(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6279219
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】シートを処理する機械、特に輪転印刷機または打抜機に設けられたニューマチック式の消費器を制御する装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/22 20060101AFI20180205BHJP
B65H 9/04 20060101ALI20180205BHJP
B65H 29/70 20060101ALI20180205BHJP
【FI】
B65H5/22 B
B65H9/04
B65H29/70
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-50270(P2013-50270)
(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2013-193881(P2013-193881A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年12月25日
(31)【優先権主張番号】10 2012 005 258.8
(32)【優先日】2012年3月15日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー エーディンガー
【審査官】
西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−272092(JP,A)
【文献】
特開2004−277180(JP,A)
【文献】
米国特許第03458042(US,A)
【文献】
実開昭49−135889(JP,U)
【文献】
特開平01−156273(JP,A)
【文献】
特開2007−320739(JP,A)
【文献】
特開2000−128391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/02− 5/22
B65H 29/12−29/32
B65H 29/54−29/70
B65H 9/00− 9/20
B65H 13/00−15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリバルブを用いて、シートを処理する機械に設けられたニューマチック式の消費器を制御する装置であって、
前記ロータリバルブ(44)は、個別駆動装置(47)を備え、該個別駆動装置(47)は、正弦波状の動作プロフィール(52)により駆動可能な電動モータであり、
前記消費器(24)への吸込み空気供給の開始時間および終了時間が可変に独立して調節可能であり、
前記正弦波状の動作プロフィールは、記憶された特性曲線(52)に基づいて得ることができ、該特性曲線(52)は、処理すべきシート材料の異なるパラメータを考慮している、
ことを特徴とする、シートを処理する機械に設けられたニューマチック式の消費器を制御する装置。
【請求項2】
前記ロータリバルブ(44)は、単一の通路(54)を有する回転部(53)を備える、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記ロータリバルブ(44)は、1つの入口(49)と2つの出口(41,42)とを備える、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
ロータリバルブを用いて、シートを処理する機械に設けられたニューマチック式の消費器を制御する装置を備える輪転印刷機または打抜機であって、
前記ロータリバルブ(44)は、個別駆動装置(47)を備え、該個別駆動装置(47)は、正弦波状の動作プロフィール(52)により駆動可能な電動モータであり、
前記消費器(24)への吸込み空気供給の開始時間および終了時間が可変に独立して調節可能であり、
前記ニューマチック式の消費器(24)は、フィーダボード(9)の上方に配置された吸引ストリップ(24)であり、該吸引ストリップ(24)は、前縁ストッパ(19)の手前で間隔(s)の内側に位置決めされており、
シートを処理する機械(1)の1回転の間、前記個別駆動装置(47)も精確に1回転する、
ことを特徴とする、輪転印刷機または打抜機。
【請求項5】
フィーダボード(9)と、ニューマチック式の消費器としての吸引ストリップ(24)と、前縁ストッパ(19)とを備える、請求項4記載の輪転印刷機または打抜機。
【請求項6】
前記吸引ストリップ(24)は、シート搬送方向に対して横向きに方向付けされた1つの横ビーム(26)を備え、該横ビーム(26)に、複数の吸込み室(27,28,29)が相並んで取り付けられている、請求項4記載の輪転印刷機または打抜機。
【請求項7】
前記吸込み室(27,28,29)は、それぞれ下向きにシート上面に向けられた吸引開口(31,32,33)を備える、請求項6記載の輪転印刷機または打抜機。
【請求項8】
中央の前記吸込み室(28)は、処理すべき最小のシート判(F)の幅とほぼ同一の幅を有する、請求項7記載の輪転印刷機または打抜機。
【請求項9】
外側の前記吸込み室(27,29)への吸込み空気供給を遮断するための切換弁(46)が設けられている、請求項8記載の輪転印刷機または打抜機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートを処理する機械に設けられたニューマチック式の消費器(作動装置)、例えばフィーダボード上でシートを揃えたあとでシートを処理する機械、例えば枚葉輪転印刷機または打抜機に供給されるシートを持ち上げる吸引ストリップを制御する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第7665722号明細書において、既に、シート搬送方向に対して横向きに給紙台の上方に配置されたニューマチック式の持上げ装置が公知である。この持上げ装置は、吹出し空気で負荷される。吹出し空気は、ロータリバルブを用いて、シートを処理する機械のサイクルに合わせて供給され、所定の吹出し・吸込み・ノズルを用いてシート後縁に作用し、これにより、シート後縁を持ち上げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7665722号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ニューマチック式に作用する、シートを処理する機械にシートを供給する際にシートを高く保持する装置を提供することであり、この装置では、ニューマチック式の消費器の圧力負荷は、シートを処理する機械の作業サイクルに合わせて可変に調節可能であることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するための本発明の装置によれば、ロータリバルブを用いて、シートを処理する機械に設けられたニューマチック式の消費器を制御する装置であって、ロータリバルブは、個別駆動装置を備え、個別駆動装置は、正弦波状または不均一形状の動作プロフィールにより駆動可能な電動モータである。
【0006】
好適には、ロータリバルブは、単一の通路を有する回転部を備える。
【0007】
好適には、ロータリバルブは、1つの入口と2つの出口とを備える。
【0008】
この課題を解決するための本発明の装置によれば、シートを処理する機械に設けられたニューマチック式の消費器を制御する装置であって、ニューマチック式の消費器は、フィーダボードの上方に配置された吸引ストリップであり、吸引ストリップは、前縁ストッパの手前で間隔の内側に位置決めされている。
【0009】
好適には、吸引ストリップは、シート搬送方向に対して横向きに方向付けされた横ビームを備え、横ビームに、複数の吸込み室が相並んで取り付けられている。
【0010】
好適には、吸込み室は、それぞれ下向きに、シート上面に向けられた吸引開口を備える。
【0011】
好適には、中央の吸込み室は、処理すべき最小のシート判の幅とほぼ同一の幅を有する。
【0012】
好適には、外側の吸込み室への吸込み空気供給を遮断するための切換弁が設けられている。
【0013】
このような装置を備える輪転印刷機または打抜機が好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の格別な利点は、ロータリバルブが個別駆動装置を用いて操作可能であることにある。このような構成手段により、ニューマチック式の消費器、例えば吸込み又は吹出しストリップの操作は、1作業サイクルの間に個々に制御することができる。好適には、個別駆動装置は、シートを処理する機械の制御計算機を介して制御され、機械特性又は材料特性に応じて特性曲線を介して制御することができる。
【0015】
好適な態様では、ニューマチック式の消費器は、負圧消費器、例えばシート搬送方向に対して横向きにフィーダボードの上方に配置された吸引ストリップであり、この吸引ストリップは、シートがフィーダボードから引き出される間に、シートを吸引して持ち上げるために、第1のシートと第2のシートとの間のずらし間隔の内側で所定の前当てから間隔を置いてシート上面に係合する。
【0016】
このような構成手段により、シートにより描かれる走入波形が抑制され、フィーダボード上の波形形成が好適に影響を受ける。
【0017】
この場合、制動力が十分であると、引き出されたシートは、ずれ重なりシート流れにおいて第1のシートに追従する第2のシートのガイド要素として働く。
【0018】
好適には、吸引ストリップは、高さ調節可能に配置されている。これにより、吸引ストリップは、処理すべき被印刷物に対して精確に調節可能となる。
【0019】
好適な態様では、吸引ストリップは、複数部分から構成されていて、相並んで配置された複数の吸込み室を備えた1つの横ビームから成っている。
【0020】
3つの吸込み室を用いる場合、中央の吸込み室は、処理すべき最小の判とほぼ同一の幅を有する。このような構成手段により、漏れを防止するために、両方の外側の吸込み室を遮断することができる。
【0021】
吸込み室は、供給路、例えばチューブを用いて、直にロータリバルブに接続されている。供給路を収容するために、横ビームが1つの室を有し、この室内で供給路は吸込み室に接続されている。別の利点は、従属請求項に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】フィーダボード1の上方に配置された吸引ストリップの概略断面図である。
【
図3】前当ての領域で吸引ストリップを概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態を図示して、以下に説明する。
【0024】
シート7を処理する機械、例えば印刷機1または打抜機(図示せず)は、フィーダ2と、少なくとも1つの印刷ユニット3,4と、デリバリ6とを備える。シート7は、パイル8から取り出され、個別化されてまたは刺身状にずれ重なった状態でフィーダボード9を介して印刷ユニット3,4に供給される。印刷ユニット3,4は、公知の形で、それぞれ1つの版胴11,12を備える。版胴11,12は、それぞれ1つの柔軟な刷版を装着する装置13,14を備える。さらに各版胴11,12に対応して、半自動又は全自動式の刷版交換のための装置16,17が配置されている。
【0025】
パイル8は、制御して昇降可能な積紙台10を備える。シート7の取出しは、パイル8の上面からいわゆるサクションヘッド18を用いて行われ、サクションヘッド18は、とりわけシート7を分離するための幾つかの持上げ・送り吸口を備える。さらに、上側のシート層を解す吹出し装置及びスタック後方をガイドする接触要素が設けられている。スタック8、特にパイル8の上位のシート7を方向付けして揃えるために、幾つかの側方及び後方のストッパが設けられている。
【0026】
ずれ重なりシート流れで搬送される第1のシート7がプレグリッパ22により把持されて、シートを処理する機械1の印刷ユニット3,4に供給されるまえに、フィーダボード9の端部で、第1のシート7は、前縁ストッパ19及び側縁ストッパ21において揃えられる。
【0027】
調節可能な側縁ストッパ21のための引張り通路23は、前当てストッパ19から間隔aを置いて配置されていて、シート搬送方向に対して横向きにフィーダボード9内で延在している。シート搬送方向にみて(
図2及び
図3の矢印)、引張り通路23の直ぐ上流側(手前)に、フィーダボード9の上方に、シート搬送方向に対して横向きに配置された吸引ストリップ24が設けられている。吸引ストリップ24は、ずらし長さsの範囲内で前当ての上流側に配置されているので、前当てストッパ19と吸引ストリップ24の吸引開口31,32,33との間に間隔zが設けられている。吸引ストリップ24は、高さ調節可能で旋回可能に支持された1つの横ビーム26から形成されており、横ビーム26に、シート搬送方向に対して横向きに相並んで幾つかの、例えば3つの吸込み室27,28,29が配置されている。
【0028】
吸込み室27,28,29は、それぞれ幾つかの吸引開口31,32,33を備え、吸引開口31,32,33は、シート7の上面に向けられている。吸込み室27,28,29は、それぞれ吸込み接続部34,36,37及び供給管路38,39を介してロータリバルブ44の出口41,42に接続されている。供給管路38,39は、横ビーム26の閉じた室45により収容される。供給管路38は中央の吸込み室28に、また供給管路39は外側の吸込み室に、ロータリバルブ44から吸込み空気を供給する。供給管路39は、切換可能なバルブ46により遮断可能である。このような構成手段は、比較的小さな判(サイズ)幅を処理する際に誤った空気の吸込みを防止する。中央の吸込み室28の幅は、処理されるべき最小の判Fの幅にほぼ一致する。
【0029】
ロータリバルブ44は、吸込み源48に接続された入口49と、個別駆動装置47、例えば電動モータとを備える。個別駆動装置47は、シートを処理する機械1の制御計算機51により、正弦波状又は不均一形状の動作プロフィールにより機械1の作業サイクルで駆動される。正弦波状の動作プロフィールは、記憶された特性曲線52に基づいて得ることができ、この特性曲線52は、処理すべきシート材料の種々異なるパラメータ、例えば大きさ、厚さ、表面特性等を考慮している。
【0030】
ロータリバルブ44の個別駆動装置47により、消費器24への吸込み空気供給の開始時間だけでなく終了時間も可変に独立して調節することができる。
【0031】
ずれ重なりシート流れの第1のシートが前方ストッパ19及び側方ストッパ21において揃えられていると、直ちに第1のシート7は、プレグリッパ22のグリッパにより把持されて、フィーダボード9から引き出される。この場合、引き出されるシート7は、フィーダボード9上で波形を形成しがちである。この波形の形成を回避するために、吸引ストリップ24は吸込み空気で負荷される。シート7は、このような構成手段により、第1のずらし部分の後方領域で持ち上げられ、これにより制動される。
【0032】
したがって、シートは、シートを処理する機械1にコントロールして供給することができる。この場合、持ち上げられたシートは、同時に後続の第2のシートのためのガイド要素として働き、前縁ストッパ19への第2のシートの供給は容易になる。
【0033】
ロータリバルブ44の回転部53(ロータ)は、1つの通路54を備え、この通路54は、入口49を出口38,39に接続する。シートを処理する機械1の1回転(作業サイクル)の間、駆動モータ47も精確に1回転する。動作プロフィールの極値は、常に、(駆動モータ47の)オン段階(フェーズ)もしくはオフ段階(フェーズ)の中央にある。つまり、回転体に関して、極値は、常に、同一の角度位置にあるが、機械に関する極値の角度位置は変化し、その結果正弦波の振幅が変化される。
【0034】
オフ段階における極値の値が低下されると、オフ段階が延長される。これにより、オン段階における極値は増加し、オン段階の長さは短縮される。
【符号の説明】
【0035】
1 印刷機、 2 フィーダ、 3 印刷ユニット、 4 印刷ユニット、 6 デリバリ、 7 シート、 8 パイル、 9 フィーダボード、 11 版胴、 12 版胴、 13 刷版装着装置、 14 刷版装着装置、 16 刷版交換装置、 17 刷版交換装置、 18 サクションヘッド、 19 前縁ストッパ、 21 側縁ストッパ、 22 プレグリッパ、 23 引張り通路、 24 吸引ストリップ、 26 横ビーム(24)、 27 吸込み室、 28 吸込み室、 29 吸込み室、 31 吸引開口(27)、 32 吸引開口(28)、 33 吸引開口(29)、 34 吸込み接続部(27)、 36 吸込み接続部(28)、 37 吸込み接続部(29)、 38 供給管路(36)、 39 供給管路(34,37)、 41 出口(44)、 42 出口(44)、 44 ロータリバルブ、 45 室(26)、 46 切換バルブ、 47 個別駆動装置、 48 吸込み源、 49 入口(44) 51 制御計算機、 52 特性曲線、 53 回転部、 54 通路、 F 処理すべき最小判幅、 a 間隔(19−23)、 s ずらし長さ、 z 間隔(19−31〜33)