【実施例1】
【0088】
次に、本発明の中空糸膜モジュールおよびその製造方法の具体的な実施例を、下表1から表3を参照しながら説明する。
【0089】
(実施例1)
実施例1では、平均空孔率70%、内表面平均孔径30μm、阻止孔径0.4μm、内径1.4mm、外径2.3mm、肉厚幅450μmのポリスルホン性多孔性中空糸膜を使用した。また、ポッティング材は、モメンティブ社のエポキシ樹脂(主剤:BisA系エポキシ樹脂(EPIKOTE828EL), 硬化剤:脂肪族アミン(EPIKURE9280))を主剤:硬化剤=100:51で混合したものを使用した。混合直後の初期粘度は約800mPa・sであり、粘度はJIS K7215の規定に従って測定した。
【0090】
以下、実施例1の中空糸膜モジュールの製造工程を説明する。
【0091】
接着予備工程では、モメンティブ社のエポキシ樹脂(主剤:BisA系エポキシ樹脂(EPIKOTE828EL), 硬化剤:脂肪族アミン(EPIKURE9280))を主剤:硬化剤=100:51で混合したもの50質量部にエタノールを50質量部加えて均一に混合することで粘度を20mPa・sに調整した樹脂溶液を使用し、予め端部を石膏で目止めした中空糸膜600本を束ねた中空糸膜束を、その末端が拘束されていない状態で1分間浸漬させた後、24時間風乾することでエタノールを除去した。
【0092】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEM(走査電子顕微鏡)で観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して40%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
【0093】
接着工程では、接着予備工程を終えた中空糸膜600本を1セットとし、4セットをプラスチック製のケーシングに挿入した後、中空糸膜束両端部をポッティング材を用いて静置接着した。
【0094】
その後、接着予備工程及び接着工程で使用したエポキシ樹脂を完全硬化させるために90℃で16時間加熱した。最後に、接着部の端部を切断除去し、キャップを装着することで中空糸膜モジュールを製造した。端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
【0095】
なお、平均値は、任意で選んだ中空糸膜20本について端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さ及び各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さをそれぞれ測定し、その相加平均値を算出することで求めた。
【0096】
以下の実施例及び比較例においても同様に相加平均値を算出して求めている。
【0097】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを切断端面において観察したところ、中空糸膜の厚さに対して40%であること確認した。
【0098】
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
【0099】
また、実施例1で製造した中空糸膜モジュールのリーク検査を以下のように実施した。
【0100】
まず、アルコールによる親水化処理を施した中空糸膜モジュールの両端部に装着したキャップを取り外した後、中空糸膜モジュールを水槽に浸漬させ、中空糸膜モジュール内部を純水で満たした。
【0101】
次いで、一方のノズルは栓を施して密閉状態とし、他方のノズルは空気を放出させる配管へ接続した。各中空糸膜の開口から空気を流入し、0.1MPaまで徐々に空気圧を印加し、中空糸膜の外表面から気泡が継続して出てこないかどうかを確認したが、気泡は観察されなかった。
【0102】
さらに、実施例1で製造した中空糸膜モジュールについて、再びアルコールによる親水化処理を施した後、ろ過・逆洗の繰り返し試験を以下のように実施した。中空糸膜モジュールへの被処理水の供給流量は、ろ過・逆洗流量が、7.5m
3/hになるようにした。(なお、ろ過は内圧ろ過とした。)ろ過と逆洗をそれぞれ60s、15s実施する過程を1サイクルとし、150000サイクル運転を実施した。その後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
【0103】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
【0104】
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
【0105】
さらに、実施例1で製造した中空糸膜モジュールについて、熱サイクルに対する耐久性を確認した。水温を20℃から75℃に昇温する時の昇温速度を40℃/minとし、降温時の降温速度を20℃/minとした。75℃、20℃の保持時間をそれぞれ11minとした。以上を1サイクルとし、このサイクル運転を2500サイクル連続で実施した。運転後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
【0106】
(実施例2)
実施例2では、中空糸膜および有機溶媒は、実施例1と同様のものを使用したが、接着予備工程および接着工程で用いるエポキシ樹脂は、実施例1よりもガラス転移温度が高いものを使用した。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
【0107】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して40%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
【0108】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
【0109】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを切断断面において観察したところ、中空糸膜の厚さに対して40%であること確認した。
【0110】
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は117℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は120℃であった。
【0111】
また、実施例2で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は観察されなかった。
【0112】
さらに、実施例2で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例1と同様に、150000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
【0113】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
【0114】
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
【0115】
さらに、実施例2で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
【0116】
(実施例3)
実施例3では、中空糸膜、ポッティング材および接着予備工程で用いる樹脂溶液は、実施例1と同様のものを使用したが、有機溶媒は、エタノールではなく1−ブタノールを用いた。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
【0117】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して40%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
【0118】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
【0119】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを切断断面において観察したところ、中空糸膜の厚さに対して40%であること確認した。
【0120】
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
【0121】
また、実施例3で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は観察されなかった。
【0122】
さらに、実施例3で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例1と同様に、150000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
【0123】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
【0124】
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
【0125】
さらに、実施例3で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
【0126】
(実施例4)
実施例4では、中空糸膜および接着予備工程で用いる樹脂溶液は、実施例1と同様のものを使用したが、ポッティング材は、エポキシ樹脂ではなく、日本ポリウレタン社製のポリウレタン樹脂を使用した。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
【0127】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して40%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
【0128】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
【0129】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを観察したところ、中空糸膜の厚さ対して40%であること確認した。
【0130】
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するポリウレタン樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するポリウレタン樹脂のガラス転移温度は75℃であった。
【0131】
また、実施例4で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は観察されなかった。
【0132】
さらに、実施例4で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例1と同様に、150000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
【0133】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
【0134】
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
【0135】
さらに、実施例4で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面からの気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
【0136】
(実施例5)
実施例5では、中空糸膜とポッティング材は、実施例1と同様のものを使用し、接着予備工程で使用する樹脂溶液の濃度を実施例1よりも低い濃度とし、中空糸膜の肉厚部の厚さに対する樹脂含浸部の厚さの比率を10%とした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
【0137】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して10%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
【0138】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
【0139】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを切断端面において観察したところ、中空糸膜の厚さに対して10%であること確認した。
【0140】
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
【0141】
また、実施例5で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は観察されなかった。
【0142】
さらに、実施例5で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例5では、100000サイクル運転を実施し、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
【0143】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
【0144】
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
【0145】
さらに、実施例5で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
【0146】
(実施例6)
実施例6では、中空糸膜とポッティング材は、実施例1と同様のものを使用し、接着予備工程において使用する樹脂溶液の濃度を実施例1よりも低い濃度とし、中空糸膜の肉厚部の厚さに対する樹脂含浸部の厚さの比率を27%とした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
【0147】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して27%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
【0148】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
【0149】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また、中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを切断端面において観察したところ、中空糸膜の厚さに対して27%であること確認した。
【0150】
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
【0151】
また、実施例6で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は観察されなかった。
【0152】
さらに、実施例6で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例6では、150000サイクル運転を実施し、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。なお、実施例5において、150000サイクル運転を実施し、再びリーク検査を実施した場合、一部の中空糸膜の外表面から気泡が観察され、中空糸膜にリークが発生していることが分かった。以上の結果から、実施例5のように中空糸膜の肉厚部の厚さに対する樹脂含浸部の厚さの比率を10%とした場合よりも、実施例6のように27%とした方が、耐久性がより向上する。
【0153】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
【0154】
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
【0155】
さらに、実施例6で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
【0156】
(実施例7)
実施例7では、中空糸膜とポッティング材は、実施例1と同様のものを使用し、接着予備工程において使用する樹脂溶液の濃度を実施例1よりも高い濃度とし、中空糸膜の肉厚部の厚さに対する樹脂含浸部の厚さの比率を56%とした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
【0157】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して56%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
【0158】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
【0159】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを切断端面において観察したところ、中空糸膜の厚さに対して56%であること確認した。
【0160】
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
【0161】
また、実施例7で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡の漏れは観察されなかった。
【0162】
さらに、実施例7で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例1と同様に、150000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
【0163】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
【0164】
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
【0165】
さらに、実施例7で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
【0166】
(実施例8)
実施例8では、中空糸膜とポッティング材は、実施例1と同様のものを使用し、接着予備工程において使用する樹脂溶液の濃度を実施例7よりもさらに高い濃度とし、中空糸膜の肉厚部の厚さに対する樹脂含浸部の厚さの比率を67%とした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
【0167】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して67%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
【0168】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
【0169】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを切断端面において観察したところ、中空糸膜の厚さに対して67%であること確認した。
【0170】
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
【0171】
また、実施例8で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は観察されなかった。
【0172】
さらに、実施例8で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例1と同様に、150000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
【0173】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
【0174】
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
【0175】
さらに、実施例8で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
【0176】
(実施例9)
実施例9では、中空糸膜、ポッティング材および接着予備工程で使用する樹脂溶液は、実施例1と同様のものを使用し、接着予備工程において、樹脂含浸部の中空糸膜の端面からの長さを実施例1よりも長くし、これにより中空糸膜の切断端面からの樹脂含浸部の先端と接着部の先端との間隔を実施例1よりも長くした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
【0177】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して40%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは12cmであった。
【0178】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均9.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均2cmであった。
【0179】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを切断端面において観察したところ、中空糸膜の厚さに対して40%であること確認した。
【0180】
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
【0181】
また、実施例9で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は観察されなかった。
【0182】
さらに、実施例9で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例1と同様に、150000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
【0183】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
【0184】
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
【0185】
さらに、実施例9で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡の漏れは観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
【0186】
(実施例10)
実施例10では、中空糸膜、ポッティング材および接着予備工程で使用する樹脂溶液は、実施例1と同様のものを使用し、中空糸膜の切断端面からの樹脂含浸部の先端と接着部の先端との間隔を実施例9よりもさらに長くした。それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
【0187】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して40%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは13cmであった。
【0188】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均10.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均3cmであった。
【0189】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを切断端面において観察したところ、中空糸膜の厚さに対して40%であること確認した。
【0190】
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
【0191】
また、実施例10で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は観察されなかった。
【0192】
さらに、実施例10で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例1と同様に、150000サイクル運転を実施した後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
【0193】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
【0194】
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
【0195】
さらに、実施例10で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
【0196】
(実施例11)
実施例11は、実施例1〜実施例10で使用した中空糸膜とは異なる材料からなる中空糸膜を使用した。具体的には、平均空孔率60%、内表面平均孔径0.2μm、阻止孔径0.2μm、内径1.4mm、外径2.0mm、肉厚幅300μmのポリビニリデンジフロライド(PVDF)性多孔性中空糸膜を使用した。また、ポッティング材および接着予備工程で用いる樹脂溶液は、実施例1と同じものを使用した。その他、接着予備工程および接着工程における中空糸膜束1セットの本数を600本ではなく1000本としたこと以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
【0197】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して30%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11.5cmであった。
【0198】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均9cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1.5cmであった。
【0199】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを切断端面において観察したところ、中空糸膜の厚さに対して30%であること確認した。
【0200】
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
【0201】
また、実施例11で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡の漏れは観察されなかった。
【0202】
さらに、実施例11で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施11では、300000サイクル運転を実施し、その後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
【0203】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
【0204】
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
【0205】
さらに、実施例11で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
【0206】
(実施例12)
実施例12では、実施例11と同様のポリビニリデンジフロライド(PVDF)性多孔性中空糸膜を使用し、ポッティング材は、実施例1と同様のエポキシ樹脂を使用した。有機溶媒は、エタノールを用いずに1−ブタノールを用いた。その他、接着予備工程および接着工程における中空糸膜束1セットの本数を600本ではなく1000本としたこと以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
【0207】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して30%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11.5cmであった。
【0208】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均9cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1.5cmであった。
【0209】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを切断断面において観察したところ、各中空糸膜の厚さに対して30%であること確認した。
【0210】
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
【0211】
また、実施例12で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は観察されなかった。
【0212】
さらに、実施例12で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例12では、300000サイクル運転を実施し、その後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。
【0213】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
【0214】
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
【0215】
さらに、実施例12で製造した中空糸膜モジュールについて、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
【0216】
(実施例13)
実施例13では、中空糸膜とポッティング材は、実施例11と同様のものを使用し、接着予備工程において使用する樹脂溶液の濃度を実施例11よりも低い濃度とし、中空糸膜の肉厚部の厚さに対する樹脂含浸部の厚さの比率を10%とした。その他、接着予備工程および接着工程における中空糸膜束1セットの本数を600本ではなく1000本としたこと以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
【0217】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して10%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11.5cmであった。
【0218】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均9cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1.5cmであった。
【0219】
中空糸膜の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを切断端面において観察したところ、中空糸膜の厚さに対して10%であること確認した。
【0220】
また、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度と接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度とを計測したところ、樹脂含浸部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は82℃であり、接着部を形成するエポキシ樹脂のガラス転移温度は84℃であった。
【0221】
また、実施例13で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。中空糸膜の外表面からの気泡は観察されなかった。
【0222】
さらに、実施例13で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。実施例13では、150000サイクル運転を実施し、その後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から気泡の漏れは観察されなかった。
【0223】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷等の異常は観られなかった。
【0224】
また、接着部近傍の中空糸膜の状態を観察したが、隣り合う中空糸膜同士が固着せず独立して存在していることが確認された。
【0225】
さらに、実施例13で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認したが、中空糸膜の外表面から気泡は観察されなかった。また、中空糸膜および接着部に亀裂が生じていないことも確認された。
【0226】
(比較例1)
比較例1では、実施例1で使用したポリスルホン性多孔性中空糸膜、ポッティング材を用いて、接着予備工程を実施せずに中空糸膜束をケーシングへ挿入し、接着固定した。接着工程での条件は実施例1と同様である。
【0227】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、ほぼ100%ポッティング材として使用したエポキシ樹脂によって閉塞していた。また、エポキシ樹脂が中空糸膜内部まで染み込んだため、エポキシ樹脂の硬化発熱時の熱が実施例1と比べ、中空糸膜モジュール端部の中心に蓄積され、硬化時の発熱温度が高くなった。それに伴いエポキシ樹脂は焼けた色となり、硬化に伴う接着部の残留応力が大きくなってしまい外周部の一部に樹脂亀裂が発生した。
【0228】
(比較例2)
比較例2では、中空糸膜とポッティング材は、実施例1と同様のものを使用し、接着予備工程において使用する樹脂溶液の濃度を実施例1よりも低い濃度とし、中空糸膜の肉厚部の厚さに対する樹脂含浸部の厚さの比率を4%とした。
【0229】
中空糸膜の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、200カ所ほど閉塞している箇所が見られた。閉塞が確認された各中空糸膜の切断端面をSEMで観察したところ、中空糸膜の外表面側において樹脂含浸部が形成されている箇所と形成されていない箇所とが混在した状態であることを確認した。つまり、樹脂含浸部が形成されていない箇所からポッティング材が中空糸膜中空部へ侵入し、中空部が閉塞したと考えられる。
【0230】
また、閉塞が確認されなかった各中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して4%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
【0231】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7.5cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さは平均8.5cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔は平均1cmであった。
【0232】
また、比較例2で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。この時点では、中空糸膜の外表面からの気泡は観察されなかった。
【0233】
さらに、比較例2で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。比較例2では、100000サイクル運転を実施し、その後、再びリーク検査を実施したところ、中空糸膜の外表面から気泡が発生し、中空糸膜が破損していることが確認された。
【0234】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、中空糸膜の破断及び擦過傷が観察された。
【0235】
さらに、比較例2で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認した。比較例2では、800サイクル連続で実施した後、再びリーク検査を実施したところ、中空糸膜の外表面から気泡が発生し、中空糸膜が破損していることが確認された。解体してリーク箇所を特定したところ、接着部近傍の中空糸膜が破断していることが確認された。
【0236】
(比較例3)
比較例3では、中空糸膜とポッティング材は、実施例1と同様のものを使用し、接着予備工程において使用する樹脂溶液の濃度を実施例1よりも高い濃度とし、中空糸膜の肉厚部の厚さに対する樹脂含浸部の厚さの比率を80%とした。
【0237】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して80%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
【0238】
接着工程では、接着予備工程を終えた中空糸膜600本を1セットとし、4セットを一つの中空糸膜束に整えようと試みたが、隣り合う中空糸膜同士が中空糸膜の外表面のエポキシ樹脂により固着してしまい、ケーシングに挿入できるような円柱状の形状に整えることができず、接着工程を実施することができなかった。また固着した中空糸膜同士を外そうとしたところ中空糸膜に亀裂が入ってしまい不良が発生した。
【0239】
(比較例4)
比較例4では、中空糸膜、ポッティング材および接着予備工程において使用する樹脂溶液は、実施例1と同様のものを使用した。また、それ以外は、実施例1と同じ工程で中空糸膜モジュールを製造した。
【0240】
接着予備工程を終えた中空糸膜の断面をSEMで観察したところ、樹脂含浸部が中空糸膜の外表面側に形成されていることを確認した。樹脂含浸部の肉厚方向の厚さは、中空糸膜の厚さに対して40%であり、また、中空糸膜の端面から樹脂含浸部の先端までの長さは11cmであった。
【0241】
端部切断後における各中空糸膜の開口端面から接着部(せり部)の先端までの長さを測定したところ、平均7cmであった。また同じく各中空糸膜の開口端面から樹脂含浸部の先端までの長さも平均7cmであった。すなわち、接着部の先端と樹脂含浸部の先端との間隔はゼロであった。
【0242】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、中空糸膜の中空部は、全て開口した状態であった。また中空糸膜の樹脂含浸部の肉厚方向の厚さを切断端面において観察したところ、中空糸膜の厚さに対して71%となり、接着予備工程時に観察した樹脂含浸部の厚さよりも高い割合となった。これは、接着工程において、ポッティング材の液面が樹脂含浸部の先端位置と同じになるようにポッティング材を投入したことで、ポッティング材が中空糸膜の外表面に沿って這い上がることによってポッティング材の一部の樹脂が、接着予備工程で形成された樹脂含浸部の高さを上回り、これにより中空糸膜の肉厚部に染み込んだ結果と考えられる。また、このようにして接着工程を行うことで、中空糸膜の切断端面から樹脂含浸部の先端までの長さと接着部の先端までの長さが同じになると考えられる。
【0243】
また、比較例4で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、リーク検査を実施した。この時点では、中空糸膜の外表面からの気泡は観察されなかった。
【0244】
さらに、比較例4で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、ろ過・逆洗の繰り返し試験を実施した。比較例4では、10000サイクル運転を実施し、その後、再びリーク検査を実施したが、中空糸膜の外表面から20か所の気泡の漏れを観察した。
【0245】
その後、中空糸膜モジュールを解体して中空糸膜を取り出し、外表面をマイクロスコープで観察したところ、接着部のせり部で中空糸膜に亀裂が生じていることを確認した。
【0246】
さらに、比較例4で製造した中空糸膜モジュールについて、実施例1と同様に、熱サイクルに対する耐久性を確認した。比較例4では、1000サイクル連続で実施した後、再びリーク検査を実施したが、13か所の中空糸膜の外表面から気泡を観察した。解体して、リークした中空糸膜を詳しく観察したところ、接着部のせり部で亀裂が生じていることが確認された。
【0247】
(比較例5)
比較例5では、実施例11で使用したPVDF性多孔性中空糸膜、ポッティング材を用いて、接着予備工程を実施せずに中空糸膜束をケーシングへ挿入し、接着固定した。接着工程での条件は実施例11と同様である。
【0248】
中空糸膜束の切断端面を観察したところ、各中空糸膜の中空部は、ほぼ100%ポッティング材として使用したエポキシ樹脂によって閉塞していた。また、比較例1と同様に、硬化時の発熱温度が高くなり、それに伴いエポキシ樹脂は焼けた色となり、硬化に伴う接着部の残留応力が大きくなってしまい外周部の一部に樹脂亀裂が発生した。
【0249】
【表1】
【0250】
【表2】
【0251】
【表3】
次に、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1をろ過装置100に設置した態様の一例について
図11を参照して説明し、さらに、本実施形態に係る中空糸膜モジュール1を用いたろ過方法について説明する。なお、このろ過装置100において、内圧ろ過でのクロスフローろ過方式を想定している。
【0252】
ろ過装置100は、中空糸膜モジュール1のキャップ11の管路11aに接続されて被処理水を供給する供給配管101と、キャップ10の管路10aに接続されて循環水を送り出す循環配管102とを備えている。さらに、供給配管101や循環配管102の途中には、圧力計Pi,Poや弁101a,102aなどが配設されている。また、ろ過装置100は、ろ過水の流路となる上部ろ過水排出管103と下部ろ過水排出管104とを備えている。上部ろ過水排出管103や下部ろ過水排出管104はろ過水の合流管105に接続されており、合流管105は外部の配管(図示せず)に連絡している。なお、合流管105には、圧力計Pfや弁105aなどが配設されている。
【0253】
中空糸膜モジュール1は縦に配置され、上側のノズル5aが上部ろ過水排出管103に接続され、下側のノズル5aが下部ろ過水排出管104に接続される。
【0254】
被処理水は、供給配管101から管路11aを通じて所定の圧力で中空糸膜モジュール1に導入される。被処理水は、各中空糸膜2の中空部に導入され、中空糸膜2でろ過され、そのろ過水は各中空糸膜2の外表面から滲み出す。ろ過水は、上部ろ過水排出管103または下部ろ過水排出管104を通って合流管105に排出され、外部配管を通じて採取される。一方で、中空糸膜2を透過した被処理水は、循環水としてキャップ10の管路10aから排出され、循環配管102に送り出される。