(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
厚さ方向の一端面であってペリクル膜が支持される側の一端面に設けられた溝と、外周面と前記一端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔と、を有する枠本体を備えるペリクル枠であって、
前記ペリクル枠とペリクル膜とを、前記枠本体の前記一端面と前記ペリクル膜とが対向するように配置する配置工程と、前記貫通孔を通じ、前記一端面に設けられた溝の内部を減圧することにより、前記ペリクル枠と前記ペリクル膜とを固定する固定工程と、を有するペリクルの製造方法に用いられる、ペリクル枠。
前記ペリクル膜が、結晶シリコン、ダイヤモンドライクカーボン、グラファイト、アモルファスカーボン、グラフェン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機系材料を含む、請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載のペリクル。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、ペリクル膜は、非常に破れやすい性質を有している。このため、ペリクル膜の取り扱いには、細心の注意が求められる。ペリクル膜の中でも、無機系材料を含むペリクル膜(例えば、上記文献1〜4に記載のペリクル膜)は、破れやすく、自立しにくい膜であるだけでなく、機械的な接触によっても傷や発塵の原因となる膜である。このため、無機系材料を含むペリクル膜(例えば、上記文献1〜4に記載のペリクル膜)の取扱いには、より一層の注意が求められる。
また、半導体デバイスの微細化に伴い、ペリクル膜、ペリクル枠、原版といった部材に異物が付着しないようにするために、より一層の注意が求められる。
【0007】
以上の観点から、ペリクル枠と他の部材(例えば、ペリクル膜、他のペリクル枠、原版等)とを固定する際に、ペリクル枠及び他の部材の各々の前面及び背面を、装置、治具、手などによって接触しないにようにして両者を固定する方法について検討を行った。
ここで、ペリクル枠について、「前面」とは、厚さ方向の一端面及び他端面のうちの一方を指し、「背面」とは、厚さ方向の一端面及び他端面のうちの他方を指す。
また、ペリクル膜について、「前面」及び「背面」とは、一方の膜面及び他方の膜面を指す。
原版について、「前面」とは、光照射面を指し、「背面」とは、光照射面とは反対側の面を指す。
【0008】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、ペリクル枠とペリクル膜とを直接又は他の部材(例えば他のペリクル枠)を介して固定してペリクルを製造する際に、ペリクル枠及びペリクル膜の各々の前面及び背面に接触することなく両者を固定できるペリクル枠、上記ペリクル枠を備えたペリクル、上記ペリクルを備えた露光原版、並びに、上記露光原版を用いた露光装置及び半導体装置の製造方法を提供することである。
また、本発明の目的は、ペリクル枠及びペリクル膜の各々の前面及び背面に接触することなくペリクルを製造することができるペリクルの製造方法、並びに、ペリクル及び原版の各々の前面及び背面に接触することなく露光原版を製造することができる露光原版の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
【0010】
<1> 厚さ方向の一端面であってペリクル膜が支持される側の一端面に設けられた溝と、外周面と前記一端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔と、を有する枠本体を備える、ペリクル枠。
<2> 前記枠本体は、更に、厚さ方向の他端面に設けられた溝と、外周面と前記他端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔と、を有する、<1>に記載のペリクル枠。
<3> 更に、前記一端面に接する接着剤層を備える、<1>又は<2>に記載のペリクル枠。
【0011】
<4> <1>〜<3>のいずれか1項に記載のペリクル枠である第1ペリクル枠と、
前記第1ペリクル枠の前記枠本体の前記一端面の側に支持されたペリクル膜と、
を備える、ペリクル。
<5> 前記ペリクル膜が、結晶シリコン、ダイヤモンドライクカーボン、グラファイト、アモルファスカーボン、グラフェン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機系材料を含む、<4>に記載のペリクル。
<6> 前記ペリクル膜の厚さが、10nm〜200nmである、<4>又は<5>に記載のペリクル。
<7> 前記第1ペリクル枠と前記ペリクル膜との間に、前記ペリクル膜に接する第2ペリクル枠を備える、<4>〜<6>のいずれか1項に記載のペリクル。
<8> 前記ペリクル膜としてのシリコン結晶膜と前記第2ペリクル枠としての枠形状のシリコン基板とからなる複合部材を備える、<7>に記載のペリクル。
【0012】
<9> <1>〜<3>のいずれか1項に記載のペリクル枠とペリクル膜とを、前記枠本体の前記一端面と前記ペリクル膜とが対向するように配置する配置工程と、
前記外周面と前記一端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔を通じ、前記一端面に設けられた溝の内部を減圧することにより、前記ペリクル枠と前記ペリクル膜とを固定する固定工程と、
を有する、ペリクルの製造方法。
<10> 前記固定工程における前記減圧は、前記ペリクル枠及び前記ペリクル膜が加圧雰囲気下に配置された状態で行う、<9>に記載のペリクルの製造方法。
【0013】
<11> <4>〜<8>のいずれか1項に記載のペリクルと、
前記ペリクルの前記第1ペリクル枠の側に配置された原版と、
を備える、露光原版。
<12> 前記第1ペリクル枠の前記枠本体は、更に、厚さ方向の他端面に設けられた溝と、外周面と前記他端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔と、を有する、<11>に記載の露光原版。
【0014】
<13> <4>〜<8>のいずれか1項に記載のペリクルであって、前記第1ペリクル枠の前記枠本体が、更に、厚さ方向の他端面に設けられた溝、及び、外周面と前記他端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔を有するペリクルと、原版と、を前記他端面と前記原版とが対向するように配置する配置工程と、
前記外周面と前記他端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔を通じ、前記他端面に設けられた溝の内部を減圧することにより、前記ペリクルと前記原版とを固定する固定工程と、
を有する、露光原版の製造方法。
<14> 前記固定工程における前記減圧は、前記ペリクル及び前記原版が加圧雰囲気下に配置された状態で行う、<13>に記載の露光原版の製造方法。
【0015】
<15> <11>又は<12>に記載の露光原版を備える、露光装置。
<16> 露光光を放出する光源と、
<11>又は<12>に記載の露光原版と、
前記光源から放出された露光光を前記露光原版に導く光学系と、
を有し、
前記露光原版は、前記光源から放出された露光光が前記ペリクル膜を透過して前記原版に照射されるように配置されている、露光装置。
<17> 前記露光光が、EUV光である、<16>に記載の露光装置。
<18> 光源から放出された露光光を、<11>又は<12>に記載の露光原版の前記ペリクル膜を透過させて前記原版に照射し、前記原版で反射させるステップと、
前記原版によって反射された露光光を、前記ペリクル膜を透過させて感応基板に照射することにより、前記感応基板をパターン状に露光するステップと、
を有する、半導体装置の製造方法。
<19> 前記露光光が、EUV光である、<18>に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ペリクル枠とペリクル膜とを直接又は他の部材を介して固定してペリクルを製造する際に、ペリクル枠及びペリクル膜の各々の前面及び背面に接触することなく両者を固定できるペリクル枠、上記ペリクル枠を備えたペリクル、上記ペリクルを備えた露光原版、並びに、上記露光原版を用いた露光装置及び半導体装置の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、ペリクル枠及びペリクル膜の各々の前面及び背面に接触することなくペリクルを製造することができるペリクルの製造方法、並びに、ペリクル及び原版の各々の前面及び背面に接触することなく露光原版を製造することができる露光原版の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、適宜、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は、図面等の具体的な実施形態に限定されることはない。また、各図面に共通の要素については、同一の符号を付すことがあり、重複した説明を省略することがある。また、図面では、構造を見やすくするために、隠れ線の一部を省略することがある。
【0019】
<ペリクル枠>
本実施形態のペリクル枠は、厚さ方向の一端面であってペリクル膜が支持される側の一端面に設けられた溝と、外周面と上記一端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔と、を有する枠本体を備える。
本実施形態のペリクル枠は、必要に応じ、枠本体以外の要素(例えば後述の接着剤層等)を備えていてもよい。
本実施形態のペリクル枠及び枠本体は、通常のペリクル枠と同様に、ペリクル膜を支持するための枠形状の部材である。
【0020】
本明細書中において、枠本体の「厚さ方向の一端面であってペリクル膜が支持される側の一端面」とは、枠本体の厚さ方向の二つの端面のうち、ペリクル膜が支持される側の端面を指す。
【0021】
本実施形態において、上記貫通孔は、枠本体の外周面の一部と、上記一端面に設けられた溝の壁面(側面又は底面。以下同じ。)の一部と、の間を貫通している。このため、本実施形態のペリクル枠の枠本体の上記一端面と、ペリクル膜と、を直接又は他の部材(例えば、後述の第2ペリクル枠等の他のペリクル枠。以下同じ。)を介して対向配置させた状態で、上記貫通孔を通じて上記溝の内部を減圧することにより、ペリクル枠とペリクル膜との間に、押し付け合う力を働かせることができる。このため、ペリクル枠及びペリクル膜の各々の前面及び背面に(装置、治具、手などによって)接触することなく、両者を固定することができる。
従って、本実施形態のペリクル枠によれば、ペリクル枠とペリクル膜とを直接又は他の部材を介して固定してペリクルを製造する際に、ペリクル枠及びペリクル膜の各々の前面及び背面に接触することなく両者を固定できるという効果が奏される。
なお、本実施形態において、「押し付け合う力」は、引き付け合う力と同義である。
【0022】
本実施形態のペリクル枠を用いることにより、ペリクル枠やペリクル膜に接触することによる、ペリクル枠及びペリクル膜への異物の付着を防止できる。
更に、本実施形態のペリクル枠を用いることにより、ペリクル膜に接触することによる、ペリクル膜の破れ、傷、発塵等を防止できる。
【0023】
ところで、近年、半導体デバイスの微細化に伴い、ペリクルや原版への異物の付着を抑制する要求が一層強くなっている。
また、線幅32nm以下のパターン形成は、例えばEUVリソグラフィーによって行われる。EUVリソグラフィーに用いられる、無機系材料を含むペリクル膜は、有機系材料を含むペリクル膜と比較して破れやすく、自立しにくく、また、機械的な接触によって傷や発塵を発生しやすい。このため、無機系材料を含むペリクル膜を用いてペリクルを作製する場合には、ペリクル膜の膜面に接触することなくペリクルを作製する要求が大きい。ここで、「自立」とは、単独で膜形状を保持できることを指す。
本実施形態のペリクル枠によれば、半導体デバイスの微細化に伴うこれらの要求に応えることができる。
具体的には、本実施形態のペリクル枠は、特に、波長が短い露光光(例えば、EUV光、EUV光よりも更に波長が短い光、等)を用いたリソグラフィー用のペリクル、中でも、無機系材料を含むペリクル膜を備えたペリクルの作製に好適である。
【0024】
本実施形態において、EUV(Extreme Ultra Violet:極端紫外)光とは、波長5nm〜30nmの光を指す。
EUV光の波長は、5nm〜13.5nmが好ましい。
本実施形態では、EUV光、及び、EUV光よりも波長が短い光を総称し、「EUV光等」ということがある。
【0025】
本実施形態のペリクル枠の好ましい態様は、枠本体が、更に、厚さ方向の他端面に設けられた溝と、外周面と上記他端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔と、を有する態様である。
この態様のペリクル枠は、枠本体の一端面の側にペリクル膜が配置され、他端面の側に原版が配置されてなる、露光原版の作製に好適である。この露光原版の作製では、上記態様のペリクル枠を用いることにより、ペリクル枠及びペリクル膜に接触せずにペリクルを作製でき、かつ、上記ペリクル及び原版に接触せずに露光原版を作製できる。
上記態様のペリクル枠を用いることにより、ペリクル枠及びペリクル膜に接触せずにペリクルを作製できる理由は前述したとおりである。即ち、ペリクル枠の枠本体の外周面と上記一端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔を通じ、上記一端面に設けられた溝の内部を減圧することにより、ペリクル枠とペリクル膜との間に、押し付け合う力(即ち、引き付け合う力)を働かせることができるためである。
上記態様のペリクル枠を用いることにより、上記ペリクル及び原版に接触せずに露光原版を作製できる理由は、ペリクル枠の枠本体の外周面と上記他端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔を通じ、上記他端面に設けられた溝の内部を減圧することにより、ペリクルと原版との間に、押し付け合う力(即ち、引き付け合う力)を働かせることができるためである。
【0026】
(ペリクル枠の一例)
次に、本実施形態のペリクル枠の一例を、
図1〜
図3を参照しながら説明する。但し、本実施形態のペリクル枠はこの一例によって限定されることはない。
図1は、枠本体100の一端面10を観察できる方向から見た概略斜視図であり、
図2は、同じ枠本体100の他端面20を観察できる方向から見た概略斜視図である。
図3は、
図1のA−A線断面図である。
【0027】
図1及び
図2に示すように、枠本体100(ペリクル枠)の形状は、矩形の枠形状である。枠本体100がペリクルの一部材として用いられたときには、枠本体100によって囲まれた開口部50を露光光Eが通過する。
枠本体100の外形は、枠本体100の厚さ方向の一端面10と、他端面20と、4つの面からなる外周面30と、4つの面からなる内周面40とによって確定される。
枠本体100の一端面10は、枠本体100を用いて露光原版を作製したときに、ペリクル膜が配置される側の端面であり、枠本体100の他端面20は、枠本体100を用いて露光原版を作製したときに、原版が配置される側の端面である。
なお、枠本体100の厚さ方向からみた形状は、上述のとおり矩形状であるが、本実施形態の枠本体の厚さ方向からみた形状は矩形状には限定されず、矩形状以外の形状(例えば、台形状、枠の外側部分に出っ張りを有する形状、等)であってもよい。
【0028】
図1及び
図3に示すように、一端面10には、溝12が設けられている。
この実施形態において、枠本体100の厚さ方向から見た溝12の形状は、枠本体100の形状に沿って一周する無端形状となっている。
枠本体の厚さ方向から見た溝の形状の変形例については後述する。
【0029】
枠本体100は、貫通孔14A及び貫通孔14Bを有している。
貫通孔14A及び貫通孔14Bは、それぞれ、溝12の底面と外周面30との間を貫通している。
【0030】
ここで、貫通孔14A及び14Bは、それぞれ、溝12の側面と外周面30との間を貫通していてもよい。
また、貫通孔14A及び14Bのいずれか一方は、省略されていてもよい。即ち、枠本体100では、1つの溝(溝12)に対して2つの貫通孔(貫通孔14A及び14B)が接続しているが、本実施形態はこの態様には限定されない。本実施形態では、1つの溝(溝12)に対し、少なくとも1つの貫通孔が接続されていればよい。
【0031】
また、
図2及び
図3に示すように、一端面10とは反対側の他端面20には、溝22が設けられている。
この実施形態において、溝22の形状も、溝12の形状と同様に、厚さ方向から見たときに、枠本体100の形状に沿って一周する無端形状となっている。
【0032】
枠本体100は、貫通孔24A及び貫通孔24Bを有している。
貫通孔24A及び貫通孔24Bは、それぞれ、溝22の底面と外周面30との間を貫通している。
貫通孔24A及び24Bのバリエーションについては、貫通孔14A及び14Bのバリエーションと同様である。
【0033】
上述した枠本体100(ペリクル枠)は、一端面10の側にペリクル膜を固定(支持)してペリクルを作製する用途に好適である。
一端面10の側にペリクル膜を固定する場合について説明すると、枠本体100には、ペリクル膜との対向面となる一端面10に溝12が設けられ、かつ、この溝12に接続する貫通孔14A及び14Bが設けられている。このため、一端面10にペリクル膜を固定する際に、貫通孔14A及び14Bを通じて溝12の内部を(例えば真空ポンプ等の排気手段によって)減圧することにより、枠本体100とペリクル膜との間の圧力を減圧することができる。この減圧により、枠本体100とペリクル膜との間に押し付け合う力(即ち、引き付け合う力)を働かせることができるので、枠本体100及びペリクル膜の各々の前面及び背面(即ち、枠本体100の一端面10及び他端面20、並びに、ペリクル膜の一方の膜面及び他方の膜面)に接触することなく、両者を固定することができる。
上記枠本体100とペリクル膜との固定は、接着剤層を介して行われてもよい。接着剤層を介した場合には、減圧することで、枠本体100とペリクル膜とを接着剤層を介して押し付けることができるため、枠本体100とペリクル膜とをしっかりと固定することができる。
ペリクルの製造方法の具体的な形態については後述する。
【0034】
また、上述した枠本体100は、他端面20の側に原版を固定して露光原版を作製する用途にも好適である。
他端面20の側に原版を固定する場合について説明すると、枠本体100には、原版との対向面となる他端面20に溝22が設けられ、かつ、この溝22に接続する貫通孔24A及び24Bが設けられている。このため、他端面20に原版を固定する際に、貫通孔24A及び24Bを通じて溝22の内部を(例えば真空ポンプ等の排気手段によって)減圧することにより、枠本体100と原版との間の圧力を減圧することができる。この減圧により、枠本体100と原版との間に押し付け合う力を働かせることができるので、枠本体100及び原版の各々の前面及び背面(即ち、枠本体100の一端面10及び他端面20、並びに、原版の光照射面、及び、光照射面とは反対側の面)に接触することなく、両者を固定することができる。上記固定は、接着剤層を介して行われてもよい。その後、枠本体100の一端面10側に、(必要に応じ接着剤層を介して)ペリクル膜を固定してもよい。
【0035】
また、上述した枠本体100は、まず枠本体100にペリクル膜を固定してペリクルを作製し、次いで、得られたペリクルと原版とを固定して露光原版を作製する用途にも好適である。この露光原版の作製では、上述のとおり、枠本体100及びペリクル膜の各々の前面及び背面に接触することなく両者を固定してペリクルを作製することができ、次いで、ペリクル及び原版の各々の前面及び背面に接触することなく両者を固定して露光原版を作製することができる。
【0036】
枠本体100の寸法は、例えば、以下の寸法とすることができる。
枠本体100の長辺方向の長さL1は、例えば135mm〜153mmとすることができ、140mm〜152mmが好ましく、145mm〜151mmがより好ましい。
枠本体100の短辺方向の長さL2は、例えば100mm〜130mmとすることができ、105mm〜125mmが好ましく、110mm〜120mmがより好ましい。
長辺方向の長さL1と短辺方向の長さL2とは、同一寸法であってもよい。即ち、枠本体100の形状は、正方形形状であってもよい。
枠本体100の枠幅(フレーム幅)Wは、例えば1.0mm〜5.0mmとすることができ、1.2mm〜3.5mmが好ましく、1.5mm〜2.5mmがより好ましい。枠幅は、矩形形状の枠本体100の4辺において、同一の寸法としてもよいし、異なる寸法としてもよい。
また、枠本体100によって囲まれた開口部50(貫通孔)の長辺方向の長さは、例えば130mm〜152mmとすることができ、135mm〜151mmが好ましく、140mm〜150mmがより好ましい。
また、開口部50の幅は、例えば95mm〜130mmとすることができ、100mm〜125mmが好ましく、105mm〜120mmがより好ましい。
ペリクル枠の厚さtは、例えば0.5mm〜5.0mmとすることができ、0.5mm〜3.0mmが好ましく、0.5mm〜2.0mmがより好ましい。
【0037】
また、溝12及び溝22の幅は、溝での圧力損失低減、枠本体の枠幅との関係、等を考慮して適宜設定できるが、例えば10μm〜1.0mmとすることができ、50μm〜700μmが好ましく、100μm〜600μmがより好ましく、200μm〜500μmが特に好ましい。
また、溝12及び溝22の深さは、溝での圧力損失低減、枠本体の厚さとの関係、等を考慮して適宜設定できるが、例えば10μm〜1.0mmとすることができ、50μm〜700μmが好ましく、100μm〜600μmがより好ましく、200μm〜500μmが特に好ましい。
【0038】
また、貫通孔14A、14B、24A、及び24Bの幅は、貫通孔での圧力損失低減、枠本体の厚さとの関係等を考慮して適宜設定できるが、例えば例えば10μm〜1.0mmとすることができ、50μm〜700μmが好ましく、100μm〜600μmがより好ましく、200μm〜500μmが特に好ましい。
また、貫通孔14A、14B、24A、及び24Bの長さは、貫通孔での圧力損失低減、等を考慮して適宜設定できるが、例えば0.5mm〜10mmとすることができ、0.7mm〜5.0mmが好ましく、1.0mm〜2.0mmがより好ましい。
ここで、貫通孔の幅とは、貫通孔からなる流路の流路幅を指し、貫通孔の長さとは、貫通孔からなる流路の流路長を指す。
【0039】
枠本体100(ペリクル枠)の材質には特に制限はなく、ペリクル枠に用いられる通常の材質とすることができる。
枠本体100の材質として、具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金(5000系、6000系、7000系等)、ステンレス、シリコン、シリコン合金、鉄、鉄系合金、炭素鋼、工具鋼、セラミックス、金属−セラミックス複合材料、樹脂等が挙げられる。中でも、アルミニウム、アルミニウム合金が、軽量かつ剛性の面からより好ましい。
【0040】
また、枠本体100は、その表面に保護膜を有していてもよい。
保護膜としては、露光雰囲気中に存在する水素ラジカルおよびEUV光等に対して耐性を有する保護膜が好ましい。
保護膜としては、例えば、酸化被膜が挙げられる。
酸化被膜は、陽極酸化等の公知の方法によって形成することができる。
また酸化被膜は、黒色系染料によって着色されていてもよい。枠本体100が黒色系染料によって着色された酸化被膜を有する場合には、枠本体100上の異物の検出がより容易となる。
その他、枠本体100のその他の構成については、例えば、特開2014−021217号公報、特開2010−146027号公報等の公知のペリクル枠の構成を適宜参照することができる。
【0041】
(ペリクル枠の変形例)
以下、本実施形態の一例に係るペリクル枠の変形例について説明する。
枠本体100は、一端面10と他端面20との両方に溝が設けられているが、他端面20の溝は省略されていてもよい。
図4は、本実施形態の変形例に係るペリクル枠(枠本体)の部分断面図であり、
図3の部分断面図に対応するものである。
図4に示す枠本体は、一端面10にのみ、溝(溝12)が設けられた例である。
【0042】
また、
図1〜
図3に示した枠本体100では、溝12及び溝22の形状が、それぞれ、枠本体100の厚さ方向から見たときに、枠本体100の4辺に渡って一周する無端形状となっているが、溝の形状はこの態様には限定されず、有端形状であってもよい。
図5は、溝の形状が有端形状である、本実施形態の変形例に係る枠本体110を概念的に示す斜視図である。
図5に示すように、枠本体110の一端面10には、溝112が設けられている。枠本体の厚さ方向から見た溝112の形状は、枠本体110の4辺に渡って概ね一周する形状となっているが完全に一周する形状ではなく、端部116及び117を有する有端形状となっている。
枠本体110には、溝112の底面と外周面30との間を貫通する貫通孔114A及び114Bが設けられている。
図5では図示を省略したが、枠本体110の他端面には、枠本体100の他端面20と同様に、溝が設けられており、更に、他端面側の溝の壁面と外周面とを貫通する貫通孔が設けられている。
枠本体110において、上述した以外の構成は、枠本体100の構成と同様である。
【0043】
また、
図1〜
図3に示した枠本体100では、1つの端面につき1つの溝が設けられているが、本実施形態では、1つの端面につき2つ以上の溝が設けられていてもよい。1つの端面につき2つ以上の溝が設けられている場合、2つ以上の溝のそれぞれに、上記貫通孔が接続されていることが好ましい(例えば、
図6及び
図7参照)。
また、枠本体が矩形形状である場合には、枠本体と他の部材との間の押し付け合う力をより効果的に働かせる観点から、枠本体の4辺に溝が存在することが好ましい。
ここで、「枠本体の4辺に溝が存在する」態様には、例えば、
枠本体の4辺に渡って1つの溝が設けられている態様(例えば、
図1、
図2、及び
図5参照)、
枠本体の4辺のそれぞれにつき1つ以上の溝が設けられている態様(例えば、
図7参照)、
枠本体の3辺に渡る2つの溝が各々設けられ、かつ、2つの溝が4辺に渡って設けられている態様(例えば、
図6参照)、
等が含まれる。
【0044】
図6は、本実施形態の変形例に係る枠本体200を概念的に示す斜視図である。
図6に示すように、枠本体200の一端面10には、溝が2つ、即ち、溝212A及び溝212Bが設けられている。枠本体200には、溝212A及び溝212Bのそれぞれの底面と、外周面30と、の間を貫通する、貫通孔214A及び214Bがそれぞれ設けられている。
なお、
図6では図示を省略したが、枠本体200の他端面には、枠本体100の他端面20と同様に、溝が設けられており、更に、他端面側の溝の壁面と外周面とを貫通する貫通孔が設けられている。
枠本体200において、上述した以外の構成は、枠本体100の構成と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0045】
図7は、本実施形態の変形例に係る枠本体300を概念的に示す斜視図である。
図7に示すように、枠本体300の一端面10には、溝が4つ、即ち、溝312A、312B、312C、及び312Dが設けられている。枠本体300には、溝312A、312B、312C、及び312Dのそれぞれの底面と、外周面30と、の間を貫通する、貫通孔314A、314B、314C、及び314Dがそれぞれ設けられている。
なお、
図7では図示を省略したが、枠本体300の他端面には、枠本体100の他端面20と同様に、溝が設けられており、更に、他端面側の溝の壁面と外周面とを貫通する貫通孔が設けられている。
枠本体300において、上述した以外の構成は、枠本体100の構成と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0046】
以上の変形例は、適宜、組み合わせることもできる。
また、枠本体100、110、200、300のそれぞれの他端面20に存在する溝22の形状を、
図5〜
図7に示した一端面10側の溝の形状に変更することもできる。
【0047】
(その他の部材)
本実施形態のペリクル枠は、枠本体以外のその他の部材を備えていてもよい。
例えば、本実施形態のペリクル枠は、枠本体に加えて、更に、上記一端面に接する接着剤層を備えることができる。本実施形態のペリクル枠は、枠本体に加えて、更に、上記他端面に接する接着剤層を備えることもできる。
これらの接着剤層は、他の部材(ペリクル膜、原版、他のペリクル枠、等)との接着に用いられる層であり、接着剤を含む。
本実施形態において、「接着剤」は広義の接着剤を指し、「接着剤」の概念には、粘着剤も含まれるものとする。
接着剤としては、アクリル樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、ポリイミド樹脂接着剤、シリコーン樹脂接着剤、無機系接着剤、両面粘着テープ、シリコーン樹脂粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、等が挙げられる。
ペリクル膜または他のペリクル枠との接着に用いられる接着剤としては、アクリル樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、ポリイミド樹脂接着剤、シリコーン樹脂接着剤、無機系接着剤、が好ましい。
原版との接着に用いられる接着剤としては、両面粘着テープ、シリコーン樹脂粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤が好ましい。
【0048】
また、本実施形態のペリクル枠は、接着剤層上に、更に、剥離ライナー(剥離フィルムやセパレーターとも呼ばれている)を有していてもよい。剥離ライナーとしては、公知のものを特に制限なく用いることができる。
【0049】
<ペリクル>
本実施形態のペリクルは、上述した本実施形態のペリクル枠である第1ペリクル枠と、上記第1ペリクル枠の上記枠本体の上記一端面の側に支持されたペリクル膜と、を備える。
本実施形態のペリクルは、本実施形態のペリクル枠を備えるので、本実施形態のペリクル枠と同様の効果を奏する。
具体的には、本実施形態のペリクルでは、第1ペリクル枠の一端面(ペリクル膜を支持する側の端面)に上述した溝が設けられている。このため、本実施形態のペリクルは、ペリクル膜及び第1ペリクル枠の各々の前面及び背面に接触することなく製造できるという効果(以下、「効果1」とする)を奏する。
また、本実施形態のペリクルにおいて、第1ペリクル枠の他端面に上述した溝が設けられている場合には、本実施形態のペリクルは、ペリクル及び原版の各々の前面及び背面に接触することなく露光原版を製造できるという効果(以下、「効果2」とする)を奏する。
【0050】
上記ペリクル膜の材質には特に制限はなく、有機系材料であっても、無機系材料であっても、有機系材料と無機系材料との混合材料であってもよい。
有機系材料としては、フッ素系ポリマー等が挙げられる。
無機系材料としては、結晶シリコン(例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコン、等)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、グラファイト、アモルファスカーボン、グラフェン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
ペリクル膜は、上記材料を1種単独で含んでいてもよいし、2種以上を含んでいてもよい。
即ち、ペリクル膜としては、フッ素系ポリマー、結晶シリコン、ダイヤモンドライクカーボン、グラファイト、アモルファスカーボン、グラフェン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むペリクル膜が挙げられる。
中でも、EUV光等に対し高い透過性を有し、かつ、EUV光等の照射による分解及び変形を抑制できる点で、結晶シリコン、ダイヤモンドライクカーボン、グラファイト、アモルファスカーボン、グラフェン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機系材料を含むペリクル膜が好ましい。
一方、かかる無機系材料を含むペリクル膜は、非常に破れやすく、接触による傷及び発塵が生じやすい膜である。しかし、本実施形態によれば、ペリクル膜及び第1ペリクル枠の各々の前面及び背面に接触することなくペリクルを製造できるので、かかる無機系材料を含むペリクル膜を用いた場合であっても、接触によるペリクル膜の破れ、傷、発塵等を効果的に防止できる。
【0051】
また、ペリクル膜の構成は、単層構成であっても、二層以上からなる構成であってもよい。
ペリクル膜の厚さ(二層以上からなる場合には総厚)は、例えば、10nm〜200nmとすることができ、10nm〜100nmが好ましく、10nm〜70nmがより好ましく、10nm〜50nmが特に好ましい。
ペリクル膜の厚さが薄いと(例えば200nm以下であると)、EUV光等に対する透過性に優れる。
一方、ペリクル膜の厚さが薄いと(例えば200nm以下であると)、ペリクル膜が破れやすくなる傾向となる。しかし、本実施形態によれば、ペリクル膜及び第1ペリクル枠の各々の前面及び背面に接触することなくペリクルを製造できるので、厚さが薄い(例えば200nm以下の)ペリクル膜を用いた場合であっても、ペリクル膜の破れを効果的に防止できる。
【0052】
本実施形態のペリクルの好ましい態様は、上記第1ペリクル枠と上記ペリクル膜との間に、上記ペリクル膜に接する第2ペリクル枠を有する態様である。
この態様は、ペリクル膜が自立しにくい膜(例えば、シリコン結晶膜等の無機系材料を含むペリクル膜、厚さが薄いペリクル膜、等)である場合であっても、第2ペリクル枠によってペリクル膜の膜形状を保持しながらペリクルを製造できるという利点を有する。
【0053】
上記第2ペリクル枠を有する態様のペリクルは、ペリクル膜と第2ペリクル枠との複合部材を含むことが好ましい。
上記第2ペリクル枠を有する態様のペリクルは、第1ペリクル枠と上記複合部材とを固定することによって好適に作製される。
上記複合部材の一例として、ペリクル膜としてのシリコン結晶膜と第2ペリクル枠としての枠形状のシリコン基板(例えばシリコンウェハ)とからなる複合部材が挙げられる。ペリクルの製造において、上記一例に係る複合部材を用いた場合には、第2ペリクル枠(枠形状のシリコン基板)によってペリクル膜(シリコン結晶膜)の膜形状を保持しながらペリクルを製造できる。
この一例に係る複合部材は、例えば、まず、シリコン基板上にシリコン結晶膜を形成し、次いで、このシリコン基板のシリコン結晶膜非形成面側から、シリコン基板の中央部をエッチングしてこの中央部のシリコン基板を除去することにより作製できる。この方法で作製された複合部材の上記中央部にはシリコン結晶膜のみが残り、この中央部のシリコン結晶膜がペリクル膜となる。中央部の周りの周辺部にはシリコン結晶膜及びシリコン基板が残り、この周辺部に残ったシリコン基板によって第2ペリクル枠が形成される。シリコン基板として円形状のシリコン基板(例えばシリコンウェハ)を用いた場合には、円形状のシリコン基板及びシリコン結晶膜は、第1ペリクル枠との貼り合わせ前又は貼り合わせ後において、第1ペリクル枠の外形状と同じ外形状にカットされることが好ましい。このカットする操作は、「トリミング」と呼ばれている。
なお、ペリクル膜と第2ペリクル枠との複合部材が、上記一例以外の複合部材である場合も同様の方法によって作製できる。
【0054】
(ペリクルの一例)
次に、本実施形態のペリクルの一例を、
図8を参照しながら説明する。但し、本実施形態のペリクルはこの一例によって限定されることはない。
図8は、本実施形態のペリクルの一例(ペリクル500)の概略断面図である。
図8に示されるように、ペリクル500の構成は、ペリクル膜480と第2ペリクル枠482との複合部材490と、第1ペリクル枠420と、を貼り合わせた構成となっている。
第1ペリクル枠420は、枠本体400と、枠本体400の一端面に接する接着剤層460と、枠本体400の他端面に接する接着剤層462と、接着剤層462に接する剥離ライナー470と、を備えている。
枠本体400は、厚さ方向の一端面及び他端面の両方に、それぞれ前述の枠本体100と同様の溝を有している。更に、枠本体400は、前述の枠本体100と同様の貫通孔を有している。
第1ペリクル枠420の上記一端面は、前述の枠本体100における一端面10に対応する端面であり、第1ペリクル枠420の上記他端面は、前述の枠本体100における他端面20に対応する端面である。
【0055】
ペリクル500において、複合部材490と第1ペリクル枠420とは、複合部材490の第2ペリクル枠482と第1ペリクル枠420の接着剤層460とが接するように配置されている。
即ち、ペリクル500は、枠本体400を備える第1ペリクル枠420と、第1ペリクル枠420の枠本体400の一端面の側に支持されたペリクル膜480と、を備えている。そして第1ペリクル枠420とペリクル膜480との間に、ペリクル膜480に接する第2ペリクル枠482を備えている。
【0056】
ペリクル500は、複合部材490と第1ペリクル枠420とを固定する(貼り合わせる)ことによって作製されることが好ましい。
この際、枠本体400の一端面に設けられた溝の内部を、この溝に接続する貫通孔を通じて減圧することができるので、複合部材490及び第1ペリクル枠420の各々の前面及び背面に接触することなく、両者を固定することができる。
【0057】
なお、第1ペリクル枠420における剥離ライナー470は、接着剤層462の露出面を保護するために設けられている。
ペリクル500を用いて露光原版を作製する場合には、まず、ペリクル500の第1ペリクル枠420から剥離ライナー470を除去することで接着剤層462を露出させ、次いで、露出した接着剤層462によって、ペリクルと原版とを固定する。
【0058】
上記複合部材490としては、多結晶シリコン膜(p−Si膜)であるペリクル膜480とシリコン基板である第2ペリクル枠482との複合部材が好ましい。このような複合部材を製造する方法の例については、前述したとおりである。
上記枠本体400としては、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の枠部材が好ましい。
【0059】
また、接着剤層460に含まれる接着剤としては、アクリル樹脂接着剤、エポキシ樹脂接着剤、ポリイミド樹脂接着剤、シリコーン樹脂接着剤、無機系接着剤が好ましい。
また、接着剤層462に含まれる接着剤としては、両面粘着テープ、シリコーン樹脂粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤が好ましい。
【0060】
<ペリクルの製造方法>
本実施形態のペリクルの製造方法は、本実施形態のペリクル枠とペリクル膜とを、上記枠本体の上記一端面と上記ペリクル膜とが対向するように配置する配置工程と、上記外周面と上記一端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔を通じ、上記一端面に設けられた溝の内部を減圧することにより、上記ペリクル枠と上記ペリクル膜とを固定する固定工程と、を有する。
本実施形態のペリクルの製造方法によれば、前述したとおり、上記減圧により、ペリクル枠(枠本体)とペリクル膜との間に押し付け合う力を働かせることができるので、ペリクル枠及びペリクル膜の各々の前面及び背面に接触することなく、両者を固定することができる。
【0061】
本実施形態のペリクルの製造方法において、固定工程における減圧は、ペリクル枠及びペリクル膜が加圧雰囲気下に配置された状態で行うことが好ましい。
この態様によれば、ペリクル枠及びペリクル膜が配置される全体の雰囲気の圧力と、溝の内部の圧力と、の差(差圧)をより大きくすることができるので、ペリクル枠とペリクル膜との間に生じる、押し付け合う力をより大きくすることができる。このため、両者をより容易に固定することができる。
上記押し付け合う力(ペリクル枠全体に加わる力)は、1N以上が好ましく、2N以上がより好ましい。
上記押し付け合う力(ペリクル枠全体に加わる力)は、10N以上が更に好ましく、20N以上が特に好ましい。
上記押し付け合う力(ペリクル枠全体に加わる力)の上限には特に制限はないが、生産性などの点からは、例えば500N、好ましくは400Nである。
【0062】
上記製造方法において、前述の第2ペリクル枠を備えるペリクル(例えば前述のペリクル500)を作製する場合には、上記配置工程は、本実施形態のペリクル枠である第1ペリクル枠と、前述した複合部材(ペリクル膜と第2ペリクル枠との複合部材)と、を第1ペリクル枠の枠本体の一端面とペリクル膜とが第2ペリクル枠を介して対向するように配置する工程であってもよい。
この場合のペリクルの製造方法は、本実施形態のペリクル枠である第1ペリクル枠と、ペリクル膜とこのペリクル膜に接する第2ペリクル枠とを含む複合部材と、を第1ペリクル枠の枠本体の一端面と複合部材の第2ペリクル枠とが対向するように配置する配置工程と、貫通孔を通じて溝の内部を減圧することにより、第1ペリクル枠とペリクル膜とを第2ペリクル枠を介して固定する固定工程と、を有する製造方法である。
【0063】
<露光原版>
本実施形態の露光原版は、本実施形態のペリクルと、上記ペリクルの上記第1ペリクル枠の側に配置された原版と、を備える。
本実施形態の露光原版は、本実施形態のペリクルを備えるので、本実施形態のペリクルと同様の効果を奏する。
【0064】
本実施形態の露光原版において、上記第1ペリクル枠の上記枠本体は、更に、厚さ方向の他端面に設けられた溝と、外周面と上記他端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔と、を有することが好ましい。この態様の露光原版は、ペリクル及び原版の各々の前面及び背面に接触することなく製造することができる。
【0065】
ここで、原版としては、支持基板と、この支持基板上に積層された反射層と、反射層上に形成された吸収体層と、を含む原版を用いることができる。吸収体層がEUV光等を一部吸収することで、感応基板(例えば、フォトレジスト膜付き半導体基板)上に、所望の像が形成される。反射層は、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)との多層膜でありうる。吸収体層は、クロム(Cr)や窒化タンタル等、EUV光等の吸収性の高い材料でありうる。
【0066】
<露光原版の製造方法>
本実施形態の露光原版の製造方法は、本実施形態のペリクルであって、上記第1ペリクル枠の上記枠本体が、更に、厚さ方向の他端面に設けられた溝と、外周面と上記他端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔と、を有するペリクルと、原版と、を上記他端面と上記原版とが対向するように配置する配置工程と、上記外周面と上記他端面に設けられた溝の壁面との間を貫通する貫通孔を通じ、上記他端面に設けられた溝の内部を減圧することにより、上記ペリクルと上記原版とを固定する固定工程と、を有する。
本実施形態の露光原版の製造方法によれば、溝の内部の減圧により、ペリクルと原版との間に押し付け合う力を働かせることができるので、ペリクル及び原版の各々の前面及び背面に接触することなく、両者を固定できる。
【0067】
本実施形態の露光原版の製造方法において、上記固定工程における上記減圧は、上記ペリクル及び上記原版が加圧雰囲気下に配置された状態で行うことが好ましい。
この態様によれば、ペリクル及び原版が配置される全体の雰囲気の圧力と、溝の内部の圧力と、の差(差圧)をより大きくすることができるので、ペリクルと原版との間の押し付け合う力をより大きくすることができる。このため、両者をより容易に固定することができる。
ペリクルと原版との間の押し付け合う力(ペリクル枠全体に加わる力)は、1N以上が好ましく、2N以上がより好ましい。
ペリクルと原版との間の押し付け合う力(ペリクル枠全体に加わる力)は、10N以上が更に好ましく、20N以上が特に好ましい。
ペリクルと原版との間の押し付け合う力(ペリクル枠全体に加わる力)の上限には特に制限はないが、生産性などの点からは、例えば500N、好ましくは400Nである。
【0068】
<露光装置>
本実施形態の露光装置は、本実施形態の露光原版を備える。
このため、本実施形態の露光原版と同様の効果を奏する。
【0069】
本実施形態の露光装置は、露光光(好ましくはEUV光等、より好ましくはEUV光。以下同じ。)を放出する光源と、本実施形態の露光原版と、上記光源から放出された露光光を上記露光原版に導く光学系と、を備え、上記露光原版は、上記光源から放出された露光光が上記ペリクル膜を透過して上記原版に照射されるように配置されていることが好ましい。
この態様によれば、EUV光等によって微細化されたパターン(例えば線幅32nm以下)を形成できることに加え、露光光として異物による解像不良が問題となり易いEUV光等を用いた場合であっても、異物による解像不良が低減されたパターン露光を行うことができる。
【0070】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態の半導体装置の製造方法は、光源から放出された露光光を、本実施形態の露光原版の上記ペリクル膜を透過させて上記原版に照射し、上記原版で反射させるステップと、上記原版によって反射された露光光を、上記ペリクル膜を透過させて感応基板に照射することにより、上記感応基板をパターン状に露光するステップと、を有する。
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、露光光として異物による解像不良が問題となり易いEUV光等を用いた場合であっても、異物による解像不良が低減された半導体装置を製造することができる。
【0071】
図9は、本実施形態の露光装置の一例である、EUV露光装置800の概略断面図である。
図9に示されるように、EUV露光装置800は、EUV光を放出する光源831と、本実施形態の露光原版の一例である露光原版850と、光源831から放出されたEUV光を露光原版850に導く照明光学系837と、を備える。
露光原版850は、ペリクル膜812及びペリクル枠814を含むペリクル810と、原版833と、を備えている。この露光原版850は、光源831から放出されたEUV光がペリクル膜812を透過して原版833に照射されるように配置されている。
原版833は、照射されたEUV光をパターン状に反射するものである。
ペリクル枠814及びペリクル810は、それぞれ、本実施形態のペリクル枠及びペリクルの一例である。
【0072】
EUV露光装置800において、光源831と照明光学系837との間、及び照明光学系837と原版833の間には、フィルター・ウィンドウ820及び825がそれぞれ設置されている。
また、EUV露光装置800は、原版833が反射したEUV光を感応基板834へ導く投影光学系838を備えている。
【0073】
EUV露光装置800では、原版833により反射されたEUV光が、投影光学系838を通じて感応基板834上に導かれ、感応基板834がパターン状に露光される。なお、EUVによる露光は、減圧条件下で行われる。
【0074】
EUV光源831は、照明光学系837に向けて、EUV光を放出する。
EUV光源831には、ターゲット材と、パルスレーザー照射部等が含まれる。このターゲット材にパルスレーザーを照射し、プラズマを発生させることで、EUVが得られる。ターゲット材をXeとすると、波長13nm〜14nmのEUVが得られる。EUV光源が発する光の波長は、13nm〜14nmに限られず、波長5nm〜30nmの範囲内の、目的に適した波長の光であればよい。
【0075】
照明光学系837は、EUV光源831から照射された光を集光し、照度を均一化して原版833に照射する。
照明光学系837には、EUVの光路を調整するための複数枚の多層膜ミラー832と、光結合器(オプティカルインテグレーター)等が含まれる。多層膜ミラーは、モリブデン(Mo)、シリコン(Si)が交互に積層された多層膜等である。
【0076】
フィルター・ウィンドウ820,825の装着方法は特に制限されず、接着剤等を介して貼り付ける方法や、機械的にEUV露光装置内に固定する方法等が挙げられる。
光源831と照明光学系837との間に配置されるフィルター・ウィンドウ820は、光源から発生する飛散粒子(デブリ)を捕捉し、飛散粒子(デブリ)が照明光学系837内部の素子(例えば多層膜ミラー832)に付着しないようにする。
一方、照明光学系837と原版833との間に配置されるフィルター・ウィンドウ825は、光源831側から飛散する粒子(デブリ)を捕捉し、飛散粒子(デブリ)が原版833に付着しないようにする。
【0077】
また、原版に付着した異物は、EUV光を吸収、もしくは散乱させるため、ウエハへの解像不良を引き起こす。したがって、ペリクル810は原版833のEUV照射エリアを覆うように装着されている。EUV光はペリクル膜812を通過して、原版833に照射される。
【0078】
原版833で反射されたEUV光は、ペリクル膜812を通過し、投影光学系838を通じて感応基板834に照射される。
投影光学系838は、原版833で反射された光を集光し、感応基板834に照射する。投影光学系838には、EUVの光路を調製するための複数枚の多層膜ミラー835、836等が含まれる。
【0079】
感応基板834は、半導体ウエハ上にレジストが塗布された基板等であり、原版833によって反射されたEUVにより、レジストがパターン状に露光される。このレジストを現像し、半導体ウエハのエッチングを行うことで、半導体ウエハに所望のパターンを形成する。
【0080】
2014年5月2日に出願された日本国特許出願2014−095425の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。