(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記推定器は、前記減算器の後段に設けられ、前記負荷電流の推定値をフィルタリングするローパスフィルタをさらに含むことを特徴とする請求項2または3に記載の産業車両用電源装置。
【背景技術】
【0002】
近年のパワーショベルやクレーンをはじめとする建設機械において、上部旋回体の動力源として、油圧モータと交流電動機のハイブリッド型が利用される。ハイブリッド型の旋回動力源は、上部旋回体の加速時において、交流電動機によって油圧モータをアシストし、減速時においては交流電動機によって回生運転を行い、発電エネルギによってバッテリなどの蓄電器を充電する。
【0003】
交流電動機とバッテリ間でエネルギを相互に授受するために、双方向DC/DCコンバータ(昇降圧コンバータともいう)を用いた電源装置が設けられる。
図1は、電源装置100rの基本構成を示す回路図である。電源装置100rは、蓄電器102、DCバス104、双方向DC/DCコンバータ110、コントローラ120を備える。
【0004】
双方向DC/DCコンバータ42の1次側には蓄電器102が接続され、その2次側にはDCバス104が接続される。DCバス104は、負荷200と接続される。負荷200は、電動機およびインバータを含む。電源装置100rからみて、負荷200は、可変の負荷電流Imを生成する可変電流源として作用する。たとえば交流電動機が力行運転するとき、負荷電流Imは正であり、回生運転するとき負荷電流Imは負となる。
【0005】
双方向DC/DCコンバータ110は、インダクタ(リアクトル)L1、平滑キャパシタC1、トランジスタM1、M2を含む。双方向DC/DCコンバータ110のトポロジーは公知であるため説明を省略する。
【0006】
コントローラ120は、上流のコントローラから、DCバス104の電圧(DCリンク電圧)V
DCの目標値を指示する電圧指令Vrを受け、DCリンク電圧V
DCが電圧指令Vrと一致するように、トランジスタM1、M2のスイッチングのデューティ比を制御する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図1の電源装置100rにおいて、平滑キャパシタC1の充放電電流I
CHGは、双方向DC/DCコンバータ110が生成する電流(コンバータ電流という)Icと負荷電流Imの和であたえられる。ある時刻に、負荷200の回生電流Im(<0)が急峻に増大すると、平滑キャパシタC1に流れ込む充電電流I
CHGが急激に上昇することとなる。DCリンク電圧V
DCを一定に保つには、双方向DC/DCコンバータ110が、回生電流Imの増大に追従して、コンバータ電流Icを増大させる必要がある。ところがコントローラ120の応答速度は有限であるため、コンバータ電流Icが回生電流Imの上昇に追従できない場合があり、結果としてDCリンク電圧V
DCが跳ね上がることとなる。DCリンク電圧V
DCが双方向DC/DCコンバータ110や負荷200を構成する回路部品の耐圧を超える程度に跳ね上がると、装置の信頼性に影響を及ぼすおそれがある。
【0009】
同様に、ある時刻に負荷200の力行電流Imが急峻に増大すると、平滑キャパシタC1から流れ出る放電電流I
CHGが急激に上昇し、DCリンク電圧V
DCが急激に低下する可能性もある。これらの問題を解決するためには、平滑キャパシタC1を大容量化すればよいが、これは回路面積およびコストの増加を招くため好ましくない。
【0010】
本発明は、かかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、DCリンク電圧V
DCの上昇を抑制可能な電源装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のある態様は、電動機と、電動機を駆動するインバータと、を備える産業車両に搭載される産業車両用電源装置に関する。産業車両用電源装置は、蓄電器と、インバータが接続されるDCバスと、1次側に蓄電器が接続され、2次側にDCバスが接続され、1次側と2次側で双方向にエネルギを授受可能に構成された双方向DC/DCコンバータと、双方向DC/DCコンバータを制御するコンバータコントローラと、を備える。コンバータコントローラは、DCバスに生ずるDCリンク電圧が所定の目標電圧に近づくように値が調節される第1電流指令を生成する電圧コントローラと、DCリンク電圧と双方向DC/DCコンバータに流れるコンバータ電流にもとづいて、電動機に流れる負荷電流を推定する推定器と、負荷電流の推定値を第1電流指令に重畳し、第2電流指令を生成する補正部と、コンバータ電流の検出値が第2電流指令と一致するように双方向DC/DCコンバータを制御する電流コントローラと、を備える。
【0012】
この態様によると、コンバータコントローラにおいて、電動機に流れる負荷電流、すなわち力行電流、回生電流を推定し、負荷電流の推定値にもとづいて、双方向DC/DCコンバータに流れるコンバータ電流の目標量を調節することにより、簡易な構成で、DCリンク電圧の上昇を抑制できる。
【0013】
DCバスに複数のインバータおよび複数の電動機が接続される場合、負荷電流は、複数の電動機に流れる電流の総和であってもよい。
【0014】
推定器は、DCリンク電圧の検出値を微分する微分器と、微分器の出力から、第2電流指令を減算し、負荷電流の推定値を生成する減算器と、を含んでもよい。
双方向DC/DCコンバータに流れるコンバータ電流として、第2電流指令を用いることで、制御偏差の影響を排除することができる。
【0015】
推定器は、DCリンク電圧の検出値を微分する微分器と、微分器の出力から、双方向DC/DCコンバータに流れるコンバータ電流の検出値を減算し、負荷電流の推定値を生成する減算器と、を含んでもよい。
【0016】
推定器は、減算器の後段に設けられ、負荷電流の推定値をフィルタリングするローパスフィルタをさらに含んでもよい。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、DCリンク電圧の上昇を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
図2は、実施の形態に係る建設機械の一例であるショベル1の外観を示す斜視図である。ショベル1は、主として走行機構2と、走行機構2の上部に旋回機構3を介して回動自在に搭載された上部旋回体(以下、単に旋回体ともいう)4とを備えている。
【0022】
旋回体4には、ブーム5と、ブーム5の先端にリンク接続されたアーム6と、アーム6の先端にリンク接続されたバケット10とが取り付けられている。バケット10は、土砂、鋼材などの吊荷を捕獲するための設備である。ブーム5、アーム6、及びバケット10は、それぞれブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によって油圧駆動される。また、旋回体4には、バケット10の位置や励磁動作および釈放動作を操作する操作者を収容するための運転室4aや、油圧を発生するためのエンジン11といった動力源が設けられている。エンジン11は、例えばディーゼルエンジンで構成される。
【0023】
図3は、実施の形態に係るショベル1の電気系統や油圧系統などのブロック図である。なお、
図3では、機械的に動力を伝達する系統を二重線で、油圧系統を太い実線で、操縦系統を破線で、電気系統を細い実線でそれぞれ示している。
【0024】
ショベル1は電動発電機12および減速機13を備えており、エンジン11及び電動発電機12の回転軸は、共に減速機13の入力軸に接続されることにより互いに連結されている。エンジン11の負荷が大きいときには、電動発電機12が自身の駆動力によりエンジン11の駆動力を補助(アシスト)し、電動発電機12の駆動力が減速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。一方、エンジン11の負荷が小さいときには、エンジン11の駆動力が減速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が発電を行う。電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータによって構成される。電動発電機12の駆動と発電との切りかえは、ショベル1における電気系統の駆動制御を行うコントローラ30により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
【0025】
減速機13の出力軸にはメインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されており、メインポンプ14には高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。コントロールバルブ17は、ショベル1における油圧系の制御を行う装置である。コントロールバルブ17には、
図2に示した走行機構2を駆動するための油圧モータ2A及び2Bの他、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続されており、コントロールバルブ17は、これらに供給する油圧を運転者の操作入力に応じて制御する。
【0026】
パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26(操作手段)が接続されている。操作装置26は、旋回用電動機21、走行機構2、ブーム5、アーム6、及びバケット10を操作するための操作装置であり、操作者によって操作される。操作装置26には、油圧ライン27を介してコントロールバルブ17が接続され、また、油圧ライン28を介して圧力センサ29が接続される。操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)を操作者の操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。
【0027】
圧力センサ29は、操作装置26に対して旋回機構3を旋回させるための操作が入力されると、この操作量を油圧ライン28内の油圧の変化として検出する。圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。この電気信号は、コントローラ30に入力され、旋回用電動機21の駆動制御に用いられる。
【0028】
コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)及び内部メモリを含む演算処理装置によって構成され、内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムをCPUが実行することにより実現される。コントローラ30は、各種センサ及び操作装置26等からの操作入力を受けて、インバータ18A、18B、18C及び蓄電手段101等の駆動制御を行う。
【0029】
油圧モータ310は、ブーム5が下げられるときにブームシリンダ7から吐出される油によって回転されるように構成されており、ブーム5が重力に従って下げられるときのエネルギを回転力に変換するために設けられている。油圧モータ310は、コントロールバルブ17とブームシリンダ7の間の油圧管7Aに設けられている。ブーム回生用発電機300で発電された電力は、回生エネルギとしてインバータ18Bを経て蓄電手段101に供給される。
【0030】
旋回用電動機21は、
図2の旋回機構3に設けられ、上部旋回体4を回動させる。旋回用電動機21は交流電動機であり、旋回体4を旋回させる旋回機構3の動力源である。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。旋回用インバータ18Cは、蓄電手段101からの電力を受け、旋回用電動機21を駆動する。また旋回用電動機21の回生運転時には、旋回用電動機21からの電力を蓄電手段101に回収する。
【0031】
旋回用電動機21が力行運転を行う際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が旋回減速機24にて増幅され、旋回体4が加減速制御され回転運動を行う。また、旋回体4の慣性回転により、旋回減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させる。
【0032】
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサであり、旋回用電動機21と機械的に連結することで回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出する。レゾルバ22が回転軸21Aの回転角度を検出することにより、旋回機構3の回転角度及び回転方向が導出される。メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、コントローラ30からの指令によって、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構3に機械的に伝達する減速機である。
【0033】
続いて電気系統について詳細に説明する。電気系統は主として、コントローラ30、電源装置100、インバータ18A〜18Cを備える。
【0034】
(アシスト)
アシスト用のインバータ18Aの2次側(出力)端には、電動発電機12が接続される。インバータ18Aは、コントローラ30の一部であるアシスト用インバータコントローラ30Aからの指令にもとづき、電動発電機12の運転制御を行う。
【0035】
(ブーム回生)
インバータ18Bの2次側(出力)端には、ブーム回生用発電機300が接続されている。上述のようにブーム回生用発電機300は、ブーム5が重力の作用により下げられるときに、位置エネルギを電気エネルギに変換する電動作業要素である。インバータ18Bは、コントローラ30のブーム回生用のインバータコントローラ30Bによって制御され、ブーム回生用発電機300が発生する電気エネルギを直流電力に変換し、電源装置100に回収する。
【0036】
(旋回)
旋回用電動機21、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、旋回減速機24、旋回用インバータ18Cおよびコントローラ30の一部である旋回用のインバータコントローラ30Cは、電動旋回装置500を構成する。
旋回用電動機21は、PWM(Pulse Width Modulation)制御指令により旋回用インバータ18Cによって交流駆動される。旋回用電動機21としては、例えば、磁石埋込型のIPMモータが好適である。
【0037】
旋回用インバータコントローラ30Cは、操作入力に応じた回転速度指令を受け、レゾルバ22により検出される旋回用電動機21の旋回速度が、回転速度指令と一致するように、旋回用インバータ18Cを制御する。
【0038】
(電源)
蓄電手段101とコントローラ30の一部であるコンバータコントローラ30Dは、電源装置100を構成する。蓄電手段101は、例えば蓄電池であるバッテリと、バッテリの充放電を制御する昇降圧コンバータ(双方向DC/DCコンバータ)と、正極及び負極の直流配線からなるDCバスとを備えている(図示せず)。蓄電器としては、リチウムイオン電池等の充電可能な2次電池、キャパシタ、そのほか電力の授受が可能なその他の形態の電源を用いてもよい。DCバスには、インバータ18A〜インバータ18Cそれぞれの1次側(直流入力)が接続されている。コントローラ30Dは、DCバスに生ずるDCリンク電圧が所定の電圧レベルとなるように、双方向DC/DCコンバータを制御する。電源装置100は、電動発電機12等が力行運転する際には、双方向DC/DCコンバータを昇圧動作させ、電動発電機12等が回生運転する際には、双方向DC/DCコンバータを降圧動作させ、電動発電機12が発生した電力を蓄電器に回収する。
【0039】
すなわち、インバータ18Aが電動発電機12を力行運転させる際には、必要な電力をバッテリ及び昇降圧コンバータからDCバスを介して電動発電機に供給する。また、電動発電機12を回生運転させる際には、電動発電機12により発電された電力をDCバス及び昇降圧コンバータを介してバッテリに充電する。なお、昇降圧コンバータの昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧値、バッテリ電圧値、及びバッテリ電流値にもとづき、コンバータコントローラ30Dによって行われる。これにより、DCバスを、予め定められた一定電圧値に蓄電された状態に維持することができる。
【0040】
以上がショベル1の全体構成である。続いて、実施の形態に係る電源装置100について詳細に説明する。
【0041】
図4は、実施の形態に係る電源装置100の回路図である。
電源装置100は、蓄電器102、DCバス104、双方向DC/DCコンバータ110、コントローラ120を備える。
蓄電器102は、電池や大容量キャパシタである。DCバス104には、インバータ18A〜18Cが接続されうるが、理解の容易化と説明の簡潔化のため、
図4には、インバータ18Aのみを示している。
【0042】
双方向DC/DCコンバータ110の1次側には蓄電器102が接続され、2次側にはDCバス104が接続される。双方向DC/DCコンバータ110は、1次側と2次側で双方向にエネルギを授受可能に構成される。電動発電機12が力行運転するときには、双方向DC/DCコンバータ110は昇圧動作(Ic>0)となり、蓄電器102から、インダクタL1およびトランジスタM1を介して平滑キャパシタC1を充電する。電動発電機12が回生運転するときには、双方向DC/DCコンバータ110は降圧動作(Ic<0)となり、電動発電機12が生成する回生電流を、トランジスタM1およびインダクタL1を介して、蓄電器102に回収する。
【0043】
コントローラ120は、双方向DC/DCコンバータ110を制御する。コントローラ120は、DCバス104に生ずるDCリンク電圧V
DCが所定の目標電圧Vrに近づくように、双方向DC/DCコンバータ110を制御する。たとえばコントローラ120は、A/Dコンバータ122、124、ゲートドライバ126、128、デジタルコントローラ130を備える。
【0044】
A/Dコンバータ122は、DCリンク電圧V
DCの検出値をデジタル値S1に変換する。A/Dコンバータ124は、双方向DC/DCコンバータ110に流れるコンバータ電流Ic、すなわち平滑キャパシタC1の充放電電流の検出値をデジタル値S2に変換する。デジタルコントローラ130は、ソフトウェア制御によって、トランジスタM1、M2の駆動パルスを生成する。ゲートドライバ126、128は、駆動パルスに応じてトランジスタM1、M2をスイッチングする。
【0045】
図5は、
図4の電源装置100の制御ブロック図である。
図5において、Cは、平滑キャパシタC1の容量値を、G(s)は双方向DC/DCコンバータ110の伝達関数を表す。デジタルコントローラ130は、電圧コントローラ132、推定器134、補正部136、電流コントローラ138を備える。電圧コントローラ132は、DCリンク電圧V
DCの検出値S1が、電圧指令Vrと一致するように値が調節される第1電流指令Ir1を生成する。たとえば電圧コントローラ132は、PI補償器で構成される。PI制御に代えて、P制御あるいはPID制御を用いてもよい。
【0046】
推定器134は、DCリンク電圧V
DCの検出値とコンバータ電流Icにもとづいて、電動発電機12に流れる負荷電流Imを推定する。負荷電流Imの推定値^Imに応じた補正量S4が、補正部136に入力される。
【0047】
補正部136はたとえば加算器であり、負荷電流Imの推定値^Imを、第1電流指令Ir1に重畳し、第2電流指令Ir2を生成する。
【0048】
電流コントローラ138は、双方向DC/DCコンバータ110に流れる電流コンバータIcの検出値S2が第2電流指令Ir2と一致するように、双方向DC/DCコンバータ110を制御する。電流コントローラ138は、電圧コントローラ132と同様にPI補償器が好適であるが、P補償器あるいはPID補償器を用いてもよい。
【0049】
たとえば推定器134は、微分器140、減算器142、フィルタ144を含む。微分器140は、DCリンク電圧V
DCの検出値S1を微分する。微分器140の出力は、平滑キャパシタC1の充放電電流I
CHGの合計を表す。減算器142は、微分器140の出力から第2電流指令Ir2を減算し、負荷電流Imの推定値^Imを生成する。フィルタ144は系の安定化のために設けられ、負荷電流Imの推定値^Imをフィルタリングし、補正量(フィードフォワード量)S4を生成する。フィルタ144はたとえば1次のローパスフィルタであってもよい。
【0050】
以上が電源装置100の構成である。続いてその動作を説明する。
図6(a)、(b)は、実施の形態に係る電源装置100の動作波形図である。
図6(a)には、回生電流Imと、推定器134による回生電流Imの推定値^Imそれぞれの絶対値が示される。
図6(b)には、推定器134および補正部136を設けない場合の電圧偏差ΔV’(=Vr−V
DC)と、推定器134、補正部136を設けた場合の電圧偏差ΔVを示す。
【0051】
ここでは、回生電流Imがステップ状に増大したとする。推定器134、補正部136を設けない場合、回生電流Imが瞬時に増大したときに、25V以上の電圧偏差ΔVが発生する。そしてDCリンク電圧V
DCは、数十msの時間をかけて、リンギングしながら目標値Vrに近づいていく。
【0052】
これに対して実施の形態に係る電源装置100によれば、回生電流Imを推定し、その推定値^Imを電流指令値Irに重畳することにより、DCリンク電圧V
DCの跳ね上がりを大幅に抑制でき、また短時間で目標電圧Vrに収束させることができる。
【0053】
電源装置100によれば、
図6とは反対に電動発電機12が回生モードから力行モードに切り替わり、力行電流Imが急激に増大したときにも、DCリンク電圧V
DCの急激な低下を抑制できる。
【0054】
なお、実施の形態とは異なるアプローチとして、デジタルコントローラ130がインバータ18Aのコントローラと通信して負荷電流Imを取得する方法や、電流センサを追加して、負荷電流Imを直接検出する方法なども考えられる。しかしながらこれらのアプローチでは、追加のデータ通信が必要となったり、追加の電流センサが必要となる。これに対して実施の形態に係る電源装置100は、デジタルコントローラ130におけるソフトウェア処理を変更するのみで足りるため、コスト的な観点からも非常に優れている。
【0055】
加えて、DCバス104に複数のインバータ18が接続される場合、いくつかの電動機が回生運転し、残りの電動機が力行運転することもありえる。この場合、補正量S4を決定するためには、複数の電動機(インバータ)それぞれに流れる電流の総和を演算し、負荷全体として回生動作であるか、力行動作であるかを判定する必要があるため、上述のアプローチでは演算量が増大する。これに対して実施の形態に係る電源装置100では、DCバス104に接続されるインバータ18の個数や形式とは無関係に、負荷電流Imの総和を推定できる。
【0056】
以上、本発明を実施例にもとづいて説明した。本発明は上記実施の形態に限定されず、種々の設計変更が可能であり、様々な変形例が可能であること、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは、当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例を説明する。
【0057】
(第1変形例)
実施の形態では、負荷電流Imを推定する際に、コンバータ電流Icの指令値Ir2を利用したが本発明はそれには限定されない。指令値Ir2に代えて、コンバータ電流Icの検出値を用いてもよい。
【0058】
(第2変形例)
実施の形態では、本発明に係るハイブリッド型建設機械の一例として、ショベル1を示したが、本発明のハイブリッド型建設機械の他の例としては、旋回機構を備えるリフティングマグネット車両やクレーン等が挙げられる。