(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本願における記載形式・基本的用語・用法の説明)
本願において、実施の態様の記載は、必要に応じて、便宜上複数のセクション等に分けて記載するが、特にそうでない旨明示した場合を除き、これらは相互に独立別個のものではなく、記載の前後を問わず、単一の例の各部分、一方が他方の一部詳細または一部または全部の変形例等である。また、原則として、同様の部分は繰り返しの説明を省略する。また、実施の態様における各構成要素は、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、必須のものではない。
【0011】
同様に実施の態様等の記載において、材料、組成等について、「AからなるX」等といっても、特にそうでない旨明示した場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、A以外の要素を含むものを排除するものではない。たとえば、成分についていえば、「Aを主要な成分として含むX」等の意味である。たとえば、「シリコン部材」等といっても、純粋なシリコンに限定されるものではなく、SiGe(シリコン・ゲルマニウム)合金やその他シリコンを主要な成分とする多元合金、その他の添加物等を含む部材も含むものであることはいうまでもない。また、金めっき、Cu層、ニッケル・めっき等といっても、そうでない旨、特に明示した場合を除き、純粋なものだけでなく、それぞれ金、Cu、ニッケル等を主要な成分とする部材を含むものとする。
【0012】
さらに、特定の数値、数量に言及したときも、特にそうでない旨明示した場合、理論的にその数に限定される場合および文脈から明らかにそうでない場合を除き、その特定の数値を超える数値であってもよいし、その特定の数値未満の数値でもよい。
【0013】
また、実施の形態の各図中において、同一または同様の部分は同一または類似の記号または参照番号で示し、説明は原則として繰り返さない。
【0014】
また、添付図面においては、却って、煩雑になる場合または空隙との区別が明確である場合には、断面であってもハッチング等を省略する場合がある。これに関連して、説明等から明らかである場合等には、平面的に閉じた孔であっても、背景の輪郭線を省略する場合がある。更に、断面でなくとも、空隙でないことを明示するため、あるいは領域の境界を明示するために、ハッチングやドットパターンを付すことがある。
【0015】
以下の実施の形態で説明する技術は、半導体チップの表面に形成された電極パッドに金属線であるワイヤを接続する半導体装置に広く適用可能であるが、本実施の形態では、一例として、半導体チップを搭載する基材として、配線基板を用いた、エリアアレイ型の半導体装置を取り上げて説明する。エリアアレイ型の半導体装置とは、実装面に配置された外部端子が、アレイ状(マトリクス状ともいう)に配列された半導体装置をいう。本実施の形態では、エリアアレイ型半導体装置の一例として、配線基板の実装側に配列された複数の外部端子のそれぞれに半田ボールが接続された、所謂、BGA(Ball Grid Array)型と呼ばれる半導体装置を取り上げて説明する。
【0016】
図1は本実施の形態の半導体装置の斜視図、
図2は、
図1に示す半導体装置の下面図である。また、
図3は、
図1に示す封止体を取り除いた状態で配線基板上の構造を示す透視平面図である。また、
図4は
図1のA−A線に沿った断面図である。
【0017】
<半導体装置>
まず、本実施の形態の半導体装置1の構成の概要について、
図1〜
図4を用いて説明する。本実施の形態の半導体装置1は、半導体チップCHP(
図3、
図4参照)、および半導体チップCHPが搭載された配線基板WSを有する。
図4に示すように半導体チップCHPは、配線基板WSの上面(第1面、チップ搭載面)WSt側に搭載され、封止体(樹脂体)MRにより覆われている。
【0018】
封止体MRは、上面MRt、上面MRtとは反対側に位置する下面MRb(
図4参照)、および上面MRtと下面MRbの間に位置する側面MRsを有し、平面視において四角形を成す。
図1に示す例では、封止体MRの平面積(上面MRt側から平面視した時の面積)は配線基板WSの平面積と同じであって、封止体MRの側面MRsは配線基板WSの側面WSsと連なっている。配線基板WSおよび封止体MRは、平面視において四角形を成す。
【0019】
また、
図3および
図4に示すように、配線基板WSに搭載される半導体チップCHPは、表面(主面、上面)CPtと、表面CPtとは反対側の裏面(主面、下面)CPb(
図4参照)と、この表面CPtと裏面CPbとの間に位置する側面CPs(
図4参照)とを有している。
【0020】
また、
図3に示すように、半導体チップCHPは平面視において四角形を成す。半導体チップCHPの表面CPtは、X方向に沿って延びる辺CPs1(互いに対向する一対の辺CPs1)と、X方向に直交するY方向に沿って延びる辺CPs2(互いに対向する一対の辺CPs2)と、を有する。また、
図4に示すように、半導体チップCHPは、半導体チップCHPの表面CPtの各辺が、配線基板WSの上面WStの外縁を構成する各辺に沿うように配線基板WS上に搭載されている。
【0021】
また、半導体チップCHPの表面CPtには、表面CPtの各辺に沿って配列される複数のパッド(電極パッド)PDが形成されている。複数のパッドPDは半導体チップCHPの入出力端子であって、半導体チップCHPの表面CPtを持つ保護膜(パッシベーション膜)PVに形成された開口部において、保護膜PVから露出している。複数のパッドPDは、辺CPs1に沿って配列される(言い換えれば、X方向に沿って配列される)複数のパッドPD1と、辺CPs2に沿って配列される(言い換えれば、Y方向に沿って配列される)複数のパッドPD2と、を含む。また、複数のパッドPDのそれぞれは、例えば、主としてアルミニウム(Al)から成る。半導体チップCHPの詳細な構造については、後述する。
【0022】
図3および
図4に示すように、半導体チップCHPは、配線基板WSの上面WSt上に搭載される。
図3に示す例では、半導体チップCHPは配線基板WSの上面WStの中央部に搭載されている。また、
図4に示すように、半導体チップCHPは、裏面CPbが配線基板WSの上面WStと対向した状態で、ダイボンド材(接着材)DBを介して配線基板WSに搭載されている。つまり、複数のパッドPDが形成された表面(主面)CPtの反対面(裏面CPb)がチップ搭載面(上面WSt)と対向する、所謂、フェイスアップ実装方式により搭載されている。
【0023】
ダイボンド材DBは、半導体チップCHPと配線基板WSとを接着固定する接着材であって、例えばペースト状の接着材を硬化させることにより、半導体チップCHPと配線基板WSとを接着固定している。ただし、ダイボンド材DBは、上記に限定されるものではなく、例えば、DAF(Die Attach Film)と呼ばれる樹脂フィルム等を用いることができる。ダイボンド材DBとして用いられる接着材は、DAFの場合も、ペースト状の接着材の場合も、エポキシ樹脂を主成分とするものを用いることが多い。
【0024】
また、
図4に示すように、配線基板WSは、半導体チップCHPが搭載された上面(面、チップ搭載面)WSt、上面WStとは反対側の下面(面、実装面)WSb、および上面WStと下面WSbの間に配置された複数の側面WSsを有し、
図2および
図3に示すように平面視において四角形を成す。
【0025】
また、配線基板WSは、複数の配線層(
図4に示す例では上面配線層および下面配線層の2層)を有する。各配線層間に配置される絶縁層WSiは、例えば、ガラス繊維または炭素繊維に樹脂を含浸させたプリプレグによって構成されている。また、絶縁層WSiの上面側には複数のボンディングリードBLが、絶縁層WSiの下面側には複数のランドLDが、それぞれ形成され、複数の配線WSwを介してボンディングリードBLとランドLDが電気的に接続されている。
【0026】
図3に示すように、配線基板WSの上面WStには、複数のボンディングリード(端子、チップ搭載面側端子、電極)BLが形成される。複数のボンディングリードBLは、半導体チップCHPが搭載されるチップ搭載領域の周囲に、半導体チップCHPの各辺に沿って配置されている。詳しくは、配線基板WSの上面WStには、絶縁層WSiの上面側に形成された配線を覆うソルダレジスト膜(絶縁膜)SR1が形成され、ソルダレジスト膜SR1に形成された開口部において、複数のボンディングリードBLが、ソルダレジスト膜SR1から露出している。
【0027】
また、半導体チップCHPの複数のパッドPDと、配線基板WSの複数のボンディングリードBLは、複数のワイヤ(導電性部材)BWを介してそれぞれ電気的に接続される。複数のワイヤBWの構成材料は、金(Au)や銅(Cu)を主成分とする金属であることが多く、本実施の形態では、例えば銅を主成分とする金属から成る。ワイヤBWの詳細については、後述する。
【0028】
また、
図2に示すように、配線基板WSの下面WSbには、複数のランド(外部端子、電極パッド、外部電極パッド)LDが形成される。複数のランドLDは、行列状(マトリクス状)に配置されている。
図4に示すように複数のランドLDは、配線基板WSに形成された複数の配線WSwを介して複数のボンディングリードBLと電気的に接続される。つまり、複数のランドLDのそれぞれは半導体チップCHPと電気的に接続され、半導体チップCHPと外部機器とを電気的に接続する外部端子である。
【0029】
このように外部端子を配線基板の実装面側に行列状に配置する半導体装置をエリアアレイ型の半導体装置と呼ぶ。エリアアレイ型の半導体装置は、配線基板WSの実装面(下面WSb)側を、外部端子の配置スペースとして有効活用することができるので、外部端子数が増大しても半導体装置の実装面積の増大を抑制することが出来る点で好ましい。つまり、高機能化、高集積化に伴って、外部端子数が増大する半導体装置を省スペースで実装することができる。
【0030】
なお、複数の外部端子の端子数やレイアウトについては
図2に示す態様の他、種々の変形例がある。また、
図4では、絶縁層WSiの上面と下面にそれぞれ配線層を形成した配線基板WSを例示的に示しているが、配線層の数はこれに限定されず、2層よりも多い配線層構造にすることもできる。
【0031】
配線基板WSの導電路を構成するボンディングリードBL、ランドLDおよび配線WSwは、金属膜をパターニングすることにより形成され、例えば銅(Cu)を主体とする導電膜で構成する。また、配線WSwのうち、絶縁層WSiの上面側と下面側を導通させる配線WSwは、例えば貫通孔に金属膜を埋め込むことで形成され、例えば銅(Cu)を主体とする導電膜で構成する。ここで、銅を主体とする導電膜には、銅単体、銅合金、あるいは、銅膜上に他の金属膜(例えばニッケル膜等)を積層した金属膜が含まれ、配線基板WSに要求される仕様に応じてこれらを選択することができる。
【0032】
複数のランドLDは、配線基板WSの下面WSbを覆うソルダレジスト膜(絶縁膜)SR2からそれぞれ露出している。詳しくは、配線基板WSの下面WSbには、絶縁層(コア絶縁層)WSiの下面側に形成された配線を覆うソルダレジスト膜(絶縁膜)SR2が形成され、ソルダレジスト膜SR2に形成された複数の開口部において、ランドLDのそれぞれが、ソルダレジスト膜SR2から露出している。
【0033】
また、本実施の形態では、ランドLDのそれぞれの露出面にボール状に形成された半田材である半田ボールSBが接続されている。半導体装置1を図示しない実装基板に実装する時には、実装基板側の端子と半導体装置1を電気的に接続する導電性接合材としては、半田を使用することが多い。したがって、外部端子であるランドLDのソルダレジスト膜SR2からの露出面に、半田ボールSBを形成することにより、半導体装置1を図示しない実装基板に実装する際に、半田の濡れ性を向上させることができる。
【0034】
半田ボールSBは、鉛(Pb)を実質的に含まない、所謂、鉛フリー半田からなり、例えば錫(Sn)のみ、錫−ビスマス(Sn−Bi)、または錫−銀−銅(Sn−Ag−Cu)などである。ここで、鉛フリー半田とは、鉛(Pb)の含有量が0.1wt%以下のものを意味し、この含有量は、RoHs(Restriction of Hazardous Substances)指令の基準として定められている。以下、本願において、半田について説明する場合には、特にそうでない旨明示した場合を除き、鉛フリー半田を指す。
【0035】
なお、実装時に使用する半田の濡れ性を向上する点では、半田ボールSBに限らず、例えばニッケル膜など、銅よりも半田に対する濡れ性が高い金属材料からなる金属膜をめっき法により形成し、ランドLDの露出面を覆ってもよい。また、半田の濡れ性を特に考慮しないのであれば、ランドLDの露出面は、必ずしも半田材で覆う必要はない。
図4に示す半田ボールSBを形成せず、ランドLDを露出させる変形例、あるいは、ランドLDの露出面を覆うように半田膜や他の金属膜を形成する変形例は、LGA(Land Grid Array)型と呼ばれる。
【0036】
<半導体チップ>
次に、
図3および
図4に示す半導体チップについて説明する。
図5は、
図3に示す半導体チップの平面図である。また、
図6は、
図5のA−A線に沿った拡大断面図である。また、
図7は
図6のA部をさらに拡大した拡大断面図である。
【0037】
なお、
図5〜
図7は、見易さのため、
図3に示すパッドPDにワイヤBWが接続される前の状態を示している。また、
図7は、配線部SDLの例として、パッドPDが形成された配線層DLを含めて、8層の配線層DLが積層された例を示している。ただし、配線層の積層数は、8層には限定されず、例えば7層以下、あるいは9層以上など、種々の変形例がある。また、
図7に示す例では、半導体基板SSの上面SStに形成された複数の半導体素子Q1の例として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)の構造例を記載している。ただし、半導体素子Q1の構造には、MOSFETの他、種々の変形例がある。
【0038】
本実施の形態の半導体チップCHPは、複数の半導体素子Q1(
図7参照)が形成された上面(半導体素子形成面)SStおよび上面SStの反対側の下面(裏面)SSbを有する半導体基板SSを備えている。半導体基板SSは、半導体チップCHPの基材であって、例えば、珪素(シリコン;Si)を主要な成分として構成されている。また、半導体チップCHPは、半導体基板SSの上面SSt上に形成された配線部SDL(
図6、
図7参照)を有している。
【0039】
図6に示す例では、半導体チップCHPの下面(裏面)CPbは、半導体基板SSの下面SSbと同一の面である。また、半導体チップCHPの表面(主面、上面)CPtは、配線部SDLの最上層を覆うように形成された保護膜PV(
図5および
図7参照)の上面PVt、および複数のパッドPD(
図5および
図7参照)の保護膜PVからの露出面により構成されている。
【0040】
また、配線部SDLは、
図7に拡大して示すように、積層される複数の配線層DLを有している。配線部SDLでは、複数の半導体素子Q1と複数のパッドPDが、積層された複数の配線層DLを介して電気的に接続されている。複数のパッドPDは、配線部SDLが備える複数の配線層DLのうち、最上層(半導体基板SSの上面SStからの距離が最も遠い層)に形成されている。
【0041】
複数の配線層DLのそれぞれは、半導体基板SS上に積層される絶縁層IMLと、絶縁層IMLに形成された開口部内に埋め込まれている複数の導体パターン(配線)CBPを有している。配線部SDLでは、複数の配線層DLに形成された導体パターンCBPを電気的に接続することで、半導体素子Q1とパッドPDとを電気的に接続する導通経路が形成される。
【0042】
配線層DLを構成する材料は、以下に限定されないが、以下の通り例示することができる。絶縁層IMLは、例えば、酸化珪素(SiO
2)を主要な成分として構成されている。また、複数の導体パターンCBPは、例えば銅(Cu)を主要な成分として構成されている。また、最上層の配線層DLは、パッドPDと同じ金属材料、例えばアルミニウムを主成分とする金属材料で形成されている。
【0043】
また、複数のパッドPDを含む最上層の配線層DLは、半導体チップCHPの表面CPtを持つ保護膜(パッシベーション膜、絶縁膜)PVにより覆われている。配線部SDLを覆うように保護膜PVを設けることで、配線部SDLを保護することができる。保護膜PVは、配線部SDLを覆う膜なので、半導体基板SSの上面SStと対向する下面(面)PVbおよび下面PVbの反対側の上面(面)PVtを有している。
【0044】
なお、
図7に示すように、保護膜PVは配線部SDLを覆う膜なので、保護膜PVの下面PVbと半導体基板SSの上面SStの間には、複数の配線層DLが積層された配線部SDLが介在している。そして、保護膜PVの下面PVbは複数の配線層DLのうち、最上層の配線層DLに密着している。
【0045】
保護膜PVは、例えば酸化珪素(SiO
2)、窒化珪素(SiN)、酸窒化珪素(SiON)あるいはこれらの積層膜から成る。また、酸化珪素、窒化珪素、あるいは酸窒化珪素の膜をさらに覆うように、ポリイミドなどの樹脂膜を形成する場合もある。
図5に示す例では、最も単純な例として、単層の絶縁膜から成る保護膜PVを示しているが、変形例としては、積層膜からなる保護膜PVもある。積層膜から成る保護膜PVの場合、最下層(もっとも配線層DLに近い層)の絶縁膜の下面が保護膜PVの下面PVbに相当する。また、積層膜から成る保護膜PVの場合、最上層(もっとも配線層DLから遠い層)の絶縁膜の上面が保護膜PVの上面PVtに相当する。
【0046】
また、半導体チップCHPの複数のパッドPDは、
図7に示すように保護膜PVと半導体基板SSの間に形成され、
図3に示すように半導体チップCHPの表面CPtにおいて保護膜PVから露出している。詳しくは、
図7に示すように、保護膜PVには、パッドPDと厚さ方向(
図7のZ方向)に重なる位置に、開口部PVkが形成されている。開口部PVkは、保護膜PVの上面PVtおよび下面PVbのうち、一方から他方に向かって貫通するように形成されている。このため、複数のパッドPDは、保護膜PVに形成された複数の開口部PVkと重なる位置において、保護膜PVから露出している。これにより、複数のパッドPDのそれぞれに
図3に示すワイヤBWのような導電性部材を接続することが可能になる。言い換えれば、複数のパッドPDを、半導体チップCHPの外部端子として利用することができる。
【0047】
また、
図5に示すように、平面視において、半導体チップCHPの外縁を構成する各辺と、複数のパッドPDとの間には、各辺に沿って延びるシールリング(金属パターン)SLRが配置されている。シールリングSLRは、平面視において、半導体チップCHPの周縁部に沿って形成され、複数のパッドPDは、シールリングSLRによって囲まれた領域の内部に形成されている。また、
図7に示すように、シールリングSLRは配線部SDLの各配線層DLに形成された導体パターンCBPと同じ材料で形成された金属パターンである。そして、複数のパッドPDと同層の配線層DLから半導体基板SSの上面SStまでの複数の配線層DLを貫くように形成されている。
【0048】
<電極パッド>
次に、
図5および
図7に示すパッドPDの詳細について説明する。
図8は、
図5のB部の拡大平面図である。また、
図9は
図8のA−A線に沿った拡大断面図である。また、
図10は
図8に示す電極パッドに
図3に示すワイヤを接合した状態を示す拡大平面図である。また、
図11は
図10のA−A線に沿った拡大断面図である。また、
図34は、
図10に対する比較例を示す拡大平面図、
図35は
図34のA−A線に沿った拡大断面図である。また、
図12は、
図10および
図11に示すワイヤをパッドに接合する際に使用するワイヤボンディング装置の構成を模式的に示す説明図である。
【0049】
なお、
図8および
図9では、ワイヤボンディング前のパッドの形状を示すため、
図3に示すパッドPDにワイヤBWが接続される前の状態を示している。また、
図8では、パッドPDを構成する導体パターンの輪郭を明示するため、保護膜PVに覆われた部分の輪郭を、点線で示している。また、
図9では、
図7に示す複数層の配線層DLのうち、パッドPDを形成する最上層の配線層DLを示している。
【0050】
また、
図34および
図35に示す半導体チップCHPhは、パッドPDの露出面に溝TR1(
図8および
図9参照)が形成されていない点を除き、
図8および
図9に示す半導体チップCHPと同様である。
【0051】
図8および
図9に示すように、本実施の形態のパッドPDは、保護膜PVから露出した部分に溝(開口部、溝部)TR1が形成されている。溝TR1は、パッドPDの露出面側に形成された開口部であって、露出面からその反対面に向かって形成されている。また、
図10に示すように、溝TR1は、平面視において、ワイヤBWのボール部(幅広部)BWbと重なる位置に形成されている。
図10に示す例では、複数の溝TR1のそれぞれの一部がワイヤBWのボール部(幅広部)BWbと重なる。
【0052】
図8に示す例では、溝TR1は、平面視において、X方向に対して直交するY方向に沿って延びるように形成されている。また、
図8に示す例では、X方向に沿って、複数の溝TR1が配列されている。また、
図9に示す例では、溝TR1は、パッドPDを厚さ方向(
図9に示すZ方向)に貫通せず、パッドPDの下地層である絶縁層IMLは、溝TR1の底面において露出していない。
【0053】
以下、本実施の形態で、パッドPDに
図8および
図9に示す溝TR1を形成する理由について、本願発明者が見出した課題を含めて詳細に説明する。
【0054】
図10および
図11に示すように、半導体チップCHPのパッドPDにワイヤBWを接合し、ワイヤBWとパッドPDを電気的に接続する場合、ワイヤBWの先端にボール形状のボール部BWbを形成し、このボール部BWbをパッドPDの露出面に押し付けて圧着する、所謂ネイルヘッドボンディング方式と呼ばれる接合方法がある。
【0055】
ネイルヘッドボンディング方式では、パッドPDを加熱した状態でボール部BWbをパッドPDに押し付けて熱圧着する方式が一般に用いられる。また、ボール部BWbに超音波を印加しながら圧着する方式を利用すれば、ワイヤボンディング時のプロセス温度を低減できる。また、パッドPDを加熱し、かつ、ボール部BWbに超音波を印加しながら圧着する方式の場合、ワイヤボンディング時のプロセス温度を低減しつつ、かつ、ワイヤBWとパッドPDとの接合強度を向上させることができる。特に、配線基板WS(
図4参照)のように樹脂材料を含む部材に半導体チップCHPが搭載される場合、構成部材の耐熱温度に応じてプロセス温度を下げる必要があるので、ボール部BWbに超音波を印加する方法が好ましい。
【0056】
また、
図10および
図11に示すワイヤBWは、上記したように、例えば銅から成る。一般に、半導体チップの電極パッドに接続されるワイヤは、金で形成することが多いが、材料コストを低減する観点、あるいは、ワイヤが形成する伝送経路のインピーダンス成分を低減する観点から、金以外の材料で形成する場合がある。例えば、本実施の形態のように、ワイヤBWを銅で形成すれば、材料コストを低減できる。
【0057】
また、金よりも電気伝導率が高い、銅によりワイヤBWを形成することで、ワイヤBWが形成する伝送経路のインピーダンス成分を低減できる。また、本実施の形態に対する変形例としては、銅からなる基材の表面をパラジウム(Pd)から成る金属膜で覆っても良い。この場合、ワイヤBWとパッドPDの接合強度をさらに向上させることができる。また、本実施の形態に対する別の変形例としては、銅よりもさらに電気伝導率が高い銀(Ag)から成るワイヤBWを用いることもできる。
【0058】
ワイヤBWの材料として上記したような金以外の材料を用いた場合でも、金製のワイヤと同様に、ネイルヘッドボンディング方式を適用してワイヤBWのボール部BWbをパッドPDに接合することができる。
【0059】
ところが、本願発明者が金以外のワイヤを用いたワイヤボンディング技術について検討した所、以下の事が判った。すなわち、
図34および
図35に示す比較例の半導体チップCHPhのように、ワイヤボンディング時にボール部BWbに印加される超音波に起因してパッドPDの形状が変形する。そして、パッドPDの構成部材の一部が周囲に排斥されて、スプラッシュ部(扁平片)SPPが形成される。
【0060】
図34および
図35に示すスプラッシュ部SPPは、パッドPDが変形して形成されるので、パッドPDがアルミニウムを主成分とする材料から成る場合には、特にアルミスプラッシュ(Alスプラッシュ)とも呼ばれる。
【0061】
また、スプラッシュ部SPPは、
図35に示すように、扁平形状であって、ワイヤボンディング時のパッドPDの排斥量が多くなれば、これに応じてスプラッシュ部SPPの平面積も大きくなる。
【0062】
そしてスプラッシュ部SPPの平面積が大きくなって、隣り合うパッドPDのそれぞれに形成されたスプラッシュ部SPP同士が接触すると、電気的な短絡の原因となる。また、そしてスプラッシュ部SPPの平面積が大きくなると、破断し易くなるが、パッドPDとスプラッシュ部SPPが破断して分離されると、導電性の異物になる。したがって、半導体装置の信頼性を向上させる観点から、スプラッシュ部SPPが発生しても、その平面積を小さく抑える技術が必要になる。
【0063】
また、ワイヤボンディング時のパッドPDの排斥量が多くなると、パッドPDの上面側の周縁部に応力が集中する。このため、
図34に示すように、パッドPDの周縁部が保護膜PVに覆われている場合、パッドPDの周縁部に生じた応力によって、保護膜PVに亀裂(クラック)が発生する場合がある。したがって、保護膜PVの亀裂を抑制し、半導体装置の信頼性を向上させる観点からは、ワイヤボンディング時のパッドPDの排斥量を低減する技術が必要になる。
【0064】
スプラッシュ部SPPは、ワイヤBWを接合する際にボール部BWbの硬さがパッドPDよりも硬い場合に発生する。また、スプラッシュ部SPPは、ワイヤBWを接合する際にボール部BWbの硬さとパッドPDの硬さの差が大きくなると、発生し易くなる。硬さの指標としては、ヤング率またはビッカース硬度を用いることができる。
【0065】
例えば、金の硬さ(ヤング率79GPa(ギガパスカル)、ビッカース硬度216MPa(メガパスカル))はアルミニウムの硬さ(ヤング率70GPa、ビッカース硬度167MPa)よりも硬いので、スプラッシュ部SPPが発生する場合がある。しかし、金の硬さとアルミニウムの硬さの差は大きくはないので、上記したように、電気的な短絡や導電性異物の原因になるようなスプラッシュ部SPPは形成され難い。
【0066】
しかし、ワイヤBWのボール部BWbの硬さが、金よりも硬い場合には、スプラッシュ部SPPが発生し易くなる。例えば、銀の硬さ(ヤング率83GPa、ビッカース硬度251MPa)は、アルミニウムの硬さ、および金の硬さよりも大きい(硬い)ので、スプラッシュ部SPPが発生し易くなる。したがって、金よりも硬い材料を用いてワイヤBWを形成する場合には、スプラッシュ部SPPの平面積の増大を抑制する対策が必要になる。
【0067】
また、ワイヤBWを銅で形成した場合、銅の硬さ(ヤング率110GPa〜128GPa、ビッカース硬度369MPa)は、アルミニウムの硬さよりも大きく、かつ、その差は大きい。また、銅から成る基材をパラジウム膜で覆ったワイヤを用いる場合、ボール部BWbは銅とパラジウムが混合された金属になる。銅にパラジウムを混合すると、銅単体よりもさらに硬くなる。本願発明者の検討によれば、ヤング率が100GPaを超えるような材料でボール部BWbを形成する場合には、特にスプラッシュ部SPPが広がり易くなり、広がりを抑制する対策が必要になる。
【0068】
また、上記したように、ワイヤボンディング時のパッドPDの排斥量が多くなれば、これに応じてスプラッシュ部SPPの平面積も大きくなる。本願発明者の検討によれば、パッドPDの排斥量を決定する要因としては、ワイヤBWのボール部BWbの硬さの他に、パッドPDの厚さが関係することが判った。
【0069】
例えば、アルミニウムから成るパッドPDの厚さが、850nm以下であれば、銅から成るワイヤBWのボール部BWbを接合してもスプラッシュ部SPPの平面積は大きくなり難く、スプラッシュ部SPPが広がる範囲を開口部PVkの内側に限定できる。一方、パッドPDの厚さが850nmよりも大きくなると、スプラッシュ部SPPの一部が開口部PVkの外側にまで広がる場合がある。スプラッシュ部SPPの一部が開口部PVkの外側にまで広がると、短絡を防ぐ観点から、隣り合うパッドPDの離間距離を広げる必要がある。言い換えれば、スプラッシュ部SPPの一部が、保護膜PVの一部を覆うように広がった場合、隣り合うパッドPDの配置ピッチが制約される。
【0070】
近年、半導体装置の性能を向上させるため、パッドPDの厚さは厚くなる傾向がある。例えば信号伝送経路を構成するパッドPDの厚さを厚くすることで、例えば信号伝送経路のインピーダンスを低減できる。あるいは、電源電圧の供給経路を構成するパッドPDの厚さを厚くすることで、瞬間的な電圧降下を抑制し、回路を安定的に駆動させることができる。したがって、半導体装置の性能向上を考慮すると、単純にパッドPDの厚さを薄くはせず、他の対策により、スプラッシュ部SPPの広がりを抑制することが好ましい。
【0071】
上記を踏まえ、本願発明者がさらに検討を行った所、スプラッシュ部SPPは、ワイヤボンディングを行う際にボール部BWbに印加される超音波に起因して発生することが判った。
【0072】
ワイヤボンディングを行う際に、ボール部BWbに超音波を印加する場合、
図12に模式的に示すようなワイヤボンディング装置WBDを用いてワイヤBWを接合する。
図12に示すワイヤボンディング装置WBDは、ワイヤBWのボール部BWbを圧着する圧着ツールであるキャピラリCPと、超音波を発振する発振器USGと、発振器USGとキャピラリCPを接続するホーン(超音波伝送部)USHとを有する。ホーンUSHは、超音波US1を増幅しながらキャピラリCPに伝送する、一方向に延びる棒状の部材である。
図12に示す例では、ホーンUSHがX方向に延びるように配置されている。
【0073】
ワイヤボンディング装置WBDを用いてワイヤBWを半導体チップCHPのパッドPDに接合する場合、圧着する際にボール部BWbに超音波を印加することができる。詳しくは、発振器USGで発振された超音波US1は、ホーンUSHで増幅され、キャピラリCPを介してワイヤBWに伝達される。この時、ボール部BWbに印加される超音波の振動方向は、以下の理由により、一方向に限定される。超音波US1は疎密波(縦波)なので、ホーンUSHの延在方向(
図12ではX方向)に沿って振動する。また、キャピラリCPはホーンUSHに固定されているので、キャピラリCPを介してボール部BWbに伝達される超音波US1の平面視における振動方向は、ホーンUSHの延在方向(
図12ではX方向)と同じ方向になる。
【0074】
この場合、
図34および
図35に示すように、スプラッシュ部SPPは超音波US1(
図12参照)の振動方向に沿って延びるように形成される。
図34に示す例では、スプラッシュ部SPPの平面形状は楕円形になっており、楕円の長径はX方向に沿って延びる。言い換えれば、パッドPDのうち、ワイヤBWのボール部BWbが接合された部分の周囲には、X方向に長手方向を有する扁平形状のスプラッシュ部SPPが形成される。このように、スプラッシュ部SPPは、ボール部BWbとパッドPDを接合する際に、ボール部BWbに印加される超音波US1に起因して、超音波US1の振動方向にパッドPDの構成材料が排斥されることにより形成される。
【0075】
上記知見に基づき、本願発明者は、パッドPDの量を低減すれば、スプラッシュ部SPPの広がりを抑制できると考えた。つまり、本願発明者は、ワイヤボンディング工程を行う前に、パッドPDのうち、ボール部BWbを接続する領域に予め開口部(
図8および
図9に示す溝TR1に相当する部分)を形成しておくことで、ワイヤボンディング時のパッドPDの排斥量を低減する、本実施の形態の実施態様を見出した。
【0076】
図8および
図9に示すように、溝TR1を形成すれば、ワイヤボンディング時に印加される超音波US1(
図12参照)の振動方向(X方向)に排斥されるパッドPDの量を低減できる。この結果、
図10および
図11に示すように、スプラッシュ部SPPが形成された場合でも、その広がりは抑制できる。例えば、
図10および
図11に示す例では、スプラッシュ部SPPは、パッドPDが露出する開口部と厚さ方向に重なる範囲内に形成されている。言い換えれば、
図10および
図11に示す本実施の形態の場合でも、パッドPDのうち、ワイヤBWのボール部BWbが接合された部分の周囲には、X方向に長手方向を有する扁平形状のスプラッシュ部SPPが形成される。また、本実施の形態の場合、ワイヤBWを接合した後のパッドPDの構造は以下のようになる。すなわち、パッドPDの溝TR1は、ボール部BWbとパッドPDの接合部分を挟んで、X方向と交差するY方向に沿って延びる部分を有している。
【0077】
このように、本実施の形態によれば、スプラッシュ部SPPの広がりを抑制できるので、隣り合うパッドPDにそれぞれスプラッシュ部SPPが形成された場合でも、スプラッシュ部SPP同士が接触することを抑制できる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、スプラッシュ部SPPの広がりを抑制することにより、隣り合うパッドPD間の距離を小さくすることができる。つまり、複数のパッドPDを狭ピッチで配置できるので、半導体チップCHPの平面積を低減できる。
【0079】
また、本実施の形態によれば、スプラッシュ部SPPの広がりを抑制することにより、スプラッシュ部SPPが破断し難くなる。この結果、スプラッシュ部SPPの破断に起因する導電性異物の発生を抑制できる。
【0080】
また、本実施の形態によれば、溝TR1を形成することによりスプラッシュ部SPPの広がりを抑制する。したがって、
図9に示すようにパッドPDは、溝TR1が形成された部分の厚さは薄く、溝TR1が形成されていない部分の厚さは厚くなっている。
図11に示すように、パッドPDのうち、ワイヤBWのボール部BWbと重なる部分は、ボール部BWbが接合する時に、ボール部BWbの形状に倣って変形する。このため、ワイヤBWのボール部BWbとパッドPDの接合界面の周囲におけるパッドPDの厚さを厚くすることができる。したがって、
図10および
図11に示すパッドPDが信号伝送経路を構成する場合には、信号伝送経路のインピーダンスを低減できる。また例えば、
図10および
図11に示すパッドPDが電源電圧の供給経路を構成する場合、瞬間的な電圧降下を抑制し、回路を安定的に駆動させることができる。つまり、本実施の形態によれば、パッドPDの厚さを単に薄くする実施態様と比較して、パッドPDとボール部BWbとの接合部の電気的特性を向上させることができる。
【0081】
また、上記したように、スプラッシュ部SPPは、超音波US1(
図12参照)の振動方向に広がる。このため、
図8に示すように、溝TR1は、超音波US1の振動方向であるX方向と交差するY方向に沿って延びるように形成されることが好ましい。これにより、振動方向に沿って排斥されるパッドPDの量を確実に低減できる。
【0082】
また、本実施の形態によれば、溝TR1を設けることにより、ワイヤボンディング時のパッドPDの排斥量を低減することができる。したがって、
図8および
図9に示すようにパッドPDの周縁部が保護膜PVに覆われている場合でも、パッドPDの周縁部に発生する応力に起因して保護膜PVに亀裂が発生することを抑制できる。
【0083】
また、
図8に対する変形例として、一本の溝TR1を形成することもできる。この場合、溝TR1の溝幅(延在方向と直交する方向の開口幅)を大きくすれば、振動方向に沿って排斥されるパッドPDの量を低減できる。ただし、ワイヤBWのボンディング位置の制度によらず、確実にパッドPDの排斥量を低減する観点からは、
図8に示すように、X方向に沿って、複数の溝TR1が配列されていることが好ましい。言い換えれば、
図8に示す複数の溝TR1で構成される溝群を一つの溝と見做せば、パッドPDに形成される溝は、Y方向に沿って延在し、かつX方向に沿って配列される複数の部分を有していることが好ましい。
【0084】
また、
図9に対する変形例として、パッドPDを厚さ方向に貫通するように溝TR1を形成し、スリットを設けることもできる。この場合でも、振動方向に沿って排斥されるパッドPDの量を低減できる。ただし、パッドPDとボール部BWbの密着面積を増大させて、接合部の電気的特性を向上させる観点からは、
図9に示すように、溝TR1は、パッドPDを厚さ方向(
図9に示すZ方向)に貫通させないことが好ましい。
【0085】
また、溝TR1の幅および深さには種々の変形例があるが、スプラッシュ部SPPの広がりを抑制する観点からは、パッドPDのうち、ワイヤBWのボール部BWbと重なる部分の平均厚さを指標として用いることができる。パッドPDのうち、ワイヤBWのボール部BWbと重なる部分の平均厚さTavは、ボール部BWbと重なるパッドPDの一部分の体積をVL1、ボール部BWbと重なるパッドPDの一部分の平面積をSM1とすると、“Tav = VL1÷SM1”の式で定義される。なお、上記した体積VL1は、ボール部BWbを接合する前の時点での体積である。
【0086】
本願発明者の検討によれば、
図10に示すスプラッシュ部SPPが開口部PVkの外側まで広がることを抑制する観点から、パッドPDのうち、ワイヤBWのボール部BWbと重なる部分の平均厚さTavは、1μm以下が好ましい。また、パッドPDのうち、ワイヤBWのボール部BWbと重なる部分の平均厚さTavは、850nm以下が特に好ましい。
【0087】
例えば、
図8および
図9に示す例では、溝TR1の溝幅は、5μm、隣り合う溝TR1の離間距離は10μm、溝深さは375nm、溝TR1の直下の部分の厚さは600nmになっている。この場合、
図10および
図11に示すボール部BWbの直径によらず、パッドPDのうち、ワイヤBWのボール部BWbと重なる部分の平均厚さTavは、850nm以下になる。
【0088】
次に、
図5に示すように表面CPtにおいて露出する複数のパッドPDのうち、どのパッドPDにどのような溝TR1(
図8参照)を形成することが好ましいかについて説明する。
図13は、
図5のC部の拡大平面図である。また、
図14は
図13に示す電極パッドに
図3に示すワイヤを接合した状態を示す拡大平面図である。また、
図15は、
図14に対する変形例を示す拡大平面図である。なお、
図13では、ワイヤボンディング前のパッドの形状を示すため、
図3に示すパッドPDにワイヤBWが接続される前の状態を示している。
【0089】
上記したようにスプラッシュ部SPP(
図8参照)は、超音波US1(
図12参照)の振動方向に延びるように形成される。本実施の形態の場合、超音波US1はX方向に沿って振動するので、隣り合うパッドPDのスプラッシュ部SPP同士の接触を防止する観点からは、X方向に沿って隣り合うパッドPDが存在する場合にのみ、パッドPDに溝TR1を形成すれば良い。つまり、
図5に示す例では、複数のパッドPDのうち、超音波の振動方向であるX方向とは交差するY方向に延びる辺CPs2に沿って配列される複数のパッドPD2には、溝TR1を形成しなくても隣り合うパッドPD同士は短絡しない。
【0090】
図15に示す変形例である半導体チップCHP1は、パッドPD2に溝TR1(
図14参照)を形成しない場合の変形例である。言い換えれば、半導体チップCHP1は、パッドPD2のそれぞれに溝TR1が形成されていない点で
図14に示す半導体チップCHPと相違する。半導体チップCHP1の場合、溝TR1を形成しないので、スプラッシュ部SPPの広がりは大きくなる。しかし、スプラッシュ部SPPの広がる方向にほかのパッドPDが形成されていないので、スプラッシュ部SPPに起因して隣り合うパッドPD同士が短絡することを防止できる。
【0091】
ただし、上記したように、スプラッシュ部SPPの広がりが大きくなることにより、スプラッシュ部SPPが破断して導電性異物になることを抑制する観点からは、
図13に示すように、パッドPD2にも溝TR1を形成することが好ましい。
【0092】
また、
図13に示すように、平面視においてパッドPD2の周縁部は、保護膜PVにより覆われている。したがって、ワイヤボンディング時にパッドPD2の周縁部に発生する応力に起因して保護膜PVに亀裂が生じることを抑制する観点からは、パッドPD2に溝TR1を形成することが好ましい。
【0093】
また、パッドPDにも溝TR1を形成する場合、
図13に示すように、超音波US1(
図12参照)の振動方向であるX方向と交差(
図13では直交)するY方向に延びる部分を有するように形成することが好ましい。上記したように、スプラッシュ部SPPは超音波US1の振動方向に沿って延びるので、溝TR1の延在方向も、超音波US1の振動方向に基いて設定することが好ましい。
【0094】
このため、
図8に示す複数のパッドPD1の場合、溝TR1は複数のパッドPD1の配列方向(X方向)に対して交差するY方向に延びるように溝TR1が形成される。一方、
図13に示す複数のパッドPD2の場合、溝TR1は複数のパッドPD2の配列方向(Y方向)に沿って延びるように溝TR1が形成される。
【0095】
このように複数のパッドPD2にも溝TR1を形成することで、
図14に示すようにスプラッシュ部SPPの広がりを抑制できるので、スプラッシュ部SPPの破断を抑制できる。また、複数のパッドPD2にも溝TR1を形成することで、ワイヤボンディング時のパッドPD2の排斥量を低減できるので、パッドPD2の周縁部に発生する応力に起因して保護膜PVに亀裂が生じることを抑制できる。
【0096】
<半導体装置の製造工程>
次に、
図1に示す半導体装置1の製造方法について、説明する。本実施の形態の半導体装置1は、
図16に示す組立てフローに沿って製造される。
図16は、本実施の形態の半導体装置の組み立てフローを示す説明図である。
【0097】
1.基板準備工程
まず、
図16に示す基板準備工程では、
図17に示すような配線基板MDSを準備する。
図17は、
図16に示す基板準備工程で準備する配線基板の全体構造を示す平面図である。
【0098】
図17に示すように、本工程で準備する配線基板MDSは、枠部MDSfの内側に複数のデバイス形成部MDSdを備えている。詳しくは、複数のデバイス形成部MDSdが行列状に配置されている。デバイス形成部MDSdの数は、
図17に示す態様に限定されないが、本実施の形態の配線基板MDSは、例えば、行列状(
図17では2行×8列)に配置された16個のデバイス形成部MDSdを備えている。つまり、配線基板MDSは、複数のデバイス形成部MDSdを有する、所謂、多数個取り基板である。
【0099】
各デバイス形成部MDSdは、
図4に示す配線基板WSに相当する。各デバイス形成部MDSdは、
図4に示す上面(表面、チップ搭載面)WSt、上面WStに形成された複数のボンディングリード(端子、チップ搭載面側端子、電極)BL、上面WStとは反対側の下面(裏面、実装面)WSb、および下面WSbに形成された複数のランド(端子、外部端子)LDを有している。複数のボンディングリードBLと複数のランドLDは、各デバイス形成部MDSdに形成された複数の配線WSw(
図4参照)を介して、それぞれ電気的に接続されている。
【0100】
また、各デバイス形成部MDSdの周囲には、
図16に示す個片化工程で配線基板MDSを切断する予定領域であるダイシング領域(ダイシングライン)MDScが配置されている。
図17に示すように、ダイシング領域MDScは、隣り合うデバイス形成部MDSdの間、および枠部MDSfとデバイス形成部MDSdの間、に各デバイス形成部MDSdを取り囲むように配置されている。
【0101】
2.半導体チップ準備工程
また、
図16に示す半導体チップ準備工程では、
図5に示す半導体チップCHPを準備する。本工程では、例えば、シリコンからなる半導体ウエハ(図示は省略)の主面側に、複数の半導体素子Q1(
図7参照)やこれに電気的に接続される配線層DL(
図7参照)からなる半導体ウエハを準備する。また、配線層DLの最上層には、複数のパッドPD(
図5参照)が形成される。
【0102】
また、複数のパッドPDが形成された最上層の配線層DLを覆うように、保護膜PV(
図7参照)を形成する。そして、複数のパッドPDのそれぞれの少なくとも一部が露出するように、保護膜PVに開口部PVk(
図8参照)が形成される。複数のパッドPDの露出縁側に形成される溝TR1(
図8および
図13参照)は、例えば、エッチング処理により形成することができる。
【0103】
上記した半導体ウエハを形成した後、半導体ウエハのダイシングラインに沿って、ダイシングブレードを走らせて(図示は省略)半導体ウエハを切断し、
図5に示す半導体チップCHPを複数個取得する。
【0104】
3.ダイボンディング工程
次に、
図16に示すダイボンディング工程では、
図18および
図19に示すように、配線基板MDSのデバイス形成部のチップ搭載領域上に、半導体チップCHPを搭載し、接着固定する。
図18は、
図17に示す配線基板上に半導体チップを搭載した状態を示す拡大平面図、
図19は
図18のA−A線に沿った拡大断面図である。
【0105】
本工程では、半導体チップCHPを配線基板MDSの各デバイス形成部MDSdの上面WStに配置されたチップ搭載領域上に搭載(接着固定)する。
図19に示すように、本実施の形態では、半導体チップCHPの裏面CPbが、配線基板MDSのデバイス形成部MDSdの上面WStと対向するように、ダイボンド材(接着材)DBを介して配線基板MDS上に搭載する、所謂、フェイスアップ実装方式で半導体チップCHPを搭載する。
【0106】
ダイボンド材DBは、半導体チップCHPと配線基板MDSとを接着固定する接着材であって、例えば、硬化前にはペースト状の性状を備えている。ペースト状の接着材を用いて半導体チップCHPを搭載する場合、半導体チップCHPを搭載する前に、デバイス形成部MDSdのチップ搭載領域にペースト状の接着材を予め配置しておく。そして、半導体チップCHPをチップ搭載領域に押し付けることで、ペースト状の接着材を押し広げた後、例えば加熱することにより接着材を硬化させて、半導体チップCHPを固定する。ただし、ダイボンド材DBは、上記に限定されるものではなく、例えば、DAF(Die Attach Film)と呼ばれる樹脂フィルム等を用いることができる。この場合、例えば、両面に接着層を備えるテープ材(フィルム材)であるダイボンド材DBを、予め半導体チップCHPの裏面CPbに貼り付けておき、テープ材を介して半導体チップCHPを接着する。その後、例えば、ダイボンド材DBに含まれる熱硬化性樹脂成分を熱硬化させて半導体チップCHPを固定する。
【0107】
4.ワイヤボンディング工程
次に、
図16に示すワイヤボンディング工程では、
図20および
図21に示すように、半導体チップCHPの複数のパッドPDと、配線基板MDSの複数のボンディングリードBLとを、複数のワイヤBWを介して電気的に接続する。
図20は、
図18に示す半導体チップと配線基板を、ワイヤボンディングにより電気的に接続した状態を示す拡大平面図、
図21は、
図20のA−A線に沿った拡大断面図である。また、
図22は、
図12に示すワイヤボンディング装置と、
図20に示す配線基板の平面的な位置関係を模式的に示す平面図である。また、
図23は、
図16のワイヤボンディング工程において、キャピラリの下端側から突出するワイヤの先端にボール部を形成した状態を示す要部拡大断面図である。また、
図24は、
図23に示すボール部とパッドを接触させた状態を示す要部拡大断面図である。また、
図25は、
図24に示すボール部に荷重を印加して押圧した状態を示す要部拡大断面図である。また、
図26は
図25に示すボール部に超音波を印加した状態を示す要部拡大断面図である。
【0108】
本工程では、
図20および
図21に示すように、配線基板MDSのデバイス形成部MDSdに形成された複数のボンディングリードBLと、半導体チップCHPの表面CPtに形成された複数のパッドPDとを、複数のワイヤ(導電性部材)BWを介してそれぞれ電気的に接続する。本実施の形態では、半導体チップCHPのパッドPDを第1ボンド側、配線基板MDSのボンディングリードBLを第2ボンド側とする、所謂、正ボンディング方式によりワイヤボンディングを行い、パッドPDとボンディングリードBLを電気的に接続する。
【0109】
以下、正ボンディング方式によるワイヤボンディング工程の詳細を説明する。なお、
図5〜
図15を用いて既に説明したように、本実施の形態では、パッドPDの露出面において、ワイヤBWのボール部BWbを接合する位置に溝TR1を形成することで、ボンディング時のパッドPDの排斥量を低減する。溝TR1の好ましい形状等については、既に説明した通りなので、重複する説明は省略する。
【0110】
本工程では、例えば
図22に示すように配線基板MDSが固定されたステージSTGの隣に、ワイヤボンディング装置WBDを配置する。配線基板MDSとワイヤボンディング装置WBDは例えば
図22に示すような位置関係で配置される。すなわち、ワイヤボンディング装置は、平面視においてX方向に沿ってホーンUSHが延びるように配置され、ホーンUSHを挟んで発振器USGの反対側に配線基板MDSが配置される。これにより、ワイヤBWのボール部BWb(
図12参照)にはX方向に沿って振動する超音波US1を印加することができる。
【0111】
また、ワイヤボンディング装置WBDは、
図12に示すキャピラリCP,ホーンUSH、および発振器USGを含むボンディングヘッド部を支持する支持部SUPを有する。支持部SUPは
図22に示すX−Y平面に沿って自在に移動させることが可能であり、支持部SUPとともにボンディングヘッドの位置を移動させることで、配線基板MDSの複数のパッドPDのそれぞれにワイヤBWを接続することができる。
【0112】
また、本実施の形態のワイヤボンディング工程では、
図23に示すように、キャピラリCPの下端側から突出するワイヤBWの端部に、ボール部BWbを形成する(ボール形成工程)。ボール部BWbは、ワイヤBWの先端に、図示しない電気トーチから放電させることにより形成される。
【0113】
次に、
図24に示すように、キャピラリCPを半導体チップCHPのパッドPDに向かって移動させて、ボール部BWbとパッドPDとを接触させる(ボール部接触工程)。この時、本実施の形態では、ボール部BWbと厚さ方向に重なる位置に、
図8や
図13に示すような溝TR1が形成されている。つまり、本工程では、ボール部BWbをパッドPDに形成された溝TR1の少なくとも一部分に向かって近づける。
【0114】
次に、
図25に示すように、キャピラリCPを介してボール部BWbに荷重を印加してボール部BWbをパッドPDの厚さ方向に押圧する(荷重印加工程)。この時、ボール部BWbおよびパッドPDは加熱されており、パッドPDとボール部BWbの密着界面では、パッドPDを構成するアルミニウムと、ボール部BWbを構成する金属(例えば銅)の合金層が形成される。
【0115】
次に、
図26に示すように、キャピラリCPを介してボール部BWbに超音波US1を印加してボール部BWbとパッドPDを接合する(超音波印加工程)。ボール部BWbに超音波US1を印加すると、超音波US1に起因してボール部BWbが振動する。この結果、ボール部BWbとパッドPDとの接合界面に、合金層が形成され易くなる。
【0116】
したがって、本実施の形態のように、超音波印加工程を行うことで、ワイヤボンディング工程におけるプロセス温度を低減できる。また、また、ボール部BWbとパッドPDの接合強度を向上させることができる。
【0117】
次に、ワイヤBWを繰り出しながら
図26に示すキャピラリの位置を移動させて、例えば
図21に示すようなループ形状を形成する。そして、
図21に示すようにワイヤBWの他部(
図26に示すボール部BWbとは反対側の端部)をボンディングリードBLに接合することで、ワイヤBWが形成される。
【0118】
ここで、上記したように、本工程で印加される超音波US1は、上記したように、
図22に示すホーンUSHの延在方向に沿って振動し、他の方向には振動しない。また、
図8〜
図15を用いて説明したように、本実施の形態では、パッドPDに溝TR1を形成し、溝TR1と重なる位置にボール部BWbを接合する。これにより、上記したように、超音波US1を印加しながらパッドPDとボール部BWbを接合することで生じるスプラッシュ部SPP(
図10参照)の平面積を小さくできる。
【0119】
また、本実施の形態では、ワイヤボンディング工程の前に、パッドPDには予め溝TR1(
図8参照)が形成されている。したがって、
図26に示す超音波US1は、ワイヤボンディング工程の任意のタイミングで印加することができる。
【0120】
例えば、本実施の形態によれば、ボール部BWbに対してキャピラリCPを介して超音波US1(
図22参照)を印加しながらパッドPDとボール部BWbを接触させることができる。この場合、ボール部BWbは、振動した状態でパッドPDと接触する。
【0121】
また例えば、
図25を用いて説明した加重印加工程において、ボール部BWbに対して超音波US1(
図26参照)を印加しながらボール部BWbに荷重を印加して、ボール部BWbをパッドPDの厚さ方向に押圧することができる。この場合、単にボール部BWbを押圧する場合よりもボール部BWbとパッドPDの間に合金層が形成され易いので、ワイヤボンディング工程でのプロセス温度を低減することができる。また、ボール部BWbとパッドPDの接合強度を向上させることができる。
【0122】
また例えば、上記荷重印加工程で、超音波US1を印加する場合には、
図26を用いて説明した超音波印加工程において、ボール部BWbに引き続いて荷重および超音波US1を印加することもできる。この場合、
図25を用いて説明した荷重印加工程と
図26を用いて説明した超音波印加工程の区別はなくなり、接合が完了した時点で、荷重の印加、および超音波US1の印加を停止する。
【0123】
ところで、
図22に示すワイヤボンディング装置WBDの支持部SUPは、
図22に示すX−Y平面において自在に移動させることが可能である。また、支持部SUPの移動量を調整することで、
図25に示すボール部BWbを押圧しながら、ボール部BWbとパッドPDの平面視における相対的な位置関係を移動させる動作(スクラブ動作と呼ぶ)を行うことが可能である。
【0124】
このスクラブ動作でボール部BWbに振動を与える場合、比較的低い周波数(例えば100Hz〜300Hz程度)でボール部BWbを機械的に振動させることができる。このため、スクラブ動作でボール部BWbに振動を与えれば、パッドPDの排斥量が大きくなった場合でも、
図34に示すようなスプラッシュ部SPPは発生し難い。また、スクラブ動作の場合、振動方向が一方向に限定されない。したがって、スクラブ動作で多方向に振動を加えることで、スプラッシュ部SPPが形成された場合でも。ボール部BWbを接続する部分の周囲に均等に広げることができる。このため、スプラッシュ部SPPの広がりを抑制することができる。
【0125】
そこで、本工程において、予めスクラブ動作を行い、パッドPDのうちのボール部BWbを接合する部分の厚さを薄くした後であれば、超音波US1(
図22参照)を印加してもスプラッシュ部SPPの広がりを抑制できる。
【0126】
しかし、スクラブ動作によってパッドPDの厚さを薄くする場合、一つのパッドPDにボール部BWbを接合するために要する時間が長くなる。また、スクラブ動作の場合、
図22に示す支持部SUPを機械的に動作させることで振動を印加するので、振動方向や、振動数を正確に制御することが難しい。
【0127】
したがって、本実施の形態のように、パッドPDに溝TR1(
図8参照)を形成することにより、スプラッシュ部SPPの広がりを抑制することが好ましい。溝TR1によりスプラッシュ部SPPの広がりを抑制することができれば、製造効率を向上させることができる点で好ましい。
【0128】
例えば、本実施の形態では、
図24を用いて説明したボール部接触工程の後、ボール部BWbに超音波US1が印加されるまでの間、スクラブ動作が行われない。別の見方をすれば、下記のように表現することもできる。すなわち、本実施の形態では、
図24を用いて説明したボール部接触工程、
図25を用いて説明した荷重印加工程、および
図26を用いて説明した超音波工程は、連続的に実施される。さらに別の見方をすれば、下記のように表現することもできる。すなわち、本実施の形態では、
図26に示す超音波US1は、
図24を用いて説明したボール部接触工程で、ボール部BWbとパッドPDを接触させた時の平面視における相対的な位置関係を維持した状態で印加される。
【0129】
したがって、本実施の形態によれば、スクラブ動作を行う時間を短縮できるので、複数のパッドPDのそれぞれに対する接合時間を短縮できる。これにより製造効率を向上させることができる。
【0130】
ただし、スプラッシュ部SPPの広がりを抑制する観点からは、スクラブ動作を省略することができるが、他の理由により、スクラブ動作が必要な場合には、例えば上記荷重印加工程や上記超音波印加工程でスクラブ動作を行っても良い。
【0131】
5.封止工程
次に、
図16に示す封止工程では、
図27に示すように、半導体チップCHPおよび複数のワイヤBWを樹脂で封止する。
図27は
図21に示す半導体チップおよび複数のワイヤを樹脂で封止した状態を示す拡大断面図である。
【0132】
本工程では、図示しないキャビティを備えている成形金型内に、配線基板MDSを配置して、配線基板MDSの上面WSt側を樹脂で封止した後、樹脂を硬化させて封止体MRを形成する、所謂、トランスファモールド方式により封止体MRを形成する。
【0133】
また、
図27に示す例では、複数のデバイス形成部MDSdを成形金型の一つのキャビティで一括して覆って樹脂封止する、所謂MAP(Mold Allay Process)と呼ばれる方式を適用して封止体MRを形成する例を示している。MAP方式の場合、複数のデバイス形成部MDSdを覆うように一体化された封止体MRを形成するので、ダイシング領域MDSc上も、封止体MRで覆われる。
【0134】
6.半田材形成工程
次に、
図16に示す半田材形成工程では、
図28に示すように、ランドLDのそれぞれの露出面を覆うように、半田ボールSBを形成する。
図28は、
図27に示す複数のランドのそれぞれの露出面に半田を形成した状態を示す拡大断面図である。
【0135】
本工程では、例えば、複数のランドLDの露出面に複数の半田ボールSBをそれぞれ配置して、リフロー処理を施すことにより、半田ボールSBを形成することができる。また、本実施の形態では、ランドLDの露出面に半田ボールSBを形成する実施態様を例示的に説明したが、半田ボールSBを形成しない変形例の場合には、本工程を省略することができる。また、本工程で、ランドLDの露出面に薄い半田膜を形成する場合もある。
【0136】
7.個片化工程
次に、
図16に示す個片化工程では、
図29に示すように、配線基板MDSのデバイス形成部MDSd毎に分割し、複数の半導体装置1を取得する。
図29は、
図28に示す配線基板をダイシングブレードで切断した状態を示す拡大断面図である。
【0137】
本工程では、
図29に示すように、ダイシングブレード(回転刃)DBLをダイシング領域(ダイシングライン)MDScに沿って走らせて、配線基板MDS、および封止体MRを切断(分割)し、デバイス形成部MDSd毎に個片化する。これにより、複数のデバイス形成部MDSdは、それぞれ隣のデバイス形成部MDSd、および枠部MDSfから切り離されて、複数の半導体装置1を取得する。なお、詳しくは、本工程の後、外観検査、電気的試験など、必要な検査、試験を行い、合格したものが、
図1に示す完成品の半導体装置1となる。そして、半導体装置1は出荷され、あるいは図示しない実装基板に実装される。
【0138】
<変形例>
以上、本願発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0139】
(変形例1)
例えば、上記実施の形態では、スプラッシュ部SPPの広がりを抑制するために、パッドPDの露出部に形成する溝TR1の例として、超音波US1の振動方向に対して直交する方向に延びる複数の短冊状の溝TR1を形成した例を取り上げて説明したが、パッドPDに形成する溝には種々の変形例がある。
図30は、
図8に対する変形例を示す拡大平面図である。また、
図31は、
図13に対する変形例を示す拡大平面図である。
【0140】
図30に示す変形例の半導体チップCHP2は、パッドPDの露出面に形成された開口部(溝)の形状が
図8に示す半導体チップCHPと相違する。詳しくは、半導体チップCHP2が有するパッドPDには、超音波US1(
図12参照)の振動方向に対して交差する、Y方向に沿って延びる複数の溝TR1と、複数の溝TR1のそれぞれと交差する、複数の溝TR2を有している。言い換えれば、パッドPDには、複数の溝TR1、TR2が格子状に形成されている。
【0141】
また、半導体チップCHP2のパッドPDに形成された複数の溝TR1と複数の溝TR2は互いに交差するので、一つの溝と見做すこともできる。この場合、以下のように表現することができる。すなわち、半導体チップCHP2のパッドPDに形成された溝は、超音波US1(
図12参照)の振動方向であるX方向と交差(
図13では直交)するY方向に延びる複数の第1部分(溝TR1に相当する部分)と、上記複数の第1部分のそれぞれと交差する複数の第2部分(溝TR2に相当する部分)と、を有する。
【0142】
上記実施の形態で説明したように、超音波US1(
図12参照)の振動方向は、ワイヤボンディング工程において使用するワイヤボンディング装置WBD(
図12参照)のホーンUSH(
図12)の延在方向によって決まる。したがって、半導体チップCHP2が搭載される向きによっては、超音波US1の振動方向がY方向になる場合もある。しかし、本変形例のように、複数の溝TR1、TR2を格子状に形成すれば、半導体チップCHP2の搭載時の向きによらず、スプラッシュ部SPP(
図10参照)の広がりを抑制できる。
【0143】
図16に示すダイボンディング工程において、
図18に示す半導体チップCHPを配線基板MDS上に搭載する時は、互いに接続されるパッドPDとボンディングリードBLが対向するように搭載される。したがって、半導体チップCHPの向きは、予め設計された通りに制御される。このため、例えば半導体チップCHPが一種類の製品の専用の半導体チップであれば、上記実施の形態で説明した態様の方が、溝TR1を単純な構造にできる。
【0144】
しかし、半導体チップCHPの汎用性を向上させる観点からは、本変形例のように、半導体チップCHP2の搭載時の向きによらず、スプラッシュ部SPP(
図10参照)の広がりを抑制できることが好ましい。
【0145】
また、半導体チップCHP2は、
図31に示すように、辺CPs2(
図5参照)に沿って配列される複数のパッドPD2にも格子状の溝TR1、TR2が形成されている。このため、半導体チップCHP2の汎用性をさらに向上させることができる。
【0146】
ところで、上記実施の形態で説明したように、本願発明者の検討によれば、
図10に示すスプラッシュ部SPPが開口部PVkの外側まで広がることを抑制する観点から、パッドPDのうち、ワイヤBWのボール部BWbと重なる部分の平均厚さは以下の値が好ましいことは、本変形例でも同様である。すなわち、パッドPDのうち、ワイヤBWのボール部BWbと重なる部分の平均厚さは、1μm以下が好ましい。また、パッドPDのうち、ワイヤBWのボール部BWbと重なる部分の平均厚さは、850nm以下が特に好ましい。
【0147】
例えば、
図30および
図31に示す例では、溝TR1および溝TR2の溝幅は、それぞれ5μm、隣り合う溝TR1の離間距離はX方向が10μmでY方向が5μm、溝深さは750nm、溝TR1の直下の部分の厚さは600nmになっている。この場合、パッドPDに接続するボール部BWbの直径によらず、パッドPDのうち、ワイヤBWのボール部BWbと重なる部分の平均厚さは、850nm以下になる。
【0148】
また例えば、
図32に示す半導体チップCHP3が有するパッドPDのように、幅が太い一本の溝TR1が形成された実施態様でも良い。あるいは、
図33に示す半導体チップCHP4が有するパッドPDのように、一本の溝TR1と、溝TR1に対して交差する一本の溝TR2が形成された実施態様でも良い。
図32および
図33は、それぞれ
図8に対する他の変形例を示す拡大平面図である。
【0149】
(変形例2)
また、例えば、上記実施の形態では、
図3に示す複数のワイヤBWのそれぞれが、銅、銀、または銅から成る基材にパラジウムから成る金属膜で覆った金属材料で形成された実施態様について説明した。しかし、変形例としては、金から成るワイヤと、銅、銀、または銅から成る基材にパラジウムから成る金属膜で覆った金属材料で形成されたワイヤBWとが混在する場合もある。この場合、金からなるワイヤを接続するパッドPDには溝TR1(
図8参照)を形成しなくても良い。一方、ボール部BWbが、金よりも硬い材料から成るワイヤBWを接続するパッドPDには、上記実施の形態や上記変形例で説明した溝TR1や溝TR2を形成することで、スプラッシュ部SPP(
図10参照)の広がりを抑制できる。
【0150】
(変形例3)
また、例えば、上記実施の形態では、半導体チップCHPのパッドPDと半導体装置1の外部端子となるボンディングリードBLとをワイヤボンディングにより電気的に接続する例として、配線基板WS上に半導体チップCHPを搭載しているエリアアレイ型の半導体装置を取り上げて説明した。しかし、上記実施の形態および各変形例として説明した技術は、例えば、半導体チップCHPを図示しないリードフレームのチップ搭載部上に搭載する、所謂、リードフレーム型の半導体装置にも適用できる。
【0151】
(変形例4)
さらに、上記実施の形態で説明した技術思想の要旨を逸脱しない範囲内において、変形例同士を組み合わせて適用することができる。
【0152】
また、上記実施の形態で説明した技術思想の要旨を逸脱しない範囲内において、上記した各実施の形態同士、あるいは、各実施の形態で説明した各変形例同士を組み合わせて適用することができる。
【0153】
また、上記各実施の形態で説明した半導体装置の製造方法について技術的思想を抽出すれば、下記のように表現することができる。
【0154】
〔付記1〕
表面、前記表面側に形成された保護膜、および前記保護膜に形成された開口部において前記保護膜から露出する第1電極パッドを有する半導体チップと、
先端に形成されたボール部を有し、前記第1電極パッドに前記ボール部が接合されるワイヤと、を有し、
前記ボール部は、金よりも硬い材料から成り、
前記第1電極パッドは、アルミニウムを主成分とする材料から成り、
前記第1電極パッドのうちの前記保護膜から露出した部分には、溝が形成されており、
前記第1電極パッドのうち、前記ワイヤが接合された部分の周囲には、第1方向に長手方向を有する扁平形状のスプラッシュ部が形成され、
前記第1電極パッドの前記溝は、前記ボール部と前記第1電極パッドとの接合部分を挟んで、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延びる第1部分を有する、半導体装置。