特許第6279110号(P6279110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6279110色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ及びヘッドマウント機器
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6279110
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ及びヘッドマウント機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 25/00 20060101AFI20180205BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20180205BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20180205BHJP
【FI】
   G02B25/00 A
   G02B13/18
   G02B27/02 Z
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-576094(P2016-576094)
(86)(22)【出願日】2015年6月23日
(65)【公表番号】特表2017-521708(P2017-521708A)
(43)【公表日】2017年8月3日
(86)【国際出願番号】CN2015082072
(87)【国際公開番号】WO2015196965
(87)【国際公開日】20151230
【審査請求日】2017年2月8日
(31)【優先権主張番号】201410300498.3
(32)【優先日】2014年6月28日
(33)【優先権主張国】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515132700
【氏名又は名称】チンタオ ゴーアテック テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO GOERTEK TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ユアンペン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,チュン
【審査官】 殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−210656(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/014256(WO,A1)
【文献】 特開2004−048371(JP,A)
【文献】 特開2005−084284(JP,A)
【文献】 特開2002−303803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 − 17/08
G02B 21/02 − 21/04
G02B 25/00 − 25/04
G02B 27/00 − 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズであって、
筐体と、両凸正レンズと、両凹負レンズとを備え、両凸正レンズと両凹負レンズが筐体内に並設され、かつ前記両凹負レンズが物体側に近づいており、
前記両凸正レンズは、物体側のレンズ表面である第1の表面と、像のレンズ表面である第2の表面とを有し、
前記両凹負レンズは、物体側のレンズ表面である第3の表面と、像のレンズ表面である第4の表面とを有し、
前記第1の表面は、物体側へ突出する凸状であり、
前記第2の表面の縁部は平面であり、
前記第2の表面の中央部は、像側へ突出する凸状であり、
前記第3の表面は、像側へ窪む凹状であり、
前記第4の表面の縁部は平面であり、
前記第4の表面の中央部は、物体側へ窪む凹状であり、
前記両凸正レンズ及び両凹負レンズは、レンズ表面がいずれも非球面であり、
前記両凹負レンズは、両凸正レンズとの距離を調整するように、筐体の軸線に沿って移動することが可能となることを特徴とする色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
【請求項2】
前記両凸正レンズは、屈折率が1.45〜1.70の範囲内にあり、分散が50〜75の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
【請求項3】
前記両凹負レンズは、屈折率が1.45〜1.75の範囲内にあり、分散が25〜40の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
【請求項4】
前記両凸正レンズは、n1=1.531160、v1=56.04となるE48Rプラスチック材を用いることを特徴とする請求項2に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
【請求項5】
前記両凹負レンズは、n1=1.5585470、v1=29.91となるPOLYCARBプラスチック材を用いることを特徴とする請求項3に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
【請求項6】
前記第3の表面は、曲率半径が無限大の非球面であることを特徴とする請求項1に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
【請求項7】
前記両凸正レンズは、レンズ内に固定されて不動であり、両凹負レンズの移動により、レンズが近視500度から遠視500度までの人々に適合するようにすることを特徴とする請求項1に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
【請求項8】
前記第1の表面、第2の表面、第3の表面、第4の表面の表面形状は、下記の式に従うものであり、
【数1】
ことを特徴とする請求項1に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
【請求項9】
下記の色収差の補正式により、前記広角レンズのレンズ系統の屈折力が求められており、
【数2】
ことを特徴とする請求項1に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
【請求項10】
請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズを用いたことを特徴とするヘッドマウント機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消費電子領域に適用される色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ及びヘッドマウント機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドマウント表示機器の場合、大きい画角は、没入感を増すことで、娯楽効果を向上させることができるが、画角の増大による像面湾曲および倍率色収差は、系統の結像品質に深刻な影響を及ぼしてしまう。そして、従来の接眼レンズ系は、収差を補正するために、多数のレンズが必要となり、しかも、従来の光学ガラスが非常に重いので、ヘッドマウント機器の人体への負担が大きくなってしまう。そのため、このような大画角のヘッドマウント系は、より斬新で簡潔な接眼レンズの設計が要求される。
【0003】
また、近視或いは遠視の人々にとって、現在の全体固定タイプのヘッドマウント系がニーズに応えられない。なぜなら、眼鏡をかけない場合、近視或いは遠視の利用者は、画面がぼんやりとしてよく見えないと感じるからである。一方、眼鏡をかければ、網膜に対して近視或いは遠視に起因したデフォーカスを補うことができるものの、不便・不快適になってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のヘッドマウント機器用広角レンズが重くて近視或いは遠視の利用者に適合しないとの課題を解決するために、本発明は、下記のような技術案により達成される色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズは、筐体と、両凸正レンズと、両凹負レンズとを備え、両凸正レンズと両凹負レンズが筐体内に並設され、かつ前記両凹負レンズが物体側に近づいており、前記両凸正レンズは、物体側へ凸な第1の表面と、縁部が平面で、中央部が像側へ凸な第2の表面とを有し、前記両凹負レンズは、物体側へ凹な第3の表面と、縁部が平面で、中央部が像側へ凹な第4の表面とを有し、前記両凸正レンズ及び両凹負レンズは、レンズ表面がいずれも非球面である。
【0006】
更に、前記両凹負レンズは、両凸正レンズとの距離を調整するように、筐体の軸線に沿って移動することが可能である。
更に、前記両凸正レンズは、屈折率が1.45〜1.70の範囲内にあり、分散が50〜75の範囲内にある。
更に、前記両凹負レンズは、屈折率が1.45〜1.75の範囲内にあり、分散が25〜40の範囲内にある。
【0007】
更に、前記両凸正レンズは、n1=1.531160、v1=56.04となるE48Rプラスチック材を用いる。
更に、前記両凹負レンズは、n1=1.5585470、v1=29.91となるPOLYCARBプラスチック材を用いる。
更に、前記第3の表面は、曲率半径が無限大の非球面である。
【0008】
更に、前記両凸正レンズは、レンズ内に固定されて不動であり、両凹負レンズの移動により、レンズが近視500度から遠視500度の人々に適合するようにする。
【0009】
更に、前記第1の表面、第2の表面、第3の表面、第4の表面の表面形状は、下記の式に従うものであり、
【数1】
【0010】
ヘッドマウント機器であって、前記色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズを用いたヘッドマウント機器である。
【0011】
本発明の設計としては、正レンズに加え、一枚の負レンズを増設した。負レンズは、三つの役割があり、一つ目が、系統の色収差を補うこと、二つ目が、ペッツバール像面湾曲を補正すること、三つ目は、系統の焦点距離を調整して近視、遠視を補正可能にすることである。本発明は、合理的に非球面を導入して屈折力を配分することで、網膜に対して近視或いは遠視に起因したデフォーカスを補うことができる。また、好適な技術案では、ズーミング方式にてデフォーカスを補う。これにより、近視或いは遠視の人々は、裸眼でヘッドマウント機器を利用することが可能となり、近視500度から遠視500度まで異なる人々に適合できる。利用の時に、人の目とスクリーンとの共役距離を変えることなく、自らの近視或いは遠視の度数に基づいて焦点距離を調整することで鮮明な結像が得られる。また、プラスチック材のレンズの採用および非球面の導入によって、系統がより軽量化される。本発明の設計によれば、倍率色収差が補正されるとともに、良好な結像品質が得られる。
【0012】
本発明の実施例又は従来の技術における技術案をより明らかに説明するために、実施例又は従来の技術を説明するのに使われる図面を簡単に説明する。自明のように、以下に説明しようとする図面は、本発明の実施例であり、当業者にとって、進歩性のある労働を払わずに、これらの図面を参照してその他の図面を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】色収差補正が施されていない単一レンズのレンズ構造図及び光路図である。
図2】本発明に係るレンズの通常の視力に適合した時のレンズ構造図及び光路図である。
図3】本系統の異なる焦点距離での構造模式図である。
図4】本系統の異なる焦点距離での構造模式図である。
図5】本系統の異なる焦点距離での構造模式図である。
図6】本系統の異なる焦点距離での構造模式図である。
図7】本系統の異なる焦点距離での構造模式図である。
図8】本系統の異なる焦点距離での構造模式図である。
図9図2の20ラインペアの時のMTF(光学伝達関数)を示す図面である。
図10図3に示すレンズ構造と一対一で対応する20ラインペアの時のMTF(光学伝達関数)を示す図面である。
図11図4に示すレンズ構造と一対一で対応する20ラインペアの時のMTF(光学伝達関数)を示す図面である。
図12図5に示すレンズ構造と一対一で対応する20ラインペアの時のMTF(光学伝達関数)を示す図面である。
図13図6に示すレンズ構造と一対一で対応する20ラインペアの時のMTF(光学伝達関数)を示す図面である。
図14図7に示すレンズ構造と一対一で対応する20ラインペアの時のMTF(光学伝達関数)を示す図面である。
図15図8に示すレンズ構造と一対一で対応する20ラインペアの時のMTF(光学伝達関数)を示す図面である。
図16】本発明に係る像面湾曲の歪曲収差、及び歪曲収差の曲線を示す図面である。
図17】本発明に係るレンズの通常の視力に適合した時のスポットダイヤグラムである。
図18図1のスポットダイヤグラムである。
図19図3に示すレンズ構造と一対一で対応するスポットダイヤグラムである。
図20図4に示すレンズ構造と一対一で対応するスポットダイヤグラムである。
図21図5に示すレンズ構造と一対一で対応するスポットダイヤグラムである。
図22図6に示すレンズ構造と一対一で対応するスポットダイヤグラムである。
図23図7に示すレンズ構造と一対一で対応するスポットダイヤグラムである。
図24図8に示すレンズ構造と一対一で対応するスポットダイヤグラムである。
図25】本発明に係る倍率色収差図である。
図26図1の倍率色収差図である。
図27】本発明に係る正レンズと負レンズの異なる焦点距離での位置関係を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記の各図面においては、1が両凸正レンズ、2が両凹負レンズ、3が第1の表面、4が第2の表面、5が第3の表面、6が第4の表面である。
【0015】
本発明の設計としては、正レンズに加え、一枚の負レンズを増設した。負レンズは、三つの役割があり、一つ目が、系統の色収差を補うこと、二つ目が、ペッツバール像面湾曲を補正すること、三つ目が、系統の焦点距離を調整して近視、遠視を補正可能にすることである。
【0016】
本願の技術案では、倍率色収差の補正が行われないと、目立った青い縁が虚像に現れてしまう。そして、像面湾曲の補正が行われないと、結像の鮮明度に深刻な影響を与えてしまう。図1は、単一レンズ構造の構造図及び光路図であり、図1に示す構造の場合、そのスポットダイヤグラムおよび倍率色収差図は、図18及び図26に示すようになり、負レンズによる補正後、そのスポットダイヤグラムおよび倍率色収差図は、図17及び図25に示すようになる。
【0017】
スポットダイヤグラムは、光学系の各視界光線が像面に収束されてなる錯乱円を表しているため、系統の様々な収差特性を示している。また、スポットダイヤグラムにおけるRMS半径が小さい程、系統の結像品質が優れている。図中の各グレースケールが、それぞれ、3種類の波長帯の光線を表している。このように、3種類のグレースケールでの錯乱円が離れるほど、系統の色収差が大きくなるが、図17から、色収差が良好に補正されたことが分かる。図18は、倍率色収差補正が施されていない系統のスポットダイヤグラムであり、分散現象が目立っていることが見られる。また、図18よりも、図17におけるRMS半径が遥かに小さく、最大の視界を例とした図17におけるRMS半径が18.428μmであるのに対して、図18におけるRMS半径が156.531μmとなることから、負レンズ及び非球面を導入した後、各収差が補正され、系統の結像品質が大幅に改善されたことが証明される。
【0018】
倍率色収差図において、傾いた曲線は、倍率色収差が視界の増大につれて変化する曲線を示しており、図25(自系統)に示した色収差値は、図26(色収差補正なし)に示した色収差値よりも遥かに小さい。また、図25における倍率色収差の最大値は、20μmよりもわずかに大きくなる一方で、図26における倍率色収差値は、300μmよりも大きい。
【0019】
上記から分かるように、倍率色収差と像面湾曲の二つの収差を同時に補正するには、正レンズと負レンズを組み合わせて利用し、かつ正レンズと負レンズが離れることが必要となるものの、正レンズと負レンズとの距離が遠過ぎると、その後ろの一枚の負レンズの口径が大きくなり、その距離が近すぎると、像面湾曲の補正効果が顕著ではなくなる。そのため、式に基づいて屈折力を配分しなくてはならない。
【0020】
また、絞りが前置しているため、倍率色収差の正或いは負の補償が要らないことから、各視界間の倍率色収差としては、各視界の主たる光線の位置の色収差が考えられる。そのため、以下の色収差の補正式にて屈折力を求めることが可能となる。
【数2】
【0021】
図16に示した曲線では、左側が像面湾曲の曲線、右側が歪曲収差の曲線である。
像面湾曲の曲線では、線Tがタンジェンシャル像面湾曲、線Sがサジタル像面湾曲をそれぞれ示しており、タンジェンシャル像面湾曲とサジタル像面湾曲との差分が系統の非点収差となる。像面湾曲及び非点収差は、系統の軸外の視界光線に影響を与える重要な収差であり、両者が大きすぎると、系統の軸外の光線による結像の品質に深刻な影響を及ぼしてしまうため、図面から、系統の像面湾曲、非点収差は、いずれも極めて小さい範囲内に補正されたことが見られる。
【0022】
歪曲収差の曲線では、歪曲収差は、系統の鮮明度に影響がないものの、系統の画像の変形を引き起こす要因であり、歪曲収差は、その後の画像処理にて解消される。
【0023】
本願に係る系統は、色収差解消の大画角の接眼レンズであり、主にヘッドマウント表示機器などの領域に適用される。そして、本願に係る系統は、プラスチックのレンズを利用し、かつ非球面を導入することで、より軽量化されている。
【0024】
次に、図面および具体的な実施形態を参照して本発明を詳しく説明する。
【0025】
実施例1
【0026】
本発明に係る色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズは、筐体と、両凸正レンズと、両凹負レンズとを備え、両凸正レンズと両凹負レンズが筐体内に並設され、前記両凸正レンズは、物体側へ凸な第1の表面と、縁部が平面で、中央部が像側へ凸な第2の表面とを有し、前記両凹負レンズは、物体側へ凹な第3の表面と、縁部が平面で、中央部が像側へ凹な第4の表面とを有し、第3の表面は、曲率半径が無限大の非球面である。
【0027】
本発明に係るレンズ系は、一枚の正レンズ及び一枚の負レンズから構成されるという非常に簡単な構造を用いており、人の目に近い一方が正レンズであり、スクリーンに近い一方が負レンズである。そして、正レンズは、両凸レンズであり、負レンズは、両凹レンズである。また、2枚のレンズの4つの面は、いずれも非球面であり、各面は、いずれも加工成形されやすいと共に、その重さとコストが低くて、量産に向いている。
【0028】
両凹負レンズは、両凸正レンズとの距離を調整するように、筐体の軸線に沿って移動することが可能である。
【0029】
自系統は、ズーミング方式にてデフォーカスを補う。これにより、近視或いは遠視の人々は、裸眼でヘッドマウント機器を利用することが可能となる。利用の時に、人の目とスクリーンとの共役距離を変えることなく、自らの近視、遠視の度数に基づいて焦点距離を調整することで鮮明な結像が得られる。
【0030】
本発明の作動原理としては、系統の像面がヘッドマウント機器のスクリーンとなり、スクリーンには、接眼レンズ系により人の目から2.5m離れる巨大な虚像が形成されて、人の目によりそれを受け取ることとなる。また、負レンズを移動して負レンズと正レンズとの距離を変更することで焦点距離を変更する。
【0031】
図27に示すように、負レンズを移動することで、負レンズと正レンズとの距離を変更し、異なる焦点距離を模擬し、異なる視力の人々に適合する効果を奏している。表において、第1行のデータは、近視、遠視を模擬するための理想的なレンズの焦点距離の変化を示し、第2行のデータは、異なる焦点距離での正レンズ、負レンズ間の距離を示し、第3行のデータは、レンズの第2の表面から像面までの距離を示しており、第2の表面とは、正レンズの人の目に一番近い面のことを言う。
【0032】
自系統は、設計の時に逆追跡光路という方式が用いられ、図1において、像面の位置が発光スクリーンであり、対象面の位置が系統による虚像である。この広角接眼レンズは、両凸正レンズと、両凹負レンズと、発光スクリーンとを備え、図2において、絞りの位置は、人の目の瞳孔である。
【0033】
系統は、負レンズの移動により焦点距離を変更し、計算により正レンズと負レンズの合理的な動き経路を定める。ズーム系の設計に際して、絞りに理想的な面型を取り付けて近視、遠視による人の目の変化を模擬する。そして、理想的な面型は、屈折力が-0.005〜0.005の範囲内にあり、遠視の500度から近視の500度までによる人の目の変化を表している。図2から図8に示すように、図2は、レンズの通常の視力に適合した時の構造図であり、同図中に示す2枚のレンズ間の距離は、屈折力が0に調整された時の距離を示しており、この時の距離は、通常の視力の利用者に適合している。また、図2から図8は、2枚のレンズが異なった距離まで調整されることで、近視の500度から遠視の500度までの人々に適合されることを示している。
【0034】
本願の光学設計は、全ての焦点距離毎に鮮明な結像が確保された。図9から図15におけるMTF(Modulation Transfer Function)曲線図に示すように、MTF伝達関数曲線図(光学伝達関数)は、系統全体の結像品質を反映することが可能であり、その曲線の形状が平滑になり、かつX軸に対して高くなるほど、系統の結像品質が良いこととなる。また、図中の各グレースケールは、それぞれ各視界光線を表し、曲線における点線、実線は、それぞれサジタル方向、タンジェンシャル方向の結像品質を表している。図面から見ると、屈折力が0の場合や異なる焦点距離の場合のいずれにおいても、図中の曲線が平滑でコンパクトになっていることが明らかである。また、その曲線で示しているMTF値が高いことから、系統の収差が良好に補正されたことを示し、各焦点距離毎に系統の結像品質が確保されたことを反映している。
【0035】
図19から図24に示すスポットダイヤグラムでは、各焦点距離毎に錯乱円がコンパクトに分布しており、色収差が良好に補正された。RMS(Root Mean Square:二乗平均平方根)半径から、半径が極めて小さく抑制されていることが分かり、これにより、各焦点距離毎に各収差が補正され、系統の結像品質が確保されたことが証明される。
【0036】
両凸正レンズは、屈折率が1.45〜1.70の範囲内にあり、分散が50〜75の範囲内にある。
両凹負レンズは、屈折率が1.45〜1.75の範囲内にあり、分散が25〜40の範囲内にある。
【0037】
レンズの調整において、本願に係る技術案は、レンズの総長を一定又は可変に設計することが可能であり、実際の生産において、設計と使用を容易にするために、使用の要求に応じて適宜に調整することができる。
【0038】
両凸正レンズは、E48Rプラスチック材を用い、両凹負レンズは、POLYCARBプラスチック材を用いる。
【0039】
両凸正レンズは、分散の値が大きいため、E48Rプラスチック材を用いたほうが好適である。また、E48Rプラスチックは、屈折率が1.530であり、透過率が92%であるため、分散の大きいレンズの材料として好適に用いられる。両凹負レンズは、分散の値が小さいため、POLYCARBプラスチック材を用いたほうが好適である。そして、POLYCARBプラスチック材は、屈折率が大きく、かつ軽くて製品全体の重量の低減に役立ち、しかも、その強度が大きくて、完成したレンズ製品の耐衝撃性が向上され、それを人の目に近い像側に置くと、レンズが衝撃を受けた場合に、破損したレンズによる人の目ヘのダメージの可能性を低減させることが可能となる。
【0040】
E48Rプラスチック材とPOLYCARBプラスチック材を組み合わせて用いれば、レンズの色収差補正に有利であり、レンズ製品の色収差を小さくして真実な色彩に還元される。
【0041】
実施例2
【0042】
この実施例において、
前記両凸正レンズ及び両凹負レンズは、レンズ表面がいずれも非球面である。
【0043】
第1の表面、第2の表面、第3の表面および第4の表面の表面の形状は、下記の式に従うものである。
【数3】
この実施例では、第3の表面をおよそ平面状にして光路を調整することで、設計上の要求を満たすようになる。
【0044】
この実施例に係る両凸正レンズは、屈折率が1.45、分散が50である。
この実施例に係る両凹負レンズは、屈折率が1.45、分散が25である。
この実施例は、レンズの焦点距離を遠視500度の人々に適合するまで調整する。
【0045】
この実施例に係る色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ(インナーフォーカシング型)においては、光学設計のソフトウェアおよび設計プロセスを限定しないものとする。
【0046】
実施例3
【0047】
この実施例において、
両凸正レンズは、屈折率が1.70、分散が75である。
両凹負レンズは、屈折率が1.75、分散が40である。
この実施例は、レンズの焦点距離を近視500度の人々に適合するまで調整する。
【0048】
実施例4
【0049】
この実施例において、
両凸正レンズは、好ましい数値がn1=1.531160,v1=56.04となるE48Rプラスチック材を用いる。
両凹負レンズは、好ましい数値がn1=1.5585470,v1=29.91となるPOLYCARBプラスチック材を用いる。
この実施例は、レンズの焦点距離を通常の視力の人々に適合するまで調整する。
【0050】
上述したのは、あくまでも本発明の好適な実施例にすぎなく、本発明を限定するものではない。いかなる当業者は、掲示された上記内容を元に同等・等価な実施形態に変更、変形することが可能であるが、本発明の技術案を逸脱せずに本発明の技術的本質に基づいて以上の実施例へのいかなる簡単な修正、同等な変更、および変形は、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
なお、出願当初の請求項は以下の通りであった。
[請求項1]
色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズであって、
筐体と、両凸正レンズと、両凹負レンズとを備え、両凸正レンズと両凹負レンズが筐体内に並設され、かつ前記両凹負レンズが物体側に近づいており、
前記両凸正レンズは、物体側へ凸な第1の表面と、縁部が平面で、中央部が像側へ凸な第2の表面とを有し、
前記両凹負レンズは、物体側へ凹な第3の表面と、縁部が平面で、中央部が像側へ凹な第4の表面とを有し、
前記両凸正レンズ及び両凹負レンズは、レンズ表面がいずれも非球面であることを特徴とする色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
[請求項2]
前記両凹負レンズは、両凸正レンズとの距離を調整するように、筐体の軸線に沿って移動することが可能となることを特徴とする請求項1に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
[請求項3]
前記両凸正レンズは、屈折率が1.45〜1.70の範囲内にあり、分散が50〜75の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
[請求項4]
前記両凹負レンズは、屈折率が1.45〜1.75の範囲内にあり、分散が25〜40の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
[請求項5]
前記両凸正レンズは、n1=1.531160、v1=56.04となるE48Rプラスチック材を用いることを特徴とする請求項3に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
[請求項6]
前記両凹負レンズは、n1=1.5585470、v1=29.91となるPOLYCARBプラスチック材を用いることを特徴とする請求項4に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
[請求項7]
前記第3の表面は、曲率半径が無限大の非球面であることを特徴とする請求項1に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
[請求項8]
前記両凸正レンズは、レンズ内に固定されて不動であり、両凹負レンズの移動により、レンズが近視500度から遠視500度までの人々に適合するようにすることを特徴とする請求項2に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
[請求項9]
前記第1の表面、第2の表面、第3の表面、第4の表面の表面形状は、下記の式に従うものであり、
【数4】
ことを特徴とする請求項1に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
[請求項10]
下記の色収差の補正式により、系統の屈折力が求められており、
【数5】
ことを特徴とする請求項1に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズ。
[請求項11]
請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載の色収差のないヘッドマウント機器用広角レンズを用いたことを特徴とするヘッドマウント機器。
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