(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記本体部分が主区画と前面を有する先端部分とを含み、前記前面に、前記通路内へと前記ピンを案内するための孔が設けられ、前記終端部材が、前記ピンの前記自由端部を前記孔と整列するように案内するための傾斜かつ陥凹したガイド表面を有する、請求項1に記載の器具。
前記終端部材が、前記第1のレバーアームと前記第2のレバーアームとの相対運動に応じて前記基材に近づく方向に前記本体部分に対して摺動するように構成されていることにより、前記ピンが前記把持部材によって把持された際に、前記ピンが前記基材に対して変位される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の器具。
前記第2のレバーアームと前記把持部材とに連結される連結部材を更に有することにより、前記第1のレバーアームと前記第2のレバーアームとの相対運動によって前記把持部材が前記ピンを把持する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の器具。
前記第1及び第2のレバーアームを開いた位置に付勢するために前記第1及び第2のレバーアームと連結される付勢部材を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の器具。
いっさいの付属的部品を使用することなく前記器具に組立てることが可能な複数の相互に噛み合った部品で全体が構成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の器具。
【背景技術】
【0002】
基材から固定ピンを引き抜く際には、引き抜き力が確実にピンに伝達されるようにピンをしっかりと把持する必要がある。大径のヘッドを有するピンの把持は、ピンのヘッドを掴むことによって確実に行うことができる。しかしながら、ピンが大径のヘッドを有しない場合、又は大径のヘッドを有する端部以外の部分でピンを把持する必要がある場合、ピンを把持するにはピンの側壁をしっかりと掴むことが必要とされる。
【0003】
この問題は、整形外科手術において、例えば、ピンが、骨上の位置をマークするために用いられる場合、又は切断ガイドのような器具(例えば、鋸を使用する切断工程用に表面を画成する、又はドリル穿孔若しくはリーミング工程用の穴を形成するもの)を骨に固定するために用いられる場合に生じる。ピンは、ピン及びピンによって骨に固定された器具を用いる工程を終えた後、骨から引き抜かなければならない。
【0004】
欧州特許公開公報第EP−B−2043538号は、基材からピンを引き抜くための器具について開示している。この器具は、その先端部に、引き抜きに先立ってピンが受容される孔を有している。
【0005】
ピンを簡単に孔に挿入するには、器具が外科医によって適正な位置及び角度で配置される必要がある。しかしながら、これを行う際に、器具によって外科医の視界が遮られてピン及び孔が見えなくなる。このため、外科医はこの動作を視覚に頼らずに行うことになる。これにより、ピンが孔に正しく通されるように外科医が器具を適正な位置及び角度で配置することが極めて困難となり、何度もやり直す必要が生じ得る。
【0006】
本発明の一態様によれば、基材からピンを引き抜くための器具であって、ピンの自由端部を受容することができる通路を有する本体部分を有する第1のレバーアームと、第1のレバーアームに対して旋回することが可能な第2のレバーアームと、通路にピンを保持するためにピンを把持することができる本体部分内の把持部材と、端面と本体部分の両側に沿って延びる2つの側壁と、を有する、本体部分に取り付けられる終端部材と、を備え、終端部材が、端面の一部に設けられ、かつピンの自由端部を通路内に受容される前に器具内に案内するように構成された2つの側壁の少なくとも一方の一部に沿って延びるスロットを有する、器具が提供される。
【0007】
前面だけでなく側面にスロットが設けられることにより、外科医などの使用者は、抜脱器具の前面から、又は側面において通路内にピンを導いて引き抜くことが可能である。これは、器具の柔軟性を高めるものであり、使用者が抜脱器具内でピンの整列を誤ることが起こりにくくなることを意味する。
【0008】
器具の側面の少なくとも一部に沿って延びるスロットが設けられることにより、更に、ピンを引き抜くための器具の使いやすさを高める触覚的なフィードバックも使用者に与えられる。ピンのヘッドがスロットに引っ掛かることで、使用者による装置の扱い時に一定の触覚的フィードバックが与えられる。使用者は、ピンがスロット内に進んでいることを、触覚的、時として視覚的に、場合によっては聴覚的に知覚することができる。このようなスロットの構成及び使用者がスロット内にピンを維持しようとして本能的に力を加えることによって、使用者は器具に対するピンの動きの自由度を1つずつ低減させることができる。これは、器具内にピンを導入できるようになる前に使用者が器具の前面でピンを浮動させ、すべての自由度を同時に整列させる必要がある上記で述べた器具とは対照的である。
【0009】
スロットは、側壁の一部若しくは側壁の大部分に沿って、又は側壁の全長に沿って設けることができる。スロットは、少なくとも10mm、20mm、30mm、40mm、又は50mmにわたって延びてよい。
【0010】
スロットは、底のない開いた形であってよく、これによりピンが器具の側面から内部に通過することができる。
【0011】
スロットは細長い溝の形とし、閉じた底を有するものとしてもよい。スロットは側面からの挿入時にピンを案内するためのガイド表面を含んでもよい。
【0012】
スロットは、終端部材の前面に沿ったピンの横方向の運動を制限し、かつ前方への進入時に器具内へのピンの進入を助けるための係止面を更に含んでもよい。
【0013】
把持部材を第1のレバー及び第2のレバーと連結することにより、第1のレバーと第2のレバーとの相対運動によって把持部材がピンを把持することができる。
【0014】
器具は生体適合性材料で形成することができる。
【0015】
第1のレバーアームは本体部分に対して傾斜させることができる。
【0016】
傾斜した第1のレバーアームが設けられることにより、レバーアームが視線に入らないことから使用者の視認性が向上するので、ピンを器具内に導く助けとなる。更に、外科医にとってはこうしたレバーを操作する際に取られる手首の角度がより好ましく、怪我につながりにくくなることから、傾斜したレバーアームが設けられることは人間工学的により好ましい。また、傾斜したレバーアームは、ピンがスロット又は孔の後ろから飛び出た場合に、ピンが見えやすく、掴みやすくなるという更なる利点を有する。これに対して、レバーアームが本体とほぼ整列された実施形態では、2つのハンドルの間で外科医の手の中にピンが飛び出る可能性がある。
【0017】
第1のレバーアームは本体部分に対して鈍角をなしてよく、第2のレバーアームは本体部分に対して鋭角をなしてよい。
【0018】
第1のレバーアーム及び第2のレバーアームは開いた位置に付勢することができる。付勢部材はばねであってもよいが、一対の板ばね要素であってもよい。
【0019】
本体部分は、その内部に第1及び第2の側壁を受容するための一対の凹部を有してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照すると、
図1は、膝関節プロテーゼの大腿骨コンポーネントを移植するための準備処置が行われている大腿骨2の遠位部分を概略的に示したものである。切除平面4に沿って大腿骨2に最初の遠位切断処理が行われている。カッティングブロック6が、一部が切除された大腿骨2と接して配置されている。カッティングブロック6は、それぞれ前側切断、後側切断、前側面取り切断、及び後側面取り切断の平面を規定するスロット8、10、12、14を有している。カッティングブロック6は、カッティングブロック6のそれぞれの通孔に通される2本の固定ピン16、18によって定位置に保持されている。切除された大腿骨2上のカッティングブロック6の適切な位置は、例えば、髄内アラインメントロッドを基準とするなど、従来の技術を用いて配置することができる。
【0026】
カッティングブロック6を使用した切断工程の後、手術の後の段階を行うために切除された大腿骨2にアクセスできるようにカッティングブロック6を大腿骨2から取り外すことができる。固定ピン16、18が平行であり、それらの自由端部において大径のヘッドを有しない場合、カッティングブロック6をピン上にスライドさせることによって切除された大腿骨から取り外すことができる。したがって、固定ピン16、18を引き抜く必要がある。
【0027】
本発明は、固定ピン16、18の引き抜きの課題を解決するものである。
【0028】
図2は、本発明に基づく固定ピンを引き抜くための器具10を示している。器具10は、第1のレバーアーム20及び第2のレバーアーム22を有している。第2のレバーアーム22は、第1のレバーアーム20に対して第2のレバーアーム22が旋回できるように、リンク機構(下記により詳細に述べる)によって第1のレバーアーム20と間接的に連結されている。
【0029】
第1のレバーアーム20は、円形キャビティ26及び長手方向キャビティ38が本体部分に形成された本体部分24を含む。
【0030】
第1のレバーアーム20は、本体部分24の反対側の端部にハンドル部分30を有している。第2のレバーアーム22は、器具10が組立てられる際に第1のレバーアームのハンドル部分30の反対側に位置し、そこを握ることができる湾曲したハンドル部分32を有することにより、操作者が2個のハンドル部分30、32を手のひらによって握り、親指と残りの指との間に握ることでそれらを互いに引き絞ることができる。ハンドル部分の寸法及びその形状(2個のハンドル部分が互いに対して角度をなしており、第2のハンドル部分32は湾曲した形状を有している)は、ハンドル部分が良好な強い把持性をもたらすために必要な距離にわたって、幅広い範囲の大きさの使用者の手に対してアクセス可能かつ快適であるよう把持距離を最適化するように選択されている。更に、各ハンドル部分の前端及び後端には、使用者のグローブが滑りやすい場合に押し引きを助けるための突起又はフランジが設けられている。
【0031】
本体部分24はほぼ長方形の断面を有しており、ハンドル部分30から遠い方の端部に先端部分34を有している。
【0032】
長手方向キャビティ38は、本体部分24の主区画36に設けられている。主区画36の一端には先端部分34が、他端にはハンドル部分30が形成されている。本体部分24の主区画36は、主区画36の互いに反対側の面上に、主区画36のほぼ全長に沿って延び、終端部材28の第1及び第2の側壁44、46をそれぞれ受容するように構成された、2つのほぼ平行な外側に面した凹部40、42を有している。
【0033】
先端部分34はその前面48に円筒状キャビティ26及び第1の円形孔92を有している。円形孔92は、円形キャビティ26内に延びている。第2の円形孔52が円形キャビティ26から長手方向キャビティ38内に延びている。
【0034】
終端部材28において本体部分24は終端しており、終端部材28は、上記で触れたリンク機構を介して第1のレバーアーム20と第2のレバーアーム22とを連結し、固定ピン16の引き抜きを容易にする機能を有している。終端部材28は、第1及び第2の側壁44、46を有する端面80を有している。
【0035】
終端部材28は本体部分24に対して摺動運動できるように構成されており、第1及び第2の側壁44、46が凹部40、42内にそれぞれ受容されることで終端部材28と本体部分24との相対運動が促進されるようになっている。
【0036】
終端部材28の第1及び第2の側壁44、46は、互いに対して概ね平行に延びており、一端において端面80によって相互に連結されている。
【0037】
端面80、及び側壁44、46の一方の一部には、その中に1本のスロット60が設けられている。
図7に示されるように、スロット60は、端面80の中央部分から第2の壁46に向かって延びた後、第2の壁46の前方部分に沿ってほぼ直交する方向に続いている。スロット60は、終端部材28の側壁44、46のいずれに沿って延びてもよい。
【0038】
第2の壁46の前方部分には、スロット60と連続して 終端部材28の内側に傾斜した傾斜陥凹ガイド表面45が形成されている。ガイド表面45は、主区画36の先端部分34の前面48と隣接して終端している。
【0039】
第1及び第2の側壁44、46のそれぞれの自由端部には、外側に面した差込み部62が設けられている。第1及び第2の側壁44、46は、本体部分24の主区画36の凹部40、42に滑り込むことができるような寸法となっている。
【0040】
ジョー要素50の形態の把持部材が円形キャビティ26内に配置され、円形キャビティ26内で回転させることが可能であることによって、第2のレバーアーム22が第1のレバーアーム20に対して動かされる際に、端部が円形キャビティ26内に挿入された固定ピン16が把持されるようになっている。この様子は
図8に示されている。
【0041】
ジョー要素50は、その自由端部に孔56が設けられたドッグレッグ状の制御アーム54を有している。
【0042】
終端部材28は、
図3の矢印Aによって示されるように、ピン16が引き抜かれる基材に向かう方向に第1のレバーアーム20の本体部分24に対して摺動することが可能である。上記に述べた用途との関連では、基材は大腿骨2であり得る。
【0043】
第1のレバーアーム20と第2のレバーアーム22との間の相対運動は最初、挿入されたピン16がジョー要素50によって把持されるようにジョー要素50をロック解除位置からロック位置へと作動させる。第2のレバーアーム22が第1のレバーアーム20に対して引き続き動かされると、終端部材28は基材に近づきかつ本体部分24から遠ざかる方向に摺動し、これによりジョー要素50によって把持された挿入されたピン16が基材に対して変位する。
【0044】
円形のジョー要素50は円形キャビティ26内に緊密に嵌まっており、余分な遊びなしで円形キャビティ26の内側と接触状態を保って回転できるような寸法となっている。
【0045】
ジョー要素50には通孔64が貫通している。ジョー要素50の通孔64は、先端部分34の前面48の第1の円形孔92、及び円形キャビティ26から長手方向キャビティ38内に延びる第2の円形孔52と同じ断面の大きさ及び形状を有している。ジョー要素50が円形キャビティ26内に配置されると、通孔64を回転させることによって第1及び第2の円形孔92、52とも同一直線上となるように整列させて、第1のレバーアーム20の前面48からジョー要素50を通り、長手方向キャビティ38内に貫通する通路94を形成することが可能となり、通路94内にピン16の自由端部を受容することが可能となる。この様子は
図5に示されている。
【0046】
スロット60は、通孔64並びに第1及び第2の円形孔92、52と(すなわち、通路94と)整列するように終端部材28に形成されているため、その結果、第1及び第2の円形孔92、52、通孔64、並びにスロット60を、固定ピン16の端部を受容するように整列させることができる。
【0047】
板ばね要素88が設けられ、第1及び第2のレバーアーム20、22と固定されている。それらは、固定ねじ90によって第1及び第2のレバーアーム20、22と連結されている。板ばね要素88は、第1及び第2のレバーアーム20、22を開いた位置に付勢する。
【0048】
この位置では、ジョー要素50の回転方向は、上記に述べたように通孔64が第1及び第2の円形孔92、52と整列することができるようなものである。
【0049】
第2のレバーアーム22は、第2のレバーアーム22を第1のレバーアーム20と連動して連結するためのほぼ平行な連結プレートのペア66、68で終端している。各連結プレート66、68は、第2のレバーアーム22を終端部材28及び制御アーム54とそれぞれ連結するための第1及び第2の延長部74、76を有している。
【0050】
連結プレート66、68のそれぞれは、第1の延長部74に第1の整列された通孔のペア72の一方を有している。通孔72は、終端部材28上の外側に面した差込み部62を受容できるようになっており、これにより第2のレバーアーム22は終端部材28と連結される一方で終端部材28に対して旋回することができる。
【0051】
第2のレバーアーム22は、第2の整列された通孔のペア70を第2の延長部76のそれぞれに1つずつ有している。
【0052】
器具10は、制御アーム54をその自由端部において第2のレバーアーム22と相互連結するためのL字状連結アーム78を含んでいる。連結アーム78は、その両端に、外側に溶接で固定される心棒58、86を受容するための通孔82、84を有している。
【0053】
器具10は以下のようにして操作される。
【0054】
固定ピン16が、終端部材28の端面80のスロット60を通じて前方に、又は最初に、第1及び第2の壁44、46の前方部分に沿って延びるスロット60の部分を利用して器具10の側面から、器具10内に挿入される。スロット60の端部61が、端面80上のスロット60内における固定ピン16の横方向の移動を制限する係止面を与えることにより、第1の円形孔92内に固定ピン16を案内する助けとなる。
【0055】
固定ピン16が側面から挿入される場合、固定ピン16は、案内表面45と係合して先端部分34の前面48の方向に案内表面45によって案内されることにより第1の円形孔92と整列する。
【0056】
したがって、固定ピン16は器具10の前面又は側面からスロット60を通じて挿入された後、第1及び第2の第1の円形孔92、52、通孔64、及び長手方向キャビティ38によって形成される通路94内に受容され得る。
【0057】
これにより、器具10を操作する外科医は、固定ピン16を、直接前方又は横に動かすことか、次いで前方に動かすことのいずれかにより、通孔64内に誘導することが可能である。
図6の矢印Bは、側面からの挿入の方向を示している。
【0058】
第1のレバーアーム20と第2のレバーアーム22とを開いた位置から互いに引き絞ると、最初に第2のレバーアーム22が、終端部材28を第2のレバーアーム22と連結する通孔72及び差込み部62を中心として旋回する。連結アーム78の動作によって、レバーアーム54が、固定ピン16を引き抜こうとする基材から遠ざかる方向に引き戻される。これにより、ジョー要素50が円形キャビティ26内で回転する。ジョー要素50が円形キャビティ26内で回転すると、ジョー要素50の通孔64の両端の内面の部分がピンに局所的な折曲げ力を作用させる結果、固定ピン16に剪断作用を与える。これにより、固定ピン16は器具10内で把持され、器具100の内外への固定ピン16の摺動が妨げられる。この様子は
図8に概略的に示されている。
【0059】
第1のレバーアーム20と第2のレバーアーム22とを引き続き互いに引き絞っていくと、第2のレバーアーム22が連結アーム78及び制御アーム54と連結される通孔70を中心として第2のレバーアーム22が旋回する。制御アーム54はこの段階ではほとんど動かない傾向にあり、円形キャビティ26内でジョー要素50が更に回転する結果、固定ピン16が変形するだけである。したがって、第1のレバーアーム20と第2のレバーアーム22とを互いに引き絞ることで、差込み部62による第2のレバーアーム22の通孔72における第2のレバーアーム22と終端部材28との間の連結によって、終端部材28が本体部分24に対して前方に押し出される。終端部材28の運動は、連結アーム74の制御アーム54との連結部を中心とした連結アームの一定の旋回運動を生じ、これにより、連結アーム78が第2のレバーアーム22と連結される通孔70が第1のレバーアーム20に対してわずかに動く傾向にある点は認識されるであろう。
【0060】
第1のレバーアーム20と第2のレバーアーム22とが引き続き互いに引き絞られ、その結果、終端部材28が骨に対して押し付けられるように動くことによって、固定ピン16が骨又は他の基材から少なくとも部分的に引き抜かれる。本発明の器具を使用した部分的な引き抜きは、多くの場合、固定ピン16を基材から完全に引き抜くことができるように固定ピン16を充分に緩めるものである。相当の引き抜き力を加えること以外に、完全に引き抜くことができるだけ固定ピン16が充分に緩められていない場合、第1のレバーアームと第2のレバーアームとを開くことで、端面80が骨と接触した状態で器具の残りの部分を固定ピン16に沿って摺動させることができる。次いで、第1のレバーアーム20と第2のレバーアーム22とを互いに引き絞ることで、上記に述べた一連の動作を繰り返すことができる。
【0061】
本発明の第2の実施形態を
図9〜11を参照しながら説明する。
【0062】
抜脱器具110は、第1のレバーアーム120及び第2のレバーアーム122を含んでいる。第2のレバーアーム122は、第2のレバーアーム22が第1のレバーアーム20に対して旋回できるように、リンク機構によって第1のレバーアーム120と間接的に連結されている。
【0063】
第1のレバーアーム120は、長尺状本体部分124及びハンドル部分130を含む。長尺状本体部分124は、ハンドル部分130から遠位にある長尺状本体部分124の遠位端174の方向に長尺状本体部分124を横断して幅方向に延びる円形キャビティ126を有している。長尺状本体部分124は、その内部に形成された長尺状キャビティ138を含むが、長尺状キャビティ138は、長尺状本体部分124の遠位端174からその長さの大部分にわたって延びている。円形キャビティ126は長手方向キャビティ138と連続しており、長手方向キャビティ138内に開口している。
【0064】
第2のレバーアーム122は、器具110が組立てられる際に第1のレバーアーム120のハンドル部分130の反対側に位置し、そこを握ることができる湾曲したハンドル部分132を有することにより、操作者が2個のハンドル部分130、132を手のひらによって握り、親指と残りの指との間に握ることでそれらを互いに引き絞ることができる。
【0065】
ハンドル部分の寸法及びその形状(2個のハンドル部分が互いに対して角度をなしており、両方とも湾曲した形状を有している)は、ハンドル部分が良好な強い把持性をもたらすために必要な距離にわたって幅広い範囲の大きさの使用者の手に対してアクセス可能かつ快適であるように把持距離を最適化するように選択されている。更に、各ハンドル部分の前端及び後端には、使用者のグローブが滑りやすい場合に押し引きを助けるための突起又はフランジが設けられている。
【0066】
第1のレバーアーム120と第2のレバーアーム122とは、第1及び第2のレバーアーム120、122を開いた位置に付勢する圧縮ばね162によって連結されている。
【0067】
第1のレバーアーム120は、長尺状本体部分124に対して傾斜している。本明細書に述べられる実施形態では、第1のレバーアームは、長尺状本体部分124に対して鈍角をなしている。第2のレバーアーム122も長尺状本体部分124に対して鋭角をなしている。この構成では、主本体部分124は器具110の操作者によって見えなくなることがない。
【0068】
第2のレバーアーム122は、下記に更に詳しく述べるように、終端部材128及びジョー要素150を介して第2のレバーアーム122を本体部分124に連結するためのリンク及び連結機構を含んでいる。
【0069】
終端部材128は、互いにほぼ平行に延びる、端面180によって一端において相互連結されている第1及び第2の側壁144、146を有している。第1及び第2の側壁144、146のペアは、長尺状本体部分124が内部に受容される凹部156を画定している。
【0070】
終端部材128の上側には、第1の側壁144と第2の側壁146との間に終端部材128の概ね中間に延びる突起部148が設けられている。突起部148の互いに反対側の外側に面した面上には、第2のレバーアーム122のリンク及び連結機構に設けられた整列された孔154とそれぞれ連結されるように一対の同一直線上の差込み部152が設けられている。
【0071】
終端部材128の端面180及び第1及び第2の側壁44、46の一方にはスロット160がその内部に設けられている。
図11及び本明細書に述べられる実施形態に見られるように、このスロット160は、端面180の中心領域から第2の壁146に向かって延びた後、第2の壁146のほぼ全長に沿って直交する方向に延びることにより、端面180から終端部材128の一方の側面に沿って延びるスロット160を画定している。別の実施形態では、スロット160は、終端部材128の他方の側面に下って延びてもよい。
【0072】
第2のレバーアーム122のリンク及び連結機構は、ハンドル132の一方の端部に設けられて、延長プレート134を有しており、アーム158が延長プレート134とほぼ垂直に延びて、戻りフランジ182がその内部に突起部148を受容するように構成されたU字状凹部196を画定している。整列された孔154のペアは、このU字状凹部内に設けられている。
【0073】
リンク及び連結機構は、延長プレート134と反対方向に延びる円弧状溝形成部164を更に含んでいる。円弧状溝形成部164は、連結アーム166をその内部に保持するように形成されており、連結アーム166は、例えば、スナップ嵌め保持によって円弧状溝形成部164と協働し、かつ円弧状溝形成部164内に保持されるような円形端部170を有する。これにより、連結アーム166は溝形成部164に対して旋回可能となっている。
【0074】
連結アーム166は、ジョー要素150に対する旋回運動を行えるよう、例えば、スナップ嵌めを用いてジョー要素150の形の把持部材の制御アーム142の自由端部を保持するように形成された第2の円弧状溝168をその他方の端部に有している。
【0075】
上記に述べた第1の実施形態と同様、ジョー要素150は、円形キャビティ126内に配置され、円形キャビティ126内で回転されることによって、第2のレバーアーム122が第1のレバーアーム120に対して動かされる際に、端部が円形キャビティ126内に受容された固定ピン16の一方のようなピンを把持することができる。
【0076】
終端部材128は、長尺状本体部分124に対する相対的摺動運動を行えるように、第2のレバーアーム122の連結及びリンク機構の延長プレート134と突起部148との連結によって定位置に保持されている。同様に、ジョー要素150は、終端部材128、及び連結アーム166を介したジョー要素150と第2のレバーアーム122とのリンク連結によって定位置に保持されている。
【0077】
終端部材128は、ピン16が引き抜かれる基材に向かう方向に第1のレバーアーム120の本体部分124に対して摺動することが可能である。上記に述べた用途との関連では、基材は大腿骨2であり得る。
【0078】
ジョー要素150は、それを貫通して延びるジョー要素溝172を有する。ジョー要素溝172は、長尺状キャビティ138と同様の断面の大きさ及び形状を有しており、ジョー要素150が円形キャビティ126内で定位置にある場合に、ジョー要素溝172が長尺状キャビティ138と整列して固定ピン16の自由端部をその内部に受容することができる通路194を画定することができる。
【0079】
スロット160は、通路194と整列するようにして終端部材128に形成されている。これにより、スロット160が、長尺状キャビティ138とジョー要素溝172とによって形成される通路194と整列することにより、固定ピン16を器具110内に、終端部材128の端面180内のスロット160の部分を通じて直接前方に、又はリム146に設けられたスロット160の部分を介して側面から挿入することができる。第1の実施形態と異なり、外科医は、固定ピン16をジョー要素150内に確実に配置するために前方への運動を必ずしも用いる必要がなく、長尺状本体部分124内への単純な側面からの挿入を用いることが出来る。
【0080】
第2の実施形態の構成及び組立ては、溶接及び余分な構成要素(心棒58、86など)の使用を避けるために第1の実施形態とは幾分異なっている。第2の実施形態の部品は、複数の相互に噛み合う部品(ジグソーパズルのような)で設計されており、これにより、2本のレバーが通常の使用においてアクセス可能な位置を超えた最大の位置にある場合にのみ、タイバー/連結要素166を2本のレバーとして組立てることが可能となる。次いでこの連結部品は、そのドッグレッグ部分170の一方が可動レバー122の大きなスロット164内に収容されていることによって捕捉される。したがって、器具は、相互連結される部品が互いに緩くつながった状態から組立てられ、最終的に差込み部152が整列した孔154に嵌合して器具の組立てが完了する。
【0081】
器具110の操作は第1の実施形態と同様である。
【0082】
固定ピン16は、終端部材128の端面80内のスロット160の部分から、又はリム146において終端部材128の側面に設けられたスロット160の部分を利用した側方への運動により、器具110内に挿入される。
【0083】
第1の実施形態と同様、第1のレバーアーム120と第2のレバーアーム122との間の相対運動は最初、挿入されたピン26がジョー要素によって把持されるように長尺状本体部分124内のジョー要素150をロック解除位置からロック位置へと作動させる。
【0084】
第2のレバーアーム122が第1のレバーアーム120に対して引き続き動かされると、終端部材128は基材に近づきかつ長尺状本体部分124から遠ざかる方向に摺動し、これによりジョー要素150によって把持された挿入されたピン16が基材に対して変位する。
【0085】
第1の実施形態と同様、円形のジョー要素150は円形キャビティ126内に緊密に嵌まっており、余分な遊びなしで円形キャビティ126の内側と接触状態を保って回転できるような寸法となっている。
【0086】
第1のレバーアーム120と第2のレバーアーム122とを互いに引き絞ると、制御アーム142が、固定ピン16を引き抜こうとする基材から遠ざかる方向に引き戻される。これにより、ジョー要素150が長尺状本体部分124の円形キャビティ126内で回転する。ジョー要素150が円筒状キャビティ26内で回転すると、通路172の両端の内面の部分がピンに局所的な折曲げ力を作用させる結果、固定ピン16に剪断作用を与える。これにより、固定ピン16は器具110内で把持され、器具110の内外への固定ピン16の摺動が妨げられる。
【0087】
第1のレバーアーム120と第2のレバーアーム122とを引き続き互いに引き絞っていくと、延長プレート134、したがって延長プレート134と連結された突起部148が前方に動き、これにより終端部材128が長尺状本体部分124に対して前方に動く。したがって、第1のレバーアーム120と第2のレバーアーム122とを互いに引き絞ることで、終端部材128は第1のレバーアーム120の本体部分124に対して前方に押し出される。
【0088】
第1のレバーアーム120と第2のレバーアーム122とが引き続き互いに引き絞られ、その結果、終端部材128が動くことによって固定ピン16が骨又は他の基材から少なくとも部分的に引き抜かれる。本発明の器具を使用した部分的な引き抜きは、多くの場合、固定ピン16を基材から完全に引き抜くことができるように固定ピン16を充分に緩めるものである。相当の引き抜き力を加えること以外に、完全に引き抜くことができるだけ固定ピン16が充分に緩められていない場合、第1のレバーアームと第2のレバーアームとを開くことで、器具の端部が骨と接触した状態で器具の残りの部分を固定ピン16に沿って摺動させることができる。次いで、第1のレバーアーム120と第2のレバーアーム122とを互いに引き絞ることで、上記に述べた一連の動作を繰り返すことができる。
【0089】
本発明の器具を使用して、様々な種類のねじ山が形成されていない固定部材を引き抜くことができる。例えば、本発明を使用して、釘に似た「スタインマンピン」などの様々な種類のピンを引き抜くことができる。本器具を使用して、ドリルビットに非常によく似ているが骨内に打ち込むことができる「ドリルピン」を引き抜くこともできる。しかしながら、ねじに似た(ヘッドのあるものとないものとがある)「ねじ付きピン」を引き抜くために使用することを目的としたものではない。しかしながら、ねじ付きピンを引き抜くことも可能であり得るが、非常に柔らかい骨において、又は非常に強い把持が原因で、ピンとともに大きな骨片を引き抜いてしまうリスクをともなう。
【0090】
各実施形態が許容するピンの直径範囲は、スロット及び孔のサイズによってある程度限定される(図に示される実施形態では約3mmのピン直径である)。しかしながら、より大きい又はより小さい直径のピンにも、それに応じて器具の部品のサイズを変更することによって適合させることができる点は認識されるであろう。本器具を使用して、kワイヤのような長いピン及び非常に長いピンを引き抜くこともできる。詳細には、第2の実施形態は、長いピン若しくは非常に長いピン又はワイヤを引き抜くために使用される場合、特に有利である。
【0092】
本体部分の溝のいずれか又はそれぞれ、及びジョー要素は、谷部若しくは溝の形の部分的に開いたもの、又は孔の形の閉鎖したものなどの様々な形状及び断面を有することができる。寸法は、固定ピンが緊密な滑り嵌めとなるように選択されることが好ましい。
【0093】
本器具は、一般的に1以上の生体適合性材料で形成される。適当な材料の選択は、器具の目的とする用途を考慮して行われる。本器具が、例えば、整形外科手術などの手術における使用を目的とする場合、器具は、外科用器具の製造に一般的に用いられているもののようなステンレス鋼で形成されることが一般的には好ましい。
【0094】
板ばね又はコイルばねに変えて他の付勢構造を使用することもできる。レバーアームの形状は、本器具の特定の用途に合わせて適合することができる。
【0095】
〔実施の態様〕
(1) 基材からピンを引き抜くための器具であって、
ピンの自由端部を受容することができる通路を有する本体部分を有する第1のレバーアームと、
前記第1のレバーアームに対して旋回することが可能な第2のレバーアームと、
前記通路に前記ピンを保持するために前記ピンを把持することができる前記本体部分内の把持部材と、
端面と、前記本体部分の両側に沿って延びる2つの側壁と、を有する、前記本体部分に取り付けられる終端部材と、を備え、前記終端部材が、前記端面の一部に設けられ、かつ前記ピンの前記自由端部を前記通路内に受容される前に前記器具内に案内するように構成された前記2つの側壁の少なくとも一方の一部に沿って延びるスロットを有する、器具。
(2) 前記本体部分が主区画と前面を有する先端部分とを含み、前記前面に、前記通路内へと前記ピンを案内するための孔が設けられ、前記終端部材が、前記ピンの前記自由端部を前記孔と整列するように案内するための傾斜かつ陥凹したガイド表面を有する、実施態様1に記載の器具。
(3) 前記本体部分が、前記通路を内部に有する主部分を含み、前記スロットが前記少なくとも一方の側壁の長さに沿って設けられ前記キャビティと整列することによって、前記ピンが前記スロットを通じて側面から前記通路内に受容され得る、実施態様1に記載の器具。
(4) 前記スロットが、前記終端部材の前記端面に沿った横方向の運動を制限するための係止面を有する、実施態様1〜3のいずれかに記載の器具。
(5) 前記第1のレバーアームが前記本体部分に対して傾斜している、実施態様1〜4のいずれかに記載の器具。
【0096】
(6) 前記終端部材が、前記第1のレバーアームと前記第2のレバーアームとの相対運動に応じて前記基材に近づく方向に前記本体部分に対して摺動するように構成されていることにより、前記ピンが前記把持部材によって把持された際に、前記ピンが前記基材に対して変位される、実施態様1〜5のいずれかに記載の器具。
(7) 前記第2のレバーアームと前記把持部材とに連結される連結部材を更に有することにより、前記第1のレバーアームと前記第2のレバーアームとの相対運動によって前記把持部材が前記ピンを把持する、実施態様1〜6のいずれかに記載の器具。
(8) 前記第1のレバーアームが前記本体部分に対して傾斜している、実施態様1〜7のいずれかに記載の器具。
(9) 前記第1及び第2のレバーアームを開いた位置に付勢するために前記第1及び第2のレバーアームと連結される付勢部材を有する、実施態様1〜8のいずれかに記載の器具。
(10) いっさいの付属的部品を使用することなく前記器具に組立てることが可能な複数の相互に噛み合った部品で全体が構成される、実施態様1〜9のいずれかに記載の器具。
【0097】
(11) 前記第1及び第2のレバーアームのそれぞれが、各レバーアームのハンドル部分の前端及び後端に向かう突起部を有する、実施態様1〜10のいずれかに記載の器具。