(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6279073
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】車両制御装置および車両制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20180205BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20180205BHJP
B66C 23/90 20060101ALI20180205BHJP
【FI】
H02P29/00
B66F9/24 J
B66C23/90 D
【請求項の数】47
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-514474(P2016-514474)
(86)(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公表番号】特表2016-524892(P2016-524892A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】GB2014051517
(87)【国際公開番号】WO2014188162
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2016年4月12日
(31)【優先権主張番号】1309072.5
(32)【優先日】2013年5月20日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513271265
【氏名又は名称】セブコン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】ピーター バラス
【審査官】
田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−199698(JP,A)
【文献】
特開2010−190583(JP,A)
【文献】
実開平05−084773(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0127840(US,A1)
【文献】
特開2012−214124(JP,A)
【文献】
特開2011−084121(JP,A)
【文献】
特開平10−332730(JP,A)
【文献】
特開2011−068207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 4/00,25/08−25/098,
29/00−31/00
H02K 11/00−11/40
B66F 9/00−11/04
B66C 19/00−23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータの動作を制御する電動モータ制御ユニットであって、
共通の筐体と、
前記電動モータへの電力を制御する電力供給装置と、
少なくとも1つの入力部と、前記電力供給装置に接続される少なくとも1つの出力部と、を有する処理装置を備える電動モータ制御装置と、
基準方位に対する前記電動モータ制御ユニットの傾斜測定値を算出する傾斜加速度計と、前記算出された傾斜測定値に基づいて信号を供給する出力部と、を備える傾斜加速度計システムと、
を備え、
前記傾斜加速度計システムの前記出力部は、前記電動モータ制御装置の前記処理装置の入力部に接続され、
前記電力供給装置は、前記傾斜加速度計システムの出力に基づいて、前記電動モータの動作を制御する電力出力部を備え、
前記電力供給装置と前記電動モータ制御装置と前記傾斜加速度計システムとは、単一のユニットとして前記共通の筐体に収容される、
ことを特徴とする電動モータ制御ユニット。
【請求項2】
前記傾斜加速度計は、微小電気機械システム(MEMS)加速度計を備える、
請求項1記載の電動モータ制御ユニット。
【請求項3】
前記電力供給装置は、チョッパ、コンバータ、またはインバータのうちの1つを備える、
請求項1または2記載の電動モータ制御ユニット。
【請求項4】
前記電動モータ制御ユニットが、前記電動モータに対して定位置で、および/または車両に対して定位置で固定されるときに、前記基準方位は、前記傾斜加速度計の較正により決定される、
請求項1乃至3のいずれかに記載の電動モータ制御ユニット。
【請求項5】
前記電動モータ制御ユニットを、前記車両に対して定方位で車両に固定する手段を備える、
請求項4記載の電動モータ制御ユニット。
【請求項6】
前記車両は、人などの積荷を選択された高さまで吊り上げることができる積荷輸送リフトを備える積荷輸送車両を含む、
請求項4または5記載の電動モータ制御ユニット。
【請求項7】
前記傾斜加速度計システムは、前記電動モータ制御ユニットの動作に基づいて、前記傾斜加速度計の出力を調整する動作補償システムを備える、
請求項1乃至6のいずれかに記載の電動モータ制御ユニット。
【請求項8】
前記動作補償システムは、前記電動モータ制御ユニットの進行方向における線速度に基づいて前記傾斜加速度計の出力を補償する、
請求項7記載の電動モータ制御ユニット。
【請求項9】
前記動作補償システムは、前記電動モータ制御ユニットの進行方向の変化を示す方向転換パラメータに基づいて前記傾斜加速度計の出力を補償する、
請求項7または8記載の電動モータ制御ユニット。
【請求項10】
車両用の電動モータの動作の制御方法であって、
共通の筐体と、前記電動モータへの電力を制御する電力供給装置と、電動モータ制御装置と、傾斜加速度計を備える傾斜加速度計システムと、を備え、前記電力供給装置と前記電動モータ制御装置と前記傾斜加速度計システムとは単一のユニットとして前記共通の筐体に収容される電動モータ制御ユニットを定方位で前記車両に接続する工程と、
前記電動モータの動作を制御するために、前記電動モータ制御装置の出力部を前記電動モータの制御入力部に接続する工程と、
前記電動モータ制御ユニットの前記定方位に対する、前記傾斜加速度計に作用する重力の方向を設定するために、前記傾斜加速度計を較正する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記重力の作用方向に対する前記車両の傾斜測定値を算出する工程を含む、
請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記電動モータ制御装置は、処理装置とパワーインバータとを備え、
前記パワーインバータの出力は、前記電動モータの動作を制御する、
請求項10または11記載の方法。
【請求項13】
前記傾斜加速度計システムの出力は、前記電動モータ制御装置の前記処理装置への入力として供給される、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記車両の線速度の測定値を算出する工程と、
前記線速度の測定値に基づいて前記傾斜加速度計の出力を調整する工程と、
を含む、
請求項10乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記車両の進行方向の変化を示す前記車両の方向転換パラメータを算出する工程と、
前記方向転換パラメータに基づいて前記傾斜加速度計の出力を調整する工程と、
を含む、
請求項10乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記傾斜加速度計を較正する工程は、
前記車両を静止した垂直な位置に位置決めする工程と、
前記加速度計により測定された加速度を算出する工程と、
前記位置においてゼロ傾斜出力を供給するように前記加速度計を構成する工程と、
を含む、
請求項10乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記傾斜加速度計は、微小電気機械システム(MEMS)加速度計を含む、
請求項10乃至16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
積荷輸送車両の動作を制御する装置であって、
前記車両は、積荷を選択された高さまで吊り上げることができる積荷輸送リフトを備え、
前記車両の進行方向の変化を示す方向転換パラメータを取得する方向転換入力部と、
前記車両の進行方向における線速度を取得する速度入力部と、
加速度計の信号を取得する加速度入力部と、
前記方向転換パラメータと前記線速度と前記加速度計の信号とに基づいて、前記車両の傾斜角を算出するように構成される傾斜角算出装置と、
前記算出された傾斜角に基づいて前記車両の動作を修正する制御装置と、
を備え、
前記傾斜角算出装置は、前記車両の傾斜角と、前記積荷輸送リフトに関する少なくとも1つのパラメータと、に基づいて、前記車両の動作を修正するように構成される、
ことを特徴とする装置。
【請求項19】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記積荷の重量と、前記積荷が吊り上げられた高さと、前記積荷が積まれていない状態の前記車両の重量と、前記積荷が積まれた状態の前記車両の重心の位置と、の中から選択される、
請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記傾斜角が所定の閾値を超える場合、前記傾斜角算出装置は、前記車両の動作を修正するように構成される、
請求項18記載の装置。
【請求項21】
前記所定の閾値は、
前記車両に積まれた積荷の重量と、
積荷輸送リフトの高さと、
前記車両の進行方向における線速度と、
前記車両の方向転換パラメータと、
のうちの少なくとも1つに基づいて調整可能である、
請求項20記載の装置。
【請求項22】
前記車両の動作の修正は、前記車両の操作者への音声信号または視覚信号の提供を含む、
請求項18乃至21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
前記車両の動作の修正は、運転中の前記車両の線速度の制限を含む、
請求項18乃至22のいずれかに記載の装置。
【請求項24】
前記制御装置は、前記車両の傾斜角と、前記積荷輸送リフトに関する少なくとも1つのパラメータと、に基づいて、速度制限を選択するように構成される、
請求項23記載の装置。
【請求項25】
前記車両の動作の修正は、前記積荷輸送リフトの積荷を吊り上げる高さの制限、または、前記車両から延びる積荷の水平方向の距離の制限、を含む、
請求項18記載の装置。
【請求項26】
前記制御装置は、前記車両の傾斜角と、前記車両の線速度と、に基づいて、前記高さ制限を選択するように構成される、
請求項25記載の装置。
【請求項27】
前記車両の動作と、前記積荷の吊り上げと、のうちの少なくとも1つに関連した電動モータを制御する電動モータ制御装置を備える、
請求項18乃至26のいずれかに記載の装置。
【請求項28】
前記車両と前記積荷輸送リフトとのうちの少なくとも1つを備える、
請求項18乃至27のいずれかに記載の装置。
【請求項29】
前記傾斜角算出装置は、前記線速度と前記方向転換パラメータとに基づいて、前記取得された加速度計の信号を修正し、前記傾斜角を算出するように構成される、
請求項18乃至28のいずれかに記載の装置。
【請求項30】
前記線速度と前記方向転換パラメータとに基づく前記取得された加速度計の信号の修正は、向心加速度の算出を含む、
請求項29記載の装置。
【請求項31】
前記方向転換パラメータは、前記車両の旋回円半径に基づく、
請求項30記載の装置。
【請求項32】
前記方向転換入力部に接続され、前記車両の操縦に基づき前記方向転換パラメータを供給する操縦算出装置を備える、
請求項18乃至31のいずれかに記載の装置。
【請求項33】
前記操縦算出装置は、前記車両の操舵輪の角度を算出するように構成される、
請求項32記載の装置。
【請求項34】
前記操縦算出装置は、前記車両の進行方向と前記車両の車輪との間の角度を算出するように構成される、
請求項32記載の装置。
【請求項35】
微小電気機械システム(MEMS)加速度計を備える、
請求項18乃至34のいずれかに記載の装置。
【請求項36】
前記加速度計の信号は、前記車両の重力に対する角度を示すベクトル量を含む、
請求項18乃至35のいずれかに記載の装置。
【請求項37】
積荷吊り上げ車両の吊り上げモータまたは牽引モータを操作し、前記車両の方向転換角と、前記車両の線速度と、加速度計の信号と、に基づいて、前記車両の傾斜角を算出するように構成される電動モータ用の制御装置であって、
前記制御装置と前記加速度計とは、単一のユニットとして共通の筐体に収容される、
ことを特徴とする電動モータ用の制御装置。
【請求項38】
MEMS傾斜加速度計を備える、
請求項37記載の制御装置。
【請求項39】
請求項18乃至36のいずれかに記載の特徴を含む、
請求項37または38記載の制御装置。
【請求項40】
傾斜加速度計と、請求項18乃至36のいずれかに記載の装置、または、請求項37乃至39のいずれかに記載の制御装置と、を備える装置の較正方法であって、
前記装置は、加速度計を備え、
車両を静止した垂直な位置に位置決めする工程と、
前記装置または制御装置を前記車両に固定する工程と、
前記加速度計により測定された加速度を算出する工程と、
前記測定された加速度に基づいて前記装置の前記制御装置を構成する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項41】
積荷輸送車両の動作の制御方法であって、
前記車両は、積荷を選択された高さまで吊り上げることができる積荷輸送リフトを備え、
前記積荷輸送リフトに関する少なくとも1つのパラメータを取得する工程と、
前記車両の進行方向に対する方向転換を示す方向転換パラメータを取得する工程と、
前記車両の進行方向における線速度を取得する工程と、
前記車両の加速度を取得する工程と、
前記車両の前記方向転換パラメータと、前記線速度と、前記加速度と、に基づいて、前記車両の傾斜角を算出する工程と、
前記算出された傾斜角と、前記少なくとも1つのパラメータと、に基づいて前記車両の動作を修正する工程と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つのパラメータは、積荷の重量と、前記積荷が吊り上げられた高さと、積荷が積まれていない状態の前記車両の重量と、積荷が積まれた状態の前記車両の重心の位置と、の中から選択される、
請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記車両の動作を修正する工程は、
前記車両の操作者に音声信号または視覚信号を提供する工程と、
運転中の前記車両の速度を制限する工程と、
前記積荷輸送リフトの動作を制限する工程と、
のうちの少なくとも1つの工程を含む、
請求項41または42記載の方法。
【請求項44】
処理装置に請求項41乃至43のいずれかに記載の方法を実行させることができるプログラム命令を含むコンピュータプログラム製品。
【請求項45】
請求項41乃至44のいずれかに記載の方法を実行するように構成される処理装置。
【請求項46】
前記傾斜加速度計システムは傾斜角算出装置を備え、請求項1乃至10のいずれかに記載の電動モータ制御ユニットにより提供される、
請求項18乃至35のいずれかに記載の装置。
【請求項47】
請求項40乃至43のいずれかに記載の方法を含む、
請求項10乃至17のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動モータの制御装置、および車両の制御、特に積荷吊り上げ車両の安全な制御に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーン車等の空中作業台を有する車両、およびフォークリフトトラック等の資材を取り扱う車両は、積荷を吊り上げるため、および運ぶために使用される。車両の転覆を避けるために、車両が方向転換しているときに、そのような車両の最高速度を制限することが提案されてきた。さらに、車両の安定性が損なわれたことを確認するために、傾斜スイッチが使用されることもある。また、そのようなスイッチは、車両が傾斜しているまたは傾斜中であるときに、車両の走行または積荷の吊り上げを停止するために使用されることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示の態様および例は、関連する技術的課題を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある態様では、積荷輸送車両の動作を制御する装置が提供される。装置は、車両の進行方向に対する車両の方向転換についての表示を取得する方向転換入力部と、車両の進行方向における線速度を取得する速度入力部と、加速度計の信号を取得する加速度入力部と、方向転換と線速度と加速度計との信号に基づいて車両の傾斜角を算出し、傾斜角に基づいて車両の動作を修正するように構成される制御装置とを備える。加速度計の信号は、重力の方向についての表示を提供し、傾斜角が重力の方向に対して測定されることを可能にしてもよい。例えば、加速度計の入力部が、微小電気機械システム(MEMS)傾斜加速度計から、加速度の測定値を受け取ってもよい。理解されるであろうが、「線速度」という用語は、車両が直線的に進行していることを意味するのではなく、車両が角を曲がる際の瞬間的な速度を意味することもある。例えば、線速度は、車輪の回転速度により算出されてもよい。
【0005】
車両は、選択された高さまで積荷を吊り上げることができる積荷輸送リフトを有する車両を含んでもよい。選択された高さは、積荷が積まれていない状態の車両の重心よりも上方になりうる。例えば、車両は、フォークリフトトラック等の資材を取り扱う車両、またはクレーン車等の空中作業台を有する車両を含んでもよい。積荷は、人を含んでもよい。
【0006】
車両の角度、および場合によっては、積荷の重量、積荷の車両に対する高さおよび/または水平方向の位置についての付加的な情報を知ることにより、車両の安全性を高めるために車両の動作を修正することができる。例えば、警告信号を車両の操作員に提供する、または車両の速度もしくはリフトの動作を制限することができる。
【0007】
MEMS加速度計は、例えば3本の互いに直角を成す軸に対する3次元のベクトルとして、加速度を算出するために使用されてもよい。これにより、重力が車両に対して作用している方向を算出することができるため、車両の角度、すなわち傾斜を算出することができる。
【0008】
別の態様では、電動モータの動作を制御する電動モータ制御ユニットが提供される。このユニットは、少なくとも1つの入力部と、電力を電動モータに供給する電力供給装置に接続される少なくとも1つの出力部を有する処理装置と、を備える電動モータ制御装置と、基準方位に対する電動モータ制御ユニットの傾斜測定値を算出する傾斜加速度計と、算出された傾斜測定値に基づいて信号を供給する出力部と、を備える傾斜加速度計システムと、を備え、傾斜加速度計システムの出力部は、電動モータ制御装置の処理装置の入力部に接続され、電力供給装置は、傾斜加速度計システムの出力に基づいて、電動モータの動作を制御する電力出力部を備えることを特徴とする。電力供給装置は、電動モータ用のインバータ、または電力段であってもよい。
電力供給装置は、チョッパ、コンバータ、またはインバータのうちの1つを備えてもよい。
【0009】
電動モータ制御ユニット内に、傾斜加速度計システムと電動モータ制御装置とを備えることにより、電動モータ制御装置は、モータの動作を制御するために、制御ユニットの傾斜角を迅速および確実に考慮に入れることができる。特に、電動モータ制御ユニット内に傾斜加速度計が備えられることにより、ユニットに対する傾斜加速度計の方位が固定されて既知となる。これにより、傾斜加速度計の較正がより単純かつより正確になるため、傾斜の補償を正確かつ確実に行うことができる。また、電動モータ制御ユニットを備えることにより、車両への部品の取り付けが単純化され、傾斜加速度計の出力部を、電動モータ制御装置に正確に接続することができる。
【0010】
別の態様によると、車両用の電動モータの動作の制御方法が提供される。この方法は、電動モータ制御装置、および傾斜加速度計を備える傾斜加速度計システムを備える電動モータ制御ユニットを定方位で車両に接続する工程と、電動モータの動作を制御するために、電動モータ制御装置の出力部を、電動モータの制御入力部に接続する工程と、電動モータ制御ユニットの定方位に対する、傾斜加速度計に作用する重力の方向を設定するために、傾斜加速度計を較正する工程とを含む。
【0011】
つまり、この方法により、車両に接続された制御ユニットの傾斜測定値に基づいて、車両用の電動モータの制御を調整することができる。ユニットを車両に固定した後に較正することにより、「ゼロ」方位が設定される前に、ユニットを任意の適当な方位で車両に固定することができる。
【0012】
いくつかの可能性としては、電動モータ制御ユニットが、車両に対して定位置で固定されるとき、および場合によっては、電動モータ制御ユニットが、電動モータに対して定位置で固定されるときに、基準方位は、傾斜加速度計の較正により決定される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を例示としてのみ記載する。
【
図2】
図1に示されているようなシステムにおいて使用される制御装置の概略図である。
【
図3】
図1および
図2を参照しながら記載される装置および車両の操作方法のうちの1つを極単純化した概略図である。
【
図4A】ある実施形態による電動モータ制御ユニットの概略図である。
【
図4B】ある実施形態による傾斜加速度計システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
まず、電動モータ制御ユニットの実施形態について、
図4Aおよび
図4Bを参照しながら記載する。その後、車両、特に空中作業台を有する車両およびフォークリフトトラック等の積荷輸送車両に取り付けた、そのような制御ユニットの使用について記載する。
【0015】
図4Aに概略的に示されているように、ある実施形態では、電動モータ制御ユニット400は、電動モータ416に電力を供給するための電力供給装置414を備えてもよい。使用される電力供給装置414の種類は、制御されているモータ次第になるが、例えば3相のパワーインバータなどのインバータが使用されてもよい。パワーインバータ414は、処理装置412により制御される。処理装置412は、パワーインバータ414の出力の電力レベルおよび位相を設定し、後述するように、制御入力装置418および傾斜加速度計システム410により設定されるように、パワーインバータ414の出力の電力レベルおよび位相を経時変化させる。
【0016】
制御入力装置418は、制御ユニット400が取り付けられた車両の運転者などの人間の操作者による入力を含んでもよい。また、電動モータがコンピュータソフトウェアにより駆動される場合、または製造システム、倉庫保管システム、もしくは分配システムなどのコンピュータにより実行される作業の一部として駆動される場合、制御入力装置は、コンピュータまたは他の機械からの入力を含んでもよい。
【0017】
また、傾斜加速度計システム410は、処理装置412に入力を供給することにより、ユニットの傾斜測定値に基づいて、電力供給装置414(そしてさらには外部の電動モータ416)の動作を調整することができる。
【0018】
図4Aに示されているように、傾斜加速度計システム410、処理装置412、および電力供給装置414は、共通の筐体内で単一のユニットとして実装される。これら3つの部品は、電気的および電子的に接続され、好ましくは共通の電源を共有する。好ましくは、3つの部品の要素は、単一のプリント回路基板(PCB)上に実装される。よって、電動モータ制御ユニット400は、外部の電動モータ416に取り付けるための、およびシステム内で制御入力装置418に接続するための、単一のまとまったユニットとして提供される。
【0019】
次に、
図4Bを参照しながら、傾斜加速度計システム410の実施形態について、より詳細に記載する。例示的な傾斜加速度計システムは、傾斜加速度計450を含む。この傾斜加速度計450は、必要に応じて微小電気機械システム(MEMS)加速度計を備える。後述するように、傾斜加速度計は、好ましくは3軸加速度計であり、3次元の加速度を示す出力を供給する。しかし、他の種類の加速度計、特に2軸加速度計でも、実施によっては十分であることもある。また、傾斜加速度計システムは、電動モータ制御ユニット400の動作を補償する動作補償システム452も備える。電動モータ制御ユニット400の動作には、進行方向における線速度に起因する動作が含まれ、必要であれば、直線方向における加速度、および制御ユニットの方向の変化に起因する加速度が含まれる。この補償については、後述する。
【0020】
傾斜加速度計450および動作補償システム452からの出力が、傾斜角算出装置454に供給される。傾斜角算出装置454は、電動モータ制御ユニットの動作に対応するシステムにより出力される傾斜測定値を調整する。調整された傾斜角は、前述したように、電力供給装置414の動作を調整するために傾斜角算出装置454から出力され、電動モータ制御ユニット400の処理装置412への入力として供給される。
【0021】
図4Aおよび
図4Bはブロック図として示されているが、これらの図面に記載されている各要素の機能は、単一の要素によって提供されなくてもよい。例えば、1つ以上のこれらの要素の機能が、他の要素と共有されてもよいし、または装置全体に分散されてもよい。例えば、傾斜角算出装置454は、電動モータ制御ユニット400の処理装置412の一部として実装されてもよく、これにより傾斜加速度計450および動作補償システム452から直接入力を受け入れてもよい。したがって、これらの図は、図に示されている要素間で必要とされる物理的または機能的分離を表していると取られるべきではない。
【0022】
前述したような電動モータ制御ユニットの使用について、特に空中作業台を有する車両、およびフォークリフトトラック等の積荷輸送車両を参照しながら以下に記載する。しかし、傾斜測定値に基づいて電動モータの動作を制御するのが望ましい場合は、本明細書中に記載の電動モータ制御ユニットは、任意の電動モータに接続されてもよいことが理解されるであろう。具体的には、ユニットは、乗用車、バン、または公共サービス車両等の任意の種類の車両用の電動モータに接続されてもよい。そのような状況では、電動モータ制御ユニットは、例えば、傾斜が検知されたときに車両の動作を制御する安全システムに組み込まれてもよい。後述する積荷輸送車両に関するシステムの態様および好ましい特徴は、前述した電動モータ制御ユニットおよび傾斜加速度計システムに独立して適用されてもよい。
【0023】
空中作業台を有する車両およびフォークリフトトラックなどの車両は、積荷輸送リフトを備える。この積荷輸送リフトは、車両の平衡を崩す、または車両を傾斜させる、もしくは車両を転覆させるのに十分な高さまで積荷を吊り上げるために使用されることがある。例えば、積荷輸送リフトは、積荷が積まれた状態の車両の重心を、ホイールベースの設置面積の真上ではない位置に移動させるのに十分な積荷を吊り上げることができる。これは、静止している車両でさえ傾斜させうるが、より極端ではない例では、吊り上げられた積荷は、車両を不安定にさせ、使用中に車両が傾斜する危険性を生じさせる恐れがある。
【0024】
図1は、フォークリフトトラック、および空中作業台を有する車両、すなわちクレーン車等の車両において使用される制御システムを示している。
【0025】
図1のシステムは、傾斜角算出装置12に接続された加速度計10を備える。傾斜角算出装置は、車両制御装置14に接続される。運転制御入力装置16は、車両の操作者からの命令を受け取るための入力インターフェースを備え、また、車両制御装置14に接続される。車両制御装置14は、車両の操作者に出力を提供するための出力部18、積荷輸送リフトを制御するためのリフト制御装置20、および車両を動かすための牽引制御装置22に接続される。
【0026】
加速度計10は、加速度計の重力の方向に対する方位を3次元で測定することができる3軸加速度計を備える。車両制御装置14は、積荷の吊り上げを制御するためのリフト制御装置20を制御すること、牽引制御装置22を制御すること、および車両の速度を制御することができる。運転制御入力装置16は、操作者から受け取った入力を車両制御装置14に伝達することにより、操作者のリフトの制御および車両の運転を可能にする。
【0027】
傾斜角算出装置12は、車両の線速度、および車両の線速度に対する運転方向についての表示を、車両制御装置14から取得することができる。さらに、傾斜角算出装置12は、線速度と、車両が進行方向に対して操縦されている方向と、に基づいて、加速度計10から取得された測定値を調整することができる。
【0028】
車両が動作中であり動いているときには、傾斜角算出装置12は、車両の線速度を示す信号と、車両が操縦されている方向を示す信号とを、車両制御装置14から取得する。また、傾斜角算出装置は、加速度計10から加速度信号を取得する。車両が進行方向に対して操縦されている方向に基づいて、傾斜角算出装置12は、車両の旋回円半径を推測し、旋回円半径および線速度に基づいて、向心加速度を算出する。傾斜角算出装置は、この向心加速度を用いて、加速度計10により測定された加速の方向を修正し、加速度計の測定値を補正し、車両の動作を補償する。
【0029】
図2は、別の傾斜角算出装置140に接続された、3軸加速度計110および車両の動作補償装置120を示している。
【0030】
3軸加速度計110は、3つの加速度成分Ax、Ay、Azを含む3次元の加速度信号を傾斜角算出装置140に供給することができる。
【0031】
車両の動作補償装置120は、車両の線速度を示す速度信号、および車両が進行方向に対して操縦される角度を示す操舵角信号を取得することができる。これら車両の速度信号および操舵角信号に基づいて、車両動作補償装置は、例えば、直線を走行中に加速をしている車両、または方向転換するように操縦されている車両などの車両の動作に関する加速度を算出することができる。したがって、車両動作補償装置120は、車両の動作に関する加速度を表す3つの成分を含む信号(例えば、3次元ベクトル)を、傾斜角算出装置に供給することができる。
【0032】
傾斜角算出装置140は、補正した傾斜角の測定値を供給するために、車両の動作に関する加速度ax、ay、azを減算することによって3軸加速度計により供給される加速度の測定値Ax、Ay、Azを修正するように構成される。
【0033】
動作中、3軸加速度計は、3次元の加速度信号を傾斜角算出装置140に供給し、車両の動作補償装置は、車両の動作に関する加速度を表す信号を供給する。その後、傾斜角算出装置140は、加速度計により測定された3次元の加速度信号を、車両の動作に関する加速度に基づいて補正する。
【0034】
1つの例として、車両が垂直であり停止している(または一定の速度で直線移動している)とき、3軸加速度計からの信号は、重力が作用している方向に対応する垂直方向の加速度を示す。さらに、これらの状況では、車両の動きに関する加速度はゼロであり、車両の動作補償装置は、傾斜角算出装置にゼロの出力を供給する。
【0035】
別の例として、車両が垂直であり直線走行しているが、線速度を増しているとき、3軸加速度計からの信号は、車両の線加速度により修正された、重力が作用している方向に対応する垂直方向の加速度を示す。車両の動作補償装置120は、線加速度を示す信号を、線速度の変化率に基づいて算出し、この信号ax、ay、azを傾斜角算出装置140に供給する。その後、傾斜角算出装置140は、加速度計からの信号Ax、Ay、Azを、車両の動作補償装置からの信号ax、ay、azに基づいて補正し、加速度計からの補正された信号に基づいて、(重力が作用している方向を示す)傾斜角信号を算出する。
【0036】
図1および
図2はブロック図として示されているが、これらの図面に記載されている各要素の機能は、単一の要素によって提供されなくてもよい。例えば、1つ以上のこれらの要素の機能が、他の要素と共有されてもよいし、または装置全体に分散されてもよい。別の例として、
図1の例は、車両制御装置14が、車両の線速度および操舵角についての表示を取得するために、牽引制御装置22、および運転制御入力装置16などの車両システムと通信するシステムを示している。したがって、
図1の車両制御装置14は、
図2に示されている動作補償装置120の機能を組み込んでもよい。さらに、
図1に示されている装置において、
図2に示されているような、および
図2を参照しながら記載されるような、動作補償装置120が備えられ、傾斜角算出装置12に接続されてもよく、その場合、車両制御装置14は、動作補償機能を発揮しなくてもよい。したがって、これらの図は、図に示されている要素間で必要とされる物理的または機能的分離を表していると取られるべきではない。
【0037】
図1、
図4Aおよび
図4Bの要素の機能性は、アナログもしくはデジタル部品、またはそれらの組み合わせにより提供されてもよい。いくつかの例では、機能性は、論理ゲート、書替え可能ゲートアレイ(FPGA)、特定用途向けIC(ASIC)、およびデジタル信号プロセッサ(DSP)からの組み合わせ等、またはプログラム可能なプロセッサにロードされたソフトウェアによる、デジタル論理を含んでもよい。
【0038】
加速度計10、110、450は、3軸加速度計として記載されたが、いくつかの例では、2軸加速度計、または1つ以上の1軸加速度計が使用されてもよい。加速度計は、微小電気機械システム(MEMS)加速度計であってもよいが、任意の適切な加速度計が使用されてもよい。
【0040】
図3に示されている方法では、302において、車両の進行方向に対する方向転換を示す方向転換パラメータが取得される。304において、進行方向における線速度が取得され、必要に応じて線速度の変化率が算出される。その後、306において、重力が加速度計に対して作用している方向を示す加速度計の測定値が取得される。
【0041】
308において、加速度計の測定値が、方向転換パラメータと、車両の線速度(および、必要に応じて線速度における任意の変化)と、加速度計の測定値と、に基づいて修正され、車両の傾斜角が算出される。その後、310において、車両の傾斜角が安全範囲内であるか否かが判断され、車両の傾斜角が安全範囲内であれば、車両は通常動作を続行できる。車両の動作が安全範囲内でないと判断されれば、車両の動作が算出された傾斜角に基づいて修正される。
【0042】
車両が安全範囲内で動作しているか否かを判断するために、吊り上げられた積荷の重量が考慮に入れられてもよく、積荷が吊り上げられる高さが考慮に入れられてもよい。例えば、車両制御装置(例えば、
図1の制御装置14)は、積荷が積まれていない状態の車両の重量と、吊り上げられた積荷の重量と、積荷が吊り上げられた高さと、に基づいて、車両の重心の位置を算出するように構成されてもよい。いくつかの可能性としては、車両に取り付けられた付加的なセンサが、積荷の重量および積荷の位置を算出するために使用されてもよい。これらのセンサが感知したパラメータは、例えばCANBUSインターフェース、または無線インターフェースもしくは配線織機などの他の通信システムを使用して、車両制御装置に伝達されてもよい。
【0043】
車両制御装置は、安全であるとされる傾斜角の範囲を、積荷が積まれた状態の車両の重心の位置と、車両の設置面積の大きさを示す格納されたデータと、に基づいて修正するように構成されてもよい。したがって、車両制御装置は、積荷が積まれた状態の車両の重心の高さが比較的低いときには、より広範囲の傾斜角における車両の動作を可能とするが、車両の重心が比較的高いとき、例えば、重い積荷が吊り上げられたときには、より厳しい制限を傾斜角に加える。
【0044】
車両の動作を修正するために、音声警告または視覚的警告が、車両の操作者に提供されてもよい。または、車両の速度が制限もしくは減速されてもよい。より高所まで吊り上げること、または積荷を重心からより遠くへ移動させることを防ぐ等、他の車両の動作の修正が適用されてもよい。
【0045】
いくつかの例では、
図1および
図2の装置が車両に取り付けられるときに、加速度計10、110を較正することが有利であることがある。加速度計を較正するために、車両が静止して垂直な位置にあるときに、加速度計を車両に配置することができる。その後、車両が垂直であるときに、装置を車両に固定し、車両がこの位置であるときに加速度計により測定された加速度を算出することにより、車両が垂直であるときを確認することができるように装置の車両制御装置を構成することができる。
【0046】
本開示の態様により解決される技術的課題の中に、傾斜センサと、車両の牽引装置および/またはリフトの制御装置との間における効率的なデータ交換の提供があるであろう。さらに、本開示の態様は、傾斜センサの方位が、モータ制御装置の方位により保持されるため、傾斜センサの方位が不注意により修正される可能性を低減できるという利点を有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、モータ制御装置は、電動モータと一体化され、単一のユニットを形成してもよい。
【0048】
上記の例は、本開示の実施方法のいくつかを説明するものであって、他の変形例および修正例が適用されてもよい。特に、装置を参照しながら上記に記載された機能は、本明細書中に記載された任意の方法と組み合わせられてもよい。同様に、本明細書中に記載された方法は、同等の機能性を提供するように構成された装置内に実装されてもよい。他の例および変形例は、本開示の文脈において当業者にとって明らかであるであろう。