特許第6279285号(P6279285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6279285
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20180205BHJP
【FI】
   G03G9/08 381
   G03G9/08 331
【請求項の数】3
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-217311(P2013-217311)
(22)【出願日】2013年10月18日
(65)【公開番号】特開2014-112207(P2014-112207A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2016年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-242041(P2012-242041)
(32)【優先日】2012年11月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】芦沢 健
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 省伍
【審査官】 倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−315783(JP,A)
【文献】 特開2010−060847(JP,A)
【文献】 特開2006−285150(JP,A)
【文献】 特開2006−091278(JP,A)
【文献】 特開2009−162957(JP,A)
【文献】 特開2009−134007(JP,A)
【文献】 特開2008−250171(JP,A)
【文献】 特開2009−230064(JP,A)
【文献】 特開2010−271583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
工程1:非晶質ポリエステルと、数平均分子量が80,000以上の結晶性ポリ乳酸を140〜250℃で混合する工程、
工程2:工程1で得られた混合物を溶融混練する工程、及び
工程3:工程2で得られた溶融混練物を粉砕し、分級する工程
を含み、前記工程1が、
工程1−1:非晶質ポリエステルを溶融させる工程、及び
工程1−2:溶融した非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を140〜250℃で混合する工程
を含み、トナー中の結晶性ポリ乳酸の含有量が、工程1で用いた非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸の合計量中3.0質量%以上である、静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項2】
工程1で用いる非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸の質量比(非晶質ポリエステル/結晶性ポリ乳酸)が、95/5〜50/50である、請求項1記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項3】
工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の数平均分子量が、80,000以上300,000以下である、請求項1又は2記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のプリント・オン・デマンド市場が成長しているなか、電子写真技術に対する高信頼性への要求はますます高まりつつある。特に、電子写真方式にて用いられるトナーには、耐久性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性等をより向上することが要望されている。
【0003】
一方で、電子写真方式用現像剤であるトナーには環境負荷低減を目的に植物由来原料であるポリ乳酸の使用の検討が行われている。
【0004】
例えば、低温定着性及び光沢性に優れたトナーを得る目的で、リグニン系化合物とポリ乳酸とを溶融させて混合することによって、該リグニン系化合物と該ポリ乳酸との間でエステル交換反応を生じさせ、反応生成物を結着樹脂として得る溶融混合工程を含む、トナーの製造方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、ポリ乳酸からなる結着樹脂及び着色剤を含有する原料混合物を、複数回、混練処理した電子写真用トナーが、製造時及び廃棄時における環境負荷が低いことが開示されている(特許文献2参照)。
【0006】
さらに、ポリα−ヒドロキシカルボン酸からなる分解性ポリエステル樹脂とそれ以外のポリエステル系樹脂を含有してなる樹脂をバインダー樹脂として用いることを特徴とする電子写真トナーが、良好な脱墨性、白色度を示し、ワックス分散性、定着性、粉砕性、耐ホットオフセット性、保存性が良好で、電子写真トナーとして優れた性能を有していることが開示されている(特許文献3、4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−141490号公報
【特許文献2】特開2009−230064号公報
【特許文献3】特開2003−323002号公報
【特許文献4】特開2002−55491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1〜4等の従来の技術では、耐久性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性がいまだ不十分である。
【0009】
本発明は、耐久性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性に優れる静電荷像現像用トナー及びその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
〔1〕 少なくとも非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
工程1:非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を140〜250℃で混合する工程、
工程2:工程1で得られた混合物を溶融混練する工程、及び
工程3:工程2で得られた溶融混練物を粉砕し、分級する工程
を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載の製造方法により得られる、静電荷像現像用トナー。
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法により得られる静電荷像現像用トナーは、耐久性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の方法は、少なくとも非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であり、非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を特定の温度で混合する工程(工程1)を含むことに特徴を有し、この方法により得られた静電荷像現像用トナーは、耐久性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性に優れるという効果を奏する。
【0013】
このような効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。結晶性ポリ乳酸は結晶性が非常に高く、非晶質ポリエステルと相溶しない。そのため、溶融混練しても、非晶質ポリエステル中に結晶性ポリ乳酸が分散せず、分離したままであり、トナー化することができない。しかし、予め、結晶性ポリ乳酸と非晶質ポリエステルを特定の温度にて混合すると、結晶性ポリ乳酸の一部が非晶質となり、この結晶性ポリ乳酸の非晶質化した部分が非晶質ポリエステルと相溶することができる。この混合物を溶融混練することにより、結晶性ポリ乳酸と非晶質ポリエステルが分離することなく、結晶性ポリ乳酸が非晶質ポリエステル中に分散したトナーを得ることができる。また、得られたトナーは結晶性の高い結晶性ポリ乳酸が非晶質ポリエステル中に分散しているため、耐久性、耐熱保存性及び耐高温オフセット性に優れると考えられる。
【0014】
本発明の方法は、以下の工程1〜3を含むものである。
工程1:非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を140〜250℃で混合する工程
工程2:工程1で得られた混合物を溶融混練する工程
工程3:工程2で得られた溶融混練物を粉砕し、分級する工程
【0015】
工程1において、非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を所定の温度で混合することにより、結晶性ポリ乳酸の一部が非晶質化し、非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸との相溶が可能になる。
【0016】
[非晶質ポリエステル]
本発明において、ポリエステルの結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。非晶質ポリエステルは、結晶性指数が1.4を超えるか、0.6未満であるポリエステルをいう。ポリエステルの結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度は、軟化点との差が20℃以内であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超える場合はガラス転移に起因するピークとする。
【0017】
非晶質ポリエステルは、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られる。
【0018】
アルコール成分としては、脂肪族ジオール、脂環式ジオール、芳香族ジオール等が挙げられ、トナーの耐高温オフセット性、耐久性、耐熱保存性及び低温定着性を向上させる観点から、脂肪族ジオール及び芳香族ジオールが好ましい。さらに、トナーの低温定着性を向上させ、カブリを抑制する観点から、脂肪族ジオールが好ましく、また、トナーの耐高温オフセット性、耐久性、耐熱保存性を向上させる観点から、芳香族ジオールが好ましい。
【0019】
脂肪族ジオールの炭素数は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、2以上が好ましく、3以上がより好ましい。また、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させ、カブリを抑制する観点から、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましく、4以下がさらに好ましい。
【0020】
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,4-ブテンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
【0021】
これらの中では、トナーの耐熱保存性及び低温定着性を向上させる観点から、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールが好ましい。かかる脂肪族ジオールの炭素数は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、3以上が好ましい。また、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させ、カブリを抑制する観点から、6以下が好ましく、4以下がより好ましい。具体的な好適例としては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール等が挙げられ、トナーの耐久性、耐熱保存性及び低温定着性を向上させ、カブリを抑制する観点から、1,2-プロパンジオール及び2,3-ブタンジオールが好ましく、1,2-プロパンジオールがより好ましい。
【0022】
脂肪族ジオールの含有量は、トナーの低温定着性を向上させ、カブリを抑制する観点から、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%である。第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量は、トナーの耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%である。
【0023】
芳香族ジオールとしては、式(I):
【0024】
【化1】
【0025】
(式中、RO及びORはオキシアルキレン基であり、Rはエチレン及び/又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の平均値は1〜16が好ましく、1〜8がより好ましく、1.5〜4がさらに好ましい)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0026】
芳香族ジオールの含有量は、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%である。
【0027】
他のアルコール成分としては、グリセリン等の3価以上のアルコール等が挙げられる。
【0028】
カルボン酸成分は、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、芳香族ジカルボン酸化合物を含有することが好ましい。
【0029】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜6)エステル等が挙げられる。なお、カルボン酸化合物とは、ジカルボン酸、カルボン酸と炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3のアルコールとのエステル及び酸無水物を指すが、これらの中では、ジカルボン酸が好ましい。
【0030】
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、85モル%以上がさらに好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。
【0031】
また、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、3価以上のカルボン酸化合物を含有していることが好ましい。
【0032】
3価以上のカルボン酸化合物としては、例えば、炭素数4〜30、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは炭素数4〜10の3価以上のカルボン酸、及びそれらの酸無水物、炭素数1〜6のアルキルエステル等が挙げられる。なお、カルボン酸化合物の炭素数にはアルキルエステルのアルキル基の炭素数は含まない。
具体的には、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸(ピロメリット酸)等が挙げられ、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)及びその酸無水物が好ましく、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸の無水物(無水トリメリット酸)がより好ましい。
【0033】
3価以上のカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性を向上させる観点から、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましい。
【0034】
他のカルボン酸成分としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;未精製ロジン、精製ロジン等のロジン;フマル酸、マレイン酸又はアクリル酸等で変性されたロジン、これらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜6)エステル等が挙げられる。
【0035】
なお、アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、ポリエステルの軟化点を調整する観点から、適宜含有されていてもよい。
【0036】
非晶質ポリエステルにおけるカルボン酸成分とアルコール成分との当量比(COOH基/OH基)は、ポリエステルの酸価を低減する観点から、0.70〜1.15が好ましく、0.80〜1.00がより好ましい。
【0037】
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、180〜250℃程度の温度で縮重合させて製造することができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
【0038】
非晶質ポリエステルの軟化点は、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましい。
【0039】
非晶質ポリエステルの軟化点は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
【0040】
非晶質ポリエステルの吸熱の最高ピーク温度は、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下がさらに好ましい。
【0041】
非晶質ポリエステルの吸熱の最高ピーク温度は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比等によって制御することができる。
【0042】
非晶質ポリエステルのガラス転移温度は、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下がさらに好ましい。
【0043】
非晶質ポリエステルのガラス転移温度は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比等によって制御することができる。
【0044】
非晶質ポリエステルの酸価は、トナーの耐高温オフセット性、耐熱保存性及び耐久性を向上させる観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましく、15mgKOH/g以下がさらに好ましい。また、非晶質ポリエステルの生産性を向上させる観点、トナーの低温定着性を向上させる観点から、1mgKOH/g以上が好ましく、2mgKOH/g以上がより好ましく、3mgKOH/g以上がさらに好ましい。
【0045】
非晶質ポリエステルの酸価は、アルコール成分やカルボン酸成分の種類や組成比、触媒量等の調整、反応温度や反応時間、反応圧力等の反応条件の選択によって制御することができる。
【0046】
本発明では、非晶質ポリエステルを2種以上用いてもよい。
【0047】
なお、本発明において、ポリエステルは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとしては、例えば、特開平11−133668号公報、特開平10−239903号公報、特開平8−20636号公報等に記載の方法によりフェノール、ウレタン、エポキシ等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0048】
[結晶性ポリ乳酸]
本発明において、工程1で用いるポリ乳酸の結晶性は、結晶化度で表される。結晶化度は、実施例に記載の方法により求めることができる。
工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の結晶化度は、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上がさらに好ましい。
【0049】
結晶性ポリ乳酸は、乳酸のホモポリマーであっても、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸とのコポリマーであってもよい。
【0050】
結晶性ポリ乳酸のモノマーである乳酸は、L−乳酸、D−乳酸のいずれであってもよい。
【0051】
他のヒドロキシカルボン酸としては、炭素数3〜8のヒドロキシカルボン酸が挙げられ、具体的には、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられる。
【0052】
本発明では、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、結晶性ポリ乳酸を構成するモノマー中の乳酸の含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%である。従って、結晶性ポリ乳酸は、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸とのコポリマーよりも、乳酸のホモポリマーであることが好ましい。
【0053】
結晶性ポリ乳酸は、乳酸の縮重合、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸との縮重合により、常法に従って製造することができるが、本発明では、市販されている結晶性ポリ乳酸、例えば、「N-3000」(ガラス転移温度:63℃)、「N-4000」(ガラス転移温度:61℃)(以上、乳酸のホモポリマー、Nature Works社製)を使用することもできる。
【0054】
工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の数平均分子量は、トナーに結晶性ポリ乳酸を含有させる観点、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、25,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましく、100,000以上がさらに好ましく、150,000以上がさらに好ましく、180,000以上がさらに好ましい。また、溶融混練することが可能となりトナーを得ることができる観点、トナーの耐高温オフセット性、耐久性、耐熱保存性及び低温定着性を向上させる観点から、300,000以下が好ましく、250,000以下がより好ましく、200,000以下がさらに好ましい。
【0055】
工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の重量平均分子量は、トナーに結晶性ポリ乳酸を含有させる観点、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、30,000以上が好ましく、100,000以上がより好ましく、250,000以上がさらに好ましく、400,000以上がさらに好ましく、450,000以上がさらに好ましい。また、溶融混練することが可能となりトナーを得ることができる観点、トナーの耐高温オフセット性、耐久性、耐熱保存性及び低温定着性を向上させる観点から、700,000以下が好ましく、550,000以下がより好ましく、500,000以下がさらに好ましい。
【0056】
結晶性ポリ乳酸の数平均分子量及び重量平均分子量は、製造時の縮重合反応の時間等、重合条件の調整だけでなく、既存の結晶性ポリ乳酸を高温高湿環境下で、静置することにより調整することができる。高温高湿下で静置する場合、時間を長くするほど、平均分子量は小さくなる。
【0057】
静置する温度としては、数平均分子量及び重量平均分子量の調整を容易にする観点から、ポリ乳酸のガラス転移温度以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましく、また、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。また、静置する湿度は、数平均分子量及び重量平均分子量の調整を容易にする観点から、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上がさらに好ましい。
【0058】
工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の融点は、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、155℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性を向上させる観点から、180℃以下が好ましく、175℃以下がより好ましい。
【0059】
工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の量は、トナーの耐高温オフセット性を向上させる観点から、結晶性ポリ乳酸と非晶質ポリエステルの合計質量部(合計量)中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。
【0060】
また、工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の量は、トナーの耐熱保存性を向上させる観点からは、結晶性ポリ乳酸と非晶質ポリエステルの合計量中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。
【0061】
また、工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の量は、トナーの耐久性を向上させる観点からは、結晶性ポリ乳酸と非晶質ポリエステルの合計量中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい。
【0062】
一方、非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を所定の温度で混合することにより、結晶性ポリ乳酸の一部が非晶質化するが、本発明では、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、得られるトナー中に結晶性ポリ乳酸が維持されていることが好ましい。トナー中に結晶性ポリ乳酸が維持されているか否かについては、得られるトナーの結晶融解ピークから結晶性ポリ乳酸の存在を確認することができる。また、その結晶融解ピークより求められる吸熱量から結晶性ポリ乳酸の含有量と残存率を見積もることができ、これらは実施例に記載の方法により求めることができる。トナー中の結晶性ポリ乳酸の含有量は、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、工程1で用いた結晶性ポリ乳酸と非晶質ポリエステルの合計量中、3.0質量%以上が好ましく、4.0質量%以上がより好ましく、4.5質量%以上がさらに好ましく、5.5質量%以上がさらに好ましく、9.5質量%以上がさらに好ましい。また、トナー中に結晶性ポリ乳酸を均一に混合させる観点、及びトナーの耐久性を向上させる観点から、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0063】
トナー中の結晶性ポリ乳酸の残存率は、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点、トナーの生産性を向上させる観点から、工程1で用いた結晶性ポリ乳酸に対し、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましく、30%以上がさらに好ましく、40%以上がさらに好ましく、60%以上がさらに好ましく、70%以上がさらに好ましい。
【0064】
工程1で用いる非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸の質量比(非晶質ポリエステル/結晶性ポリ乳酸)は、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、95/5〜50/50が好ましく、90/10〜50/50がより好ましく、85/15〜55/45がさらに好ましく、80/20〜55/45がさらに好ましく、75/25〜55/45がさらに好ましい。
【0065】
工程1において、非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を混合する温度は、溶融混練することが可能となりトナーを得ることができる観点、トナーの生産性を向上させる観点及びトナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、140℃以上であり、150℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、190℃以上がさらに好ましい。また、トナーに結晶性ポリ乳酸を含有させる観点及びトナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、250℃以下であり、230℃以下が好ましく、210℃以下がより好ましい。
【0066】
工程1における混合時間は、混合温度に依存するため、一概には決定できないが、溶融混練することが可能となりトナーを得ることができる観点、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、0.1時間以上が好ましく、0.3時間以上がより好ましい。また、トナーに結晶性ポリ乳酸を含有させる観点、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点及びトナーの生産性を向上させる観点から、15時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、7時間以下がさらに好ましく、5時間以下がさらに好ましく、3時間以下がさらに好ましく、2時間以下がさらに好ましく、1.5時間以下がさらに好ましい。
【0067】
混合方法は、
(A) 非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を混合し、加熱して溶融させる方法、
(B) 予め非晶質ポリエステルを加熱して溶融させ、結晶性ポリ乳酸と混合する方法、及び
(C) 予め結晶性ポリ乳酸を加熱して溶融させ、非晶質ポリエステルと混合する方法
のいずれであってもよいが、トナーに結晶性ポリ乳酸を含有させる観点、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、(B)の方法が好ましい。従って、工程1は下記の工程1−1及び工程1−2を含むことが好ましい。
工程1−1:非晶質ポリエステルを溶融させる工程
工程1−2:溶融した非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を140〜250℃で混合する工程
【0068】
工程1で得られた混合物は、冷却して、0.01〜2mm程度の粒径に粉砕した後に、続く工程2に供することが好ましい。
【0069】
工程2では、工程1で得られた混合物を溶融混練する。
【0070】
混合物は、着色剤、荷電制御剤、離型剤等のトナー材料とともに溶融混練することが好ましい。
【0071】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、イソインドリン、ジスアゾエロー等を用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤としては、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、フタロシアニンブルー15:3が好ましい。
【0072】
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの印字濃度を向上させる観点から、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性及び耐熱保存性を向上させる観点から、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0073】
荷電制御剤としては、負帯電性荷電制御剤、正帯電性荷電制御剤のいずれも用いることができる。
【0074】
負帯電性荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、銅フタロシアニン染料、サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体、ニトロイミダゾール誘導体、ベンジル酸ホウ素錯体等が挙げられる。含金属アゾ染料としては、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-28」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリヱント化学工業社製)、「T-77」、「アイゼンスピロンブラックTRH」(以上、保土谷化学工業社製)等が挙げられる。サリチル酸のアルキル誘導体の金属錯体としては、例えば「ボントロンE-81」、「ボントロンE-82」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-85」、「ボントロンE-304」(以上、オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。ベンジル酸ホウ素錯体としては、例えば、「LR-147」(日本カーリット社製)等が挙げられる。
【0075】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。ニグロシン染料としては、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。トリフェニルメタン系染料としては、例えば3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料が挙げられる。4級アンモニウム塩化合物としては、例えば「ボントロンP-51」、「ボントロンP-52」(以上、オリヱント化学工業社製)、「TP-415」(保土谷化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PXVP435」「COPY CHARGE PSY」(以上、クラリアント社製)等が挙げられる。ポリアミン樹脂としては、例えば「AFP-B」(オリヱント化学工業社製)等が挙げられる。イミダゾール誘導体としては、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等が挙げられる。
【0076】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、0.5質量部以上がより好ましく、また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
【0077】
離型剤としては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、合成エステルワックス、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いられていてもよい。
【0078】
離型剤の融点は、トナーの耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性を向上させる観点から、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、70℃以上がさらに好ましい。そして、トナーの低温定着性及びグロスを向上させる観点から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましく、80℃以下がさらに好ましい。
【0079】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの耐高温オフセット性及び低温定着性を向上させる観点から、0.5質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、2.0質量部以上がさらに好ましい。トナーの耐熱保存性及び耐久性を向上させる観点から、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0080】
本発明では、さらに、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤を適宜使用してもよい。
【0081】
溶融混練には、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等の公知の混練機を用いて行うことができる。溶融混練時の温度を低減し、トナーの耐高温オフセット性、耐久性、耐熱保存性及び低温定着性を向上させる観点、及び混練の繰り返しや分散助剤の使用をしなくても、トナー中に着色剤、荷電制御剤、離型剤等の添加剤を効率よく高分散させることができる観点から、オープンロール型混練機を用いることが好ましく、該オープンロール型混練機には、ロールの軸方向に沿って供給口と混練物排出口が設けられていることが好ましい。
【0082】
混合物、着色剤、荷電制御剤、離型剤等のトナー成分は、あらかじめヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機で混合した後、混練機に供給することが好ましい。
【0083】
混合物をオープンロール型混練機に供する際には、1箇所の供給口から混練機に供給してもよく、複数の供給口から分割して混練機に供給してもよいが、操作の簡便性及び装置の簡略化の観点からは、1箇所の供給口から混練機に供給することが好ましい。
【0084】
オープンロール型混練機とは、混練部が密閉されておらず開放されているものをいい、混練の際に発生する混練熱を容易に放熱することができる。また、連続式オープンロール型混練機は、少なくとも2本のロールを備えた混練機であることが好ましく、本発明に用いられる連続式オープンロール型混練機は、周速度の異なる2本のロール、即ち、周速度の高い高回転側ロールと周速度の低い低回転側ロールとの2本のロールを備えた混練機である。本発明においては、着色剤、荷電制御剤、離型剤等の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及び溶融混練時の温度を低減し、トナーの耐高温オフセット性、耐久性、耐熱保存性及び低温定着性を向上させる観点から、高回転側ロールは加熱ロール、低回転側ロールは冷却ロールであることが好ましい。
【0085】
ロールの温度は、例えば、ロール内部に通す熱媒体の温度により調整することができ、各ロールには、ロール内部を2以上に分割して温度の異なる熱媒体を通じてもよい。
【0086】
高回転側ロールの原料投入側端部温度は、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐高温オフセット性、耐久性、耐熱保存性及び低温定着性を向上させる観点から、100℃以上、160℃以下が好ましく、同様の観点から、低回転側ロールの原料投入側端部温度は30℃以上、100℃以下が好ましい。
【0087】
高回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、混練物のロールからの脱離防止の観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐高温オフセット性、耐久性、耐熱保存性及び低温定着性を向上させる観点から、20℃以上であることが好ましく、30℃以上がより好ましい。そして、60℃以下であることが好ましく、50℃以下がより好ましい。
【0088】
低回転側ロールは、原料投入側端部と混練物排出側端部の設定温度の差が、着色剤、荷電制御剤、離型剤等の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐高温オフセット性、耐久性、耐熱保存性及び低温定着性を向上させる観点から、50℃以下であることが好ましい。
【0089】
高回転側ロールの周速度は、着色剤、荷電制御剤、離型剤等の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐高温オフセット性、耐久性、耐熱保存性及び低温定着性を向上させる観点から、2m/min以上であることが好ましく、10m/min以上がより好ましく、25m/min以上がさらに好ましく、100m/min以下であることが好ましく、75m/min以下がより好ましく、50m/min以下がさらに好ましい。
【0090】
低回転側ロールの周速度は、同様の観点から、1m/min以上が好ましく、5m/min以上がより好ましく、15m/min以上がさらに好ましい。そして、90m/min以下が好ましく、60m/min以下がより好ましく、30m/min以下がさらに好ましい。また、2本のロールの周速度の比(低回転側ロール/高回転側ロール)は、1/10〜9/10が好ましく、3/10〜8/10がより好ましい。
【0091】
ロールの構造、大きさ、材料等は特に限定されず、ロール表面も、平滑、波型、凸凹型等のいずれであってもよいが、混練シェアを高め、着色剤、荷電制御剤、離型剤等の添加剤のトナー中での分散性を向上させる観点、溶融混練時の機械力を低減し、発熱を抑制する観点、及びトナーの耐高温オフセット性、耐久性、耐熱保存性及び低温定着性を向上させる観点から、各ロールの表面には複数の螺旋状の溝が刻んであることが好ましい。
【0092】
工程2で得られた溶融混練物を、粉砕が可能な程度に冷却した後、続く工程3に供する。
【0093】
工程3では、工程2で得られた溶融混練物を粉砕し、分級する。
【0094】
粉砕工程は、多段階に分けて行ってもよい。例えば、樹脂混練物を、1〜5mm程度に粗粉砕した後、さらに所望の粒径に微粉砕してもよい。
【0095】
粉砕工程に用いられる粉砕機は特に限定されないが、例えば、粗粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、ハンマーミル、アトマイザー、ロートプレックス等が挙げられる。また、微粉砕に好適に用いられる粉砕機としては、流動層式ジェットミル、衝突板式ジェットミル、回転型機械式ミル等が挙げられる。粉砕効率の観点から、流動層式ジェットミル、及び衝突板式ジェットミルを用いることが好ましく、流動層式ジェットミルを用いることがより好ましい。
【0096】
分級工程に用いられる分級機としては、ロータ式分級機、気流式分級機、慣性式分級機、篩式分級機等が挙げられる。分級工程の際、粉砕が不十分で除去された粉砕物は再度粉砕工程に供してもよく、必要に応じて粉砕工程と分級工程を繰り返してもよい。
【0097】
本発明のトナーの製造方法において、トナーの帯電性や流動性、及び転写性を向上させる観点から、粉砕、分級工程後、得られたトナー粒子(トナー母粒子)をさらに外添剤と混合する工程を含むことが好ましい。具体的には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、及び酸化亜鉛等の無機粒子や、メラミン系樹脂微粒子、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子等の樹脂粒子等の有機微粒子が挙げられる。2種以上を併用してもよい。これらの中では、シリカが好ましく、トナーの転写性を向上させる観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのがより好ましい。
【0098】
外添剤の体積平均粒径は、トナーの帯電性や流動性、及び転写性を向上させる観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましく、また、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、90nm以下がさらに好ましい。
【0099】
外添剤の含有量は、トナーの帯電性や流動性、及び転写性を向上させる観点から、外添剤で処理する前のトナー母粒子100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。また、5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。
【0100】
トナー母粒子と外添剤との混合には、回転羽根等の攪拌具を備えた混合機を用いることが好ましく、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速混合機が好ましく、ヘンシェルミキサーがより好ましい。
【0101】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、トナーの画像品質を向上させる観点から、3μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましく、6μm以上がさらに好ましい。また、15μm以下が好ましく、12μm以下がより好ましく、9μm以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、トナー母粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0102】
本発明の方法により得られるトナーは、そのまま一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して用いられる二成分現像用トナーとして、それぞれ一成分現像方式又は二成分現像方式の画像形成装置に用いることができる。
【0103】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の静電荷像現像用トナーの製造方法及び静電荷像現像用トナーを開示する。
【0104】
〔1〕 少なくとも非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
工程1:非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を140〜250℃で混合する工程、
工程2:工程1で得られた混合物を溶融混練する工程、及び
工程3:工程2で得られた溶融混練物を粉砕し、分級する工程
を含む、静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0105】
〔2〕 非晶質ポリエステルがアルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られ、該アルコール成分は、脂肪族ジオール、脂環式ジオール及び芳香族ジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましく、脂肪族ジオール及び/又は芳香族ジオールを含有することが好ましい、前記〔1〕記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0106】
〔3〕 脂肪族ジオールの炭素数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、10以下が好ましく、8以下がより好ましく、6以下がさらに好ましく、4以下がさらに好ましい、前記〔2〕記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0107】
〔4〕 脂肪族ジオールは、第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールが好ましい、前記〔2〕又は〔3〕記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0108】
〔5〕 第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの炭素数は、3以上が好ましく、6以下が好ましく、4以下がより好ましい、前記〔4〕記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0109】
〔6〕 第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールは、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール及び2,4-ペンタンジオールからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、1,2-プロパンジオール及び/又は2,3-ブタンジオールがより好ましく、1,2-プロパンジオールがさらに好ましい、前記〔4〕記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0110】
〔7〕 第二級炭素原子に結合した水酸基を有する脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%である、前記〔4〕〜〔6〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0111】
〔8〕 脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%である、前記〔2〕〜〔7〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0112】
〔9〕 芳香族ジオールは、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であることが好ましい、前記〔2〕〜〔8〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0113】
〔10〕 芳香族ジオールの含有量は、アルコール成分中、好ましくは50モル%以上、より好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは実質的に100モル%である、前記〔2〕〜〔9〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0114】
〔11〕 カルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸化合物を含有することが好ましく、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸からなる群より選ばれた少なくとも1種を含有することがより好ましい、前記〔2〕〜〔10〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0115】
〔12〕 芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、85モル%以上がさらに好ましく、90モル%以上がさらに好ましい、前記〔11〕記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0116】
〔13〕 カルボン酸成分は、3価以上のカルボン酸化合物を含有することが好ましい、前記〔2〕〜〔12〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0117】
〔14〕 3価以上のカルボン酸化合物は、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)及び/又はその酸無水物が好ましく、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸の無水物(無水トリメリット酸)がより好ましい、前記〔13〕記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0118】
〔15〕 3価以上のカルボン酸化合物の含有量は、20モル%以下が好ましく、10モル%以下がより好ましく、5モル%以下がさらに好ましい、前記〔13〕又は〔14〕記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0119】
〔16〕 非晶質ポリエステルの軟化点は、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましく、160℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、120℃以下がさらに好ましい、前記〔1〕〜〔15〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0120】
〔17〕 非晶質ポリエステルの吸熱の最高ピーク温度は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましく、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下がさらに好ましい、前記〔1〕〜〔16〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0121】
〔18〕 非晶質ポリエステルのガラス転移温度は、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましく、90℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、70℃以下がさらに好ましい、前記〔1〕〜〔17〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0122】
〔19〕 非晶質ポリエステルの酸価は、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましく、15mgKOH/g以下がさらに好ましく、トナーの低温定着性を向上させる観点から、1mgKOH/g以上が好ましく、2mgKOH/g以上がより好ましく、3mgKOH/g以上がさらに好ましい、前記〔1〕〜〔18〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0123】
〔20〕 工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の結晶化度は、30%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、80%以上がさらに好ましく、90%以上がさらに好ましい、前記〔1〕〜〔19〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0124】
〔21〕 結晶性ポリ乳酸を構成するモノマー中の乳酸の含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上であり、結晶性ポリ乳酸は、乳酸のホモポリマーであることがさらに好ましい、前記〔1〕〜〔20〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0125】
〔22〕 工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の数平均分子量は、25,000以上が好ましく、50,000以上がより好ましく、100,000以上がさらに好ましく、150,000以上がさらに好ましく、180,000以上がさらに好ましく、300,000以下が好ましく、250,000以下がより好ましく、200,000以下がさらに好ましい、前記〔1〕〜〔21〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0126】
〔23〕 工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の重量平均分子量は、30,000以上が好ましく、100,000以上がより好ましく、250,000以上がさらに好ましく、400,000以上がさらに好ましく、450,000以上がさらに好ましく、700,000以下が好ましく、550,000以下がより好ましく、500,000以下がさらに好ましい、前記〔1〕〜〔22〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0127】
〔24〕 工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の融点は、155℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましく、180℃以下が好ましく、175℃以下がより好ましい、前記〔1〕〜〔23〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0128】
〔25〕 工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の量は、結晶性ポリ乳酸と非晶質ポリエステルの合計量中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましい、前記〔1〕〜〔24〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0129】
〔26〕 工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の量は、結晶性ポリ乳酸と非晶質ポリエステルの合計量中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上がさらに好ましい、前記〔1〕〜〔24〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0130】
〔27〕 工程1で用いる結晶性ポリ乳酸の量は、結晶性ポリ乳酸と非晶質ポリエステルの合計量中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上がさらに好ましく、20質量%以上がさらに好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましい、前記〔1〕〜〔24〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0131】
〔28〕 工程1で用いる非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸の質量比(非晶質ポリエステル/結晶性ポリ乳酸)は、95/5〜50/50が好ましく、90/10〜50/50がより好ましく、85/15〜55/45がさらに好ましく、80/20〜55/45がさらに好ましく、75/25〜55/45がさらに好ましい、前記〔1〕〜〔27〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0132】
〔29〕 工程1において、非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を混合する温度は、150℃以上が好ましく、170℃以上がより好ましく、190℃以上がさらに好ましく、230℃以下が好ましく、210℃以下がより好ましい、前記〔1〕〜〔28〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0133】
〔30〕 工程1における混合時間は、0.1時間以上が好ましく、0.3時間以上がより好ましく、15時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、7時間以下がさらに好ましく、5時間以下がさらに好ましく、3時間以下がさらに好ましく、2時間以下がさらに好ましく、1.5時間以下がさらに好ましい、前記〔1〕〜〔29〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0134】
〔31〕 工程1は、
工程1−1:非晶質ポリエステルを溶融させる工程、及び
工程1−2:溶融した非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸を140〜250℃で混合する工程を含むことが好ましい、前記〔1〕〜〔30〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0135】
〔32〕 工程2の溶融混練にオープンロール型混練機を用いることが好ましい、前記〔1〕〜〔31〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0136】
〔33〕 トナー中の結晶性ポリ乳酸の含有量は、工程1で用いた結晶性ポリ乳酸と非晶質ポリエステルの合計量中、3.0質量%以上が好ましく、4.0質量%以上がより好ましく、4.5質量%以上がさらに好ましく、5.5質量%以上がさらに好ましく、9.5質量%以上がさらに好ましく、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい、前記〔1〕〜〔32〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0137】
〔34〕 トナー中の結晶性ポリ乳酸の残存率は、工程1で用いた結晶性ポリ乳酸に対し、10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、25%以上がさらに好ましく、30%以上がさらに好ましく、40%以上がさらに好ましく、60%以上がさらに好ましく、70%以上がさらに好ましい、前記〔1〕〜〔33〕いずれか記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0138】
〔35〕 前記〔1〕〜〔34〕いずれか記載の製造方法により得られる、静電荷像現像用トナー。
【実施例】
【0139】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0140】
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却し、0℃にて1分間保持する。その後、昇温速度50℃/分で測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
【0141】
〔樹脂及び結晶性ポリ乳酸のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し測定する。吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0142】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法により測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0143】
〔結晶性ポリ乳酸の結晶化度〕
粉末X線回折(XRD)測定装置「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」(株式会社リガク製)を用いて、X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kV、管電流:120mA、測定範囲:回折角(2θ)5〜40°、走査速度は5.0°/分で連続スキャン法によりピーク強度を測定する。なお、試料は、粉砕した後、ガラス板に詰めて測定する。得られたX線回折より、下記式より算出される値を結晶性ポリ乳酸の結晶化度とする。
【0144】
【数1】
【0145】
〔結晶性ポリ乳酸の融点及び吸熱量〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/分で20℃から200℃まで昇温する。得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度を結晶性ポリ乳酸の融点とする。また、ピーク面積を結晶性ポリ乳酸の吸熱量とする。
【0146】
〔結晶性ポリ乳酸の平均分子量〕
以下の方法により、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により分子量分布を測定し、数平均分子量及び重量平均分子量を求める。
(1) 試料溶液の調製
濃度が0.5g/100mlになるように、試料を、クロロホルムに、25℃で溶解させる。次いで、この溶液をポアサイズ0.2μmのフッ素樹脂フィルター「DISMIC-25JP」(ADVANTEC社製)を用いて濾過して不溶解成分を除き、試料溶液とする。
(2) 分子量測定
下記の測定装置と分析カラムを用い、溶離液としてクロロホルムを、毎分1mlの流速で流し、40℃の恒温槽中でカラムを安定させる。そこに試料溶液100μlを注入して測定を行う。試料の分子量は、あらかじめ作成した検量線に基づき算出する。このときの検量線には、数種類の単分散ポリスチレン(東ソー社製のA-500(5.0×102)、A-1000(1.01×103)、A-2500(2.63×103)、A-5000(5.97×103)、F-1(1.02×104)、F-2(1.81×104)、F-4(3.97×104)、F-10(9.64×104)、F-20(1.90×105)、F-40(4.27×105)、F-80(7.06×105)、F-128(1.09×106))を標準試料として作成したものを用いる。
測定装置:HLC-8220GPC(東ソー社製)
分析カラム:GMHXL+G3000HXL(東ソー社製)
【0147】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC Q20」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/分で-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で180℃まで昇温し測定する。そこで得られた融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度をワックスの融点とする。
【0148】
〔外添剤の体積平均粒径〕
一次粒子の体積平均粒径を下記式より求める。
平均粒径(nm)=6/(ρ×比表面積(m2/g))×1000
式中、ρは外添剤の真比重であり、例えば、シリカの真比重は2.2である。比表面積は、窒素吸着法により求められたBET比表面積である。なお、上記式は、粒径Rの球と仮定して、
比表面積=S×(1/m)
m(粒子の重さ)=4/3×π×(R/2)3×真比重
S(表面積)=4π(R/2)2
から得られる式である。
【0149】
〔トナー中の結晶性ポリ乳酸の融点、吸熱量、含有量、及び残存率〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、トナー試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温し測定する。得られる吸熱カーブにおいて、前述の測定方法で得られた結晶性ポリ乳酸の融点に基づき、(結晶性ポリ乳酸の融点-30℃)〜(結晶性ポリ乳酸の融点+5℃)の領域における結晶融解に起因する吸熱ピーク(結晶融解ピーク)の有無により、トナー中の結晶性ポリ乳酸の有無を判断する。該結晶融解ピークの温度と面積をそれぞれトナー中の結晶性ポリ乳酸の融点と吸熱量とする。トナー中の結晶性ポリ乳酸の含有量及び残存率は下記式より求める。
【0150】
【数2】
【0151】
【数3】
【0152】
なお、トナー中の他の成分(結晶性ポリエステル、高融点ワックス等)により、結晶性ポリ乳酸の吸熱ピークが判別し難い場合には、有機溶剤等を使用してトナー中の他の成分を適宜、溶解、分離等の処理を行い測定することで対応する。
【0153】
〔トナーの体積中位粒径〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)を5質量%の濃度となるよう前記電解液に溶解させる。
分散条件:前記分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、前記電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製する。
測定条件:前記電解液100mlに、3万個の粒子の粒径を20秒間で測定できる濃度となるように、前記試料分散液を加え、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0154】
[樹脂製造例1:PES-1、PES-2]
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、98℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、室温から180℃まで約2時間掛けて昇温し、その後、180℃から210℃まで10℃/hrで昇温し、さらに、210℃で反応率が90%に到達するまで反応させた。その後、無水トリメリット酸を添加して、210℃で1時間常圧にて反応させた後、20kPaにて所定の軟化点に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステル(PES-1、PES-2)を得た。PES-1、PES-2の物性を表1に示す。なお、反応率とは、生成反応水量/理論生成水量×100の値をいう。
【0155】
[樹脂製造例2:PES-3]
表1に示す原料モノマー及びエステル化触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、室温から200℃まで約2時間掛けて昇温し、その後200℃から230℃まで10℃/hrで昇温し、さらに、230℃で反応率が90%に到達するまで反応させた。その後、20kPaにて軟化点が112℃に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステル(PES-3)を得た。PES-3の物性を表1に示す。
【0156】
[樹脂製造例3:PES-4]
表1に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びエステル化触媒、重合禁止剤を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、室温から200℃まで約2時間かけて昇温し、その後、200℃から230℃まで10℃/hrで昇温し、さらに、230℃で反応率が90%に到達するまで反応させた。その後、無水トリメリット酸を添加して、20kPaにて軟化点が112℃に達するまで反応を行い、非晶質ポリエステル(PES-4)を得た。PES-4の物性を表1に示す。
【0157】
【表1】
【0158】
[樹脂製造例4:PLA-3]
結晶性ポリ乳酸「N-3000」(Nature Works社製)を35×25cmのバットに入れ、温度80℃、湿度95%の環境下に48時間静置させ、PLA-3を得た。
【0159】
[樹脂製造例5:PLA-4]
静置時間を6時間に変更した以外はPLA-3の製造方法と同様に行い、PLA-4を得た。
【0160】
[製造例6:PLA-5]
静置時間を3時間に変更した以外はPLA-3の製造方法と同様に行い、PLA-5を得た。
【0161】
実施例及び比較例で使用したPLA-1〜PLA-5の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、融点、ガラス転移温度、結晶化度及び吸熱量を表2に示す。
【0162】
【表2】
【0163】
[トナーの製造例]
実施例1〜24、比較例2〜5(実施例20は参考例である)
(工程1)
表3、4に示す所定量の非晶質ポリエステルを、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、表3、4に記載の温度に加熱して、非晶質ポリエステルを溶融させた。その後、表3、4に示す所定量の結晶性ポリ乳酸を添加して、表3、4に示す所定時間、撹拌した。得られた混合物を40℃以下に冷却した後、ロートプレックス(ホソカワミクロン社製)を用いて粗粉砕し、直径3mm円の穴を持つメッシュを通過させ、平均粒径0.5mmの混合物を得た。
【0164】
(工程2)
工程1で得た混合物100質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))4.0質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン E-304」(オリエント化学工業社製)0.5質量部、離型剤「HNP-9」(日本精鑞社製、パラフィンワックス、融点:75℃)3.0質量部をヘンシェルミキサーを用いて1分間混合後、以下に示す条件で溶融混練した。
【0165】
連続式二本オープンロール型混練機「ニーデックス」(三井鉱山社製、ロール外径:14cm、有効ロール長:80cm)を使用した。連続式二本オープンロール型混練機の運転条件は、高回転側ロール(フロントロール)周速度32.4m/min、低回転側ロール(バックロール)周速度21.7m/min、ロール間隙0.1mmであった。ロール内の加熱媒体温度及び冷却媒体温度は、高回転側ロールの原料投入側が135℃及び混練物排出側が90℃であり、低回転側ロールの原料投入側が35℃及び混練物排出側が35℃であった。また、原料混合物の供給速度は4kg/時間、平均滞留時間は約6分間であった。
【0166】
(工程3)
溶融混練物を冷却後、ハンマーミル(ホソカワミクロン社製)を用いて平均粒径1mmに粗粉砕した。得られた粗粉砕物を流動層式ジェットミル粉砕機AFG-200(ホソカワアルピネ社製)にて微粉砕し、ロータ式分級機TTSP-100(ホソカワアルピネ社製)にて分級して、体積中位粒径(D50)が6.5μmのトナー母粒子を得た。
【0167】
得られたトナー母粒子100質量部と、疎水性シリカ「R972」(日本アエロジル社製、体積平均粒径:16nm)1.0質量部、疎水性シリカ「NAX50」(日本アエロジル社製、体積平均粒径:30nm)1.0質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)にて2100r/分(周速度29m/秒)で3分間混合して、トナーを得た。
【0168】
実施例25(参考例)
工程1において、表3に示す所定量の非晶質ポリエステル及び結晶性ポリ乳酸を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、表3に示す所定時間、撹拌した。得られた混合物を40℃以下に冷却した後、ロートプレックス(ホソカワミクロン社製)を用いて、直径3mm円の穴を持つメッシュを通過させ、平均粒径0.5mmの混合物を得た。
工程1を上記方法により行った以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
【0169】
[比較例1、6〜8]
表4に示す所定量の非晶質ポリエステル及び結晶性ポリ乳酸と、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、フタロシアニンブルー(P.B.15:3))4.0質量部、負帯電性荷電制御剤「ボントロン E-304」(オリエント化学工業社製)0.5質量部及び離型剤「HNP-9」(日本精鑞社製、パラフィンワックス、融点:75℃)3.0質量部を、ヘンシェルミキサーを用いて1分間混合後、実施例1と同様に溶融混練し、粉砕・分級を行ったが、得られた粒子は、非晶質ポリエステルと結晶性ポリ乳酸が相溶せず、分離しており、トナーとして使用可能なものではなかった。
【0170】
[比較例9〜12]
結晶性ポリ乳酸を用いず、工程1を行わなかった以外は実施例1と同様に行い、トナーを得た。
【0171】
[試験例1:耐高温オフセット性]
未定着画像を取れるように改造した、沖データ製のプリンター「ML-5400」にトナーを充填し、3×4cm角のベタ画像の未定着画像を印刷した。オイルレス定着方式の「Microline3010」(沖データ社製)を改造した外部定着装置を用いて、定着ロールの回転速度を100mm/secに設定し、定着ロールの温度を100℃から200℃まで5℃ずつ上昇させながら、各温度でこの未定着画像の定着処理を行った。定着ローラ汚染が発生して、白紙部分に汚れが発生する温度を高温オフセット発生温度とし、耐高温オフセット性の指標とした。高温オフセット発生温度が高いほど、耐高温オフセット性に優れることを示す。結果を表3、4に示す。200℃の定着画像において、高温オフセットの発生が見られない場合は、「200<」と記載した。
【0172】
[試験例2:耐久性試験]
現像ローラを目視で見ることができるように改造した沖データ社製のIDカートリッジ「ML-5400用、イメージドラム」にトナーを実装し、温度30℃、湿度50%の条件下で、70r/min(36ppm相当)で空回し運転を行い、現像ローラフィルミングを目視にて観察した。フィルミング発生までの時間を耐久性の指標とした。耐久性は現像ローラフィルミング発生までの時間が長いほど、耐久性に優れることを示す。結果を表3、4に示す。
【0173】
[試験例3:耐熱保存性]
20ml容のポリプロピレン製の容器に、4gのトナーを入れた。トナーの入った容器を、55℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽に入れ、容器の蓋を開けた状態で、48時間保存した。放置後のトナーの凝集度を測定し、耐熱保存性の指標とした。この数値が小さいほど、耐熱保存性に優れる。結果を表3、4に示す。
【0174】
(凝集度)
凝集度は、パウダーテスタ(ホソカワミクロン社製)を用いて測定する。
150μm、75μm、45μmの目開きの篩を重ね、一番上にトナーを4g載せ、1mmの振動幅で60秒間振動させる。振動後、篩い上に残ったトナー量を測定し、下記の計算式を用いて凝集度の計算を行う。
【0175】
【数4】
【0176】
【表3】
【0177】
【表4】
【0178】
表3、4の結果より、実施例1〜25のトナーは、比較例2〜5、9〜12の結晶性ポリ乳酸を含まないトナーと比べて、耐高温オフセット性、耐久性及び耐熱保存性のいずれにも優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0179】
本発明の方法により得られる静電荷像現像用トナーは、静電荷像現像法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に好適に用いられる。