(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載の蓄電装置に於いて、前記回収空間は、前記噴出した電解液の火炎に対して、前記回収口から進行方向に折返し経路となる空間を前記仕切られた回収空間毎に形成する仕切部材が配置されたことを特徴とすることを特徴とする蓄電装置。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンや軽油を燃料としたエンジンを動力源とする自動車以外に、エンジンとモーターを搭載したハイブリッド自動車が急増している。この背景には原油価格の上昇により、低燃費車の需要が増加したことや、環境負荷低減の意識向上によりCO
2排出量の少ないハイブリッド自動車の需要が増加したことにある。さらに、このようなハイブリッド車に加え、電気モーターのみを動力源とし、走行時のCO
2排出量がゼロである電気自動車も徐々に普及がはじまっている。
【0003】
ハイブリッド自動車や電気自動車の車体には、複数の単電池を配列して直列且つ並列接続した高電圧且つ大容量の蓄電装置が搭載されている。蓄電装置はセルと呼ばれる単電池を複数接続した組電池で構成され、密閉容器に収納している。また蓄電装置に搭載する単電池は、従来のニッケル・水素電池から一般家庭でも充電が可能なリチウムイオン電池へ移行しており、今後も単電池の高性能化が期待されている。
【0004】
また、航空機の分野においても、小型で容量が大きく軽量化に寄与するリチウムイオン電池を用いた蓄電装置を搭載した航空機が実用化され、運用を開始している。
【0005】
更に、近年、一般住宅、オフィス、公共施設などを対象にした定置型のリチウムイオン電池を用いた蓄電装置も急速に広がっており、リチウムイオン電池を用いたことで、数百Whから2〜3kWh程度の蓄電容量をもった建物内に簡単に設置して使用可能な小型の蓄電装置を実現している。
【0006】
定置型の蓄電装置は、建物内に引き込まれた商用交流系統のコンセント等に接続して入力した交流電力を直流電力に変換して蓄電し、テレビ、パーソナルコンピュータ等の電子機器、照明機器といった日常生活で重要度の高い負荷、所謂重要負荷を接続しておくことで、商用交流系統の停電時は勿論のこと、平常時にも、必要に応じて蓄電した直流電力を交流電力に変換して出力して動作するようにしている。
【0007】
また、商用交流系統からの交流電力による蓄電装置の蓄電を、電気料金が安くなる深夜の時間帯に行い、消費電力が最大となる昼間の電力ピークの時間帯に、蓄電装置に蓄電した直流電力を交流電力に変換して負荷へ供給し、商用交流系統からの電力消費を低減し、節電と経済的な電力の活用を可能としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このようなリチウムイオン電池を用いた蓄電装置にあっては、リチウムイオン電池を複数接続して大容量を実現しているが、リチウムイオン電池が内部ショートや過充電等の種々の原因で熱暴走した場合、電池温度が著しく上昇し、電池内部の圧力が上昇し、その結果、リチウムイオン電池の破裂や発火が起き、蓄電装置を火元とした電気火災が発生する恐れがある。
【0010】
蓄電装置に収納したリチウムイオン電池は電解液にジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの可燃性液体を用いており、可燃性液体がある限り、条件がそろえば発火する。リチウムイオン電池の発火のメカニズムは熱暴走であり、セルの内部短絡、セル内部の異常発熱、外部短絡、外部異常過熱、過大電流、過大電圧などがトリガとなり、セル内部での温度上昇が発生し、この発熱がある限界値を越えると、その挙動はコントロール出来ずに連続的に、昇温反応を起こし昇温現象が発生する。これが熱暴走である。
【0011】
リチウムイオン電池の熱暴走時の挙動は、短時間に急激な昇温反応を示し、電解液が急激に熱せられ、膨張し、ガス化して噴出し、セルに設けた安全弁が作動(破裂)して電解液を噴出し、電解液が可燃性液体であることからセルから火炎が噴出する。
【0012】
セルから噴出する火炎の度合いはリチウムイオン電池の充電量により異なることが、各種の火災実験の結果として報告されている。リチウムイオン電池の発熱分解時に放出される酸素量は、充電状態の違いで異なっており、満充電(SOC100%)時がもっとも酸素量放出が多いといわれている。このため充電量の多い電池と充電量の少ない電池では酸素放出量の違いが存在し、充電量が多いほどセルから火炎が強く噴出し、満充電の場合には爆発的な火炎の噴出となっている。
【0013】
密閉容器を使用した蓄電装置に収納された複数のリチウムイオン電池のいずれかが熱暴走により発火した場合、セルから噴出した火炎は容器内の空き空間に広がって容器内部を火炎で満たし、容器内の酸素が火炎により消費されても、セル自体からの酸素放出が続くために噴出する電解液の火炎は衰えることがなく、蓄電装置の内部温度が上昇し、隣接するリチウムイオン電池が加熱され、その結果、連鎖的に熱暴走を起こす可能性がある。またセルから噴出した電解液は高い電気導電性をもち、電解液が蓄電内部に噴出した場合には、リチウムイオン電池の電極端子間や接続バーの間に電解液が付着すると外部短絡を引き起こし、そこに過大な短絡電流が流れることで、隣接するリチウムイオン電池が連鎖的に熱暴走を起こす可能性がある。
【0014】
このような熱暴走による発火の問題に対しては、各種の安全対策がとられ、安全性の向上が日々図られている。この点に関し「電池の安全性向上が見られるのは事実である。しかし、火災・爆発に至る確率を小さくしているのであって、火災・爆発が起こらないことを意味するものではない」とする学識経験者の見解も示されている。
【0015】
しかしながら、従来、自動車、航空機、更に建物にリチウムイオン電池を収納した蓄電装置を設置した場合の電気火災に対し、密閉容器の外部で起きた火災に対応して消火抑制する消火装置や消火設備は各種提案され実用化されているが、密閉容器内で起きたリチウムイオン電池の熱暴走に起因した発火に対応して直接的に消火抑制するために有効な消火装置や消火設備は実現されていない。
【0016】
また蓄電装置の電気火災が発生した際に、従来の水系消火設備による消火活動は、火災を消火或いは抑制するどころか、感電事故等の二次災害を誘発する危険性が高い。
【0017】
本発明は、蓄電装置の容器内でリチウムイオン電池の異常に伴う火災が起きた場合の連鎖的な火災の拡大を抑制可能とする構造を備えた蓄電装置
及びそれを使用する移動体又は施設を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(回収空間が単電池毎に仕切られた蓄電装置)
本発明は、容器本体と蓋部材で構成された収納容器に安全弁を備えた複数の単電池が収納された蓄電装置に於いて、
複数の単電池の安全弁に相対して、安全弁の作動で噴出する電解液を回収する回収手段を備え、
回収手段は、単電池の安全弁に相対した隔壁で仕切られた回収空間であり、安全弁に相対した隔壁位置に回収口が開口し、
回収空間は、隔壁により複数の単電池毎に仕切られた、複数の単電池が配置された空間から独立した空間であ
って、容器本体、安全弁に相対した隔壁及び蓋部材によって密閉構造が形成されることを特徴とする。
【0020】
回収空間は、隣接する回収空間との仕切壁の
下部に連通口を備え、隣接する前記回収空間が連結される。
【0021】
(回収空間
の折返し経路
)
回収空間は、噴出した電解液の火炎に対して、回収口から進行方向に折返し経路となる空間を
仕切られた回収空間毎に形成する仕切部材が配置される。
【0022】
(回収空間に消炎金属網を備えた蓄電装置)
本発明は、容器本体と蓋部材で構成された収納容器に安全弁を備えた複数の単電池が収納された蓄電装置に於いて、
複数の単電池の安全弁に相対して、安全弁の作動で噴出する電解液を回収する回収手段を備え、
回収手段は、噴出する電解液を回収する回収口が安全弁に相対した位置に開口した回収空間であり、
回収空間は、噴出した電解液の火炎を消失させる消炎金属網が配置され
、
消炎金属網は、噴出した電解液の火炎の受け側から当該火炎の進行方向に向うにつれて網目サイズが小さくなる網目構造を備えたことを特徴とする。
【0023】
(電解液の吸着フィルタ)
回収空間は、消炎金属網の背後に、電解液を吸着して保持する耐熱繊維を用いた吸着フィルタが配置される。
【0024】
(耐熱繊維)
耐熱繊維は、グラスウール(短いガラス繊維でできた、綿状の素材)である。
【0025】
(回収空間に消火手段を備えた蓄電装置)
本発明は、容器本体と蓋部材で構成された収納容器に安全弁を備えた複数の単電池が収納された蓄電装置に於いて、
複数の単電池の安全弁に相対して、安全弁の作動で噴出する電解液を回収する回収手段を備え、
回収手段は、噴出する電解液を回収する回収口が安全弁に相対した位置に開口した回収空間であり、
回収空間は、噴出した電解液による加圧で粉末消火剤を回収空間に放出する消火手段を備えたことを特徴とする。
また、本発明は、これらの蓄電装置を使用する航空機
及び自動車
を含む移動体
、住宅
又は住宅以外の施設である。
【発明の効果】
【0027】
(基本的な効果)
本発明の蓄電装置は、複数の単電池、例えばリチウムイオン電池の何れかが熱暴走して安全弁の作動(破裂)により電解液の火炎を噴出した場合、安全弁に相対して、安全弁の作動で噴出する電解液を回収する回収手段を設けたため、回収手段は例えば安全弁に相対して回収口を形成した隔壁で仕切られた密閉構造の回収空間であり、この回収空間に安全弁から噴き出した電解液の火炎が吹き込むことで、他のリチウムイオン電池に電解液の火炎が広がって加熱することを防止し、他のリチウムイオン電池の加熱による連鎖的な熱暴走を防止可能とし、熱暴走したリチウムイオン電池のみの火災に留めることを可能とする。
【0028】
また、熱暴走したリチウムイオン電池から噴出した霧化した電解液は回収空間に噴き出して閉じ込められ、電解液が他のリチウムイオン電池の電極端子間やバスバー間に付着することがなく、電解液の付着による外部短絡による連鎖的な熱暴走を確実に防止可能とする。
【0029】
回収空間は、複数のリチウムイオン電池毎に仕切られ、熱暴走を起こしたリチウムイオン電池から噴出した電解液の火炎を回収空間に導入した場合、隣接する回収空間の回収口から他のリチウムイオン電池側に熱風が吹き出すことを阻止し、他のリチウムイオン電池の加熱による連鎖的な熱暴走を防止可能と
する。
【0030】
(回収空間の折返し経路による効果)
また、回収空間に、仕切部材を配置して、回収口から奥行き方向に折返し経路となる空間を形成するようにしたため、回収口から吹き込んだ電解液火炎の噴流が移動する空間長を実質的に長くし、火炎を途中で消失させ、霧化した電解液を電池収納側に戻らないように回収可能とする。
【0031】
(消炎金属網による効果)
また、回収空間に、リチウムイオン電池の安全弁の作動で噴出した電解液の火炎を消失させる消炎金属網を配置したため、回収口から吹き込んだ電解液の火炎は消炎金属網に当って火炎が途中で消失し、霧化した電解液として回収可能とする。
【0032】
また、消炎金属網は、電解液火炎の受け側から奥行き方向に向うにつれて網目サイズが小さくなる網目構造を備えているため、霧化している電解液の微粒子は、小さくなってく網目に付着することで保持できる。
【0033】
(吸着フィルタによる効果)
また、消炎金属網の背後に、電解液を吸着して保持する耐熱繊維、例えばグラスウールを用いた吸着フィルタを配置するようにしたため、消炎金属網を通ってきた電解液の微粒子を確実に吸着して保持できる。
【0034】
(消火手段による効果)
また、回収空間に、リチウムイオン電池の安全弁の作動で噴出した電解液による加圧で粉末消火剤をリチウム
イオン電池の空き空間に放出する消火手段を設けるようにしたため、リチウムイオン電池から噴出している火炎に粉末消火剤を直接放出して消火抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[消火装置の構成]
図1は本発明による蓄電装置の外観を示した斜視図、
図2は蓄電装置の奥行き方向の断面を示した断面図、
図3は蓄電装置の収納容器蓋を外して収納容器本体の内部を示した平面図、
図4は
図2のX−X断面を示した断面図、
図4は蓄電装置の横方向の断面を示した断面図である。
【0037】
(蓄電装置の概要)
図1、
図2及び
図3に示すように、蓄電装置10は例えば航空機用であり、上部に開口した箱型の収納容器本体12と、収納容器本体12の開口に装着してビスなどで固定した収納容器蓋14を備え、収納容器本体12と収納容器蓋14で蓄電装置10の収納容器を構成する。なお、蓄電装置10は、電池モジュール或いは電池パックとも呼ばれる。
【0038】
収納容器本体12の正面には、蓄電装置10の正極出力端子16aと負極出力端子16b、及び各種の制御信号や検出信号を入出力する信号線を接続するコネクタ18を取付けている。
【0039】
収納容器本体12には、組電池として例えば8個のリチウムイオン電池20を収納している。リチウムイオン電池20は、単電池(電池セル)として知られた非水電解質の二次電池であり、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金で形成した矩形箱型の外装容器に、非水電解液と共に電極体を収納している。
【0040】
リチウムイオン電池20の電極体は、例えば、正極板及び負極板をその間にセパレータを介在させて渦巻き状に捲回すことにより、矩形形状に形成している。リチウムイオン電池20の外装容器の上端には正極及び負極となる一対の電極端子22を取出している。またリチウムイオン電池20の一方の側壁には安全弁25を設けている。安全弁25は外装容器に設けた開口を薄いアルミニウム板で閉鎖するか、或いは安全弁25の部分を薄肉に加工しており、熱暴走などにより内部圧力が増加した場合、所定圧力で作動(破裂)して外装容器の破裂を防止する。
【0041】
ここで、リチウムイオン電池20の外形サイズは、例えば(高さ=170mm〜180mm)×(横幅=130mm〜140mm)×(奥行=50mm〜60mm)程度となる。また蓄電装置の外形サイズは、例えば(高さ=200mm〜220mm)×(横幅=270mm〜290mm)×(奥行=320mm〜340mm)程度となる。
【0042】
収納容器本体12の内部には、8個のリチウム
イオン電池20を2列に4個並べて収納しており、正極と負極の電極端子22が交互に向かい合うように収納し、これにより隣接する電池間の正極と負極の電極端子22の間にプレート状のバスバー(電極接続バー)24を装着し、8個のリチウムイオン電池を直列接続し、直列接続した場合の両端となる正極と負極の電極端子22をバスバー24により縦置きで収納した回路基板28の一方に連結している。
【0043】
リチウムイオン電池20の平均セル電圧を例えば3.5ボルトとすると、
図3に示す8個のリチウムイオン電池20の直列接続により、組電池の電圧は28ボルトとなり、蓄電装置10の正極出力端子16aと負極出力端子16bの電圧も28ボルトとなる。なお、リチウムイオン電池20の数は、必要とする組電池の必要電圧に対応した数とする。また、複数のリチウムイオン電池20の接続は、所定数のリチウムイオン電池を並列接続した組電池とし、この組電池を複数直列接続しても良い。
【0044】
回路基板28にはバッテリーマネジメントユニット(MBU)が実装され、電池電圧、内部温度を監視し、異常を検出した場合は、充電を停止するように外部に設置した充電器に信号を出力する機能を備えている。また回路基板28の一方には、火災検出手段として、リチウムイオン電池20の熱暴走による火災を検出する火災検出回路部を設けている。
【0045】
リチウムイオン電池20の安全弁25は例えば正極の電極端子22側の側面に設けており、収納容器本体12に組み込んだ場合、
図3の平面図に示すように、安全弁25は外側又は他の電池と相対する中央側に位置している。
【0046】
[回収部の概要]
図3、
図4及び
図5に示すように、平面から見て収納容器本体12に4個を2列に並べて収納したリチウムイオン電池20の外側及び相対する中央側には、リチウムイオン電池20の安全弁25に相対して、安全弁25の作動で噴出する電解液を回収する回収手段として機能する回収部30を8箇所に分けて設けている。
【0047】
例えば
図4の図示右上隅に収納したリチウムイオン電池20を例にとると、その安全弁25の相対位置に設けた回収部30は、収納容器本体
12、その内側に配置した隔壁34、隔壁34の途中に配置した仕切壁36、及び収納容器蓋14の装着によって密閉構造となる回収空間を形成している。
【0048】
リチウムイオン電池20の安全弁25に相対した回収部30の隔壁34の位置には回収口32を形成し、安全弁25から噴出した電解液の火炎を回収口32から収納空間に吹き込むようにしている。回収口
32は
図2に示したリチウムイオン電池20の安全弁25と同じ円形の開口であり、安全弁25の径より大きい所定サイズの径としている。
【0049】
蓄電装置10の外側に位置する4箇所の回収部30の構造は、配置場所により長手方向のサイズは異なるが、基本的に同じ構造を備えている。
【0050】
また、蓄電装置10の中央部に位置する4箇所の回収部30は、長手方向に配置した3枚の隔壁34、隔壁34の途中に設けた2枚に仕切壁36、電池収納部を仕切る隔壁35を収納容器本体
12内に起立して配置し、そこに蓋部材33を装着することにより、4箇所に分けた密封構造となる回収空間を形成し、リチウムイオン電池20に設けた安全弁25に相対した隔壁34の位置に回収口32を形成している。
【0051】
(火災検出手段)
図6は
図4のリチウムイオン電池を取り除いて火災検出回路部に使用する熱感知ケーブルの布設状態を示した平面断面図、
図7は火災検出回路部の実施形態を示した回路図である。
【0052】
図7に示すように、内側に位置する回路基板28には火災検出回路部62が設けられており、そこから火災センサとして機能する熱感知ケーブル64を引き出ている。熱感知ケーブル64は、ビニールなどの樹脂で絶縁被覆した2本の撚られた信号線であり、2本の信号線の間に火災検出回路部62から電圧を印加しており、火災による熱を受けた場合の絶縁被覆の溶融により2本の信号線が短絡状態に接触し、感知電流が流れることで火災を検出する。
【0053】
火災検出回路部62から引き出した熱感知ケーブル64は、リチウムイオン電池20に対応して配置した8箇所の回収部30における回収口32の中を通過するように布線しており、熱暴走したリチウムイオン電池20の安全弁25の作動(破裂)で噴出する電解液の火炎を受けて火災を検出可能としている。
【0054】
図7に示す火災検出回路部62は、トランジスタ66、リレー68、抵抗70,72,74を備え、トランジスタ66は、抵抗72,74の分圧電圧を、抵抗70を介してベースに印加しており、熱感知ケーブル64には抵抗72,74を介して電源電圧+Vcを常時、印加している。ここで、通常監視状態でトランジスタ66はオフであり、また熱感知ケーブル64の一方の信号線には電源電圧のみが印加されるだけで電流は流れておらず、消費電量は漏れ電流などに起因した極く僅かな電流だけである。
【0055】
トランジスタ66はPNPトランジスタであり、コレクタ側に負荷としてリレー68を接続しており、通常監視状態にあっては、熱感知ケーブル64は2本の信号線のビニールなどによる絶縁被覆で開放状態にあり、電源から電流は流れず、トランジスタ66はエミッタ,ベース間の電圧が0ボルトであることからオフ状態となっている。
【0056】
リレー68は、その常開リレー接点76をトランジスタ66のコレクタ・電源ライン間に接続し、ラッチ回路を形成している。更に、リレー68は、外部に火災検出信号を出力するための常開リレー接点78を有する。
【0057】
リチウムイオン電池20の熱暴走で作動した安全弁25から電解液の火炎が噴き出した場合、安全弁25に相対した回収部30の回収口32を通して布線している熱感知ケーブル64が火炎を受け、絶縁被覆であるビニールが溶けて2本の信号線が接触状態になると、抵抗72,74を介して熱感知ケーブル64に電流が流れる。このため、抵抗74に生ずる電圧によりトランジスタ66のエミッタ・ベース間にバイアス電圧が加わり、これによってトランジスタ66がオンしてリレー68を作動する。
【0058】
リレー68が作動すると常開リレー接点76が閉じてリレー68をラッチし、また常開リレー接点78が閉じて外部に火災検出信号を出力し、外部装置で蓄電装置10の火災発生を報知させる。
【0059】
(リチウムイオン電池の熱暴走で電解液が噴出した場合の機能)
図8はリチウムイオン電池の熱暴走で電解液が噴出した場合の回収部の機能を示した説明図であり、
図8(A)に収納容器本体の平面の一部を示し、
図8(B)に断面の一部を示している。
【0060】
図8(A)の図示右上隅に収納しているリチウムイオン電池20が熱暴走を起して安全弁25が作動(破裂)し、充填している電解液が発火して火炎を激しく噴き出す火災を起こしたとすると、安全弁25から噴出した電解液の火炎は、相対する回収口32から回収部30の密閉空間に吹き込み、収納容器本体12の内壁に当って回収空間内に拡散する。これにより安全弁25から噴出した電解液の火炎は回収部30内に封じ込まれ、リチウムイオン電池20を収納している収納容器内の空き空間に電解液の火炎が広がることがなく、他のリチウムイオン電池20を加熱して連鎖的に起きる熱暴走を確実に防止する。
【0061】
また、回収口32から回収部30に吹き込んだ電解液の火炎は、収納容器本体12の内壁面に当って拡散し、火炎を受けた収納容器本体12の壁面は高温に加熱されるが、リチウムイオン電池
20に対し収納容器本体12の壁面は回収部30を介して位置するため、十分な断熱作用が得られ、収納容器本体12の壁面が高温に加熱されても、内部に収納しているリチウムイオン電池20の加熱を十分に抑制できる。
【0062】
また
図4に示す蓄電装置
10の中央に4箇所に分けて設けた回収部30についても、何れかのリチウムイオン電池20が熱暴走を起こして電解液の火炎を噴出して相対する回収口32から
回収部30に吹き込んだ場合、相対する位置に収納しているリチウムイオン電池20の間には別の回収部30が介在し、相対した位置に収納している他のリチウムイオン電池20の過熱を十分に抑制できる。
【0063】
また回収部30に吹き込んだ電解液の火炎は、拡散により炎が消え、電解液の噴霧となるが、回収部30を仕切る壁面に当ってそこに付着し、高い導電性をもつ電解液が蓄電装置10内に噴出してリチウムイオン電池20の電極端子間やバスバー間に付着して外部短絡による熱暴走の連鎖を引き起こすことも、確実に防止する。
【0064】
(折返し経路を設けた蓄電装置の実施形態)
図9は本発明による蓄電装置の他の実施形態を示した説明図であり、この実施形態は、回収部に折返し経路の構造を設けたことを特徴とする。
【0065】
図9(A)は蓄電装置の一部の断面を示し、収容容器本体12に収納したリチウムイオン電池20の側壁に設けた安全弁25に相対して回収口32を形成した回収部30を、密閉構造の回収空間として設けている。この回収部30の内部には更に仕切壁40を起立配置して回収部30a,30bに分け、仕切壁40の下部に連通口42を設けて、回収部30a,30bを繋げている。
【0066】
図9(B)はリチウムイオン電池20の熱暴走で電解液が噴出した場合の回収部の機能を示し、安全弁25から噴出した電解液の火炎は、回収口32から回収部30aに吹き込んだ後に下方に向かい、連通口42を通過して回収部30bに下から吹き込む。このように2つに分けて形成した回収部30a,30bを連通口42で繋いだ折返し経路構造とすることで、安全弁25から噴出した電解液の火炎が移動する経路長を実質的に長くすることができ、経路長を長くすることで、電解液の火炎が途中で消え、霧化した電解液が奥に向って移動することとなり、その途中で電解液の微粒子は壁面に付着して保持され、リチウムイオン電池20の収納している空き空間に噴出することを確実に防止する。
【0067】
(消炎金属網を設けた蓄電装置の実施形態)
図10は本発明による蓄電装置の他の実施形態を示した説明図であり、この実施形態は、回収部に消炎金属網を設けたことを特徴とする。
【0068】
図10(A)は蓄電装置の一部の断面を示し、収容容器本体12に収納したリチウムイオン電池20の安全弁25に相対して設けた回収部30に、消炎金属網44を配置している。図示の回収部30にあっては、回収口32の上方及び下方に消炎金属網44を配置している。なお、
図5に示した中央部の回収部30については、回収口32の上側にスペースがないことから、回収口32の下方にのみ消炎金属網を配置する。
【0069】
消炎金属網44は、電解液の火炎を受ける側から奥行き方向に向うにつれて網目サイズが小さくなる網目構造とする。この網目構造により、
回収口32から吹き込んでくる電解液の火炎を粗い網目により少ない抵抗で導入し、奥に進むにつれて網目が細かくなることで、火炎を遮断して消炎する作用を強くすると共に、霧化している電解液を付着し易くする。具体的な網目構造としては、例えば網目サイズの異なる複数の金属網を積層した構造とすればよい。
【0070】
図10(B)はリチウムイオン電池20の熱暴走で電解液が噴出した場合の回収部の機能を示し、安全弁25から噴出した電解液の火炎は、回収口32からに吹き込んだ後に情報及び下方に配置している消炎金属網44に入り、消炎金属網44を通過する間に火炎が遮断されて消え、また火が消えて霧化状態となった電解液を付着して保持し、リチウムイオン電池20の収納している空き空間に噴出することを確実に防止する。
【0071】
(消炎金属網及び吸着フィルタを設けた蓄電装置の実施形態)
図11は本発明による蓄電装置の他の実施形態を示した説明図であり、この実施形態は、回収部に消炎金属網及び吸着フィルタを設けたことを特徴とする。
【0072】
図11(A)は蓄電装置の一部の断面を示し、収容容器本体12に収納したリチウムイオン電池20の側壁に設けた安全弁25に相対して設けた回収部30に、消炎金属網44と吸着フィルタ46を配置している。図示の
回収部30にあっては、回収口32の上方及び下方に消炎金属網44を配置し、その背後に吸着フィルタ46を配置している。なお、
図5に示した中央部の回収部30については、回収口32の上側にスペースがないことから、回収口32の下方にのみ消炎金属網と吸着フィルタを配置する。
【0073】
消炎金属網44は、
図10の実施形態と基本的に同じであり、電解液の火炎を受ける側から奥行き方向に向うにつれて網目サイズが小さくなる網目構造とし、この網目構造により吹き込んでくる電解液の火炎を粗い網目により少ない抵抗で導入し、奥に進むにつれて網目が細かくなることで、火炎を遮断して消炎する作用を強くしている。
【0074】
吸着フィルタ46は、例えば短いガラス繊維でできた綿状の素材であるグラスウールを使用し、消炎金属網44を通過してくる霧化した電解液の微粒子を吸着して保持する。
【0075】
図11(B)はリチウムイオン電池20の熱暴走で電解液が噴出した場合の回収部の機能を示し、安全弁25から噴出した電解液の火炎は、回収口32から回収部30に吹き込んだ後に上方及び下方に配置している消炎金属網44に入り、消炎金属網44を通過する間に火炎が遮断されて消える。消炎金属網44を通過した霧化状態にある電解液の微粒子はグラスウールを使用した吸着フィルタ46に入って吸着されことで保持され、リチウムイオン電池20の収納している空き空間に電解液が噴出することを確実に防止する。
【0076】
(消火手段を設けた蓄電装置の実施形態)
図12は本発明による蓄電装置の他の実施形態を示した説明図であり、この実施形態は、回収部に消火手段を設けたことを特徴とする。
【0077】
図12(A)は蓄電装置の一部の断面を示し、収容容器本体12に収納したリチウムイオン電池20の安全弁25に相対して設けた回収部30の中に仕切板48を
設けて2つに仕切り、後方に消火剤収納部50を形成し、そこに粉末消火剤52を充填している。粉末消火剤52としては、木材、紙、繊維などの普通火災A、灯油、ガソリンなどの油類の火災B、配電盤、コンセントなどの電気火災Cに対応したABC式の粉末消火剤とする。
【0078】
仕切板48の下部には複数の加圧孔54が開口され、回収口32から吹き込んだ電解液の火炎噴流を消火剤収納部50に導入して加圧するようにしている。この
加圧孔54の出口側には、電解液の噴流で破壊する封止部材56を設け、粉末消火剤52の防湿と漏出し防止のために封止している。また消火剤収納部50を仕切る仕切板48の上部には、粉末消火剤52を放出するための複数の放出孔58が開口している。この放出孔58の出口側にも、粉末消火剤52の加圧で破壊する封止部材60を設け、粉末消火剤52の防湿と漏出し防止のために封止している。封止部材56,60としては、アルミニウム箔、合成樹脂薄膜などを使用し、加圧孔54,放出孔58の噴出側に接着固定する。
【0079】
放出孔58と回収口32の間には、回収口32を斜め下向きに覆うようにガイド部55を設け、ガイド部55の先端と仕切板48の間に隙間を形成している。消火剤収納部50から加圧供給された粉末消火剤52は、ガイド部55の先端の隙間から放出され、回収口32から入ってくる電解液の火炎に向けて吹き付けるようにしている。
【0080】
図12(B)はリチウムイオン電池20の熱暴走で電解液が噴出した場合の回収部の機能を示す。安全弁25から噴出した電解液の火炎は、回収口32からに吹き込んだ後にガイド部55により下方に移動し、加圧孔54に設けた封止部材56を破壊して消火剤収納部50に吹き込み、粉末消火剤52を攪拌加圧する。消火剤収納部50の圧力が所定値に上昇すると、放出孔58の封止部材60が破壊し、放出孔58及びガイド部55の隙間を通って回収口32を介して吹き込んでいる電解液の火炎に粉末消火剤52が放出され、電解液の火炎に放出した粉末消火剤52を混合して消火抑制する。
【0081】
[本発明の変形例]
(単電池)
上記の実施形態は、単電池としてリチウムイオン電池を例にとるものであったが、これに限定されず、可燃性の電解液を使用した適宜の非水電解質の二次電池を含む。
【0082】
(安全弁の位置)
上記の実施形態にあっては、矩形箱型のリチウムイオン電池の側面に安全弁を設けた場合を例にとっているが、電極端子を取出している上面に安全弁を設けたリチウムイオン電池の場合には、リチウムイオン電池の安全弁に相対した収納容器蓋側に、回収部を設けて安全弁から噴出した電解液の火炎を回収する構造とすれば良い。またリチウムイオン電池の外装容器の形状は、円筒形状であっても良い。
【0083】
(安全弁と回収口)
上記の実施形態にあっては、リチウムイオン電池の安全弁に対し、隙間を介して収納部の回収口を配置しているが、安全弁と回収口の隙間をなくすように密着配置するか、或いは両者の間に円筒状のホルダを配置して密着配置し、安全弁から噴出した電解液の火炎が全て回収部に吹き込むようにしても良い。
【0084】
(回収部の連結)
上記の実施形態は、リチウムイオン電池の安全弁に相対して独立した密閉空間をもつ回収部を配置しているが、隣接する回収部の仕切壁の下部など、電解液の火炎が届きにくい位置に連通口を設け、隣接する回収部の回収空間を連結するようにしても良い。これによ回収空間を複数の回収部の空間に拡大することができ、電解液の火炎が吹き込んだ場合の内圧上昇を低減し、また広く拡散することで、温度上昇を抑えることを可能とする。
【0085】
(蓄電装置の用途)
また、上記の実施形態は、航空機の蓄電装置を例にとるものであったが、自動車用、住宅用のリチウムイオン電池を収納した蓄電装置の消火装置として同様に設けることができ更に、それ以外の適宜の機器、装置、設備、施設に設置されるリチウムイオン電池を用いた蓄電装置についても、同様に適用可能である。
【0086】
(その他)
また、本発明は上記の実施形態に限定されず、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。