特許第6279723号(P6279723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6279723柔軟性が改良されたZnAlMg−被覆金属板および対応する製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6279723
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】柔軟性が改良されたZnAlMg−被覆金属板および対応する製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/00 20060101AFI20180205BHJP
【FI】
   C23C28/00 C
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-521699(P2016-521699)
(86)(22)【出願日】2014年10月9日
(65)【公表番号】特表2016-540885(P2016-540885A)
(43)【公表日】2016年12月28日
(86)【国際出願番号】IB2014002059
(87)【国際公開番号】WO2015052572
(87)【国際公開日】20150416
【審査請求日】2016年5月31日
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2013/002239
(32)【優先日】2013年10月9日
(33)【優先権主張国】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディエス,リュック
(72)【発明者】
【氏名】フィルー,クレマンス
(72)【発明者】
【氏名】フェーイエール,グンヒルド
(72)【発明者】
【氏名】ベン・サード,マネル
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−212699(JP,A)
【文献】 特開2002−285312(JP,A)
【文献】 特開2006−328445(JP,A)
【文献】 特開2008−000910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/06,28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
− 鋼基材を供給する工程、
− 基材を、4.4重量%から5.6重量%のアルミニウムおよび0.3重量%から0.56重量%のマグネシウム、ならびに浴の残部はもっぱら亜鉛、本方法から生じる不可避的不純物および場合によりSi、Ti、Ca、Mn、La、CeおよびBiからなる群から選択される1つ以上の付加的な元素からなる浴に溶融めっきすることにより、少なくとも1つの面に金属コーティングを堆積する工程であって、金属コーティング中の各付加的な元素の重量含有率は0.3%未満であり、ニッケルの存在は排除される工程、
− 金属コーティングを固化する工程、
− 金属コーティングを表面処理する工程であって、
表面処理は、ヘキサフルオロチタン酸に基づく変換処理である、工程、
− 金属コーティングを塗装する工程であって、
金属コーティングの塗装は、メラミン架橋ポリエステル、イソシアネート架橋ポリエステルおよびビニルポリマーのハロゲン化誘導体からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを有し、電気泳動の塗料を除く塗料によって行われる、工程、
を含むプレペイント板の製造方法。
【請求項2】
浴が4.75重量%から5.25重量%のアルミニウムを含む請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
浴が0.44重量%から0.56重量%のマグネシウムを含む請求項1から2のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項4】
浴が付加的な元素を全く含まない請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
浴が370℃から470℃の間の温度である請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
金属コーティングの固化は、金属コーティングの固化の開始と固化の終了の間で15℃/秒以上の冷却速度で行われる請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
冷却速度は15℃/秒から35℃/秒の間である請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
4.4重量%から5.6重量%のアルミニウムおよび0.3重量%から0.56重量%のマグネシウム、ならびに残部はもっぱら亜鉛、方法から生じる不可避的不純物および場合によりSi、Ti、Ca、Mn、La、CeおよびBiからなる群から選択される1つ以上の付加的な元素からなる金属コーティングによって少なくとも1つの面が被覆される鋼基材を含むプレペイント板であって、該金属コーティング中の各付加的な元素の重量含有率は0.3%未満であり、ニッケルの存在は排除されており、さらに、該金属コーティングは少なくとも1つの塗膜によって被覆されており、
塗膜が、メラミン架橋ポリエステル、イソシアネート架橋ポリエステルおよびビニルポリマーのハロゲン化誘導体からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含み、電気泳動の塗料は除かれる、
プレペイント板が、金属コーティングと塗膜との界面にチタンを含む変換層を含む、プレペイント板。
【請求項9】
金属コーティングが4.75重量%から5.25重量%のアルミニウムを含む請求項に記載のプレペイント板。
【請求項10】
金属コーティングが0.44重量%から0.56重量%のマグネシウムを含む請求項またはに記載のプレペイント板。
【請求項11】
金属コーティングが付加的な元素を全く含まない請求項から10のいずれか一項に記載のプレペイント板
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AlおよびMgを含む金属コーティングであって、金属コーティングの残部はZn、不可避的不純物および場合によりSi、Ti、Ca、Mn、La、CeおよびBiから選択される1つ以上の付加的な元素であり、金属コーティングにおける各付加的な元素の重量含有率は0.3%未満である金属コーティングによってその少なくとも1つの面が被覆される基材を含む金属板に関する。
【背景技術】
【0002】
本質的に亜鉛および0.1重量%から0.4重量%を含む亜鉛めっき金属コーティングは、慣習的に、それらが腐食に対して提供する効果的な保護のために使用される。
【0003】
これらの金属コーティングについて現在の競合するコーティングは、特に亜鉛ならびにそれぞれ最大10重量%および最大20重量%の高さの比率で、マグネシウムおよびアルミニウムの添加を含む。
【0004】
この種の金属コーティングは、本願において全般的に亜鉛−アルミニウム−マグネシウムまたはZnAlMgコーティングと呼ぶものとする。
【0005】
マグネシウムの添加により金属コーティングで被覆された鋼の耐食性は大幅に改善し、それにより金属コーティングの厚さを減らすことができ、または一定の厚さによって経時にわたる腐食に対する保護の保証を高めることができる。
【0006】
ZnAlMgコーティングで被覆されたこれらの板は、例えば、自動車分野、電化製品または建設における用途が意図される。
【0007】
金属コーティング中のマグネシウムの添加により、コーティングの硬化が引き起こされ、被覆板が著しく曲げられた場合、コーティングの厚さに亀裂の出現がもたらされることが知られている。
【0008】
1重量%から10重量%のアルミニウムおよび0.2重量%から1重量%のマグネシウムを含む金属コーティングに0.005重量%から0.2重量%のニッケルを添加することにより、亀裂耐性を向上させることができることが特開2010−255084号から知られている。このように添加されたニッケルは、この元素の大部分が鋼と金属コーティングの間の界面に位置する特性を有し、変形領域における亀裂の形成を抑制するのに寄与する。しかし、ニッケルの添加はいくつかの欠点を有する。
− 金属コーティングの表面上でのニッケルの存在は、接触による腐食を加速し、
− 浴中の元素の数の増加によって浴の管理がずっと複雑になり、
− 鋼/金属コーティング界面へのニッケルの移行が困難であり、追加の製造上の制約をもたらし、導入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−255084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、耐食性の観点からZnAlMgコーティングの利点を保持しながら、その金属コーティングが激しい屈曲の際に亀裂を形成することがより少ないZnAlMg板を利用可能にすることによって、上述の問題を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のため、本発明の第1の目的は、少なくとも以下の工程:
− 鋼基材を供給する工程、
− 基材を、4.4重量%から5.6重量%のアルミニウムおよび0.3重量%から0.56重量%のマグネシウム、ならびに浴の残部はもっぱら亜鉛、方法から生じる不可避的不純物および場合によりSi、Ti、Ca、Mn、La、CeおよびBiからなる群から選択される1つ以上の付加的な元素から構成される浴に溶融めっきすることにより、少なくとも1つの面に金属コーティングを堆積する工程であって、金属コーティング中の各付加的な元素の重量含有率は0.3%未満であり、ニッケルの存在は排除される工程、
− 金属コーティングを固化する工程、
− 金属コーティングを表面処理する工程、
− 金属コーティングを塗装する工程、
を含むプレペイント板の製造方法である。
【0012】
本発明の方法はまた、個別にまたは組み合わせて考慮される、次の任意の特徴を含むことができる。
− 浴は4.75重量%から5.25重量%のアルミニウムを含み、
− 浴は0.44重量%から0.56重量%のマグネシウムを含み、
− 浴は付加的な元素を全く含まず、
− 浴は370℃から470℃の間の温度であり、
− 金属コーティングは、金属コーティングの固化の開始と固化の終了の間、15℃/秒以上の冷却速度で固化され、
− 冷却速度は15℃/秒から35℃/秒の間であり、
− 表面処理は、すすぎ、脱脂および変換処理から選択される工程を含み、
− 脱脂は12から13の間のpHで行われ、
− 変換処理はヘキサフルオロチタン酸に基づき、
− 金属コーティングの塗装は、メラミン架橋ポリエステル、イソシアネート架橋ポリエステル、ポリウレタンおよびビニルポリマーのハロゲン化誘導体からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを有し、電気泳動の塗料を除く塗料によって行われる。
【0013】
従って、提示された技術的課題に対する解決策は、特定の組成を有する塗膜および金属コーティングを組み合わせることからなることが理解されるであろう。驚くべきことに、この組み合わせは、それが塗膜で覆われている場合には、それが裸である場合よりも、本発明のZnAlMgコーティングが激しい屈曲においてより少ない亀裂を有するように相乗作用を示すことが本発明者らによって見出された。
【0014】
本発明の第2の目的は、4.4重量%から5.6重量%のアルミニウムおよび0.3重量%から0.56重量%のマグネシウムを含む金属コーティングであって、金属コーティングの残部はもっぱら亜鉛、方法から生じる不可避的不純物および場合によりSi、Ti、Ca、Mn、La、CeおよびBiからなる群から選択される1つ以上の付加的な元素であり、金属コーティング中の各付加的な元素の重量含有率は0.3%未満であり、金属コーティング中のニッケルの存在は排除され、金属コーティングは少なくとも1つの塗膜によって被覆される金属コーティングによって少なくとも1つの面が被覆される鋼基材を含むプレペイント板によって構成される。
【0015】
本発明に係る板はまた、個別にまたは組み合わせて考慮される、次の任意の特徴を含むことができる。
− 金属コーティングは4.75重量%から5.25重量%のアルミニウムを含み、
− 金属コーティングは0.44重量%から0.56重量%のマグネシウムを含み、
− 金属コーティングは付加的な元素を全く含まず、
− 塗膜は、メラミン架橋ポリエステル、イソシアネート架橋ポリエステル、ポリウレタンおよびビニルポリマーのハロゲン化誘導体からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含み、電気泳動の塗料は除かれ、
− チタンを含む変換層は、金属コーティングと塗膜との界面に位置する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の他の特徴および利点は以下の説明を読むことで明らかになるであろう。
【0017】
本発明は、限定的ではない説明として提供された以下の記述を読むことからよりよく理解されるであろう。
【0018】
板は、それ自体が少なくとも1つの塗膜で覆われた、金属コーティングでその面の少なくとも1つが被覆された鋼基材を含む。
【0019】
金属コーティングは、一般に25μm以下の厚さを有し、腐食から基材を保護するという目的を有する。
【0020】
金属コーティングは、アルミニウムおよびマグネシウムから構成され、金属コーティングの残部はもっぱら亜鉛、金属コーティング堆積方法から生じる不可避的不純物および場合によりSi、Ti、Ca、Mn、La、CeおよびBiから選択される1つ以上の付加的な元素であり、金属コーティング中の各付加的な元素の重量百分率は0.3%未満であり、ニッケルの存在は排除される。
【0021】
金属コーティング中のアルミニウムの重量含有率は4.4%から5.6%の間である。アルミニウムの重量含有率のこの範囲は、金属コーティングの微細構造中に二元共晶Zn/Alの形成を促進する。この共晶系は特に延性であり、柔軟な金属コーティングの達成を促進する。
【0022】
アルミニウム含有率は好ましくは4.75重量%から5.25重量%の間である。
【0023】
アルミニウムの重量含有率は、アルミニウムに富み、基材と金属コーティングの界面に位置する金属間層を考慮しないで測定されることに留意すべきである。この種の測定は、例えば、グロー放電分光分析によって実施することができる。化学溶解による測定は、金属コーティングおよび金属間層の同時溶解をもたらし、金属コーティングの厚みに応じて0.05%から0.5%のオーダーでアルミニウムの重量含有率を過大評価するであろう。
【0024】
金属コーティング中のマグネシウムの重量含有率は0.3%から0.56%の間である。0.3%未満では、マグネシウムにより提供される耐食性の改善はもはや十分ではない。0.56%を超えると、本発明の塗膜および金属コーティングの相乗作用はもはや観察されない。
【0025】
好ましくは、マグネシウムの重量含有率は、耐食性および柔軟性に関して最良の妥協点である、0.44%から0.56%の間である。
【0026】
不可避的不純物は、溶融亜鉛浴に供給するために使用されるインゴットに由来するか、または浴中の基材の通過から生じる。浴中の基材の通過に起因する最も一般的な不可避的不純物は、金属コーティングの0.8重量%まで、一般には0.4重量%%以下、一般には0.1重量%から0.4重量%の間の量で存在し得る鉄である。浴に供給するために使用されるインゴットに由来する不可避的不純物は、一般には、0.01重量%未満の含有率で存在する鉛(Pb)、0.005重量%未満の含有率で存在するカドミウム(Cd)、および0.001重量%未満の含有率で存在する錫(Sn)である。ニッケルは亜鉛めっき方法から生じる不可避的不純物ではないことに留意すべきである。
【0027】
異なる付加的な元素により、とりわけ金属コーティングの延性または基材に対する接着性を改善することが可能になる。金属コーティングの特性に及ぼすそれらの影響を熟知している当業者は、所望の追加の目的に応じてそれらを用いる方法を知るであろう。本発明の構成において、金属コーティングは付加的な元素としてニッケルを含まない。何故ならば、ニッケルは上記の欠点を有するからである。好ましくは、金属コーティングは付加的な元素を全く含まない。これにより、亜鉛めっき浴の管理を簡素化し、金属コーティング内に形成される相の数を最小限にすることが可能となる。
【0028】
最後に、板は塗膜を含む。
【0029】
塗膜は、一般にポリマーに基づき、塗料の少なくとも1つの層を含む。好ましくは、それらは、電気泳動の塗料を除く、メラミン架橋ポリエステル、イソシアネート架橋ポリエステル、ポリウレタン、ビニルポリマーのハロゲン化誘導体からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。これらのポリマーはそれらが特に柔軟であるという特性を有し、そのことは塗膜と金属コーティングの相乗作用を促進する。
【0030】
塗膜は、例えば、塗料の2つの連続する層、即ち、下塗層と、一般に板の上面に塗布される膜を製造する場合である仕上げ層、または一般に板の裏面に塗布される膜を製造する場合である塗料の単一の層によって形成することができる。他の数の層も特定の変形例で使用することができる。
【0031】
塗膜は、典型的には1μmから200μmの間の厚さを有する。
【0032】
場合により、金属コーティングと塗装膜の間の界面は、金属コーティングの表面に自然に存在する酸化アルミニウム/水酸化アルミニウムの変化、金属コーティングの表面に自然に存在する酸化マグネシウム/水酸化マグネシウムの変化およびそのクロム層重量(クロメート変換処理の場合)もしくはチタン層重量量(クロムなしの変換処理の場合)によって特徴付けられる変換層から選択される1つ以上の特性を含む。
【0033】
本発明に係る板を製造するには、例えば、以下の手順に従うことができる。
【0034】
設備は、単一のライン、または、例えば、それぞれ金属コーティングおよび塗膜の適用のために2つの異なるラインを含んでいてもよい。二つの異なるラインが使用される場合、それらは同じ場所または異なる場所に配置することができる。以下の説明では、一例として、2つの別個のラインが使用される変形例を検討する。
【0035】
金属コーティングの適用のための最初のラインでは、例えば、熱間圧延後、冷間圧延により得られた鋼基材を使用する。基材は溶融メッキにより金属コーティングを堆積させるための浴を通過するストリップの形態である。
【0036】
浴は4.4重量%から5.6重量%のアルミニウムおよび0.3重量%から0.56重量%のマグネシウムを含有する溶融亜鉛浴である。浴は、浴に供給するために使用されるインゴットに由来する不純物のような、方法から生じる不可避的不純物、および/またはSi、Ti、Ca、Mn、La、CeおよびBiからなる群から選択される1つ以上の付加的な元素も含むことができ、金属コーティング中の各付加的な元素の重量含有率は0.3%未満であり、ニッケルの存在は排除される。
【0037】
浴中の基材の通過に起因する最も一般的な不可避的不純物は、0.8重量%まで、一般には0.4重量%%以下、一般には0.1重量%から0.4重量%の間の量で存在し得る鉄である。浴に供給するために使用されるインゴットに由来する不可避的不純物は、一般には、0.01重量%未満の含有率で存在する鉛(Pb)、0.005重量%未満の含有率で存在するカドミウム(Cd)、および0.001重量%未満の含有率で存在する錫(Sn)である。ニッケルは亜鉛めっき方法に関連する不可避的不純物ではないことに留意すべきである。
【0038】
浴は、350℃から510℃の間、好ましくは370℃から470℃の間の温度である。
【0039】
金属コーティングの堆積後、コーティングの厚さを調整するために、基材は、例えば、基材の両面にガスを吹き付けるノズルによってぬぐわれる。好ましくは、ぬぐいとりガスは、例えば、リン酸マグネシウムおよび/またはケイ酸マグネシウムを含むもののような粒子も溶液も含まない。これらのぬぐいとりガスの添加は、本発明のプレペイント板の適切な柔軟性を低下させる要因となるであろう金属コーティングの固化、ひいてはその微細構造を変える。1つの変形例では、板の面の一方のみが最終的にコーティングで被覆されるように一面に堆積したコーティングを除去するために、ブラッシングが行われてもよい。
【0040】
次いで、コーティングはそれらが固化するように制御された方式で冷却される。コーティングまたは各コーティングの制御された冷却は、冷却区域によってまたは他の適切な手段によって行われ、好ましくは固化の開始(即ち、コーティングがちょうど液相温度未満の温度に達した時)から固化の終了(即ち、コーティングが固相温度に達した時)の間に、2℃/秒(自然対流にほぼ対応する)から35℃/秒の速度で行われる。35℃/秒を超える冷却速度はさらに結果を向上させることができないことがわかった。
【0041】
好ましくは、冷却は、金属コーティングの微細構造を改良し、従って、肉眼で見えるスパングルの金属コーティングの形成を防止するのに寄与し、塗装後に見えたままになる15℃/秒以上の速度で行われる、より好ましくは、冷却速度は15℃/秒から35℃/秒の間である。
【0042】
このように処理されたストリップは、その後、弾性を低下させ、機械的特性を確定し、それにスタンピング操作に適した粗さおよび得られるべき塗装表面の品質を与えるためにそれを硬化させるのに有利に働く、スキンパス工程に供することができる。
【0043】
ストリップは、必要に応じて、プレペインティングラインに送られる前に巻き取ることができる。
【0044】
コーティングの外表面は、そこで、表面処理工程に供される。この種の処理は、すすぎ脱脂および変換処理から選択される少なくとも1つの工程を含む。
【0045】
すすぎの目的は、汚れの粉状粒子、変換溶液の潜在的残渣、形成されたかもしれない石鹸を除去し、きれいな、反応性表面を達成することである。
【0046】
脱脂の目的は、表面から有機ごみ、金属粒子およびチリの全ての痕跡を除去することによって表面を洗浄することである。この工程はまた、別のやり方で表面の化学的性質を変えることなく、金属コーティングの表面上に存在し得る酸化アルミニウム/水酸化アルミニウムの層および酸化マグネシウム/水酸化マグネシウムの層を変更することを可能にする。この種の変更は、塗膜の耐食性および密着性を向上させる、金属コーティングおよび塗膜の間の界面の品質を向上させることができる。好ましくは、脱脂はアルカリ性環境で行われる。より好ましくは、脱脂溶液のpHは12から13の間である。
【0047】
変換処理工程は、化学的に表面と反応し、それにより金属コーティング上に変換層を形成することができる変換溶液の金属コーティングへの塗布を含む。これらの変換層は、塗料の接着性および耐食性を高める。変換処理は、好ましくは、クロムを含有しない酸性溶液である。より好ましくは、変換処理は、ヘキサフルオロチタン酸またはヘキサフルオロジルコン酸に基づく。
【0048】
可能性ある脱脂および変換処理工程は、すすぎ、乾燥等の他のサブ工程を含むことができる。
【0049】
場合により、表面処理は、金属コーティングの表面上に形成された酸化マグネシウム層および水酸化マグネシウム層を変更する工程も含むことができる。この変更は、とりわけ、変換溶液の塗布前の酸性溶液の塗布、または1から5の間のpHに酸性化された変換溶液の塗布、または表面への機械力の適用からなることができる。
【0050】
塗装は、例えば、ロールコーターを用いて塗料の層を堆積させることによって達成される。
【0051】
塗料層の各堆積は、塗料を架橋するためおよび/またはあらゆる溶媒を蒸発させ、それによって乾燥膜を得るために、一般に炉中での硬化が後に続く。
【0052】
プレペイント板と呼ばれる、このように得られた板は、ユーザーによって、切断し、場合により成形し、他の板または他の要素と組み立てられる前に再び巻き取ることができる。
【実施例】
【0053】
本発明を説明するために、非限定的な実施例に基づいて以下に説明する試験が行われた。
【0054】
本発明に従ったZnAlMg金属コーティングおよび塗膜の相乗作用−亀裂の減少
予め塗装されたまたはされていないZnAlMg板の亀裂に対する傾向を次のように評価する:
− T−曲げ試験を2001年4月の日付の規格EN13523−7に規定された板の試験片について行う。
− 曲げ軸に対する横断面を曲げの厚み内に取る。
− 曲げ断面を光学顕微鏡で高倍率で観察し、以下について記録を取る:
- 曲げの全断面にわたり鋼に到達する亀裂の数
- これらの亀裂の平均幅(μmで表される)
- これらの亀裂の幅の合計(μmで表される)
【0055】
必要な場合には、ZnAlMg金属コーティングの厚さ中の亀裂と塗膜の厚さ中の亀裂とが区別される。
【0056】
様々な組成を有する複数のZnAlMg板は、マグネシウムおよびアルミニウムを含有する溶融亜鉛浴中で可変厚さの金属基材を溶融亜鉛めっきし、その後冷却することによって、あるいは自然対流下で、または30℃/秒の冷却速度により得ることができた。ZnAlMg板は、次いで、以下のプロトコルを使用して予め塗装した。
− アルカリ脱脂、
− Henkel(R)により製造された変換処理Granodine(R) 1455の塗布、
− (乾燥膜上)5μmの公称厚さで、防食顔料を含有するポリエステル/メラミン型の下塗層の塗布、
− (乾燥膜上)20μmの公称厚さを有するポリエステル/メラミン型の仕上げ層の塗布
【0057】
次いで、2Tおよび3T T−曲げを裸のZnAlMg板およびプレペイント板で行い、分析した。
【0058】
比較のために2Tおよび3T T−曲げを他の種類のZnAlMgコーティングを含む裸の板またはプレペイント板でも実施した。
【0059】
表1および2は、それぞれ裸のZnAlMg板およびプレペイントZnAlMg板上で得られた結果をまとめている。表1および2の比較は、非常に驚くべきことに、本発明によるZnAlMgコーティングの厚さにおける亀裂は、板が予め塗装されている場合に、著しく少なく、かつ幅がより狭いことを示す。本発明に従うZnAlMgコーティングおよび塗膜の組合せにより、金属コーティングの亀裂幅の合計を2.5から11の係数で割ることが可能になり、本発明のZnAlMgコーティングのみがこの特殊性を示す。
【0060】
プレペイントZnAlMg板の耐食性
プレペイント板の耐食性を、ISO 12944−2の要件に合致する鋼上のクラスC5−M部位中で、EN 13523−19およびEN 13523−21に従って、自然暴露によって評価する。
【0061】
表3に示す自然暴露の一年後の結果は、本発明に従うプレペイントZnAlMg板は、耐食性の観点ZnAlMgコーティングの利点を保持することを示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】