
【0028】
また、作業空間3の容積が当初の設計から変更になった場合等には、フィルタユニット12は、温湿度制御装置11の送風ファン18とは別個に制御可能な、吸引ファン(第2の送風ファン)を、空気流路において前記フィルタの下流位置に追加的に備えることが好ましい。フィルタユニット12に、第2の送風ファンを設け、第2の送風ファンの送風力で空気を吸引し、強制的にフィルタに通過させることで、フィルタに捕集される粉体の流量を、空気の流入・流出量として最適に制御することができる。また、第2の送風ファンを制御することで、作業空間3の流量を調整することができ、作業空間3外への粉体飛散が起こることのない最適な流量とすることができる。
【0029】
第1のダクト(第1の接続手段)14は、温湿度制御装置11の排出口113と、封じ込め装置13のエアー入口132(後述)とを密閉状態で接続するために使用される。
【0030】
第2のダクト(第2の接続手段)15は、封じ込め装置13のエアー出口133(後述)とフィルタユニット12の吸入通気口122とを密閉状態で接続するために使用される。
【0031】
第3のダクト(第3の接続手段)16は、フィルタユニット12の排出通気口123と温湿度制御装置11の吸入口112とを密閉状態で接続するために使用される。
【0032】
第1のダクト14、第2のダクト15および第3のダクト16は、伸縮および曲げ変形が可能な蛇腹タイプの筒体で構成されている。
【0033】
次に、封じ込め装置13について説明する。
図2は封じ込め装置の正面図、
図3は封じ込め装置の平面図、
図4は封じ込め装置の左側面図、
図5は封じ込め装置の縦断面図(
図2示すV−V線に沿う断面図)である。図の破線部は、本装置が透明であるために透けて見える部材、又は部材厚である。
【0034】
封じ込め装置13は、作業空間3に、天秤5(破線で示す)や粘度計等の計量装置を設置でき、計量対象物が作業空間3外に流出するのを防ぐための封じ込めを行うために使用される。
【0035】
封じ込め装置13は、作業空間3を、前面13fと、背面13bと、左側面13lと、右側面13rと、上面13uと、床面13dと、で画成している。前面13fに設けた開放部134と、上面13uに設けたエアー入口132と、左側面13lに設けたエアー出口133と、を除く他の部分は、接着により閉塞されている。作業空間3には、該空間の温湿度を把握するための温湿度センサが任意の箇所に設置される。
【0036】
封じ込め装置13は、以下に説明する、床面13dを除く全ての構成部品を透明な樹脂で形成するのが好ましい。本実施例では、全ての構成部品がアクリル樹脂で形成されており、一目で汚染状態の確認が出来る様になっている。
【0037】
封じ込め装置13の背面13b及び床面13dは、前述の樹脂による一枚板である。
【0038】
封じ込め装置13の上面13uは、前述の樹脂による一枚板に、装置後方側中央部に、円錐台筒状のエアー入口132が一体形成されている。上面13uの前辺部13ufは、ななめ下方に向けて湾曲されている。
【0039】
封じ込め装置13の前面13fは、前述の樹脂による一枚板が、上方部13fuと下方部13fdに分割されて配置され、上方部13fuと下方部13fdの間が開放部134となっている。封じ込め装置13は、開放部134を作業者が操作する側となる作業空間3の前面13fに有するため、計量作業が容易に行える。開放部134は、作業性確保と、空気の外部への流出を防ぐ観点から、前面13fの全面積の略3分の1の面積エリアを占めるよう形成されるのが好ましい。
【0040】
上方部13fuは、蝶番によって、上面前辺部13ufに開閉可能な開口扉として固定されている。上方部13fuは、上面13uに対し、装置上下方向から略30°ほど装置前方に傾斜するように固定されている。上方部13fuの開放部側端部13fuEは、装置内側に向けて滑らかに曲げられ、R処理がなされている。
【0041】
下方部13fdも、床面13dに対し、装置上下方向から略30°ほど装置前方に傾斜するように固定されている。下方部13fdの開放部側端部13fdEも、装置内側に向けて滑らかに曲げられ、R処理がなされている。
【0042】
封じ込め装置13の左側面13lは、前述の樹脂による一枚板に、装置前後方向には略中央部、装置上下方向には前面13fの上方部13fu(開口扉)の下方となる位置に、エアー出口133を取り付けるための、矩形の開口部135が形成されている。開口部135の角部には、それぞれネジ穴が形成されている。エアー出口133は、この開口部135よりも一回り大きく形成された樹脂製の吸入口プレート136に、筒状に一体形成されている。吸入口プレート136にも、前記角部のものと一致する位置にネジ穴が形成されており、開口部135は、装置外側から吸入口プレート136で覆われ、装置外側からネジ止めされて閉塞されている。
【0043】
また、左側面13lには、装置後方側の下方に、ケーブル用開口部137が形成されている。ケーブル用開口部137は、計量装置に必要な電気通信ケーブルを封じ込め装置13外に出すための開口部である。装置内側には、ケーブル用開口部137を覆うケーブル蓋138が回動可能にネジ止めされている。ケーブル用開口部137は、装置内側でケーブル蓋138により閉塞されている。
【0044】
また、左側面13lの開放部側端部13lEには、開放部134に沿って装置上下方向に延在する前方バッフル20Lが取り付けられている。
【0045】
前方バッフル20Lは、空気の流れを制御するために設けられた、短手方向に滑らかな折り曲げ部を有する樹脂板である。前方バッフル20Lは、開放部側端部13lEに対し、一方の面は左側面13lの内側と接面して左側面13lの外側からネジ止めされ、他方の面は開放部側端部13lEから装置
右方向に延出するように固定されている。前方バッフル20Lにより、左側面13lの開放部側端部13lEは、R処理がなされている。
【0046】
封じ込め装置13の右側面13rは、左側面13lと同様の構造となっており、開口部135、ケーブル用開口部137およびケーブル蓋138を有する。すなわち、エアー出口133が形成された吸入口プレート136は、左側面13lと右側面13
rのいずれにも設けられる。本実施例では、使用しない右側面13rの開口部135は、吸入口プレート136に代えて閉プレートにより閉塞されている。右側面13rの開放部側端部13rEにも、右側面13rの内側から装置
左方向に延出する、同用途で同形状の前方バッフル20Rが取り付けられており、前方バッフル20Rにより、右側面13rの開放部側端部13rEは、R処理がなされている。
【0047】
封じ込め装置13の作業空間3には、上方水平バッフル30が固定されている。
図6は上方
水平バッフルの斜視図である。
【0048】
上方水平バッフル30は、空気の流れを制御するために設けられた、寸法を装置上面13uと概略一致させた、前述の樹脂による一枚板である。上方水平バッフル30の左右の端部は、バッフル延在面から垂直かつ上方向に屈曲され、取り付け部31となっている。取り付け部31には、等間隔複数個所に、ネジ穴が形成されている。左側面13lおよび右側面13rには、上方部13fuの固定位置高さと略同等の高さ位置に、取り付け部31のものと一致する位置にネジ穴が形成されており、上方水平バッフル30は、装置外側からネジ止めされ、作業空間3の上方位置に水平に固定されている。
【0049】
上方水平バッフル30は、装置前方域30fに、複数の通気孔32が形成されている。通気孔32の各々は、端部が角のないラウンド状にR処理された細長矩形状に形成されており、装置前方域30fに、装置左右方向に二列、前後方向に二列の計4つが、等間隔に形成されている。
【0050】
次に、以上の構成からなる計量システム10の動作について説明する。
図7は封じ込め装置の正面視における空気の流れの模式図、
図8は封じ込め装置の右側面視における空気の流れの模式図である。図中の矢印は、空気の流れを表している。
【0051】
温湿度制御装置11を起動させると、温湿度制御装置11内部の送風ファン18および必要に応じて動作させたフィルタユニット12内部の第2の送風ファンによって、設定された温湿度に制御された空気は、排出口113から第1のダクト14を介して、封じ込め装置13に導かれ、エアー入口132から作業空間3に流入する。このとき、作業空間3は、事前に送風ファン18(必要により第2の送風ファン)を制御することにより、設計された空気の流れが発生し、計量システム10内の唯一の開放空間となる封じ込め装置13の開放部134に、計量システム外部から見て相対的な負の圧力を発生させる。よって、作業空間3を通過して汚染された空気は、開放部134から作業空間3に流入した外気とともに、エアー出口133から排出され、第2のダクト15を介して、吸入通気口122からフィルタユニット12に導かれる。フィルタユニット12内のフィルタを通過することで粉体を集塵・除去された空気は、排出通気口123から送りだされ、第3のダクト16を介して、吸入口112から温湿度制御装置11に戻る。帰還した空気は、設定された温湿度に制御され、再び作業空間3に還流される。
【0052】
このとき、開放部134から流入する空気は、開放部134の周囲の面が全て角のないR処理されていることで、乱流となることなく、層流として作業空間3に取り入れられる。
【0053】
また、エアー入口132から作業空間3に入った空気は、比較的風速の強いものとなるが、エアー入口132の下方域となる上方水平バッフル30の装置後方域30bに確実に当たり、風速を弱められる。そして、上方水平バッフル30の上面を伝って、装置前方域30fの通気孔32から下方に、微風のダウンフローとなって、作業空間3を流れる。
【0054】
以上、本実施例の計量システム10によれば、作業空間3において、温湿度制御された空気の流路が、天秤5に対して層流となるので、天秤5の計量値が安定する。
【0055】
計量システム10は、前述の流路設計と、温湿度制御装置11、封じ込め装置13およびフィルタユニット12の限定された空間のみを空気循環させた構成により、作業空間3の空気流量を6[m
3/min]までに抑えられる。
【0056】
また、計量システム10は、流路設計をダウンフローとしたことで、要となる天秤5周辺での流量制御性および空気の攪拌性が向上する。すなわち、封じ込め装置13の上面13uにエアー出口133を設けて、作業空間3をアップフローとする構成も考えられるが、アップフローとすると、要となる天秤5周辺に、開放部134から入った比較的風速の強い段階の空気が多く当たることになり、流量制御が難しいこと、また、作業空間3において、アップフローに比してダウンフローのほうが空気の攪拌性が良いことから、安定計量の観点から、ダウンフローとするのが好適である。
【0057】
そして、計量作業に伴って作業空間3に浮遊する危険な粉体は、封じ込め装置13と第2のダクト15及びフィルタユニット12内に留まるので、計量システム10内に封じ込められる。このとき、空気は計量システム10の外部に還流されることなく、計量システム10内を循環するようにしたこと、開放部134から積極的に外気を流入させたことで、封じ込めは確実なものとなっている。
【0058】
なお、本計量システム10において、最終的な汚染領域は、第2のダクト15とフィルタユニット12に留まることから、システムの動作を停止した上で第2のダクト15とフィルタユニット12を一体的に交換すれば、交換時における作業者の曝露も低減できる。
【0059】
また、計量システム10により構成される閉空間は、温湿度制御装置11、封じ込め装置13、フィルタユニット12で完結しているので、計量システム10は、天秤室のようなものに比して極めて小型で済むとともに、ドラフトチャンバーのように、装置の設置にあたり排気管を新設するなどの拡張工事も必要としない。
【0060】
また、計量システム10は、小型であることに加え、温湿度制御装置11、封じ込め装置13、フィルタユニット12がそれぞれ別ユニットとして構成され、これらをダクト14、15、16で接続した構成であるので、柔軟にこれらを配置することができ、システムの新規設置、移動および後付けも容易で、設置自由度が高い。