特許第6279503号(P6279503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6279503
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】インフルエンザウイルスの再集合
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/04 20060101AFI20180205BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20180205BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20180205BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20180205BHJP
【FI】
   C12N7/04ZNA
   A61P31/16
   A61K39/145
   !C12N15/00 A
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2015-55989(P2015-55989)
(22)【出願日】2015年3月19日
(62)【分割の表示】特願2013-548864(P2013-548864)の分割
【原出願日】2013年3月2日
(65)【公開番号】特開2015-119730(P2015-119730A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2016年3月1日
(31)【優先権主張番号】61/605,922
(32)【優先日】2012年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/685,766
(32)【優先日】2012年3月23日
(33)【優先権主張国】US
【微生物の受託番号】DSMZ  DSM ACC2219
(73)【特許権者】
【識別番号】517323533
【氏名又は名称】セキラス ユーケー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Seqirus UK Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ピラダ スッパピパット
(72)【発明者】
【氏名】ピーター メイソン
(72)【発明者】
【氏名】ビョン カイナー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ラルフ ドルミッチャー
(72)【発明者】
【氏名】ハイディ トルシェイム
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/077986(WO,A2)
【文献】 国際公開第97/037000(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/070098(WO,A1)
【文献】 Vaccine,2011年 7月18日,Vol.29, No.32,p.5153-5162
【文献】 PLoS One,2011年 6月13日,Vol.6, No.6,e20823, p.1-11,Epub
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00− 7/08
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A/Puerto Rico/8/34と比較して、同時にかつ同じ増殖条件下で、MDCK細胞においてより高いウイルス力価まで増殖し得るリアソータントインフルエンザA型ウイルスであって、該リアソータントインフルエンザA型ウイルスは、種のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含、ここで、
PB1ウイルスセグメントおよびPB2ウイルスセグメントが、同じドナー株に由来し、かつ、()配列番号18および19の配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するヌクレオチド配列、または、(ii)配列番号18および19によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含み、
該ウイルスがさらに、
(a)(i)配列番号14の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号14によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、NSセグメントと、
(i)配列番号13の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号13によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、Mセグメントと、
(i)配列番号20の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号20によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、NPセグメントと、
(i)配列番号9の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号9によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、PAセグメントと、
を含むか;あるいは
(b)(i)配列番号14の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号14によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、NSセグメントと、
(i)配列番号13の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号13によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、Mセグメントと、
(i)配列番号12の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号12によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、NPセグメントと、
(i)配列番号17の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号17によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、PAセグメントと、
を含むか;あるいは
(c)(i)配列番号22の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号22によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、NSセグメントと、
(i)配列番号13の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号13によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、Mセグメントと、
(i)配列番号12の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号12によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、NPセグメントと、
(i)配列番号9の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号9によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、PAセグメントと、
を含むか;あるいは
(d)(i)配列番号14の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号14によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、NSセグメントと、
(i)配列番号21の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号21によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、Mセグメントと、
(i)配列番号12の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号12によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、NPセグメントと、
(i)配列番号9の配列に対して少なくとも95%の同一性を有するヌクレオチド配列、または(ii)配列番号9によってコードされるポリペプチドのアミノ酸配列に対して少なくとも99%の配列同一性を有するウイルスポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、を含む、PAセグメントと、
を含む、リアソータントインフルエンザA型ウイルス。
【請求項2】
前記ウイルスが、
(i)配列番号18および配列番号19の配列を有するか、または、(ii)配列番号18および配列番号19によってコードされるウイルスポリペプチドをコードする、PB1ウイルスセグメントおよびPB2ウイルスセグメント;ならびに
(a)(i)配列番号14のNSセグメント、または(ii)配列番号14によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするNSセグメントと、(i)配列番号13のMセグメント、または(ii)配列番号13によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするMセグメントと、(i)配列番号20のNPセグメント、または(ii)配列番号20によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするNPセグメントと、(i)配列番号9のPAセグメント、または(ii)配列番号9によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするPAセグメント;あるいは
(b)(i)配列番号14のNSセグメント、または(ii)配列番号14によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするNSセグメントと、(i)配列番号13のMセグメント、または(ii)配列番号13によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするMセグメントと、(i)配列番号12のNPセグメント、または(ii)配列番号12によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするNPセグメントと、(i)配列番号17のPAセグメント、または(ii)配列番号17によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするPAセグメント;あるいは
(c)(i)配列番号22のNSセグメント、または(ii)配列番号22によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするNSセグメントと、(i)配列番号13のMセグメント、または(ii)配列番号13によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするMセグメントと、(i)配列番号12のNPセグメント、または(ii)配列番号12によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするNPセグメントと、(i)配列番号9のPAセグメント、または(ii)配列番号9によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするPAセグメント;あるいは
(d)(i)配列番号14のNSセグメント、または(ii)配列番号14によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするNSセグメントと、(i)配列番号21のMセグメント、または(ii)配列番号21によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするMセグメントと、(i)配列番号12のNPセグメント、または(ii)配列番号12によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするNPセグメントと、(i)配列番号9のPAセグメント、または(ii)配列番号9によってコードされるウイルスポリペプチドをコードするPAセグメント
含む、請求項1に記載のリアソータントインフルエンザA型ウイルス。
【請求項3】
前記ウイルスが、汎流行性インフルエンザ株由来のHAセグメントを有する、請求項1または請求項2に記載のリアソータントインフルエンザA型ウイルス。
【請求項4】
リアソータントインフルエンザA型ウイルスを調製する方法であって、該方法は、
(i)請求項1〜のいずれか一項に記載のインフルエンザA型ウイルスを生成するために必要とされるウイルスセグメントをコードする1種以上の発現構築物を培養宿主に導入する工程;ならびに
(ii)リアソータントウイルスを生成するために、該培養宿主を培養する工程、
を包含する、方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の発現構築物が、配列番号9〜14および配列番号17〜22からなる群より選択される配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有する配列を含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
工程(ii)において得られるリアソータントウイルスを精製する工程(iii)をさらに包含する、請求項またはに記載の方法。
【請求項7】
インフルエンザA型ウイルスを生成するための方法であって、該方法は、
(a)培養宿主を、請求項1〜のいずれか一項に記載のリアソータントインフルエンザA型ウイルスに感染させる工程;
(b)該工程(a)からの宿主を培養して、該ウイルスを生成する工程
を包含する、方法。
【請求項8】
前記工程(b)において得られたウイルスを精製する工程(c)をさらに包含する、請求項に記載のインフルエンザA型ウイルスを生成する方法。
【請求項9】
ワクチンを調製する方法であって、該方法は、
(a)請求項またはに記載の方法によってウイルスを調製する工程、および
(b)該ウイルスからワクチンを調製する工程、
を包含する、方法。
【請求項10】
前記培養宿主が、孵化鶏卵である、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記培養宿主が、哺乳動物細胞である、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞が、MDCK細胞、Vero細胞もしくはPerC6細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞が、接着して増殖するか、または、懸濁物中で増殖する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記MDCK細胞が、細胞株MDCK 33016(DSM ACC2219)である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程(b)が、前記ウイルスを不活性化する工程を包含する、請求項1〜1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ワクチンが、全ビリオンワクチン、スプリットビリオンワクチン、表面抗原ワクチン、またはビロソームワクチンである、請求項1〜1のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ワクチンが、1用量あたり10ng未満の残留宿主細胞DNAを含む、請求項1〜1のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この特許出願は、2012年3月2日に出願された米国仮特許出願第61/605,922号および2012年3月23日に出願された同第61/685,766号(これらの完全な内容は、参考として本明細書に援用される)からの優先権を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、インフルエンザA型ウイルスの再集合の分野にある。さらに、本発明は、インフルエンザA型ウイルスから防御するためのワクチンを製造することに関する。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
インフルエンザ感染に対して最も効率的な防御は、広まっている株に対するワクチン接種であり、可能な限り迅速にワクチン製造のためのインフルエンザウイルスを生成することは、重要である。
【0004】
野生型インフルエンザウイルスは、しばしば、卵および細胞培養物において低い力価まで増殖する。ワクチン製造のためによりよく増殖するウイルス株を得るために、上記広まっているワクチン株を、より迅速に増殖する高収量ドナー株と再集合させることは、現在一般的な実務である。これは、培養宿主を、上記広まっているインフルエンザ株(上記ワクチン株)および上記高収量ドナー株に同時に感染させ、上記ワクチン株に由来するヘマグルチニン(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)セグメント、ならびに上記ドナー株に由来する他のウイルスセグメント(すなわち、PB1、PB2、PA、NP、M、M、NSおよびNSをコードするもの)を含むリアソータントウイルスを選択することによって、達成され得る。別のアプローチは、上記インフルエンザウイルスを、逆遺伝学によって再集合させることである(例えば、参考文献1および2(特許文献1および特許文献2)を参照のこと)。
【0005】
参考文献3(特許文献3)は、A/Texas/1/77に由来するPB1遺伝子セグメント、A/New Caledonia/20/99に由来するHAセグメントおよびNAセグメント、A/Puerto Rico/8/34に由来する改変PAセグメント、ならびにA/Puerto Rico/8/34に由来する残りのウイルスセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスが、細胞中で増大した増殖を示すことを報告する。
【0006】
ワクチン製造のためのインフルエンザウイルスを再集合させるためのドナー株は、現在ごく数が限られており、最も一般的に使用される株は、A/Puerto Rico/8/34(A/PR/8/34)株である。しかし、A/PR/8/34バックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスは、常に効率的なワクチン製造を確実にするために十分よく増殖するわけではない。従って、インフルエンザウイルスの再集合のためのさらに改善されたドナー株を提供することは、当該分野で必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2007/002008号
【特許文献2】国際公開第2007/124327号
【特許文献3】国際公開第2010/070098号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(好ましい実施形態の要旨)
本発明者らは、いまや驚くべきことに、2種以上のインフルエンザドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むインフルエンザウイルスが、同じドナー株に由来する全てのバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザA型ウイルスと比較して、培養宿主においてより迅速に増殖し得ることを発見した。特に、本発明者らは、2種の高収量ドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むインフルエンザウイルスが、上記2種の元のドナー株のうちのいずれかを使用して作製されたリアソータントより高収量の、標的ワクチン関連HA/NA遺伝子を含むリアソータントを生成し得ることを見いだした。
【0009】
原則としては、密接に関連したインフルエンザA型ウイルスの全てのセグメントは、生存能のあるウイルスを生成するように特異的に再集合され得るが、得られたウイルス成分の効率の悪い活性に起因して、これらウイルスのほんのわずかが高増殖リアソータントである。本発明者らは、上記高収量株を生成するバックボーン組み合わせを提供した。2種以上のインフルエンザドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザA型ウイルスは、同じドナー株(特に、A/New Caledonia/20/1999様株(本明細書中では105p30株ともいわれる)に由来するPB1ウイルスセグメントおよびPB2ウイルスセグメントを含み得る。上記PB1ウイルスセグメントおよびPB2ウイルスセグメントは、配列番号2および/もしくは配列番号3の配列と、少なくとも95%の同一性もしくは100%の同一性を有し得る。
【0010】
上記リアソータントインフルエンザA型ウイルスが、2種または3種のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含む場合、各ドナー株は、上記リアソータントインフルエンザA型ウイルスのバックボーンセグメントのうちの1種より多くを提供し得るが、上記ドナー株のうちの1種もしくは2種はまた、単一のバックボーンセグメントのみを提供し得る。
【0011】
上記リアソータントインフルエンザA型ウイルスが、2種、3種、4種もしくは5種のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含む場合、上記ドナー株の1種もしくは2種は、上記リアソータントインフルエンザA型ウイルスのバックボーンセグメントのうちの1種より多くを提供し得る。一般に、上記リアソータントインフルエンザA型ウイルスは、6種より多くのバックボーンセグメントを含み得ない。よって、例えば、上記ドナー株のうちの1種が、上記ウイルスセグメントのうちの5種を提供する場合、上記リアソータントインフルエンザA型ウイルスは、合計2種の異なるドナー株に由来するバックボーンセグメントしか含み得ない。
【0012】
リアソータントインフルエンザA型ウイルスが、A/Texas/1/77に由来するPB1セグメントを含む場合、上記ウイルスは、好ましくは、A/Puerto Rico/8/34に由来するPAセグメント、NPセグメントもしくはMセグメントを含まない。リアソータントインフルエンザA型ウイルスが、A/Puerto Rico/8/34に由来するPAセグメント、NPセグメントもしくはMセグメントを含む場合、上記ウイルスは、好ましくは、A/Texas/1/77に由来するPB1セグメントを含まない。いくつかの実施形態において、本発明は、A/Texas/1/77に由来するPB1セグメントおよびA/Puerto Rico/8/34に由来するPAセグメント、NPセグメントおよびMセグメントを有するリアソータントインフルエンザA型ウイルスを包含しない。上記A/Texas/1/77に由来するPB1セグメントは、配列番号46の配列を有し得、上記A/Puerto Rico/8/34に由来するPAセグメント、NPセグメントもしくはMセグメントは、それぞれ、配列番号47、48もしくは49の配列を有し得る。
【0013】
本発明者らはまた、公知のドナー株の改変体が、上記元のドナー株と比較して、より高いウイルス力価まで増殖し得、従って、インフルエンザウイルスを再集合させるためにより良好なドナー株であり得ることを発見した。このような株の例は、PR8−Xおよび105p30である。
【0014】
本発明のインフルエンザA型ウイルス株は、A/Puerto Rico/8/34と比較して、同じ時間においてかつ同じ増殖条件下でMDCK細胞においてより高いウイルス力価まで増殖し得、そして/または同じインフルエンザドナー株に由来する全てのバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザ株と比較して、より高いレスキュー効率を有し得る。このようなインフルエンザ株に由来する少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントを含むリアソータントインフルエンザA型ウイルスが、さらに提供される。
【0015】
本発明はまた、ドナー株に由来する少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントを含むリアソータントインフルエンザA型ウイルスを提供し、ここで上記ドナー株は、105p30およびPR8−Xからなる群より選択される。上記少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントが、上記PAセグメントである場合、上記バックボーンウイルスセグメントは、配列番号9および17からなる群より選択される配列と、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列を有し得る。上記少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントが、上記PB1セグメントである場合、上記バックボーンウイルスセグメントは、配列番号10および18からなる群より選択される配列と、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列を有し得る。上記少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントが、上記PB2セグメントである場合、上記バックボーンウイルスセグメントは、配列番号11および19からなる群より選択される配列と、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列を有し得る。上記少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントが、上記Mセグメントである場合、上記バックボーンウイルスセグメントは、配列番号13および21からなる群より選択される配列と、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列を有し得る。上記少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントが、上記NPセグメントである場合、上記バックボーンウイルスセグメントは、配列番号12および20からなる群より選択される配列と、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列を有し得る。上記少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントが、上記NSセグメントである場合、上記バックボーンウイルスセグメントは、配列番号14および22からなる群より選択される配列と、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列を有し得る。
【0016】
上記リアソータントインフルエンザA型ウイルスが、少なくとも2種のインフルエンザドナー株に由来するバックボーンセグメントを含む実施形態において、少なくとも1種のバックボーンセグメントは、前の段落において考察されるように、105p30およびPR8−Xからなる群より選択されるドナー株に由来し得る。好ましいリアソータントインフルエンザA型ウイルスは、上記105p30ドナー株に由来する1種、2種、3種もしくは4種のウイルスセグメントを含み、ここで上記PAセグメントは、配列番号17と、少なくとも95%の同一性もしくは100%の同一性を有し得、上記NPセグメントは、配列番号20と、少なくとも95%の同一性もしくは100%の同一性を有し得、上記Mセグメントは、配列番号21と、少なくとも95%の同一性もしくは100%の同一性を有し得、そして/または上記NSセグメントは、配列番号22と、少なくとも95%の同一性もしくは100%の同一性を有し得る。いくつかの実施形態において、このようなインフルエンザA型ウイルスはまた、上記PR8−Xドナー株に由来する少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントを含み得る。上記少なくとも1種のウイルスセグメントが、上記PAセグメントである場合、上記ウイルスセグメントは、配列番号9と、少なくとも95%の同一性もしくは100%の同一性を有し得る。上記少なくとも1種のウイルスセグメントが、上記NPセグメントである場合、上記ウイルスセグメントは、配列番号12と、少なくとも95%の同一性もしくは100%の同一性を有し得る。上記少なくとも1種のウイルスセグメントが、上記Mセグメントである場合、上記ウイルスセグメントは、配列番号13と、少なくとも95%の同一性もしくは100%の同一性を有し得る。上記少なくとも1種のウイルスセグメントが、上記NSセグメントである場合、上記ウイルスセグメントは、配列番号9と、少なくとも95%の同一性もしくは100%の同一性を有し得る。本発明者らは、このようなバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザA型ウイルスが、細胞培養物中において良好に増殖することを示した。一般に、リアソータントインフルエンザウイルスは、各バックボーンセグメントのうちの1種のみを含む。例えば、上記インフルエンザウイルスが、105p30に由来するPAセグメントを含む場合、上記ウイルスは、同時にPR8−XのPAセグメントを含まない。
【0017】
好ましい実施形態において、上記ウイルスは、(a)配列番号19のPB2セグメント、配列番号18のPB1セグメントおよび配列番号22のNSセグメント;または(b)配列番号19のPB2セグメント、配列番号18のPB1セグメントおよび配列番号21のMセグメント;または(c)配列番号19のPB2セグメント、配列番号18のPB1セグメントおよび配列番号20のNPセグメント;または(d)配列番号19のPB2セグメント、配列番号18のPB1セグメントおよび配列番号17のPAセグメント、の配列と、少なくとも95%の同一性もしくは100%の同一性を有するウイルスセグメントを含む。これら実施形態は好ましい。なぜなら、本発明者らは、このようなリアソータントインフルエンザA型ウイルスは、細胞培養物において特に良好に増殖することを見いだしたからである。
【0018】
本発明は、本発明のリアソータントインフルエンザA型ウイルスを調製するための方法を提供する。これら方法は、(i)インフルエンザA型ウイルスを生成するために必要とされる上記ウイルスセグメントをコードする1種以上の発現構築物を培養宿主に導入する工程であって、ここで上記バックボーンウイルスセグメントは、2種以上のインフルエンザ株に由来する、工程;および(ii)リアソータントウイルスを生成するために、上記培養宿主を培養する工程、ならびに必要に応じて、(iii)上記工程(ii)において得られウイルスを精製する工程、を包含する。
【0019】
上記方法は、(i)インフルエンザA型ウイルスを生成するために必要とされるウイルスセグメントをコードする1種以上の発現構築物を、培養宿主に導入する工程であって、ここで上記バックボーンウイルスセグメントは、2種以上のインフルエンザ株に由来し、上記PB1セグメントおよびPB2セグメントは、同じドナー株に由来する、工程;および(ii)リアソータントウイルスを生成するために、上記培養宿主を培養する工程、ならびに必要に応じて、(iii)上記工程(ii)において得られたウイルスを精製する工程、を包含し得る。
【0020】
また、本発明のリアソータントインフルエンザA型ウイルスを調製するための方法が提供され、上記方法は、(i)インフルエンザA型ウイルスを生成するために必要とされるウイルスセグメントをコードする1種以上の発現構築物を、培養宿主に導入する工程であって、ここでバックボーンウイルスセグメントは、2種以上のインフルエンザ株に由来し、HAセグメントおよびPB1セグメントは、同じインフルエンザHAサブタイプを有する異なるインフルエンザ株に由来する、工程;および(ii)リアソータントウイルスを生成するために、上記培養宿主を培養する工程、ならびに必要に応じて、(iii)上記工程(ii)において得られたウイルスを精製する工程、を包含する。
【0021】
本発明はまた、本発明のリアソータントインフルエンザA型ウイルスを調製するための方法を提供し、上記方法は、(i)インフルエンザA型ウイルスを生成するために必要とされるウイルスセグメントをコードする1種以上の発現構築物を、培養宿主に導入する工程であって、ここで1種以上のバックボーンウイルスセグメントは、105p30および/もしくはPR8−Xインフルエンザ株に由来し、少なくとも1種のウイルスセグメントは、第2のインフルエンザ株に由来する、工程;および(ii)リアソータントウイルスを生成するために、上記培養宿主を培養する工程、ならびに必要に応じて、(iii)上記工程(ii)において得られたウイルスを精製する工程、を包含する。
【0022】
上記方法は、以下の工程をさらに包含し得る:(iv)培養宿主を、工程(ii)もしくは工程(iii)において得られたウイルスに感染させる工程;(v)上記工程(iv)からの培養宿主を培養して、さらなるウイルスを生成する工程;ならびに必要に応じて、(vi)工程(v)において得られたウイルスを精製する工程。
【0023】
本発明はまた、インフルエンザウイルスを生成するための方法を提供し、上記方法は、(a)培養宿主を、本発明のリアソータントウイルスに感染させる工程;(b)上記工程(a)からの宿主を培養して、上記ウイルスを生成する工程;ならびに必要に応じて、(c)上記工程(b)において得られたウイルスを精製する工程を包含する。
【0024】
本発明はまた、ワクチンを調製するための方法を提供し、(d)上記の実施形態のうちのいずれか1つの方法によって、ウイルスを調製する工程、および(e)上記ウイルスからワクチンを調製する工程を包含する。
【0025】
さらなる実施形態において、本発明は、インフルエンザ株PR8−Xおよび105p30を提供する。
【0026】
本発明はまた、上記Mゲノムセグメントが、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを使用して、配列番号33に整列される場合、配列番号33のアミノ酸95に対応する位置においてリジンを有する改変体H1N1インフルエンザウイルス株を包含する。本発明に従う上記改変体H1N1インフルエンザウイルス株は、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを使用して、配列番号35に整列される場合、配列番号35のアミノ酸225に対応する位置においてグリシンを、および/または配列番号35に整列される場合、配列番号35のアミノ酸231に対応する位置においてアスパラギンを有するHAセグメントをさらに有し得る。上記改変体H1N1インフルエンザウイルス株はまた、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを使用して、配列番号31に整列される場合、配列番号31のアミノ酸70に対応する位置においてヒスチジンを有するNAセグメントを有し得る。
【0027】
好ましいペアワイズアラインメントアルゴリズムは、デフォルトパラメーター(例えば、EBLOSUM62スコア付けマトリクスを使用して、ギャップ開始ペナルティー=10.0、およびギャップ伸長ペナルティー=0.5)を使用する、Needleman−Wunsch全体アラインメントアルゴリズム[4]である。このアルゴリズムは、EMBOSSパッケージ中のneedleツールにおいて便宜上実行される[5]。
【0028】
本発明は、インフルエンザA型ウイルスのセグメントをコードするvRNAを含む1種以上の発現構築物を含む発現システムを提供し、ここで上記発現構築物は、2種以上のインフルエンザドナー株に由来するバックボーンウイルスセグメントをコードする。上記発現構築物は、同じドナー株に由来するPB1セグメントおよびPB2セグメントをコードし得る。
【0029】
本発明はまた、105p30もしくはPR8−X株のセグメントをコードするvRNAを含む1種以上の発現構築物を含む発現システムを提供し、上記発現構築物は、105p30もしくはPR8−X株に由来する少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントを含む。上記発現構築物は、PR8−Xに由来するPB2セグメント、NPセグメント、NSセグメント、MセグメントおよびPAセグメントをコードするvRNAをさらに含み得る。
【0030】
本発明はまた、本発明の発現システムを含む宿主細胞を提供する。これら宿主細胞は、上記発現システムにおいて発現構築物からインフルエンザA型ウイルスを発現し得る。
【0031】
本発明の発現システムにおいて使用され得る発現構築物はまた、提供される。例えば、本発明は、同じ構築物上に、本発明に従うリアソータントインフルエンザ株のバックボーンセグメントをコードする発現構築物を提供する。
【0032】
(ドナー株)
インフルエンザドナー株は、ときおり、上記ウイルスのHAセグメントもしくはNAセグメント(しかし両方ではない)をも提供し得るとしても、リアソータントインフルエンザウイルスにおいて上記バックボーンセグメントを代表的には提供する株である。通常、しかし、リアソータントインフルエンザウイルスにおける上記HAセグメントおよび上記NAセグメントはともに、上記ワクチン株に由来する。
【0033】
本発明者らは、驚くべきことに、2種以上のインフルエンザドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザA型ウイルスが、同じドナー株に由来する全てのバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスと比較して、細胞培養物においてより高い力価まで増殖し得ることを発見した。本発明者らは、この効果は、2種のドナー株に由来するバックボーンセグメントの存在に起因し、特定の変異を有するウイルスセグメントの存在を要しないことを示した。しかし、特に良好な結果は、上記Mゲノムセグメントが、配列番号33に整列される場合に、配列番号33のアミノ酸95に対応する位置においてリジンを有するインフルエンザA型株で達成される。
【0034】
同じインフルエンザ株(例えば、105p30)に由来する上記PB1セグメントおよびPB2セグメントを含むリアソータントインフルエンザA型ウイルスはまた、上記PB1セグメントおよびPB2セグメントが異なるウイルスに由来するインフルエンザウイルスと比較して、より良好なレスキュー効率を示したので、有利である。上記105p30のPB1セグメントおよびPB2セグメントは、それぞれ、配列番号18および配列番号19の配列を有する。
【0035】
本発明者らはまた、いくつかのインフルエンザウイルス株が、A/Puerto Rico/8/34と比較して、同じ時間においてかつ同一増殖条件下で、MDCK細胞においてより高いウイルス力価まで増殖し得ることを示した。
【0036】
本発明のドナー株もしくは他の公知のドナー株(例えば、A/PR/8/34(wt PR8))に由来するインフルエンザドナー株の改変体もまた、ドナー株として有用であり得る。これらドナー株は、上記ドナー株が由来するドナー株と比較して、より高いウイルス力価へと(同じ時間でかつ同じ増殖条件下で)増殖し得る。例えば、本発明者らは、驚くべきことに、A/PR/8/34インフルエンザ株を細胞培養物中で数回継代することで、上記元のA/PR8/34株と比較して、遙かにより高いウイルス力価まで増殖するウイルス株(PR8−X)が生じることを発見した。同様に、本発明者らは、上記A/New Caledonia/20/1999株を細胞培養物中で数回継代することで、継代されていないA/New Caledonia/20/1999株と比較して、同じ時間でかつ同じ増殖条件下でさらにより高いウイルス力価まで増殖し得る株(105p30)が生じることを見いだした。本発明のドナー株改変体は、代表的には、同じ増殖条件下でかつ同じ時間にわたって(例えば、12時間、24時間、48時間もしくは72時間)、上記改変体が由来したドナー株で得られたウイルス力価と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%もしくは少なくとも1000%高いウイルス力価を達成する。
【0037】
上記PR8−Xのセグメントは、配列番号11(PB2)、配列番号10(PB1)、配列番号9(PA)、配列番号12(NP)、配列番号13(M)、配列番号14(NS)、配列番号15(HA)もしくは配列番号16(NA)の配列を有する。
【0038】
上記105p30のセグメントは、配列番号19(PB2)、配列番号18(PB1)、配列番号17(PA)、配列番号20(NP)、配列番号21(M)、配列番号22(NS)、配列番号23(HA)もしくは配列番号24(NA)の配列を有する。
【0039】
上記105p30もしくはPR8−X株のセグメントのうちの1種、2種、3種、4種、5種、6種もしくは7種を含むインフルエンザ株はまた、ドナー株として使用され得る。
【0040】
本発明は、配列番号11〜14もしくは配列番号18〜22の配列に対して、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%もしくは少なくとも約99%の同一性を有するウイルスセグメントを有するドナー株で実施され得る。例えば、遺伝コードの縮重に起因して、異なる配列を有するいくつかの核酸によってコードされる同じポリペプチドを有する可能性がある。従って、本発明は、配列番号11〜14もしくは配列番号18〜22の配列と同じポリペプチドをコードするウイルスセグメントで実施され得る。例えば、配列番号3および配列番号28の核酸配列は、これらが同じウイルスタンパク質をコードするとしても、73%の同一性を有するに過ぎない。
【0041】
本発明はまた、配列番号11〜14もしくは配列番号18〜22によってコードされるポリペプチド配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%もしくは少なくとも99%の同一性を有するポリペプチドをコードするウイルスセグメントで実施され得る。
【0042】
上記DNA配列および上記アミノ酸配列におけるバリエーションはまた、上記ウイルスの継代の間に起こり得る偶発突然変異から生じ得る。このような改変体インフルエンザ株はまた、本発明において使用され得る。
【0043】
(リアソータントウイルス)
本発明は、2種以上のインフルエンザドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスを提供する。上記PB1セグメントおよびPB2セグメントは、同じドナー株に由来し得る。
【0044】
本発明はまた、A/Puerto Rico/8/34と比較して、同じ時間でかつ同じ増殖条件下でMDCK細胞においてより高いウイルス力価まで増殖し得るインフルエンザウイルス株に由来する少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスを提供する。
【0045】
本発明は、本発明のドナー株(例えば、PR8−Xもしくは105p30株)に由来する少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスを提供する。本発明のリアソータントインフルエンザウイルスは、2種、3種もしくはこれより多くの異なるインフルエンザ株との間のリアソータントであり得るが、ただし、少なくとも1種のウイルスセグメントは、本発明のドナー株に由来する。
【0046】
インフルエンザウイルスは、セグメント化されたマイナス鎖RNAウイルスである。インフルエンザA型ウイルスおよびインフルエンザB型ウイルスは、8種のセグメント(NP、M、NS、PA、PB1、HAおよびNA)を有するのに対して、インフルエンザC型ウイルスは、7種を有する。本発明のリアソータントウイルスは、2種以上のドナー株に由来するバックボーンセグメント、もしくは本発明のドナー株に由来する少なくとも1種(すなわち、1種、2種、3種、4種、5種もしくは6種)のバックボーンウイルスセグメントを含む。上記バックボーンウイルスセグメントは、HAもしくはNAをコードしないものである。従って、バックボーンセグメントは、代表的には、上記インフルエンザウイルスのうちの上記PB1、PB2、PA、NP、M、M、NSおよびNSポリペプチドをコードする。上記リアソータントウイルスは、本発明のドナー株に由来するHAもしくはNAのいずれか(ただし両方ではない)を含むリアソータントウイルスもまた想定されるとしても、代表的には、上記ドナー株に由来するHAおよびNAをコードするセグメントを含まない。
【0047】
本発明のリアソータントウイルスが、単一のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントである場合、上記リアソータントウイルスは、一般に、1:7、2:6、3:5、4:4、5:3、6:2もしくは7:1の比において上記ドナー株および上記ワクチン株に由来するセグメントを含む。上記ドナー株に由来するセグメントが大多数(特に、6:2の比)であるのが、代表的である。上記リアソータントウイルスが、2種のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含む場合、上記リアソータントウイルスは、一般には、第1のドナー株、第2のドナー株および上記ワクチン株に由来するセグメントを、1:1:6、1:2:5、1:3:4、1:4:3、1:5:2、1:6:1、2:1:5、2:2:4、2:3:3、2:4:2、2:5:1、3:1:2、3:2:1、4:1:3、4:2:2、4:3:1、5:1:2、5:2:1もしくは6:1:1の比において含む。
【0048】
好ましくは、上記リアソータントウイルスは、上記ドナー株のHAセグメントを含まない。なぜなら、これは、上記インフルエンザウイルスの主要ワクチン抗原をコードし、したがって上記ワクチン株に由来するはずだからである。従って、本発明のリアソータントウイルスは、好ましくは、上記ワクチン株に由来する、少なくとも上記HAセグメントを有し、代表的には、上記ワクチン株に由来するHAセグメントおよびNAセグメントを有する。
【0049】
本発明はまた、1種より多くの(例えば、2種もしくは3種の)異なるドナー株に由来するウイルスセグメントを含むリアソータントウイルスを包含し、ここで少なくとも1種のウイルスセグメント(好ましくは、HAではない)は、上記PR8−Xもしくは105p30インフルエンザ株に由来する。このようなリアソータントインフルエンザウイルスは、代表的には、ワクチン株に由来するHAおよび/もしくはNAセグメントを含む。上記リアソータントは、1種より多くのインフルエンザドナー株に由来するウイルスセグメントを含む場合、上記さらなるドナー株は、本発明のドナー株を含む任意のドナー株であり得る。例えば、上記ウイルスセグメントのうちのいくつかは、上記A/PR/8/34もしくはAA/6/60(A/Ann Arbor/6/60)インフルエンザ株に由来し得る。上記AA/6/60株に由来するウイルスセグメントを含むリアソータントは、例えば、上記リアソータントウイルスが、生の弱毒化インフルエンザワクチンにおいて使用される予定である場合に、有利であり得る。
【0050】
本発明はまた、1種より多くのワクチン株に由来するウイルスセグメントを含むリアソータントを包含するが、ただし上記リアソータントは、本発明に従うバックボーンを含む。例えば、上記リアソータントインフルエンザウイルスは、1つのドナー株に由来するHAセグメントおよび異なるドナー株に由来するNAセグメントを含み得る。
【0051】
本発明のリアソータントウイルスは、同じ時間(例えば、12時間、24時間、48時間もしくは72時間)でかつ同じ増殖条件下で、上記野生型ワクチン株(これから、上記リアソータントウイルスのウイルスセグメントのうちのいくつかが得られる)よりも高いウイルス力価まで増殖し得る。このウイルス力価は、当業者に公知の標準的方法によって決定され得る。本発明のリアソータントウイルスは、同じ時間枠でかつ同じ条件下で上記野生型ワクチン株のウイルス力価より少なくとも10%高いか、少なくとも20%高いか、少なくとも50%高いか、少なくとも100%高いか、少なくとも200%高いか、少なくとも500%高いか、もしくは少なくとも1000%高いウイルス力価を達成し得る。
【0052】
本発明は、汎流行性インフルエンザワクチン株および汎流行間期の(inter−pandemic)(季節性)インフルエンザワクチン株を再集合させるために適している。上記リアソータントインフルエンザ株は、上記インフルエンザA型ウイルスHAサブタイプH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15もしくはH16を含み得る。それらは、上記インフルエンザA型ウイルスNAサブタイプN1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8もしくはN9を含み得る。本発明のリアソータントインフルエンザウイルスにおいて使用される上記ワクチン株が、季節性インフルエンザ株である場合、上記ワクチン株は、H1もしくはH3サブタイプを有し得る。本発明の一局面において、上記ワクチン株は、H1N1株もしくはH3N2株である。
【0053】
本発明における使用のための上記ワクチン株はまた、汎流行性株もしくは潜在的に汎流行性の株であり得る。汎流行性アウトブレイクを引き起こす能力を与えるインフルエンザ株の特徴は、以下である:(a)そのインフルエンザ株が、現在広まっているヒト株におけるヘマグルチニンと比較して、新たなヘマグルチニンを含み(すなわち、十年より長きにわたってヒト集団において明らかにならなかったもの(例えば、H2)、またはヒト集団においてこれまで全く見いだされなかったもの(例えば、トリ集団においてのみ一般に見いだされた、H5、H6もしくはH9))、その結果、ヒト集団は、上記株のヘマグルチニンに対して免疫学的にナイーブである;(b)ヒト集団において水平伝播し得る;および(c)ヒトに対して病原性である。H5ヘマグルチニンタイプを有するワクチン株は、上記リアソータントウイルスが、汎流行性インフルエンザ(例えば、H5N1株)に対して免疫化するためのワクチンにおいて使用される場合に好ましい。他の考えられる株としては、H5N3、H9N2、H2N2、H7N1およびH7N7、ならびに任意の他の新興の潜在的に汎流行性の株が挙げられる。本発明は、非ヒト動物集団からヒトへと拡がり得るかもしくは拡がった潜在的汎流行性ウイルス株(例えば、ブタ起源のH1N1インフルエンザ株)に対して防御するためのワクチンにおいて使用するためのリアソータントウイルスを生成するために特に適している。
【0054】
本発明のリアソータントインフルエンザ株は、A/California/4/09株に由来するHAセグメントおよび/もしくはNAセグメントを含み得る。従って、例えば、上記HA遺伝子セグメントは、配列番号25よりも配列番号32に対して密接に関連するH1ヘマグルチニンをコードし得る(すなわち、同じアルゴリズムおよびパラメーターを使用して、配列番号25ではなく、配列番号32と比較する場合、より高い程度の配列同一性を有する)。配列番号32および配列番号25は、80%同一である。同様に、上記NA遺伝子は、配列番号26に対してより密接に配列番号27に関連するN1ノイラミニダーゼをコードし得る。配列番号27および26は、82%同一である。
【0055】
ワクチン株として使用され得るとして株は、抵抗性汎流行性株[7]を含む、抗ウイルス治療に対して抵抗性の(例えば、オセルタミビル[6]および/もしくはザナミビルに抵抗性の)株が挙げられる。
【0056】
本発明の方法における使用のためのドナー株の選択は、再集合されるべき上記ワクチン株に依存し得る。進化的に異なる株間のリアソータントは、細胞培養物において良好に複製しない可能性があるので、上記ドナー株および上記ワクチン株が、同じHAおよび/もしくはNAサブタイプを有することが考えられる。しかし、他の実施形態において、上記ワクチン株および上記ドナー株は、異なるHAおよび/もしくはNAサブタイプを有し得、この構成(arrangement)は、上記ワクチン株に由来するHAおよび/もしくはNAセグメントを含むリアソータントウイルスの選択を容易にし得る。従って、上記105p30およびPR8−X株は、上記H1インフルエンザサブタイプを含むが、これらドナー株は、上記H1インフルエンザサブタイプを含まないワクチン株のために使用され得る。
【0057】
上記HAおよび/もしくはNAセグメントが別のサブタイプへと変化させられた本発明のドナー株のリアソータントもまた、使用され得る。上記105p30もしくはPR8−X株のH1インフルエンザサブタイプは、例えば、H3もしくはH5サブタイプへと変化させられ得る。
【0058】
従って、本発明は、本発明の105p30もしくはPR8−X株に由来する1種、2種、3種、4種、5種、6種もしくは7種のウイルスセグメントおよび上記H1サブタイプではないHAセグメントを含むインフルエンザA型ウイルスを包含する。上記リアソータントドナー株は、上記N1サブタイプではないNAセグメントをさらに含み得る。上記ドナー株をリアソートするために適した技術は、当業者に明らかである。
【0059】
本発明はまた、本発明の105p30もしくはPR8−X株に由来する少なくとも1種、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種もしくは少なくとも7種のウイルスセグメント、および異なるインフルエンザ株に由来するH1 HAセグメントを含むリアソータントドナー株を包含する。
【0060】
機能的NSタンパク質をコードしないNSセグメントを含むリアソータントウイルスはまた、本発明の範囲内である。NS1ノックアウト変異体は、参考文献8において記載される。これらNS1変異体ウイルス株は、生の弱毒化インフルエンザワクチンを調製するために特に適している。
【0061】
本発明の方法において使用される上記「第2のインフルエンザ株」は、上記使用されるドナー株とは異なる。
【0062】
(逆遺伝学)
本発明は、逆遺伝学技術を介してリアソータントインフルエンザウイルス株を生成するために特に適している。これら技術において、上記ウイルスは、発現システムを使用して、培養宿主において生成される。
【0063】
一局面において、上記発現システムは、同じドナー株に由来するPB1セグメントおよびPB2セグメントをコードし得る。本発明のこの局面において、上記システムは、別のインフルエンザドナー株に由来するセグメントNP、M、NSおよび/もしくはPAのうちの少なくとも1種(すなわち、1種、2種、3種もしくは4種)をコードし得る。
【0064】
別の局面において、上記システムは、上記PR8−X株に由来する1種以上の(例えば、1種、2種、3種、4種、5種もしくは6種)ゲノムセグメントをコードし得るが、通常、これ/これらは、上記PR8−X HAセグメントを含まず、通常、上記PR8−X NAセグメントを含まない。従って、上記システムは、PR8−Xに由来するセグメントNP、M、NS、PA、PB1および/もしくはPB2のうちの少なくとも1種(おそらく6種全て)をコードし得る。
【0065】
上記システムは、上記105p30株に由来する1種以上(例えば、1種、2種、3種、4種、5種もしくは6種)のゲノムセグメントをコードし得るが、通常、これ/これらは、上記105p30 HAセグメントを含まず、通常、上記105p30 NAセグメントを含まない。従って、上記システムは、105p30に由来するセグメントNP、M、NS、PA、PB1および/もしくはPB2のうちの少なくとも1種(おそらく6種全て)をコードし得る。
【0066】
インフルエンザA型ウイルスおよびインフルエンザB型ウイルスについての逆遺伝学は、複製および転写を開始するために必要とされる4種のタンパク質(PB1、PB2、PAおよび核タンパク質)および8種全てのウイルスゲノムセグメントを発現するために12種のプラスミドで実施され得る。しかし、構築物の数を減らすために、複数のRNAポリメラーゼI転写カセット(ウイルスRNA合成に関して)は、単一プラスミド上に(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種もしくは8種全てのインフルエンザvRNAセグメントをコードする配列)に含まれ得、そして複数のタンパク質コード領域とRNAポリメラーゼIIプロモーター(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種もしくは8種のインフルエンザmRNA転写物をコードする配列)とは、別のプラスミド上に含まれ得る[9]。同じプラスミド上で、pol Iプロモーターの制御下に1種以上のインフルエンザvRNAセグメントを、および別のプロモーター(特に、pol IIプロモーター)の制御下に1種以上のインフルエンザタンパク質コード領域を含めることもまた可能である。これは、好ましくは、2方向性プラスミドを使用することによって行われる。
【0067】
参考文献9の方法の好ましい局面は、以下を含む:(a)単一の発現構築物上のPB1、PB2およびPA mRNAコード領域;ならびに(b)単一の発現構築物上の8種全てのvRNAコードセグメント。ある発現構築物上に上記ノイラミニダーゼ(NA)およびヘマグルチニン(HA)セグメントを、および別の発現構築物上に上記6種の他のウイルスセグメントを含めることは、新たに現れてくるインフルエンザウイルス株が、通常は、上記NAおよび/もしくはHAセグメントにおいて変異を有するので特に好ましい。従って、別個の発現構築物上に上記HAおよび/もしくはNAセグメントを有するという利点は、置換される必要があるのは上記HA配列およびNA配列を含むベクターだけでいいということである。従って、本発明の一局面において、上記ワクチン株の上記NAおよび/もしくはHAセグメントは、ある発現構築物上に含められ得、本発明のドナー株に由来するセグメント(上記HAおよび/もしくはNAセグメントを除く)をコードするvRNAは、異なる発現構築物上に含まれる。従って、本発明は、本発明のドナー株のバックボーンウイルスセグメントをコードする1種、2種、3種、4種、5種もしくは6種のvRNAを含む発現構築物を提供する。上記発現構築物は、機能的HAおよび/もしくはNAタンパク質を生成するHAおよび/もしくはNAウイルスセグメントを含まなくてもよい。
【0068】
公知の逆遺伝学システムは、pol Iプロモーター、細菌性RNAポリメラーゼプロモーター、バクテリオファージポリメラーゼプロモーターなどから所望のウイルスRNA(vRNA)分子をコードするDNA分子を発現する工程を包含する。インフルエンザウイルスは、生活環を完了するためにウイルスプロモーターの存在を必要とするので、システムはまた、これらタンパク質を提供し得る。例えば、上記システムは、ウイルスポリメラーゼタンパク質をコードするDNA分子をさらに含み、その結果、DNAの両方のタイプの発現は、完全な感染性ウイルスの組み立てをもたらす。タンパク質として上記ウイルスポリメラーゼを供給することもまた可能である。
【0069】
逆遺伝学がインフルエンザvRNAの発現のために使用される場合、互いに関して配列エレメントの正確なスペーシングは、上記ポリメラーゼが複製を開始するために重要であることが当業者に明らかである。従って、上記ウイルスRNAをコードするDNA分子は、上記pol Iプロモーターと終止配列との間で正確に配置されることが重要であるが、この配置は、逆遺伝学システムを扱う者の能力の十分に範囲内である。
【0070】
組換えウイルスを生成するために、細胞は、ビリオンを組み立てるために必要なウイルスゲノムの全てのセグメントを発現しなければならない。本発明の発現構築物へとクローニングされるDNAは、好ましくは、上記ウイルスRNAおよびタンパク質の全てを提供するが、ヘルパー・ウイルスを使用して、上記RNAおよびタンパク質のうちのいくつかを提供することもまた可能であるが、ヘルパー・ウイルスを使用しないシステムが好ましい。上記インフルエンザウイルスは、セグメント化ウイルスであるので、上記ウイルスゲノムは、通常、本発明の方法において1種より多い発現構築物を使用して発現される。しかし、単一の発現構築物上で上記ウイルスゲノムの1種以上のセグメントもしくはさらには全てのセグメントを組み合わせることもまた、想定される。
【0071】
いくつかの実施形態において、上記宿主細胞において補助的タンパク質(accessory protein)の発現をもたらす発現構築物もまた、含まれる。例えば、逆遺伝学システムの一部として、非ウイルスセリンプロテアーゼ(例えば、トリプシン)を発現することは、有利であり得る。
【0072】
(発現構築物)
本発明の発現システムにおいて使用される発現構築物は、一方向性もしくは二方向性の発現構築物であり得る。1種より多くの導入遺伝子は、上記方法において使用される場合(同じ発現構築物上かもしくは異なる発現構築物上に関わらず)、一方向性および/もしくは二方向性の発現を使用することもまた可能である。
【0073】
インフルエンザウイルスは、感染性のためのタンパク質を必要とするので、二方向性発現構築物を使用することは、一般に好ましい。なぜなら、これは、上記宿主細胞によって必要とされる発現構築物の総数を減らすからである。従って、本発明の方法は、少なくとも1種の二方向性発現構築物を利用し得、ここで遺伝子もしくはcDNAは、上流のpol IIプロモーターと下流の非内因性pol Iプロモーターとの間に位置する。上記pol IIプロモーターからの上記遺伝子もしくはcDNAの転写は、タンパク質へと翻訳され得る、キャップされたプラス鎖(positive−sense)ウイルスmRNAを生成する一方で、上記非内因性pol Iプロモーターからの転写は、マイナス鎖(negative−sense)vRNAを生成する。上記二方向性発現構築物は、二方向性発現ベクターであり得る。
【0074】
二方向性発現構築物は、同じ構築物から異なる方向(すなわち、5’→3’および3’→5’の両方)において発現を駆動する少なくとも2種のプロモーターを含む。上記2種のプロモーターは、同じ二本鎖DNAの異なる鎖へと作動可能に連結され得る。好ましくは、上記プロモーターのうちの一方は、pol Iプロモーターであり、他方のプロモーターのうちの少なくとも一方は、pol IIプロモーターである。これは、有用である。なぜなら、上記pol Iプロモーターが、キャップされていないvRNAを発現するために使用される一方で、上記pol IIプロモーターが、その後、タンパク質へと翻訳され得るmRNAを転写するために使用され得、従って、同じ構築物からRNAおよびタンパク質の同時発現を可能にするからである。1種より多くの発現構築物が、発現システム内で使用される場合、上記プロモーターは、内因性および非内因性のプロモーターの混合物であり得る。
【0075】
上記発現構築物において使用される上記pol Iおよびpol IIプロモーターは、上記宿主細胞が由来する同じ分類学上の目の生物に対して内因性であり得る。あるいは、上記プロモーターは、上記宿主細胞とは異なる分類学上の目の生物に由来し得る。用語「目」とは、従来の分類学上の順位に言及し、目の例は、霊長目、齧歯目、食肉目、有袋目、クジラ目などである。ヒトおよびチンパンジーは、同じ分類学上の目(霊長目)にあるが、ヒトおよびイヌは、異なる目にある(霊長目 対 食肉目)。例えば、上記ヒトpol Iプロモーターは、イヌ細胞(例えば、MDCK細胞)においてウイルスセグメントを発現するために使用され得る。
【0076】
上記発現構築物は、代表的には、RNA転写終止配列を含む。上記終止配列は、内因性終止配列もしくは上記宿主細胞に対して内因性ではない終止配列であり得る。適切な終止配列は、当業者に明らかであり、RNAポリメラーゼI転写終止配列、RNAポリメラーゼII転写終止配列、およびリボザイムが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、上記発現構築物は、特に、pol IIプロモーターによって発現が制御される遺伝子の末端においてmRNAについての1種以上のポリアデニル化シグナルを含む。
【0077】
発現システムは、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種、少なくとも11種もしくは少なくとも12種の発現構築物を含み得る。
【0078】
発現構築物は、ベクター(例えば、プラスミドもしくは他のエピソーム構築物)であり得る。このようなベクターは、代表的には、少なくとも1種の細菌および/もしくは真核生物の複製起点を含む。さらに、上記ベクターは、原核生物細胞および/もしくは真核生物細胞における選択を可能にする選択マーカーを含み得る。このような選択マーカーの例は、抗生物質(例えば、アンピシリンもしくはカナマイシン)に対する耐性を付与する遺伝子である。上記ベクターは、DNA配列のクローニングを促進するために。1つ以上のマルチクローニング部位をさらに含み得る。
【0079】
代替として、発現構築物は、線状の発現構築物であり得る。このような線状の発現構築物は、代表的には、任意の増幅および/もしくは選択配列を含まない。しかし、このような増幅および/もしくは選択配列を含む線状構築物はまた、本発明の範囲内である。参考文献10は、線状発現構築物を記載しており、各ウイルスセグメントに対する個々の線状発現構築物を記載する。同じ線状発現構築物上に1種より多く(例えば、2種、3種、4種、5種もしくは6種)のウイルスセグメントを含めることもまた、考えられる。このようなシステムは、例えば、参考文献11において記載されてきた。
【0080】
発現構築物は、当該分野で公知の方法を使用して、生成され得る。このような方法は、例えば、参考文献12において記載される。上記発現構築物が線状発現構築物である場合、単一の制限酵素部位を利用して、上記宿主細胞へ導入する前に、上記発現構築物を線状にすることもまた、考えられる。あるいは、少なくとも2つの制限酵素部位を使用して、上記発現構築物をベクターから切り出すことが考えられる。さらに、線状発現構築物を、核酸増幅技術を使用して(例えば、PCRによって)増殖させることによって、上記線状発現構築物を得ることもまた、考えられる。
【0081】
本発明のシステムにおいて使用される発現構築物は、非細菌性発現構築物であり得る。このことは、上記構築物は、そこでコードされるウイルスRNAセグメントの真核生物細胞における発現を駆動し得るが、細菌における上記構築物の増殖に必要とされる成分を含まないことを意味する。従って、上記構築物は、細菌性の複製起点(ori)を含まず、通常は、細菌性選択マーカー(例えば、抗生物質耐性マーカー)を含まない。このような発現構築物は、参考文献13(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0082】
上記発現構築物は、化学合成によって調製され得る。上記発現構築物は、完全に化学合成によってもしくは部分的に調製され得る。化学合成によって発現構築物を調製するために適した方法は、例えば、参考文献13(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0083】
本発明の発現構築物は、当業者に公知の任意の技術を使用して、宿主細胞へと導入され得る。例えば、本発明の発現構築物は、エレクトロポレーション、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈澱、リポソーム、マイクロインジェクション、もしくは微粒子ボンバードメント(microparticle−bombardment)を使用することによって、宿主細胞へと導入され得る。
【0084】
(細胞)
本発明における使用のための培養宿主は、上記目的のウイルスを生成し得る任意の真核生物細胞であり得る。本発明は、代表的には、細胞株を使用するが、例えば、初代細胞が代替として使用されてもよい。上記細胞は、代表的には、哺乳動物細胞である。適切な哺乳動物細胞としては、ハムスター、ウシ、霊長類(ヒトおよびサルを含む)およびイヌの細胞が挙げられるが、これらに限定されない。種々の細胞タイプが使用され得る(例えば、腎臓細胞、線維芽細胞、網膜細胞、肺細胞など)。適切なハムスター細胞の例は、名称BHK21もしくはHKCCを有する細胞株である。適切なサル細胞は、例えば、アフリカミドリザル細胞(例えば、Vero細胞株のような腎臓細胞[14〜16])である。適切なイヌ細胞は、例えば、CLDK細胞株およびMDCK細胞株におけるような腎臓細胞である。
【0085】
さらに適切な細胞としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:CHO;293T;BHK;MRC 5;PER.C6[17];FRhL2;WI−38;など。適切な細胞は、例えば、American Type Cell Culture (ATCC) コレクション[18]から、Coriell Cell Repositories[19]から、もしくはEuropean Collection of Cell Cultures(ECACC)から、広く入手可能である。例えば、上記ATCCは、カタログ番号CCL 81、CCL 81.2、CRL 1586およびCRL−1587の下で種々の異なるVero細胞を供給し、カタログ番号CCL 34の下でMDCK細胞を供給する。PER.C6は、寄託番号96022940の下でECACCから入手可能である。
【0086】
本発明における使用に好ましい細胞は、Madin Darbyイヌ腎臓に由来するMDCK細胞[20〜22]である。元のMDCK細胞は、CCL 34としてATCCから入手可能である。MDCK細胞の派生物が使用されることは好ましい。このような派生物は、例えば、参考文献20(これは、懸濁培養物における増殖に適合されたMDCK細胞(DSM ACC 2219として寄託された「MDCK 33016」もしくは「33016−PF」;参考文献20もまた参照のこと)を開示する)に記載された。さらに、参考文献23は、無血清培地中での懸濁物で増殖するMDCK由来の細胞(FERM BP−7449として寄託された「B−702」)を開示する。いくつかの実施形態において、上記使用されるMDCK細胞株は、腫瘍形成性であり得る。非腫瘍形成性MDCK細胞を使用することもまた、想定される。例えば、参考文献24は、非腫瘍形成性MDCK細胞(「MDCK−S」(ATCC PTA−6500)、「MDCK−SF101」(ATCC PTA−6501)、「MDCK−SF102」(ATCC PTA−6502)および「MDCK−SF103」(ATCC PTA−6503)が挙げられる)を開示する。参考文献25は、感染に対して高い感受性を有するMDCK細胞(「MDCK.5F1」細胞(ATCC CRL 12042)が挙げられる)を開示する。
【0087】
1種より多くの細胞タイプの混合物を使用して、本発明の方法を実施することが考えられる。しかし、本発明の方法が、単一の細胞タイプで(例えば、モノクローナル細胞で)実施されることは、好ましい。好ましくは、本発明の方法において使用される細胞は、単一の細胞株に由来する。さらに、同じ細胞株は、上記ウイルスをリアソートするために、および上記ウイルスの任意のその後の増殖のために使用され得る。
【0088】
好ましくは、上記細胞は、一般的な汚染源を回避するために、血清の非存在下で培養される。真核生物細胞を培養するための種々の無血清培地が、当業者に公知である(例えば、Iscove’s培地、ultra CHO培地(Bio Whittaker)、EX−CELL(JRH Biosciences))。さらに、無タンパク質培地が使用され得る(例えば、PF−CHO(JRH Biosciences))。さもなければ、複製用の細胞もまた、慣例的な血清含有培地(例えば、0.5%〜10%のウシ胎仔血清を含むMEMもしくはDMEM培地)中で培養され得る。
【0089】
上記細胞は、接着性培養物もしくは懸濁物中にあり得る。
【0090】
(従来の再集合)
伝統的には、インフルエンザウイルスは、培養宿主(通常は、卵)にドナー株およびワクチン株を共感染させることによって、再集合される。リアソータントウイルスは、上記ワクチン株のHAおよび/もしくはNAタンパク質を含むリアソータントウイルスを選択するために、上記ドナー株のHAおよび/もしくはNAタンパク質に対する特異性を有する抗体を添加することによって、選択される。この処理を数継代経ると、上記ワクチン株のHAおよび/もしくはNAセグメントを含む、迅速に増殖するリアソータントウイルスを選択し得る。
【0091】
本発明は、これら方法における使用に適している。上記ドナー株と比較して、異なるHAおよび/もしくはNAサブタイプを有するワクチン株を使用することは、より容易であり得る。なぜなら、これは、リアソータントウイルスに対する選択を促進するからである。しかし、上記ドナー株と同じHAおよび/もしくはNAサブタイプを有するワクチン株を使用することも考えられ、本発明のいくつかの局面においては、このことは好ましい。この場合、上記ドナー株のHAおよび/もしくはNAタンパク質に対して優先的な特異性を有する抗体が利用可能なはずである。
【0092】
(ウイルス調製)
一実施形態において、本発明は、インフルエンザウイルスを生成するための方法を提供し、上記方法は、(a)培養宿主を、本発明のリアソータントウイルスに感染させる工程;(b)工程(a)からの宿主を培養して、上記ウイルスを生成する工程;および必要に応じて、(c)上記工程(b)において得られたウイルスを精製する工程を包含する。
【0093】
上記培養宿主は、細胞もしくは孵化鶏卵であり得る。本発明のこの局面において、細胞が培養宿主として使用される場合、細胞培養条件(例えば、温度、細胞密度、pH値など)が、使用される上記細胞株および上記ウイルスに応じて広い範囲にわたって変動し、適用要件に適合させられ得ることは、公知である。従って、以下の情報は、ガイドラインを表すに過ぎない。
【0094】
上記で言及されるように、細胞は、好ましくは、無血清培地もしくは無タンパク質培地中で培養される。
【0095】
上記細胞の増殖(multiplication)は、当業者に公知の方法に従って行われ得る。例えば、上記細胞は、遠心分離もしくは濾過のような通常の支援方法を使用して、灌流システムにおいて培養され得る。さらに、上記細胞は、感染の前に流加培養システムにおいて、本発明に従って増殖させられ得る。本発明の状況において、培養システムは、上記細胞が最初にバッチシステムにおいて培養され、上記培地中の栄養素(もしくは上記栄養そのうちの一部)の枯渇が、濃縮された栄養素の制御された供給によって補償される流加培養システムに言及する。感染の前の細胞の増殖の間に、上記培地のpH値をpH6.6〜pH7.8の間の値に、特に、pH7.2〜pH7.3の間の値に調節することは、有利であり得る。細胞の培養は、好ましくは、30〜40℃の間の温度で起こる。上記感染した細胞を培養する場合(工程ii)、上記細胞は、好ましくは、30℃〜36℃の間、もしくは32℃〜34℃の間の温度、もしくは33℃において、培養される。このことは、この温度範囲における感染細胞のインキュベーションが、ワクチンへと処方される場合に、改善した効力を生じるウイルスの生成を生じることが示されたので、特に好ましい[26]。
【0096】
酸素分圧は、感染前に培養する間に、好ましくは、25%〜95%の間の値に、特に、35%〜60%の間の値に調節される。本発明の状況において述べられる上記酸素分圧の値は、空気の飽和に基づく。細胞の感染は、上記バッチシステムにおいて好ましくは、約8〜25×10細胞/mL、もしくは上記灌流システムにおいて好ましくは、約5〜20×10細胞/mLの細胞密度において起こる。上記細胞は、10−8〜10の間、好ましくは、0.0001〜0.5の間のウイルス用量(MOI値,「感染多重度」;感染時の1細胞あたりのウイルス単位数に対応する)で感染させられ得る。
【0097】
ウイルスは、接着性培養物もしくは懸濁物において、細胞で増殖させられ得る。マイクロキャリア培養が、使用され得る。いくつかの実施形態において、上記細胞は、従って、懸濁物中での増殖に適合させられ得る。
【0098】
本発明に従う方法はまた、ウイルスもしくはそれらによって生成されるタンパク質の採取および単離を包含する。ウイルスもしくはタンパク質の単離の間に、上記細胞は、分離、濾過、もしくは限外濾過のような標準的方法によって、上記培養培地から分離される。次いで、上記ウイルスもしくは上記タンパク質は、勾配遠心分離、濾過、沈澱、クロマトグラフィーなどのような当業者に十分公知の方法に従って濃縮され、次いで、精製される。上記ウイルスが、精製の間もしくは精製後に不活性化されることもまた、本発明によれば好ましい。ウイルス不活性化は、上記精製プロセス内の任意の時点で、例えば、β−プロピオラクトンもしくはホルムアルデヒドによって起こり得る。
【0099】
上記培養宿主は、卵であり得る。ワクチン用のインフルエンザウイルス増殖のための現在標準的な方法は、孵化SPF鶏卵を使用し、ウイルスは、上記卵の内容物(尿膜腔液)から精製される。卵を介してウイルスを継代し、その後、細胞培養物中で上記ウイルスを増殖させることもまた可能であり、逆もまた然りである。
【0100】
(ワクチン)
本発明は、上記方法に従って生成されるウイルスを利用して、ワクチンを生成する。
【0101】
ワクチン(特に、インフルエンザウイルスのための)は、一般に、生のウイルスもしくは不活性化ウイルスのいずれかに基づく。不活性化ワクチンは、完全ビリオン、「スプリット」ビリオン、もしくは精製表面抗原に基づき得る。抗原はまた、ビロソームの形態で提示され得る。本発明は、これらタイプのワクチンのうちのいずれかを製造するために使用され得る。
【0102】
不活性化ウイルスが使用される場合、上記ワクチンは、完全ビリオン、スプリットビリオン、もしくは精製表面抗原(インフルエンザについては、ヘマグルチニンを含み、通常はまた、ノイラミニダーゼを含む)を含み得る。ウイルスを不活性化するための化学的手段としては、以下の薬剤のうちの1つ以上の有効量での処理が挙げられる:洗剤、ホルムアルデヒド、β−プロピオラクトン、メチレンブルー、ソラレン、カルボキシフラーレン(C60)、バイナリーエチルアミン、アセチルエチレンイミン、もしくはこれらの組み合わせ。ウイルス不活性化の非化学的方法は、当該分野で公知である(例えば、UV光もしくはγ線照射)。
【0103】
ビリオンは、ウイルス含有流体(例えば、尿膜腔液もしくは細胞培養上清)から、種々の方法によって採取され得る。例えば、精製プロセスは、上記ビリオンを破壊するために洗剤を含む線形スクロース勾配溶液を使用するゾーン遠心分離を含み得る。次いで、抗原は、ダイアフィルトレーションによって、必要に応じた希釈の後に精製され得る。
【0104】
スプリットビリオンは、精製されたビリオンを洗剤(例えば、エチルエーテル、ポリソルベート 80、デオキシコレート、トリ−N−ブチルホスフェート、Triton X−100、Triton N101、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、Tergitol NP9など)で処理して、サブビリオン調製物を生成する(「Tween−エーテル」スプリットプロセスを含む)ことによって得られる。インフルエンザウイルスをスプリットするための方法は、例えば、当該分野で周知である(例えば、参考文献27〜32などを参照のこと)。上記ウイルスのスプリットは、代表的には、感染性であろうと非感染性であろうと、破壊濃度のスプリット薬剤(splitting agent)で完全ウイルスを破壊するかもしくはフラグメント化することによって行われる。上記破壊は、上記ウイルスタンパク質の完全なもしくは部分的な可溶化を生じ、上記ウイルスの完全性を変化させる。好ましいスプリット薬剤は、非イオン性界面活性剤およびイオン性(例えば、カチオン性)界面活性剤(例えば、アルキルグリコシド、アルキルチオグリコシド、アシル糖、スルホベタイン、ベタイン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、N,N−ジアルキル−グルカミド、Hecameg、アルキルフェノキシ−ポリエトキシエタノール、NP9、4級アンモニウム化合物、サルコシル、CTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)、トリ−N−ブチルホスフェート、Cetavlon、ミリスチルトリメチルアンモニウム塩、リポフェクチン、リポフェクタミン、およびDOT−MA)、オクチル−もしくはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton界面活性剤(例えば、Triton X−100もしくはTriton N101))、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(Tween界面活性剤)、ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンエステル(polyoxyethlene ester)などである。1つの有用なスプリット手順は、デオキシコール酸ナトリウムおよびホルムアルデヒドの連続的効果を使用し、スプリットは、最初のビリオン精製の間に起こり得る(例えば、スクロース密度勾配溶液において)。よって、スプリットプロセスは、上記ビリオン含有材料の清澄化(非ビリオン材料を除去するために)、上記採取したビリオンの濃縮(例えば、吸着法(例えば、CaHPO吸着)を使用して)、非ビリオン材料からの完全ビリオンの分離、密度勾配遠心分離工程においてスプリット薬剤を使用する(例えば、デオキシコール酸ナトリウムのようなスプリット薬剤を含むスクロース勾配を使用する)ビリオンのスプリット、次いで、望ましくない物質を除去するための濾過(例えば、限外濾過)を含み得る。スプリットビリオンは、有用には、リン酸ナトリウム緩衝化等張性塩化ナトリウム溶液中で再懸濁され得る。スプリットインフルエンザワクチンの例は、BEGRIVACTM、FLUARIXTM、FLUZONETMおよびFLUSHIELDTM製品である。
【0105】
精製されたインフルエンザウイルス表面抗原ワクチンは、表面抗原であるヘマグルチニン、および代表的には、同様にノイラミニダーゼを含む。精製形態でこれらタンパク質を調製するためのプロセスは、当該分野で周知である。上記FLUVIRINTM、AGRIPPALTMおよびINFLUVACTM製品は、インフルエンザサブユニットワクチンである。
【0106】
別の形態の不活性化抗原は、ビロソーム[33](核酸を含まないウイルス様リポソーム粒子)である。ビロソームは、洗剤でのウイルスの可溶化、続いて、ヌクレオキャプシドの除去およびウイルス糖タンパク質を含む膜の再構成によって、調製され得る。ビロソームを調製するための代替法は、ウイルス膜糖タンパク質を過剰量のリン脂質に添加して、膜中にウイルスタンパク質を含むリポソームを生じることを含む。
【0107】
本発明の方法はまた、生ワクチンを生成するために使用され得る。このようなワクチンは、通常、ビリオン含有流体からビリオンを精製することによって調製される。例えば、この流体は、遠心分離によって清澄にされ得、緩衝液(例えば、スクロース、リン酸カリウム、およびグルタミン酸一ナトリウムを含む)で安定化され得る。インフルエンザウイルスワクチンの種々の形態が、現在利用可能である(例えば、参考文献34の第17章および18章を参照のこと)。生ウイルスワクチンとしては、MedImmuneのFLUMISTTM製品(三価生ウイルスワクチン)が挙げられる。
【0108】
上記ウイルスは、弱毒化され得る。上記ウイルスは、温度感受性であり得る。上記ウイルスは、低温適合(cold−adapted)され得る。これら3つの特徴は、生のウイルスを抗原として使用する場合に特に有用である。
【0109】
HAは、現在の不活性化インフルエンザワクチンにおける主要な免疫原であり、ワクチン用量は、HAレベルを参照することによって標準化されている(代表的には、SRIDによって測定される)。既存のワクチンは、代表的には、1株あたり約15μgのHAを含むが、より低用量が、使用され得る(例えば、小児に関して、もしくは汎流行的状況において、またはアジュバントを使用する場合)。分割用量(例えば、1/2(すなわち、7.5μg HA/株)、1/4および1/8)が使用されてきたことと同様に、より高い用量も使用されてきた(例えば、3×もしくは9×用量[35、36])。従って、ワクチンは、0.1〜150μgの間のHA/インフルエンザ株、好ましくは、0.1〜50μgの間(例えば、0.1〜20μg、0.1〜15μg、0.1〜10μg、0.1〜7.5μg、0.5〜5μgなど)を含み得る。特定の用量としては、1株あたり、例えば、約45、約30、約15、約10、約7.5、約5、約3.8、約3.75、約1.9、約1.5などが挙げられる。
【0110】
生ワクチンに関して、投与は、HA含有量よりむしろ、50%組織培養感染量(median tissue culture infectious dose)(TCID50)によって測定され、1株あたり10〜10の間の(好ましくは、106.5〜107.5の間の)TCID50が、代表的である。
【0111】
本発明とともに使用されるインフルエンザ株は、野生型ウイルスにおいて見いだされるような天然のHA、もしくは改変されたHAを有し得る。例えば、HAを改変して、トリ種においてウイルスの病原性を高くする決定因子(例えば、上記HA1/HA2切断部位の周りの超塩基性領域)を除去することは、公知である。逆遺伝学の使用は、このような改変を促進する。
【0112】
汎流行間期の株に対して免疫化するために適していると同時に、本発明の組成物は、汎流行性もしくは潜在的に汎流行性の株に対して免疫化するために特に有用である。本発明は、ヒトおよび非ヒト動物にワクチン接種するために適している。
【0113】
その抗原が、有用にも上記組成物中に含まれ得る他の株は、抗ウイルス治療に抵抗性(例えば、オセルタミビル[37]および/もしくはザナミビルに対して抵抗性)である株(抵抗性汎流行性株[38]が挙げられる)である。
【0114】
本発明の組成物は、1種以上の(例えば、1種、2種、3種、4種もしくはこれ以上)インフルエンザウイルス株(インフルエンザA型ウイルスおよび/もしくはインフルエンザB型ウイルスが挙げられる)に由来する抗原を含み得るが、ただし、少なくとも1種のインフルエンザ株は、本発明のリアソータントインフルエンザ株である。上記抗原のうちの少なくとも2種、少なくとも3種もしくは全てが、本発明のリアソータントインフルエンザ株に由来する組成物もまた、想定される。ワクチンが、インフルエンザの1種より多くの株を含む場合、上記異なる株は、代表的には、別個に増殖され、上記ウイルスが採取され、抗原が調製された後に混合される。従って、本発明のプロセスは、1種より多くのインフルエンザ株に由来する抗原を混合する工程を包含し得る。三価ワクチンは代表的である(2種のインフルエンザA型ウイルス株および1種のインフルエンザB型ウイルス株に由来する抗原を含む)。四価ワクチンもまた、有用である[39](2種のインフルエンザA型ウイルス株および2種のインフルエンザB型ウイルス株、または3種のインフルエンザA型ウイルス株および1種のインフルエンザB型ウイルス株に由来する抗原を含む)。
【0115】
(薬学的組成物)
本発明に従って製造されるワクチン組成物は、薬学的に受容可能である。それらは、通常、上記抗原に加えて、成分を含む。例えば、それらは、代表的には、1種以上の薬学的キャリアおよび/もしくは賦形剤を含む。以下に記載されるように、アジュバントもまた含まれ得る。このような成分の詳細な議論は、参考文献40で入手される。
【0116】
ワクチン組成物は、一般に、水性形態にある。しかし、いくつかのワクチンは、乾燥形態、例えば、注射可能な固体、またはパッチ上の、乾燥したかもしくは重合した調製物の形態にあり得る。
【0117】
ワクチン組成物は、チオメルサールもしくは2−フェノキシエタノールのような保存剤を含み得る。しかし、上記ワクチンは、実質的に水銀物質を実質的に含まないべきである(すなわち、5μg/ml未満)ことが好ましい(例えば、チオメルサールを含まない[31、41])。水銀を含まないワクチンは、より好ましい。α−トコフェロールスクシネートは、水銀化合物の代替として含まれ得る[31]。保存剤非含有ワクチンは、特に好ましい。
【0118】
張度を制御するために、生理学的塩(例えば、ナトリウム塩)を含み得ることが好ましい。塩化ナトリウム(NaCl)が好ましく、塩化ナトリウムは、1〜20mg/mlの間で存在し得る。存在し得る他の塩としては、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム、無水リン酸二ナトリウム(disodium phosphate dehydrate)、塩化マグネシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。
【0119】
ワクチン組成物は、一般に、200mOsm/kg〜400mOsm/kgの間(好ましくは、240〜360mOsm/kgの間)の重量オスモル濃度を有し、より好ましくは、290〜310mOsm/kgの範囲内に入る。ワクチン接種によって引き起こされる疼痛に対して影響を有さない重量オスモル濃度が以前に報告されている[42]が、この範囲において重量オスモル濃度を維持することは好ましい。
【0120】
ワクチン組成物は、1種以上の緩衝剤を含み得る。代表的な緩衝剤としては、以下が挙げられる:リン酸塩緩衝剤;Tris緩衝剤;ホウ酸塩緩衝剤;コハク酸塩緩衝剤;ヒスチジン緩衝剤(特に、水酸化アルミニウムアジュバントで);またはクエン酸塩緩衝剤。緩衝剤は、代表的には、5〜20mMの範囲で含まれる。
【0121】
ワクチン組成物のpHは、一般に、5.0〜8.1の間、より代表的には、6.0〜8.0の間(例えば、6.5〜7.5の間、または7.0〜7.8の間)である。本発明のプロセスは、従って、バルクワクチンのpHを、パッケージ前に調節する工程を包含し得る。
【0122】
上記ワクチン組成物は、好ましくは、無菌である。上記ワクチン組成物は、好ましくは、非発熱性である(例えば、1用量あたり<1 EU(エンドトキシン単位、標準尺度)、好ましくは、<0.1 EU/用量を含む)。上記ワクチン組成物は、好ましくは、グルテン非含有である。
【0123】
本発明のワクチン組成物は、洗剤(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(「Tween」として公知)、オクトキシノール(例えば、オクトキシノール−9(Triton X−100)もしくはt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(「CTAB」)、またはデオキシコール酸ナトリウム(特に、スプリットワクチンもしくは表面抗原ワクチンのために))を含み得る。上記洗剤は、ほんの微量で存在し得る。従って、上記ワクチンは、オクトキシノール−10およびポリソルベート80の各々について1mg/ml未満で含み得る。他の残りの微量の成分は、抗生物質(例えば、ネオマイシン、カナマイシン、ポリミキシンB)であり得る。
【0124】
ワクチン組成物は、1回の免疫化のための物質を含んでいてもよいし、複数回の免疫化のための物質を含んでいてもよい(すなわち、「複数用量(multidose)」キット)。保存剤を含めることは、複数用量の構成において好ましい。複数用量組成物中に保存剤を含める代替として(もしくはそれに加えて)、上記組成物は、物質の取り出しのための無菌アダプタを有する容器中に含まれ得る。
【0125】
インフルエンザワクチンは、代表的には、約0.5mlの投与容積で投与されるが、半用量(すなわち、約0.25ml)が、小児に投与され得る。
【0126】
組成物およびキットは、好ましくは、2℃〜8℃の間で貯蔵される。それらは、凍結されるべきではない。それらは、理想的には、遮光して保持されるべきである。
【0127】
(宿主細胞DNA)
ウイルスが単離され、そして/または細胞株上で増殖させられた場合、最終ワクチン中に残っている細胞株DNAのいかなる潜在的な腫瘍形成活性をも最小限にするために、上記DNAの量を最小限にすることは、標準的な実務である。
【0128】
従って、本発明に従って調製されるワクチン組成物は、好ましくは、1用量あたり10ng(好ましくは、1ng未満、より好ましくは、100pg未満)の残留宿主細胞DNAを含むが、微量の宿主細胞DNAが存在し得る。
【0129】
任意の残留宿主細胞DNAの平均長が500bp未満(例えば、400bp未満、300bp未満、200bp未満、100bp未満など)であることは、好ましい。
【0130】
混入したDNAは、標準的精製手順(例えば、クロマトグラフィーなど)を使用するワクチン調製の間に除去され得る。残留宿主細胞DNAの除去は、ヌクレアーゼ処理によって(例えば、DNaseを使用することによって)増強され得る。宿主細胞DNAの混入を減らすための便利な方法は、2工程処理(第1は、DNase(例えば、Benzonase)(これは、ウイルス増殖の間に使用され得る)を、次いで、カチオン性洗剤(例えば、CTAB)(これは、ビリオン破壊の間に使用され得る)を使用する)を含む参考文献43および44において開示される。アルキル化剤(例えば、β−プロピオラクトン)での処理はまた、宿主細胞DNAを除去するために使用され得、有利なことには、ビリオンを不活性化するためにも使用され得る[45]。
【0131】
(アジュバント)
本発明の組成物は、有利には、アジュバントを含み得る。これは、上記組成物を受ける被験体において誘発される免疫応答(液性および/もしくは細胞性)を高めるように機能し得る。好ましいアジュバントは、水中油型エマルジョンを含む。種々のこのようなアジュバントは公知であり、それらは、代表的には、少なくとも1種の油および少なくとも1種の界面活性剤を含み、上記油および界面活性剤は、生分解性(代謝可能)かつ生体適合性である。上記エマルジョン中の油滴は、一般に、直径5μm未満であり、理想的には、サブミクロンの直径を有し、これら小さなサイズは、マイクロフルイダイザー(microfluidiser)で達成されて、安定なエマルジョンを提供する。220nm未満のサイズを有する液滴は、濾過滅菌に供され得るので、好ましい。
【0132】
前記エマルジョンは、動物(例えば魚類)供給源または植物供給源からのものなどの油を含むことができる。植物油の供給源としては、堅果、種子および穀類が挙げられる。ラッカセイ油、ダイズ油、ヤシ油およびオリーブ油が、最も一般的に利用できる堅果油の例である。例えばホホバ豆から得られる、ホホバ油を使用することができる。種子油としては、紅花油、綿実油、ヒマワリ種子油、ゴマ種子油およびこれらに類するものが挙げられる。穀類の群の中で、トウモロコシ油が最も容易に入手できるが、他の穀物粒(cereal grain)、例えばコムギ、オートムギ、ライムギ、イネ、テフ、ライコムギおよびこれらに類するものの油も使用することができる。グリセロールおよび1,2−プロパンジオールの6〜10炭素脂肪酸エステルは、種子油中に天然に存在しないが、堅果油および種子油から出発して適切な材料の加水分解、分離およびエステル化によって調製することができる。哺乳動物の乳からの脂肪および油は代謝性であり、従って、本発明の実施の際に使用することができる。動物供給源から純粋な油を得るために必要な分離、精製、鹸化および他の手段についての手順は、当該技術分野において周知である。殆どの魚類は、容易に回収できる代謝性の油を含有する。例えば、タラ肝油、サメ肝油、および鯨油、例えば鯨ろうが、ここで使用することができる魚油のいくつかの例である。多数の分岐鎖油が5炭素イソプレン単位で生化学的に合成されており、一般にテルペノイドと呼ばれる。サメ肝油は、スクアレン、2,6,10,15,19,23−ヘキサメチル−2,6,10,14,18,22−テトラコサヘキサン、として公知の、分岐した不飽和テルペノイドを含有し、これは、ここで特に好ましい。スクワラン、スクアレンの飽和類似体、も好ましい油である。スクアレンおよびスクワランを含む、魚油は、商業的供給源から容易に入手することができ、または当該技術分野において公知の方法によって得ることができる。別の好ましい油は、α―トコフェロール(下記参照)である。油の混合物を使用することができる。
【0133】
界面活性剤をそれらの「HLB」(親水親油バランス)によって分類することができる。本発明の好ましい界面活性剤は、少なくとも10、好ましくは少なくとも15、およびさらに好ましくは少なくとも16のHLBを有する。本発明は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(一般にTweenと呼ばれる)、特にポリソルベート20およびポリソルベート80;商品名DOWFAXTMで販売されている、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)および/またはブチレンオキシド(BO)のコポリマー、例えば、線状EO/POブロックコポリマー;反復するエトキシ(オキシ−1,2−エタンジイル)基の数が様々であり得るオクトキシノール、オクトキシノール−9(Triton X−100、すなわちt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール)が特に興味深い;(オクチルフェノキシ)ポリエトキシエタノール(IGEPAL CA−630/NP−40);リン脂質、例えばホスファチジルコリン(レシチン);ノニルフェノールエトキシレート、例えばTergitolTMNPシリーズ;ラウリル、セチル、ステアリルおよびオレイルアルコールから誘導されたポリオキシエチレン脂肪エーテル(Brij界面活性剤として公知)、例えばトリエチレングリコールモノラウリルエーテル(Brij 30);ならびにソルビタンエステル(一般にSPANとして公知)、例えばソルビタントリオレエート(Span 85)およびソルビタンモノラウレートを含む(しかしこれらに限定されない)界面活性剤と共に用いることができる。非イオン性界面活性剤が好ましい。前記エマルジョンに含めるために好ましい界面活性剤は、Tween 80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、Span 85(ソルビタントリオレエート)、レシチンおよびTriton X−100である。
【0134】
界面活性剤の混合物、例えばTween 80/Span 85混合物、を使用することができる。ポリオキシエチレンソルビタンエステル、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(Tween 80)、およびオクトキシノール、例えばt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton X−100)、の組み合わせも適する。別の有用な組み合わせは、ラウレス9とポリオキシエチレンソルビタンエステルおよび/またはオクトキシノールを含む。
【0135】
界面活性剤の好ましい量(重量%)は、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えば、Tween 80)0.01%から1%、特に約0.1%;オクチル−またはノニルフェノキシポリオキシエタノール(例えば、Triton X−100、またはTritonシリーズの他の洗剤)0.001%から0.1%、特に0.005%から0.02%;ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ラウレス9)0.1%から20%、好ましくは0.1%から10%および特に0.1%から1%または約0.5%である。
【0136】
上記ワクチンがスプリットウイルスを含む場合、上記ワクチンは、水相中に遊離界面活性剤を含むことが好ましい。これは、上記遊離界面活性剤が、上記抗原に対して「スプリット効果」を発揮し得、それによって、他に存在し得る任意の非スプリットビリオンおよび/もしくはビリオン凝集物を破壊するので、有利である。これは、スプリットウイルスワクチンの安全性を改善し得る[46]。
【0137】
好ましいエマルジョンは、<1μmの平均液滴サイズ(例えば、≦750nm、≦500nm、≦400nm、≦300nm、≦250nm、≦220nm、≦200nm、もしくはこれより小さい)を有し得る。これら液滴サイズは、便利なことには、微小流動化(microfluidisation)のような技術によって達成され得る。
【0138】
本発明で有用な特定の水中油型エマルジョンアジュバントとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
・スクアレン、Tween 80、およびSpan85のサブミクロンエマルジョン。上記エマルジョンの容積での組成は、約5% スクアレン、約0.5% ポリソルベート80および約0.5% Span 85であり得る。重量では、これらの比は、4.3% スクアレン、0.5% ポリソルベート80および0.48% Span 85になる。このアジュバントは、引用文献50の第10章および引用文献51の第12章により詳細に記載されるように、「MF59」として公知である[47〜49]。上記MF59エマルジョンは、有利なことには、クエン酸イオン(例えば、10mM クエン酸ナトリウム緩衝液)を含む。
【0140】
・スクアレン、トコフェロール、およびポリソルベート80を含むエマルジョン。このエマルジョンは、リン酸緩衝化生理食塩水を含み得る。これらエマルジョンは、容積で、2〜10% スクアレン、2〜10% トコフェロールおよび0.3〜3% ポリソルベート80を有し得、スクアレン:トコフェロールの重量比は、これがより安定なエマルジョンを提供し得るように、好ましくは、<1(例えば、0.90)である。スクアレンおよびポリソルベート80は、約5:2の容積比もしくは約11:5の重量比において存在し得る。従って、上記3種の成分(スクアレン、トコフェロール、ポリソルベート80)は、1068:1186:485、もしくは約55:61:25のの重量比において存在し得る。1種のこのようなエマルジョン(「AS03」)は、Tween 80をPBS中に溶解して、2%溶液を与え、次いで、この溶液の90mlと、(5gのDL α トコフェロールおよび5ml スクアレン)の混合物とを混合し、次いで、この混合物を微小流動化することによって、作製され得る。得られたエマルジョンは、例えば、100〜250nmの間、好ましくは、約180nmの平均直径を有するサブミクロン油滴を有し得る。上記エマルジョンはまた、3−de−O−アシル化ものホスホリルリピドA(3d MPL)を含み得る。このタイプの別の有用なエマルジョンは、例えば、上記で考察した比において、ヒト用量あたり、0.5〜10mg スクアレン、0.5〜11mg トコフェロール、および0.1〜4mg ポリソルベート80を含み得る[52]。
【0141】
・スクアレン、トコフェロール、およびTriton洗剤(例えば、Triton X−100)のエマルジョン。上記エマルジョンはまた、3d−MPL(下記を参照のこと)を含み得る。上記エマルジョンは、リン酸緩衝液を含み得る。
【0142】
・ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、Triton洗剤(例えば、Triton X−100)およびトコフェロール(例えば、α−トコフェロールスクシネート)を含むエマルジョン。上記エマルジョンは、約75:11:10(例えば、750μg/ml ポリソルベート80、110μg/ml Triton X−100および100μg/ml α−トコフェロールスクシネート)の質量比でこれら3種の成分を含み得、これら濃度は、抗原由来のこれら成分の何らかの寄与を含むはずである。上記エマルジョンはまた、スクアレンを含み得る。上記エマルジョンはまた、3d−MPL(下記を参照のこと)を含み得る。その水相は、リン酸緩衝液を含み得る。
【0143】
・スクアラン、ポリソルベート80およびポロキサマー401(「PluronicTM L121」)のエマルジョン。上記エマルジョンは、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)中に処方され得る。このエマルジョンは、ムラミルジペプチドの有用な送達ビヒクルであり、「SAF−1」アジュバント中でトレオニル−MDPとともに使用されてきた[53](0.05〜1% Thr−MDP、5% スクアラン、2.5% Pluronic L121および0.2% ポリソルベート80)。このエマルジョンはまた、「AF」アジュバントでのように[54](5% スクアラン、1.25% Pluronic L121および0.2% ポリソルベート80)、上記Thr−MDPなしでも使用され得る。微小流動化が好ましい。
【0144】
・スクアレン、水性溶媒、ポリオキシエチレンアルキルエーテル親水性非イオン性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(12)セトステアリルエーテル)および疎水性非イオン性界面活性剤(例えば、ソルビタンエステルもしくはマンニドエステル(mannide ester)(例えば、ソルビタンモノオレエート(monoleate)もしくは「Span 80」))を含むエマルジョン。上記エマルジョンは、好ましくは、熱可逆性であり、そして/または上記油滴のうちの少なくとも90%(容積で)が、200nm未満のサイズを有する[55]。上記エマルジョンはまた、アルジトール;凍結保護剤(cryoprotective agent)(例えば、糖(例えば、ドデシルマルトシドおよび/もしくはスクロース));および/またはアルキルポリグリコシドのうちの1種以上を含み得る。上記エマルジョンは、TLR4アゴニストを含み得る[56]。このようなエマルジョンは、凍結乾燥され得る。
【0145】
・スクアレン、ポロキサマー105およびAbil−Careのエマルジョン[57]。アジュバント添加(adjuvanted)ワクチン中のこれら成分の最終濃度(重量)は、5% スクアレン、4% ポロキサマー105(プルロニックポリオール)および2% Abil−Care 85(ビス−PEG/PPG−16/16 PEG/PPG−16/16ジメチコン;カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(caprylic/capric triglyceride))である。
【0146】
・0.5〜50%の油、0.1〜10%のリン脂質、および0.05〜5%の非イオン性界面活性剤を有するエマルジョン。参考文献58に記載されるように、好ましいリン脂質成分は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンおよびカルジオリピンである。サブミクロン液滴サイズが有利である。
【0147】
・非代謝性の油(例えば、軽油(light mineral oil))および少なくとも1種の界面活性剤(例えば、レシチン、Tween 80もしくはSpan 80)のサブミクロン水中油型エマルジョン。添加剤が含まれ得る(例えば、QuilAサポニン、コレステロール、サポニン−親油性結合体(例えば、参考文献59に記載され、グルクロン酸のカルボキシル基を介して、脂肪族アミンを、デスアシルサポニン(desacylsaponin)に添加することにより生成されるGPI−0100)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(dimethyidioctadecylammonium bromide)および/もしくはN,N−ジオクタデシル−N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパンジアミン)。
【0148】
・サポニン(例えば、QuilAもしくはQS21)およびステロール(例えば、コレステロール)が螺旋状ミセルとして会合されるエマルジョン[60]。
【0149】
・鉱油、非イオン性親油性エトキシ化脂肪アルコール、および非イオン性親水性界面活性剤(例えば、エトキシ化脂肪アルコールおよび/もしくはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[61]。
【0150】
・鉱油、非イオン性親水性エトキシ化脂肪アルコール、および非イオン性親油性界面活性剤(例えば、エトキシ化脂肪アルコールおよび/もしくはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー)を含むエマルジョン[61]。
【0151】
いくつかの実施形態において、エマルジョンは、送達時に抗原と即座に混合され得、従って、上記アジュバントおよび抗原は、パッケージされたもしくは配布されたワクチン(使用時に最終的な処方物の準備ができている)では別個に保持され得る。他の実施形態において、エマルジョンは、製造の間に抗原と混合され、従って、上記組成物は、液体アジュバント添加形態でパッケージされる。上記抗原は、一般に、水性形態にあり、その結果、上記ワクチンは、2種の液体を混合することによって最終的に調製される。混合するための上記2種の液体の容積比は、変動し得る(例えば、5:1〜1:5の間)が、一般に、約1:1である。成分濃度が、上記の特定のエマルジョンの説明において与えられる場合、これら濃度は、代表的には、非希釈組成物に関するものであり、したがって抗原溶液と混合した後の濃度は低下する。
【0152】
(ワクチン組成物のパッケージング)
本発明の組成物(もしくはキット成分)に適した容器としては、バイアル、シリンジ(例えば、使い捨てシリンジ)、鼻スプレー(nasal spray)などが挙げられる。これら容器は、滅菌であるべきである。
【0153】
組成物/成分がバイアル中に配置される場合、上記バイアルは、好ましくは、ガラス材料もしくはプラスチック材料から作製され得る。上記バイアルは、好ましくは、上記組成物が上記バイアルに添加される前に、滅菌される。ラテックス感受性患者に伴う問題を回避するために、バイアルは、好ましくは、ラテックス非含有ストッパーでシールされ、全てのパッケージング材料中にラテックスが存在しないことが好ましい。上記バイアルは、ワクチンの単一用量を含んでいてもよいし、1用量より多い用量(「複数用量」バイアル)、例えば、10用量を含んでいてもよい。好ましいバイアルは、無色ガラスから作製される。
【0154】
バイアルは、あらかじめ充填されたシリンジがキャップに挿入され得るように適合されたキャップ(例えば、ルアーロック)を有し得、上記シリンジの内容物は、上記バイアルへと排出され得(例えば、その中の凍結乾燥された材料を再構成するために)、上記バイアルの内容物は、取り出されて上記シリンジへと戻され得る。上記バイアルから上記シリンジを取り出した後、次いで、ニードルが取り付けられ得、上記組成物が、患者へと投与され得る。上記キャップは、好ましくは、シールもしくはカバーの内部に配置され得る。その結果、上記シールもしくはカバーは、上記キャップに到達し得る前に除去されなければならない。バイアルは、特に、複数用量バイアルについては、その内容物の無菌的取り出しを可能にするキャップを有し得る。
【0155】
成分がシリンジにパッケージされる場合、上記シリンジは、これに取り付けられるニードルを有し得る。ニードルが取り付けられていない場合、別個のニードルが、組み立ておよび使用のために、上記シリンジと共に供給され得る。このようなニードルは、鞘に入れられ得る。安全ニードル(safety needle)が好ましい。1インチ 23ゲージ、1インチ 25ゲージおよび5/8インチ 25ゲージのニードルが代表的である。シリンジは、記録保持を容易にするために、ロット番号、インフルエンザ流行期、および内容物の使用期限がプリントされ得る剥離式ラベルとともに提供され得る。上記シリンジにおけるプランジャーは、好ましくは、上記プランジャーが吸引の間に偶発的に除去されてしまわないように、ストッパーを有し得る。上記シリンジは、ラテックスゴムキャップおよび/もしくはプランジャーを有し得る。使い捨てシリンジは、単一用量のワクチンを含む。上記シリンジは、一般に、ニードルの取り付け前に、先端をシールするために先端キャップを有し、上記先端キャップは、好ましくは、ブチルゴムから作製され得る。上記シリンジおよびニードルが別個にパッケージされる場合、上記ニードルは、好ましくは、ブチルゴムシールドに合され得る。好ましいシリンジは、商品名「Tip−Lok」TMの下で市販されるものである。
【0156】
容器は、例えば、小児への送達を容易にするために、半用量容積を示すために印が付けられ得る。例えば、0.5ml用量を含むシリンジは、0.25ml容積を示す印を有し得る。
【0157】
ガラス容器(例えば、シリンジもしくはバイアル)が使用される場合、ソーダ石灰ガラスよりむしろホウケイ酸ガラスから作製された容器を使用することが好ましい。
【0158】
キットもしくは組成物は、(例えば、同じボックスの中に)上記ワクチンの詳細(例えば、投与の説明書、上記ワクチン内の抗原の詳細など)を含むリーフレットとともにパッケージされ得る。上記説明書はまた、警告(例えば、ワクチン接種後のアナフィラキシー反応の場合に容易に利用可能なアドレナリン溶液を保持することなど)を含み得る。
【0159】
(処置方法、および上記ワクチンの投与)
本発明は、本発明に従って製造されるワクチンを提供する。これらワクチン組成物は、ヒト被験体もしくはヒト以外の動物被験体(例えば、ブタまたはトリ)への投与に適しており、本発明は、被験体に本発明の組成物を投与する工程を包含する、この被験体における免疫応答を惹起するための方法を提供する。本発明はまた、医薬として使用するための本発明の組成物を提供し、被験体における免疫応答を惹起するための医薬の製造のための、本発明の組成物の使用を提供する。
【0160】
これら方法および使用によって惹起される免疫応答は、一般に、抗体応答(好ましくは、防御的抗体応答)を含む。インフルエンザウイルスワクチン接種後の抗体応答、中和能力および防御を評価するための方法は、当該分野で周知である。ヒトでの研究から、ヒトインフルエンザウイルスのヘマグルチニンに対する抗体力価が、防御と相関する(約30〜40の血清サンプル赤血球凝集抑制力価が、同種のウイルスによる感染から約50%防御を与える)ことが示された[62]。抗体応答は、代表的には、赤血球凝集抑制によって、マイクロ中和によって、単一放射免疫拡散(single radial immunodiffusion)(SRID)によって、および/もしくは単一放射溶血(SRH)によって、測定される。これらアッセイ技術は、当該分野で周知である。
【0161】
本発明の組成物は、種々の方法において投与され得る。最も好ましい免疫化経路は、筋肉内注射(例えば、腕もしくは脚への)によるが、他の利用可能な経路としては、皮下注射、鼻内[63〜65]、経口[66]、皮内[67、68]、経皮的(transcutaneous)、経皮的(transdermal)[69]などが挙げられる。
【0162】
本発明に従って調製されるワクチンは、小児および成人の両方を処置するために使用され得る。インフルエンザワクチンは、6ヶ月齢からの小児および成人での免疫化における使用に関して現在推奨されている。従って、ヒト被験体は、1歳未満、1〜5歳、5〜15歳、15〜55歳、もしくは少なくとも55歳であってもよい。上記ワクチンを受けるのに好ましい被験体は、高齢(例えば、≧50歳、≧60歳、および好ましくは、≧65歳)、若年齢(例えば、≦5歳)、入院している被験体、ヘルスケアワーカー、軍隊および軍職員、妊婦、慢性疾患の、免疫不全の被験体、上記ワクチンを受ける7日前までに抗ウイルス化合物(例えば、オセルタミビルおよびザナミビル化合物;以下を参照のこと)を摂取した被験体、卵アレルギーがある人々、および外国に旅行する人々である。上記ワクチンは、これらの群に適しているのみではないが、一般に、集団においてより多く使用され得る。汎流行性株については、すべての年齢群への投与が好ましい。
【0163】
好ましい本発明の組成物は、効力についてCPMP基準のうちの1つ、2つもしくは3つを満たす。成人(18〜60歳)において、これら基準は、以下である:(1)≧70%血清保有率(seroprotection);(2)≧40%セロコンバージョン;および/もしくは(3)GMT増加≧2.5倍。高齢者(>60歳)において、これら基準は、以下である:(1)≧60%血清保有率;(2)≧30%セロコンバージョン;および/もしくは(3)GMT増加≧2倍。これら基準は、少なくとも50名の患者でのオープンラベル研究に基づく。
【0164】
処置は、単一用量スケジュールもしくは複数用量スケジュールによってであり得る。複数用量は、初回免疫化スケジュールおよび/もしくは追加免疫化スケジュールにおいて使用され得る。複数用量スケジュールにおいて上記種々の用量は、同じ経路もしくは異なる経路によって与えられ得る(例えば、非経口の初回免疫(prime)および粘膜の追加免疫(boost)、粘膜の初回免疫および非経口の追加免疫など)。1より多くの用量の投与(代表的には、2用量)は、免疫学的にナイーブな患者(例えば、これまでインフルエンザワクチンを受けたことのない人に関して)において、または新たなHAサブタイプ(汎流行性アウトブレイクにおけるような)に対するワクチン接種のために、特に有用である。複数用量は、代表的には、少なくとも1週間空けて(例えば、約2週間、約3週間、約4週間、約6週間、約8週間、約10週間、約12週間、約16週間など)投与される。
【0165】
本発明によって生成されるワクチンは、他のワクチン(例えば、麻疹ワクチン、ムンプス・ワクチン、風疹ワクチン、MMRワクチン、水痘ワクチン、MMRVワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳ワクチン、DTPワクチン、結合体化H.influenzaeタイプbワクチン、不活性化ポリオウイルスワクチン、B型肝炎ウイルスワクチン、髄膜炎菌結合型ワクチン(例えば、四価A−C−W135−Yワクチン)、RSウイルスワクチン、肺炎球菌結合型ワクチンなど)と実質的に同時(例えば、同じ医療相談の間に、またはヘルスケア専門家およびワクチン接種施設への訪問の間に)に患者に投与され得る。肺炎球菌ワクチンおよび/もしくは髄膜炎菌ワクチンと実質的に同時の投与は、高齢の患者において特に有用である。
【0166】
同様に、本発明のワクチンは、抗ウイルス化合物、および特に、インフルエンザウイルスに対して活性な抗ウイルス化合物(例えば、オセルタミビルおよび/もしくはザナミビル)と実質的に同時(例えば、同じ医療相談の間に、またはヘルスケア専門家への訪問の間に)に、患者に投与され得る。これら抗ウイルス剤としては、ノイラミニダーゼインヒビター(例えば、(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3(1−エチルプロポキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸もしくは5−(アセチルアミノ)−4−[(アミノイミノメチル)−アミノ]−2,6−アンヒドロ−3,4,5−トリデオキシ−D−グリセロ−D−ガラクトノン−2−エノン酸(そのエステル(例えば、そのエチルエステル)およびその塩(例えば、そのリン酸塩)を含む)が挙げられる。好ましい抗ウイルス剤は、(3R,4R,5S)−4−アセチルアミノ−5−アミノ−3(1−エチルプロポキシ)−1−シクロヘキセン−1−カルボン酸、エチルエステル、ホスフェート(1:1)(オセルタミビルホスフェート(TAMIFLUTM)としても公知)である。
【0167】
(一般)
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「からなる(consisting)」を含み、例えば、Xを「含む」組成物は、もっぱらXからなってもよいし、さらなる何かを含んでいてもよい(例えば、X+Y)。
【0168】
語句「実質的に」は、「完全に」を排除しない。例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、完全にYを含まなくてもよい。必要であれば、語「実質的に」は、本発明の定義から省略され得る。
【0169】
数値xに関する用語「約」とは、任意のものであり、例えば、x±10%を意味する。
【0170】
別段示されなければ、2種以上の成分を混合する工程を包含するプロセスは、いかなる具体的な混合する順序も必要としない。従って、成分は、任意の順序で混合され得る。3つの成分が存在する場合、2つの成分が、互いに合わされ得、次いで、その組み合わせが、第3の成分と合わせられ得るなど。
【0171】
上記方法の種々の工程は、同時にもしくは異なる時間に、同じもしくは異なる地理学的位置(例えば、国)において、および同じもしくは異なる人々もしくは実体によって、行われ得る。
【0172】
動物(および特にウシ)の材料が、細胞培養において使用される場合、それらは、伝染性海綿状脳症(TSE)を含まない、特に、ウシ海綿状脳症(BSE)を含まない供給源から得られるべきである。全体として、動物由来材料が完全に存在しない状態で細胞を培養することが好ましい。
【0173】
化合物が、組成物の一部として身体に投与される場合、その化合物は、代替的に、適切なプロドラッグによって置換され得る。
【0174】
2種のアミノ酸配列の間のパーセンテージ配列同一性への言及は、整列される場合、アミノ酸のパーセンテージが、上記2種の配列を比較する際に同じであることを意味する。このアラインメント、ならびに上記%相同性もしくは配列同一性は、当該分野で公知のソフトウェアプログラム(例えば、参考文献70の第7.7.18節において記載されるもの)を使用して、決定され得る。好ましいアラインメントは、ギャップ開始ペナルティー
12およびギャップ伸長ペナルティー 2、BLOSUMマトリクス 62を伴うアフィンギャップ検索を使用して、Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムによって決定される。上記Smith−Waterman相同性検索アルゴリズムは、参考文献71において教示される。
【0175】
2種の核酸配列の間のパーセンテージ配列同一性への言及は、整列される場合、塩基のパーセンテージが、上記2種の配列を比較する際に同じであることを意味する。このアラインメントおよび上記%相同性もしくは配列同一性は、当該分野で公知のソフトウェアプログラム(例えば、参考文献70の第7.7.18節に記載されるもの)を使用して、決定され得る。好ましいアラインメントプログラムは、GCG Gap(Genetics
Computer Group, Wisconsin, Suite Version 10.1)(好ましくは、デフォルトパラメーター(これは、以下のとおりである:オープンギャップ=3;伸長ギャップ=1)を使用する)である。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
2種以上のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザA型ウイルスであって、ここでPB1セグメントおよびPB2セグメントは、同じドナー株に由来する、リアソータントインフルエンザA型ウイルス。
(項目2)
2種、3種もしくは4種のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザA型ウイルスであって、ここで各ドナー株は、1種より多いバックボーンセグメントを提供する、リアソータントインフルエンザA型ウイルス。
(項目3)
2種以上のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザA型ウイルスであって、ここでPB1セグメントは、A/Texas/1/77インフルエンザ株に由来しない、リアソータントインフルエンザA型ウイルス。
(項目4)
2種以上のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザA型ウイルスであって、ここで少なくともPAセグメント、NPセグメント、もしくはMセグメントは、A/Puerto Rico/8/34に由来しない、リアソータントインフルエンザA型ウイルス。
(項目5)
前記PB1セグメントおよびPB2セグメントが、同じドナー株に由来する、項目2〜4のいずれか1項に記載のリアソータントインフルエンザA型ウイルス。
(項目6)
前記インフルエンザA型ウイルスが、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを使用して、配列番号33に整列される場合、配列番号33のアミノ酸95に対応する位置においてリジンを有するMゲノムセグメントを含む、上述の項目のいずれかに記載のリアソータントインフルエンザA型ウイルス。
(項目7)
インフルエンザドナー株であって、ここで該ドナー株は、105p30である、インフルエンザドナー株。
(項目8)
インフルエンザA型株であって、ここでMゲノムセグメントは、ペアワイズアラインメントアルゴリズムを使用して、配列番号33に整列される場合、配列番号33のアミノ酸95に対応する位置においてリジンを有する、インフルエンザA型株。
(項目9)
前記インフルエンザA型株が、H1N1株である、項目8に記載のインフルエンザA型株。
(項目10)
ドナー株に由来する少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントを含むリアソータントインフルエンザA型ウイルスであって、ここで該ドナー株は、105p30およびPR8−Xからなる群より選択される、リアソータントインフルエンザA型ウイルス。
(項目11)
前記少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントが、配列番号11〜14もしくは配列番号18〜22からなる群より選択される配列と、少なくとも95%の同一性を有する配列を有する、項目9に記載のウイルス。
(項目12)
前記少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントが、配列番号17もしくは配列番号20の配列を有する、項目9に記載のウイルス。
(項目13)
前記ウイルスは、2種以上のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含む、項目9〜12のいずれか1項に記載のウイルス。
(項目14)
PB1ウイルスセグメントおよびPB2ウイルスセグメントが、同じドナー株に由来する、項目13に記載のウイルス。
(項目15)
PB1ウイルスセグメントおよびPB2ウイルスセグメントが、配列番号18および19の配列と、少なくとも95%の同一性を有する、項目11に記載のウイルス。
(項目16)
前記ウイルスが、配列番号17〜22からなる群より選択される配列と、少なくとも95%の同一性を有するウイルスセグメントをさらに含む、項目15に記載のウイルス。
(項目17)
リアソータントインフルエンザA型ウイルスを調製する方法であって、該方法は、
(i)インフルエンザA型ウイルスを生成するために必要とされるウイルスセグメントをコードする1種以上の発現構築物を培養宿主に導入する工程であって、ここでバックボーンウイルスセグメントは、2種以上のインフルエンザ株に由来し、PB1セグメントおよびPB2セグメントは、同じドナー株に由来する、工程;ならびに
(ii)リアソータントウイルスを生成するために、該培養宿主を培養する工程、
を包含する、方法。
(項目18)
前記発現構築物は、2種以上のインフルエンザドナー株のバックボーンセグメントをコードする、項目17に記載の方法。
(項目19)
リアソータントインフルエンザA型ウイルスを調製する方法であって、該方法は、
(i)インフルエンザA型ウイルスを生成するために必要とされるウイルスセグメントをコードする1種以上の発現構築物を培養宿主に導入する工程であって、ここでバックボーンウイルスセグメントは、2種以上のインフルエンザ株に由来する、工程;ならびに
(ii)リアソータントウイルスを生成するために、該培養宿主を培養する工程;
を包含し、ここで該発現構築物は、A/Texas/1/77インフルエンザ株に由来するPB1セグメントをコードしない、方法。
(項目20)
リアソータントインフルエンザウイルスを調製する方法であって、該方法は、
(i)インフルエンザウイルスを生成するために必要とされるウイルスセグメントをコードする1種以上の発現構築物を培養宿主に導入する工程であって、ここで1種以上のバックボーンウイルスセグメントは、105p30インフルエンザ株および/もしくはPR8−Xインフルエンザ株に由来し、ここで少なくとも1種のウイルスセグメントは、第2のインフルエンザ株に由来する、工程;ならびに
(ii)リアソータントウイルスを生成するために、該培養宿主を培養する工程、
を包含する、方法。
(項目21)
前記少なくとも1種の発現構築物が、配列番号11〜14および配列番号18〜22からなる群より選択される配列と、少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、項目17〜20のいずれか1項に記載の方法。
(項目22)
工程(ii)において得られるリアソータントウイルスを精製する工程(iii)をさらに包含する、項目17〜21のいずれか1項に記載の方法。
(項目23)
前記第2のインフルエンザ株に由来する前記少なくとも1種のウイルスセグメントは、HAセグメントである、項目20〜22のいずれか1項に記載の方法。
(項目24)
インフルエンザウイルスを生成するための方法であって、該方法は、(a)培養宿主を、項目1〜16に記載のリアソータントインフルエンザウイルスに感染させる工程;(b)該工程(a)からの宿主を培養して、該ウイルスを生成する工程;および必要に応じて、(c)該工程(b)において得られたウイルスを精製する工程を包含する、方法。
(項目25)
ワクチンを調製する方法であって、該方法は、(a)項目24に記載の方法によってウイルスを調製する工程、および(b)該ウイルスからワクチンを調製する工程、を包含する、方法。
(項目26)
前記培養宿主が、孵化鶏卵である、項目24または25に記載の方法。
(項目27)
前記培養宿主が、哺乳動物細胞である、項目24または25に記載の方法。
(項目28)
前記細胞が、MDCK細胞、Vero細胞もしくはPerC6細胞である、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記細胞が、接着して増殖する、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記細胞が、懸濁物中で増殖する、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記MDCK細胞が、細胞株MDCK 33016(DSM ACC2219)である、項目30に記載の方法。
(項目32)
工程(b)が、前記ウイルスを不活性化する工程を包含する、項目25〜31のいずれか1項に記載の方法。
(項目33)
前記ワクチンが、全ビリオンワクチンである、項目25〜32に記載の方法。
(項目34)
前記ワクチンが、スプリットビリオンワクチンである、項目25〜32のいずれか1項に記載の方法。
(項目35)
前記ワクチンが、表面抗原ワクチンである、項目25〜32のいずれか1項に記載の方法。
(項目36)
前記ワクチンが、ビロソームワクチンである、項目25〜32のいずれか1項に記載の方法。
(項目37)
前記ワクチンが、1用量あたり10ng未満の残留宿主細胞DNAを含む、項目25〜36のいずれか1項に記載の方法。
(項目38)
前記インフルエンザ株のうちの少なくとも1種は、H1サブタイプ、H2サブタイプ、H5サブタイプ、H7サブタイプもしくはH9サブタイプのものである、上述の項目のいずれかに記載の方法。
(項目39)
105p30ドナー株であって、該株は、インフルエンザHA H1サブタイプを含まない、105p30ドナー株。
(項目40)
1種以上の発現構築物を含む発現システムであって、該発現システムは、105p30株もしくはPR8−X株のセグメントをコードするvRNAを含み、ここで該発現構築物は、105p30株もしくはPR8−X株に由来する少なくとも1種のバックボーンウイルスセグメントを含む、発現システム。
【図面の簡単な説明】
【0176】
図1図1は、MDCK細胞において増殖させたwt PR8ウイルスおよびPR8−Xウイルスの感染後の異なる時間におけるウイルス力価(病巣形成アッセイ(Focus−Formation assay)(FFA)によって;図1A)、およびHA力価(赤血球凝集アッセイによって;図1B)を図示する。図1Aにおける実線および図1Bにおける斜線の入った棒は、野生型PR8での結果を表す。図1Aにおける破線および図1Bにおける白抜きの棒は、野生型PR8−Xでの結果を表す。x軸は、感染後の時間を示し、図1Aおよび1Bにおけるy軸は、それぞれ、ウイルス力価(IU/ml)およびHA力価を示す。
図2図2は、MDCK細胞において増殖させた逆遺伝学由来のPR8ウイルスおよびPR8−Xウイルスの感染後の異なる時間において、ウイルス力価(FFAによって;図2A)およびHA力価(赤血球凝集アッセイによって;図2B)を図示する。図2Aにおける実線および図2Bにおける斜線の入った棒は、PR8での結果を表す。図2Aにおける破線および図2Bにおける白抜きの棒は、RG由来PR8−Xでの結果を表す。x軸は、感染後の時間を示し、図2Aおよび2Bにおけるy軸は、それぞれ、ウイルス力価(IU/ml)およびHA力価を示す。
図3図3は、上記PR8−Xに由来するHAセグメントおよびNAセグメントを含むPR8もしくはPR8−Xいずれかのバックボーンセグメントで作製された逆遺伝学由来の6:2リアソータントウイルスの、MDCK細胞での感染後の異なる時間において、ウイルス力価(FFAによって;図3A)およびHA力価(赤血球凝集アッセイによって;図3B)を比較する。図3Aにおける実線および図3Bにおける斜線の入った棒は、上記PR8バックボーンでの結果を表す。図3Aにおける破線および図3Bにおける白抜きの棒は、上記PR8−Xバックボーンでの結果を表す。x軸は、感染後の時間を示し、図3Aおよび3Bにおけるy軸は、それぞれ、ウイルス力価(IU/ml)およびHA力価を示す。
図4図4は、汎流行性H1株(株1)に由来するHAセグメントおよびNAセグメントを含むwt PR8もしくはPR8−Xいずれかのバックボーンセグメントで作製した逆遺伝学由来の6:2リアソータントウイルスの、MDCK細胞における感染後の異なる時間において、FFA(図4A)によってウイルス力価を、そしてHA力価(赤血球凝集アッセイによって;図4B)を比較する。図4Aにおける実線および図4Bにおける斜線を入れた柱は、上記wt PR8バックボーンでの結果を表す。図4Aにおける破線および図4Bにおける白抜きの棒は、上記PR8−Xバックボーンでの結果を表す。x軸は、感染後の時間を示し、図4Aおよび4Bにおけるy軸は、それぞれ、ウイルス力価(IU/ml)およびHA力価を示す。
図5図5は、105p30に由来するHAセグメントおよびNAセグメントを含むPR8もしくはPR8−Xのいずれかのバックボーンセグメントで作製した逆遺伝学由来の6:2リアソータントウイルスの、MDCK細胞における感染後の異なる時間において、病巣形成アッセイ(FFA)によってウイルス力価(図5A)を、そしてHA力価(図5B)を比較する。図5Aにおける実線および図5Bにおける斜線を入れた柱は、上記wt PR8バックボーンでの結果を表す。図5Aにおける破線および図5Bにおける白抜きの棒は、上記PR8−Xバックボーンでの結果を表す。x軸は、感染後の時間を示し、y軸はウイルス力価(IU/ml)を示す。
図6図6は、野生型PR8−Xウイルスおよび105p30ウイルス(図6A)またはMDCK細胞において増殖させた逆遺伝学由来のPR8−Xウイルスおよび105p30ウイルス(図6B)の感染後の異なる時間において、病巣形成アッセイ(FFA)によってウイルス力価を図示する。図6Aおよび6Bにおいて、実線は、105p30での結果を表す。破線は、PR8−Xでの結果を表す。x軸は、感染後の時間を示し、図6Aおよび6Bにおけるy軸は、それぞれ、ウイルス力価(IU/ml)およびHA力価を示す。
図7図7は、上記wt PR8株(三角付きの線)もしくは105p30株(四角付きの線)のバックボーンセグメント、および汎流行性H1インフルエンザ株(株2)のHAセグメントおよびNAセグメントを含むリアソータントウイルスの増殖特徴を示す。図7Aおよび図7Bにおけるx軸は、感染後の時間を示す。図7Aにおけるy軸は、1mLあたりのFFUにおける力価Log10を示す。図7Bにおけるy軸は、1mLあたりのウイルス粒子における力価log10を示す。
図8図8は、(A)H1株(株1)もしくは(B)汎流行性H1株(株2)に由来するHAセグメントおよびNAセグメントを含む105p30もしくはPR8−Xのいずれかのバックボーンセグメントで作製した逆遺伝学由来の6:2リアソータントウイルスのMDCK細胞における感染後の異なる時間において、病巣形成アッセイ(FFA)によってウイルス力価を比較する。実線は、上記105p30バックボーンでの結果を表す。破線は、上記PR8−Xバックボーンでの結果を表す。x軸は、感染後の時間を示し、y軸は、ウイルス力価(IU/ml)を示す。
図9図9は、(A)汎流行性H1株(株3)もしくは(B)H3(株1)に由来するHAセグメントおよびNAセグメントとの組み合わせにおいて、#17、#19、もしくはPR8−Xのいずれかのバックボーンで作製された逆遺伝学由来の6:2 リアソータントウイルスのMDCK細胞における感染後の異なる時間において、病巣形成アッセイ(FFA)によってウイルス力価を比較する。図9Aおよび9Bにおいて、丸印付きの破線は、#17バックボーンでの結果を表す。菱形印付きの実線は、#19バックボーンでの結果を表す。四角印付きの破線は、PR8−Xバックボーンでの結果を表す。x軸は、感染後の時間を示し、y軸は、ウイルス力価(IU/ml)を示す。
図10-1】図10は、キメラの#19バックボーンもしくはPR8−Xバックボーンのいずれかと、以下の株:(A)汎流行性H1株(株2)、(B)汎流行性H1株(株4)、(C)H1株(株2)、(D)H1株(株3)、もしくは(E)H3株(株2)に由来するHAセグメントおよびNAセグメントとで作製された異なる逆遺伝学由来の6:2リアソータントウイルスの一団のMDCK細胞における感染後の異なる時間において、病巣形成アッセイ(FFA)によってウイルス力価を比較する。図10A〜Eにおいて、三角印付きの実線は、#19バックボーンでの結果を表す。四角印付きの破線は、PR8−Xバックボーンでの結果を表す。x軸は、感染後の時間を示し、y軸は、ウイルス力価(IU/ml)を示す。
図10-2】図10は、キメラの#19バックボーンもしくはPR8−Xバックボーンのいずれかと、以下の株:(A)汎流行性H1株(株2)、(B)汎流行性H1株(株4)、(C)H1株(株2)、(D)H1株(株3)、もしくは(E)H3株(株2)に由来するHAセグメントおよびNAセグメントとで作製された異なる逆遺伝学由来の6:2リアソータントウイルスの一団のMDCK細胞における感染後の異なる時間において、病巣形成アッセイ(FFA)によってウイルス力価を比較する。図10A〜Eにおいて、三角印付きの実線は、#19バックボーンでの結果を表す。四角印付きの破線は、PR8−Xバックボーンでの結果を表す。x軸は、感染後の時間を示し、y軸は、ウイルス力価(IU/ml)を示す。
図10-3】図10は、キメラの#19バックボーンもしくはPR8−Xバックボーンのいずれかと、以下の株:(A)汎流行性H1株(株2)、(B)汎流行性H1株(株4)、(C)H1株(株2)、(D)H1株(株3)、もしくは(E)H3株(株2)に由来するHAセグメントおよびNAセグメントとで作製された異なる逆遺伝学由来の6:2リアソータントウイルスの一団のMDCK細胞における感染後の異なる時間において、病巣形成アッセイ(FFA)によってウイルス力価を比較する。図10A〜Eにおいて、三角印付きの実線は、#19バックボーンでの結果を表す。四角印付きの破線は、PR8−Xバックボーンでの結果を表す。x軸は、感染後の時間を示し、y軸は、ウイルス力価(IU/ml)を示す。
図11-1】図11は、キメラ#19(白抜きの棒)もしくはPR80−X(中実の棒)のいずれかのバックボーンと、以下の株:(A)汎流行性H1株(株2)、(B)汎流行性H1株(株4)、(C)H3株(株1)、もしくは(D)H3株(株2)に由来するHAセグメントおよびNAセグメントとで作製された異なる6:2リアソータントウイルスのMDCK細胞における感染後60時間において、HA収量を(レクチン捕捉ELISAによって)比較する。伝統的な再集合(「伝統的」)と、上記wt PR8バックボーンとによって作製された対応する6:2リアソータントウイルスを、コントロールとして含めた(斜線を入れた柱)。y軸は、上記HA含有量(μg/mL単位)を示す。
図11-2】図11は、キメラ#19(白抜きの棒)もしくはPR80−X(中実の棒)のいずれかのバックボーンと、以下の株:(A)汎流行性H1株(株2)、(B)汎流行性H1株(株4)、(C)H3株(株1)、もしくは(D)H3株(株2)に由来するHAセグメントおよびNAセグメントとで作製された異なる6:2リアソータントウイルスのMDCK細胞における感染後60時間において、HA収量を(レクチン捕捉ELISAによって)比較する。伝統的な再集合(「伝統的」)と、上記wt PR8バックボーンとによって作製された対応する6:2リアソータントウイルスを、コントロールとして含めた(斜線を入れた柱)。y軸は、上記HA含有量(μg/mL単位)を示す。
図12図12は、バックボーン17、18、19および20(表1に示されるとおり;それぞれ、菱形、四角、三角および×印付きの線)を含むリアソータントインフルエンザウイルス、PR8−Xに由来する全てのバックボーンセグメントを除いて、H3インフルエンザ株(株1)に由来する同じHAセグメントおよびNAセグメントを含むコントロール(丸付きの線)、ならびに等価な野生型株(+印付きの線)の増殖曲線を示す。x軸は、感染後の時間(hpi)を示し、y軸は、IU/mLを示す。
図13図13は、バックボーン17および19(それぞれ、菱形および三角付きの線)およびH3インフルエンザ株(株3)に由来するHAセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルス、PR8−X(+印付きの線)に由来する全てのバックボーンセグメントを除いて同じHAセグメントおよびNAセグメントを含むコントロールならびに等価な野生型株(丸付きの線)の増殖曲線を示す。
図14-1】図14は、バックボーン19(白抜きのボックス)、PR8−Xバックボーン(斜線が入ったボックス)および野生型インフルエンザウイルス(点付きのボックス)を含むリアソータントインフルエンザウイルスを使用する、FFA(14(A)および14(C))およびHA−ELISA(14(B)および14(D))アッセイの結果を示す。図14(A)および図14(B)は、H1インフルエンザ株(株2)での結果を示し、図14(C)および(D)は、H3インフルエンザウイルス株での結果を示す。図14(A)および14(C)におけるy軸は、ウイルス力価(IU/mL単位)を示し、図14(B)および14(D)におけるy軸は、HA(μg/mL単位)を示す。
図14-2】図14は、バックボーン19(白抜きのボックス)、PR8−Xバックボーン(斜線が入ったボックス)および野生型インフルエンザウイルス(点付きのボックス)を含むリアソータントインフルエンザウイルスを使用する、FFA(14(A)および14(C))およびHA−ELISA(14(B)および14(D))アッセイの結果を示す。図14(A)および図14(B)は、H1インフルエンザ株(株2)での結果を示し、図14(C)および14(D)は、H3インフルエンザウイルス株での結果を示す。図14(A)および14(C)におけるy軸は、ウイルス力価(IU/mL単位)を示し、図14(B)および14(D)におけるy軸は、HA(μg/mL単位)を示す。
図15図15は、A/New Caledonia/20/99(配列番号33)および105p30(配列番号45)のM1ウイルスセグメントのアラインメントである。
【発明を実施するための形態】
【0177】
(発明を実施するための態様)
(新たなドナー株の開発)
高増殖ドナー株を提供するために、ドナー株A/Puerto Rico/8/34を、MDCK 33016細胞において5回継代する。この方法を使用して、本発明者らは、元の株と比較して、改善された増殖特徴を示す株PR8−Xを得ることができた。
【0178】
上記105p30インフルエンザドナー株は、A/New Caledonia/20/1999インフルエンザウイルスを、MDCK 33016細胞での臨床分離株から単離し、上記ウイルスを30回継代することによって提供した。得られた株は、配列番号33に対して整列させた場合、配列番号33のアミノ酸95に対応する位置においてリジンを有するMセグメントを有する。
【0179】
(wt PR8ウイルスおよびPR8−Xウイルスの増殖特徴)
PR8−Xドナー株およびwt PR8ドナー株の増殖特徴を比較するために、これらウイルス株のウイルス力価を、病巣形成アッセイおよび赤血球凝集アッセイによって、MDCK細胞において測定する。
【0180】
(病巣形成アッセイ(FFA))
上記FFAに関しては、感染していないMDCK細胞を、96ウェルプレートにおいて、10% FCSを含むDMEM 100μl中、密度 1.8×10細胞/ウェルでプレートする(plate)。翌日、培地を吸引し、細胞を、容積 50μl(ウイルスをDMEM+1% FCS中で希釈)中で、ウイルスに感染させる。上記細胞を、37℃において翌日までインキュベートする。
【0181】
感染後のいくつかの時点で、上記培地を吸引し、上記細胞をPBSで1回洗浄する。氷冷50%/50% アセトン−メタノール50μlを、各ウェルに添加し、続いて、−20℃において30分間にわたってインキュベートする。このアセトン混合物を吸引し、上記細胞をPBST(PBS+0.1% Tween)で1回洗浄する。PBS中2% BSA 50μlを、各ウェルに添加し、続いて、室温(RT)において30分間にわたってインキュベートする。抗NPの1:6000希釈物 50μlを、ブロッキング緩衝液中に添加し、続いて、室温において1時間にわたってインキュベートする。この抗体溶液を吸引し、上記細胞をPBSTで3回洗浄する。二次抗体(ヤギ抗マウス)を、50μl
ブロッキング緩衝液で1:2000希釈において添加し、上記プレートを、室温において1時間にわたってインキュベートする。この抗体溶液を吸引し、上記細胞をPBSTで3回洗浄する。50μlのKPL True Blueを各ウェルに添加し、10分間にわたってインキュベートする。上記True−Blueを吸引し、dHOで1回洗浄することによって、上記反応を停止させる。上記水を吸引し、上記細胞を放置して乾燥させる。
【0182】
結果(図1)から、上記PR8−X株は、これが由来した上記wt PR8株と比較して、同じ時間枠においてより高い力価まで増殖し得ることが示される。
【0183】
(PR8−Xバックボーンもしくはwt PR8バックボーンを含むリアソータントウイルスの増殖特徴)
ウイルスの再集合のためのドナー株として上記PR8−X株が適切であることを試験するために、リアソータントウイルスを、逆遺伝学によって生成する。上記リアソータントウイルスは、汎流行性H1株に由来する上記HAタンパク質およびNAタンパク質、ならびにPR8−XもしくはPR8のいずれかに由来する他のウイルスセグメントを含む。これらリアソータントウイルスのウイルス力価を、上記のように、FFAおよびHAアッセイによって決定する。結果を図4に示す。
【0184】
結果から、PR8−Xに由来するウイルスセグメントを含むリアソータントウイルスは、上記PR8/34株に由来するウイルスセグメントを含むリアソータントウイルスと比較して、MDCK細胞において迅速に増殖することが示される。
【0185】
(PR8−Xと比較した、105p30株の増殖特徴)
MDCK細胞を、moi 10−3において105p30およびPR8−Xに感染させ、感染後のいくつかに時点において、サンプルを採取する。力価を、FFAアッセイによって決定する。結果から、105p30は、PR8−Xと比較して、MDCK細胞においてさらにより迅速に増殖することが示される(図6)。
【0186】
(105p30バックボーンもしくはwt PR8バックボーンを含むリアソータントウイルスの増殖特徴)
ウイルスの再集合のためのドナー株として上記105p30株が適切であることを試験するために、逆遺伝学を使用して、汎流行性H1インフルエンザ株に由来する上記HAセグメントおよびNAセグメント、ならびに上記105p30株もしくは上記wt PR8株のいずれかに由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントウイルスを生成する。MDCK細胞を、上記リアソータントウイルスに、moi 10−3において感染させ、感染後1時間、12時間、36時間および60時間にサンプルを採取する。上記力価を、病巣形成アッセイによって、もしくはリアルタイム検出PCRによってウイルス粒子を測定することによって、のいずれかで決定する。上記105p30株に由来するバックボーンセグメントを含む上記リアソータントウイルスは、上記wt PR8株のバックボーンセグメントと再集合されているウイルスより迅速に増殖する。このことから、上記105p30株は、迅速に増殖するリアソータントウイルスを生成するための良好なドナー株であることが示される(図7)。
【0187】
(2種のドナー株に由来するバックボーンセグメントを使用する、インフルエンザウイルスのレスキュー)
H3インフルエンザウイルスに由来する上記HAセグメントおよびNAセグメント、ならびに上記105p30ドナー株および上記PR8−Xドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスのレスキュー効率を、MDCK細胞において試験する。上記リアソータントインフルエンザウイルスは、以下の表に示されるように、上記105p30ドナー株および上記PR8−Xドナー株のバックボーンセグメントを含む:
【0188】
【表1】
番号3、4、10、11、14および16〜20に従うバックボーンを含むリアソータントインフルエンザウイルスは、レスキュー可能である。バックボーン番号3、4、10、11もしくは16を含むインフルエンザウイルスは、10IU/mL未満のウイルス力価を達成する。バックボーン番号17および18を含むインフルエンザウイルスは、10IU/mL〜10IU/mLの間のウイルス力価を達成し、バックボーン番号19および20を有するインフルエンザウイルスは、10IU/mLより高い力価すら達成する。
【0189】
これらデータから、上記PB1セグメントおよびPB2セグメントが同じインフルエンザドナー株に由来するインフルエンザウイルスは、これらセグメントが異なるインフルエンザドナー株に由来するインフルエンザウイルスと比較して、より高いレスキュー効率を示し得ることが示される。
【0190】
(2種のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスの増殖特徴)
バックボーン番号17、18、19および20(上記の表1に示されるとおり)、ならびにH3インフルエンザ株(株1)に由来する上記HAセグメントおよびNAセグメントを含む、リアソータントインフルエンザ株を作る。コントロールとして、等価な野生型H3インフルエンザウイルス、同じHAセグメントおよびNAセグメント、ならびにPR8−Xに由来する全てのバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスを使用する。
【0191】
さらに、バックボーン番号17および19、ならびに第2のH3インフルエンザ(株1)ウイルスもしくは汎流行性H1インフルエンザウイルス(株3)のいずれかに由来する上記HAセグメントおよびNAセグメントを含む、リアソータントインフルエンザ株を生成する。上記H3株のためのコントロールとして、等価な野生型H3(株2)インフルエンザウイルス、ならびに同じHAセグメントおよびNAセグメント、ならびにPR8−Xに由来する全てのバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスを使用する。上記汎流行性H1インフルエンザウイルスについては、同じHAセグメントおよびNAセグメント、ならびにPR8−Xに由来する全てのバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスを使用する。
【0192】
上記リアソータントインフルエンザウイルスおよび上記コントロールウイルスを、MDCK細胞において増殖させ、ウイルス力価を、異なる時点においてFFAによって測定する。バックボーン17、19および20を含む上記リアソータントH3ウイルス(株1)、ならびにバックボーン17および19を含む上記H3インフルエンザウイルス(株3)に関して、2種のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含む上記インフルエンザウイルスは、上記野生型ウイルスおよび単一のドナー株にのみ由来するバックボーンセグメントを含む上記リアソータントウイルスと比較して、より高い力価まで増殖する(図11および図12を参照のこと)。
【0193】
上記汎流行性H1インフルエンザウイルスに関して、バックボーン17および19を含む上記リアソータントインフルエンザ株は、PR8−Xに由来する全てのバックボーンセグメントを含んだ上記コントロールと比較して、より高い力価まで増殖する(図9を参照のこと)。
【0194】
上記データから、2種の異なるドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスは、単一のドナー株のみに由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスと比較すると、改善された増殖速度を示し得ることが示される。
【0195】
上記実験をまた、4種の異なるH1株もしくはH3株に由来する上記HAセグメントおよびNAセグメントと組み合わせて、バックボーン19または上記PR8−Xに由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスを使用して反復した。結果を図10に示す。
【0196】
(2種の異なるドナー株に由来するバックボーンセグメントを有するリアソータントインフルエンザウイルスは、より高い収量を与える)
2種の異なるインフルエンザドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスもまた、より高い収量を提供し得るか否かを試験するために、上記リアソータント株のHA収量を、HA−ELISAによって試験する。この目的のために、上記のようにバックボーン#19ならびに上記H3(株2)およびH1インフルエンザ株のHA/NAセグメントを含む同じリアソータントインフルエンザウイルスを、使用する。コントロールとして、等価な野生型インフルエンザウイルス、ならびに同じHAセグメントおよびNAセグメント、ならびにPR8−Xに由来する全てのバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスを、使用する。さらに、ウイルス力価を、FFAアッセイで確認する。
【0197】
上記結果から、2種の異なるドナー株に由来するバックボーンセグメントを含む上記リアソータントインフルエンザ株は、PR8−Xに由来する全てのバックボーンを含んだインフルエンザウイルスと比較して、より高い収量まで増殖し得ることが確認される(図13(A)および13(C)を参照のこと)。さらに、2種のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスもまた、より高いHA収量を与える(図13(B)および13(D)を参照のこと)。
【0198】
これらデータから、2種のドナー株に由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスは、単一のドナー株のみに由来するバックボーンセグメントを含むリアソータントインフルエンザウイルスと比較して、より高い収量を与えることが示される。
【0199】
本発明は、例示によってのみ記載されてきたこと、および改変は、本発明の範囲および趣旨内にありながら行われ得ることが理解される。
【0200】
【化1】
【0201】
【化2】
【0202】
【化3】
【0203】
【化4】
【0204】
【化5】
【0205】
【化6】
【0206】
【化7】
【0207】
【化8】
【0208】
【化9】
【0209】
【化10】
【0210】
【化11】
【0211】
【化12】
【0212】
【化13】
【0213】
【化14】
【0214】
【化15】
【0215】
【化16】
【0216】
【化17】
【0217】
【化18】
【0218】
【化19】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図12
図13
図14-1】
図14-2】
図15
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]