特許第6279212号(P6279212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6279212MIMOレーダシステム、及び信号処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6279212
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】MIMOレーダシステム、及び信号処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20180205BHJP
【FI】
   G01S7/03 230
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-22044(P2013-22044)
(22)【出願日】2013年2月7日
(65)【公開番号】特開2014-153142(P2014-153142A)
(43)【公開日】2014年8月25日
【審査請求日】2016年2月2日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成24年度、総務省、電波資源拡大のための研究開発における委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】菅野 真行
【審査官】 請園 信博
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0274499(US,A1)
【文献】 特開2011−033498(JP,A)
【文献】 特開2010−217035(JP,A)
【文献】 特開2011−257150(JP,A)
【文献】 特開2012−194043(JP,A)
【文献】 特開平10−253730(JP,A)
【文献】 特開2011−058974(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/083479(WO,A1)
【文献】 特開平08−146131(JP,A)
【文献】 特開2003−315447(JP,A)
【文献】 特開2005−003393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 − 7/42
13/00 − 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナを有する複数の送信装置と、
受信アンテナを備える複数の受信装置と、
前記送信アンテナ間の間隔及び前記受信アンテナ間の間隔に基づいて複数の仮想アンテナによる仮想アレイを構成し、前記複数の受信装置により受信された受信信号を処理する信号処理装置と、を備え、
前記複数の送信装置の前記送信アンテナのうちの利用される前記送信アンテナの配置として、利用される前記送信アンテナ間の間隔が、全て異なっている配置と、利用される前記送信アンテナ間の間隔が、全て等しい間隔となっている配置と、が選択可能であり、
前記信号処理装置は、
前記構成した仮想アレイにおいて、長パルス波で観測できない近距離については、利用される前記送信アンテナ間の間隔が、全て等しい間隔となっている配置を用いて仮想アレイを構成し、それ以外の観測距離については、利用される前記送信アンテナ間の間隔が、全て異なっている配置を用いて仮想アレイを構成することを特徴とするMIMOレーダシステム。
【請求項2】
利用される前記送信アンテナの最大素子間隔は、前記複数の受信アンテナにより構成されるアレイ長以下であることを特徴とする請求項に記載のMIMOレーダシステム。
【請求項3】
前記信号処理装置は、
前記構成した仮想アレイにおいて、同じ位置に配置される前記仮想アンテナがある場合、前記同じ位置に配置される複数の前記仮想アンテナによる前記受信信号を走査角度毎に統合することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMIMOレーダシステム。
【請求項4】
隣り合う前記複数の受信装置の受信アンテナ間の間隔は、
全て等間隔で配置される
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のMIMOレーダシステム。
【請求項5】
前記信号処理装置は、
前記構成した仮想アレイにおいて、同じ位置に配置される前記仮想アンテナがある場合、同じ位置に配置される前記仮想アレイに対して重み付けを行った後、前記同じ位置に配置される複数の前記仮想アンテナによる前記受信信号を走査角度毎に統合する
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のMIMOレーダシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MIMOレーダシステム、及び信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレーダ送信装置で電波を送信し、複数のレーダ受信装置で電波を受信し、受信した電波を用いて対象物の位置を検出するMIMO(Multiple-Input
Multiple-Output)レーダシステムと呼ばれるレーダシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
非特許文献1の記載の技術では、レーダ送信装置のアンテナを均一に配置したアレイと、レーダ受信装置のアンテナを均一に配置したアレイとによりMIMOレーダシステムを構成することが提案されている。また、非特許文献1の記載の技術では、各アンテナは、送受信される波長の半波長間隔で配置する。非特許文献1の記載の技術では、レーダ受信装置は、各アンテナを介して、各レーダ送信装置のアンテナから送信された送信信号を受信する。非特許文献1の記載の技術では、レーダ送信装置のアンテナの素子数がM素子、レーダ受信装置のアンテナの素子数がN素子であるとすると、レーダ受信装置は、M×N素子の仮想的なアレイアンテナを有しているとみなせる。
【0004】
しかしながら、非特許文献1の記載の技術のようにアンテナを等間隔に配置したMIMOレーダシステムでは、送信アンテナ及び受信アンテナの単体毎に指向性のばらつきがある。指向性のばらつきとは、例えばアンテナ毎かつ走査角度毎に送信信号または受信信号の振幅が異なり、あるいは位相が異なることである。この指向性のばらつきにより、受信特性において周期的なローブが発生する。非特許文献1の技術では、受信アンテナにより受信された複数の受信信号が合成されると、この周期的なローブが加算されるため、サイドローブの信号レベルが増加し、CN(搬送波対雑音比)が悪化するという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−68224号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Jian Li、Petre Stoica、MIMO RADAR SIGNAL PROCESSING、wiley and Sonc、Inc、2008、P74-P77
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
各送信アンテナから独立した信号を送信するため長パルス波を使用するMIMOレーダシステムでは、通常のパルスレーダと同様に近距離の観測に短パルス波を使用し、長パルス波と短パルス波を併用することが必要となる。
【0008】
MIMOレーダシステムでは、指向性のばらつきにより発生する、前記周期ローブによるサイドローブの信号レベルの増加に対して、送信アンテナを不等間隔に配置することが受信信号のCN比を向上する有効な手法であった。
【0009】
しかしながら、送信アンテナを不等間隔に配置すると、短パルス波を使用し、各送信アンテナから独立でない信号を送信する場合には所望の指向性を実現できず、サイドローブ信号レベルが増加する。それによりMIMOレーダシステムに対して近距離を観測する場合の更なる改善が望まれていた。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑み成されたものであって、受信信号のCN比を向上することができるMIMOレーダシステム、及び信号処理装置を提供することを目標とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するため、本発明の一態様に係るMIMOレーダシステムは、送信アンテナを有する複数の送信装置と、受信アンテナを備える複数の受信装置と、前記送信アンテナ間の間隔及び前記受信アンテナ間の間隔に基づいて複数の仮想アンテナによる仮想アレイを構成し、前記複数の受信装置により受信された受信信号を処理する信号処理装置と、を備え、隣り合う前記送信装置の全ての組み合わせにおいて前記送信アンテナ間の間隔が、全て異なっている配置と、前記送信アンテナ間の間隔が、全て等しい間隔となっている配置を併用しており、前記送信アンテナの最大素子間隔は、前記複数の受信アンテナにより構成されるアレイ長以下であることを特徴としている。
(2)また、本発明の一態様に係るMIMOレーダシステムにおいて、前記信号処理装置はレーダの観測距離により、長パルス波で観測できない近距離については前記送信アンテナ間の間隔が、全て等しい間隔となっている配置を用いて仮想アレイを構成し、それ以外の観測距離については前記送信アンテナ間の間隔が、全て異なっている配置を用いて仮想アレイを構成することを特徴としている。
(3)また、本発明の一態様に係るMIMOレーダシステムにおいて、前記信号処理装置は、前記構成した仮想アレイにおいて、同じ位置に配置される前記仮想アンテナがある場合、前記同じ位置に配置される複数の前記仮想アンテナによる前記受信信号を走査角度毎に統合するようにしてもよい。
(4)また、本発明の一態様に係るMIMOレーダシステムにおいて、隣り合う前記複数の受信装置の受信アンテナ間の間隔は、全て等間隔で配置されるようにしてもよい。
(5)また、本発明の一態様に係るMIMOレーダシステムにおいて、前記信号処理装置は、前記構成した仮想アレイにおいて、同じ位置に配置される前記仮想アンテナがある場合、同じ位置に配置される前記仮想アレイに対して重み付けを行った後、前記同じ位置に配置される複数の前記仮想アンテナによる前記受信信号を走査角度毎に統合するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、MIMOレーダシステムは、受信信号のCN比を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】MIMOレーダシステムの機能構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る送信アンテナ、受信アンテナの構成を説明する図である。
図3】レーダにて近距離を観測する際に使用する送信アンテナを全て等間隔で配置した場合の仮想アレイを説明する図である。
図4】レーダにて近距離以外の距離を観測する際に使用する送信アンテナを全て不等間隔で配置した場合の仮想アレイを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、MIMOレーダシステム1の機能構成を示すブロック図である。図1に示すMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)レーダシステム1は、n+l−1個の送信装置10−1、10−ka(kは2〜l)、10−ib(iは2〜n)(n、kは1以上の整数)、m個の受信装置20−1〜20−m(mは1以上の整数)、及び信号処理装置30を備える。
送信装置10−1、10−ka(kは2〜l)、10−ib(iは2〜n)は、各々、送信アンテナ11−1、11−ka(kは2〜l)、11−ib(iは2〜n)を備える。送信装置10−1、10−ka(kは2〜l)、10−ib(iは2〜n)は、各々、送信アンテナ11−1、11−ka(kは2〜l)、11−ib(iは2〜n)から、送信信号s1−1、s1−ka(kは2〜l)、s1−ib(iは2〜n)を送信する。受信装置20−j(jは1〜m)は、各々、受信アンテナ21−j(jは1〜m)を備える。
受信装置20−j(jは1〜m)は、各々、対象物40に送信信号s1−1、s1−ka(kは2〜l)、s1−ib(iは2〜n)が反射、散乱、または回折(以下、これら全てを含めて反射という)した信号である受信信号s2−j(jは1〜m)を、受信アンテナ21−j(jは1〜m)を介して受信する。各受信装置20−j(jは1〜m)は、受信した受信信号を信号処理装置30に出力する。
【0015】
信号処理装置30は、各受信装置20−j(jは1〜m)が受信した受信信号s2−j(jは1〜m)を処理する。具体的には、信号処理装置30は、受信信号s2−j(jは1〜m)に対して、各送信アンテナ11−1、11−ka(kは2〜l)、11−ib(iは2〜n)と受信アンテナ21−j(jは1〜m)間の送信信号と受信信号を掛け合わせて、MIMOレーダにおける仮想アレイを実現する。信号処理装置30は、図4に示すように仮想アレイにおける個々のアンテナ(以下、仮想アンテナという)の位置が同一の位置と見なせる複数の信号に対して、例えばベクトル平均を算出する。なお、信号処理装置30は、例えば、受信信号を振幅データと位相データとのベクトル値として、このベクトル値の平均を算出することでベクトル平均の算出を行う。なお、仮想アンテナの位置が同一の位置とは、各送信アンテナ11−1、11−ka(kは2〜l)、11−ib(iは2〜n)間の間隔、及び受信アンテナ21―j(jは1〜m)間の間隔に基づいて、公知の技術で仮想アレイを構成した場合、所定の間隔で配置される仮想アンテナにおいて、仮想アンテナの仮想的な位置が同じ位置である。また、信号処理装置30は、後述するように仮想アレイに対して重み付けを行う。
対象物40は、MIMOレーダシステム1が測定する対象物である。
【0016】
次に、送信アンテナ11−1、11−ka(kは2〜l)、11−ib(iは2〜n)、受信アンテナ21−j(jは1〜m)の配置と、信号処理装置30が行う信号処理について説明する。
図2は、本実施形態に係る送信アンテナ11−1〜11−3a、11−1〜11−4b、受信アンテナ21−1〜21−4の構成と信号処理装置30の信号処理を説明する図である。
【0017】
この素子構成では信号処理装置30は、レーダの観測距離により、長パルス波で観測できない近距離については前記送信アンテナ間の間隔が、図3に示す送信アンテナ11−1、11−2a、11−3a、受信アンテナ21−1〜21−4の構成のように全て等しい間隔となっている配置を用いて仮想アレイを構成し、それ以外の観測距離については図4に示す送信アンテナ11−1、11−2b、11−3b、11−4b、受信アンテナ21−1〜21−4の構成のように前記送信アンテナ間の間隔が、全て異なっている配置を用いて仮想アレイを構成する。なお、ここでは11−1はどちらの構成でも使用するとしている。
【0018】
図3は、レーダの観測距離により、長パルス波で観測できない近距離について使用する仮想アレイの構成を示しており、
送信アンテナ11−1と11−2aと11−3aとは、間隔が4dで配置されている。
このように、本発明では、隣り合う送信アンテナが全て等しい間隔となっている。すなわち、本発明では、各送信装置10−i(iは1〜n)の隣り合う送信アンテナ11−1、11−ia(iは1〜n)間の間隔が、全て等しくなるように配置される。
なお、送信アンテナが5本以上配置されている場合、隣り合う送信アンテナ11−1、11−ia(iは1〜n)間の間隔が、全て等しくなるように配置されるようにしてもよい。図4は、レーダの観測距離により、長パルス波で観測できない近距離以外の観測距離について使用する仮想アレイの構成を示しており、送信アンテナ11−1と11−2bとは、間隔が2dで配置され、送信アンテナ11−2bと11−3bとは、間隔が3dで配置され、送信アンテナ11−3bと11−4bとは、間隔が4dで配置されている。
このように、本発明では、隣り合う送信アンテナ11−1と11−2b間の間隔2dと、隣り合う送信アンテナ11−2bと11−3b間の間隔3dと、隣り合う送信アンテナ11−3bと11−4b間の間隔4dとが全て異なっている。すなわち、本発明では、各送信装置11−1、11−ib(iは1〜n)の隣り合う送信アンテナ11−1、11−ib(iは1〜n)間の間隔が、全て異なるように配置される。
なお、送信アンテナが5本以上配置されている場合、隣り合う送信アンテナ11−1、11−ib(iは1〜n)間の間隔が、全て異なるように配置されるようにしてもよい。
また、図2に示すように、受信アンテナ21−1と21−2とは、間隔dで配置され、受信アンテナ21−2と21−3とは、間隔dで配置され、受信アンテナ21−3と21−4とは、間隔dで配置されている。すなわち、隣り合う受信アンテナ21−1〜21−4が、全て同じ間隔で配置されている。
【0019】
次に、信号処理装置30における信号処理を、図3図4を用いて説明する。なお、図2では、MIMOレーダシステム1が、送信アンテナを6素子有し、レーダの観測距離により、長パルス波で観測できない近距離については送信アンテナ11−1、11−2a、11−3aの3素子、それ以外の観測距離については送信アンテナ11−1、11−2b、11−3b、11−4bの4素子を利用し、受信アンテナを4素子有する場合の例である。すなわち、仮想アンテナとしては、レーダの観測距離により、長パルス波で観測できない近距離については12素子(=3×4)、それ以外の観測距離については16素子(=4×4)存在することになる。
【0020】
図3について受信アンテナ21−1は、送信アンテナ11−1が送信した送信信号s1−1、送信アンテナ11−2aが送信した送信信号s1−2a、送信アンテナ11−3aが送信した送信信号s1−3aが、各々、対象物40に反射した信号を受信信号s2−1として受信する。受信アンテナ21−2は、送信信号s1−1、送信信号s1−2a、送信信号s1−3aが、各々、対象物40に反射した信号を受信信号s2−2として受信する。受信アンテナ21−3は、送信信号s1−1、送信信号s1−2a、送信信号s1−3aが、各々、対象物40に反射した信号を受信信号s2−3として受信する。受信アンテナ21−4は、送信信号s1−1、送信信号s1−2a、送信信号s1−3aが、各々、対象物40に反射した信号を受信信号s2−4として受信する。
【0021】
図4について受信アンテナ21−1は、送信アンテナ11−1が送信した送信信号s1−1、送信アンテナ11−2bが送信した送信信号s1−2b、送信アンテナ11−3b送信した送信信号s1−3b、及び送信アンテナ11−4bが送信した送信信号s1−4bが、各々、対象物40に反射した信号を受信信号s2−1として受信する。受信アンテナ21−2は、送信信号s1−1、送信信号s1−2b、送信信号s1−3b、及び送信信号s1−4bが、各々、対象物40に反射した信号を受信信号s2−2として受信する。受信アンテナ21−3は、送信信号s1−1、送信信号s1−2b、送信信号s1−3b、及び送信信号s1−4bが、各々、対象物40に反射した信号を受信信号s2−3として受信する。受信アンテナ21−4は、送信信号s1−1、送信信号s1−2b、送信信号s1−3b、及び送信信号s1−4bが、各々、対象物40に反射した信号を受信信号s2−4として受信する。
【0022】
図3において、一点鎖線201aで囲んだ4素子の仮想アンテナ201a−1〜201a−4は、送信信号s1−1を受信した受信アンテナ21−1〜21−4を表し、一点鎖線202aで囲んだ4素子の仮想アンテナ202a−1〜202a−4は、送信信号s1−2aを受信した受信アンテナ21−1〜21−4を表している。また、一点鎖線203aで囲んだ4素子の仮想アンテナ203a−1〜203a−4は、送信信号s1−3aを受信した受信アンテナ21−1〜21−4を表している。一点鎖線201a〜203aの仮想アンテナの集まりを、以下、各々、仮想アンテナ群といもいう。
【0023】
具体的には、仮想アンテナ201a−1は、受信アンテナ21−1により送信信号s1−1が対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ201a−2は、受信アンテナ21−2により送信信号s1−1が対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ201a−3は、受信アンテナ21−3により送信信号s1−1が対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ201a−4は、受信アンテナ21−4により送信信号s1−1が対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。
同様に、仮想アンテナ202a−1は、受信アンテナ21−1により送信信号s1−2aが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ202a−2は、受信アンテナ21−2により送信信号s1−2aが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ202a−3は、受信アンテナ21−3により送信信号s1−2aが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ202a−4は、受信アンテナ21−4により送信信号s1−2aが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。
同様に、仮想アンテナ203a−1は、受信アンテナ21−1により送信信号s1−3aが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ203a−2は、受信アンテナ21−2により送信信号s1−3aが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ203a−3は、受信アンテナ21−3により送信信号s1−3aが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ203a−4は、受信アンテナ21−4により送信信号s1−3aが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。
【0024】
図4において、一点鎖線201bで囲んだ4素子の仮想アンテナ201b−1〜201b−4は、送信信号s1−1を受信した受信アンテナ21−1〜21−4を表し、一点鎖線202bで囲んだ4素子の仮想アンテナ202b−1〜202b−4は、送信信号s1−2bを受信した受信アンテナ21−1〜21−4を表している。また、一点鎖線203bで囲んだ4素子の仮想アンテナ203b−1〜203b−4は、送信信号s1−3bを受信した受信アンテナ21−1〜21−4を表し、一点鎖線204bで囲んだ4素子の仮想アンテナ204b−1〜204b―4は、送信信号s1−4bを受信した受信アンテナ21−1〜21−4を表している。一点鎖線201b〜204bの仮想アンテナの集まりを、以下、各々、仮想アンテナ群ともいう。
【0025】
具体的には、仮想アンテナ201b−1は、受信アンテナ21−1により送信信号s1−1が対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ201b−2は、受信アンテナ21−2により送信信号s1−1が対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ201b−3は、受信アンテナ21−3により送信信号s1−1が対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ201b−4は、受信アンテナ21−4により送信信号s1−1が対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。
同様に、仮想アンテナ202b−1は、受信アンテナ21−1により送信信号s1−2bが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ202b−2は、受信アンテナ21−2により送信信号s1−2bが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ202b−3は、受信アンテナ21−3により送信信号s1−2bが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ202b−4は、受信アンテナ21−4により送信信号s1−2bが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。
同様に、仮想アンテナ203b−1は、受信アンテナ21−1により送信信号s1−3bが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ203b−2は、受信アンテナ21−2により送信信号s1−3bが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ203b−3は、受信アンテナ21−3により送信信号s1−3bが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ203b−4は、受信アンテナ21−4により送信信号s1−3bが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。
同様に、仮想アンテナ204b−1は、受信アンテナ21−1により送信信号s1−4bが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ204b−2は、受信アンテナ21−2により送信信号s1−4bが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ204b−3は、受信アンテナ21−3により送信信号s1−4bが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。仮想アンテナ204b−4は、受信アンテナ21−4により送信信号s1−4bが対象物40に反射した信号を受信したアンテナを表している。
【0026】
図4に示す構成では、送信アンテナ11−1、11−2b、11−3b、11−4bの間隔に応じて、一点鎖線201b〜204bで囲んだ4素子の仮想アンテナ群同士の間隔が異なっている。具体的には、仮想アンテナ201b−1に対して仮想アンテナ202b−1は、送信アンテナ11−1と送信アンテナ11−2bとの間隔2dと同じ間隔2d離れている。仮想アンテナ202b−1に対して仮想アンテナ203b−1は、送信アンテナ11−2bと送信アンテナ11−3bとの間隔3dと同じ間隔3d離れている。仮想アンテナ203b−1に対して仮想アンテナ204b−1は、送信アンテナ11−3bと送信アンテナ11−4bとの間隔4dと同じ間隔4d離れている。
この結果、破線211で囲んだように、仮想アレイにおいて仮想アンテナ201b−3と、仮想アンテナ202b−1とが、同一の位置である。また、破線212で囲んだように、仮想アレイにおいて仮想アンテナ201b−4と、仮想アンテナ202b−2とが、同一の位置である。さらに、破線213で囲んだように、仮想アレイにおいて仮想アンテナ202b−4と、仮想アンテナ203b−1とが、同一の位置である。
本発明では、信号処理装置30は、このような同一の位置に対応する複数の信号を統合する。統合は、例えばベクトル平均を算出することで行う。
【0027】
ここで、最大素子間隔とは、図4に示した例では、送信アンテナ11−3bと11−4bとの間隔であり4(×d)である。複数の受信アンテナ21−j(jは1〜m)により構成されるアレイ長とは、図4に示した例では、受信アンテナ21−1〜21−4により構成されるアレイの長さであり4である。このアレイ長より送信アンテナ11−1、11−ib(iは2〜n)との最大素子間隔が長い場合、例えば、仮想アンテナ群203と仮想アンテナ群204との間隔がdより長くなり、仮想アンテナ群間に隙間ができる。このため、本実施形態では、図4に示すように、送信アンテナ11−1、11−ib(iは2〜n)との最大素子間隔は、複数の受信アンテナ21−j(jは1〜m)により構成されるアレイ長以下に構成する。
【0028】
ここで、信号処理装置30が行う仮想アレイに対して重み付けの例を説明する。
信号処理装置30は、図3に示す構成では送信アンテナ11−1、11−ka(kは2〜l)×受信アンテナ21−j(jは1〜m)に対応する仮想アンテナ分のデータを生成する。
また、図4に示す構成では送信アンテナ11−1、11−ib(iは2〜n)×受信アンテナ21−j(jは1〜m)に対応する仮想アンテナ分のデータを生成する。
次に、信号処理装置30は、図4に示したように同じ位置に重複する仮想アンテナが存在する場合(例えば、仮想アンテナ201b−3と202b−1)、重複している仮想アンテナのデータに対してベクトル平均処理を行う。信号処理装置30は、重複している仮想アンテナを1つのアンテナと見なし、このアンテナに対して平均処理したデータをアンテナデータとして割り当てる。このように、重複したアンテナを1つのアンテナとしてみなした場合、図4に示した仮想アレイは13素子の仮想アンテナで構成され、この13素子の仮想アンテナには、各々、信号処理装置30が平均処理したアンテナデータが割り当てられる。
次に、信号処理装置30は、仮想アレイの各仮想アンテナに対応する正面方向のアンテナデータに対して、振幅データ及び位相データを揃えるように各方位角度での振幅データ及び位相データを調整することで重み付けを行う。
あるいは、信号処理装置30は、仮想アレイの各アンテナデータの振幅データ及び位相データに対して、テイラー分布を有する重み付けを行う。この重み付けにより、信号処理装置30は、所望の指向性を得る。
【0029】
次に、図4に示す構成での設計者が行う送信アンテナ11−1、11−ib(iは2〜n)の配置を決定する手順の一例を説明する。なお、以下の説明では、図2に示したように、一例として各送信アンテナ11−1、11−ib(iは2〜n)が、全て直線方向に配置されているとする。
設計者は、例えば、まず送信アンテナの中から任意の2素子の送信アンテナ11−1と11−2bとを選択し(手順1)、選択した送信アンテナ11−1と11−2b間の間隔を2dに決定する(手順2)。次に、設計者は、送信アンテナ11−1及び11−2b以外の送信アンテナとして、送信アンテナ11−3bを選択する(手順3)。次に、設計者は、11−2bと、手順3で選択した送信アンテナ11−3bとの間隔を3dに決定する(手順4)。次に、設計者は、手順1〜手順3で選択した以外の送信アンテナとして、送信アンテナ11−4bを選択する(手順5)。次に、設計者は、送信アンテナ11−3bと、手順5で選択した送信アンテナ11−4bとの間隔を4dに決定する(手順6)。以下同様に、MIMOレーダシステム1の設計者は、各送信アンテナ間の間隔が、互いに異なるように配置を決定していく(手順7)。なお、このような送信アンテナの選択と、送信アンテナ間の決定は、例えば、信号処理装置30が備える不図示の演算部が行うようにしてもよい。
なお、上記では、送信アンテナ間の間隔を、順次、2d、3d、4d・・と決定する例を説明したが、間隔を決定する順番はこれに限られない。例えば、2d、d、3d・・・等であってもよく、ランダムであってもよい。
また、上述した例では、送信アンテナ11−1、11−ib(iは2〜n)のうち、左側に配置されるアンテナを基準にして、アンテナ間隔を決定する例を説明したが、これに限られない。例えば、紙面の中央に配置されている送信アンテナ11−3b、または右端に配置されている送信アンテナ11−4bを基準に、他の送信アンテナ11−1、11−ib(iは2〜n)の間隔を決定するようにしてもよい。
【0030】
以上のように、本発明に係るMIMOレーダシステム1は、送信アンテナ11−1、11−ka(iは2〜l)、11−ib(iは2〜n)を有する複数の送信装置と、受信アンテナ21−j(jは1〜m)を備える複数の受信装置と、送信アンテナ間の間隔及び受信アンテナ間の間隔に基づいて複数の仮想アンテナによる仮想アレイを構成し、複数の受信装置により受信された受信信号を処理する信号処理装置30と、を備え、隣り合う送信装置の全ての組み合わせにおいて送信アンテナ間の間隔が、全て異なるように配置され、送信アンテナの最大素子間隔は、複数の受信アンテナにより構成されるアレイ長以下である。
この構成により、本発明に係るMIMOレーダシステムは、近距離以外の観測距離を測定する際にサイドローブの信号レベルを低減でき、受信信号のCN比を向上することができる送信アンテナの素子を不等間隔に配置した場合に、近距離の観測時に所望の指向性を実現できずサイドローブ信号レベルが増加する課題を改善することができ、結果的に観測する全領域でサイドローブの信号レベルを低減でき、受信信号のCN比を向上することができる。
【0031】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
例えば、各実施形態における図1に示した機能のうち、機能の全て、もしくは機能の一部を、図示しないCPU(中央演算装置)に接続されたROM(Read Only Memory)等に保存されているプログラムにより実行することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…MIMOレーダシステム、10−i+k−1(iは2〜n、kは2〜l)…送信装置、11−1、11−ka(kは2〜l)、11−ib(iは2〜n)…送信アンテナ、20−j(jは1〜m)…受信装置、21−j(jは1〜m)…受信アンテナ、30…信号処理装置、40…対象物、d…アンテナの間隔、s1−1、s1−ka(kは2〜l)、s1−ib(iは2〜n)…送信信号、s2−j(jは1〜m)…受信信号
図1
図2
図3
図4