(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0012】
〔難燃樹脂組成物〕
本実施形態の難燃樹脂組成物は、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と、(b)縮合リン酸エステル系難燃剤と、(c)MFR(ISO 1133)が5〜20g/10分であるポリスチレン樹脂と、を含む。さらに、本実施形態の難燃樹脂組成物においては、前記(a)成分と(b)成分と(c)成分の合計量を100質量%としたときに、(a)成分の含有量Aが10〜28質量%であり、(b)成分の含有量Bが6〜23.3質量%であり、(c)成分の含有量Cが48.7〜84質量%であり、前記(a)成分と(b)成分の質量比(A/B)が1.2〜2.2であり、UL94 VB試験において、厚み0.8mmでクラスV−2である。このように構成されているため、本実施形態の難燃樹脂組成物は加工性、耐熱性、耐衝撃性及び難燃性において優れた物性バランスを発揮することができる。
【0013】
以下、本実施形態の難燃樹脂組成物の構成成分について説明する。
【0014】
((a)ポリフェニレンエーテル系樹脂)
本実施形態の難燃樹脂組成物は、(a)成分として、ポリフェニレンエーテル系樹脂(以下、単に「PPE」と記載する場合がある。)を含有する。ポリフェニレンエーテル系樹脂を含有するため、本実施形態の難燃樹脂組成物は、優れた難燃性及び耐熱性を有する。
【0015】
PPEは、下記(式1)で表される結合単位を含むホモ重合体、又は共重合体である。
【0017】
前記(式1)中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ、水素、ハロゲン、炭素数1〜7の第一級又は第二級アルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基及び少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択されるいずれかであり、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0018】
また、本実施形態で用いるPPEは、上記したホモ重合体、共重合体のほかに、該重合体とスチレン系モノマー若しくはその誘導体及び/又はα,β−不飽和カルボン酸若しくはその誘導体とを反応させることによって得られる公知の変性PPEであってもよい。ここで、上記スチレン系モノマー若しくはその誘導体及び/又はα,β−不飽和カルボン酸及びその誘導体のグラフト量又は付加量としては、(a)成分中で0.01〜10質量%であることが好ましい。反応の条件としては、以下に限定されないが、例えば、ラジカル発生剤の存在下又は非存在下で、溶融状態、溶液状態又はスラリー状態で、80〜350℃の温度下で行うことができる。さらに、上記したPPEと該変性PPEの任意の割合の混合物を(a)成分として用いることもできる。
【0019】
(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、加工時の流動性、靭性及び耐薬品性の観点から、0.5g/dlの濃度のクロロホルム溶液を用いて、30℃の条件下で測定した還元粘度が、0.15〜2.0(dl/g)の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.20〜1.0(dl/g)の範囲であり、さらに好ましくは0.30〜0.70(dl/g)の範囲である。
【0020】
前記PPEとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)等のホモ重合体が挙げられ、さらに、2,6−ジメチルフェノールと他のフェノール類(例えば、2,3,6−トリメチルフェノールや2−メチル−6−ブチルフェノール)との共重合体等の共重合体も挙げられる。特に、難燃樹脂組成物としたときの靭性と剛性のバランスや、原料の入手のし易さの観点から、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合体が好ましく、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)がより好ましい。
【0021】
前記PPEは、公知の方法により製造することができる。PPEの製造方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、米国特許第3306874号記載のHayによる第一銅塩とアミンのコンプレックスを触媒として用い、2,6−キシレノールを酸化重合する方法、その他、米国特許第3306875号、同第3257357号、同第3257358号、特公昭52−17880号公報、特開昭50−51197号公報、及び同63−152628号公報等に記載されている方法が挙げられる。
【0022】
本実施形態の難燃樹脂組成物における(a)成分の含有量Aは、(a)成分と(b)成分と(c)成分の合計量を100質量%としたときに、加工性、耐熱性、耐衝撃性及び難燃性の観点から10〜28質量%であり、好ましくは10〜25質量%であり、より好ましくは15〜25質量%である。この(a)成分の含有量Aが10〜28質量%の範囲であれば加工性、耐熱性、耐衝撃性及び難燃性のバランスを十分に良好なものとすることができる。
【0023】
((b)縮合リン酸エステル系難燃剤)
本実施形態の難燃樹脂組成物は、(b)縮合リン酸エステル系難燃剤を含む。そのため、上述した(a)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂の助難燃効果と(b)成分の難燃性付与効果とが相まって、本実施形態の難燃樹脂組成物に対する難燃性付与に大きな効果を奏する。
【0024】
(b)縮合リン酸エステル系難燃剤としては、以下に限定されないが、例えば、下記一般式(式2)により表されるリン酸エステル及び/又はその縮合物を用いることができる。
【0026】
(式2)中、R11、R12、R13及びR14は、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール置換アルキル基、アリール基、ハロゲン置換アリール基、及びアルキル置換アリール基からなる群より選ばれるいずれかを表し、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。Xはアリーレン基を表す。nは0〜5の整数である。
【0027】
なお、異なるn値を有するリン酸エステルの縮合物である場合、前記nはそれらの平均値を表す。n=0である場合は、(式2)の化合物は、リン酸エステル単量体を示す。
【0028】
代表的なリン酸エステル単量体としては、以下に限定されるものではないが、例えば、トリフェニルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、トリキシレニルフォスフェート等が挙げられる。
【0029】
縮合物としては、通常nは平均値で1〜5の値を取り得るが、好ましくは平均値で1〜3である。
【0030】
また、他の樹脂に混練した際に発現される難燃性及び耐熱性の観点から、前記(式2)中、R11、R12、R13及びR14のうち少なくとも一つがアリール基であることが好ましく、より好ましくはR11、R12、R13及びR14の全てがアリール基である。上記同様の観点から、好ましいアリール基としては、フェニル、キシレニル、クレジル又はこれらのハロゲン化誘導体が挙げられる。
【0031】
また、好ましいXのアリーレン基としては、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビスフェノールA、ビフェノール又はこれらのハロゲン化誘導体からそれぞれ2個の水酸基が脱離した残基が挙げられる。
【0032】
代表的な縮合型のリン酸エステル化合物としては、以下に限定されるものではないが、レゾルシノール−ビスフェニルホスフェート化合物、ビスフェノールA−ポリフェニルホスフェート化合物、ビスフェノールA−ポリクレジルホスフェート化合物等が挙げられる。
【0033】
本実施形態の難燃樹脂組成物における(b)縮合リン酸エステル系難燃剤の含有量Bは、(a)成分と(b)成分と(c)成分の合計量を100質量%としたときに、加工性、耐熱性、耐衝撃性及び難燃性の観点から6〜23.3質量%であり、好ましくは7〜20.8質量%であり、より好ましくは9〜20.8質量%である。この(b)成分の含有量Bが6〜28質量%の範囲であれば加工性、耐熱性、耐衝撃性及び難燃性のバランスを十分に良好なものとすることができる。
【0034】
本実施形態においては、加工性、耐熱性、耐衝撃性及び難燃性の観点から、(a)成分と(b)成分の質量比は、A/Bとして、1.2〜2.2であり、好ましくは1.4〜2.2、より好ましくは1.5〜2.2である。なお、上記のとおりAは(a)成分の質量%を示し、Bは(b)成分の質量%を示す。上記A/Bが1.2〜2.2の範囲であれば加工性、耐熱性、耐衝撃性及び難燃性のバランスを十分に良好なものとすることができる。
【0035】
さらに、本実施形態の難燃樹脂組成物は、上記(a)成分及び(b)成分と後述する所定の(c)成分とを所定比率で含むように構成されている。そのため、本実施形態の難燃樹脂組成物はUL94 VB(垂直燃焼)試験において厚み0.8mmでクラスV−2を達成できる。難燃性をより良好に確保する観点から、本実施形態の難燃樹脂組成物は、上記AとBがA≦3×B−7を満たすように構成されていることが好ましい。
【0036】
((c)MFR(ISO 1133)が、5〜20g/10分であるポリスチレン樹脂)
特定のMFRを有するポリスチレン樹脂を含有することにより、本実施形態の難燃樹脂組成物は、優れた加工性と難燃性を有する。
【0037】
本実施形態におけるポリスチレン樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、スチレン系化合物の単独重合体、2種以上のスチレン系化合物の共重合体、及びこれらスチレン系化合物の重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体を粒子状に分散させたゴム変性スチレン樹脂等が挙げられる。上記ポリスチレン樹脂は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、耐衝撃性の観点からホモポリスチレン樹脂及び/又はゴム変性スチレン樹脂(HIPS)が好ましい。
【0038】
上記ゴム変性スチレン樹脂は主に芳香族ビニル重合体よりなるマトリックス中にゴム状重合体が粒子状に分散してなる重合体をいい、ゴム状重合体の存在下に芳香族ビニル単量体を必須成分とする単量体混合物を加えて公知の塊状重合、塊状懸濁重合、溶液重合又は乳化重合することにより得られる。
【0039】
前記ゴム状重合体の例としては、ポリブタジエン、ポリ(スチレン−ブタジエン)等のジエン型ゴム及び上記ジエンゴムを水素添加した飽和ゴム;イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリアクリル酸ブチル等のアクリルゴム;エチレン−プロピレン−ジエンモノマー三元共重合体(EPDM)等を挙げることができ、特にジエン型ゴムが好ましい。
【0040】
上記ゴム状重合体の存在下に重合させるグラフト共重合可能な単量体混合物中の必須成分である芳香族ビニル単量体は、以下に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレン等が挙げられ、スチレンが特に好ましい。
【0041】
上記ゴム変性スチレン樹脂中のゴム状重合体成分の含有量は1〜15質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜15質量%であり、さらに好ましくは7〜15質量%である。また、芳香族ビニル重合体成分の含有量は99〜85質量%であることが好ましく、より好ましくは95〜85質量%であり、さらに好ましくは93〜85質量%である。上記の範囲内では、得られる難燃樹脂組成物の耐熱性、耐衝撃性及び剛性のバランスがより向上する傾向にあるため好ましい。
【0042】
本実施形態におけるポリスチレン樹脂の流動性の尺度であるMFR(ISO 1133)は、5〜20g/10分であり、好ましくは5〜18g/10分であり、より好ましくは7〜15g/10分である。ゴム変性スチレン樹脂のMFRに関する上記条件を満たすための手段としては、重合時での開始剤、重合温度、連鎖移動剤の調整、ペレタイズ時ではオイルの添加等が挙げられる。本実施形態に使用する場合、MFRが5以上になると加工性と難燃性が顕著に向上し、20以下にすることで耐熱性及び耐衝撃性に優れる難燃樹脂組成物を得ることができる。
【0043】
本実施形態の難燃樹脂組成物における(c)成分の含有量Cは、(a)成分と(b)成分と(c)成分の合計量を100質量%としたときに、加工性、耐衝撃性及び難燃性の観点から84〜48.7質量%であり、好ましくは84〜54.2質量%であり、より好ましくは79〜54.2質量%である。この(c)成分の含有量Cが84〜48.7質量%の範囲であれば加工性、耐熱性、耐衝撃性及び難燃性のバランスを十分に良好なものとすることができる。
【0044】
(その他の成分)
本実施形態の難燃樹脂組成物は、上述した成分の他に、難燃樹脂組成物の加工性、耐熱性、耐衝撃性又は難燃性を損なわない範囲で、必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
【0045】
このようなその他の成分としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化防止剤、金属不活性化剤、難燃剤((b)成分に該当しない有機リン酸エステル系化合物、ポリリン酸アンモニウム系化合物、シリコーン系難燃剤等)、可塑剤(低分子量ポリエチレン、エポキシ化大豆油、ポリエチレングリコール、脂肪酸エステル類等)、耐候(光)性改良剤、スリップ剤、無機又は有機の充填材や強化材(タルク、クロライト、マイカ、ガラスフレーク、ワラストナイト、ガラス繊維、炭素繊維、ポリアクリロニトリル繊維、アラミド繊維等)、各種着色剤、離型剤等が挙げられる。
【0046】
〔難燃樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態の難燃樹脂組成物は、上述した(a)〜(c)成分、さらに必要に応じてその他の成分を溶融混練することにより製造することができる。
【0047】
溶融混練を行う溶融混練機としては、以下に限定されないが、例えば、単軸押出機、二軸押出機を含む多軸押出機、ロール、ニーダー、ブラベンダープラストグラフ、バンバリーミキサー等による加熱溶融混練機が挙げられるが、特に、混練性の観点から、二軸押出機が好ましい。具体的には、WERNER&PFLEIDERER社製のZSKシリーズ、東芝機械(株)製のTEMシリーズ、日本製鋼所(株)製のTEXシリーズ等が挙げられる。
【0048】
押出機を用いた好ましい製造方法を以下に述べる。押出機のL/D(バレル有効長/バレル内径)は、20以上60以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは30以上50以下である。
【0049】
押出機の構成については特に限定されないが、例えば、原料の流れ方向に対し、上流側に第1原料供給口、これより下流に第1真空ベント、その下流に第2原料供給口を設け(必要に応じて、さらに第3、第4原料供給口を設けてもよい)、さらにその下流に第2真空ベントを設けたものが好ましい。特に、第1真空ベントの上流にニーディングセクションを設け、第1真空ベントと第2原料供給口の間にニーディングセクションを設け、また第2〜第4原料供給口と第2真空ベントの間にニーディングセクションを設けたものがより好ましい。
【0050】
前記第2〜第4原料供給口への原材料供給方法は、特に限定されるものではないが、押出機第2〜第4原料供給口の開放口よりの単なる添加供給よりも、押出機サイド開放口から強制サイドフィーダーを用いて供給する方法がより安定して供給できる傾向にあるため好ましい。
【0051】
特に、原料に粉体が含まれ、樹脂の熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減したい場合は、押出機サイドから供給する強制サイドフィーダーを用いた方法がより好ましく、強制サイドフィーダーを第2〜第4原料供給口に設け、これら原料の粉体を分割して供給する方法がさらに好ましい。
【0052】
また、液状の原材料を添加する場合は、プランジャーポンプ、ギアポンプ等を用いて押出機中に添加する方法が好ましい。
【0053】
そして、押出機第2〜第4原料供給口の上部開放口は、同搬する空気を抜くための開放口として使用することもできる。
【0054】
難燃樹脂組成物の溶融混練工程における溶融混練温度、スクリュー回転数に関しては、特に限定されるものではないが、通常、溶融混練温度を220〜280℃とし、スクリュー回転数を100〜1200rpmとする。
【0055】
さらに、樹脂の酸素存在下における熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減化させる場合、各原材料の押出機への添加経路における個々の工程ラインの酸素濃度を1.0体積%未満に保持することが好ましい。上記添加経路としては、特に限定されないが、具体例としては、ストックタンクから順に、配管、リフィルタンクを保有した重量式フィーダー、配管、供給ホッパー、二軸押出機、といった構成を挙げることができる。上記のような低い酸素濃度を維持するための方法としては、特に限定されないが、気密性を高めた個々の工程ラインに不活性ガスを導入する方法が有効である。通常、窒素ガスを導入して酸素濃度1.0体積%未満に維持することが好ましい。
【0056】
上述した難燃樹脂組成物の製造方法は、(a)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂がパウダー状(体積平均粒径が10μm未満)である場合、本実施形態の難燃樹脂組成物を二軸押出機を用いて製造する際に、二軸押出機のスクリューにおける残留物をより低減化する効果をもたらし、さらには上述した製造方法で得られた難燃樹脂組成物において、黒点異物や炭化物等の発生を低減化する効果をもたらす。
【0057】
本実施形態の難燃樹脂組成物の具体的な製造方法としては、各原料供給口の酸素濃度を1.0体積%未満に制御した押出機を用い、かつ下記1〜6のいずれかの方法を実施することが好ましい。
【0058】
1.本実施形態の難燃樹脂組成物に含まれる(a)成分の全量及び(c)成分の一部を溶融混練し(第一混練工程)、第一混練工程で得られた混練物に対し、(b)成分の全量、(c)成分の残量の順に供給し溶融混練を行う(第二混練工程)、製造方法であって、第一混練工程から第二混練工程において、前記混練物が溶融状態である、製造方法。
2.本実施形態の難燃樹脂組成物に含まれる(a)成分の全量及び(c)成分の全量を溶融混練し(第一混練工程)、第一混練工程で得られた混練物に対し、(b)成分の全量を供給し溶融混練を行う(第一混練工程)、製造方法であって、第一混練工程から第二混練工程において、前記混練物が溶融状態である、製造方法。
3.本実施形態の難燃樹脂組成物に含まれる(a)成分の全量及び(c)成分の一部を溶融混練してペレットを作製し、そのペレットに(b)成分の全量、(c)成分の残量の順に供給し溶融混練を行い、本実施形態の難燃樹脂組成物を製造する方法。
4.本実施形態の難燃樹脂組成物に含まれる(a)成分の全量、(b)成分の全量及び(c)成分の一部を溶融混練してペレットを作成し、そのペレットに(c)成分の残量を供給し溶融混練を行い、本実施形態の難燃樹脂組成物を製造する方法。
5.本実施形態の難燃樹脂組成物に含まれる(a)成分の全量及び(c)成分の全量を溶融混練してペレットを作製し、そのペレットに(b)成分の全量を供給し溶融混練を行い、本実施形態の難燃樹脂組成物を製造する方法。
6.本実施形態の難燃樹脂組成物に含まれる(a)成分の全量、(b)成分の全量、及び(c)成分の全量を溶融混練する方法。
【0059】
特に、前記1の製造方法で得られる難燃樹脂組成物は、上記2〜6の製造方法で得られる難燃樹脂組成物と比較して、(a)成分のポリフェニレンエーテル系樹脂の混合性に優れ、(c)成分の熱劣化を防ぐことができる。このため、樹脂の時間当たりの生産量を上げることができ、未溶融物がなく、熱履歴による架橋物や炭化物の発生を低減化させることができ、生産性、品質が優れた難燃樹脂組成物が得られるため、より好ましい。
【0060】
上記のとおり、生産性及び得られる難燃性樹脂組成物の品質をより良好にする観点から、本実施形態に係る難燃樹脂組成物の製造方法は、本実施形態の難燃樹脂組成物に含まれる(a)成分の全量と(c)成分の一部とを溶融混練させる第一混練工程と、当該第一混練工程によって得られた混練物と(b)成分の全量及び(c)成分の残量とを溶融混練させて前記難燃樹脂組成物を得る第二混練工程と、を含み、前記第一混練工程から第二混練工程において、前記混練物が溶融状態であることが好ましいといえる。ここで、「前記第一混練工程から第二混練工程において、前記混練物が溶融状態である」とは、(a)成分を一度溶融させてペレット化した後に再度溶融させる態様を除外する趣旨である。
【0061】
さらに1.の製造方法において、第一混練工程においては(a)成分/(c)成分の質量%比(A/C)が0.7〜5.0で溶融混練し、次いで第二混練工程においては(b)成分の全量、(c)成分の残量の順に供給し溶融混練を行い、前記第一混練工程から第二混練工程において、前記混練物が溶融状態である製造方法をとることで、更なる生産性向上を図ることができる。かかる(a)成分/(c)成分の質量%比は0.7〜5.0が好ましく、より好ましくは1.4〜4.0であり、さらに好ましくは1.4〜3.0である。この範囲内では得られる難燃樹脂組成物の未溶融物発生を抑制でき、押出時の吐出量を上げることができるため好ましい。
【0062】
〔成形品〕
本実施形態の難燃樹脂組成物を成形することにより所望の成形品が得られる。成形方法としては、以下に限定されるものではないが、例えば、射出成形、金属インモールド成形、アウトサート成形、押出成形、シート成形、フィルム成形、熱プレス成形、回転成形、積層成形等の成形方法が挙げられる。
【0063】
本実施形態の難燃樹脂組成物の成形品は、光学機器機構部品、光源ランプ周り部品、金属フィルム積層基板用シート又はフィルム、ハードディスク内部部品、光ファイバー用コネクタフェルール、プリンター部品、コピー機部品、自動車ラジエタータンク部品等の自動車エンジンルーム内部品や自動車ランプ部品等の成形品として広く使用することができる。
【実施例】
【0064】
以下、本実施形態について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0065】
実施例及び比較例に用いた物性の測定方法を以下に示す。
【0066】
((1)ポリスチレン樹脂のMFR)
ISO−1133に記載された方法により測定を行った。
【0067】
((2)難燃樹脂組成物中の未溶融物)
厚み0.8mmのUL94試験用試験片を用い、目視にて未溶融物数を測定した。
【0068】
((3)難燃樹脂組成物のMFR)
JIS−K7210に準拠し、温度250℃、荷重21Nの条件でMFRを測定した。
【0069】
((4)荷重たわみ温度)
JIS K7191−1に準拠し測定した。
【0070】
((5)ノッチ付シャルピー衝撃強さ)
JIS K7111−1に準拠し測定した。
【0071】
((6)難燃性(UL−94))
UL94(米国Under Writers Laboratories Incで定められた規格)の垂直燃焼試験方法に従って、1サンプル当たりそれぞれ5本ずつ試験を行った。
【0072】
実施例及び比較例に用いた原材料を以下に示す。
【0073】
<(a)成分:ポリフェニレンエーテル系樹脂>
(a1):2,6−キシレノールを酸化重合して得た還元粘度0.42(dl/g)のPPE。
【0074】
<(b)成分の縮合リン酸エステル系難燃剤>
(b1)芳香族縮合リン酸エステル(CR−741:大八化学工業(株)社製)
【0075】
<(c)成分のポリスチレン樹脂>
(c1): ハイインパクトポリスチレン(TOTAL社製 ポリスチレン4440)。ISO−1133に記載された方法により測定を行ったMFRは9.2g/10分であった。
(c2):ハイインパクトポリスチレン(PSジャパン社製 ポリスチレンH9405)。ISO−1133に記載された方法により測定を行ったMFRは2.8g/10分であった。
(c3):ハイインパクトポリスチレン(PSジャパン社製 ポリスチレン433)ISO−1133に記載された方法により測定を行ったMFRは21.0g/10分であった。
(c4):(c1)成分/(c2)成分=40質量%/60質量%の割合で予め押出しを行い、ペレット化したポリスチレン樹脂。ISO−1133に記載された方法により測定を行ったMFRは5.2g/10分であった。
(c5):(c1)成分/(c3)成分=6質量%/94質量%の割合で予め押出しを行い、ペレット化したポリスチレン樹脂。ISO−1133に記載された方法により測定を行ったMFRは19.8g/10分であった。
(c6):(c1)成分/(c2)成分=70質量%/30質量%の割合で予め押出しを行い、ペレット化したポリスチレン樹脂。ISO−1133に記載された方法により測定を行ったMFRは7.3g/10分であった。
(c7):(c1)成分/(c3)成分=50質量%/50質量%の割合で予め押出しを行い、ペレット化したポリスチレン樹脂。ISO−1133に記載された方法により測定を行ったMFRは14.6g/10分であった。
(c8):ホモポリスチレン(PSジャパン社製 ポリスチレン680)。ISO−1133に記載された方法により測定を行ったMFRは8.5g/10分であった。
【0076】
<(a)成分と他の成分との混合物>
(a2):(a1)成分/(c1)成分=20質量部/20質量部の割合で予め押出しを行い、ペレット化したポリフェニレンエーテル系樹脂とポリスチレン樹脂との混合物。
(a3):(a1)成分/(b1)成分/(c1)成分=20質量部/14質量部/20質量部の割合で予め押出しを行い、ペレット化したポリフェニレンエーテル系樹脂。
(a4):(a1)成分/(c1)成分=20質量部/66質量部の割合で予め押出しを行い、ペレット化したポリフェニレンエーテル系樹脂。
【0077】
<他の成分>
(d1):タルク(ハイトロン−A:竹原化学工業(株)社製)
【0078】
二軸押出機ZSK−40(WERNER&PFLEIDERER社製)を用い、原料の流れ方向に対し、上流側に第1原料供給口、これより下流に第一真空ベント、第2原料供給口を設け、さらにその下流に第二真空ベントを設け、第2原料供給口へは押出機上部開放口からギアポンプを用いて行った。
【0079】
上記のように設定した押出機を用い、上記に示した組成で(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と(c)ポリスチレン樹脂を第一原料供給口から、(b)縮合リン酸エステル系難燃剤を第二原料供給口から添加し、押出温度250〜300℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量100kg/時間の条件にて溶融混練し、ペレットを製造した。
【0080】
前記(c)成分の所定の特性を測定し、前記原材料を用いて実施例1〜
12,16,19〜24
、参考例13〜15,17,18及び比較例1〜9の難燃樹脂組成物を製造し、かつ特性評価を行った。
【0081】
〔実施例1〜
12,16,19〜24
及び参考例13〜15,17,18〕、〔比較例1〜9〕
二軸押出機ZSK−40(WERNER&PFLEIDERER社製)を用いて難燃樹脂組成物の製造を行った。この二軸押出機において、原料の流れ方向に対して上流側に第1原料供給口を設け、これより下流に第一真空ベント、第2原料供給口、及び第3原料供給口を設け、さらにその下流に第二真空ベントを設けた。
【0082】
また、第2、第3原料供給口への原材料供給は、固体原料の場合は押出機側部開放口から強制サイドフィーダーを用い、液体原料の場合は押出機上部開放口からギアポンプを用いて行った。
【0083】
上記のように設定した押出機を用い、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と(b)縮合リン酸エステル系難燃剤、(c)ポリスチレン樹脂、(d)その他成分を、下記表1〜表2に示す組成で配合し、押出温度220〜280℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量100〜240kg/時間の条件にて溶融混練し、各例に対応する難燃樹脂組成物のペレットを製造した。
【0084】
前記ペレットを用いて前記難燃樹脂組成物のMFRを(3)に示す方法により測定した。
【0085】
さらに、この難燃樹脂組成物のペレットを用いて、200〜260℃に設定したスクリューインライン型射出成形機に供給し、金型温度60℃の条件でJIS K7152−1及びK7313−2に準拠し、JIS K7139試験片を製造し、シャルピー衝撃強度測定用試験片、荷重たわみ温度測定用試験片を得た。これらを用いて、それぞれ(5)シャルピー衝撃強度、(4)荷重たわみ温度を測定した。
【0086】
また、難燃性試験片としては、同上の射出成形条件にて長さ127mm、幅12.7mm、厚み0.8mmの試験片を成形した。これを用い、(2)難燃樹脂組成物中の未溶融物を測定した。さらにUL94に準拠した垂直燃焼試験を行い、(6)難燃性(UL94)の評価を行った。
【0087】
これらの測定結果を下記表1及び表2に示す。表1〜表2に示すように、実施例1〜
12,16,19〜24
及び参考例13〜15,17,18の難燃樹脂組成物は、加工性、耐熱性に優れ、さらに耐衝撃性及び難燃性とのバランスにも優れていることが分かった。さらに、特定の製造方法を取ることにより、生産性を飛躍的に向上させることができることも分かった。比較例1〜9は、実施例と比較して、少なくとも難燃性に劣る結果となった。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】