特許第6279085号(P6279085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6279085
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】アゾールベンゼン誘導体およびその結晶
(51)【国際特許分類】
   C07D 417/10 20060101AFI20180205BHJP
   A61K 31/427 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 13/04 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20180205BHJP
【FI】
   C07D417/10CSP
   A61K31/427
   A61P1/04
   A61P3/06
   A61P3/10
   A61P7/00
   A61P9/12
   A61P11/00
   A61P13/04
   A61P13/12
   A61P35/00
   A61P37/02
   A61P43/00 111
   A61P19/06
【請求項の数】36
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2016-538406(P2016-538406)
(86)(22)【出願日】2015年7月29日
(86)【国際出願番号】JP2015071530
(87)【国際公開番号】WO2016017708
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2016年9月27日
(31)【優先権主張番号】特願2014-155030(P2014-155030)
(32)【優先日】2014年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-155032(P2014-155032)
(32)【優先日】2014年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503369495
【氏名又は名称】帝人ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】河名 旭
(72)【発明者】
【氏名】野里 久江
(72)【発明者】
【氏名】金澤 親志
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第1996/031211(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/043400(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/126770(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/126899(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D401/00−421/14
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸の結晶。
【請求項2】
粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角(2θ±0.5°)=8.6°、10.2°、13.3°、14.4°、18.5°、19.9°、21.8°、25.1°、25.6°、26.6°、27.1°、および29.5°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の結晶(A晶)。
【請求項3】
粉末X線回折スペクトルが、以下の図1に示すパターンを有する、請求項1に記載の結晶(A晶)。
【請求項4】
固体NMRスペクトル(13C)において、化学シフト(±0.5ppm)116.3ppm、117.6ppm、120.0ppm、123.6ppm、125.9ppm、127.4ppm、143.7ppm、151.8ppm、161.1ppm、162.3ppm、および165.5ppmに特徴的なピークを有する、請求項1に記載の結晶(A晶)。
【請求項5】
固体NMRスペクトル(13C)が、以下の図5に示すパターンを有する、請求項1に記載の結晶(A晶)。
【請求項6】
赤外吸収スペクトル(KBr法)において、波数(±5cm−1)745cm−1、822cm−1、889cm−1、975cm−1、997cm−1、1611cm−1、および1705cm−1に特徴的な吸収ピークを有する、請求項1に記載の結晶(A晶)。
【請求項7】
赤外吸収スペクトル(KBr法)が、以下の図8に示すパターンを有する、請求項1に記載の結晶(A晶)。
【請求項8】
熱重量測定・示差熱分析における発熱ピークが222℃±2℃である、請求項1に記載の結晶(A晶)。
【請求項9】
粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角(2θ±0.5°)=10.1°、12.6°、13.1°、14.0°、18.6°、24.2°、25.2°、25.7°、27.2°、および30.5°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の結晶(B晶)。
【請求項10】
粉末X線回折スペクトルが、以下の図2に示すパターンを有する、請求項1に記載の結晶(B晶)。
【請求項11】
固体NMRスペクトル(13C)において、化学シフト(±0.5ppm)115.4ppm、118.0ppm、119.8ppm、123.2ppm、126.4ppm、129.1ppm、142.7ppm、151.2ppm、160.9ppm、および166.6ppmに特徴的なピークを有する、請求項1に記載の結晶(B晶)。
【請求項12】
固体NMRスペクトル(13C)が、以下の図6に示すパターンを有する、請求項1に記載の結晶(B晶)。
【請求項13】
赤外吸収スペクトル(KBr法)において、波数(±5cm−1)744cm−1、810cm−1、972cm−1、997cm−1、1005cm−1、1611cm−1、および1710cm−1に特徴的な吸収ピークを有する、請求項1に記載の結晶(B晶)。
【請求項14】
赤外吸収スペクトル(KBr法)が、以下の図9に示すパターンを有する、請求項1に記載の結晶(B晶)。
【請求項15】
熱重量測定・示差熱分析における発熱ピークが225℃±2℃であり、無水物晶である、請求項1に記載の結晶(B晶)。
【請求項16】
粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角(2θ±0.5°)=7.2°、12.5°、13.0°、14.7°、19.2°、20.0°、21.4°、21.7°、24.7°、および26.0°に特徴的なピークを有する、請求項1に記載の結晶(C晶)。
【請求項17】
粉末X線回折スペクトルが、以下の図3に示すパターンを有する、請求項1に記載の結晶(C晶)。
【請求項18】
固体NMRスペクトル(13C)において、化学シフト(±0.5ppm)116.1ppm、119.6ppm、123.1ppm、126.1ppm、127.1ppm、130.0ppm、143.6ppm、150.3ppm、158.3ppm、160.7ppm、163.9ppm、165.5ppm、および167.0ppmに特徴的なピークを有する、請求項1に記載の結晶(C晶)。
【請求項19】
固体NMRスペクトル(13C)が、以下の図7に示すパターンを有する、請求項1に記載の結晶(C晶)。
【請求項20】
赤外吸収スペクトル(KBr法)において、波数(±5cm−1)745cm−1、751cm−1、809cm−1、820cm−1、971cm−1、1006cm−1、1613cm−1、1682cm−1、および1710cm−1に特徴的な吸収ピークを有する、請求項1に記載の結晶(C晶)。
【請求項21】
赤外吸収スペクトル(KBr法)が、以下の図10に示すパターンを有する、請求項1に記載の結晶(C晶)。
【請求項22】
熱重量測定・示差熱分析における吸熱ピークが88℃±2℃であり、発熱ピークが225℃±2℃である、請求項1に記載の結晶(C晶)。
【請求項23】
ナトリウム 4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート。
【請求項24】
請求項23に記載の化合物の結晶。
【請求項25】
粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角(2θ±0.5°)=7.2°、10.9°、13.3°、15.9°、18.2°、20.8°、22.1°、25.2°、26.1°、および29.1°に特徴的なピークを有する、請求項24に記載の結晶。
【請求項26】
粉末X線回折スペクトルが、以下の図4に示すパターンを有する、請求項24に記載の結晶。
【請求項27】
熱重量測定・示差熱分析における発熱ピークが281℃±2℃である、請求項24に記載の結晶。
【請求項28】
請求項23に記載の化合物、または請求項1〜22および24〜27のいずれか1項に記載の結晶、および製薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項29】
請求項23に記載の化合物、または請求項1〜22および24〜27のいずれか1項に記載の結晶を有効成分として含有する、キサンチンオキシダーゼ阻害薬。
【請求項30】
請求項23に記載の化合物、または請求項1〜22および24〜27のいずれか1項に記載の結晶を有効成分として含有する、痛風、高尿酸血症、腫瘍崩壊症候群、尿路結石、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、心血管疾患、腎疾患、呼吸器疾患、炎症性腸疾患および自己免疫性疾患からなる群より選ばれる一つ以上の疾患の治療薬または予防薬。
【請求項31】
4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸のアルキルエステルを溶媒に懸濁し、塩基の水溶液を添加して加水分解する工程;および反応物を中和する工程;
を含む、請求項2〜8のいずれかに記載の4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸の結晶(A晶)の製造方法。
【請求項32】
中和物に水を加えて撹拌する工程をさらに含む、請求項31に記載の製造方法。
【請求項33】
4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸のA晶を溶媒に懸濁する工程を含む、請求項9〜15のいずれかに記載の4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸の結晶(B晶)の製造方法。
【請求項34】
懸濁液を加熱する工程をさらに含む、請求項33に記載の製造方法。
【請求項35】
溶媒が、エーテル類、ケトン類、エステル類、アルコール類、水、またはこれらの混合溶媒である、請求項33または34に記載の製造方法。
【請求項36】
4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸のN,N−ジメチルホルムアミド溶液を晶析することを含む、請求項16〜22のいずれかに記載の4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸の結晶(C晶)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、痛風、高尿酸血症、腫瘍崩壊症候群、尿路結石、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、動脈硬化症や心不全等の心血管疾患、糖尿病性腎症等の腎疾患、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患、炎症性腸疾患または自己免疫性疾患等、キサンチンオキシダーゼの関与する疾患の治療薬または予防薬として有用な、新規アゾールベンゼン誘導体およびその結晶、および結晶製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キサンチンオキシダーゼは核酸代謝においてヒポキサンチンからキサンチン、さらに尿酸への変換を触媒する酵素である。
キサンチンオキシダーゼの作用に対して、キサンチンオキシダーゼ阻害剤は尿酸合成を阻害することで血中尿酸値を低下させる。すなわち高尿酸血症およびこれに起因する各種疾患の治療に有効である。一方、高尿酸血症が持続して尿酸塩結晶が沈着した結果として起こる病態として、痛風と呼ばれる痛風関節炎、痛風結節がある。また、高尿酸血症は肥満、高血圧、脂質異常症および糖尿病などに関連した生活習慣病やメタボリックシンドロームの因子として重要視されており、最近では疫学調査により腎障害、尿路結石、心血管疾患の危険因子であることが明らかにされつつある(日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会 編,「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第2版」,メディカルレビュー社, 2010)。また、キサンチンオキシダーゼ阻害剤は、その活性酸素種発生阻害活性により、活性酸素種が関与する疾患の治療への有用性、例えば、血管機能改善作用を通じた心血管疾患の治療への有用性、が期待されている(Circulation. 2006;114:2508−2516)。
【0003】
臨床では、高尿酸血症の治療薬としてアロプリノール、フェブキソスタットが使用されているが、アロプリノールには、スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、肝障害、腎機能障害等の副作用が報告されている(Nippon Rinsho, 2003; 61, Suppul.1:197−201)。
【0004】
キサンチンオキシダーゼ阻害活性を有する化合物としては、例えば、2−フェニルチアゾール誘導体(特許文献1〜3)が報告されている。
【0005】
一方、特許文献4および特許文献5には、中央にベンゼン環を有するジチアゾールカルボン酸誘導体が報告されている。また、特許文献6および特許文献7には、ビフェニルチアゾールカルボン酸誘導体が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第92/09279号
【特許文献2】特開2002−105067号
【特許文献3】国際公開第96/31211号
【特許文献4】国際公開第2011/139886号
【特許文献5】国際公開第2011/101867号
【特許文献6】国際公開第2010/018458号
【特許文献7】国際公開第2010/128163号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、痛風、高尿酸血症、腫瘍崩壊症候群、尿路結石、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、動脈硬化症や心不全等の心血管疾患、糖尿病性腎症等の腎疾患、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患、炎症性腸疾患または自己免疫性疾患等、キサンチンオキシダーゼの関与する疾患の治療薬または予防薬として有用な、新規化合物とその結晶を提供することである。また、化学的に安定で、かつ医薬原薬として適した結晶を再現性良く製造できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記目的で鋭意研究した結果、4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸(以下、化合物(I)と表すこともある)はキサンチンオキシダーゼ阻害剤として優れた尿酸低下作用を有すること、結晶化が可能であること、および少なくとも3種類の結晶多形体が存在することを見出した。またそれらの結晶多形体は、結晶化方法によりつくり分けることが可能であることを見出した。また、本発明者らは、ナトリウム 4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボシキレート(以下、化合物(II)と表すこともある)が、キサンチンオキシダーゼ阻害剤として優れた尿酸低下作用を有すること、および化合物(II)は結晶化が可能であることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1]4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸の結晶;
[2]A晶である、[1]に記載の結晶;
[3]粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角2θ=8.6°、10.2°、13.3°、14.4°、18.5°、19.9°、21.8°、25.1°、25.6°、26.6°、27.1°、および29.5°に特徴的なピークを有する、[2]に記載の結晶;
[4]粉末X線回折スペクトルが、図1に示すパターンを有する、[2]に記載の結晶;
[5]固体NMRスペクトル(13C)において、化学シフト116.3ppm、117.6ppm、120.0ppm、123.6ppm、125.9ppm、127.4ppm、143.7ppm、151.8ppm、161.1ppm、162.3ppm、および165.5ppmに特徴的なピークを有する、[2]に記載の結晶;
[6]固体NMRスペクトル(13C)が、図5に示すパターンを有する、[2]に記載の結晶;
[7]赤外吸収スペクトル(KBr法)において、波数745cm−1、822cm−1、889cm−1、975cm−1、997cm−1、1611cm−1、および1705cm−1に特徴的な吸収ピークを有する、[2]に記載の結晶;
[8]赤外吸収スペクトル(KBr法)が、図8に示すパターンを有する、[2]に記載の結晶;
[9]熱重量測定・示差熱分析における発熱ピークが222℃である、[2]に記載の結晶;
[10]B晶である、[1]に記載の結晶;
[11]粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角2θ=10.1°、12.6°、13.1°、14.0°、18.6°、24.2°、25.2°、25.7°、27.2°、および30.5°に特徴的なピークを有する、[10]に記載の結晶;
[12]粉末X線回折スペクトルが、図2に示すパターンを有する、[10]に記載の結晶;
[13]固体NMRスペクトル(13C)において、化学シフト115.4ppm、118.0ppm、119.8ppm、123.2ppm、126.4ppm、129.1ppm、142.7ppm、151.2ppm、160.9ppm、および166.6ppmに特徴的なピークを有する、[10]に記載の結晶;
[14]固体NMRスペクトル(13C)が、図6に示すパターンを有する、[10]に記載の結晶;
[15]赤外吸収スペクトル(KBr法)において、波数744cm−1、810cm−1、972cm−1、997cm−1、1005cm−1、1611cm−1、および1710cm−1に特徴的な吸収ピークを有する、[10]に記載の結晶;
[16]赤外吸収スペクトル(KBr法)が、図9に示すパターンを有する、[10]に記載の結晶;
[17]熱重量測定・示差熱分析における発熱ピークが225℃であり、無水物晶である、[6]に記載の結晶;
[18]C晶である、[1]に記載の結晶;
[19]粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角2θ=7.2°、12.5°、13.0°、14.7°、19.2°、20.0°、21.4°、21.7°、24.7°、および26.0°に特徴的なピークを有する、[18]に記載の結晶;
[20]粉末X線回折スペクトルが、図3に示すパターンを有する、[18]に記載の結晶;
[21]固体NMRスペクトル(13C)において、化学シフト116.1ppm、119.6ppm、123.1ppm、126.1ppm、127.1ppm、130.0ppm、143.6ppm、150.3ppm、158.3ppm、160.7ppm、163.9ppm、165.5ppm、および167.0ppmに特徴的なピークを有する、[18]に記載の結晶;
[22]固体NMRスペクトル(13C)が、図7に示すパターンを有する、[18]に記載の結晶;
[23]赤外吸収スペクトル(KBr法)において、波数745cm−1、751cm−1、809cm−1、820cm−1、971cm−1、1006cm−1、1613cm−1、1682cm−1、および1710cm−1に特徴的な吸収ピークを有する、[18]に記載の結晶;
[24]赤外吸収スペクトル(KBr法)が、図10に示すパターンを有する、[18]に記載の結晶;
[25]熱重量測定・示差熱分析における吸熱ピークが88℃であり、発熱ピークが225℃である、[18]に記載の結晶;
[26]ナトリウム 4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート;
[27][26]に記載の化合物の結晶;
[28]粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角2θ=7.2°、10.9°、13.3°、15.9°、18.2°、20.8°、22.1°、25.2°、26.1°、および29.1°に特徴的なピークを有する、[27]に記載の結晶;
[29]粉末X線回折スペクトルが、図4に示すパターンを有する、[27]に記載の結晶;
[30]熱重量測定・示差熱分析における発熱ピークが281℃である、[27]に記載の結晶;
[31][1]〜[30]のいずれか1つに記載の化合物またはその結晶、および製薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物;
[32][1]〜[30]のいずれか1つに記載の化合物またはその結晶を有効成分として含有する、キサンチンオキシダーゼ阻害薬;
[33][1]〜[30]のいずれか1つに記載の化合物またはその結晶を有効成分として含有する、痛風、高尿酸血症、腫瘍崩壊症候群、尿路結石、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、心血管疾患、腎疾患、呼吸器疾患、炎症性腸疾患および自己免疫性疾患からなる群より選ばれる一つ以上の疾患の治療薬または予防薬;
[34]4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸のアルキルエステルを溶媒に懸濁し、塩基の水溶液を添加して加水分解する工程;および
反応物を中和する工程;
を含む、4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸の結晶(A晶)の製造方法;
[35]中和物に水を加えて撹拌する工程をさらに含む、[34]に記載の製造方法;
[36]4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸のA晶を溶媒に懸濁する工程を含む、4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸の結晶(B晶)の製造方法;
[37]懸濁液を加熱する工程をさらに含む、[36]に記載の製造方法;
[38]溶媒が、エーテル類、ケトン類、エステル類、アルコール類、水、またはこれらの混合溶媒である、[36]または[37]に記載の製造方法;および
[39]4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸のN,N−ジメチルホルムアミド溶液を晶析することを含む、4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸の結晶(C晶)の製造方法;
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、痛風、高尿酸血症、腫瘍崩壊症候群、尿路結石、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、動脈硬化症や心不全等の心血管疾患、糖尿病性腎症等の腎疾患、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患、炎症性腸疾患または自己免疫性疾患等、キサンチンオキシダーゼの関与する疾患の治療薬または予防薬として有用な、アゾールベンゼン誘導体の結晶、およびその製造方法が提供される。本発明の化合物(I)の結晶、または化合物(II)もしくはその結晶は、医薬品製造用原体として用いることができる。また、本発明の化合物(I)の結晶、または化合物(II)もしくはその結晶の製造方法は、工業的な製造に適した方法である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、化合物(I)のA晶の粉末X線回折スペクトルである。
図2図2は、化合物(I)のB晶の粉末X線回折スペクトルである。
図3図3は、化合物(I)のC晶の粉末X線回折スペクトルである。
図4図4は、化合物(II)のA晶の粉末X線回折スペクトルである。
図5図5は、化合物(I)のA晶の固体NMRスペクトル(13C)である。
図6図6は、化合物(I)のB晶の固体NMRスペクトル(13C)である。
図7図7は、化合物(I)のC晶の固体NMRスペクトル(13C)である。
図8図8は、化合物(I)のA晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)である。
図9図9は、化合物(I)のB晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)である。
図10図10は、化合物(I)のC晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「キサンチンオキシダーゼ」は、一般に、ヒポキサンチンからキサンチン、さらに尿酸への酸化反応を触媒する酵素という広義と、同反応を触媒する酵素の1つであるオキシダーゼ型のキサンチンオキシドレダクターゼという狭義で用いられるが、本発明において、「キサンチンオキシダーゼ」とは、特に断りのない限り、ヒポキサンチンからキサンチン、さらに尿酸への酸化反応を触媒する酵素を総称する。この反応を担うキサンチンオキシドレダクターゼには、オキシダーゼ型とデヒドロゲナーゼ型の2つの型が存在するが、いずれの型も本発明のキサンチンオキシダーゼに含まれる。「キサンチンオキシダーゼ阻害活性」、「キサンチンオキシダーゼ阻害剤」等においても、特に断りのない限り、「キサンチンオキシダーゼ」は上記定義と同じ意味を有する。
【0013】
本発明の結晶は、粉末X線回折スペクトル、固体NMRスペクトル(13C)、赤外吸収スペクトル(KBr法)及び/又は熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)等によって特徴付けられる。これらの結晶の粉末X線回折(XRD)スペクトル、固体NMRスペクトル(13C)及び赤外吸収スペクトル(KBr法)は特徴的なパターンを示し、それぞれの結晶は特異的な回折角2θの値を有する。また、これらの結晶は、熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)においても、それぞれに特徴的な熱挙動を示す。
【0014】
化合物(I)ののA晶は、粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角2θ=8.6°、10.2°、13.3°、14.4°、18.5°、19.9°、21.8°、25.1°、25.6°、26.6°、27.1°、および29.5°に特徴的なピークを有する。また、化合物(I)のA晶は、粉末X線回折スペクトルにおいて、図1に示すパターンを有する。
【0015】
化合物(I)のA晶は、固体NMRスペクトル(13C)において、化学シフト116.3ppm、117.6ppm、120.0ppm、123.6ppm、125.9ppm、127.4ppm、143.7ppm、151.8ppm、161.1ppm、162.3ppm、および165.5ppmに特徴的なピークを有する。また、化合物(I)のA晶は、固体NMRスペクトル(13C)において、図5に示すパターンを有する。
【0016】
化合物(I)のA晶は、赤外吸収スペクトル(KBr法)において、波数745cm−1、822cm−1、889cm−1、975cm−1、997cm−1、1611cm−1、および1705cm−1に特徴的な吸収ピークを有する。また、化合物(I)のA晶は、赤外吸収スペクトル(KBr法)において、図8に示すパターンを有する。
【0017】
化合物(I)のA晶は、熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)において、222℃に発熱ピークを有する。A晶は無水物晶である。
【0018】
化合物(I)のB晶は、粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角2θ=10.1°、12.6°、13.1°、14.0°、18.6°、24.2°、25.2°、25.7°、27.2°、および30.5°に特徴的なピークを有する。また、化合物(I)のB晶は、粉末X線回折スペクトルにおいて、図2に示すパターンを有する。
【0019】
化合物(I)のB晶は、固体NMRスペクトル(13C)において、化学シフト115.4ppm、118.0ppm、119.8ppm、123.2ppm、126.4ppm、129.1ppm、142.7ppm、151.2ppm、160.9ppm、および166.6ppmに特徴的なピークを有する。また、化合物(I)のB晶は、固体NMRスペクトル(13C)において、図6に示すパターンを有する。
【0020】
化合物(I)のB晶は、赤外吸収スペクトル(KBr法)において、波数744cm−1、810cm−1、972cm−1、997cm−1、1005cm−1、1611cm−1、および1710cm−1に特徴的な吸収ピークを有する。また、化合物(I)のB晶は、赤外吸収スペクトル(KBr法)において、図9に示すパターンを有する。
【0021】
化合物(I)のB晶は、熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)において、225℃に発熱ピークを有する。B晶は無水物晶である。
【0022】
化合物(I)のC晶は、粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角2θ=7.2°、12.5°、13.0°、14.7°、19.2°、20.0°、21.4°、21.7°、24.7°、および26.0°に特徴的なピークを有する。また、化合物(I)のC晶は、粉末X線回折スペクトルにおいて、図3に示すパターンを有する。
【0023】
化合物(I)のC晶は、固体NMRスペクトル(13C)において、化学シフト116.1ppm、119.6ppm、123.1ppm、126.1ppm、127.1ppm、130.0ppm、143.6ppm、150.3ppm、158.3ppm、160.7ppm、163.9ppm、165.5ppm、および167.0ppmに特徴的なピークを有する。また、化合物(I)のC晶は、固体NMRスペクトル(13C)において、図7に示すパターンを有する。
【0024】
化合物(I)のC晶は、赤外吸収スペクトル(KBr法)において、波数745cm−1、751cm−1、809cm−1、820cm−1、971cm−1、1006cm−1、1613cm−1、1682cm−1、および1710cm−1に特徴的な吸収ピークを有する。また、化合物(I)のC晶は、赤外吸収スペクトル(KBr法)において、図10に示すパターンを有する。
【0025】
化合物(I)のC晶は、熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)において、88℃に吸熱ピーク、225℃に発熱ピークを有する。C晶はジメチルホルムアミドと1:1の割合で溶媒和物を形成しているものと考えられる。
【0026】
化合物(II)のA晶は、粉末X線回折スペクトルにおいて、回折角2θ=7.2°、10.9°、13.3°、15.9°、18.2°、20.8°、22.1°、25.2°、26.1°、および29.1°に特徴的なピークを有する。また、化合物(II)のA晶は、粉末X線回折スペクトルにおいて、図4に示すパターンを有する。熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)において、281℃に発熱ピークを有する。A晶は無水物晶である。
【0027】
ここで「特徴的なピーク」とは各々の結晶多形の粉末X線回折スペクトル、固体NMRスペクトル(13C)及び赤外吸収スペクトル(KBr法)において主に認められるピーク及び固有のピークを意味する。本発明の回折角で特定される結晶には、上記の特徴的なピーク以外のピークを認めるものも含まれる。
【0028】
粉末X線回折スペクトルにおける回折角2θの位置および相対強度は測定条件によって多少変動しうるものであるため、2θがわずかに異なる場合であっても、適宜スペクトル全体のパターンを参照して結晶形の同一性は認定されるべきであり、かかる誤差の範囲の結晶も本発明に含まれる。2θの誤差としては、例えば、±0.5°、±0.2°が考えられる。すなわち、上記回折角で特定される結晶には、±0.5°ないし±0.2°の範囲で一致するものも含まれる。
【0029】
一般に、固体NMRスペクトル(13C)における化学シフトも、誤差が生じ得るものである。かかる誤差としては、例えば、±0.25ppm、典型的には、±0.5ppmの範囲である。すなわち、上記化学シフトで特定される結晶形は、±0.25ppmないし±0.5ppmの範囲で一致するものも含まれる。
【0030】
一般に、赤外吸収スペクトル(KBr法)における吸収ピークも、誤差が生じ得るものである。かかる誤差としては、例えば、±2cm−1、典型的には、±5cm−1の範囲である。すなわち、上記波数で特定される結晶形は、±2cm−1ないし±5cm−1の範囲で一致するものも含まれる。
【0031】
熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)において、「発熱ピーク」および「吸熱ピーク」とは、ピークの開始点の温度であり、外挿により求めた発熱および吸熱開始温度をいう。TG/DTAにおける吸熱および発熱ピークも測定条件によって多少変動しうる。誤差としては、例えば、±5℃、±2℃の範囲が考えられる。すなわち、上記ピークで特定される結晶は、±5℃ないし±2℃の範囲で一致するものも含まれる。
【0032】
さらに、粉末X線回折スペクトル、固体13CNMRスペクトル、赤外吸収スペクトル(KBr法)、TG/DTAいずれについても、結晶の標準品、例えば、本願実施例記載の方法により得られた各結晶の実測値と、本願記載の数値との差も、測定誤差として許容されうる。すなわち、かかる方法により算出された誤差範囲内で、回折角、化学シフト、赤外吸収ピーク、または吸熱および発熱ピークが一致する結晶も本発明の結晶に含まれる。
【0033】
化合物(I)のA晶は、化合物(I)のアルキルエステルを溶媒に懸濁し、塩基の水溶液を添加して加水分解する工程;および反応物を中和する工程;を含む方法により製造することができる。
また、化合物(I)のA晶の製造方法は、さらに、中和物に水を添加する工程、次いで反応溶液を撹拌する工程を含むことができる。
【0034】
化合物(I)のアルキルエステルを懸濁する溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、メチル tert−ブチルエーテル等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、トリフルオロエタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、水またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。好ましくは、エーテル類もしくはアルコール類、水またはこれらの混合溶媒である。
【0035】
化合物(I)のアルキルエステルとしては、炭素数1〜6のアルキルエステルが好ましく、エチルエステルがより好ましい。ここで、アルキルエステルとは、直鎖または分岐鎖の脂肪族飽和炭化水素エステルをいう。炭素数1〜6のアルキルエステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル、t−ブチルエステル等を具体例として挙げることができる。
【0036】
化合物(I)のアルキルエステルから化合物(I)への加水分解反応は、化合物(I)のアルキルエステルを上記溶媒(例えば、アルキルエステルの15倍量)に懸濁させた後、化合物(I)のアルキルエステルに等量、あるいは小過剰の塩基を反応させることで進行する。好ましい塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムを挙げることができる。本反応は0℃から100℃で進行するが、好ましくは20−30℃である。
【0037】
加水分解反応後、使用した塩基と等量、あるいは小過剰の酸を反応させることで中和する。好ましい酸としては、塩酸を挙げることができる。中和反応は0℃から100℃で進行するが、好ましくは0−30℃である。
【0038】
次いで、中和させた反応物に水(例えば、アルキルエステルの5倍量)を加え、1時間撹拌した後、析出物を濾取、乾燥して結晶を得る。溶媒量、水の添加量、撹拌条件、濾別までの時間は特に限定されないが、それらの条件が結晶の収率、化学純度、粒子径、粒度分布などに影響することがあるので、目的に応じて組み合わせて設定することが好ましい。濾取は通常の方法、例えば自然濾過、加圧濾過、減圧濾過、または遠心分離を用いることができる。乾燥は通常の方法、例えば自然乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥を用いることができる。
【0039】
化合物(I)のアルキルエステルの合成はいかなる方法で行っても良いが、例えば、以下の方法で合成することができる。
【0040】
化合物(A−2)の合成
【0041】
【化1】
【0042】
(式中、YおよびYは脱離基を表す。)
【0043】
およびYで示される脱離基としてはハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等が挙げられる。本反応は、化合物(A−1)におけるフェノール性水酸基に塩基存在下で、脱離基を持ったアルキル化試薬を反応させることにより化合物(A−2)を合成する方法である。用いる塩基としては、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の無機塩、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、t−ブトキシカリウム等の金属アルコキシド、トリエチルアミン、ピリジン、4−アミノピリジン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン(DIPEA)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)等の有機アミンが用いられる。本反応は、0℃〜140℃下で、反応に不活性な溶媒中、化合物(A−1)に等量、あるいは小過剰に塩基を反応させた後に、等量あるいは過剰量のアルキル化試薬を加え、通常0.5〜16時間反応させることによって行われる。本反応は窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。ここに、溶媒としては特に限定はされないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0044】
化合物(A−4)の合成
【0045】
【化2】
【0046】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0047】
本合成法は、化合物(A−2)と(A−3)とをカップリングさせることにより、化合物(A−4)を合成する方法である。Yで示される脱離基としてはハロゲン原子、メタンスルホニルオキシ基、p−トルエンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基等が挙げられる。本反応は化合物(A−2)と(A−3)を等量、あるいは一方を過剰に用い、反応に不活性な溶媒中、塩基および遷移金属触媒存在下、場合により配位子、カルボン酸および銅(I価またはII価)塩を加えて、室温〜加熱還流下で、通常0.5時間〜2日間反応させることによって行われる。本反応は窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。ここに、溶媒としては特に限定はされないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。塩基としては、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、リン酸三カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等、炭素数1〜6のアルコキシドの金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩)、炭素数1〜6のアルキルアニオンの金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩)、テトラ(炭素数1〜4のアルキル)アンモニウム塩(フッ化塩、塩化塩、臭化塩)、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロオクタン、又はイミダゾール等が挙げられる。遷移金属触媒としては、銅、パラジウム、コバルト、鉄、ロジウム、ルテニウム、及びイリジウム等が挙げられる。配位子としては、トリ(t−ブチル)ホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、t−ブチルジシクロヘキシルホスフィン、ジ(t−ブチル)シクロヘキシルホスフィン、又はジ(t−ブチル)メチルホスフィン等が挙げられる。銅(I価またはII価)塩としては、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、酢酸銅(I)、フッ化銅(II)、塩化銅(II)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(II)、酢酸銅(II)及びこれらの水和物、ならびにこれらの混合物等が挙げられる。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−ブチル酸、イソブチル酸、ペンタン酸、イソペンタン酸、ピバル酸、及びトリフルオロ酢酸等が挙げられる。
【0048】
化合物(A−5)の合成
【0049】
【化3】
【0050】
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0051】
本合成法は、化合物(A−4)のニトロ基を還元することにより、化合物(A−5)を合成する方法である。本反応は、化合物(A−4)を、反応に不活性な溶媒中、遷移金属触媒存在下、水素ガス雰囲気下、室温〜加熱還流下で、通常0.5時間〜2日間反応させることによって行われる。ここに、溶媒としては特に限定はされないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、酢酸エチルまたはこれらの混合溶媒等が挙げられる。遷移金属触媒としては、パラジウム−炭素、水酸化パラジウム、パラジウムブラック、白金−炭素、ラネーニッケル等が好ましい。
【0052】
化合物(A−6)の合成
【0053】
【化4】
【0054】
(式中、RおよびRは、独立して、炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【0055】
本合成法は、化合物(A−5)とオルトギ酸エステルとアジド化合物を反応させてテトラゾール環を合成する方法である。本反応は、化合物(A−5)、オルトギ酸エステルとアジド化合物を等量、あるいはいずれかを過剰に用い、反応に不活性な溶媒中、酸存在下、室温〜加熱還流下で、通常0.5時間〜2日間反応させることによって行われる。本反応は窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。オルトギ酸エステルとしては、オルトギ酸トリメチル及びオルトギ酸トリエチル等が挙げられる。また、アジド化合物としては、ナトリウムアジド、トリメチルシリルアジド等が挙げられる。用いる酸としてはギ酸、酢酸等の有機酸、塩酸、硫酸等の無機酸、インジウムトリフラート、イッテルビウムトリフラート、亜鉛トリフラート、トリクロロインジウム等のルイス酸が挙げられる。これらの反応に用いられる溶媒としては特に限定はされないが、例えば、ベンゼン、トルエン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはこれらの混合溶媒等が挙げられ、酢酸等の酸を溶媒として用いてもよい。
【0056】
上記の中間体化合物は、合成過程において、必要であれば、再結晶、再沈殿又は種々のクロマトグラフィー法などの常法により精製することができる。
【0057】
化合物(I)のB晶は、化合物(I)のA晶を溶媒に懸濁する工程を含む方法により製造することができる。
また、化合物(I)のB晶の製造方法は、さらに、次いで反応溶液を加熱する工程を含むことができる。
【0058】
化合物(I)のB晶の製造において、A晶を懸濁する溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、メチル tert−ブチルエーテル等のエーテル類、アセトン、2−ブタノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、ヘキサフルオロ−2−プロパノール、トリフルオロエタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、アセトン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、水またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。好ましくは、エーテル類、ケトン類、エステル類、アルコール類、水またはこれらの混合溶媒である。
【0059】
化合物(I)のA晶の化合物(I)のB晶への変換は、化合物(I)のA晶を上記溶媒(例えば、化合物(I)のA晶の5〜60倍量)に懸濁させた後、反応溶液を6時間加熱還流させることで進行する。
【0060】
次いで、反応溶液を25℃で撹拌した後、析出物を濾取、乾燥して結晶を得る。溶媒量、加熱時間、撹拌条件、濾別までの時間は特に限定されないが、それらの条件が結晶の収率、化学純度、粒子径、粒度分布などに影響することがあるので、目的に応じて組み合わせて設定することが好ましい。濾取は通常の方法、例えば自然濾過、加圧濾過、減圧濾過、または遠心分離を用いることができる。乾燥は通常の方法、例えば自然乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥を用いることができる。
【0061】
化合物(I)のC晶は、化合物(I)をN,N−ジメチルホルムアミド溶媒により晶析することによって得られる。
【0062】
化合物(I)にN,N−ジメチルホルムアミド(例えば、化合物(I)の10倍量)を加え、80℃で加熱撹拌して溶解させる。反応溶液を20−30℃に冷却させ、2時間撹拌する。析出物を濾取し、濾物をエタノール(例えば、化合物(I)の10倍量)で洗浄する。母液を20−30℃で7日間静置し、析出物を濾取、乾燥して結晶を得る。溶媒、撹拌条件、濾別までの時間は特に限定されないが、それらの条件が結晶の収率、化学純度、粒子径、粒度分布などに影響することがあるので、目的に応じて組み合わせて設定することが好ましい。濾取は通常の方法、例えば自然濾過、加圧濾過、減圧濾過、または遠心分離を用いることができる。乾燥は通常の方法、例えば自然乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥を用いることができる。
【0063】
また、化合物(I)のC晶は、化合物(I)のB晶を溶媒に懸濁する工程を含む方法によっても製造することができる。
【0064】
化合物(I)のB晶にN,N−ジメチルホルムアミドと酢酸エチルの1対1の混合溶液(例えば、化合物(I)の10倍量)を加え、室温で14日間撹拌させる。溶液を濾過し、濾物を室温で乾燥して結晶を得る。溶媒、撹拌条件、濾別までの時間は特に限定されないが、それらの条件が結晶の収率、化学純度、粒子径、粒度分布などに影響することがあるので、目的に応じて組み合わせて設定することが好ましい。濾取は通常の方法、例えば自然濾過、加圧濾過、減圧濾過、または遠心分離を用いることができる。乾燥は通常の方法、例えば自然乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥を用いることができる。
【0065】
化合物(I)は、例えば、以下の方法により合成することができる。
【0066】
【化5】
【0067】
(式中、Rはカルボキシル基の保護基を表す。)
【0068】
本合成法は、化合物(A−7)の保護基Rを酸または塩基等により脱保護させることにより、化合物(I)を合成する方法である。「カルボキシル基の保護基」とは、例えば、PROTECTIVE GROUPS in ORGANIC SYNTHESIS,THIRD EDITION、John Wiley&Sons,Inc.に記載の一般的なカルボキシル基の保護基であり、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヘプチル基、t−ブチル基、メトキシメチル基、メチルチオメチル基、メトキシエトキシメチル基、メトキシエチル基、ベンジル基等を挙げることができる。化合物(A−7)は、上記化合物(A−6)の合成方法におけるRをRに置きかえた方法により合成することができる。本反応は、化合物(A−7)に、反応に不活性な溶媒中、酸または塩基を等量、あるいは過剰に用い、室温〜加熱還流下で、通常0.5時間〜5日間反応されることによって行なわれる。ここに、溶媒としては特に限定はされないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。酸としては、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、あるいはこれらの酸を水または有機溶媒で希釈した溶液等が挙げられる。塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機塩基、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド等の金属アルコキシド、あるいはこれらの塩基を水または有機溶媒で希釈した溶液等が挙げられる。脱保護に塩基を用いた場合には、反応後に酸を加えて中和することで化合物(I)が得られる。中和に用いる酸としては、先に例示した酸を用いることができる。得られた化合物(I)は、必要であれば、再結晶、再沈殿又は種々のクロマトグラフィー法などの常法により精製することができる。
【0069】
化合物(II)のA晶は、例えば、以下の方法で合成することができる。
【0070】
【化6】
【0071】
化合物(II)は、化合物(I)を溶媒に懸濁し、水酸化ナトリウムを添加する工程を含む方法により製造することができる。また、さらに、反応溶液を撹拌する工程を含むことができる。化合物(I)を懸濁する溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン等のエーテル類、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水またはこれらの混合溶媒等が挙げられる。好ましくは、エーテル類もしくはアルコール類、水またはこれらの混合溶媒である。化合物(I)から化合物(II)への塩形成反応は、化合物(I)を上記溶媒(例えば、カルボン酸の10倍量)に懸濁させた後、化合物(I)に等量、あるいは小過剰の水酸化ナトリウムを反応させることで進行する。本反応は0℃から100℃で進行するが、好ましくは0−30℃である。
【0072】
次いで、1時間撹拌した後、析出物を濾取、乾燥して結晶を得る。溶媒量、撹拌条件、濾別までの時間は特に限定されないが、それらの条件が結晶の収率、化学純度、粒子径、粒度分布などに影響することがあるので、目的に応じて組み合わせて設定することが好ましい。濾取は通常の方法、例えば自然濾過、加圧濾過、減圧濾過、または遠心分離を用いることができる。乾燥は通常の方法、例えば自然乾燥、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥を用いることができる。
【0073】
上記合成法における中間体化合物は、合成過程において、必要であれば、再結晶、再沈殿又は種々のクロマトグラフィー法などの常法により精製することができる。
本発明のそれぞれの結晶は、特徴的な粉末X線回折スペクトル、固体NMRスペクトル(13C)、赤外吸収スペクトル(KBr法)や熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)によって他の結晶形と区別できるが、他の結晶形の混入率という点について言及するものではない。特定の結晶を単独で得る場合、少なくとも、これらの測定方法によって検出できない程度の混入であれば許容される。また、医薬としてそれぞれ特定の結晶を原体として使用する場合、他結晶の含有を許容しない趣旨でもない。
【0074】
本発明のそれぞれの結晶は、いずれも医薬の有効成分として用いることができる。また、単独の結晶のみならず、2種以上の混合物で用いることができる。
【0075】
本発明において、化合物(I)および化合物(II)の結晶は、結晶でないものに比べ、製造時の取り扱いや再現性、安定性、また、保存安定性などが有利となる。
【0076】
本発明の化合物(I)の結晶、または化合物(II)もしくはその結晶と、医薬上許容される担体を用いて医薬組成物とすることができる。
【0077】
本発明の化合物(I)の結晶、または化合物(II)もしくはその結晶を含有する製剤は、通常製剤化に用いられる添加剤を用いて調製される。それら添加剤としては、固形製剤の場合、乳糖、白糖、ブドウ糖、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及びリン酸水素カルシウム等の賦形剤;結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びポリビニルピロリドン等の結合剤;デンプン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、及びカルボキシメチルスターチナトリム等の崩壊剤;タルク、及びステアリン酸類等の滑沢剤;ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、及びエチルセルロース等のコーティング剤;着色剤;半固形製剤の場合、白色ワセリン等の基剤、液状製剤の場合、エタノール等の溶剤、エタノール等の溶解補助剤、パラオキシ安息香酸エステル類等の保存剤、ブドウ糖等の等張化剤、クエン酸類等の緩衝剤、L−アスコルビン酸等の抗酸化剤、EDTA等のキレート剤、及びポリソルベート80等の懸濁化剤・乳化剤、等を挙げることができる。
【0078】
本発明の化合物(I)の結晶、または化合物(II)もしくはその結晶は、固形製剤、半固形製剤、及び液状製剤等のいずれの剤形、経口剤及び非経口剤(注射剤、経皮剤、点眼剤、坐剤、経鼻剤、および吸入剤等)のいずれの適用製剤であっても使用することができる。
【0079】
本発明の化合物(I)の結晶、または化合物(II)もしくはその結晶を有効成分として含有する医薬組成物は、キサンチンオキシダーゼ阻害薬、もしくは痛風、高尿酸血症、腫瘍崩壊症候群、尿路結石、高血圧症、脂質異常症、糖尿病、動脈硬化症や心不全等の心血管疾患、糖尿病性腎症等の腎疾患、慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患、炎症性腸疾患または自己免疫性疾患等、キサンチンオキシダーゼの関与する疾患の治療薬または予防薬として用いることができる。ここで、「予防」とは、未だ罹患または発症をしていない個体において、罹患または発症を未然に防ぐことであり、「治療」とは既に罹患または発症した個体において、疾患や症状を治癒、抑制または改善させることをいう。
【実施例】
【0080】
[測定方法]
本発明の結晶の粉末X線回折は、以下の条件で測定した。
装置:ブルカー・エイエックスエス製D8 DISCOVER With GADDS CS
線源:Cu・Kα,波長:1.541838(10−10m)、40kv−40mA、入射側平板グラファイトモノクロメータ、コリメータφ300μm、2次元PSPC検出器、スキャン3〜40°
[測定方法]
本発明の結晶の固体NMRスペクトル(13C)は、以下の条件で測定した。
装置:ブルカー製 DSX300WB
測定核:13C
パルス繰り返し時間:5秒
パルスモード:CP/MAS測定
[測定方法]
本発明の結晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)は、日本薬局方の一般試験法に記載された赤外吸収スペクトル測定法の臭化カリウム錠剤法に従い、以下の条件で測定した。
装置:サーモフィッシャーサイエンティフィック製 AVATAR320
測定範囲:4000〜400cm−1
分解能:4cm−1
積算回数:64
本発明の結晶の熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)は、以下の条件で測定した。
装置:リガク製TG8120
昇温速度:毎分10℃、雰囲気:窒素、サンプルパン:アルミニウム、リファレンス:アルミナ、サンプリング:1.0秒、測定温度範囲:25〜300℃
H NMRスペクトル(400MHz、DMSO−dまたはCDCl)を測定したものについては、その化学シフト(δ:ppm)およびカップリング定数(J:Hz)を示す。以下の略号はそれぞれ次のものを表す。
装置:JEOL製JMTC−400/54/SS
s=singlet、d=doublet、t=triplet、q=quartet、brs=broad singlet、m=multiplet
【0081】
[参考例1]
エチル 4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボキシレートの製造
(1)4−ブロモ−2−ニトロフェノール20.0gおよび炭酸カリウム19.0gをジメチルホルムアミド200mLに懸濁させ、窒素雰囲気下、臭化イソブチル20.1gを加えて、110℃で22時間加熱した。反応混合液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄後、乾燥、減圧濃縮を行い、4−ブロモ−1−(2−メチルプロポキシ)−2−ニトロベンゼン24.8gを得た。
(2)4−ブロモ−1−(2−メチルプロポキシ)−2−ニトロベンゼン2.74gに炭酸水素化カリウム2.10g、塩化パラジウム(II)43.5mg、臭化銅(I)205mgを加え、トルエン35mLに懸濁させた。その後にエチル 4−メチル−1−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート2.05g、イソ酪酸92μL及びジ−t−ブチルシクロヘキシルホスフィン230μLを加えて、窒素雰囲気下、120℃で14時間加熱した。反応混合液をセライトろ過して不溶物を取り除き、ろ液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄後、乾燥、減圧濃縮した後に常法により精製し、エチル 4−メチル−2−[3−ニトロ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート3.16gを得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.07(6H,d,J=6.8Hz),1.39(3H,t,J=6.8Hz),2.14−2.22(1H,m),2.77(3H,s),3.92(2H,d,J=6.0Hz),4.36(2H,q,J=6.8Hz),7.12(1H,d,J=8.8Hz),8.09(1H,dd,J=2.0,8.8Hz),8.43(1H,d,J=2.0Hz)
(3)エチル 4−メチル−2−[3−ニトロ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート3.16gをエタノール30mLに懸濁させ、パラジウム/炭素(10%wt)200mgを加えた後に、水素雰囲気下、50℃で14時間撹拌した。反応混合液をろ過し、ろ液を減圧濃縮することで、エチル 2−[3−アミノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート2.12gを得た。
(4)エチル 2−[3−アミノ−4−(2−メチルプロポキシ)フェニル]−4−メチル−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート2.12gを酢酸20mLに懸濁させた後、アジ化ナトリウム780mg、オルトギ酸トリエチル1.78gを加え、窒素雰囲気下、70℃で2時間加熱した。室温まで冷却させた後に反応混合液に水20mLを加え、常法により精製し、エチル 4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート2.25gを得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.02(6H,d,J=6.8Hz),1.40(3H,t,J=6.8Hz),2.10−2.17(1H,m),2.78(3H,s),3.95(2H,d,J=6.8Hz),4.36(2H,q,J=6.8Hz),7.18(1H,d,J=8.8Hz),8.07(1H,dd,J=2.4,8.8Hz),8.46(1H,d,J=2.8Hz),9.21(1H,s)
【0082】
[実施例1]
4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸(化合物(I))のA晶の製造
エチル 4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート883gをテトラヒドロフラン/メタノール=1/1の混合溶液13.2Lに溶解し、2M水酸化ナトリウム水溶液2.28Lを加えて、20−30℃で3時間撹拌した。20−30℃で撹拌しながら反応混合液に2M塩酸2.28Lをゆっくりと加え、さらに水4.4Lをゆっくりと加えた。反応溶液を20−30℃で1時間撹拌した後、結晶を濾取した。得られた結晶を、メタノール/水=1/1の混合溶媒4.4Lおよび水4.4Lで洗浄した。結晶を50℃で減圧乾燥し、4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸の結晶811gを得た。得られた結晶のXRDを図1に示す。回折角2θ=8.6°、10.2°、13.3°、14.4°、18.5°、19.9°、21.8°、25.1°、25.6°、26.6°、27.1°、および29.5°にピークが観測された。得られた結晶の固体NMRスペクトル(13C)を図5に示す。化学シフト116.3ppm、117.6ppm、120.0ppm、123.6ppm、125.9ppm、127.4ppm、143.7ppm、151.8ppm、161.1ppm、162.3ppm、および165.5ppmにピークが観測された。得られた結晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図8に示す。波数745cm−1、822cm−1、889cm−1、975cm−1、997cm−1、1611cm−1、および1705cm−1にピークが観測された。また、熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)における発熱ピークは、222℃であった。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:0.85(6H,d,J=6.8Hz),1.93−2.00(1H,m),2.66(3H,s),3.96(2H,d,J=6.0Hz),7.48(1H,d,J=8.8Hz),8.18(1H,dd,J=2.4,8.8Hz),8.27(1H,d,J=2.4Hz),9.79(1H,s),13.41(1H,s)
【0083】
[実施例2]
4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸(化合物(I))のB晶の製造
化合物(I)のA晶3.0gを酢酸エチル21.0mLに懸濁させ、6時間還流した。25℃に冷却した後に25℃で30分撹拌した。結晶を濾取し、15mLの酢酸エチルで洗浄した。結晶を45℃で減圧乾燥し、4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸の結晶2.9gを得た。得られた結晶のXRDを図2に示す。回折角2θ=10.1°、12.6°、13.1°、14.0°、18.6°、24.2°、25.2°、25.7°、27.2°、および30.5°にピークが観測された。得られた結晶の固体NMRスペクトル(13C)を図6に示す。化学シフト115.4ppm、118.0ppm、119.8ppm、123.2ppm、126.4ppm、129.1ppm、142.7ppm、151.2ppm、160.9ppm、および166.6ppmにピークが観測された。得られた結晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図9に示す。波数744cm−1、810cm−1、972cm−1、997cm−1、1005cm−1、1611cm−1、および1710cm−1にピークが観測された。また、熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)における発熱ピークは、225℃であった。
【0084】
[参考例2]
4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸(化合物(I))の製造
エチル 4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート4.00gをテトラヒドロフラン/メタノール=1/1の混合溶液60mLに溶解し、2M水酸化ナトリウム水溶液10.3mLを加えて、室温で3時間撹拌した。反応混合液に2M塩酸10.3mLを加えて撹拌した後に、水60mLを加え、常法により精製し、4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸3.50gを得た。
H−NMR(400MHz,DMSO−d)δ:0.85(6H,d,J=6.8Hz),1.93−2.00(1H,m),2.66(3H,s),3.96(2H,d,J=6.0Hz),7.48(1H,d,J=8.8Hz),8.18(1H,dd,J=2.4,8.8Hz),8.27(1H,d,J=2.4Hz),9.79(1H,s),13.41(1H,s)
【0085】
[実施例3]
4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸(化合物(I))のC晶の製造
4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボン酸8.5gにN,N−ジメチルホルムアミド90mLを加え、80℃に加熱撹拌することで溶解した。室温に冷却後、室温で2時間撹拌した後に、濾過を行い、濾物をエタノール90mLで洗浄した。母液を室温で7日間静置し、得られた結晶をエタノール30mLで洗浄した。結晶を40℃で減圧乾燥し、化合物(I)の結晶1.0gを得た。得られた結晶のXRDを図3に示す。回折角2θ=7.2°、12.5°、13.0°、14.7°、19.2°、20.0°、21.4°、21.7°、24.7°、および26.0°にピークが観測された。得られた結晶の固体NMRスペクトル(13C)を図7に示す。化学シフト116.1ppm、119.6ppm、123.1ppm、126.1ppm、127.1ppm、130.0ppm、143.6ppm、150.3ppm、158.3ppm、160.7ppm、163.9ppm、165.5ppm、および167.0ppmにピークが観測された。得られた結晶の赤外吸収スペクトル(KBr法)を図10に示す。波数745cm−1、751cm−1、809cm−1、820cm−1、971cm−1、1006cm−1、1613cm−1、1682cm−1、および1710cm−1にピークが観測された。また、熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)における吸熱ピークは88℃、発熱ピークは、225℃であった。
【0086】
[実施例4]
ナトリウム 4−メチル−2−[4−(2−メチルプロポキシ)−3−(1H−1,2,3,4−テトラゾール−1−イル)フェニル]−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート(化合物(II))のA晶の製造
水酸化ナトリウム400mgをエタノール36mLに溶解し、化合物(I)3.59gを加えて、20−30℃で1時間撹拌した。その後、結晶を濾取した。得られた結晶を、エタノール10mLで洗浄した。結晶を50℃で減圧乾燥し、化合物(II)の結晶3.53gを得た。得られた結晶のXRDを図4に示す。回折角2θ=7.2°、10.9°、13.3°、15.9°、18.2°、20.8°、22.1°、25.2°、26.1°、および29.1°にピークが観測された。また、熱重量測定・示差熱分析(TG/DTA)における発熱ピークは、281℃であった。
H−NMR(400Mz,DMSO−d6) δ:0.85(6H, d, J = 6.8Hz), 1.92−1.99(1H, m), 2.59(3H, s), 3.92(2H, d, J = 6.4Hz), 7.41(1H, d, J = 8.8Hz), 8.02(1H, dd, J = 1.6, 8.8Hz), 8.12(1H, d, J = 2.0Hz), 9.78(1H, s)
【0087】
[実施例5]
血中尿酸低下作用(正常ラット)
化合物(II)の血中尿酸低下作用を確認した。8〜9週齢のSprague−Dawley系雄性ラット(日本チャールス・リバー株式会社)に0.5%メチルセルロース液に懸濁した試験化合物を経口ゾンデを用いて強制投与した。投与後2時間に尾静脈より採血した後、血漿を分離した。血中尿酸値は尿酸測定キット(LタイプワコーUA・F:和光純薬工業)を用いて、ウリカーゼ法にて吸光度計を用いて測定し、尿酸低下率を下式により求めた。
尿酸低下率(%)=(対照動物の尿酸値−試験化合物投与動物の尿酸値)x100/対照動物の尿酸値
化合物(II)のA晶は、10mg/kg、1mg/kg、いずれの用量においても尿酸低下率50%以上を示した。
この結果から、化合物(II)が強力な血中尿酸低下効果を有することが示された。
【0088】
[実施例6]
血中尿酸低下作用の持続性(正常ラット)
化合物(II)のA晶を、実施例5と同じ方法でSprague−Dawley系雄性ラットに投与した。投与後24時間に尾静脈より採血した後、血漿を分離した。血中尿酸値は尿酸測定キット(LタイプワコーUA・F:和光純薬工業)を用いて、ウリカーゼ法にて吸光度計を用いて測定し、尿酸低下率を下式により求めた。尿酸低下率(%)
=(対照動物の尿酸値−試験化合物投与動物の尿酸値)x100/対照動物の尿酸値
化合物(II)のA晶は、投与後24時間において、10mg/kgの用量で尿酸低下率50%以上を示し、3mg/kgの用量で尿酸低下率40%以上を示した。
この結果から、化合物(II)が長時間にわたる持続的な血中尿酸低下効果を有することが示された。
【0089】
[実施例7]
JP2液への溶解性
化合物(II)のJP2液(pH6.8)への溶解性を確認した。化合物(II)のA晶を乳鉢で軽く粉砕して、JP2液20mLに約4mg添加し、室温で撹拌した。この溶液につき、添加直後から紫外可視吸収度測定法により280nmにおける吸光度(At)を継時的に測定し、あらかじめ測定した標準溶液の280nmにおける吸光度(As)を指標にして、下式により各測定時間における溶解度を求めた。測定は120分まで継続した。
溶解度 = At/As × Cs(ただし、Csは標準溶液の濃度を示す)
測定条件
測定装置:Pion社製 μDISS Profiler
撹拌速度:700rpm
UV測定波長:280nm
測定間隔:測定開始〜1分:3秒
1〜8分:20秒
8〜120分:2分
化合物(II)のA晶は、添加後30秒以内に添加した全量が溶解し、溶解度は187μg/mLであった。また、添加後120分における溶解度は189μg/mLであり、析出は認めず溶解状態を維持した。
この結果から、化合物(II)が優れた溶解性を有することが示された。
【0090】
[参考例3]
キサンチンオキシダーゼ阻害活性の測定
(1)試験化合物の調製
化合物(I)をDMSO(シグマ社製)に20mMの濃度になるように溶解した後、使用時の目的の濃度に調製して用いた。
(2)測定方法
化合物(I)のキサンチンオキシダーゼ阻害活性評価を文献記載の方法(Method Enzymatic Analysis,1,521−522,1974)を一部改変して実施した。本評価は、オキシダーゼ型のキサンチンオキシドレダクターゼ活性の測定により行われた。すなわち、あらかじめ20mM水酸化ナトリウム溶液にて10mMに調製したキサンチン(シグマ社製)溶液を100mMリン酸緩衝液を用いて30μMに調製し、96穴プレートに75μL/穴ずつ加えた。最終濃度の100倍になるようにDMSOにて希釈した試験化合物を1.5μL/穴ずつ添加し、ミキシング後にマイクロプレートリーダーSPECTRA max Plus384(モレキュラーデバイス社製)にて290nmの吸光度を測定した。続けてオキシダーゼ型キサンチンオキシドレダクターゼ(バターミルク由来、Calbiochem社製)を100mMリン酸緩衝液を用いて30.6mU/mLに調製し、73.5μL/穴ずつ加えた。ミキシング後速やかに290nmにおける吸光度変化を5分間測定した。試験化合物溶液の代わりにDMSOを添加したときの酵素活性を100%として試験化合物の阻害率を計算し、用量応答曲線にフィットさせてオキシダーゼ型キサンチンオキシドレダクターゼに対する50%阻害濃度を計算した。
化合物(I)は、1.0nM≦IC50<5.0nMのキサンチンオキシダーゼ阻害活性を示した。
【0091】
[参考例4]
血中尿酸低下作用(正常ラット)
化合物(I)について、実施例5と同様の方法により血中尿酸低下作用を確認した。化合物(I)は、10mg/kg、1mg/kg、いずれの用量においても尿酸低下率50%以上を示した。
この結果から、化合物(I)が強力な血中尿酸低下効果を有することが示された。
【0092】
[参考例5]
血中尿酸低下作用の持続性(正常ラット)
化合物(I)について、実施例6と同様の方法により血中尿酸低下作用の持続性を確認した。化合物(I)は、投与後24時間において、10mg/kgの用量で尿酸低下率50%以上を示し、3mg/kgの用量で尿酸低下率40%以上を示した。
この結果から、化合物(I)が長時間にわたる持続的な血中尿酸低下効果を有することが示された。
【0093】
[参考例6]
血中尿酸低下作用(高尿酸血症ビーグル犬)
化合物(I)について、オキソン酸により高尿酸血症を惹起したビーグル犬における血中尿酸低下作用を確認した。ビーグル犬(北山ラベス)に0.5%メチルセルロース液に懸濁した試験化合物を強制経口投与した。化合物投与前および投与4時間後にオキソン酸カリウム(50mg/kg)を皮下投与した。化合物投与8時間後、橈側皮静脈より採血した後、血漿を分離した。血中尿酸値はLC−MS/MS法を用いて測定し、尿酸低下率を下式により求めた。
尿酸低下率(%)=(対照動物の尿酸値−試験化合物投与動物の尿酸値)x100/対照動物の尿酸値
投与8時間後において、化合物(I)は10mg/kgの用量において尿酸低下作用を示した。
この結果から、化合物(I)がイヌにおいて強力な血中尿酸低下効果を有することが示された。
【0094】
[参考例7]
組織および血漿におけるキサンチンオキシダーゼ阻害活性の持続性
本発明の「キサンチンオキシダーゼ」について、本例に限り、オキシダーゼ型のキサンチンオキシドレダクターゼが担う酸化反応触媒活性と、オキシダーゼ型とデヒドロゲナーゼ型両方のキサンチンオキシドレダクターゼが担う酸化反応触媒活性とを区別するために、前者を「XO活性」、後者を「XOR活性」と称する「組織XO活性」、「血漿XO活性」、「組織XO阻害活性」、「組織XOR阻害活性」等についても、「XO活性」および「XOR活性」は同じ意味を有する。「組織」には、肝臓、腎臓、脂肪組織、腸、血管が含まれる。なお、下記の結果より、本発明の化合物について、同一サンプルにおけるXOR活性阻害率とXO活性阻害率は同程度の数値となるものと解される。
【0095】
化合物(I)について、組織XO活性、組織XOR活性および血漿XO活性を確認した。7〜9週齢のSprague−Dawley系雄性ラット(日本チャールス・リバー株式会社)に0.5%メチルセルロース液に懸濁した試験化合物を経口ゾンデを用いて強制投与した。投与後24時間または27時間後に腹大動脈からの採血および組織の採材を行った。得られた血液は遠心分離し、血漿を採取した。
【0096】
組織XO活性、組織XOR活性および血漿XO活性は、pterinがそれぞれの型のキサンチンオキシドレダクターゼにより酸化され蛍光物質であるisoxanthopterinが生成される反応を用いて測定した。組織を各組織濃度が肝臓:25mg/mL、腎臓:25mg/mL、脂肪:5mg/mL、腸:5mg/mL、血管:30mg/mLとなるように、1mMEDTAおよびプロテアーゼ阻害剤を含んだpH7.4のリン酸カリウム溶液でホモジナイズし、4℃、12000rpmで15分遠心した。XO活性の測定時は組織ホモジネートの上清または血漿を50μM pterinを含んだ溶液と混合し37℃で反応させた。XOR活性の測定時は、組織ホモジネートの上清を50μM pterinおよび50μM Methylene Blueを含んだ溶液と混合し37℃で反応させた。コントロールとしてオキシダーゼ型キサンチンオキシドレダクターゼ(バターミルク由来、Calbiochem社製)と50μM pterinを含んだ溶液を同様の方法で反応させた。生成されたisoxanthopterinの蛍光強度を測定し、コントロールの酵素活性およびタンパク濃度で補正しXOまたはXOR活性として算出した。
XO阻害活性およびXOR阻害活性は下式により求めた。
XO阻害活性(%)=(対照動物のXO活性またはXOR活性−試験化合物投与動物のXO活性またはXOR活性)x100/対照動物のXO活性またはXOR活性
投与約27時間後の組織および血漿XO阻害活性を次の表に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
化合物(I)は、10mg/kgの用量において、投与後27時間の肝臓のXO活性を対照動物と比較して80%以上阻害し、投与後27時間の腎臓のXO活性を対照動物と比較して70%以上阻害し、投与後27時間の血漿のXO活性を対照動物と比較して40%以上阻害した。
化合物(I)は、1mg/kgの用量において、投与後27時間の肝臓のXO活性を対照動物と比較して80%以上阻害し、投与後27時間の腎臓のXO活性を対照動物と比較して60%以上阻害し、投与後27時間の血漿のXO活性を対照動物と比較して25%以上阻害した。
また、投与24時間後の組織XOおよびXOR阻害活性を次の表に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
化合物(I)は10mg/kgの用量において、投与後24時間の肝臓のXOR活性およびXO活性それぞれを対照動物と比較して80%以上阻害し、投与後24時間の腎臓のXOR活性およびXO活性それぞれを対照動物と比較して70%以上阻害し、投与後24時間の腸のXOR活性を対照動物と比較して80%以上阻害し、投与後24時間の脂肪組織のXOR活性を対照動物と比較して60%以上阻害し、投与後24時間の血管のXOR活性を対照動物と比較して40%以上阻害した。
【0101】
化合物(I)は1mg/kgの用量において、投与後24時間の肝臓のXOR活性およびXO活性それぞれを対照動物と比較して80%以上阻害し、投与後24時間の腎臓のXOR活性およびXO活性それぞれを対照動物と比較して60%以上阻害し、投与後24時間の腸XOR活性を対照動物と比較して60%以上阻害し、投与後24時間の脂肪組織XOR活性を対照動物と比較して30%以上阻害し、投与後24時間の血管XOR活性を対照動物と比較して25%以上阻害した。
【0102】
以上の結果から、本発明の化合物が各組織において長時間にわたる持続的なXO活性、XOR活性阻害作用を有することが示された。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の化合物(I)の結晶、および化合物(II)の塩ならびにその結晶は、医薬品として用いられる。さらに、これらの化合物は、医薬品製造用原体として用いることができる。
図1
図2
図3
図4
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図10