(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒダントイナーゼは、以下の基質ヒダントイン、5−メチルヒダントイン、5−ベンジルヒダントイン、5−(4−ヒドロキシベンジル)ヒダントイン、5−インドリルメチルヒダントイン、5−(3,4−ジヒドロキシベンジル)ヒダントイン、5−メチルチオエチルヒダントイン、5−イソプロピルヒダントイン、5−イソブチルヒダントイン、5−sec−ブチルヒダントイン、5−(4−アミノブチル)ヒダントイン、5−ヒドロキシメチルヒダントイン、又は非天然アミノ酸に相応する5−置換ヒダントイン化合物、それぞれその誘導体のうち少なくとも1つを各々のカルバモイルアミノ酸に変換し、ここで前記基質の変換に関するヒダントイナーゼの触媒活性は、D−5−インドリルメチルヒダントインの変換に関して、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼの触媒活性よりも少なくとも、上記で定義されたζ倍高い、請求項1から3までのいずれか1項に記載のヒダントイナーゼ。
D−ヒダントインのエナンチオ選択性は、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼのエナンチオ選択性よりも少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、50倍、100倍、又は150倍高い、請求項1から4までのいずれか1項に記載のヒダントイナーゼ。
前記5−置換ヒダントインは、D,L−5−置換ヒダントイン、D,L−5−インドリルメチルヒダントイン(=D,L−トリプトファンヒダントイン)、D−5−置換ヒダントイン、D−5−インドリルメチルヒダントン(=D−トリプトファンヒダントイン)から選択される、請求項10に記載の方法。
反応培地に用意される前記5−置換ヒダントインは、L−5−置換ヒダントイン又はD,L−5−置換ヒダントインであり、かつ更にヒダントインラセマーゼ活性は、L−5−置換ヒダントイン又はD,L−5−置換ヒダントインをD−5−置換ヒダントインに変換するために工程(a)で反応培地に用意される、請求項10又は11に記載の方法。
反応培地は、部分的に又は全体的に細胞培養培地から成る培地であり、かつヒダントイナーゼ活性は請求項8又は9に記載の宿主細胞により用意され、かつ宿主細胞は前記反応培地中で培養される、請求項12又は13のいずれか1項に記載の方法。
反応培地は部分的に又は全体的に細胞培養培地から成る培地であり、かつカルバモイラーゼ活性は、請求項8又は9に記載の宿主細胞又は第二の宿主細胞により用意され、かつ前記宿主細胞は前記反応培地中で培養される、請求項10から14までのいずれか1項に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にヒダントイナーゼに関する。より具体的には、本発明は以前に単離されたヒダントイナーゼに対して増大した酵素活性を示す一連の変性ヒダントイナーゼならびにアミノ酸を製造する方法におけるそれらの使用、特にホールセル触媒におけるそれらの使用に関する。
【0002】
関連分野の説明
酵素を使用してアミノ酸を製造する方法は公知である。更に、化学的に廉価に合成された出発材料としての5−置換ヒダントイン化合物の光学活性アミノ酸への非対称的分解に関する方法がある。5−置換ヒダントイン化合物から光学活性アミノ酸を製造するこれらの方法は、製剤調製物、化学工業における製品、食品添加剤などの製造に重要である。
【0003】
5−置換ヒダントイン化合物からのアミノ酸を製造するこの方法では、2つの酵素が必要である:(1)加水分解により、5−置換ヒダントイン化合物を各々のN−カルバモイルアミノ酸に変換することによりN−カルバモイルアミノ酸を形成する反応を触媒するヒダントイナーゼ(ヒダントイン加水分解酵素)と称される酵素;
(2)加水分解により前記のN−カルバモイルアミノ酸を各々のアミノ酸に変換することにより、光学活性アミノ酸を形成する反応を触媒するN−カルバモイルアミノ酸ヒドロラーゼと称される酵素。
【0004】
以後、本明細書内では“ヒダントイナーゼ”と称することになるヒダントイン加水分解酵素は、幅広い特異性と生物学的機能を有する様々なクラスの酵素を含む。ヒダントイナーゼの重要な特性はエナンチオ選択性であり、光学的に純粋なD−又はL−アミノ酸の製造にとって価値あるものにする。5−置換ヒダントイン化合物から光学活性アミノ酸を製造するために、ヒダントイナーゼ及び/又はN−カルバモイルアミノ酸ヒドロラーゼは、エナンチオ選択的酵素でなくてはならない。L−アミノ酸生産微生物により、又は微生物により生産される酵素含有材料によりL−アミノ酸を製造する方法が記載されていて、その際、多様な属、例えば、フラボバクテリウム、バシラス、ジュードモナス及びアルスロバクター(J.Biotechnol.46,63,1996)が用いられていた。
【0005】
ヒダントイナーゼ遺伝子及びN−カルバモイルアミノ酸ヒドロラーゼ遺伝子は、アルスロバクター属の微生物から単離されており、かつこれらの遺伝子によりコードされる組換えタンパク質はL−アミノ酸を生産するために使用されていた。
【0006】
光学的に純粋なアミノ酸を生産するヒダントイナーゼの重要性の観点から、アミノ酸生産に関して改善された特性を有する変性酵素を開発するために集中した尽力がなされてきた。この尽力の結果、多くの微生物が単離され、かつ望ましい酵素特性を有するヒダントイナーゼを生産する微生物が単離及び同定された。米国特許第5516660号には、D−、L−及び/又はD,L−5−モノ置換されたヒダントインからL−α−アミノ酸を生産できるヒダントイナーゼを生産するアルスロバクター種の株が開示されている。
【0007】
より最近の開発は、ホールセル触媒技術を利用する各々のヒダントインからの工業規模でのD−アミノ酸及びL−アミノ酸の生産である(WO2002/077212、WO2004/042047、WO2000/058449、WO2003/042412)。触媒には、大腸菌のような微生物中で共有発現させたD−ヒダントイナーゼ、ヒダントインラセマーゼ及びD−カルバモイラーゼが含まれる。
【0008】
国際特許明細書WO00/58449には、約40%の活性の増大を生じたアルスロバクターに由来するヒダントイナーゼの突然変異体が開示されている。
【0009】
入手可能なアルスロバクター種から由来するこれらの標準の触媒の試験は、各々のトリプトファンヒダントインからのD−トリプトファンの生産が可能であるが、しかし極めて低い変換率であることを示した。この低い変換率は、入手可能な野生型アルスロバクター種のヒダントイナーゼが基質としてのトリプトファンヒダントインを受容する不十分な特性による。
【0010】
本発明の目的は、5−置換ヒダントイン、有利にはトリプトファンヒダントインに関して増大した変換率を有するヒダントイナーゼを提供すること、ならびに特にヒダントインラセマーゼ、ヒダントイナーゼ及びカルバモイラーゼを使用し、有利には大腸菌宿主中で共有発現させてL−トリプトファンヒダントインから出発して、アミノ酸、有利にはD−トリプトファンの製法を提供することであった。
【0011】
従って、本発明の対象は特にトリプトファンヒダントインに関して増大した変換率で、改善されたヒダントイナーゼを提供することであった。更に、ヒダントイナーゼのエナンチオ選択性を増大するのが有益であろう。
【0012】
本発明のまとめ
本発明の対象は、(i)又は(ii):
(i)配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118又は配列番号119から選択されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118又は配列番号119のアミノ酸配列中、1〜ψ個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入及び/又は付加されているアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼにより解決され、その際、ψはψ=75と定義され、及び更にヒダントイナーゼの触媒活性は、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼの触媒活性よりも少なくともζ倍だけ高く、及びζはζ=1.2と定義される。
【0013】
本発明に関連して、別途定義が無い限りヒダントイナーゼの触媒活性は、5−置換D−ヒダントイン化合物の相応するD−カルバモイルアミノ酸への変換に関するこの酵素の触媒活性として解釈されることになる。
【0014】
本発明に関連して、ヒダントイナーゼのエナンチオ選択性は、D
act/L
actの比として定義され、ここでD
act=5−置換D−ヒダントイン化合物を相応するD−カルバモイルアミノ酸へ変換する酵素の触媒活性であり、及びL
act=5−置換D−ヒダントイン化合物のエナンチオマーを相応するD−カルバモイルアミノ酸のエナンチオマーへ変換するこの酵素の触媒活性である。言い換えると、L
act=相応する5−置換L−ヒダントイン化合物を相応するL−カルバモイルアミノ酸に変換するこの酵素の触媒活性である。
【0015】
本発明に関連して、アミノ酸の付加という用語は、ポリペプチドのN−末端又はC−末端でのアミノ酸残基の付加を意味する。
【0016】
本発明の有利な実施態様では、ψは、70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1から選択される。
【0017】
本発明の更に有利な実施態様では、ζは1.5、2、3、4、5、10、15、20、25又は30から選択される。
【0018】
本発明の更に有利な実施態様では、ψとζは、以下のものから選択される:
ψ=70及びζ=1.5、ψ=70及びζ=2、ψ=70及びζ=3、ψ=70及びζ=4、ψ=70及びζ=5、ψ=70及びζ=10、ψ=70及びζ=15、ψ=70及びζ=20、ψ=70及びζ=25、ψ=70及びζ=30、
ψ=60及びζ=1.5、ψ=60及びζ=2、ψ=60及びζ=3、ψ=60及びζ=4、ψ=60及びζ=5、ψ=60及びζ=10、ψ=60及びζ=15、ψ=60及びψ=20、ψ=60及びζ=25、ψ=60及びζ=30、
ψ=50及びζ=1.5、ψ=50及びζ=2、ψ=50及びζ=3、ψ=50及びζ=4、ψ=50及びζ=5、ψ=50及びζ=10、ψ=50及びζ=15、ψ=50及びψ=20、ψ=50及びζ=25、ψ=50及びζ=30、
ψ=40及びζ=1.5、ψ=40及びζ=2、ψ=40及びζ=3、ψ=40及びζ=4、ψ=40及びζ=5、ψ=40及びζ=10、ψ=40及びζ=15、ψ=40及びψ=20、ψ=40及びζ=25、ψ=40及びζ=30、
ψ=30及びζ=1.5、ψ=30及びζ=2、ψ=30及びζ=3、ψ=30及びζ=4、ψ=30及びζ=5、ψ=30及びζ=10、ψ=30及びζ=15、ψ=30及びψ=20、ψ=30及びζ=25、ψ=30及びζ=30、
ψ=20及びζ=1.5、ψ=20及びζ=2、ψ=20及びζ=3、ψ=20及びζ=4、ψ=20及びζ=5、ψ=20及びζ=10、ψ=20及びζ=15、ψ=20及びψ=20、ψ=20及びζ=25、ψ=20及びζ=30、
ψ=10及びζ=1.5、ψ=10及びζ=2、ψ=10及びζ=3、ψ=10及びζ=4、ψ=10及びζ=5、ψ=10及びζ=10、ψ=10及びζ=15、ψ=10及びψ=20、ψ=10及びζ=25、ψ=10及びζ=30、
ψ=9及びζ=1.5、ψ=9及びζ=2、ψ=9及びζ=3、ψ=9及びζ=4、ψ=9及びζ=5、ψ=9及びζ=10、ψ=9及びζ=15、ψ=9及びψ=20、ψ=9及びζ=25、ψ=9及びζ=30、
ψ=8及びζ=1.5、ψ=8及びζ=2、ψ=8及びζ=3、ψ=8及びζ=4、ψ=8及びζ=5、ψ=8及びζ=10、ψ=8及びζ=15、ψ=8及びψ=20、ψ=8及びζ=25、ψ=8及びζ=30、
ψ=7及びζ=1.5、ψ=7及びζ=2、ψ=7及びζ=3、ψ=7及びζ=4、ψ=7及びζ=5、ψ=7及びζ=10、ψ=7及びζ=15、ψ=7及びψ=20、ψ=7及びζ=25、ψ=7及びζ=30、
ψ=6及びζ=1.5、ψ=6及びζ=2、ψ=6及びζ=3、ψ=6及びζ=4、ψ=6及びζ=5、ψ=6及びζ=10、ψ=6及びζ=15、ψ=6及びψ=20、ψ=6及びζ=25、ψ=6及びζ=30、
ψ=5及びζ=1.5、ψ=5及びζ=2、ψ=5及びζ=3、ψ=5及びζ=4、ψ=5及びζ=5、ψ=5及びζ=10、ψ=5及びζ=15、ψ=5及びψ=20、ψ=5及びζ=25、ψ=5及びζ=30、
ψ=4及びζ=1.5、ψ=4及びζ=2、ψ=4及びζ=3、ψ=4及びζ=4、ψ=4及びζ=5、ψ=4及びζ=10、ψ=4及びζ=15、ψ=4及びψ=20、ψ=4及びζ=25、ψ=4及びζ=30、
ψ=3及びζ=1.5、ψ=3及びζ=2、ψ=3及びζ=3、ψ=3及びζ=4、ψ=3及びζ=5、ψ=3及びζ=10、ψ=3及びζ=15、ψ=3及びψ=20、ψ=3及びζ=25、ψ=3及びζ=30、
ψ=2及びζ=1.5、ψ=2及びζ=2、ψ=2及びζ=3、ψ=2及びζ=4、ψ=2及びζ=5、ψ=2及びζ=10、ψ=2及びζ=15、ψ=2及びψ=20、ψ=2及びζ=25、ψ=2及びζ=30、
ψ=1及びζ=1.5、ψ=1及びζ=2、ψ=1及びζ=3、ψ=1及びζ=4、ψ=1及びζ=5、ψ=1及びζ=10、ψ=1及びζ=15、ψ=1及びψ=20、ψ=1及びζ=25、ψ=1及びζ=30。
【0019】
本発明によれば、微生物であるアルスロバクター種により生産される野生型ヒダントイナーゼと比べて増大した触媒活性を有する変性ヒダントイナーゼ(ヒダントイン加水分解酵素)が提供される。更に本発明のヒダントイナーゼは微生物であるアルスロバクター種により生産される野生型ヒダントイナーゼと比べて増大したエナンチオ選択性を有していてもよい。本発明によるヒダントイナーゼは、5−置換ヒダントイン化合物、特にD−トリプトファンヒダントインに関して、増大した変換率を有し、よってD−アミノ酸を製造する方法において適切である。このような方法は、有利には各々のトリプトファンヒダントインから出発して、特にD−ヒダントイナーゼ、D−カルバモイラーゼ及び任意でヒダントインラセマーゼを用いるD−トリプトファンの生産に適切である。これらの酵素は、有利には大腸菌のような微生物中で共有発現されている。5−置換ヒダントイン化合物からアミノ酸を製造するこの方法において、ヒダントイナーゼは、5−置換ヒダントイン化合物、有利には(D−トリプトファンヒダントイン)を加水分解して各々のN−カルバモイルアミノ酸(有利にはN−カルバモイルD−トリプトファン)を生じることにより、N−カルバモイルアミノ酸を形成する反応を触媒する。このN−カルバモイルアミノ酸は、N−カルバモイルアミノ酸ヒドロラーゼにより加水分解され、各々のアミノ酸(有利にはD−トリプトファン)を形成する。
【0020】
トリプトファンを製造するために、出発材料としてD,L−トリプトファンヒダントイン又はL−トリプトファンヒダントインを使用してもよく、その際、特にヒダントインラセマーゼの存在は、本発明のヒダントイナーゼのためのD−トリプトファンヒダントイン基質を提供するために適切である。このような方法は、特にヒダントインラセマーゼ、D−ヒダントイナーゼ及びD−カルバモイラーゼを使用して、各々のD,L−又はL−トリプトファンヒダントインから出発してD−トリプトファンを製造するために適切である。これらの3個の酵素は、有利には大腸菌のような微生物中で共有発現される。
【0021】
当業者は特定の参照配列の特定のアミノ酸の位置(例えば、152)に関して得られる情報を変異型ヒダントイナーゼならびに同位体のアミノ酸配列に置き換えることができることを理解している:当業者は変異型配列を有する参照アミノ酸配列を配置し、かつ変異型配列中で相応する位置(例えば、アミノ酸の位置152)を決定できる。この実施例に関連して、当業者は参照配列中、参照配列のアミノ酸の位置152に相当するアミノ酸位置は、必ずしも変異型アミノ酸配列の152番目のアミノ酸残基でなくてもよいが、変異型酵素の3次元構造中では同じ位置を有することを理解している。アミノ酸配列を配置する方法は、更に以下に詳細に説明されている。他の方法を用いて、参照配列と比べて変異型配列中で相応する位置を決定することもできる。
【0022】
図の説明
図1は、プラスミドpAS6−HyuHであり、これは配列番号1のアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼを発現する野生型遺伝子hyuHと配列番号4のアミノ酸配列を有するD−カルバモイラーゼを発現する遺伝子を含んでいる。プラスミドマップに示されている略語は、以下の要素から成る:D−Carb.=D−カルバモイラーゼ遺伝子NRRL、Agrobacterium sp.;rhaP=ラムノースプロモーター;hyuH=ヒダントイナーゼDSM9771;rrnB=転写ターミネーター;bla=β−ラクタメーゼ;ori=複製起点ColE1。
【0023】
配列の説明
本発明に関連して、時折ポリペプチド配列の変異型は、フォーマットAA1XAA2中の元の配列と比較して変異型配列中に存在する各アミノ酸の置換を示すことにより説明される。その際、AA1は元の配列中の位置Xに存在するアミノ酸残基を意味し、及びAA2は、変異体の配列中の位置Xに存在するアミノ酸残基を意味する。
【0024】
配列番号1は、アルスロバクター種からの野生型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示している。
【0025】
配列番号2は、アルスロバクター種からの野生型ヒダントイナーゼをコードするヌクレオチド配列を示している。
【0026】
配列番号3は、アルスロバクター種からの野生型ヒダントイナーゼラセマーゼのアミノ酸配列を示している。
【0027】
配列番号4は、アルスロバクター種からの野生型D−カルバモイラーゼのアミノ酸配列を示している。
【0028】
配列番号5は、参照としてのアミノ酸配列を示し、その際、152、64、71、72、95、154、181、284、285、398及び452位のアミノ酸残基Xは請求項に記載の通りに定義されていて、かつ152位のアミノ酸残基はアラニン以外の任意のアミノ酸残基を示す。
【0029】
配列番号6は、152位のアラニンがグリシンに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0030】
配列番号7は、152位のアラニンがシステインに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0031】
配列番号8は、152位のアラニンがセリンに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0032】
配列番号9は、152位のアラニンがトレオニンに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0033】
配列番号10は、152位のアラニンがバリンに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0034】
配列番号11は、152位のアラニンがセリンに及び154位のバリンがイソロイシンに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0035】
配列番号12は、152位のアラニンがバリンに、及び154位のバリンがシステインに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0036】
配列番号13は、152位のアラニンがシステインに、及び154位のバリンがセリンに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0037】
配列番号14は、71位のアルギニンがアスパラギン
酸に置換され、及び72位のチロシンがヒスチジンに置換され及び152位のアラニンがセリンに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0038】
配列番号15は、71位のアルギニンがアスパラギン
酸に置換され、及び72位のチロシンが
アスパラギンに置換され及び152位のアラニンがセリンに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0039】
配列番号16は、71位のアルギニンがバリンに置換され、及び72位のチロシンが
アスパラギンに置換され、及び152位のアラニンがセリンに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0040】
配列番号17は、71位のアルギニンがセリンに置換され、及び72位のチロシンが
アスパラギンに置換され、及び152位のアラニンがシステインに置換され、及び154位のバリンがセリンに置換され、及び181位のバリンがアラニンに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0041】
配列番号18は、71位のアルギニンがチロシンに置換され、及び72位のチロシンが
アスパラギンに置換され、及び152位のアラニンがセリンに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0042】
配列番号19は、71位のアルギニンがロイシンに置換され、及び152位のアラニンがシステインに置換され、及び154位のバリンがセリンに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0043】
配列番号20は、71位のアルギニンがチロシンに置換され、及び72位のチロシンがヒスチジンに置換され、及び152位のアラニンがセリンに置換されている変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す。
【0044】
配列番号21〜72は、表1に示されているようにヒダントイナーゼの様々なアミノ酸の位置で突然変異誘発に使用されたプライマー配列を示している。
【0045】
配列番号73は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:I95H。
【0046】
配列番号74は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:V154G。
【0047】
配列番号75は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:V154N。
【0048】
配列番号76は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:R71D。
【0049】
配列番号77は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:R71E。
【0050】
配列番号78は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:V284F。
【0051】
配列番号79は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:V154A。
【0052】
配列番号80は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:I64T。
【0053】
配列番号81は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:I64V。
【0054】
配列番号82は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:V154S。
【0055】
配列番号83は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:V154A、T398A、H452L。
【0056】
配列番号84は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:A152S、V154I。
【0057】
配列番号85は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:R71D、Y72H、A152S。
【0058】
配列番号86は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:R71V、Y72N、A152S。
【0059】
配列番号87は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:R71S、Y72N、A152C、V154S、V181A。
【0060】
配列番号88は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:R71D、Y72N、A152S。
【0061】
配列番号89は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:R71Y、Y72N、A152S。
【0062】
配列番号90は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:I64V、R71I、Y72N、A152S。
【0063】
配列番号91は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:I64C、R71Y、Y72N、A152S。
【0064】
配列番号92は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0065】
配列番号93は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:I64C、R71D、Y72H、A152S、F448L。
【0066】
配列番号94は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:I64C、R71D、Y72H、A152S、M417V。
【0067】
配列番号95は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14G、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0068】
配列番号96は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S37G、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0069】
配列番号97は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14G、I64C、R71D、Y72H、A152S、E358K。
【0070】
配列番号98は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S37R、I64C、R71D、Y72H、A152S、V318A。
【0071】
配列番号99は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S37R、I64C、R71D、Y72H、A152S、N303S、Q404R。
【0072】
配列番号100は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14G、I64C、R71D、Y72H、A152S、N70D。
【0073】
配列番号101は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14G、I64C、R71D、Y72H、A152S、V154A。
【0074】
配列番号102は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S37G、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0075】
配列番号103は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14A、S37G、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0076】
配列番号104は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14V、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0077】
配列番号105は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14G、S37G、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0078】
配列番号106は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14A、S37W,I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0079】
配列番号107は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14A、S37V、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0080】
配列番号108は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:D15N、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0081】
配列番号109は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14V、S37R、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0082】
配列番号110は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:D15N、I64C、R71D、Y72H、A152S、V154C。
【0083】
配列番号111は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:D15N、I64C、R71D、Y72H、A152S、V154I。
【0084】
配列番号112は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14P、D15G、S37G、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0085】
配列番号113は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14G、D15R、S37G、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0086】
配列番号114は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14G、D15Q、S37G、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0087】
配列番号115は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14F、D15A、S37G、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0088】
配列番号116は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:D15S、S37G、I64C、R71D、Y72H、A152S。
【0089】
配列番号117は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14P、D15G、S37G、R71D、Y72H、A152S。
【0090】
配列番号118は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:S14P、D15G、S37G、I64C、R71D、Y72H。
【0091】
配列番号119は、配列番号1と比べて以下の置換を有する変異型ヒダントイナーゼのアミノ酸配列を示す:D15S、S37G、I64C、R71D、Y72H。
【0092】
本発明の詳細な説明
上記のように本発明は、増大した触媒活性、及び任意で、D−5−置換ヒダントイン基質に対して、特にD−トリプトファンヒダントインに対して増大したエナンチオ選択性を有するアルスロバクター種からの配列番号1のアミノ酸配列を有する野生型ヒダントイナーゼから誘導される新規ヒダントイナーゼを提供する。
【0093】
本発明によるヒダントイナーゼは、(i)又は(ii)
(i)配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118又は配列番号119から選択されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、配列番号77、配列番号78、配列番号79、配列番号80、配列番号81、配列番号82、配列番号83、配列番号84、配列番号85、配列番号86、配列番号87、配列番号88、配列番号89、配列番号90、配列番号91、配列番号92、配列番号93、配列番号94、配列番号95、配列番号96、配列番号97、配列番号98、配列番号99、配列番号100、配列番号101、配列番号102、配列番号103、配列番号104、配列番号105、配列番号106、配列番号107、配列番号108、配列番号109、配列番号110、配列番号111、配列番号112、配列番号113、配列番号114、配列番号115、配列番号116、配列番号117、配列番号118又は配列番号119のアミノ酸配列中、1〜ψ個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入及び/又は付加されているアミノ酸配列
から選択されるアミノ酸配列を有し、その際、ψはψ=75と定義され、及び更にヒダントイナーゼの触媒活性は、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼの触媒活性よりも少なくともζ倍だけ高く、及びζはζ=1.2と定義される。
【0094】
本発明に関連して、別途定義が無い限りヒダントイナーゼの触媒活性は、5−置換D−ヒダントイン化合物の相応するD−カルバモイルアミノ酸への変換に関するこの酵素の触媒活性として定義されることになる。
【0095】
本発明に関連して、ヒダントイナーゼのエナンチオ選択性は、D
act/L
actの比として定義され、ここでD
act=5−置換D−ヒダントイン化合物を相応するD−カルバモイルアミノ酸へ変換するこの酵素の触媒活性であり、及びL
act=5−置換D−ヒダントイン化合物のエナンチオマーを相応するD−カルバモイルアミノ酸のエナンチオマーへ変換する酵素の触媒活性である。言い換えると、L
act=相応する5−置換L−ヒダントイン化合物を相応するL−カルバモイルアミノ酸に変換するこの酵素の触媒活性である。
【0096】
本発明の有利な実施態様では、ψは70、60、50、40、30、20、10、9、8、7、6、5、4、3、2又は1から選択される。
【0097】
本発明の更に有利な実施態様では、ζは1.5、2、3、4、5、10、15、20、25又は30から選択される。
【0098】
本発明の更に有利な実施態様では、ψとζは、以下のものから選択される:
ψ=70及びζ=1.5、ψ=70及びζ=2、ψ=70及びζ=3、ψ=70及びζ=4、ψ=70及びζ=5、ψ=70及びζ=10、ψ=70及びζ=15、ψ=70及びζ=20、ψ=70及びζ=25、ψ=70及びζ=30、
ψ=60及びζ=1.5、ψ=60及びζ=2、ψ=60及びζ=3、ψ=60及びζ=4、ψ=60及びζ=5、ψ=60及びζ=10、ψ=60及びζ=15、ψ=60及びψ=20、ψ=60及びζ=25、ψ=60及びζ=30、
ψ=50及びζ=1.5、ψ=50及びζ=2、ψ=50及びζ=3、ψ=50及びζ=4、ψ=50及びζ=5、ψ=50及びζ=10、ψ=50及びζ=15、ψ=50及びψ=20、ψ=50及びζ=25、ψ=50及びζ=30、
ψ=40及びζ=1.5、ψ=40及びζ=2、ψ=40及びζ=3、ψ=40及びζ=4、ψ=40及びζ=5、ψ=40及びζ=10、ψ=40及びζ=15、ψ=40及びψ=20、ψ=40及びζ=25、ψ=40及びζ=30、
ψ=30及びζ=1.5、ψ=30及びζ=2、ψ=30及びζ=3、ψ=30及びζ=4、ψ=30及びζ=5、ψ=30及びζ=10、ψ=30及びζ=15、ψ=30及びψ=20、ψ=30及びζ=25、ψ=30及びζ=30、
ψ=20及びζ=1.5、ψ=20及びζ=2、ψ=20及びζ=3、ψ=20及びζ=4、ψ=20及びζ=5、ψ=20及びζ=10、ψ=20及びζ=15、ψ=20及びψ=20、ψ=20及びζ=25、ψ=20及びζ=30、
ψ=10及びζ=1.5、ψ=10及びζ=2、ψ=10及びζ=3、ψ=10及びζ=4、ψ=10及びζ=5、ψ=10及びζ=10、ψ=10及びζ=15、ψ=10及びψ=20、ψ=10及びζ=25、ψ=10及びζ=30、
ψ=9及びζ=1.5、ψ=9及びζ=2、ψ=9及びζ=3、ψ=9及びζ=4、ψ=9及びζ=5、ψ=9及びζ=10、ψ=9及びζ=15、ψ=9及びψ=20、ψ=9及びζ=25、ψ=9及びζ=30、
ψ=8及びζ=1.5、ψ=8及びζ=2、ψ=8及びζ=3、ψ=8及びζ=4、ψ=8及びζ=5、ψ=8及びζ=10、ψ=8及びζ=15、ψ=8及びψ=20、ψ=8及びζ=25、ψ=8及びζ=30、
ψ=7及びζ=1.5、ψ=7及びζ=2、ψ=7及びζ=3、ψ=7及びζ=4、ψ=7及びζ=5、ψ=7及びζ=10、ψ=7及びζ=15、ψ=7及びψ=20、ψ=7及びζ=25、ψ=7及びζ=30、
ψ=6及びζ=1.5、ψ=6及びζ=2、ψ=6及びζ=3、ψ=6及びζ=4、ψ=6及びζ=5、ψ=6及びζ=10、ψ=6及びζ=15、ψ=6及びψ=20、ψ=6及びζ=25、ψ=6及びζ=30、
ψ=5及びζ=1.5、ψ=5及びζ=2、ψ=5及びζ=3、ψ=5及びζ=4、ψ=5及びζ=5、ψ=5及びζ=10、ψ=5及びζ=15、ψ=5及びψ=20、ψ=5及びζ=25、ψ=5及びζ=30、
ψ=4及びζ=1.5、ψ=4及びζ=2、ψ=4及びζ=3、ψ=4及びζ=4、ψ=4及びζ=5、ψ=4及びζ=10、ψ=4及びζ=15、ψ=4及びψ=20、ψ=4及びζ=25、ψ=4及びζ=30、
ψ=3及びζ=1.5、ψ=3及びζ=2、ψ=3及びζ=3、ψ=3及びζ=4、ψ=3及びζ=5、ψ=3及びζ=10、ψ=3及びζ=15、ψ=3及びψ=20、ψ=3及びζ=25、ψ=3及びζ=30、
ψ=2及びζ=1.5、ψ=2及びζ=2、ψ=2及びζ=3、ψ=2及びζ=4、ψ=2及びζ=5、ψ=2及びζ=10、ψ=2及びζ=15、ψ=2及びψ=20、ψ=2及びζ=25、ψ=2及びζ=30、
ψ=1及びζ=1.5、ψ=1及びζ=2、ψ=1及びζ=3、ψ=1及びζ=4、ψ=1及びζ=5、ψ=1及びζ=10、ψ=1及びζ=15、ψ=1及びψ=20、ψ=1及びζ=25、ψ=4及びζ=30。
【0099】
本発明の他の実施態様では、本発明のヒダントイナーゼは、配列番号5のアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼと比べて少なくとも80%の相同性を有するか、又は最大90個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有する;その際、152、64、71、72、95、154、181、284、285、398及び452位のアミノ酸残基は、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398及びX452と定義され、及びこれらのアミノ酸残基は以下のように選択される:
X152=アラニン以外の任意のアミノ酸;
X64=任意のアミノ酸残基;
X71=任意のアミノ酸残基;
X72=任意のアミノ酸残基;
X95=任意のアミノ酸残基;
X154=任意のアミノ酸残基;
X181=任意のアミノ酸残基;
X284=任意のアミノ酸残基;
X285=任意のアミノ酸残基;
X398=任意のアミノ酸残基;
X452=任意のアミノ酸残基;
及び更にヒダントイナーゼの触媒活性は、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼの触媒活性よりも少なくとも1.2倍だけ高い。
【0100】
有利な実施態様では、触媒活性は、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼの触媒活性よりも少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、25又は30倍だけ高い。
【0101】
他の有利な実施態様では、D−ヒダントインのエナンチオ選択性は、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼのエナンチオ選択性よりも少なくとも1.2、1.5、2、3、4、5、10、15、20、25、30、50、100又は150倍だけ高い。より有利な実施態様では、D−5−インドリルメチルヒダントイン(D−トリプトファンヒダントイン)用のヒダントイナーゼのエナンチオ選択性は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼと比べて少なくとも1.2、有利には少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、25、30、50、100又は150倍だけ増大した。
【0102】
当業者は、本明細書で記載したようなヒダントイナーゼの変異型も、本発明の範囲内に含まれることを理解している。これらの変異型ヒダントイナーゼは、それぞれ配列番号1及び配列番号5のアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼと比べて少なくとも80%の相同性を有するか、又は最大90個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有する。これらの変異型中で、本発明による参照アミノ酸配列(それぞれ配列番号1と配列番号5)に関して特定のアミノ酸の置換は保持されている。
【0103】
更に、ヒダントイナーゼ活性を有する上記タンパク質の誘導体が提供され、この誘導体は、それぞれ配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20と少なくとも80%の相同性、有利には少なくとも85%の相同性、更に有利には少なくとも90%の相同性、更に有利には少なくとも95%の相同性、更に有利には少なくとも96%の相同性、更に有利には少なくとも97%の相同性、更に有利には少なくとも98%の相同性、及び最も有利には少なくとも99%の相同性を有する。先に概要を述べたように、これらの変異型中で本発明によるアミノ酸の置換は、参照配列(それぞれ配列番号1と配列番号5)に関して保持されている。
【0104】
更に、ヒダントイナーゼ活性を有する上記タンパク質の誘導体が提供され、この誘導体は、配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20に示されるアミノ酸配列に関して最大90個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有するタンパク質により示される。先に概要を述べたように、これらの変異型中で本発明によるアミノ酸の置換は、参照配列(それぞれ配列番号1と配列番号5)に関して保持されている。
【0105】
本発明は、更に最大90個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加を含むアミノ酸配列を有する変異型ヒダントイナーゼにも関する。本明細書中で使用される“最大90個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加を含む”というフレーズ中“最大90個のアミノ酸残基”という範囲は、最大70個、有利には最大45個、更に有利には最大40個、より有利には最大35個、更に有利には最大30個、なお有利には最大25個、より有利には最大20個、より有利には最大15個、更に有利には最大10個、及び最も有利には最大5個のアミノ酸残基に限定されていてもよい。
【0106】
本明細書中で使用される“最大90個のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加を含む”というフレーズ中の“最大90個のアミノ酸残基”という用語は、好ましくは1〜70個、有利には1〜45個、更に有利には1〜40個、より有利には1〜35個、更に有利には1〜30個、なお有利には1〜25個、更に有利には1〜20個、更に有利には1〜15個、なお有利には1〜10個、及び最も有利には1〜5個のアミノ酸残基を意味する。“付加”という用語は、上記配列に関してアミノ酸残基のN−末端又はC−末端の付加を意味する。
【0107】
更に、ヒダントイナーゼ活性を有するそれぞれ配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20のアミノ酸配列を有する上記タンパク質の断片も提供され、その際、有利には該断片は、それぞれ配列番号5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20のアミノ酸配列の少なくとも300個、更に有利には少なくとも350個及び特に有利には少なくとも400個、及び最も有利には少なくとも450個の連続アミノ酸又は先に定義したようなそれらの誘導体を含む。
【0108】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Cys、Gly、Ser、Thr又はVal;
X64=Ile、Thr又はVal;
X71=Arg、Gln、Asp、Glu、Val、Ser、Tyr又はLeu;
X72=Tyr、His又はAsn;
X95=Ile又はHis;
X154=Val、Ala、Cys、Gly、Ile、Asn又はSer;
X181=Val又はAla;
X284=Val又はPhe;
X285=Ala又はAsp;
X398=Thr又はAla;
X452=His又はLeu。
【0109】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Cys、Ser又はVal;
X64=Ile、Thr又はVal;
X71=Arg、Gln、Asp、Glu、Val、Ser、Tyr又はLeu;
X72=Tyr、His又はAsn;
X95=Ile又はHis;
X154=Cys、Ile又はSer;
X181=Val又はAla;
X284=Val又はPhe;
X285=Ala又はAsp;
X398=Thr又はAla;
X452=His又はLeu。
【0110】
本発明の他の実施態様では、X152、X154は更に以下のように限定される:
X152=Cys、Gly、Ser、Thr又はVal;
X154=Ala、Cys、Gly、Ile、Asn又はSer。
【0111】
本発明の他の実施態様では、X152、X154は更に以下のように限定される:
X152=Cys、Ser又はVal;
X154=Cys、Ile又はSer。
【0112】
本発明の他の実施態様では、X152は更に以下のように限定される:
X152=Ser;X152=Cys;X152=Val;X152=Gly又はX152=Thr。
【0113】
本発明の他の実施態様では、X152とX154は更に以下のように限定される:
X152=Ser;X154=Ile。
【0114】
本発明の他の実施態様では、X152とX154は更に以下のように限定される:
X152=Val;X154=Cys。
【0115】
本発明の他の実施態様では、X152とX154は更に以下のように限定される:
X152=Cys;X154=Ser。
【0116】
本発明の他の実施態様では、X152、X71、X72、X154、X181は、以下のように限定される:
X152=Ser;X71=Asp;X72=His;X154=Val;X181=Val。
【0117】
本発明の他の実施態様では、X152、X71、X72、X154、X181は、以下のように限定される:
X152=Ser;X71=Asp;X72=Asn;X154=Val;X181=Val。
【0118】
本発明の他の実施態様では、X152、X71、X72、X154、X181は、以下のように限定される:
X152=Ser;X71=Val;X72=Asn;X154=Val;X181=Val。
【0119】
本発明の他の実施態様では、X152、X71、X72、X154、X181は、以下のように限定される:
X152=Cys;X71=Ser;X72=Asn;X154=Ser;X181=Ala。
【0120】
本発明の他の実施態様では、X152、X71、X72、X154、X181は、以下のように限定される:
X152=Ser;X71=Tyr;X72=Asn;X154=Val;X181=Val。
【0121】
本発明の他の実施態様では、X152、X71、X72、X154、X181は、以下のように限定される:
X152=Cys;X71=Leu;X72=Tyr;X154=Ser;X181=Val。
【0122】
本発明の他の実施態様では、X152、X71、X72、X154、X181は、以下のように限定される:
X152=Ser;X71=Tyr;X72=His;X154=Val;X181=Val。
【0123】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452が更に以下のように:
X152=Ser;X64=Ile;X71=Arg;X72=Tyr;X95=Ile;X154=Val;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=Hisに限定されたヒダントイナーゼが提供される。
【0124】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Cys;X64=Ile;X71=Arg;X72=Tyr;X95=Ile;X154=Val;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0125】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Val;X64=Ile;X71=Arg;X72=Tyr;X95=Ile;X154=Val;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0126】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Gly;X64=Ile;X71=Arg;X72=Tyr;X95=Ile;X154=Val;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0127】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Thr;X64=Ile;X71=Arg;X72=Tyr;X95=Ile;X154=Val;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0128】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Ser;X64=Ile;X71=Arg;X72=Tyr;X95=Ile;X154=Ile;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0129】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Val;X64=Ile;X71=Arg;X72=Tyr;X95=Ile;X154=Cys;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0130】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Cys;X64=Ile;X71=Arg;X72=Tyr;X95=Ile;X154=Ser;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0131】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Ser;X64=Ile;X71=Asp;X72=His;X95=Ile;X154=Val;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0132】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Ser;X64=Ile;X71=Asp;X72=Asn;X95=Ile;X154=Val;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0133】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Ser;X64=Ile;X71=Val;X72=Asn;X95=Ile;X154=Val;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0134】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Cys;X64=Ile;X71=Ser;X72=Asn;X95=Ile;X154=Ser;X181=Ala;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0135】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Ser;X64=Ile;X71=Tyr;X72=Asn;X95=Ile;X154=Val;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0136】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Cys;X64=Ile;X71=Leu;X72=Tyr;X95=Ile;X154=Ser;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0137】
本発明の他の実施態様では、X152、X64、X71、X72、X95、X154、X181、X284、X285、X398、X452は更に以下のように限定される:
X152=Ser;X64=Ile;X71=Tyr;X72=His;X95=Ile;X154=Val;X181=Val;X284=Val;X285=Ala;X398=Thr;X452=His。
【0138】
本発明の他の実施態様では、本発明によるヒダントイナーゼは、以下の基質ヒダントイン、5−メチルヒダントイン、5−ベンジルヒダントイン、5−(4−ヒドロキシベンジル)ヒダントイン、5−インドリルメチルヒダントイン、5−(3,4−ジヒドロキシベンジル)ヒダントイン、5−メチルチオエチルヒダントイン、5−イソプロピルヒダントイン、5−イソブチルヒダントイン、5−sec−ブチルヒダントイン、5−(4−アミノブチル)ヒダントイン、5−ヒドロキシメチルヒダントイン、又は非天然アミノ酸、各々それらの誘導体、又は各々カルバモイルアミノ酸に相応する5−置換ヒダントインのうち少なくとも1つを変換し、その際、前記基質の変換に関するヒダントイナーゼの触媒活性は、D−5−インドリルメチルヒダントインの変換に関して、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼの触媒活性と少なくとも同じ高さである。
【0139】
上記のように、本発明によるヒダントイナーゼ用の基質は、この酵素の基質特異性で加水分解されることができるどのD−5−置換ヒダントイン化合物であってもよい。それらには、非天然アミノ酸又はそれらの誘導体に相応する5−置換ヒダントイン化合物も含まれる。非天然アミノ酸又はそれらの誘導体とは、標準の遺伝子コードによりコードされないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸又はそれらの誘導体の各々のヒダントインには、5−フェニルヒダントイン、5−(4−ヒドロキシフェニル)ヒダントイン、5−メトキシメチルヒダントイン、5−ベンジルオキシメチルヒダントイン、5−(3,4−メチレンジオキシベンジル)ヒダントイン、ジヒドロウラシルが含まれる。有利には、本発明によるヒダントイナーゼの基質は、D,L−5−インドリルメチルヒダントイン、より有利にはD−5−インドリルメチルヒダントインである。
【0140】
また本発明は、本発明のヒダントイナーゼをコードするポリヌクレオチドも提供する。
【0141】
従って、本発明は1×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)及び0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の溶液中65℃で洗浄し、上記に定義したような本発明によるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドの全長相補鎖にすることから成るストリンジェントな条件下にハイブリダイズする単離又は組換えポリヌクレオチドを提供する;その際、ヒダントイナーゼの触媒活性は、配列番号1のアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼの触媒活性よりも少なくともζ倍だけ高く、その際ζはζ=1.2と定義付けられる。
【0142】
また本発明は、本発明によるヒダントイナーゼをコードする上記のようなポリヌクレオチドを有するベクターを提供する。有利には、該ベクターは更に作動的に連結し及び宿主細胞中でのポリヌクレオチドの発現に適切である調節配列を有する。
【0143】
本発明は、ポリヌクレオチド又は本発明によるヒダントイナーゼをコードする上記のようなポリヌクレオチドを有するベクターを有する単離された又は形質転換された宿主細胞を提供する。有利には、宿主は、大腸菌、コリネ型バクテリア、バシラス種から成るグループから選択される。宿主細胞は、本発明によるヒダントイナーゼを発現する。有利な実施態様では、宿主細胞は以下のものから選択される酵素活性を少なくとも発現する:ヒダントイナーゼ;ヒダントイナーゼとヒダントインラセマーゼ;ヒダントイナーゼとカルバモイラーゼ;又はヒダントイナーゼとヒダントインラセマーゼとカルバモイラーゼ。
【0144】
更に本発明は以下の工程(a)〜(c)
(a)本発明によるヒダントイナーゼのヒダントイナーゼ活性及びカルバモイラーゼ活性及び少なくとも1つの5−置換ヒダントインを反応培地に用意し、任意で前記反応培地にヒダントインラセマーゼ活性を用意する工程、
(b)5−置換ヒダントインを工程(a)で用意された酵素活性により各々のアミノ酸に変換するために反応培地をインキュベートする工程、及び
(c)各々の5−置換ヒダントインの酵素的変換から得られたアミノ酸を反応培地から回収する工程
を含むアミノ酸を製造する方法を提供する。
【0145】
有利な方法では、前記5−置換ヒダントインは、D,L−5−置換ヒダントイン、D,L−5−インドリルメチルヒダントイン(=D,L−トリプトファンヒダントイン)、D−5−置換ヒダントイン、D−5−インドリルメチルヒダントン(=D−トリプトファンヒダントイン)から選択される。
【0146】
なお有利な方法では、反応培地に用意される前記5−置換ヒダントインは、L−5−ヒダントインであるか又はD,L−5−置換ヒダントインであり、及び更にヒダントインラセマーゼ活性は、L−5−置換ヒダントイン又はD,L−5−置換ヒダントインをD−5−置換ヒダントインに変換するために工程(a)で反応培地に用意される。
【0147】
他の有利な方法では、製造されるべきアミノ酸はD−トリプトファンであり、及び5−置換ヒダントインはD−5−インドリルメチルヒダントイン、L−5−インドリルメチルヒダントイン又はD,L−5−インドリルメチルヒダントインから選択される。
【0148】
この方法では、5−置換ヒダントインは本発明のヒダントイナーゼにより各々のカルバモイルアミノ酸に変換され、これは前記カルバモイラーゼ活性により各々のアミノ酸に変換される。
【0149】
特に有利な実施態様では、前記カルバモイルアミノ酸は、N−(アミノカルボニル)−DL−トリプトファン(=N−カルバモイル−DL−トリプトファン;=CA索引名:N−(アミノカルボニル)−トリプトファン;=登録番号:98299−50−4;式:C12H13N3O3)又はN−カルバモイル−L−トリプトファン(=CA索引名:N−(アミノカルボニル)−L−トリプトファン=登録番号:89595−64−2;式:C12H13N3O3)から選択される。
【0150】
なお有利な他の方法では、反応培地は部分的に又は全体的に細胞培養培地から成る培地であり、及びヒダントイナーゼ活性は本発明による宿主細胞により用意され、及び宿主細胞は前記反応培地中で培養される。
【0151】
特に有利な方法では、反応培地は部分的に又は全体的に細胞培養培地から成る培地であり、及びカルバモイラーゼ活性は本発明による宿主細胞により又は第二の宿主細胞により用意され、及び前記宿主細胞は前記反応培地中で培養される。
【0152】
有利な実施態様では、ヒダントイナーゼ活性及びカルバモイラーゼ活性ならびに任意でヒダントインラセマーゼ活性を発現する宿主細胞(別々の細胞又は同じ細胞)は、バイオマスを生産するために細胞培養培地中で培養され、次に細胞培養培地及びバイオマスは分離され、かつバイオマスはバッファー又は水の使用により再懸濁される。基質の変換を開始するために、基質は、バイオマスの添加前、間又は後に前記バッファー又は水のどちらかに添加される。
【0153】
D,L−5−モノ置換ヒダントインから光学的に純粋なアミノ酸を製造する際に使用するために、本発明のヒダントイナーゼは、例えば、Biocatalytic Production of Amino Acids and Derivatives(Rozzell,J.D.and Wagner,F.eds.,Hanser出版社、NY、75〜176頁(1992))に記載されているように使用されてもよい。ヒダントイナーゼの一般的使用は、“Enzyme catalysis in organic synthesis”(Dranz,K.and Waldmann,H.eds.,VCH−Verlag,Weinheim、409〜431頁(1995))ならびにWagner,T.等[アルスロバクター種DSM7330の新規突然変異体株の休止細胞によるD,L−5−(2−メチルチオエチル)ヒダントインからの1−メチオニンの製造、Journal of Biotechnology 46:63〜68(1996)]にも記載されている。
【0154】
D,L−又はL−5−置換ヒダントイン又はD,L−又はL−カルバモイルアミノ酸の各々のD−アミノ酸への酵素的変換に関しては、本発明のヒダントイナーゼの発現及びカルバモイラーゼの発現ならびに更に有利にはヒダントインラセマーゼの発現を含む細胞触媒技法を適用するのが有利である。
【0155】
本発明によるヒダントイナーゼは、この方法の範囲においてそれらの遊離型又は固定型で使用できる。また、カルバモイラーゼとヒダントインラセマーゼを固定してもよい。酵素を固定する技法は当業者に公知である。有利な方法は、Bhavender P.Sharma、Lorrains F.Baily and Ralph A.Messing(Immobilisierte Biomaterialien Techniken und Anwendungen,Angew.Chem.,94,836〜852(1992));Dordick等(J.Am.Chem.Soc.,116,5009〜5010(1994))、Okahata等、Tetrahedron Lett.、38、1971〜1974(1997))、Adlercreutz等(Biocatalysis,6,291〜305(1992));Goto等(Biotechnol.Prog.,10、263〜268(1994))、Kamiya等(Biotechnol.Prog.,11,270〜275(1995))、Okahata等(Tibtech,February1997,15,50〜54);Fishman等(Biotechnol.Lett.,20,535〜538(1998))に記載されている。
【0156】
5−置換ヒダントイン又はカルバモイルアミノ酸の各々のアミノ酸への変換は、バッチ法又は連続法で行うことができる。有利には、酵素−膜−反応器は反応容器として使用される(Wandrey等、Jahrbuch 1998,Verfahrenstechnik und Chemieingenieurwesen、VDI S. 151頁以降;Wandrey等、Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic Compounds、第2巻、VCH 1996、832;Kragl等、Angew.Chem.,6,684頁以降(1996))。
【0157】
細胞触媒アプローチを使用するアミノ酸の製造に関して、高い増殖率と容易な成長条件を利用すべきであるので細菌細胞が使用される。これに関して利用できる多くの細菌が当業者に公知である。これに関して大腸菌を細胞及び発現系として有利に使用できる(Yanisch−Perron等、Gene、33、103〜109(1985))。
【0158】
アミノ酸を製造するために、本発明のヒダントイナーゼを発現する、及び有利には更にカルバモイラーゼを発現するならびに更に有利にはヒダントインラセマーゼを発現する細胞を培養培地中で使用してもよい。二者択一的に、各々の単離細胞、洗浄細胞、細胞処理製品、細胞処理製品から得られる粗酵素溶液又は精製酵素溶液を反応混合物中で使用してもよい。反応を実施するために、基質として5−置換ヒダントイン化合物を含有する前記培養培地又は反応混合物をそれぞれ15〜45℃の温度、有利には25〜40℃の温度で、pH5〜9、有利にはpH6〜8で静止させて又は8時間撹拌しながら5日間保持する。前記培養培地又は反応混合物は、それぞれ更に遷移金属イオン(有利にはZn
2+、Mn
2+及びCo
2+から選択される)を0.02mM〜10mMの間の濃度で、有利には0.1mM〜5mMの濃度で含んでいてもよい。無傷細胞を使用する場合、反応混合物は更に形質転換細胞の成長に重要である栄養成分、例えば、炭素源、窒素源及び無機イオンを有していてもよい。更に、基質(5−置換ヒダントイン又はカルバモイルアミノ酸化合物)を培養培地又は反応混合物に小分けに添加してもよい。
【0159】
記載した方法で使用される酵素は、各々の逆反応を触媒することもできるので、本発明は更に上記のようなD−アミノ酸を製造する方法も提供し、その際、基質としての前記5−置換ヒダントインの代わりにN−カルバモイル−D,L−アミノ酸又はN−カルバモイル−L−アミノ酸が使用される:前記N−カルバモイル−D,L−アミノ酸又はN−カルバモイル−L−アミノ酸は、本発明によるヒダントイナーゼにより各々のD,L−5−置換ヒダントイン又はL−5−置換ヒダントイン化合物に変換される。更に、前記D,L−5−置換ヒダントイン又はL−5−ヒダントイン化合物は、ヒダントインラセマーゼによりD−エナンチオマー、すなわち各々のD−5−置換ヒダントイン化合物に変換される。次に、D−5−置換ヒダントイン化合物は、本発明によるヒダントイナーゼにより各々のN−カルバモイル−D−アミノ酸に変換される。引き続き、カルバモイラーゼはN−カルバモイル−D−アミノ酸を各々のD−アミノ酸に変換する。この方法の特に有利な実施態様では、基質として使用されるN−カルバモイルアミノ酸は、N−(アミノカルボニル)−DL−トリプトファン;=(=N−カルバモイル−DL−トリプトファン;CA索引名:N−(アミノカルボニル)−トリプトファン;=登録番号:98299−50−4;式:C12H13N3O3)又はN−カルバモイル−L−トリプトファン(=CA索引名:N−(アミノカルボニル)−L−トリプトファン=登録番号:89595−64−2;式:C12H13N3O3)である。
【0160】
培養培地又は反応混合物中で製造されるアミノ酸は、公知の方法により迅速に定量化できる。このために、C−18カラム及び例えば、1%アセトニトリル含有20mMリン酸カリウム(pH2.3)の混合物及び10%H
2O含有アセトニトリルを溶出液として用いる高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してもよい。
【0161】
培養培地又は反応混合物中で蓄積したアミノ酸は、標準の方法により培養培地又は反応混合物から回収できる。例えば、濾過、遠心分離、真空下の濃縮、イオン交換又は吸着クロマトグラフィー、結晶化及びこのようなものの方法を使用できるが、必要な場合には互いに組み合わせて使用してもよい。
【0162】
以下の反応スキームは、反応工程ならびに触媒変換に関わる酵素(D−ヒダントインの変換により説明される)を示している。D−ヒダントインは、D−ヒダントイナーゼの触媒活性によりN−カルバモイル−D−アミノ酸に変換され、これはD−5−置換ヒダントイン化合物を加水分解してN−カルバモイル−D−アミノ酸を生じる反応を触媒する。もう1つの更なる反応工程では、N−カルバモイルアミノ酸ヒドロラーゼと称する酵素が前記N−カルバモイル−D−アミノ酸を加水分解して光学活性D−アミノ酸を生じる反応を触媒する。更に、ヒダントインラセマーゼと称する酵素は、光学活性L−ヒダントイン化合物の光学活性D−ヒダントイン化合物への変換を触媒し、逆も同じである。
【0163】
反応スキーム
【化1】
定義
ヒダントイナーゼ:“ヒダントイナーゼ”又は“ヒダントイナーゼ活性”という用語は、本明細書中では酵素と定義付けられるか、又はヒダントイン、特に5−置換ヒダントインを加水分解する酵素の活性と定義付けられる。ヒダントイナーゼは、5−置換ヒダントインを加水分解して各々のN−カルバモイルアミノ酸を形成する反応を触媒する。特に、本発明によるヒダントイナーゼは、D−5−インドリルメチルヒダントインを加水分解してN−カルバモイル−D−トリプトファンを形成する反応を触媒するか、又はL−5−インドリルメチルヒダントインを加水分解してN−カルバモイル−L−トリプトファンを形成する反応を触媒する。ヒダントイナーゼの1例は、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質である。ヒダントイナーゼ活性の1例は、L−5−メチルチオエチルヒダントイン、L−5−(4−ヒドロキシベンジル)ヒダントイン又はL−5−ベンジルヒダントインのような化合物に対する配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質の触媒活性であり、これは前記ヒダントイナーゼの活性により各々のN−カルバモイルアミノ酸に変換される。
【0164】
ヒダントインラセマーゼ:“ヒダントインラセマーゼ”又は“ヒダントインラセマーゼ活性”とは、本明細書中ではL−ヒダントインをD−ヒダントインに、逆も同様に変換する酵素又は酵素の活性として定義付けられる。特に、N−ヒダントインラセマーゼは、L−5−インドリルメチルヒダントインを変換してD−5−インドリルメチルヒダントインを形成する反応を触媒するか、又はD−5−インドリルメチルヒダントインを変換してL−5−インドリルメチルヒダントインを形成する反応を触媒する。ヒダントインラセマーゼの1例は、配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質である。ヒダントインラセマーゼ活性の1例は、L−5−メチルチオエチルヒダントイン、L−5−(4−ヒドロキシベンジル)ヒダントイン、L−5−ベンジルヒダントイン又はL−5−インドリルメチルヒダントインのような化合物に対する配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質の触媒活性であり、これは前記ヒダントインラセマーゼの活性により各々のD−エナンチオマーに変換される。
【0165】
N−カルバモイラーゼ:“N−カルバモイラーゼ”又は“N−カルバモイラーゼ活性”という用語は、本明細書中では、N−カルバモイルアミノ酸、特にN−カルバモイル−D−アミノ酸を加水分解する酵素又は酵素の活性として定義される。N−カルバモイラーゼ又はN−カルバモイルアミノ酸ヒドロラーゼは、それぞれ前記N−カルバモイルアミノ酸、特にN−カルバモイル−D−アミノ酸を加水分解する反応を触媒し、各々のアミノ酸、特に光学活性D−アミノ酸を生じる。特に、N−カルバモイラーゼは、N−カルバモイル−D−トリプトファンを加水分解してD−トリプトファンを形成する反応を触媒するか、又はN−カルバモイル−L−トリプトファンを加水分解してL−トリプトファンを形成する反応を触媒する。N−カルバモイラーゼの1例は、配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク質である。N−カルバモイラーゼ活性の1例は、N−カルバモイルメチオニン、N−カルバモイルチロシン、N−カルバモイルフェニルアラニン又はN−カルバモイルトリプトファンのような化合物に対する配列番号4を有するタンパク質の触媒活性であり、これは前記N−カルバモイラーゼの活性により各々のアミノ酸に変換される。
【0166】
5−置換ヒダントイン:“5−置換ヒダントイン”という用語は、以下のような式(I)による化合物を意味し、式中、Rは水素、−CH
3、−CH(CH
3)
2、−CH
2−CH(CH
3)
2、−CH(CH
3)−CH
2−CH
3、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、インドリルメチル、−CH
2−COOH、−CH
2−CONH
2、−CH
2−CH
2−COOH、−CH
2−CH
2−CONH
2−、−CH
2−OH、−CH(OH)−CH
3、−CH
2−SH、−CH
2−CH
2−S−CH
3、イミダゾリルメチル、−CH
2−CH
2−CH
2−NH−C(NH)NH
2−、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−NH
2を意味する、又は“5−置換ヒダントイン”という用語は、プロリンヒダントインを意味する。前記残基は、天然に存在するアミノ酸に相当し、これらはヒダントイナーゼによる各々のヒダントイン化合物の加水分解及び引き続くN−カルバモイラーゼによる各々のN−カルバモイルアミノ酸の加水分解の際に得られる。更に、5−置換ヒダントイン化合物は、非天然アミノ酸又はその誘導体、例えば、5−フェニルヒダントイン、5−(4−ヒドロキシフェニル)ヒダントイン、5−メトキシメチルヒダントイン、5−ベンジルオキシメチルヒダントイン、5−(3,4−メチレンジオキシベンジル)ヒダントイン、ジヒドロウラシルに相応していてもよい。式(I)は、5−置換ヒダントインのD−エナンチオマーを示していることに留意すべきである。
【0167】
【化2】
【0168】
核酸構築物:本明細書中で使用されているような“核酸構築物”という用語は、一本鎖又は二本鎖の核酸分子を意味し、これは天然に存在する遺伝子から単離されるか、又はさもなければ天然に存在し得ない方法で変性されて核酸の断片を含有するようになる。核酸構築物という用語は、該核酸構築物が本発明のコーディング配列を発現するために必要な調節配列を含んでいる場合には“発現カセット”と同意語である。
【0169】
調節配列:“調節配列”という用語は、本明細書中では全てのコンポーネントを含むものとして定義される。これらは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現に必要であるか、又は有利である。それぞれの調節配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列にとって固有であるか又は外来である、又は互いに固有であるか又は外来である。
【0170】
このような調節配列には、リーダー配列、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列及び転写ターミネーターが含まれるが、これらに限定されるわけではない。最低でも調節配列には、プロモーター及び転写及び翻訳終止シグナルが含まれる。調節配列と、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のコード領域のライゲーションを容易にする特定の制限部位を組込む目的で、調節配列はリンカーと一緒に用意されてもよい。
【0171】
作動的に連結した:“作動的に連結した”という用語は、本明細書内ではポリヌクレオチド配列のコーディング配列に対して調節配列が適切な位置に存在し、調節配列がポリペプチドのコーディング配列の発現を指示する構造を意味する。
【0172】
コーディング配列:本明細書中で使用される場合には、“コーディング配列”とはヌクレオチド配列を意味し、これはそのタンパク質生成物のアミノ酸配列を直接に指す。コーディング配列の境界は、一般的にオープンリーディング枠により決定され、これは通常はATG開始コドンで、又は二者択一的な開始コドン、例えば、GTG及びTTGで開始され、及び終止コドン、例えば、TAA、TAG及びTGAで終了する。コーディング配列は、DNA、cDNAであるか又は組換えヌクレオチド配列であってもよい。
【0173】
発現:“発現”という用語には、ポリペプチドの生産に関わるいずれかの工程が含まれ、これには転写、後−転写変性、翻訳、後−翻訳変性及び分泌が含まれるが、しかしこれらに限定されるわけではない。
【0174】
発現ベクター:本明細書中では、“発現ベクター”という用語は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを有する線状又は環状DNA分子として定義され、及びこれはその発現のために用意される更なるヌクレオチドに作動的に連結する。
【0175】
宿主細胞:本明細書中で使用されるような“宿主細胞”という用語には、核酸構築物又は本発明のポリヌクレオチドを含んでいる発現ベクターで形質転換、トランスフェクション、トランスダクション及びそのようなものを受けやすい任意のタイプの細胞が含まれる。
【0176】
細胞培養培地:“細胞培養培地”という用語は、細菌、酵母及び菌類を含む微生物の培養に使用される培地を一般的に意味し、かつ“増殖培地”とも称してもよい。
【0177】
非天然アミノ酸:“非天然アミノ酸”という用語は、式NH
2−CH(R)−COOH[式中、Rはタンパク質を構成するアミノ酸残基の変性残基を表し、このタンパク質を構成するアミノ酸残基は、水素、−CH
3、−CH(CH
3)
2、−CH
2−CH(CH
3)
2、−CH(CH
3)−CH
2−CH
3、ベンジル、4−ヒドロキシベンジル、インドリルメチル、−CH
2−COOH、−CH
2−CONH
2、−CH
2−CH
2−COOH、−CH
2−CH
2−CONH
2−、−CH
2−OH、−CH(OH)−CH
3、−CH
2−SH、−CH
2−CH
2−S−CH
3、イミダゾリルメチル、−CH
2−CH
2−CH
2−NH−C(NH)NH
2、−CH
2−CH
2−CH
2−CH
2−NH
2から選択される]を有するαアミノ酸を意味する。又は“非天然アミノ酸”という用語は、プロリンの誘導体を意味し、これはその環構造の−CH
2−CH
2−CH
2−基中で変性されていてもよい。上記の変性は、脂肪族基、芳香族基、複素環式基、酸基、塩基、ヒドロキシル基及び/又はフッ素のようなハロゲンによる水素原子の置換であってもよい。
【0178】
変性:本明細書中での“変性”という用語は、本発明によるポリペプチドから成るポリペプチド又はその相同配列の任意の化学的変性;ならびにこのようなポリペプチドをコードするDNAの遺伝子増幅を意味する。変性は、1つ又は複数のアミノ酸の置換、欠失、挿入及び/又は付加であることができる。
【0179】
変異型:本明細書で使用する場合には、“変異型”とは本発明によるポリペプチドの変性ヌクレオチド配列又はその相同配列を発現する生物により生産されるヒダントイナーゼ活性を有するポリペプチドを意味する。変性ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列の変性によりヒトの介入から得られる。変異型ポリペプチド配列は、天然に存在してもよい。例えば、マイクロバクテリウム・リクエファシエンス(Microbacterium liquefaciens)AJ3912から単離されるヒダントイナーゼが記載されていて、これは配列番号1のアミノ酸配列を有するヒダントイナーゼと約83%の相同性を有する。このマイクロバクテリウム・リクエファシエンスのヒダントイナーゼは、配列番号1のアミノ酸配列の(天然に存在する)変異型としてみなしてもよい。
【0180】
本発明のタンパク質は、例えば合成でき、精製タンパク質から製造されるか、又は組換え法及び当業者に公知の技法を用いて製造される。本明細書中では、それらの製造に特定の技法が記載されているが、これらのペプチドの製造にとって適切な全ての技法も本発明の範囲内であると解釈される。一般的に、これらの技法にはDNA及びタンパク質シーケンシング、クローニング、発現ならびに本発明のタンパク質のそれぞれをコード及び発現する原核ベクター及び真核ベクターの構築を可能にするその他の組換え技術が含まれる。
【0181】
“ペプチド”及び“オリゴペプチド”という用語は同意語であると解釈される(共通して認識されるので)、かつそれぞれの用語は、文脈上必要な場合には交換可能な方法で使用でき、ペプチド結合により結合する少なくとも2個のアミノ酸の鎖を示す。本明細書中で“ポリペプチド”という用語は、10個よりも多いアミノ酸残基を含有する鎖に使用される。全てのオリゴペプチド及びポリペプチドの式又は配列は、本明細書中では左から右に及びアミノ末端からカルボキシ末端の方向に書かれている。本明細書中で使用されるアミノ酸の1文字コードは当業者に一般的に公知であり、及びSambrook等(Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory出版社、Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)に見出すことができる。
【0182】
“単離”ペプチド又はタンパク質とは、その固有の環境から取り出されるポリペプチド又はタンパク質を意味する。例えば、組換えにより製造されるポリペプチド及び宿主細胞中で発現されるタンパク質は、本発明の目的では、固有の又は組換えポリペプチドとして単離されたものと考えられ、これらは引き続き例えば、Smith and Johnson,Gene 67:31〜40(1988)に開示されているような適切な技法、例えば単一工程の精製法のいずれかにより精製される。
【0183】
本発明によるヒダントイナーゼは、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー及びレクチンクロマトグラフィーを含む周知の方法により組換え細胞培養培地から回収及び精製できる。最も有利には、高性能液体クロマトグラフィー(“HPLC”)が精製に使用される。
【0184】
本発明のポリペプチドには、天然に精製された生成物、化学合成法の生成物、及び原核又は真核宿主(例えば、細菌、酵母、菌類、高等植物、昆虫及びホ乳類細胞を含む)から組換え技術により製造された生成物が含まれる。組換え製造法で使用される宿主に応じて、本発明のポリペプチドはグリコシル化されるか又はグリコシル化されなくてもよい。更に、本発明のポリペプチドは、初期変性されたメチオニン残基を有してもよく、幾つかの場合には宿主変性法の結果生じる。
【0185】
本発明のタンパク質は、非−ヒダントイナーゼポリペプチド(例えば、異種アミノ酸配列)に作動的に連結し、融合タンパク質を形成することができる。本明細書で使用されているように、ヒダントイナーゼ“キメラタンパク質”又は“融合タンパク質”は、非−ヒダントイナーゼポリペプチドに作動的に連結したヒダントイナーゼポリペプチドを有する。
【0186】
例えば、1実施態様では、融合タンパク質はGST−ヒダントイナーゼ融合タンパク質であり、その際に、前記ヒダントイナーゼ配列はGST配列のC−末端に融合している。このような融合タンパク質は、組換えヒダントイナーゼの精製を容易にできる。他の実施態様では、融合タンパク質はヘテロシグナル配列をそのN−末端に含有するヒダントイナーゼタンパク質である。特定の宿主細胞(例えば、ホ乳類及び酵母宿主細胞)では、ヒダントイナーゼの発現及び/又は分泌は、ヘテロシグナル配列の使用により増大させることができる。
【0187】
シグナル配列を使用して、本発明のタンパク質又はポリペプチドの分泌及び単離を容易にすることができる。シグナル配列は、1つ又は複数の切断事象での成熟タンパク質から切断される疎水性アミノ酸のコアにより通常は特徴づけられる。このようなシグナルペプチドは、分泌経路を通過する際にシグナル配列を成熟タンパク質から切断可能にするプロセシング箇所を含む。シグナル配列は、発現ベクターが形質転換される真核宿主からのタンパク質の分泌を指示し、かつシグナル配列は引き続き又は同時に切断される。よってタンパク質は、当該分野で承認されている方法により細胞外媒体から容易に精製できる。二者択一的に、シグナル配列は1つの配列を用いて目的のタンパク質に結合できる。これはGSTドメインのようなもので精製を容易にする。従って、例えばポリペプチドをコードする配列はマーカー配列、例えばペプチドをコードする配列に融合してもよく、これが融合ポリペプチドの精製を容易にする。本発明のこの点に関する特定の有利な実施態様では、マーカー配列はヘキサ−ヒスチジンペプチドであり、例えば、pQEベクター(Qiagen,Inc.)中に提供されるタグであり、とりわけ、その多くは市販されている。Gentz等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:821〜824頁(1989)に記載されているように、例えばヘキサ−ヒスチジンは融合タンパク質の便利な精製を提供する。HAタグは、インフルエンザ・ヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープに相応する精製に有用な別のペプチドであり、これは例えばWilson等、Cell 37:767(1984)に記載されている。
【0188】
有利には、本発明のキメラ又は融合タンパク質は通常の組換えDNA技術により製造される。例えば、種々のポリペプチド配列をコードするDNA断片は、通常の技法、例えば、平滑末端又はジグザク末端を用いることによりにインフレームで一緒にライゲートされ、制限酵素による消化で適切な末端を提供し、必要に応じて粘着性末端を充填し、アルカリ硫酸塩の処理により望ましくない連結を回避し、及び酵素的ライゲーションをする。他の実施態様では、自動化DNAシンセサイザーを含む通常の技法により融合遺伝子を合成できる。二者択一的に、遺伝子断片のPCR増幅は、アンカープライマーを使用して実施でき、これが2つの連続遺伝子断片の間で相補的オーバーハングを生じ、これは引き続きアニーリングされ、かつ再び増幅されてキメラ遺伝子配列を生じる(例えば、Current Protocols in Molecular Biology,eds.Ausubel等、John Wiley&Sons:1992参照)。
【0189】
更に、既に融合部分をコードしている多くの発現ベクターは市販されている(例えば、GSTポリペプチド)。本発明による核酸をこのような発現ベクター中にクローン化し、該融合部分が融合部分にインフレームで結合するようにし、本発明によるタンパク質を有する融合タンパク質を発現させることができる。
【0190】
“保存的置換”又は“相同”アミノ酸残基による置換という用語は、アミノ酸残基が、類似した側鎖を有するアミノ酸残基と置き換えられた置換を意味する意図がある。これらのファミリーは、当業者に公知であり、及び塩基性側鎖を有するアミノ酸(リシン、アルギニン及びヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電性極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β−分枝側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。
【0191】
保存的アミノ酸の置換は、得られるタンパク質の活性において通常は最小の影響を有する。このような置換は以下に記載されている。保存的な置換は1つのアミノ酸を、大きさ、疎水性度、電荷、極性、立体特性、芳香族性などにおいて類似している他のアミノ酸と置き換える。このような置換は、タンパク質の特性を細かく調節することが望ましい場合には一般的に保存的である。
【0192】
本明細書中で使用されているような“相同”アミノ酸残基は、疎水性、電荷、極性、立体特性、芳香族性などに関して類似した化学特性を有するアミノ酸残基を意味する。
【0193】
互いに相同であるアミノ酸の例には次のものが含まれる;プラスの電荷に関しては:リシン、アルギニン、ヒスチジン;マイナスの電荷に関しては:グルタミン酸、アスパラギン酸;疎水性度に関しては:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン;極性に関しては:セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、トリプトファン、チロシン、アスパラギン、グルタミン;芳香族性に関しては:フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン;化学的に類似した側鎖に関しては:セリンとトレオニン;又はグルタミンとアスパラギン;又はロイシンとイソロイシン。
【0194】
タンパク質中で元のアミノ酸を置換してもよく、及び保存的置換としてみなされるアミノ酸の例には次のものが含まれる:SerをAlaに;LysをArgに;Gln又はHisをAsnに;GluをAspに;SerをCysに;AsnをGlnに;AspをGluに;ProをGlyに;Asn又はGlnをHisに;Leu又はValをIleに;Ile又はValをLeuに;Arg又はGlnをLysに;Leu又はIleをMetに;Met、Leu又はTyrをPheに;ThrをSerに;SerをThrに;TyrをTrpに;Trp又はPheをTyrに;及びIle又はLeuをValに。
【0195】
例えば、表現的に静かなアミノ酸置換基をどのように作るかについての手引きは、Bowie、J.U.等、Science247:1306〜1310(1990)に提供されていて、その際、著者等はアミノ酸配列の変化の耐久性を研究するに当たり2つの主なアプローチがあることを示している。1つめの方法は、進展のプロセスに依存し、その際、自然な選択により突然変異が受容又は拒絶される。2つめのアプローチは、遺伝子工学を使用して、クローン化遺伝子の特定の位置でアミノ酸の変化を導入し、及び機能を保持する配列を選択又はスクリーニング又は同定する。著者等が述べているように、これらの研究は、タンパク質が意外にもアミノ酸置換に耐性があることを明らかにした。更に著者等は、どの変化がタンパク質の特定の位置で許容的であり得るかを示した。例えば、殆どの埋没アミノ酸残基は非極性側鎖を必要とするのに対して、表面の側鎖の特徴は一般的に保存される。このような表現的に静かなその他の置換は、上記のBowie等及びそこに挙げられている参考文献に記載されている。
【0196】
本明細書中で定義されているように“実質的に相同”という用語は、第一と第二のアミノ酸配列が共通のドメインを有するように、第二のアミノ酸配列に対して、十分な又は最小の数の同一又は同等(例えば、類似した側鎖を有する)のアミノ酸配列を有する第一のアミノ酸配列を意味する。例えば、約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の相同性又はそれより多くの相同性を有する共有のドメインを有するアミノ酸配列は、本明細書中では十分に同一であると定義されているが、但し、本明細書中で定義されているような本発明によるアミノ酸の位置の置換は保持されたままである。
【0197】
また、他のヒダントイナーゼファミリーメンバーをコードする核酸、従って本発明のヌクレオチド配列とは異なるヌクレオチド配列を有するものも、本発明の範囲であるが、本明細書中で定義されているような本発明によりコードされたアミノ酸配列中のアミノ酸の位置の置換は、保持されたままである。変異型(例えば、天然の対立遺伝子変異体)及び本発明によるDNAのホモログに相応するこのような核酸分子は、本明細書中で開示されているcDNA又は適切なその断片を用いて本明細書中で開示されているような核酸に対するそれらの相同性に基づき単離できる。それというのも、通常のハイブリダイゼーション技術によるハイブリダイゼーション試料は、有利には高ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件下にあるからである。
【0198】
本明細書で提供される配列の天然に存在する対立遺伝子変異体の他に、本発明によるヌクレオチド配列に突然変異を組込むことにより更なる変化を導入でき、それによりタンパク質の機能を実質的に変化させることなく、ヒダントイナーゼタンパク質のアミノ酸配列において変化を生じるが、但し、本明細書中で定義されたような本発明によりコードされたアミノ酸配列中のアミノ酸位置の置換は保持されたままであることを当業者は認識するであろう。
【0199】
本発明により改善されたヒダントイナーゼが提供される。改善されたヒダントイナーゼは、触媒活性及び/又はエナンチオ選択性が改善されたタンパク質である。このようなタンパク質は、例えば飽和突然変異誘発によりコーディング配列の全て又は部分的に沿ってランダムに導入された突然変異により得られてもよく、及びその結果得られた突然変異体は組み変えて発現でき、かつ各々の生物活性に関してスクリーニングされる。例えば、ヒダントイナーゼの触媒活性を測定するための標準のアッセイが提供され、このように改善されたタンパク質を容易に選択してもよい。
【0200】
本明細書で使用されているように“遺伝子”及び“組換え遺伝子”という用語は、染色体DNAから単離されていてもよい核酸分子を意味し、これにはタンパク質(例えば、ヒダントイナーゼ)をコードするオープンリーディングフレームが含まれる。遺伝子は、コーディング配列、非コーディング配列、イントロン及び調節配列を含んでいてもよい。更に、本明細書で定義されているように遺伝子は単離核酸分子を意味する。
【0201】
本発明の核酸分子又はその機能的同等物は、標準的な分子生物技術ならびにそこで提供される配列情報を用いて単離できる。例えば、本明細書中に記載されているような核酸配列の全て又は一部分をハイブリダイズ試料として用いて、標準的なハイブリダイゼーション及びクローニング技術(例えば、Sambrook,J.,Fritsh,E.F.,及びManiatis,T.Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory出版社、Cold Spring Harbor,N.Y.,1989に記載されているようなもの)を使用し、本発明による核酸分子を単離できる。
【0202】
更に、本発明による核酸配列の全て又は一部を含んでいる核酸配列は、記載配列中に含まれる配列情報に基づき設計された合成オリゴヌクレオチドプライマーを使用してポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により単離できる。
【0203】
本発明の核酸は、cDNA、mRNA又は二者択一的にゲノムDNAをテンプレートとして及び適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、標準的なPCR増幅技術により増幅できる。このように増幅された核酸を適切なベクター中にクローン化し、及びDNA配列分析により特徴付けることができる。
【0204】
更に、本発明によるヌクレオチド配列に相応するか又はハイブリダイズ可能なオリゴヌクレオチドは、標準的な合成技術により、例えば自動化DNAシンセサイザーを用いて製造できる。
【0205】
他のヌクレオチド配列に相補的である核酸分子は、もう一方のヌクレオチド配列にハイブリダイズできるように、もう一方のヌクレオチド配列に十分に相補的であるものであり、それにより安定な二重鎖を形成する。
【0206】
“単離ポリヌクレオチド”又は“単離核酸”は、両方のコーディング配列と直接に隣接しないDNA又はRNAである。これは前記コーディング配列と、それが由来する生物の天然に存在するゲノム中では直接に隣接している(1つは5’末端及びもう1つは3’末端)。従って、1実施態様では、単離核酸には、コーディング配列に直接隣接する5’非コード(例えば、プロモーター)配列の幾つか又は全てが含まれる。従って、この用語には例えば、ベクターに、自律型複製プラスミド又はウイルスに、又は原核もしくは真核生物のゲノムDANに組込まれる組換えDNA、又は他の配列とは独立した別々の分子(例えば、cDNA又はPCRもしくは制限エンドヌクレアーゼ処理により製造されるゲノムDNA断片)として存在するものが含まれる。また、実質的に細胞性材料、ウイルス材料、又は培養培地(組換えDNA技術により製造される場合)、又は化学前駆体又は化学物質(化学合成される場合)不含である更なるポリペプチドをコードするハイブリッド遺伝子の部分である組換えDNAが含まれる。更に、“単離核酸断片”は、断片として天然に存在しない核酸断片であり、かつ天然の状態では見出されないであろう。
【0207】
本明細書中で使用されているように、“ポリヌクレオチド”又は“核酸分子”という用語は、DNA分子(例えば、cDNA又はゲノムDNA)及びRNA分子(例えば、mRNA)ならびにヌクレオチド相同体を使用して生じるDNA又はRNAの相同体を含むことを意図する。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であることができるが、有利には二本鎖DNAである。核酸は、オリゴヌクレオチド相同体又は誘導体(例えば、イノシン又はホスホロチオエート・ヌクレオチド)を使用して合成されてもよい。このようなオリゴヌクレオチドを使用して、例えば変化した塩基対の能力を有するか、又は増大したヌクレアーゼ耐性を有する核酸を製造できる。
【0208】
また本発明の範囲内に含まれるものは、本明細書中に記載された核酸分子の相補鎖である。
【0209】
本明細書で提供されるような配列情報は、誤って同定された塩基の包含までもが必要なほど狭く解釈されるべきではない。本明細書中に開示されている特異的配列を容易に使用し、完全な遺伝子をアルスロバクター種から単離でき、これは次に容易に更なる配列分析に課すことができ、それにより配列のエラーが同定される。
【0210】
特記されない限り、本明細書中でDNA分子のシーケンシングにより決定された全てのヌクレオチド配列は、自動化DNAシーケンサーを使用して決定されたものであり、及び本明細書中で決定されたDNA分子によりコードされたポリペプチドの全てのアミノ酸配列は、上記のように決定したDNA配列の翻訳により予測したものである。従って、当該分野で公知のように、この自動化されたアプローチにより決定されたどのDNA配列に関しても、本明細書中で決定されたどのヌクレオチド配列も幾つかのエラーを有し得る。オートメーションにより決定されたヌクレオチド配列は、シーケンシングされたDNA分子の実際のヌクレオチド配列に対して一般的に少なくとも約90%の相同、より一般的には少なくとも約95%〜少なくとも約99.9%相同である。実際の配列は、マニュアルのDNAシーケンシング法を含む他のアプローチにより、更に詳細に決定できる。当該分野で公知のように、決定されヌクレオチド配列中での単一の挿入又は欠失は、実際の配列と比べてヌクレオチド配列の翻訳中にフレームシフトを生じるので、決定されたヌクレオチド配列によりコードされた予測のアミノ酸配列は、シーケンシングされたDNA分子により実際にコードされたアミノ酸とは完全に異なるであろう。
【0211】
当業者は、このような誤って同定された塩基を同定でき、かつこのようなエラーをどのように修正するかを知っている。
【0212】
“相同性”又は“パーセント相同性”という用語は、本明細書中では互換的に使用される。本発明の目的で、ここでは2つのアミノ酸配列、又は2つの核酸配列のパーセント相同性を決定するために、配列は最適な比較を目的にアライメントされる(例えば、第二のアミノ酸配列又は核酸配列との最適なアライメントのために、ギャップは第一のアミノ酸配列又は核酸配列の中に組込まれる)ことが定義付られる。次に、相応するアミノ酸の位置又はヌクレオチドの位置でアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第一の配列中の位置が、第二の配列中の相応する位置で同じアミノ酸残基又はヌクレオチドで占められている場合には、この分子はその位置で同一である。2つの配列の間のパーセント相同性は、配列により割り当てられる同一の位置の数の関数である(すなわち、%相同性=同一の位置の数/位置の全体数(すなわち、重複する位置)*100)。有利には2つの配列は同じ長さである。
【0213】
当業者は、2つの配列間の相同性を決定するために幾つかの種々のコンピュータープログラムが入手可能であることに気付くであろう。例えば、配列の比較及び2つの配列間のパーセント相同性の決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成できる。有利な実施態様では、2つのアミノ酸配列の間のパーセント相同性は、GCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手可能)に組み込まれたNeedleman及びWunsch(J.Mol.Biol.(48):444〜453頁(1970))アルゴリズムを使用して、Blossom62マトリックス又はPAM250マトリックス及び16、14、12、10、8、6又は4のgapウェイトならびに1、2、3、4、5又は6のレングス・ウェイト(length weight)を利用して決定される。当業者は、全てのこれらの種々のパラメーターが僅かに異なる結果を生じるが、しかし異なるアルゴリズムを使用する場合に、2つの配列の全体的なパーセント相同性は著しく変化しないことを理解している。
【0214】
もう1つの実施態様では、2つのヌクレオチド配列の間のパーセント相同性は、NWSgapdna.CMPマトリックス及び40、50、60、70又は80のgapウェイトならびに1、2、3、4、5又は6のレングス・ウェイトを使用してGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手可能)を使用して決定される。他の実施態様では、2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列のパーセント相同性は、PAM120ウェイト残基テーブル、12のギャップレングスペナルティー及び4のギャップペナルティーを用いてALIGNプログラム(バージョン2.0)(http://vega.igh.cnrs.fr/bin/align−guess.cgi)に組み込まれていたE.Meyers及びW.Miller(CABIOS,4:11〜17(1989))のアルゴリズムを使用して決定される。
【0215】
本発明の核酸及びタンパク質配列は、更に“クエリー配列”として使用でき、一般的なデータベースに対する検索を行い、例えば、他のファミリーメンバー又は関連する配列を同定することができる。このような研究は、Altschul等(1990)J.Mol.Biol.215:403〜10のBLASTN及びBLASTXプログラム(バージョン2.0)を使用して行うことができる。BLASTヌクレオチドの研究は、BLASTNプログラム(スコア=100、ワード長さ=12)を用いて行われ、本発明のPLP03核酸分子に相同であるヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質の研究は、BLASTXプログラム(スコア=50、ワード長さ=3)を用いて行われ、本発明のPLP03タンパク質分子に相同であるアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的でギャップのあるアライメントを得るために、Altschul等、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389〜3402頁に記載されているようなギャップのあるBLASTを使用できる。BLAST及びギャップのあるBLASTプログラムを使用する場合には、個々のプログラムのデフォルトパラメーター(例えば、BLAST及びBLASTN)を使用できる。http://www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照のこと。
【0216】
“アミノ酸のパーセンテージ相同性”又は“アミノ酸配列のパーセンテージ相同性”とは、2つのポリペプチドのアミノ酸の比較を意味し、これは最適にアライメントしている場合には、同じアミノ酸の指定したパーセンテージを殆ど有する。例えば、“95%のアミノ酸相同性”とは、2つのポリペプチドのアミノ酸の比較を意味し、最適にアライメントしている場合には95%アミノ酸相同性を有する。有利には、同じではない残りの位置は、保存的アミノ酸の置換の分だけ異なる。例えば、電荷又は極性のような類似した化学特性を有するアミノ酸の置換は、タンパク質の特性に影響を与えないようである。この例には、グルタミンをアスパラギンに、又はグルタミン酸をアスパラギン酸にすることが含まれる。
【0217】
本明細書中で使用されているように、“ハイブリダイジング”という用語は、互いに少なくとも約90%、有利には少なくとも約95%、より有利には少なくとも約96%、より有利には少なくとも98%相同であるヌクレオチド配列が、通常は互いにハイブリダイズしたままであるハイブリダイゼーション及び洗浄の条件を説明する意図がある。当業者は、更なる規定が適用されること、すなわち本明細書中で定義されているような本発明によるコード化されたアミノ酸配列中のアミノ酸の位置の置換が保持されたままであることを理解している。
【0218】
このようなハイブリダイゼーションの条件の有利な限定されない例は、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でのハイブリダイゼーションに引く続き、1×SSC、0.1%SDS中、50℃、有利には55℃での、更に有利には60℃、及びなお有利には65℃での1回又は複数回の洗浄である。
【0219】
高ストリンジェントな条件には、例えば、5×SSC/5×デンハルト溶液/1.0%SDS中、68℃でのハイブリダイゼーション及び0.2*SSC/0.1%SDS中、室温での洗浄が含まれる。二者択一的に、洗浄を42℃で行ってもよい。
【0220】
当業者は、どの条件がストリンジェントなハイブリダイゼーション及び高ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件に当てはまるのかを知るであろう。このような条件に関する更なるガイダンスは、例えば、Sambrook等、1989、Molecuolar Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Press,N.Y.;及びAusubel等(著者)、1995、Current Protocols in Molecular Biology,(John Wiley&Sons,N.Y.)から容易に入手可能である。
【0221】
当然ながら、ポリA配列(mRNAの3’末端のポリ(A)トラクト)にだけ、又はT(又はU)残基の相補的ストレッチにだけハイブリダイズするポリヌクレオチドは、本発明の核酸の一部分に特異的にハイブリダイズするために使用される本発明のポリヌクレオチドには含まれないであろう。それというのも、このようなポリヌクレオチドは、ポリ(A)ストレッチ又はその相補鎖(例えば、実際には任意の二本鎖cDNAクローン)を有するどの核酸分子にもハイブリダイズしてしまうからである。
【0222】
また本発明は、調節配列とコンパーチブルな条件下に、適切な宿主細胞中のコーディング配列の発現を指示する1つ又は複数の調節配列に作動的に連結した本発明の単離ポリヌクレオチドを有する核酸構造物にも関する。
【0223】
本発明のポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチドは、様々な方法で複製されて、ポリペプチドの発現を提供してもよい。ベクターへの挿入前の、ポリヌクレオチド配列の複製は、発現ベクターに応じて望ましいか又は必要であり得る。組換えDNA法を利用するポリヌクレオチド配列を変性する技法は当業者に周知である。
【0224】
調節配列は、適切なプロモーター配列、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現するために宿主細胞により認識されるヌクレオチド配列であってもよい。プロモーター配列は、ポリペプチドの発現を媒介する転写調節配列を有する。このプロモーターは、突然変異体、トランケートされた及びハイブリッドされたプロモーターを含む選択された宿主細胞中で転写活性を示すどのヌクレオチド配列であってもよく、かつ宿主細胞に相同性又はヘテロである細胞外又は細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られていてもよい。
【0225】
本発明の核酸構造物の転写を指示するための適切なプロモーターの例、特に細菌性宿主細胞中のものは、大腸菌lacオペロン、ストレプトマイセス・セリカラー(Streptomyces coelicolor)アガラーゼ遺伝子(dagA)、バシラス・サブチリス・レバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、バシラス・リシェニフォルミスα−アミラーゼ遺伝子(amyL)、バシラス・ステアロサーモフィルス麦芽アミラーゼ遺伝子(amyM)、バシラス・アミロリケファシエンスα−アミラーゼ遺伝子(amyQ)、バシラス・リシェニフォルミスペニシリナーゼ遺伝子(penP)、バシラス・サブチリスxyIA及びxylB遺伝子、及び原核β−ラクタマーゼ遺伝子(Villa−Kamaroff等、1978、米国科学アカデミー紀要USA75:3727〜3731)ならびにtacプロモーター(DeBoer等、1983、米国科学アカデミー紀要USA80:21〜25)から得られるプロモーターである。更なるプロモーターは、Scientific American1980、242;74〜94の“Useful proteins from recombinant bacteria”及び上記のSambrook等、1989に記載されている。
【0226】
リボソーム結合配列として、これが宿主細胞中で発現できる限りはどの配列も使用できる。しかし、シャイン−ダルガノ配列と開始コドンが、これらの間に十分な距離(例えば、6〜18塩基)を有するように調節されているプラスミドを使用するのが好ましい。
【0227】
転写及び翻訳を効率的に実施するために、タンパク質(ここで、該タンパク質の活性を有するタンパク質もしくは、その部分の欠失によりこのようなタンパク質から誘導されるタンパク質のN−末端は、発現ベクターによりコードされたタンパク質のN−末端に融合している)が発現されてもよい。
【0228】
調節配列は、適切な転写ターミネーター配列、つまり宿主細胞により認識され転写を中止する配列であってもよい。転写中止配列は、常に目的のタンパク質の発現に必要なものではないにもかかわらず、通常は市販されているベクターの部分である。ターミネーター配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の3’−末端に作動的に連結する。構造遺伝子の真下に転写中止配列を置くのが有利である。選択される宿主細胞中で機能的であるどのターミネーターを本発明で使用してもよい。
【0229】
調節配列は、適切なリーダー配列、すなわち宿主細胞による翻訳に重要であるmRNAの翻訳されない部分であってもよい。リーダー配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の5’−末端に作動的に連結している。選択される宿主細胞中で機能的であるどのリーダー配列を本発明で使用してもよい。
【0230】
また調節配列は、ポリアデニル化配列、すなわちヌクレオチド配列の3’末端に作動的に連結した配列であってもよく、及びこれはトランスクライブされた場合には、トランスクライブされたmRNAにポリアデノシン残基を付加する信号として宿主細胞により認識される。選択される宿主細胞中で機能的であるどのポリアデニル化配列を本発明で使用してもよい。
【0231】
調節配列は、ポリペプチドのアミノ末端に結合し、及びコードされたポリペプチドを細胞の分泌経路に向けるアミノ酸配列をコードするシグナルペプチドコーディング領域であってもよい。ヌクレオチド配列のコーディング配列の5’末端は、分泌ポリペプチドをコードするコーディング領域のセグメントと一緒に、転写リーディング枠中に自然に結合したシグナルペプチドコーディング領域を含んでいてもよい。二者択一的に、コーディング配列の5’末端は、コーディング配列とは異種であるシグナルペプチドコーディング領域を含んでいてもよい。外来シグナルペプチドコーディング領域が必要であるかもしれないが、その際に、コーディング配列は当然ながらシグナルペプチドコーディング領域を含まない。二者択一的に、外来シグナルペプチドコーディング領域は、ポリペプチドの分泌を容易にするために、単に天然のペプチドコーディング領域を置き換えてもよい。しかし、発現ポリペプチドを選択された宿主細胞の分泌経路に向ける、すなわち、培養培地へ分泌されるどのシグナルペプチドコーディング領域を本発明で使用してもよい。
【0232】
調節配列は、ポリペプチドのアミノ末端に位置するアミノ酸配列をコードするプロペプチドコーディング領域であってもよい。結果として得られるポリペプチドは、プロエンザイム又はプロポリペプチド(又はある場合にはチモーゲン)として公知である。プロポリペプチドは、一般的に不活性であり、かつプロポリペプチドからのプロペプチドの触媒的又は自動触媒的切断により成熟した活性ポリペプチドに変換できる。プロペプチドコーディング領域は、枯草菌アルカリプロテアーゼ(aprE)、枯草菌中性プロテアーゼ(nprT)、酵母α因子、リゾムコール属ミエヘイアスパラギン酸プロテアーゼ及びマイセリオフトラ・サーモフィラ・ラッカーゼの遺伝子から得られてもよい。
【0233】
ペプチド及びプロペプチド領域の両方がポリペプチドのアミノ末端に存在する場合には、プロペプチド領域はポリペプチドのアミノ末端の隣に位置し、及びシグナルペプチド領域は、プロペプチド領域のアミノ末端の隣に位置する。宿主細胞の成長に関係するポリペプチドの発現の調節を可能にする調節配列を付加するのも望ましいかもしれない。調節系の例は、化学刺激又は物理刺激に応答してスイッチがオン又はオフする遺伝子の発現を引き起こすものであり、調節化合物の存在を含む。原核系における調節系には、lac、tac及びtrpオペレーター系が含まれる。酵母では、ADH2系又はGAL1系が使用されてもよい。糸状菌では、TAKAα−アミラーゼプロモーター、黒色コウジ菌グリコアミラーゼプロモーター及び米コウジ菌グルコアミラーゼプロモーターを調節配列として使用してもよい。調節配列の他の例は、遺伝子複製を可能にするものである。原核系では、これらにはメトトレキセートの存在で増殖されるジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子及び重金属で増殖されるメタロチオネイン遺伝子が含まれる。これらの場合には、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、調節配列に作動的に連結するであろう。
【0234】
また本発明は、本発明のポリヌクレオチド、プロモーター及び転写及び翻訳終始シグナルを有する組換え発現ベクターに関する。本明細書中で記載されている様々な核酸及び調節配列を合わせて組換え発現ベクターを作製してもよく、この組換え発現ベクターは、1つ又は複数の便利な制限部位を含み、このような部位でポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の挿入又は置換を可能にしてもよい。二者択一的に、本発明のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列又は該配列を有する核酸構造物を発現用の適切なベクターに挿入することにより発現されてもよい。発現ベクターの作製では、コーディング配列が発現用の適切な調節配列に作動的に連結するように、コーディング配列はベクター中に存在してもよい。
【0235】
組換え発現ベクターは、組換えDNA法を便利に課すことができ、及びヌクレオチド配列の発現をもたらすことができるどのベクター(例えば、プラスミド又はウイルス)であってもよい。ベクターの選択は、通常はベクターと、このベクターが組込まれることになる宿主細胞との相溶性によるであろう。ベクターは線状又は閉じた円形のプラスミドであってもよい。
【0236】
ベクターは、自律的に複製するベクター、すなわち染色体外の部分として存在するベクター(その複製は染色体の複製とは独立している)、例えば、プラスミド、染色体外エレメント、ミニ染色体、又は人工染色体であってもよい。該ベクターは、自己複製を保証するどの媒体を有していてもよい。二者択一的に、該ベクターは宿主細胞に組込まれる場合にゲノム中にインテグレートされ、かつそれがインテグレートされていた染色体と一緒に複製されるものであってもよい。更に、一緒になって宿主細胞のゲノム中に組込まれるべき全体のDNAを有する単一のベクターもしくはプラスミド又は2つ又はそれ以上のベクターもしくはプラスミド、又はトランスポゾンを使用してもよい。
【0237】
これらの形質転換体を同定し、かつ選択するために、選択マーカー(例えば、抗生物質に耐性)をコードする遺伝子は、一般的に目的の遺伝子と一緒に宿主細胞中に組込まれる。本発明のベクターは、形質転換された、トランスフェクトされた、トランスデュースされた、又はそのような細胞の容易な選択を可能にする1つ又は複数の選択マーカーを含有するのが好ましい。選択マーカーは、遺伝子であり、その生成物は殺生物剤又はウイルス耐性、重金属に対する耐性、栄養要求株に対する原栄養、及びそのようなものを提供する。バクテリア性選択マーカーの例は、バシラス・サブチリス又はバシラス・リフェニフォルミス由来のdal遺伝子であるか、又はアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコールのような抗生物質耐性、又はテトラサイクリン耐性を確実にするマーカーである。
【0238】
組込まれた核酸で形質転換された細胞は薬剤選択により同定できる(例えば、選択マーカー遺伝子を組込まれた細胞は生きるが、その他の細胞は死ぬ)。酵母宿主細胞に適切な選択マーカーは、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1及びURA3である。糸状菌宿主細胞で使用するための選択マーカーには、amdS(アセトアミダーゼ)、argB(オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、bar(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ)、hph(ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ)、niaD(ニトレートリダクターゼ)、pyrG(オロチジン−5’−ホスフェートデカルボキシラーゼ)、sC(スルフェートアデニルトランスフェラーゼ)及びtrpC(アントラニレートシンターゼ)ならびにそれらの同等物が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0239】
本発明のベクターは、宿主細胞中へのゲノムへのベクターの組込みを可能にするか、又はゲノムとは独立に細胞中でのベクターの自律複製を可能にするエレメントを有していてもよい。
【0240】
宿主細胞ゲノム中への組込みのために、ベクターはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列、又は相同又は非相同組換えによりゲノム中に組込むためのベクターの他の任意のエレメントに依存してもよい。二者択一的に、相同組換えにより、染色体中の正確な位置で宿主細胞のゲノム中への組込みを指示する更なるヌクレオチド配列をベクターは含んでいてもよい。正確な位置での組込みの可能性を高めるために、組込みエレメントは、有利には十分な数の核酸を含むべきである。組込みエレメントは、宿主細胞のゲノム中の標的配列と相同であるどの配列であってもよい。更に、組込みエレメントは、非コーディング又はコーディングヌクレオチド配列であってもよい。他方で、ベクターは非相同組換えにより宿主細胞のゲノム中に組込まれていてもよい。
【0241】
自律複製のために、ベクターは更にベクターに複製の原点を有し、該ベクターが当該宿主細胞中で自律的に複製できるようにしてもよい。複製の原点は、細胞中で機能する自律的複製を媒介するどのプラスミドレプリケーターであってもよい。“複製の原点”又は“プラスミドレプリケーター”という用語は、本明細書中では、プラスミド又はベクターがin vivoで複製可能にするヌクレオチド配列であると定義される。
【0242】
複製の細菌起源の例は、大腸菌中での複製を可能にするプラスミドpBR322、pUC19、pACYC177及びpACYC184ならびにバシラス中での複製を可能にするpUB110、pE194、pTA1060及びpAMR1の複製の起源である。
【0243】
酵母宿主細胞中で使用するための複製の起源の例は、2micron複製起点、ARS1、ARS4、ARS1とCEN3の組合せ及びARS4とCEN6の組合せである。
【0244】
本発明のポリヌクレオチドの1つよりも多いコピーを宿主細胞に挿入し、遺伝子産物の生産を増大してもよい。ポリヌクレオチドのコピー数の増大は、配列の少なくとも1つの更なるコピーを宿主細胞ゲノム中に組込むことにより得られるか、又は複製可能な選択マーカー遺伝子とポリヌクレオチドを含むことにより得られ、その際、細胞は選択マーカー遺伝子の複製コピーを有し、及びそれにより該細胞を適切な選択剤の存在で培養することによりポリヌクレオチドの更なるコピーを選択できる。
【0245】
上記のエレメントをライゲートするために使用し、本発明の組換え発現ベクターを構築する手法は、当業者に周知である(例えば、上記のSambrook等、1989参照)。
【0246】
発明の組換え発現ベクターは、宿主細胞中の核酸の発現に適切な形で発明の核酸を有する。これは、組換え発現ベクターが発現に使用すべき宿主細胞に基づき選択される1つ又は複数の調節配列を含むことを意味し、前記配列は、発現すべき核酸配列に作動的に連結している。組換え発現ベクター中では、“作動的に連結した”は、目的のヌクレオチド配列がヌクレオチド配列の発現を可能にする方法で調節配列に結合していることを意味する意図がある(例えば、in vitro転写/翻訳系で、又は宿主細胞中で、ベクターが宿主細胞中に組込まれる場合)。“調節配列”という用語には、プロモーター、エンハンサー及び他の発現調節エレメントを含む意図がある。このような調節配列は、例えば、Geoddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185、Academic Press、サンディエゴ、カリフォルニア(1990)に記載されている。調節配列には、多くのタイプの宿主細胞中のヌクレオチド配列の構成的発現又は誘発性発現を指示するものが含まれる。
【0247】
DNAインサートは、適切なプロモーター、例えば、λファージPLプロモーター、E.Coli lacI及びlacZプロモーター、T3及びT7プロモーター、gptプロモーター、lambdaPR、PLプロモーター及びtrpプロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、アーリー及びレートSV40プロモーター、レトロウイルスLTRsのプロモーター、例えば、ラウス肉腫ウイルス(“RSV”)のもの、CMV(サイトメガロウイルス)及びメタロチオネインプロモーター、例えば、マウスメタロチオニン−Iプロモーターに作動的に連結すべきである。当業者は、他の適切なプロモーターも知るであろう。原核生物中でのタンパク質の発現は、タンパク質の発現を指示する構築的又は誘導性プロモーターを含有するベクターを用いて、大腸菌中で頻繁に実施される。特殊な実施態様では、微生物、有利には大腸菌、バシラス種、コリネ型バクテリアにおいてヒダントイナーゼの高い発現レベルを指示できるプロモーターが有利である。このようなプロモーターは当業者に公知である。発現構築物は、転写開始部位、終始部位を有していてもよく、かつ転写領域では、翻訳用のリボソーム結合部位を有していてもよい。構築物により発現される成熟したトランスクリプトのコーディング領域は、開始部分で翻訳開始AUG及び翻訳すべきポリペプチドの末端で適切に存在する終止コドンを含むであろう。
【0248】
ベクターDNAは、通常の形質転換又はトランスフェクション技術により原核細胞及び真核に組込むことができる。本明細書で使用されているように、“形質転換”及び“トランスフェクション”という用語は、外来核酸(例えば、DNA)を宿主細胞に組込むための当該分野で認識される様々な技術(リン酸カルシウム又は塩化カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、トランスダクション、感染、リポフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション又は電気穿孔法を含む)を意味する意図がある。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトする適切な方法は、Sambrook等(Molecuolar Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Laboratory出版社、Cold Spring Harbor,N.Y.,1989)、Davis等、Basic Methods in Molecular Biology(1986)ならび他の研究マニュアルに見出すことができる。
【0249】
ベクターのうちバクテリアにおいて使用するために有利であるのは、pQE70、pQE60及びPQE−9(Qiagen社から入手可能);pBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16A、pNH18A、pNH46A(Stratagene社から入手可能);及びptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR540、pRIT5(Pharmacia社から入手可能)である。その他の適切なベクターは、当業者には容易に明らかになるであろう。
【0250】
本発明は、本発明のポリヌクレオチドを有する組換え宿主細胞にも関し、これらはヒダントイナーゼポリペプチドの組換え生産において有利に使用される。本発明のポリヌクレオチドを有するベクターは、宿主細胞に組込まれ、該ベクターが染色体挿入物として、又は自己複製する外染色体外ベクターとして保持されるようにする。“宿主細胞”という用語には、複製の間に突然変異により親細胞と同一ではない親細胞の子孫も含まれる。宿主細胞の選択は、ポリペプチド及びその起源をコードする遺伝子に応じて広い範囲になるであろう。
【0251】
“形質転換細胞”又は“組換え細胞”を参照することもでき、該細胞は、これに(又はその子孫に)組換えDNA技術によって本発明による核酸が組込まれた(宿主)細胞である。
【0252】
原核生物及び真核細胞の両方には、例えば、細菌、菌類、酵母及びそのようなものが含まれる。特に、宿主細胞として有用な微生物は、グラム陽性又はグラム陰性細菌のような細菌細胞であり、バシラス種、バシラス・サブチリス、ストレプトマイセス種、大腸菌、シュードモナス種、サルモネラ・チフィムリウム、コリネ型バクテリアならびに放線菌、真菌細胞、例えば、酵母、動物細胞及び植物細胞が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0253】
ベクターの細菌宿主細胞への組込みは、例えば、コンピテントセル(例えば、Young and Spizizen,1961,Journal of Bacteriology 81:823〜829;又はDubnau and Davidoff−Abelson,1971,Journal of Molecular Biology 56:209〜221参照)、電気穿孔(例えば、Shigekawa and Dower,1988,Biotechniques 6:742〜751参照)、又は接合(例えば、Koehler and Thorne,1987,Journal of Bacteriology 169:5771〜5278参照)を使用して、プロトプラスト形質転換(例えば、Chang and Cohen,1979,Molecular General Genetics 168:111〜115参照)により実行してもよい。