(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の筒状のブーム材がスライド可能に重ねられ、一体に設けられた油圧シリンダの伸縮作動に従って前記ブーム材が段階的に伸縮する伸縮ブームであり、前記油圧シリンダを伸縮作動させるための油圧回路と、前記複数のブーム材のうち伸長状態で連続する関係にあるブーム材同士をピン結合するロック機構と、前記ブーム材の伸長時における最終状態の位置決めを行うためのストッパとを有するテレスコブーム装置において、
前記ロック機構は、複数のストッパ部材からなるストッパ機構を有し、前記ストッパ部材同士は、前記ブーム材が伸び切る直前の位置で衝突すること、
前記ブーム材は、前記ストッパ部材同士が衝突する手前の位置を検出するための検出手段を備え、前記油圧回路は、前記油圧シリンダへ供給する作動油の圧力を調整するための圧力制御手段を備え、当該圧力制御手段は、前記検出手段の検出信号に基づいて前記油圧シリンダへ供給する作動油を減圧させるようにしたものであること、
を特徴とするテレスコブーム装置。
伸縮ブームを備えた上部旋回体が、クローラによる下部走行体に対して旋回可能に設けられ、前記伸縮ブームは、複数の筒状のブーム材がスライド可能に重ねられ、一体に設けられた油圧シリンダの伸縮作動に従って前記ブーム材が段階的に伸縮するものであり、前記複数のブーム材のうち伸長状態で連続する関係にあるブーム材同士をピン結合するロック機構と、前記ブーム材の伸長時における最終状態の位置決めを行うためのストッパとを有し、前記上部旋回体には、前記油圧シリンダを伸縮作動させるための油圧回路が設けられたクローラクレーンにおいて、
前記ロック機構は、複数のストッパ部材からなるストッパ機構を有し、前記ストッパ部材同士は、前記ブーム材が伸び切る直前の位置で衝突すること、
前記ブーム材は、前記ストッパ部材同士が衝突する手前の位置を検出するための検出手段を備え、前記油圧回路は、前記油圧シリンダへ供給する作動油の圧力を調整するための圧力制御手段を備え、当該圧力制御手段は、前記検出手段の検出信号に基づいて前記油圧シリンダへ供給する作動油を減圧させるようにしたものであることを特徴とするクローラクレーン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のクローラクレーン100は、二点鎖線で示すように、伸縮ブーム103を伸ばして作業を行う場合、多段シリンダ105に作用する油圧によってその伸長状態が保たれている。しかし、より荷重の大きな物を吊り下げる大型のクローラクレーンでは、伸縮ブーム103の伸長状態を維持するため、そのブーム材同士をピン結合するロック機構が設けられる。ピン結合は、ブーム間に形成されたピン孔が重ね合わされ、そこロックピンが差し込まれるが、それにはピン孔同士の正確な位置決めが必要であるため、伸び切った位置で正確に停止させるためのストッパ構造が設けられている。しかし、繰り返し衝突することによりストッパが変形などしてしまい、ピン孔同士の位置ズレが生じることが問題であった。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、ストッパの衝突を緩和させたテレスコブーム装置および、そのテレスコブーム装置を備えたクローラクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテレスコブーム装置は、複数の筒状のブーム材がスライド可能に重ねられ、一体に設けられた油圧シリンダの伸縮作動に従って前記ブーム材が段階的に伸縮する伸縮ブームであり、前記油圧シリンダを伸縮作動させるための油圧回路と、前記複数のブーム材のうち伸長状態で連続する関係にあるブーム材同士をピン結合するロック機構と、前記ブーム材の伸長時における最終状態の位置決めを行うためのストッパとを有するものであり、前記ブーム材は、伸び切る直前の位置を検出するための検出手段を備え、前記油圧回路は、前記油圧シリンダへ供給する作動油の圧力を調整するための圧力制御手段を備え、当該圧力制御手段は、前記検出手段の検出信号に基づいて前記油圧シリンダへ供給する作動油を減圧させるようにしたものであることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のテレスコブーム装置は、前記圧力制御手段が、前記油圧シリンダへ供給する作動油の圧力を設定値に保持する高圧リリーフ弁と低圧リリーフ弁とを備え、通常は高圧リリーフ弁を使用し、前記検出手段の検出信号に基づいて低圧リリーフ弁に切り換えるようにしたものであることが好ましい。
また、本発明のテレスコブーム装置は、前記検出手段がリミットスイッチであり、伸長状態で連続する関係にある前記ブーム材同士のうち、伸長時に不動側となる前記ブーム材に前記リミットスイッチが取り付けられ、伸長時に可動側となる前記ブーム材には検出部が形成され、前記リミットスイッチが前記検出部を検出するようにしたものであることが好ましい。
【0008】
本発明のクローラクレーンは、伸縮ブームを備えた上部旋回体が、クローラによる下部走行体に対して旋回可能に設けられ、前記伸縮ブームは、複数の筒状のブーム材がスライド可能に重ねられ、一体に設けられた油圧シリンダの伸縮作動に従って前記ブーム材が段階的に伸縮するものであり、前記複数のブーム材のうち伸長状態で連続する関係にあるブーム材同士をピン結合するロック機構と、前記ブーム材の伸長時における最終状態の位置決めを行うためのストッパとを有し、前記上部旋回体には、前記油圧シリンダを伸縮作動させるための油圧回路が設けられたものであり、前記ブーム材は、伸び切る直前の位置を検出するための検出手段を備え、前記油圧回路は、前記油圧シリンダへ供給する作動油の圧力を調整するための圧力制御手段を備え、当該圧力制御手段は、前記検出手段の検出信号に基づいて前記油圧シリンダへ供給する作動油を減圧させるようにしたものであることを特徴とする。
【0009】
また、本発明のクローラクレーンは、前記圧力制御手段が、前記油圧シリンダへ供給する作動油の圧力を設定値に保持する高圧リリーフ弁と低圧リリーフ弁とを備え、通常は高圧リリーフ弁を使用し、前記検出手段の検出信号に基づいて低圧リリーフ弁に切り換えるようにしたものであることが好ましい。
また、本発明のクローラクレーンは、前記検出手段がリミットスイッチであり、伸長状態で連続する関係にある前記ブーム材同士のうち、伸長時に可動側となる前記ブーム材に前記リミットスイッチが取り付けられ、伸長時に不動側となる前記ブーム材には検出部が形成され、前記リミットスイッチが前記検出部を検出するようにしたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可動側のブーム材が伸び切る直前で圧力制御手段によって油圧シリンダに供給される作動油が減圧されるため、ストッパの衝撃が緩和される。それにより、ストッパの変形や摩耗などの劣化が防止され、ロック機構による正確なロックの作動を維持することができる。また、本発明によれば、そうした効果を、リミットスイッチや、高圧リリーフ弁から低圧リリーフ弁に切り換えるようにした油圧回路の簡単な構成によって達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明に係るテレスコブーム装置およびクローラクレーンについて、その実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1乃至
図5は、本実施形態のテレスコブーム装置を備えたクローラクレーンを示した側面図であり、作業現場へ輸送された直後から、作業機を装着して伸縮ブームを起立させるまでの過程を段階的に示した図である。クローラクレーンの構成については、
図1を参考にして以下に説明する。
【0013】
クローラクレーン1は、クローラによる下部走行体2に対して上部旋回体3が旋回可能に設けられ、その上部旋回体3には運転室やウインチ、動力装置などが設けられている。更に、上部旋回体3にはテレスコピック型の伸縮ブーム5が前部に設けられ、
図1などに示す倒伏した状態と、
図3,
図5に示す起立した状態との間での起伏が可能になっている。一方、上部旋回体3の後部には折り畳み可能なガントリ6が設けられ、後方に折り畳んだ不図示の格納状態と、起立した山形の使用状態とに切り換えられる。
【0014】
上部旋回体3の後方にはブーム用ウインチ7があり、そこからワイヤロープ8が巻き出され、そのワイヤロープ8は、ガントリ6の立上げシーブ6aを介して前方へと送られ、更に複数設けられたガントリシーブ6bとミドルシーブ6cとの間に往復して掛け渡されている。そして、ミドルシーブ6cが、伸縮ブーム5の先端部にペンダントロープ9によって連結されている。これにより、ブーム用ウインチ7によってワイヤロープ8が巻き取られると、ペンダントロープ9を介して伸縮ブーム5が後方に引き起こされ、逆にワイヤロープ8が巻き出すことにより伸縮ブーム5が前方に倒される。
【0015】
テレスコブーム装置を構成する伸縮ブーム5は、矩形断面をした筒状の3本のブーム材がスライド可能に重ねられている(
図5参照)。最も太いロアブーム5a内に中間のミドルブーム5bが挿入され、そのミドルブーム5b内に最も細いアッパブーム5cが挿入され、2段階の伸縮が可能な構造になっている。そのため、伸縮ブーム5内には伸縮を実行する2本のブームシリンダ(油圧シリンダ)が設けられている。ここで、
図6は伸縮ブーム5の収縮状態を示した図であり、
図7は伸縮ブーム5の伸長状態を示した図である。
【0016】
一方のブームシリンダ21は、ミドルブーム5bを伸縮させるものであり、シリンダチューブ21aのロッド側端部が、ピン23を介してミドルブーム5bに軸着され、ロッド21bの先端部が、ピン24を介してロアブーム5aに軸着されている。もう一方のブームシリンダ22は、アッパブーム5cを伸縮させるものであり、シリンダチューブ22aのロッド側端部が、ピン25を介してアッパブーム5cに軸着され、ロッド22bの先端部が、ピン26を介してミドルブーム5bに軸着されている。
【0017】
伸縮ブーム5は、各々のブームシリンダ21,22が伸び、
図6に示す伸長状態になった場合には、連続する関係にあるロアブーム5aとミドルブーム5bが、そしてミドルブーム5bとアッパブーム5cが、それぞれピン結合によってロックされ、その伸長状態が維持される。伸縮ブーム5には、そのためのブームロック機構が設けられている。
図7に示すブームロック30がブームロック機構を構成するものであり、伸縮ブーム5を側面から見た4箇所にあり、各箇所にはそれぞれ幅方向に2個ずつ設けられている。
【0018】
図8は、ブームロック30を示した
図7のA−A矢視断面図であり、ロック解除状態(a)とロック状態(b)とを示している。そこで、ロアブーム5aとミドルブーム5bとの間に設けられたブームロック機構について説明するが、ミドルブーム5bとアッパブーム5cとの間に設けられたブームロック機構も同じ構成である。
【0019】
ブームロック30は、油圧シリンダ31を有し、そのピストンロッド31aにロックピン32が一体に連結されている。ブームロック30の設置位置には、ロアブーム5aやミドルブーム5bに補強プレート33が接合され、油圧シリンダ31が、取付台34を介して固定されている。その設置箇所には、補強プレート33とともにロアブーム5aを貫通したロック孔37が形成され、ロックピン32が挿入されている。また、取付台34内にはスプリング35が装填され、ロックピン32がその付勢力を受けている。
【0020】
一方、ミドルブーム5bにも、同じく所定箇所に補強プレート36が接合され、そのミドルブーム5bが伸び切ったときに、ロアブーム5aのロック孔37と重なる位置にロック孔38が形成されている。従って、ロックピン32がロック孔37とロック孔38に挿入されることにより、ロアブーム5aとミドルブーム5bがピン結合され、両者の伸長状態が維持されることになる。
【0021】
ところで、こうしたロック機構が正しく機能するためには、ミドルブーム5bが伸び切ったとき、ロック孔37,38が同じ位置に重なっていなければならない。そこで、ロアブーム5aとミドルブーム5b、更にはミドルブーム5bとアッパブーム5cとの間には、各ブーム材の伸び切った位置を定めるストッパが設けられている。
図9は、そのストッパ構造を示した図であり、伸長作動時の位置決め前の状態(a)と位置決め状態(b)とを示している。なお、
図9は、
図7に示した状態の伸縮ブーム5の上面側断面を示した図である。
【0022】
ストッパ構造は、伸縮ブーム5の伸長時に不動側となるブーム材に係止ブロック41が固定され、移動側となるブーム材には係止プレート42が接合されている。すなわち、ロアブーム5aとミドルブーム5bとの関係、或いはミドルブーム5bとアッパブーム5cとの関係では、それぞれ前者に係止ブロック41が固定され、後者に係止プレート42が接合される。係止ブロック41は、
図7に示した状態の伸縮ブーム5の上面側と下面側とに位置し、矩形断面をしたブームの四隅近傍に設けられている。こうした4箇所には、ブーム表面に補強プレート43が接合され、係止ブロック41は、その補強プレート43を貫通するようにして嵌め合わされ、ブーム内側に突き出して固定されている。一方、係止プレート42は、ブーム表面に接合され、係止ブロック41が伸縮方向に衝突する段差部42aが形成されている。
【0023】
ミドルブーム5bやアッパブーム5cが伸びた場合、係止ブロック41が係止プレート42の段差部42aに突き当たることで位置決めが行われる。そのため、
図8(b)に示すようにロックピン32を挿入させ、確実にロックを行うことができるようになる。ところが、こうした係止ブロック41と係止プレート42との衝突が繰り返されると、その突き当て面の変形や摩耗などによってズレが生じてしまい、位置決めに狂いが生じるおそれがある。そこで本実施形態では、正確な位置決めに影響が生じないようにするため、衝突する係止ブロック41と係止プレート42との衝撃を緩和させる構成がとられている。
【0024】
具体的には、ミドルブーム5bやアッパブーム5cが伸び切る直前の位置、つまり係止ブロック41と係止プレート42とが衝突する手前の位置を検出し、ブームシリンダ21,22へ送り込む作動油の供給圧を減圧させるようにしたものである。
図10は、その検出手段を示した
図7のB−B矢視断面図であり、非検出時(a)と検出時(b)とを示している。本実施形態では、検出手段にリミットスイッチ45が使用されている。
【0025】
リミットスイッチ45は、伸縮ブーム5の伸長時に、不動側となるブーム材に固定されている。そして、移動側となるブーム材には検出プレート46が接合されている。すなわち、ロアブーム5aとミドルブーム5bとの関係、或いはミドルブーム5bとアッパブーム5cとの関係では、それぞれ
後者にリミットスイッチが固定され、
前者に検出プレート46が接合されている。不動側のロアブーム5aやミドルブーム5bには検出窓47が開設され、そこからリミットスイッチ45のレバー45aが内側に延びている。検出プレート46は、ブームの伸長方向側にテーパ46aが形成されたものであり、レバー45a先端部のローラ45bがその上を転がり、リミットスイッチ45の接点がON状態になる。
【0026】
本実施形態のテレスコブーム装置では、このリミットスイッチ45の検出信号に基づいて作動油の供給圧を減圧させる油圧回路が設けられている。
図11は、そうしたテレスコブーム装置を構成する油圧回路を示した図である。
【0027】
ブームシリンダ21,22は、それぞれのヘッド側油室同士が配管51によって接続され、ロッド側油室同士が配管52によって接続されている。そして配管52には、流路の連通と、一対の逆止弁で作動油の流れを止めるようにした状態を切り換える、電磁操作式の切換弁53が設けられている。こうして直列に接続されたブームシリンダ21,22は、油圧ポンプ55やオイルタンク56側に配管57,58によって接続され、ヘッド側油室に接続された配管57にはシーケンス弁59が設けられている。シーケンス弁59は、逆止弁60を備え、配管58の圧力によって開弁するよう構成されたものである。
【0028】
配管57,58は、油圧ポンプ55とオイルタンク56との間に低圧リリーフ切換弁61とブーム伸縮切換弁62が接続されている。低圧リリーフ切換弁61とブーム伸縮切換弁62は、いずれも油圧パイロット操作の6ポート3位置方向制御弁であり、各々にはパイロット圧を切り換えるための低圧リリーフ操作弁63やブーム伸縮操作弁64が設けられている。低圧リリーフ操作弁63は、電磁操作式の4ポート2位置方向制御弁であり、ブーム伸縮操作弁64は、電磁操作式の4ポート3位置方向制御弁である。
【0029】
油圧ポンプ55には供給管65が接続され、オイルタンク56には排出管66が接続されている。供給管65は、低圧リリーフ切換弁61およびブーム伸縮切換弁62のスルーポートを介して接続され、二次側において排出管66に接続されている。こうして排出管66は、低圧リリーフ切換弁61およびブーム伸縮切換弁62を跨いで供給管65に接続された排出部66aを有し、そこには高圧リリーフ弁67が設けられている。
【0030】
排出部66aにも、低圧リリーフ切換弁61の3つのポートが接続されており、Rポートは直接接続され、反対側にある一つのAポートは低圧リリーフ弁68を介して、また他のBポートは仕切弁69を介してそれぞれ接続されている。高圧リリーフ弁67と低圧リリーフ弁68は、ブームシリンダ21,22に供給する作動油の圧力を調整する圧力制御弁であり、特に低圧リリーフ68は、ミドルブーム5bやアッパブーム5cが伸び切る直前で作動油を減圧さるためのものである。
【0031】
残る低圧リリーフ切換弁61のPポートは、供給管65に接続されている。供給管65は、低圧リリーフ切換弁61の一次側で分岐し、その分岐管65aがブーム伸縮切換弁62のPポートに逆止弁71を介して接続されている。ブーム伸縮切換弁62は、Rポートが排出管66の排出部66aに接続され、反対側のAポートが配管57に接続され、Bポートが配管58に接続されている。そして、低圧リリーフ切換弁61やブーム伸縮切換弁62には、その切り換えを行うためのパイロット圧を制御する低圧リリーフ操作弁63やブーム伸縮操作弁64が接続されている。
【0032】
低圧リリーフ操作弁63とブーム伸縮操作弁64は、各々のPポートが油圧ポンプ73の供給管75に接続され、更に各々のRポートがオイルタンク74の排出管76に接続されている。また、低圧リリーフ操作弁63は、図示する初期位置においてPポートに連通するAポート側が封止されており、Rポートに連通するBポートは、配管77を介して低圧リリーフ切換弁61のC1パイロットポートに接続されている。そして、低圧リリーフ切換弁61の他方のC2パイロットポートは、配管78を介して排出管76に接続されている。ブーム伸縮操作弁64は、図示する初期位置では、Aポートが配管79を介してブーム伸縮切換弁62のC1パイロットポートが接続されており、Bポートは配管70を介してC2パイロットポートに接続されている。
【0033】
このような油圧回路を備えたテレスコブーム装置は、クローラクレーン1の伸縮ブーム5として、またその伸縮ブーム5の伸縮を制御するものとして搭載され、運転席内に設けられたブーム伸縮レバーによって操作される。特に本実施形態では、伸張時にリミットスイッチ45の検出信号によって低圧リリーフ操作弁63が切り換えられ、作動油の減圧が行われる。そこで次に、
図1から
図5に示すクローラクレーン1の作業準備について、テレスコブーム装置の作用とともに説明する。
【0034】
クローラクレーン1は、
図1に示すように、伸縮ブーム5を倒した状態で輸送トラックに搭載され、施工現場まで輸送される。輸送トラックから降ろされたクローラクレーン1は、フロントフレーム10の先端に枕木を配置するなどして、倒れた状態の伸縮ブーム5が水平になるように支えられる。また、輸送時には折り畳まれていたガントリ6は、三角形状に立てられる。
【0035】
次に、
図2に示すように、伸縮ブーム5のミドルブーム5bが伸ばされ、ブーム用ウインチ7からはワイヤロープ8が巻き出される。このときミドルブーム5bが伸び切る直前でリミットスイッチ45の検出信号が入り、ミドルブーム5bを伸張させるブームシリンダ21へ供給する作動油が減圧される。そして、ストッパ構造によって設定されたミドルブーム5bの伸び切った位置で伸びが停止し、ブームロック機構によりロアブーム5aとミドルブーム5bとの伸張状態が維持される。
【0036】
具体的には、
図10(a)〜(b)に示すように、ミドルブーム5bが図面右側に移動し、伸び切る直前で検出プレート46の上にローラ45bがテーパ46aから乗り上げ、レバー45aが揺動する。そして、リミットスイッチ45の接点がON状態になり、その検出信号によって低圧リリーフ操作弁63が切り換えられ、ブームシリンダ21へ供給する作動油が減圧される。なお、油圧回路の作用については後述する。
【0037】
作動油が減圧した状態でブームシリンダ21が伸ばされ、
図9(a)〜(b)に示すように、ミドルブーム5bが図面右側に移動し、係止プレート42の段差部42aが、ロアブーム5a側の係止ブロック41に衝突して停止する。こうして伸び切ったミドルブーム5bは、次に、
図8(a)〜(b)に示すようにして、ロアブーム5aとの間にロックピン32が差し込まれる。すなわち、運転室内にある操作スイッチにより、不図示の電磁操作式の切換弁が切り換えられ、作動油が油圧シリンダ31のヘッド側油室へ供給され、ピストンロッド31aが伸びてミドルブーム5bのロック孔38にロックピン32が挿入される。その後、作動油の供給が止められたとしても、スプリング35によってロック状態が維持される。
【0038】
クローラクレーン1は、ミドルブーム5bが
図2に示すように伸びた後は、ワイヤロープ8がブーム用ウインチ7によって巻き取られ、ペンダントロープ9が引っ張られて伸縮ブーム5が引き起こされる。伸縮ブーム5が
図3に示す所定の角度にまで引き起こされたところで、モーメントリミッタが使用できる状態になり、クローラクレーン1による作業が可能になる。クローラクレーン1は、作業用ウインチ11から巻き出されたワイヤロープ12が、伸縮ブーム5のトップシーブ13を介して前方に送り出され、ワイヤロープ12の先端には作業用フック14が取り付けられている。
【0039】
そこで、
図4に示すカウンタウエイト15やケリードライブ16は、クローラクレーン1と一緒に輸送トラックに載せられてきているため、作業用フック14に引っ掛けられ、吊り下げ搬送して所定の位置に降ろされる。カウンタウエイト15は、上部旋回体3の後端部に載せられ、ケリードライブ16がフレーム10に取り付けられる。ケリードライブ16の取り付けのためには、ブーム用ウインチ7からワイヤロープ8が巻き出され、伸縮ブーム5が一旦倒される。
【0040】
そして、ケリードライブ16が取り付けられた後、再び伸縮ブーム5が起こされ、
図5に示すようにアッパブーム5cが伸ばされる。このときも、伸び切る直前でリミットスイッチ45の検出信号に基づいて、ブームシリンダ22へ供給する作動油が減圧される。
図9(a)〜(b)に示すように、係止プレート42の段差部42aが係止ブロック41に衝突して停止し、伸び切ったアッパブーム5cは、
図8(a)〜(b)に示すようにして、ミドルブーム5bとの間にロックピン32が差し込まれる。クローラクレーン1は、このようにして伸縮ブーム5を伸ばし、その後の作業が可能になる。
【0041】
続いて、
図11に示す油圧回路の作用について説明する。クローラクレーン1では、運転席にあるブーム伸縮レバーの第1伸長操作により、ブーム伸縮操作弁64に対する通電によって弁の切り換えが行われる。ブーム伸縮操作弁64は、図示する初期位置から位置aのポートに切り換わり、油圧ポンプ73から供給管75へ送られた作動油が配管70を通って送られ、ブーム伸縮切換弁62のC2パイロットポートにパイロット圧が作用する。ブーム伸縮切換弁62は、パイロット圧によって図示する初期位置から位置aのポートに切り換えられる。
【0042】
油圧ポンプ55から供給管65に送られた作動油は、低圧リリーフ切換弁61とブーム伸縮切換弁62を通り、排出管66からオイルタンク56に戻って循環している。そこで、前述したようにブーム伸縮切換弁62が切り換われば、作動油は分岐管65aから配管57へと送られ、逆止弁60を通ってブームシリンダ21のヘッド側油室に送り込まれる。ブームシリンダ21のヘッド側油室は、配管51によってブームシリンダ22にも連通しているが、戻り側の配管52では切換弁53によって作動油が流れないため、ブームシリンダ22は作動しない。これによりブームシリンダ21だけが伸び、ミドルブーム5bが
図2に示す伸長状態になる。
【0043】
そしてこのとき、ミドルブーム5bが伸びきる直前でリミットスイッチ45がON状態になる。その検出信号に従って低圧リリーフ操作弁63が通電され、a位置からb位置切り換えられ、油圧ポンプ73からの作動油が、配管77を通って低圧リリーフ切換弁61のC1パイロットポートに送られる。低圧リリーフ切換弁61は、パイロット圧によって図示する初期位置から位置bのポートに切り換わり、リリーフ圧が、それまでの高圧リリーフ弁67から低圧リリーフ弁68の設定値に切り換わる。
【0044】
従って、低圧の設定値を超えると、作動油が低圧リリーフ切換弁61を介して低圧リリーフ弁68へと排出されるため、ブームシリンダ21へ送られる作動油が減圧される。そして、ミドルブーム5bが伸び切り、ロックピン32が入ると、低圧リリーフ操作弁63が遮断されるため、パイロット圧が解除された低圧リリーフ切換弁61が初期状態に切り換わる。
【0045】
また、ロックピン32が入ると、切換え弁53が通電され、その切り換えによって流路が連通し、配管52の流れが可能になる。そこで、ブームシリンダ22は、配管51を介してヘッド側油室に作動油が供給され、ロッド側油室から作動油が排出される。
【0046】
これによりブームシリンダ22が伸び、アッパブーム5cが
図5に示す伸長状態になる。そして、このときも前述したと同様に、アッパブーム5cが伸び切る直前で供給する作動油が減圧される。低圧リリーフ切換弁61は、ブーム伸レバーを入れて、リミットスイッチ45がONの時のみ切り換わる。
【0047】
一方、伸縮ブーム5を収縮させる場合は、ブーム伸縮レバーの収縮操作により、ブーム伸縮操作弁64が通電され、図示する初期位置から位置bのポートに切り換わる。油圧ポンプ73から送られ作動油は、配管79を通ってブーム伸縮切換弁62のC1パイロットポートに送られる。ブーム伸縮切換弁62は、パイロット圧により図示する初期位置から位置bのポートに切り換わるため、油圧ポンプ55からの作動油は、分岐管65aから配管58へ流れ、ブームシリンダ21のロッド側油室に送り込まれる。
【0048】
このとき、配管58に作用する圧力によってシーケンス弁59が開き切換弁53に通電されているため、作動油はブームシリンダ21を通り抜け、ブームシリンダ22のロッド側油室に供給されるとともにヘッド側油室からは作動油が排出され、ブームシリンダ22が収縮する。こうしてアッパブーム5cが収縮し、さらにミドルブーム5bを収縮させるには、ミドルブーム5bとロアブーム5aを止めているロックピン32を外し、切換弁53の通電が遮断され、その切り換えによって配管52内の作動油の流れが止められる。ブームシリンダ22側には作動油が送られず、ブームシリンダ21のロッド側油室に作動油が供給される一方、ヘッド側油室からは作動油が排出され、ブームシリンダ21が収縮作動する。こうしてミドルブーム5bも収縮する。
【0049】
よって、このような本実施形態のテレスコブーム装置およびクローラクレーン1によれば、ミドルブーム5bやアッパブーム5cが伸び切る直前でブームシリンダ21,22に供給される作動油が減圧されるため、係止プレート42の段差部42aと係止ブロック41との衝撃が緩和される。それにより、係止ブロック41や係止プレート42の変形や摩耗などの劣化が防止され、ブームロック30による正確なロックの作動を維持することができる。また、そうした効果を、高圧リリーフ弁67から低圧リリーフ弁68に切り換える簡単な構成によって達成している。
【0050】
以上、本発明のテレスコブーム装置およびクローラクレーンについて実施形態を説明したが、本発明はこれに限定することなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、伸縮ブーム5を3本のブーム材によって構成したものを示したが、ブーム材は2本でも或いは4本であってもよい。
また、
図11に示す油圧回路は例示であって、異なる弁を使用して異なる回路を構成したものであってもよい。