【実施例1】
【0016】
<構成>以下、この実施例の構成について説明する。
【0017】
自動車などの車両に対して表示装置を設ける。この表示装置に、LEDを光源とするLED灯具を使用する。
【0018】
図1、
図2は、LED灯具1を使用した表示装置の一例としての、ヘッドアップディスプレイ装置2を示すものである。このヘッドアップディスプレイ装置2は、速度計などの計器装置よりも高い位置に設けられるものであり、運転中に計器装置を見るよりも少ない視線移動で運転に必要な情報などを視認できるようにしたものである。但し、LED灯具1を使用した表示装置は、ヘッドアップディスプレイ装置2に限るものではなく、また、ヘッドアップディスプレイ装置2の構成も、上記に限るものではない。
【0019】
このヘッドアップディスプレイ装置2は、表示パネル3の画像4を運転席5の前方の反射部材6(例えば、コンバイナなどの専用の反射板)で反射させて反射部材6の奥側に上記した画像4の虚像7を結像させるようにしたものである。この際、上記したLED灯具1は、液晶パネルなどとされた表示パネル3のバックライト光源として用いられている。
【0020】
表示パネル3の画像4は、直接またはミラー8などの光学部品を介して間接的に反射部材6へ導かれるようになっている。この場合、ヘッドアップディスプレイ装置2は、インストルメントパネル9の部分(例えば、上面の前部の位置など)に取付けられると共に、フロントウインドウ11の奥側の位置に対し、フロントウインドウ11を通した前景とほぼ重なるように虚像7が視認されるようになっている。なお、反射部材6は、フロントウインドウ11の近傍の位置に、フロントウインドウ11の下縁部とほぼ前後方向に重複するように設けられているが、反射部材6には、フロントウインドウ11を直接用いることも可能である。
【0021】
そして、
図2に示すように、LED灯具1を備えた表示パネル3やミラー8は、ヘッドアップディスプレイ装置2のロワケーシング12に取付けられている。また、上記した反射部材6は、ヘッドアップディスプレイ装置2のアッパケーシング13に対して角度調整可能に取付けられている。
【0022】
そして、このLED灯具1は、
図3、
図4に示すように、
LED14(
図4参照)が実装された基板15と、
この基板15の表面側に配設されて、上記LED14の光を反射可能なリフレクター16と、
上記基板15の裏面側に配設されて、上記LED14の熱を放熱可能なヒートシンク17と、を備えたものとされる。
このヒートシンク17と上記基板15との間には、(基板15からヒートシンク17への)伝熱性を向上するための伝熱シート18が介在される。
そして、上記リフレクター16と上記ヒートシンク17とが、間に上記基板15および伝熱シート18を圧接挟持した状態で締結固定されることで、一体化されている。
【0023】
ここで、LED14が実装された基板15は、LED基板などの光源基板のことである。リフレクター16(
図5、
図6参照)は、LED14の周囲を取り囲んで光を所要の方向へ導く反射板である。リフレクター16の表面側には、表示パネル3が取付けられる。リフレクター16は、例えば、樹脂製の部品に、鏡面処理を施すことなどによって設けられる。
【0024】
この場合、リフレクター16は、LED14の光を裏面側から表面側へ通すための貫通孔部16aと、貫通孔部16aの表面側に表示パネル3を取付けるためのパネル取付部16bと、ロワケーシング12に取付けるための取付部16cとを有している。
【0025】
ヒートシンク17は、基板15に実装されたLED14が発生する熱を放熱するためのものであり、アルミなどの熱伝導性の高い金属などで構成される。ヒートシンク17には、多数の放熱フィンなどが設けられる。
【0026】
ヒートシンク17と基板15との接触部は、ミクロレベルで見た時に、面接触ではなく細かい点接触の連続となっているため、熱接触抵抗が高いことから、基板15とヒートシンク17との間には、熱接触抵抗を低減させるための伝熱シート18が必要になる。
【0027】
伝熱シート18には、シリコーン系やアクリル系などのような、厚みがあって柔軟で伸縮性を有する素材が基材として用いられる。そして、これらの基材に対してフィラーなどと呼ばれる添加物を添加することで、熱伝導性や絶縁性、硬度などが調整される。伝熱シート18には、例えば、厚さ1mmで硬度が10(アスカーゴム硬度計C型)のシリコーン系のもの(信越化学製熱伝導シート「TC−100CAB−10」など)を使用することができる。リフレクター16と上記ヒートシンク17との締結固定には、ネジ19やボルトなどの締結具が用いられる。リフレクター16と上記ヒートシンク17との締結固定によって、伝熱シート18は(厚さ0.8mm程度に)軽圧縮される。この厚みを7割〜9割程度にする軽圧縮によって接触面積が増加され、熱伝導性が向上される。
【0028】
以上のような基本的な構成に対し、この実施例では、以下のような構成を備えるようにしている。
【0029】
(1)
図6に示すように、上記リフレクター16または上記ヒートシンク17(以下、リフレクター16として説明する)に、少なくとも2つの締結用ボス21が突設される。
上記基板15および伝熱シート18に、上記少なくとも2つの締結用ボス21へ通すための少なくとも2つのボス孔22,23が設けられる。
そして、上記伝熱シート18の少なくとも2つのボス孔22,23が、伝熱シート18に引張力25(
図7参照)を付与した状態にて通されるように、上記少なくとも2つの締結用ボス21の間隔26よりも、短い間隔27で設けられるようにする(間隔26>間隔27)。
【0030】
ここで、締結用ボス21は、円筒状の突起などとされて、少なくとも、リフレクター16とヒートシンク17のどちらか一方に、他方へ向けて設けられる。この場合、締結用ボス21は、リフレクター16の側から突設されている。ボス孔22,23は、丸穴または長穴とすることができる。但し、基本的に丸穴または丸穴に近い長穴などとするのが好ましい。
【0031】
ボス孔22,23は、基本的に、リフレクター16(またはヒートシンク17)に対して基板15および伝熱シート18を正確に位置合わせして取付けられるように、締結用ボス21と合致する位置に(合致する大きさで)設けられる。しかし、このように、位置を完全に等しくしてしまうと、
図8に示すように、伝熱シート18が基板15の裏面から剥がれ易くなる。
【0032】
これに対し、この実施例では、伝熱シート18の少なくとも2つのボス孔23間の間隔27を、対応する少なくとも2つの締結用ボス21の間隔26よりも短くしている。
【0033】
この際、伝熱シート18に対し、余り過大な引張力25を付与しない方が良いのは勿論である。そこで、伝熱シート18に対して、最小限必要な引張力25を付与することで目的を達成できるようにする。そのために、ボス孔23間の間隔27は、伝熱シート18が基板15の裏面から剥がれ難くなるようなギリギリの長さに設定するのが好ましい。
【0034】
少なくとも、ボス孔23間の間隔27は、伝熱シート18を限界まで伸ばした時に2つの締結用ボス21に嵌合できなくなるような距離よりは長くする。また、伝熱シート18の基板15への貼付け後や、リフレクター16とヒートシンク17との締結固定後に、伸ばされた伝熱シート18に悪影響を与えてしまうような距離よりは長くする。伝熱シート18は、全体に対して均一な引張力25が付与されるようにする。
【0035】
なお、締結用ボス21間の間隔26、および、ボス孔23間の間隔27は、締結用ボス21およびボス孔23の中心間の距離とすることや、または、締結用ボス21およびボス孔23の外側の位置どうしの間の距離などを基準とすることができる。
【0036】
(2)上記伝熱シート18の表面に予め保護フィルム31が貼付けられている場合には、
上記伝熱シート18の少なくとも2つのボス孔23の間隔27は、伝熱シート18から保護フィルム31を剥がす際に、伝熱シート18が基板15剥がれなくなる分だけ、少なくとも2つの締結用ボス21の間隔26よりも、短く設定する。
【0037】
ここで、伝熱シート18は保護フィルム31が貼付けられた状態で所要の形状に加工されるため、保護フィルム31は、伝熱シート18と同じ平面形状を有するものとされる。保護フィルム31は、薄くて伸縮性がほとんどない樹脂フィルムで構成されている。そのため、保護フィルム31が貼付けられた伝熱シート18は、余り伸縮できないものとなっている。
【0038】
伝熱シート18の基板15に対する貼付け力は、実質的に伝熱シート18の粘着力と引張力25の影響による貼付け力の増加分とを加えたものになる。(ある範囲までは)引張力25が強くなると、この貼付け力は強くなる傾向にある。
【0039】
これに対し、保護フィルム31の伝熱シート18に対する貼付け力は、製品保護などの観点から伝熱シート18の粘着力とほぼ同等とされている。また、保護フィルム31は薄いため、繊細な取り扱いが必要で剥がし難いものとなっている。更に、伝熱シート18から保護フィルム31を剥がす際に、加えた力の一部が伝熱シート18に作用されてしまうようなことも起こり易い。よって、保護フィルム31を剥がそうとして伝熱シート18が剥がれてしまうことは、頻繁に発生している。
【0040】
そこで、これらのことを全て考慮に入れて必要な引張力25を設定することになるが、必要な引張力25は、具体的な設置状況によって異なると共に、かなり微妙な値となる。実際には、トライアンドエラーなどが必要となるが、例えば、伝熱シート18の2つのボス孔23の間隔27は、リフレクター16またはヒートシンク17の2つの締結用ボス21の間隔26よりも、0.5%〜5%程度、更に好ましくは1%〜4%程度、より好ましくは2%〜3%程度短くなるように設定するのが好ましい。
【0041】
なお、リフレクター16(またはヒートシンク17)と基板15および伝熱シート18との間には、位置決めピン35や、この位置決めピン35に嵌合する孔状または溝状の位置決め部36などかを設けることができる(
図7参照)。
【0042】
<作用>以下、この実施例の作用について説明する。
【0043】
基板15に伝熱シート18を貼り付ける場合、先ず、リフレクター16を裏返しにして締結用ボス21を上に向ける。次に、締結用ボス21へボス孔22を通すようにしてリフレクター16の裏面に基板15を配置する。そして、締結用ボス21へボス孔23を通すようにしながら、リフレクター16の裏面に設置された基板15の裏面に伝熱シート18を貼り付ける。
【0044】
その後、伝熱シート18の上にヒートシンク17を設置し、ヒートシンク17とリフレクター16とをネジ19などの締結具で締結固定し、基板15と伝熱シート18とを圧接挟持状態にして一体化する。
【0045】
<効果>この実施例によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0046】
(効果1)上記したように、LED灯具1は、リフレクター16の裏面に基板15を配置し、基板15の裏面に伝熱シート18を貼付け、その上からヒートシンク17を取付けて、ヒートシンク17とリフレクター16とを締結固定することによって組み立てられている。基板15および伝熱シート18は、リフレクター16またはヒートシンク17の裏面から突設された締結用ボス21へ、そのボス孔22,23を通すようにしてセットされる。
【0047】
この際、伝熱シート18の粘着力が余り強くないため、基板15の裏面への伝熱シート18の貼付けを十分に行わないと、伝熱シート18が、基板15の裏面から簡単に剥がれてしまうことになる。
【0048】
そこで、現状では、基板15や伝熱シート18の形状に合わせた押え治具を設けて、基板15の裏面への伝熱シート18の貼付け後に、押え治具を用いて伝熱シート18を基板15にしっかり押え付けることで、貼付けを十分に行い得るようにしている。
【0049】
しかし、このようにすると、基板15や伝熱シート18の形状や種類ごとに押え治具を別個に用意する必要が生じるのでコストが掛かると共に、押え治具による押え付け作業には手間と時間が掛かるという問題があった。
【0050】
そこで、伝熱シート18の少なくとも2つのボス孔23の間隔27を、少なくとも2つの締結用ボス21の間隔26よりも短く設定した。そして、伝熱シート18を基板15の裏面へ貼付ける際に、伝熱シート18に引張力25を付与した状態で、少なくとも2つの締結用ボス21へ挿通されるようにした。
【0051】
これにより、引張力25が作用されている分だけ伝熱シート18が基板15の裏面から剥がれ難くなる。
【0052】
即ち、引張力25が作用された伝熱シート18が収縮しようとする(面方向の)力が伝熱シート18の粘着力に加わってへばり付くような状態となるため、伝熱シート18の基板15に対する貼付け力が強くなったのと同じ効果が得られるようになる(粘着力+引張力25の影響による貼付け力の増加分)。
【0053】
また、引張力25が作用された伝熱シート18が収縮することで、ボス孔23が締結用ボス21を締め付けるように作用するため、伝熱シート18にリフレクター16(またはヒートシンク17と)に対する保持力が発生されるようになる。
【0054】
よって、引張力25を付与することで伝熱シート18の貼付けの確実性が得られることになり、押え治具および押え治具による押え付け作業をなくすことができるようになる。
【0055】
(効果2)表面に保護フィルム31が貼付けられている伝熱シート18を用いる場合、基板15の裏面に対して伝熱シート18を貼付けた後に、伝熱シート18の表面から保護フィルム31を剥がす必要がある。
【0056】
しかし、例えば、基板15の裏面に対する伝熱シート18の貼付け力(または粘着力)が、伝熱シート18に対する保護フィルム31の貼付け力よりも弱く作用していたりすると、保護フィルム31を剥がす時に、伝熱シート18も一緒に剥がれてしまう。
【0057】
このように、保護フィルム31を剥がす時に、伝熱シート18が一緒に剥がれると、伝熱シート18が変形して再使用できなくなってしまう。特に、保護フィルム31が薄くなると、保護フィルム31を剥がす時に伝熱シート18にも力が加わり易くなるため、このような不具合は、保護フィルム31が薄い程顕著に発生する。
【0058】
そこで、伝熱シート18の少なくとも2つのボス孔23の間隔27を、伝熱シート18から保護フィルム31を剥がす際に、伝熱シート18に付与される引張力25によって、伝熱シート18が基板15から剥がれないようになる分だけ、少なくとも2つの締結用ボス21の間隔26よりも、短く設定した。
【0059】
即ち、保護フィルム31の伝熱シート18に対する貼付け力を考慮して、それを上回るように、伝熱シート18の少なくとも2つのボス孔23の間隔27を短く設定した(粘着力+引張力25の影響による貼付け力の増加分>保護フィルム31の貼付け力)。
【0060】
そのため、簡単に伝熱シート18から保護フィルム31だけをうまく剥がすことができるようになり、作業性を向上することができる。
【0061】
以上、実施例を図面により詳述してきたが、実施例は例示にしか過ぎないものである。よって、本発明は、実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が開示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。