特許第6279903号(P6279903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アッヴィ・ステムセントリックス・エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6279903
(24)【登録日】2018年1月26日
(45)【発行日】2018年2月14日
(54)【発明の名称】新規モジュレーターと使用の方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20180205BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20180205BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20180205BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20180205BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20180205BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20180205BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20180205BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20180205BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180205BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180205BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20180205BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20180205BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20180205BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20180205BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20180205BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20180205BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   C07K16/18
   C07K16/46
   A61K39/395 N
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P43/00 105
   A61K45/00
   A61K47/68
   A61P35/04
   G01N33/574 A
   G01N33/483 C
   G01N33/53 Y
   !C12P21/08
【請求項の数】26
【全頁数】115
(21)【出願番号】特願2013-543326(P2013-543326)
(86)(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公表番号】特表2014-507117(P2014-507117A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】US2011063831
(87)【国際公開番号】WO2012118547
(87)【国際公開日】20120907
【審査請求日】2014年12月5日
(31)【優先権主張番号】61/421,157
(32)【優先日】2010年12月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2011/050451
(32)【優先日】2011年9月2日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516324537
【氏名又は名称】アッヴィ・ステムセントリックス・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100091638
【弁理士】
【氏名又は名称】江尻 ひろ子
(72)【発明者】
【氏名】ハンプル,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ディラ,スコット・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】フォード,オリット
(72)【発明者】
【氏名】スタル,ロバート・エイ
【審査官】 伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−539413(JP,A)
【文献】 特表2007−522096(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0113415(US,A1)
【文献】 特表2003−532365(JP,A)
【文献】 特表2010−501596(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/052830(WO,A1)
【文献】 ALONSO-C LUIS M et al,LEUKEMIA RESEARCH,米国,2009年 3月 1日,Vol.33, No.3,p. 395-406
【文献】 YANG JUN-JIE et al,JOURNAL OF CENTRAL SOUTH UNIVERSITY. MEDICAL SCIENCES,2005年10月,Vol. 30, No. 5,p. 529-532
【文献】 ABDOU A G et al,INDIAN JOURNAL OF CANCER,2010年 3月,Vol. 47, No. 1,p. 46-52
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
PubMed
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトEFNA4(エフリンA4リガンド)に特異的に結合し、
CDR−H1について配列番号157の残基31−35、CDR−H2について配列番号157の残基50−65、及びCDR−H3について配列番号157の残基95−102として示される重鎖可変領域の3つのCDRを含み、CDR−L1について配列番号159の残基24−34、CDR−L2について配列番号159の残基50−56、及びCDR−L3について配列番号159の残基89−97として示される軽鎖可変領域の3つのCDRを含み、当該残基がKabatに従って番号付けされる、
キメラ抗体、CDR移植抗体、又はヒト化抗体、又はこれらの抗原結合性断片。
【請求項2】
ヒトEFNA4に特異的に結合し、
CDR−H1について配列番号157の残基26−32、CDR−H2について配列番号157の残基53−55、及びCDR−H3について配列番号157の残基96−101として示される重鎖可変領域の3つのCDRを含み、CDR−L1について配列番号159の残基26−32、CDR−L2について配列番号159の残基50−52、及びCDR−L3について配列番号159の残基91−96として示される軽鎖可変領域の3つのCDRを含み、当該残基がChothiaに従って番号付けされる、
キメラ抗体、CDR移植抗体、又はヒト化抗体、又はこれらの抗原結合性断片。
【請求項3】
ヒトEFNA4に特異的に結合し、
CDR−H1について配列番号157の残基30−35、CDR−H2について配列番号157の残基47−58、及びCDR−H3について配列番号157の残基93−101として示される重鎖可変領域の3つのCDRを含み、CDR−L1について配列番号159の残基30−36、CDR−L2について配列番号159の残基46−55、及びCDR−L3について配列番号159の残基89−96として示される軽鎖可変領域の3つのCDRを含み、当該残基がMacCallumに従って番号付けされる、
キメラ抗体、CDR移植抗体、又はヒト化抗体、又はこれらの抗原結合性断片。
【請求項4】
ヒトEFNA4に特異的に結合し、
CDR−H1について配列番号12、CDR−H2について配列番号25、及びCDR−H3について配列番号38として示される3つのCDRを含み、CDR−L1について配列番号51、CDR−L2について配列番号74,及びCDR−L3について配列番号87として示される3つのCDRを含む、
キメラ抗体、CDR移植抗体、又はヒト化抗体、又はこれらの抗原結合性断片。
【請求項5】
配列番号157として示される重鎖可変領域及び配列番号159として示される軽鎖可変領域を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項6】
ヒトEFNA4に特異的に結合し、
CDR−H1について配列番号161の残基31−35、CDR−H2について配列番号161の残基50−65、及びCDR−H3について配列番号161の残基95−102として示される重鎖可変領域の3つのCDRを含み、CDR−L1について配列番号163の残基24−34、CDR−L2について配列番号163の残基50−56、及びCDR−L3について配列番号163の残基89−97として示される軽鎖可変領域の3つのCDRを含み、当該残基がKabatに従って番号付けされる、
キメラ抗体、CDR移植抗体、又はヒト化抗体、又はこれらの抗原結合性断片。
【請求項7】
ヒトEFNA4に特異的に結合し、
CDR−H1について配列番号161の残基26−32、CDR−H2について配列番号161の残基53−55、及びCDR−H3について配列番号161の残基96−101として示される重鎖可変領域の3つのCDRを含み、CDR−L1について配列番号163の残基26−32、CDR−L2について配列番号163の残基50−52、及びCDR−L3について配列番号163の残基91−96として示される軽鎖可変領域の3つのCDRを含み、当該残基がChothiaに従って番号付けされる、
キメラ抗体、CDR移植抗体、又はヒト化抗体、又はこれらの抗原結合性断片。
【請求項8】
ヒトEFNA4に特異的に結合し、
CDR−H1について配列番号161の残基30−35、CDR−H2について配列番号161の残基47−58、及びCDR−H3について配列番号161の残基93−101として示される重鎖可変領域の3つのCDRを含み、CDR−L1について配列番号163の残基30−36、CDR−L2について配列番号163の残基46−55、及びCDR−L3について配列番号163の残基89−96として示される軽鎖可変領域の3つのCDRを含み、当該残基がMacCallumに従って番号付けされる、
キメラ抗体、CDR移植抗体、又はヒト化抗体、又はこれらの抗原結合性断片。
【請求項9】
ヒトEFNA4に特異的に結合し、
CDR−H1について配列番号14、CDR−H2について配列番号27、及びCDR−H3について配列番号40として示される3つのCDRを含み、CDR−L1について配列番号53、CDR−L2について配列番号76,及びCDR−L3について配列番号89として示される3つのCDRを含む、
キメラ抗体、CDR移植抗体、又はヒト化抗体、又はこれらの抗原結合性断片。
【請求項10】
配列番号161として示される重鎖可変領域及び配列番号163として示される軽鎖可変領域を含む、請求項6〜9のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片。
【請求項11】
ヒトEFNA4に特異的に結合し、
配列番号137として示される重鎖可変領域及び配列番号139として示される軽鎖可変領域;
を含む、キメラ抗体、CDR移植抗体、又はヒト化抗体、又はこれらの抗原結合性断片。
【請求項12】
中和抗体、枯渇性抗体、及び/又は内在化抗体である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片
【請求項13】
ヒトエフリンAリガンドの配列番号164又は配列番号165として示されるエピトープに特異的に結合する、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、組換えヒト抗体又はこれらの抗原結合性断片。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片を含む抗体コンジュゲートであって、該抗体又はその抗原結合性断片が、細胞傷害剤とコンジュゲートする、連結する、又は他の方法で会合する、前記抗体コンジュゲート。
【請求項15】
以下:
(a)配列番号113として示される重鎖可変領域及び配列番号115として示される軽鎖可変領域;又は
(b)配列番号121として示される重鎖可変領域及び配列番号123として示される軽鎖可変領域;又は
(c)配列番号137として示される重鎖可変領域及び配列番号139として示される軽鎖可変領域;又は
(d)配列番号157として示される重鎖可変領域及び配列番号159として示される軽鎖可変領域;又は
(e)配列番号161として示される重鎖可変領域及び配列番号163として示される軽鎖可変領域;
をコードする核酸を含む、ベクター。
【請求項16】
第一ベクターと第二ベクターを含む複数のベクターであって、ここで
(a)第一ベクターが配列番号113として示される重鎖可変領域をコードする核酸を含み、第二ベクターが配列番号115として示される軽鎖可変領域をコードする核酸を含む;又は
(b)第一ベクターが配列番号121として示される重鎖可変領域をコードする核酸を含み、第二ベクターが配列番号123として示される軽鎖可変領域をコードする核酸を含む;又は
(c)第一ベクターが配列番号137として示される重鎖可変領域をコードする核酸を含み。第二ベクターが配列番号139として示される軽鎖可変領域をコードする核酸を含む;又は
(d)第一ベクターが配列番号157として示される重鎖可変領域をコードする核酸を含み、第二ベクターが配列番号159として示される軽鎖可変領域をコードする核酸を含む;又は
(e)第一ベクターが配列番号161として示される重鎖可変領域をコードする核酸を含み、第二ベクターが配列番号163として示される軽鎖可変領域を含む、
前記複数のベクター。
【請求項17】
ヒトEFNA4に特異的に結合する抗体を発現する単離された宿主細胞であって、該単離された宿主細胞が、以下:
(a)配列番号113として示される重鎖可変領域及び配列番号115として示される軽鎖可変領域;又は
(b)配列番号121として示される重鎖可変領域及び配列番号123として示される軽鎖可変領域;又は
(c)配列番号137として示される重鎖可変領域及び配列番号139として示される軽鎖可変領域;又は
(d)配列番号157として示される重鎖可変領域及び配列番号159として示される軽鎖可変領域;又は
(e)配列番号161として示される重鎖可変領域及び配列番号163として示される軽鎖可変領域;をコードする一以上の核酸を含む、前記宿主細胞。
【請求項18】
抗EFNA4抗体又はその抗原結合性断片を含む、新生物障害の治療に用いるための医薬組成物であって、前記抗体又はその抗原結合性断片が請求項1〜13のいずれかに記載の抗体または請求項14に記載する抗体コンジュゲートである、前記医薬組成物。
【請求項19】
新生物障害が固形腫瘍を含む、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
新生物障害が、乳癌、卵巣癌、大腸癌、肝臓癌、又は肺癌である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
新生物障害が乳癌である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
新生物障害が卵巣癌である、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
新生物障害が血液系腫瘍である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項24】
血液系腫瘍が白血病である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片又は請求項14に記載の抗体コンジュゲートを含む、被検者における腫瘍始原細胞の頻度の低下に用いるための医薬組成物。
【請求項26】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合性断片又は請求項14に記載の抗体コンジュゲートを含む、新生物障害を有する被検者における腫瘍細胞又は腫瘍始原細胞の検出に用いるための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照される特許出願
本出願は、そのそれぞれがその全体において参照により本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願シリアル番号:61/421,157(2010年12月8日出願)及び特許協力条約(PCT)番号:PCT/US2011/050451(2011年9月2日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、EFS−WebよりASCII形式で提出されて、その全体において参照により本明細書に組み込まれる「配列表」を含有する。2011年11月22日に作成された前記ASCIIコピーは、11200PCT.txtと指定されて、サイズは80,102バイトである。
【0003】
技術分野
本出願は、新規組成物と、過剰増殖性障害とその拡張、再発(recurrence)、再燃(relapse)、又は転移を予防、治療、又は改善することにおけるそれらの使用の方法に概して関する。広い側面において、本発明は、新生物障害の治療又は予防のためのエフリンAリガンド(EFNA)モジュレーター(抗EFNA抗体及び融合構築体が含まれる)の使用に関する。特に、本発明の好ましい態様は、腫瘍始原細胞頻度の低下を含んでなる、悪性腫瘍の免疫療法的治療への、そのようなEFNAモジュレーターの使用を提供する。
【背景技術】
【0004】
幹細胞及び前駆細胞の分化と細胞増殖は、器官形成の間の組織成長とすべての生存生物の生涯の間でのほとんどの組織の細胞の置換及び修復とを支援するように協奏的に作用する、正常な進行プロセスである。分化と増殖の決定は、多くの場合、細胞運命の決定と組織構造とを維持するように均衡している数多くの因子及びシグナルによって制御される。正常な組織構造は、通常、細胞分裂と組織成熟化とを調節する微小環境の合図へ応答する細胞によって維持される。従って、細胞の増殖及び分化が正常に起こるのは、損傷を受けた細胞又は瀕死の細胞の置換のために、又は成長のために必要な場合だけである。残念ながら、例えば、様々なシグナル伝達性化学物質の過少又は過剰、改変した微小環境の存在、遺伝子の突然変異、又はこれらの何らかの組合せが含まれる無数の要因より、細胞の増殖及び/又は分化の破綻が生じ得る。正常な細胞の増殖及び/又は分化が妨害されるか又は何らかの様式で破綻すると、それは、癌のような過剰増殖性障害が含まれる様々な疾患又は障害をもたらす可能性がある。
【0005】
癌への従来の治療法には、化学療法、放射線療法、外科手術、免疫療法(例、生物学的応答調節物質、ワクチン、又は標的化治療剤)、又はこれらの組合せが含まれる。悲しむべきことに、このような従来の治療法に対して、ずっと多くの癌が非応答性であるか又はほとんど応答せず、患者には治療選択肢がほとんど残っていない。例えば、ある患者では、ある種の癌が遺伝子変異を示して、選択された療法が一般には有効であるにも拘らず、それらを非応答性にする。さらに、癌の種類によっては、外科手術のようないくつかの利用可能な療法が有効な代替法でない場合もある。現行の標準的な治療薬剤に内在する限界が特に明らかになるのは、すでにいくつかの治療法を経験してその後で癌が再燃した患者への治療を試みるときである。そのような症例では、失敗した療法レジメンとそれにより生じる患者の悪化が難治性の腫瘍の原因となる場合があり、その腫瘍は、最終的に治癒不能であることが明らかとなるより進行性の疾患として多くの場合現れる。ここ数年にわたって癌の診断及び治療には多大な改善があったものの、既存の療法では再燃、腫瘍の再発及び転移を防ぐことができないために、多くの固形腫瘍で全生存率はほとんど変化していない。従って、より標的化されて強力な療法を開発することが依然として挑戦課題なのである。
【0006】
1つの有望な研究領域は、多くの癌の根底にあるように思われる腫瘍原性の「種」細胞を狙撃する標的化治療剤の使用に関連する。そのために、ほとんどの固形組織は、その組織の大多数を含む分化細胞種を産生する、成体の組織常在性の幹細胞集団を含有することが今日知られている。これらの組織に生じる腫瘍は、同様に、幹細胞からも発生する細胞の異種集団からなるが、それらの全体的な増殖性及び組織化は著しく異なる。腫瘍細胞の大多数には限られた増殖能力しかないことがますます認知されているが、癌細胞の少数集団(通常、癌幹細胞(cancer stem cell)又はCSCとして知られる)は、広汎に自己再生する独占的な能力を有しており、それにより固有の腫瘍再始動能を可能にしている。より具体的には、この癌幹細胞仮説は、それぞれの腫瘍の内部に、無限の自己再生が可能であって、腫瘍前駆細胞とその後の最終分化腫瘍細胞への分化の結果としてその複製能力が進行的に制限される腫瘍細胞を産生することが可能である別個の細胞(即ち、CSC)の亜集団が(ほぼ0.1〜10%)存在することを提唱する。
【0007】
近年、これらのCSC(腫瘍永続化細胞(tumor perpetuating cell)又はTPCとしても知られる)が従来の化学療法剤又は放射線に対してより抵抗性であって、それにより標準的な臨床治療法の後にも存続して、後に難治性腫瘍、続発性腫瘍の増殖を促して転移を助長する可能性があることがより明白になっている。さらに、ますます増える証拠は、器官形成及び/又は正常な組織常在型幹細胞の自己再生を調節する経路がCSCでは調節解除又は改変されていて、自己再生する癌細胞の不断の拡張と腫瘍形成がもたらされることを示唆する。一般論としては、Al-Hajj et al., 2004, PMID: 15378087;及びDalerba et. al, 2007, PMID: 17548814 を参照のこと(このそれぞれは、その全体において参照により本明細書に組み込まれる)。このように、従来の治療法だけでなくより最近の標的化治療法の有効性も、これらの多様な治療法に直面しても癌を永続化することが可能である抵抗性癌細胞の存在及び/又は出現によって制限されているようである。Huff et. al., European Journal of Cancer 42: 1293-1297 (2006) 及び Zhou et al., Nature Reviews Drug Discovery 8: 806-823 (2009)(このそれぞれは、その全体において参照により本明細書に組み込まれる)。このような観察事実は、従来の腫瘍減量剤(debulking agent)では、固形腫瘍に罹患している場合の患者生存を実質的に高めることが常にできないことによって、そして腫瘍が増殖、再発、及び転移する方法についてのますます洗練された理解が進展するにつれて確実になっている。従って、新生物障害を治療するための最新の戦略では、腫瘍再発、転移、又は患者再燃の可能性を減らすように、腫瘍永続化細胞を消失させる、枯渇する、沈静化する、又はその分化を促進することの重要性が認められてきた。
【0008】
そのような戦略を開発するための努力では、ヒトの原発性固形腫瘍標本を免疫不全マウスに排他的に移植して継代する、非従来的異種移植片(NTX)モデルに関連する最近の研究が取り込まれている。数多くの癌において、そのような技術により、異種な腫瘍を産生してその増殖を無限に促進する独自の能力がある細胞の亜集団の存在が確かめられている。先に仮定されたように、NTXモデルでの研究は、同定された腫瘍細胞のCSC亜集団が化学療法や放射線のような腫瘍減量レジメン(debulking regimen)に対してより抵抗性であるらしいことが確認され、臨床応答率と全生存率の間の不一致を潜在的に説明している。さらに、CSC研究におけるNTXモデルの利用は、腫瘍の再発及び転移に重大な影響を及ぼすことによって患者生存率を改善するCSC標的化療法をもたらし得る医薬候補物質の医薬探索及び前臨床評価における根本的な変革の火付けになってきた。進展が見られた一方で、原発性及び/又は異種移植片腫瘍組織を取り扱うことに付随する固有の技術上の難題は、CSCの同一性及び分化能を特徴付けるための実験基盤の不足と相俟って、重大な挑戦課題を提起する。それで、癌幹細胞に選択的に標的指向して、過剰増殖性障害の治療、予防、及び/又は管理に使用し得る、診断、予防、又は治療用の化合物又は方法を開発するという実質的なニーズが依然として存在するのである。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上記及び他の目的のために、広義には、EFNA関連障害(例、過剰増殖性障害又は新生物障害)の治療に使用し得る方法、化合物、組成物、及び製造品へ向けられる。そのために、本発明は、腫瘍細胞又は癌幹細胞に効果的に標的指向して、多種多様な悪性腫瘍に罹患している患者を治療するために使用し得る、新規EFNA(又はエフリンAリガンド)モジュレーターを提供する。本明細書においてより詳しく考察されるように、現在、6種のエフリンAリガンド(即ち、EFNA1〜6)が知られていて、開示モジュレーターは、いずれか1種の、又は1種より多いエフリンAリガンドを含むか又はそれと会合する可能性がある。さらに、ある態様において、開示されるEFNAモジュレーターは、EFNAポリペプチド、その受容体又はその遺伝子を認識する、それと競合する、それに作動する、それと拮抗する、それと相互作用する、結合する、又は会合して、1以上の生理学的経路に対するEFNAタンパク質の影響を調節する、調整する、改変させる、変化させる、又は修飾するどの分子も含んでよい。このように、広義において、本発明は、単離(された)EFNAモジュレーターへ向けられる。好ましい態様において、本発明は、より具体的には、単離EFNA1モジュレーター又は単離EFNA4モジュレーター(即ち、少なくともEFNA1又はEFNA4を含むか又はそれと会合するモジュレーター)へ向けられる。さらに、下記に広汎に考察されるように、そのようなモジュレーターは、医薬組成物を提供するために使用し得る。
【0010】
本発明の選択された態様において、EFNAモジュレーターは、エフリンAリガンドそれ自体又はその断片を、単離型でも、他の部分との融合型又は会合型(例、Fc−EFNA、PEG−EFNA、又は標的化部分と会合したEFNA)でも含んでよい。他の選択された態様において、EFNAモジュレーターは、EFNAアンタゴニストを含んでよく、それは、本出願の目的のためには、EFNAを認識する、それと競合する、相互作用する、結合する、又は会合して、腫瘍始原細胞が含まれる新生物細胞を中和する、消失させる、低下させる、増感させる、再プログラム化する、その増殖を阻害又は制御する如何なる構築体又は化合物も意味すると理解される。好ましい態様において、本発明のEFNAモジュレーターは、新生物細胞を増やす、維持する、拡大する、増殖させる、又は他の方法でその生存、再発、再生、及び/又は転移を促進する腫瘍始原細胞の能力を沈静化する、中和する、低下させる、減少させる、枯渇する、緩和する、減衰させる、再プログラム化する、消失させる、又は他の方法で阻害することが意外にも見出された、抗EFNA抗体又はその断片若しくは誘導体を含む。特に好ましい態様において、この抗体又は免疫反応性断片は、1以上の抗癌剤と会合しても、それへコンジュゲートしてもよい。
【0011】
1つの態様において、当該EFNAモジュレーターは、ヒト化抗体を含んでよく、ここで前記抗体は、配列番号149、配列番号153、配列番号157、及び配列番号161からなる群より選択される重鎖可変領域アミノ酸配列と、配列番号151、配列番号155、配列番号159、及び配列番号163からなる群より選択される軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。他の好ましい態様において、本発明は、hSC4.5、hSC4.15、hSC4.22、及びhSC4.47からなる群より選択されるヒト化抗体と医薬的に許容される担体を含んでなる組成物の形態であろう。別の好ましい態様において、EFNAモジュレーターは、図面7A(配列番号8〜59及び70〜95)由来の1以上のCDRを含む抗体を含んでよい。好ましくは、図面7A由来の少なくとも1つのCDRを含んでなる抗体は、ヒト化抗体を含むであろう。
【0012】
ある他の態様において、本発明は、被検者への投与時に腫瘍始原細胞の頻度を低下させるEFNAモジュレーターを含む。好ましくは、頻度の低下は、in vitro 又は in vivo の限界希釈分析を使用して決定される。特に好ましい態様において、そのような分析は、生きたヒト腫瘍細胞の免疫不全マウス中への移植を含んでなる in vivo 限界希釈分析を使用して実施してよい。あるいは、限界希釈分析は、生きたヒト腫瘍細胞の in vitro コロニー支持条件(colony supporting condition)中への限界希釈沈着(limiting dilution deposition)を含んでなる in vitro 限界希釈分析を使用して実施してよい。いずれの場合でも、頻度の低下の分析、計算、又は定量は、好ましくは、正確な数的処理を提供するポアソン分布統計の使用を含むであろう。そのような定量法が好ましい一方で、望まれる数値を提供するには、フローサイトメトリー又は免疫組織化学のような、他のさほど労働集約的ではない方法論も使用してよく、従って、それも本発明の範囲内にあるものと明白に考慮されると理解されよう。そのような場合、頻度の低下は、腫瘍始原細胞について濃縮することが知られている腫瘍細胞表面マーカーのフローサイトメトリー分析又は免疫組織化学検出を使用して決定してよい。
【0013】
そのように、別の好ましい態様において、本発明は、治療有効量のEFNAモジュレーターをその必要な被検者へ投与することによって腫瘍始原細胞の頻度を低下させることを含んでなる、EFNA関連障害を治療する方法を含む。ここでも、腫瘍始原細胞頻度の低下は、好ましくは、in vitro 又は in vivo の限界希釈分析を使用して決定されるであろう。
【0014】
この点に関して言えば、本発明は、少なくとも一部は、様々な新生物の病因に関与している腫瘍永続化細胞(即ち、癌幹細胞)とEFNAポリペプチド(そして特に、下記に考察するようなEFNA4)が会合するという発見に基づくものと認識されるであろう。より具体的には、本出願は、意外にも、様々な例示のEFNAモジュレーターの投与が腫瘍始原細胞による腫瘍形成性のシグナル伝達に媒介する、それを低下させる、阻害する、又は消失させる(即ち、腫瘍始原細胞の頻度を低下させる)ことができることを証明する。この低下したシグナル伝達は、腫瘍始原細胞の低下、消失、再プログラム化、又は沈静化によっても、又は腫瘍細胞形態を変化させること(例、分化誘導、ニッチ破壊)によっても、腫瘍形成性、腫瘍の維持、拡張、及び/又は転移及び再発を阻害することによるEFNA関連障害のより有効な治療を次々に可能にする。他の態様において、開示モジュレーターは、腫瘍増殖を制限又は束縛し得るEFNA媒介性シグナル伝達を促進する、支援する、又は他の方法で増強する場合がある。他の態様において、開示モジュレーターは、腫瘍増殖を促し得るEFNA媒介性シグナル伝達に干渉する、それを抑制する、又は他の方法で遅らせる場合がある。さらに、以下でより詳しく考察するように、EFNAポリペプチドは、インテグリンと細胞骨格再配列を介して細胞間の付着力と反発力を産生することに関与する。本明細書に記載の新規EFNAモジュレーターを使用する、そのような細胞間の相互作用における介入は、それによって、相加効果又は相乗効果をもたらす1より多い機序(即ち、腫瘍始原細胞の低下と細胞付着の破綻)により障害を改善する場合がある。なお他の好ましい態様は、エフリンAリガンドの細胞内在化を利用して、モジュレーター媒介性の抗癌剤を送達する場合がある。この点に関して言えば、本発明は、どの特別な作用機序にも制限されず、むしろEFNA関連障害(様々な新生物が含まれる)を治療するための開示モジュレーターの広汎な使用が含まれると理解されよう。
【0015】
このように、本発明の別の好ましい態様は、EFNA関連障害を治療することの必要な被検者へEFNAモジュレーターを投与する工程を含んでなる、前記被検者においてそれを治療する方法を含む。特に好ましい態様において、EFNAモジュレーターは、抗癌剤と会合(例えば、コンジュゲート)している。さらに、本発明の有益な側面(あらゆる細胞の付着破綻と付帯的な利益が含まれる)は、被検者の腫瘍組織が正常隣接組織と比較して上昇レベルのEFNAを明示しても、低下又は抑圧レベルのEFNAを明示しても、達成され得る。
【0016】
上記に述べて、下記により詳しく考察するように、現在、6種のエフリンAリガンド(即ち、EFNA1〜6)が知られている。本発明に従えば、開示モジュレーターは、単一のエフリンAリガンド(例、EFNA4)、エフリンAリガンドの亜集合(例、EFNA4及びEFNA1)、又は全6種のエフリンAリガンドと反応するように、産生、作製、及び/又は選択してよいことが理解されるであろう。より具体的には、本明細書に記載して、以下の「実施例」で説明するように、抗体のような好ましいモジュレーターは、単一のエフリンAリガンド上で発現されるドメイン又はエピトープと、又は多数又はすべてのEFNAポリペプチド(例、EFNA1及び4、又はEFNA3及び4)にわたって(少なくともある程度は)保存されて提示されているエピトープと反応又は結合するように産生されて選択され得る。このことが本発明に関して重要であるのは、下記の実施例18に示すように、TICでは、あるエフリンAリガンド(複数)が選好的に発現されることが判明して、腫瘍形成細胞頻度の選択的な低下、及び/又は癌幹細胞集団の枯渇をもたらす、特に有効な療法上の標的として組合せにおいて役立つ場合があるからである。
【0017】
故に、選択される態様において、本発明は、2以上のエフリンAリガンドと免疫特異的に会合する汎EFNAモジュレーターを含む。このような態様において、選択されるモジュレーターは、特別なリガンド(例、EFNA4)での免疫化により産生されて、様々な被検リガンドと大なり小なりの度合いで会合又は交差反応し得る。従って、なお他の態様において、本発明は、治療有効量の汎EFNAモジュレーターを投与することを含んでなる、その必要な被検者を治療する方法を含む。なお他の態様は、1以上のエフリンAリガンドと免疫特異的に会合するEFNAモジュレーターの治療有効量を投与することを含んでなる、その必要な被検者を治療する方法を含む。
【0018】
従って、なお他の態様において、本発明は、汎EFNAモジュレーターを含むであろう。なお他の態様において、本発明は、EFNA関連障害を治療することの必要な被検者へ汎EFNAモジュレーターを投与する工程を含んでなる、前記被検者においてそれを治療する方法を含むであろう。
【0019】
当然ながら、開示されるEFNAモジュレーターは、単一のエフリンAリガンド(例、EFNA4)と選好的に反応又は会合して、他のエフリンAリガンドとの会合をほとんど又は全く示さないように産生、作製、及び/又は選択され得ると理解されよう。従って、本発明の他の態様は、選択されたエフリンAリガンドと免疫特異的に会合して、他のあらゆるエフリンAリガンドとの会合をほとんど又は全く示さないEFNAモジュレーターへ向けられる。この点に関して言えば、本明細書に開示される好ましい態様は、EFNAモジュレーターを投与する工程を含んでなる、EFNA関連障害を治療することの必要な被検者においてそれを治療する方法を含み、ここで該EFNAモジュレーターは、選択されたエフリンAリガンドと免疫特異的に会合して、あらゆる他のエフリンAリガンドとは実質的に非反応性である。さらに、このようなモジュレーターを産生、作製、及び選択する方法は、本発明の範囲内にある。
【0020】
本発明の他の面は、腫瘍始原細胞を沈静化する一方で同時に細胞付着相互作用を潜在的に妨害する、開示モジュレーターの能力を利用する。このような多重活性EFNAモジュレーター(例、EFNAアンタゴニスト)は、標準治療の抗癌剤又は腫瘍減量剤と組み合わせて使用されるときに特に有効であることが判明するかもしれない。加えて、2以上のEFNAアンタゴニスト(例、エフリンAリガンド上の2つの別々のエピトープへ特異的に結合するか又は別々のリガンドと会合する抗体)を、本教示に従って組み合わせて使用してよい。さらに、下記にやや詳しく考察するように、本発明のEFNAモジュレーターは、コンジュゲート状態でも非コンジュゲート状態でも使用してよく、多様な化学品又は生物学的な抗癌剤との組合せにおいて増感剤として使用してもよい。
【0021】
このように、本発明の別の好ましい態様は、EFNAモジュレーターを被検者へ投与する工程を含んでなる、抗癌剤での治療のために前記被検者において腫瘍を増感させる方法を含む。本発明の特に好ましい側面において、EFNAモジュレーターは、in vitro 又は in vivo の限界希釈分析を使用して決定されるように、腫瘍始原細胞頻度の低下を特異的にもたらして、それによって、同時に又はその後に生じる腫瘍減量のために腫瘍を増感させる。
【0022】
同様に、本発明の化合物は、様々な生理学的機序を介して治療利益を発揮し得るので、本発明はまた、ある細胞プロセスを利用するように特異的に作製される、選択されたエフェクター又はモジュレーターへ向けられる。例えば,ある態様において、好ましいモジュレーターは、腫瘍始原細胞の表面の上又は近くでEFNAと会合して被検者の免疫応答を刺激するように設計され得る。他の態様において、モジュレーターは、インテグリンと細胞骨格との再配列を介した細胞間の付着力及び反発力に影響を及ぼし得る、エフリンAのリガンド活性とエフリン受容体との相互作用を中和するエピトープへ指向される抗体を含んでよい。なお他の態様において、開示モジュレーターは、EFNA会合細胞を枯渇するか又は消失させることによって作用し得る。このように、本発明がある特別な作用形式に制限されず、むしろ本発明には、所望の結果を達成するあらゆる方法又はEFNAモジュレーターが含まれると理解することが重要である。
【0023】
このような枠組み内で、開示される態様の好ましい態様は、少なくとも1つの中和性EFNAモジュレーターの治療有効量を投与する工程を含んでなる、新生物障害に罹患している被検者を治療する方法へ向けられる。
【0024】
他の態様は、少なくとも1つの枯渇性EFNAモジュレーターの治療有効量を投与する工程を含んでなる、EFNA関連障害に罹患している被検者を治療する方法へ向けられる。関連した方法は、EFNAモジュレーターを投与する工程を含んでなる、EFNA会合細胞を枯渇することの必要な被検者においてそれを枯渇することへ向けられる。
【0025】
なお別の態様において、本発明は、腫瘍量の少なくとも一部を取り除くように設計された初期手順(例、化学療法、放射線、又は外科手術)に続く時間帯にわたって、開示されるエフェクター又はモジュレーターが投与される、維持療法の方法を提供する。このような療法レジメンは、数週の期間、数ヶ月の期間、又は数年の期間にもわたって投与してよく、ここでEFNAモジュレーターは、転移及び/又は腫瘍再発を阻むように予防的に作用し得る。なお他の態様において、開示モジュレーターは、転移を防ぐか又は遅らせるために、既知の腫瘍減量レジメンと連携して投与してよい。
【0026】
上記に考察した療法上の使用にとどまらず、本発明のモジュレーターは、EFNA関連障害、及び、特に過剰増殖性障害を診断するために使用し得ることも理解されよう。いくつかの態様において、該モジュレーターは、被検者へ投与して、in vivo で検出又はモニターされ得る。当業者は、このようなモジュレーターを、下記に開示するようなマーカー又はレポーターで標識するか又はそれと会合させて、数多くの標準技術(例、MRI又はCATスキャン)のいずれかを使用して検出し得ることを理解されよう。他の例において、モジュレーターは、当該技術分野で認められた手順を使用する in vitro 診断の場で使用してよい。このように、好ましい態様は、過剰増殖性障害を診断することの必要な被検者においてそれを診断する方法を含み、該方法は:
a.前記被検者より組織試料を入手する工程;
b.該組織試料を少なくとも1つのEFNAモジュレーターと接触させる工程;及び
c.該試料と会合したEFNAモジュレーターを検出又は定量する工程を含んでなる。
【0027】
このような方法は、本出願と併せて容易に理解し得て、自動プレートリーダー、専用レポーター系、等のような一般に利用可能な市販技術を使用して、容易に実施し得る。選択された態様において、EFNAモジュレーターは、試料中に存在する腫瘍永続化細胞と会合する。他の好ましい態様において、検出又は定量の工程は、腫瘍始原細胞頻度の低下とその検出を含むであろう。さらに、限界希釈分析は、上記においてすでに述べたように実施してよくて、好ましくは、頻度の低下に関する正確な数的処理をもたらすために、ポアソン分布統計の使用を利用する。
【0028】
同じように、本発明はまた、癌のようなEFNA関連障害の診断及びモニタリングに有用であるキットを提供する。このために、本発明は、好ましくは、EFNAモジュレーターを含んでなる容器(receptacle)とEFNA関連障害を治療又は診断するのに前記EFNAモジュレーターを使用するための指示物(instructional materials)とを含んでなる、EFNA関連障害を診断するか又は治療するのに有用な製造品を提供する。
【0029】
本発明の他の好ましい態様はまた、蛍光活性化細胞選別(FACS)又はレーザー媒介分画法のような方法を介して腫瘍始原細胞の集団又は亜集団を同定、単離、分画、又は濃縮するのに有用な道具としての開示モジュレーターの特性を利用する。
【0030】
このように、本発明の別の好ましい態様は、腫瘍始原細胞をEFNAモジュレーターと接触させる工程を含んでなる、前記腫瘍始原細胞の集団を同定、単離、分画、又は濃縮する方法へ向けられる。
【0031】
上述のことは、概要であるので、必要上、簡略化、一般化、及び詳細の省略を含有する;従って、当業者は、この概要が説明にすぎず、限定的であることを決して企図しないと理解されよう。本明細書に記載する方法、組成物、及び/又はデバイスの他の側面、特徴、及び利点、及び/又は他の主題は、本明細書で説明する教示において明らかになろう。この概要を提供するのは、選択される概念を単純化された形式で紹介するためであって、それについては「発明を実施するための形態」において以下でさらに記載する。この概要は、特許請求される主題の重要な特徴又は本質的な特徴を特定することを企図するものでも、特許請求される主題の範囲を決定するときの一助として使用することを企図するものでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1-1】図面1A〜Cは、それぞれ、ヒトEFNA4をコードする核酸配列(配列番号1)、対応するヒトEFNA4アイソフォームaのアミノ酸配列(配列番号2)、及びアミノ酸の相違を示すヒトEFNA4a、b、及びcアイソフォームの配列(配列番号2〜4)のアラインメントを図示し、一方、図面1D〜Fは、それぞれ、ヒトEFNA1をコードする核酸配列(配列番号5)、対応するヒトEFNA1アイソフォームaのアミノ酸配列(配列番号6)、及びアミノ酸の相違を示すヒトEFNA1a及びbアイソフォームの配列(配列番号6及び7)のアラインメントを示す;
図1-2】同上
図1-3】同上
図1-4】同上
図2】図面2A及び2Bは、結直腸腫瘍標本全体の一部より入手した、高度に濃縮された腫瘍始原細胞(TProg)及び腫瘍永続化細胞(TPC)及び非腫瘍形成細胞(NTG)の集団の全トランスクリプトーム(transcriptome)配列決定法を使用して測定した、未処置(図面2A)及びイリノテカン処置(図面2B)マウス中の選択したヒトエフリンAリガンド及びエフリンA受容体の遺伝子発現レベルを図示するグラフ表示である;
図3】図面3A及び3Bは、高度に濃縮された腫瘍始原細胞(TProg)及び腫瘍永続化細胞(TPC)及び非腫瘍形成細胞(NTG)集団又は腫瘍形成細胞(TG)及び非腫瘍形成細胞(NTG)集団の全トランスクリプトーム配列決定法を使用して測定した、結直腸腫瘍試料(図面3A)及び膵臓腫瘍試料(図面3B)中のヒトエフリンA4リガンドの遺伝子発現レベルを図示するグラフ表示である;
図4】図面4は、定量的RT−PCRを使用して測定した、4種の異なる非従来型異種移植片(NTX)の結直腸又は膵臓腫瘍細胞株の1つを担うマウスより入手した、高度に濃縮された腫瘍始原細胞(TProg)及び腫瘍永続化細胞(TPC)集団と、非腫瘍形成細胞(NTG)に対して正規化した濃縮細胞集団中のヒトEFNA4の相対的な遺伝子発現レベルを示すグラフ表示である;
図5】図面5A及び5Bは、ステージI〜IVの疾患の患者由来の全結直腸腫瘍標本においてRT−PCRを使用して測定した、ヒトEFNA4の相対的な遺伝子発現レベルを、正常な結腸及び直腸組織中の発現の平均に対して正規化して(図面5A)、又は正常隣接組織と比べて(図面5B)示すグラフ表示である;
図6-1】図面6A〜6Eは、測定したヒトEFNA遺伝子の遺伝子発現レベルを表し、図面6A及び6Bでは、18種の異なる固形腫瘍型の1つを有する患者由来の全腫瘍標本(灰色のドット)又は比較したNAT(白色のドット)中のEFNA4をRT−PCRによって測定し、図面6C及び6Dでは、選択したNTX腫瘍細胞株中のEFNA4及びEFNA1をRT−PCRによって測定し、そして図面6Eでは、正常な組織と選択したNTX腫瘍細胞株中のEFNA4についてウェスタンブロット分析によって測定した;
図6-2】同上
図6-3】同上
図7-1】図面7A〜7Rは、いくつかのEFNAモジュレーターの配列を図示し、ここで図面7Aは、本明細書に記載のように単離してクローン化した別々のEFNAモジュレーターの遺伝子配置と重鎖及び軽鎖のCDR配列(VBASE2分析に由来している)を示す表の表示であり、図面7B〜7Nは、図面7Aに示したのと同じモジュレーターについての、マウスの重鎖及び軽鎖可変領域の核酸及びアミノ酸配列を提供し、図面7O〜7Rは、開示されるEFNAモジュレーターの例示のヒト化バージョンの重鎖及び軽鎖可変領域の核酸及びアミノ酸配列を提供する;
図7-2】同上
図7-3】同上
図7-4】同上
図7-5】同上
図7-6】同上
図7-7】同上
図7-8】同上
図7-9】同上
図7-10】同上
図8-1】図面8A〜8Dは、図面8Aの表形式で表される例示モジュレーターの生化学的及び免疫学的特性を示す。図面8B及び8Cでは、一定量の抗体と系列希釈液の抗原との非標識相互作用分析を使用して決定されるようなマウスSC4.47とヒト化SC4.47それぞれの親和性の比較を示し、図面8Dでは、選択したヒト化モジュレーターとマウスモジュレーターの特性の表形式の比較を示す;
図8-2】同上
図9】図面9は、本発明の50種の例示のエフリンAリガンドモジュレーターの、Jurkat E6細胞とZ138細胞それぞれに関する細胞表面結合特性を例証する;
図10】図面10A及び10Bは、エフリンA受容体を発現する細胞に対するエフリンAリガンドの用量依存的な様式での結合(図面10A)と、例示の開示モジュレーターへの曝露によるエフリンAリガンド細胞表面結合の阻害(図面10B)を図示する;
図11】図面11A〜11Dは、ヒト及びマウスのエフリンAリガンドの細胞表面結合を阻害する開示モジュレーターの能力を例証するグラフ表示であって、ここで図面11Aは、陽性対照曲線を示して、図面11B〜11Dは、3種の例示EFNAモジュレーターの、リガンド結合を低下させる能力を証明する;
図12-1】図面12A〜12Eは、本発明のモジュレーターの、可溶性エフリンA受容体の細胞表面結合を阻害する能力を示すグラフ表示であり、ここで図面12Aは、受容体結合の標準曲線を提供し、図面12Bは、可溶性受容体の濃度が変動するときの例示モジュレーターの特性を例証し、図面12Cは、受容体の量を一定に保ちながらモジュレーターの濃度を変化させることの結果を証明し、そして図面12D及び12Eは、エフリンA受容体がエフリンA4とエフリンA1リガンドへそれぞれ結合することを阻害する、当該モジュレーターの能力を示す;
図12-2】同上
図13-1】図面13A〜13Cは、本発明の選択したモジュレーターの、エフリンA4リガンドのマウス相同分子種(ortholog)と交差反応する能力を例証し、ここで図面13Aは、非反応性モジュレーターを例証して、図面13B及び図面13Cは、交差反応するマウスのモジュレーターとヒト化モジュレーターをそれぞれ例証する;
図13-2】同上
図14-1】図面14A〜14Dは、エフリンAリガンドの発現が、全結直腸腫瘍試料(図面14A)において、結直腸NTX腫瘍細胞の腫瘍形成性亜集団(図面14B)において、そして肺NTX細胞株の腫瘍形成性亜集団(図面14D)において上方調節されているが、正常な末梢血単核細胞(図面14C)上では上方調節されていないことを証明する;
図14-2】同上
図15-1】図面15A〜15Dは、本発明の選択したモジュレーターがエフリンAリガンドとの結合時に内在化する能力を例証し、ここで図面15Aは、3種の例示モジュレーターに関連した蛍光シフトを示し、図面15Bは、19種の開示モジュレーターが内在化を示唆するデルタ平均蛍光強度を示すことを証明し、図面15Cは、EFNA発現が低い細胞では、相対的に内在化がほとんど無いことを示し、そして図面15Dは、高レベルのEFNAを発現する細胞に関連した実質的な内在化を示す;
図15-2】同上
図16-1】図面16A〜16Fは、開示モジュレーターが、エフリンAリガンドを発現している細胞へ細胞傷害性ペイロードを指向させる標的化部分として有効に使用し得る(ここでは、下方傾斜曲線により、内在化毒素を介した細胞殺傷が示唆される)ことの証拠を提供し、ここで図面16Aは、モジュレーターSC4.5の殺傷効果を示し、図面16Bは、肺及び皮膚のNTX腫瘍細胞株に内在化して殺傷する、選択したモジュレーターの能力を例証し、図面16C及び16Dは、モジュレーターが会合した細胞毒素をHEK293T細胞(図面16C)とHEK−.hEFNA4細胞(図面16D)の中へ運ぶことを示し、図面16Eは、ヒト化モジュレーターが同様に反応することを例証し、そして図面16Fは、マウス又はヒトのエフリンAリガンドを発現している標的細胞の殺傷を証明する(図面16を通して、モジュレーターは、SC4よりむしろEと呼称される場合があることに留意されたい);
図16-2】同上
図16-3】同上
図16-4】同上
図17-1】図面17A〜17Eは、分泌されたエフリンAリガンドに指向する開示モジュレーターの能力を証明する生化学アッセイの様々な側面のグラフ表示であり、ここで図面17Aは、標準曲線を提供し、図面17Bは、選択した血液系腫瘍より分泌されたEFNAのレベルを定量し、図面17Cは、腫瘍量と分泌されたEFNAの相関性を提示し、図面17Dは、健常成人中の循環エフリンAリガンドの範囲を確定し、そして図面17Eは、選択した固形腫瘍のある患者が有意により高いレベルの循環エフリンAリガンドを有することを証明する;
図17-2】同上
図18】図面18A〜18Cは、様々なエフリンAリガンドモジュレーターが、細胞傷害性ペイロードを選択した細胞と会合させる標的化部分として使用することができる(ここでは、下方傾斜曲線により、内在化毒素を介した細胞殺傷が示唆される)ことを例証するグラフ表示であり、そしてここで図面18A〜18Cは、エフリンA4リガンド(図面18A)、エフリンA3リガンド(図面18B)、及びエフリンA1リガンド(図面18C)を過剰発現しているHEK293T細胞の結合サポリン(Saporin)存在下での殺傷に媒介する、モジュレーターSC4.2.1(又はE2.1)とSC9.65(又は9M065)の能力を具体的に証明する;
図19】図面19A及び19Bは、数多くのEPHA受容体と選択的に相互作用するエフリンAリガンドの能力を例証し、ここでHEK293T細胞は、内因的に発現されるエフリンAリガンドを介して、EPHA−ECD−Fc受容体構築体へ限られた度合いでのみ結合し(図面19A)、一方、HEK293T.hEFNA4細胞は、結合しないEPHA1以外は、試験したすべてのEPHA受容体構築体へ様々な度合いで結合する(図面19B);及び
図20】図面20A及び20Bは、EPHB受容体と選択的に相互作用するエフリンAリガンドの能力を例証し、ここでHEK293T細胞は、内因的に発現されるエフリンAリガンドを介して、EPHB−ECD−Fc受容体構築体へ限られた度合いでのみ結合し(図面20A)、一方、HEK293T.hEFNA4細胞は、EphB2受容体へ結合するが、EphB3受容体とEphB4受容体へは結合しない(図面20B)。
【発明を実施するための形態】
【0033】
I.序論
本発明は、多くの異なる形態で具現化され得るが、本明細書に開示するのは、本発明の諸原理を具体化する、本発明の例示の具体的態様である。本発明が例証される具体的態様に限定されないことが強調されるべきである。さらに、本明細書に使用するどのセクション見出しも、編成上の目的のみのためであって、記載される主題を限定するものと解釈してはならない。
【0034】
先に述べたように、驚くべきことに、エフリンAリガンド(又はEFNA)の発現が新生物増殖と過剰増殖性障害に関連していること、そしてそのようなリガンドが関連疾患の治療に利用し得る有用な腫瘍マーカーを提供することが見出された。より具体的には、本明細書に開示するようなEFNAモジュレーターが、有利にも、その必要な被検者における新生物障害の診断、セラグノーシス(theragnosis)、治療、又は予防に使用し得ることが発見された。従って、本発明の好ましい態様について、特に癌幹細胞と開示モジュレーターとのその相互作用の文脈で、以下に広汎に考察するが、当業者は、本発明の範囲がそのような例示態様によって限定されないことを理解されよう。むしろ、本発明と付帯の特許請求項は、どの特別な作用機序にも、特異的に標的化される腫瘍成分にも拘ることなく、EFNAモジュレーターと、新生物障害又は過剰増殖性障害が含まれる、多様なEFNA関連障害又はEFNA媒介障害の診断、セラグノーシス、治療、又は予防におけるそれらの使用へ概括的かつ明白に向けられる。
【0035】
さらに、多くの先行技術の開示とは対照的に、本発明は、エフリン受容体(即ち、EPH)モジュレーターではなく、エフリンリガンドモジュレーター(即ち、EFN)へ主に向けられる。即ち、エフリン受容体が数種の障害との関連が広く示唆されて、概して治療的介入の標的とされてきたのに対し、エフリンリガンドはこれまでさほど注意を惹いてこなかった。これは、一部は、そのリガンドに起因する雑多な挙動の結果であろうし、それらを筋道の通らない治療標的とするそのような多様な相互作用は、余剰経路のためにあらゆるリガンド拮抗作用を相殺するはずだとする誤った信念の結果であろう。しかしながら、本明細書において証明されるように、開示されるエフリンAリガンドモジュレーターは、効果的に、腫瘍形成細胞に標的指向して、それを消失させるか又は他の方法で無能力化するために使用することができる。さらに、選択態様において、本発明は、1種より多いエフリンAリガンドと会合又は反応して、それによって1種より多いエフリンリガンド媒介経路の静止を可能にし得る、予期せぬ相加又は相乗効果を提供する汎EFNAモジュレーターを含む。
【0036】
直前に考察した一般的な会合とは別に、本発明者は、選択した「腫瘍始原細胞」(TIC)とエフリンAリガンドの間のこれまで知られていなかった表現型的な会合をさらに発見した。この点に関して言えば、選択したTICでは、正常組織及び非腫瘍形成細胞(NTG)(一緒に固形腫瘍の多くを含む)と比べるときに、上昇レベルのエフリンAリガンドが発現されていることが見出された。このように、エフリンAリガンドは、腫瘍関連マーカー(又は抗原)を含んで、細胞表面上又は腫瘍微小環境中のこのタンパク質の上昇レベルの故に、TICと関連新生物との検出及び抑制に有効な薬剤を提供することが見出された。より具体的には、EFNAモジュレーターは、このタンパク質と会合又は反応する免疫反応性のアンタゴニスト及び抗体を含めて、腫瘍始原細胞の頻度を有効に低下させて、それ故に、腫瘍始原細胞を消失させ、無能化し、低下させ、その分化を促進し、あるいは他の方法で、これらの腫瘍始原細胞の患者の中での潜伏能力、及び/又は腫瘍の増殖、転移、又は再発を促すことを続ける能力を排除するか又は制限するのに有用であることがさらに発見された。下記により詳しく考察するように、TIC腫瘍細胞の亜集団は、腫瘍永続化細胞(TPC)と高増殖性腫瘍始原細胞(TProg)からなる。
【0037】
上記の発見に鑑みて、当業者は、さらに本発明がEFNAモジュレーターと腫瘍始原細胞の頻度を低下させることにおけるそれらの使用を提供することを理解されよう。以下に広汎に考察するように、本発明のEFNAモジュレーターは、エフリンAリガンド又はその遺伝子を認識する、それと反応する、競合する、拮抗する、相互作用する、結合する、それを作動させる、又はそれと会合するどの化合物も概括的に含む。これらの相互作用によって、EFNAモジュレーターは、それにより腫瘍始原細胞の頻度を低下させるか又は適度にする。本明細書に開示する例示のモジュレーターは、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、又はポリペプチドを含む。ある好ましい態様において、選択されるモジュレーターは、EFNAに対する抗体又はその免疫反応性断片若しくは誘導体を含むであろう。そのような抗体は、本質的に拮抗性であっても作動性であってもよく、場合により、細胞傷害剤とコンジュゲートしても会合してもよい。他の態様において、本発明内のモジュレーターは、エフリンAリガンド又はその反応性断片を含んでなるEFNA構築体を含むであろう。そのような構築体は、融合タンパク質を含んでよくて、免疫グロブリン又は生物学的応答調節物質のような他のポリペプチド由来の反応性ドメインを含み得ることが理解されるであろう。なお他の側面において、EFNAモジュレーターは、所望の効果をゲノムレベルで発揮する核酸アセンブリーを含むであろう。本教示と適合可能な更なる他のモジュレーターについては、下記に詳しく考察する。
【0038】
どの形態のモジュレーターが最終的に選択されたとしても、それは、被検者への導入に先立って、好ましくは、単離及び精製された状態にある。この点に関して、「単離(された)EFNAモジュレーター」という用語は、広義に解釈されて、標準の薬務に従って、望まれない混在物質(生物学的又は他の)が実質的に存在しない状態で該モジュレーターを含んでなるあらゆる調製物又は組成物を意味するように解釈されよう。以下にやや詳しく考察するように、上記の調製物は、当該技術分野で認められた様々な技術を使用して、所望のように精製及び製剤化してよい。当然ながら、そのような「単離」調製物は、最終製品の市販、製造、又は療法上の側面を改善して医薬組成物を提供するために所望されるように、活性又は不活性成分とともに意図的に製剤化又は複合化してよいと理解されるであろう。
【0039】
II.EFNAの生理学
I型膜貫通タンパク質であるエフリン受容体チロシンキナーゼ(EPH)は、動物ゲノム内で最大の受容体チロシンキナーゼのファミリーを含み、やはり細胞表面に会合しているエフリンリガンド(EFN)と相互作用する。EPHサブファミリー中の受容体は、典型的には、単一のキナーゼドメイン、並びにCysリッチドメイン及び2つのフィブロネクチンIII型リピートを含有する細胞外領域を有する。慣例によれば、エフリン受容体は、その細胞外ドメイン配列とエフリンAリガンド及びエフリンBリガンドへ結合するそれらの親和性の類似性に基づいて、2つの群へ分けられる。これまでの研究は、EPH媒介性シグナル伝達事象が、特に神経系において、胚発生の多重の側面を制御して、細胞の付着、形状、及び移動性を調節する細胞間連絡の重要なメディエーターであることを示した。さらに、エフリン受容体ファミリーの多くのメンバーは、エフリンリガンドとは対照的に、癌の発症及び進行の重要なマーカー及び/又は制御因子として同定されてきた。今日まで、9種のエフリンA受容体と6種のエフリンB受容体が知られている。
【0040】
本出願の目的のために、「エフリン受容体」、「エフリンA受容体」、「エフリンB受容体」、「EPHA」又は「EPHB」(又は、EphA又はEphB)という用語は、可換的に使用してよく、文脈によって指示されるように、特定のファミリー、サブファミリー、又は個別の受容体(即ち、EPHA1、EPHA2、EPHA3、EPHA4、EPHA5、EPHA6、EPHA7、EPHA8、EPHA9、EPHB1、EPHB2、EPHB3、EPHB4、EPHB5、EPHB6)を意味するものとする。
【0041】
配列分析に基づいて、エフリンリガンドは、2つの群へ分けることができる:典型的には、グリコシルホスファチジルイノシトール連結を介して細胞表面へ繋留される6種のエフリンAリガンド(又はEFNA)(但し、エフリンmRNAの選択的スプライシングによって産生される非GPI繋留タンパク質もある;例、EFNA4)と、膜貫通ドメイン並びに保存されたチロシン残基及びPDZ結合モチーフがある短い細胞質領域を含有する3種のエフリンBリガンド(又はEFNB)とである。EFNAリガンドが9種の異なるEPHA受容体のいずれとも選好的に相互作用するのに対し、EFNBリガンドは、6種の異なるEPHB受容体のいずれとも選好的に相互作用するが、いくつかの特異的なEFNA−EPHB及びEFNB−EPHAの交差相互作用も報告されている。
【0042】
本出願の目的のために、「エフリンリガンド」、「エフリンAリガンド」、「エフリンBリガンド」、「EFNA」又は「EFNB」という用語は、可換的に使用してよく、文脈によって指示されるように、特定のファミリー、サブファミリー、又は個別のリガンド(即ち、EFNA1、EFNA2、EFNA3、EFNA4、EFNA5、EFNA6、EFNB1、EFNB2、EFNB3)を意味するものとする。例えば、「エフリンA4」、「エフリンA4リガンド」、又は「EFNA4」という用語は、同じファミリーのタンパク質アイソフォーム(例えば、図面1Cに示されるような)を意味し、一方、「エフリンAリガンド」及び「ENFA」という用語は、全6種のA型リガンドとそのあらゆるアイソフォームを含んでなるエフリンサブファミリー(即ち、Bに対するA)を意味するものとする。この点に関して言えば、「エフリンAモジュレーター」、「エフリンAリガンドモジュレーター」、又は「EFNAモジュレーター」は、1以上のA型リガンド若しくはアイソフォーム、又はその断片若しくは誘導体と会合、結合、又は反応するあらゆるモジュレーター(本明細書に定義されるような)を意味する。
【0043】
エフリン受容体及びリガンドの命名法のより詳しい要約を直下の表1に見出すことができる。
【0044】
【表1】
【0045】
すべての細胞表面受容体−リガンド相互作用と同様に、エフリンリガンドによるエフリン受容体の会合(engagement)は、最終的には、細胞内シグナル伝達カスケードの活性化をもたらす。受容体−リガンド相互作用は、同じ細胞の表面上の分子間で起こり得る(シス相互作用)が、一般的には、シス相互作用は、シグナル伝達カスケードの誘発に通じないか、或いはシス相互作用は、トランス相互作用(例えば、別々の細胞上の受容体とリガンドの間での)によって始動されるシグナル伝達カスケードに実際は拮抗しない場合があると考えられている。EPH−EFNトランス相互作用の1つの独特な側面は、受容体−リガンド会合時に2つのシグナル伝達カスケード(エフリン受容体を発現している細胞中の前方シグナル伝達カスケードと、エフリンリガンドを発現している細胞中の後方シグナル伝達カスケード)の引き金となる能力である。この2種の別々のシグナル伝達カスケードの活性化は、動物の胚発生において調整するようにEPHとEFNが進化させてきた細胞選別及び細胞定位のプロセスを反映するのかもしれない。
【0046】
EPH−EFNシグナル伝達は、細胞骨格の動態を調節する細胞シグナル伝達経路を頻繁に活性化して、異なる種類の細胞間の付着及び反発の相互作用の調節をもたらす。一般的なこととして、EPH及びEFNタンパク質は、成体組織において観測されるレベルに対してずっと高いレベルで、胚発生の間に見出されるが、成体にあっても低レベルの発現が継続していることは、成体の腸管(分化途上の細胞が腸陰窩中の組織幹細胞でのその供給源から腸管腔に対面する柔突起の表面にあるその最終位置へ移動することより生じる、明確化された構造を有する)のような組織の正常な機能におけるこれら分子の役割を反映するのかもしれない。エフリン受容体は、最初に、肝細胞癌において確認されて、EPH及びEFNの発現は、典型的には成体に限られているので、ヒト癌におけるエフリンリガンド及び/又はエフリン受容体の発現の再活性化は、癌細胞の脱分化、及び/又は周囲の正常組織に浸潤して原発性腫瘍の部位から離れた場所へ移動するこれら癌細胞の能力に関連する可能性がある。他の研究成果は、EPH−EFN相互作用が血管新生にも何らかの役割があることを示唆している。
【0047】
非リンパ系組織におけるEPH−EFN相互作用が、インテグリンと細胞骨格との再配列を介して細胞間の付着力又は反発力を産生することによって細胞の相互作用を調節するという知見に一致して、リンパ系細胞上で見出されるEPH及びEFN分子は、細胞外マトリックス成分への細胞付着、走化性、及び細胞遊走を媒介することが示されてきた。例えば、EFNA1(EphA2受容体へ結合して、例えば、Genbankアクセッション番号:NM_004428にあるようなアミノ酸配列を含む)の原発性CD4及びCD8T細胞上での参画(engagement)は、細胞遊走を刺激して、走化性を高めることが見出された。EFNA1のように、EFNA4は、原発性CD4T細胞上で発現されるが、EPH−EFN相互作用の雑多性のために、EFNA4の参画がこれらの細胞に対して類似の影響を及ぼすかどうかは不明である。しかしながら、成熟したヒトBリンパ球がEFNA4を発現して、活性時にそれを分泌することは証明されている。さらに、EFNA4は、他のどのEFN又はEPH分子とも異なり、慢性リンパ球性白血病(CLL)患者のB細胞上でも、又はそれによっても定常的に発現されている。興味深いことに、Q−PCRによって測定されるようなEFNA4アイソフォームの発現は、この疾患の臨床症状と相関する場合がある。また、CLL患者由来のB細胞(EFNA4の発現が増加していることが知られている)は、健常個体由来のB細胞と比較して、経内皮遊走能障害を示した。EFNA4の参画は、細胞外マトリックス分子へ付着するCLL細胞の能力を低下させて、CCL1に対するその走化性応答を低下させたようである。まとめてこれらの報告は、B及びT細胞の膜輸送におけるEFNA4の役割を示唆して、上記に考察した細胞内シグナル伝達データと組み合わせて視ると、エフリンAリガンド、そして特にEFNA4を、抗癌治療剤の開発にとってきわめて興味深い標的とする。
【0048】
上述の特徴に加えて、本開示は、EFNA4の発現が様々な癌幹細胞集団において上昇していることを証明する。バルク腫瘍においていくつかのEPHA受容体が同時に上方調節されていることと一致して、このことは、EFNA4媒介性リガンド受容体相互作用が、腫瘍増殖、血管新生、及び/又は腫瘍転移に関連した細胞シグナル伝達カスケードの引き金になり得るという可能性を提起する。ある特別な理論によって束縛されることを望まないが、本発明のEFNA4モジュレーター(特に、拮抗性又は中和性の態様)は、少なくとも一部は、腫瘍始原細胞頻度を低下させるか又は消失させるかのいずれかによって、従来の標準的な治療法レジメン(例、イリノテカン)とは異なる様式で、又は免疫療法的なシグナル伝達を介して、又はEFNA4発現細胞を殺傷することが可能なペイロードを送達することを介して、腫瘍の増殖又は生存に干渉することによって作用すると考えられている。例えば、EFNA4に拮抗することによるTPCの消失には、増殖性の細胞を消失させる化学療法レジメンに対抗して細胞増殖を単に促進すること、又はTPCの自己再生(即ち、無限の増殖と多能性の維持)能力が失われるようにその分化を促進することを含めてよい。あるいは、好ましい態様では、EFNA4発現細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞の動員、又は抗EFNA4抗体へコンジュゲートした、内在化することができる強力な毒素の送達によって、TPCを選択的に殺傷するか又は他の方法で無能化することができる。
【0049】
本明細書に使用するように、EFNA4(eph関連キナーゼ4のリガンド、LERK4;又はeph関連受容体チロシンキナーゼリガンド4、EFL−4としても知られる)という用語は、文脈により他に指定されなければ、天然に存在するヒトEFNA4を意味する。代表的なEFNA4タンパク質の相同分子種には、限定されないが、ヒト(即ち、hEFNA4、NP_005218、NP_872631、又はNP_872632)、マウス(NP_031936)、チンパンジー(XP_001153095、XP_001152971、XP_524893、及びXP_001152916)、及びラット(NP_001101162)のものが含まれる。転写されるヒトEFNA4遺伝子は、第一染色体由来の最低でも5817のbp(塩基対)を含む。3種のmRNA転写物変異体がこれまでに記載されてきた(このそれぞれは、転写されるRNAの選択的スプライシングより生じる):(1)201アミノ酸のプロタンパク質(NP_005218;EFNA4変異体a;配列番号2)をコードする、1276bp変異体(NM_005227;EFNA4転写物変異体1;配列番号1);(2)207アミノ酸プロタンパク質(NM_872631;EFNA4変異体b;配列番号3)をコードする、1110bp変異体(NM_182689;EFNA4転写物変異体2);及び(3)193アミノ酸プロタンパク質(NP_872632;EFNA4変異体c;配列番号4)をコードする、1111bp変異体(NM_182690;EFNA4転写物変異体3)。このヒトEFNA4タンパク質のそれぞれには、脱落してこのタンパク質の成熟型(即ち、168〜182aa)をもたらす、配列番号2のアミノ酸1〜25を含んでなる、予測されるシグナル又はリーダー配列が含まれることが理解されよう。このシグナルペプチドは、このポリペプチドを細胞表面/分泌経路へ標的化する。このタンパク質のコード配列に対する続発的な結果を伴うmRNAの選択的スプライシングにより、このタンパク質のアイソフォームは、細胞によって異なるプロセシングを受けて、アイソフォームaは、膜局在化して、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)連結によって細胞表面へ繋留され、一方アイソフォームb及びcは、GPI繋留シグナル配列を欠くので、その細胞によって分泌されると予測される。ヒトEFNA4の3種のタンパク質アイソフォームのアラインメントを図面1Cに示す。先に示したように、直接の言及又は文脈の必要性によって他に示さなければ、EFNA4という用語は、ヒトEFNA4のアイソフォームaと免疫反応性の同等物を指すものとする。この用語は、抗体又は免疫反応性断片が特異的に結合し得るエピトープを含有する、EFNA4のネイティブ型又は変異型の誘導体又は断片も意味する場合があることがさらに理解されよう。
【0050】
III.腫瘍永続化細胞
先行技術の教示とは対照的に、本発明は、腫瘍始原細胞、そして特に腫瘍永続化細胞に標的指向して、それによって新生物障害の治療、管理、又は予防を促進するのに特に有用であるEFNAモジュレーターを提供する。より具体的には、先に示したように、驚くべきことに、特定の腫瘍細胞亜集団は、EFNAを発現して、癌幹細胞の自己再生と細胞の生存に重要なモルフォゲンシグナル伝達の局在化調整を変化させる可能性があることが見出された。このように、好ましい態様では、EFNAのモジュレーターを本教示に従って使用して、腫瘍始原細胞頻度を低下させて、それによって過剰増殖性疾患の治療又は管理を促進することができる。
【0051】
本明細書に使用するように、腫瘍始原細胞(TIC)という用語には、腫瘍永続化細胞(TPC;即ち、癌幹細胞又はCSC)と高増殖性腫瘍始原細胞(TProgと呼ばれる)がともに含まれて、これらは一緒に、バルク腫瘍又は塊の独自の亜集団(即ち、0.1〜40%)を概ね含む。本開示の目的では、腫瘍永続化細胞及び癌幹細胞という用語は、同等であって、本明細書において可換的に使用してよい。逆に、TPCは、腫瘍内部に存在する腫瘍細胞の組成を完全に再現し得て、少数の単離細胞の連続移植(マウスを介した2回以上の継代)によって証明されるような無制限の自己再生能力を有する点で、TProgとは異なる。下記により詳しく考察するように、適正な細胞表面マーカーを使用する蛍光活性化細胞選別(FACS)は、少なくとも一部は、単一の細胞と細胞の塊(即ち、ダブレット等)を識別するその能力の故に、高度に濃縮した細胞亜集団(99.5%より高い純度)を単離するのに信頼し得る方法である。そのような技術を使用して、少ない細胞数の高度精製TProg細胞が免疫不全マウスへ移植されるときに、それらが一次移植体中の腫瘍増殖を促すことができることが示された。しかしながら、精製されたTPC亜集団とは異なり、TProg産生腫瘍は、表現型の細胞異種性において親腫瘍を完全には反映せず、後続の移植体において連続した腫瘍形成を再始動させることが明らかに非効率である。対照的に、TPC亜集団は、親腫瘍の細胞異種性を完全に再構成して、連続的に単離及び移植されるときに、腫瘍を効率的に始動させることができる。このように、当業者は、いずれも一次移植体において腫瘍を産生し得ても、TPCとTProgの間には明確な違いがあって、それは、少ない細胞数での連続移植時に異種な腫瘍増殖を永続的に促進するTPC独自の能力であることを認められよう。TPCの特性決定をするための他の通常のアプローチは、形態学と、細胞表面マーカー、転写プロフィール、及び薬物応答の検証に関連するが、マーカーの発現は、培養条件と in vitro での継代細胞株で変化する場合がある。
【0052】
従って、本発明の目的では、腫瘍永続化細胞は、正常組織において細胞の階層構造を支える正常幹細胞と同様に、好ましくは、多系統分化の能力を維持しながら無限に自己再生するその能力によって定義される。このように、腫瘍永続化細胞は、腫瘍形成性子孫(即ち、腫瘍始原細胞:TPC及びTProg)と非腫瘍形成性(NTG)子孫をともに産生することが可能である。本明細書に使用するように、非腫瘍形成細胞(NTG)は、腫瘍始原細胞より生じるが、それ自体では自己再生する能力も腫瘍を含む異種な系統の腫瘍細胞を産生する能力も有さない、腫瘍細胞を意味する。実験的には、NTG細胞は、過剰の細胞数で移植されるときでも、マウスにおいて腫瘍を再現可能的に形成することができない。
【0053】
示したように、TProgは、マウス中で腫瘍を産生するその限られた能力により、腫瘍始原細胞(又はTIC)としても分類される。TProgは、TPCの子孫であって、典型的には、有限回の非自己再生性の細胞分裂が可能である。さらに、TProg細胞は、初期腫瘍始原細胞(ETP)と後期腫瘍始原細胞(LTP)へさらに分割される場合があり、このそれぞれは、表現型(例、細胞表面マーカー)と腫瘍細胞構造を再現する能力の差によって識別され得る。そのような技術上の差異にも拘らず、ETPとLTPはともに、少ない細胞数で移植されるときに腫瘍を連続的に再構成することが概ね不可能であって、典型的には、親腫瘍の異種性を反映しないという点で、TPCとは機能的に異なる。上述の差異にも拘らず、様々なTProg集団が、稀な場合に、通常は幹細胞に起因する自己再生能力を獲得して、それ自体でTPC(又はCSC)になることが可能であることも示されてきた。いずれにしても、一人の患者の典型的な腫瘍塊には、両方の種類の腫瘍始原細胞が現れる可能性があって、本明細書に開示するモジュレーターでの治療の影響を受ける。即ち、開示される組成物は、腫瘍に表れる特別な態様又は混在に拘らず、このようなEFNA陽性腫瘍始原細胞の頻度を低下させるか又はその化学療法感受性を変化させるのに概ね有効である。
【0054】
本発明の文脈では、TPCは、TProg(ETPとLTPの両方)、NTG細胞、及び腫瘍のバルクを含む腫瘍浸潤性非TPC由来細胞(例、線維芽細胞/間質細胞、内皮及び造血細胞)より腫瘍形成性であって、相対的により不活動性であって、より化学療法抵抗性であることが多い。慣用の療法及びレジメンが、大部分は、腫瘍を減量させるとともに増殖中の細胞を速やかに攻撃するように設計されてきたとすれば、TPCは、慣用の療法及びレジメンに対して、より速く増殖中のTProgや他のバルク腫瘍細胞集団よりも、抵抗性になる可能性がある。さらに、TPCは、慣用の療法に対してそれらを相対的に化学療法抵抗性にする、多剤耐性輸送体の発現増加、DNA修復機序の増強、及び抗アポトーシスタンパク質といった他の特徴をしばしば発現する。そのそれぞれがTPCによる薬剤耐性に寄与するこれらの特性は、標準腫瘍学の治療レジメンが進行期の新生物を担うほとんどの患者に長期の利益を保証することができないこと、即ち、継続した腫瘍の増殖及び再発を促すそれらの細胞(即ち、TPC又はCSC)に充分に標的指向してそれらを根絶することができないことの主要な理由を構成する。
【0055】
上述した先行技術の治療法の多くと異なり、本発明の新規組成物は、好ましくは、選択したモジュレーターの形態又は特定の標的(例、遺伝物質、EFNA抗体、又はリガンド融合構築体)に拘らず、被検者への投与時に、腫瘍始原細胞の頻度を低下させる。上記に注目したように、腫瘍始原細胞頻度の低下は、a)腫瘍始原細胞の消失、枯渇、増感、沈静化、又は阻害;b)腫瘍始原細胞の増殖、拡張、又は再発を制御すること;c)腫瘍始原細胞の始動、伝播、維持、又は増殖を妨害すること;又はd)他の方法で、腫瘍形成細胞の生存、再生、及び/又は転移を妨げることの結果として起こり得る。いくつかの態様において、腫瘍始原細胞の頻度の低下は、1以上の生理学的経路における変化の結果として起こる。この経路の変化は、腫瘍始原細胞の低下又は消失によっても、それらの潜在能力(例、分化誘導、ニッチ破壊)を変化させるか又は、腫瘍環境又は他の細胞に対して影響を及ぼすそれらの能力に他の方法で干渉することによっても、腫瘍形成、腫瘍維持、及び/又は転移と再発を阻害することによって、EFNA関連障害のより有効な治療を同様に可能にする。
【0056】
このような腫瘍始原細胞の頻度の低下を評価するために使用し得る方法には、in vitro 又は in vivo のいずれかの限界希釈分析があり、好ましくは、ポアソン分布統計を使用する計数、又は in vivo で腫瘍を産生する能力の有無といった、既定義の決定的な事象の頻度を評価することをそれに続ける。そのような限界希釈分析は、腫瘍始原細胞頻度の低下を計算する好ましい方法であるが、他のさほど厳密でない方法も、やや正確ではないとしても、所望の数値を有効に決定するために使用し得て、本明細書の教示と全く適合可能である。このように、当業者によって理解されるように、頻度値の低下をよく知られたフローサイトメトリー又は免疫組織化学の手段により決定することも可能である。上述のすべての方法に関しては、例えば、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる、Dylla et al. 2008, PMCID: PMC2413402 及び Hoey et al. 2009, PMID: 19664991 を参照のこと。
【0057】
限界希釈分析に関して言えば、コロニー形成を助長する in vitro 増殖条件の中へ分画又は未分画いずれかのヒト腫瘍細胞(例えば、それぞれ、処置済み又は未処置の腫瘍に由来する)を沈着させることによって、腫瘍始原細胞頻度の in vitro 計数を達成することができる。この方法では、コロニーの単純なカウンティング及び特性決定によっても、例えば、系列希釈液のプレート中へのヒト腫瘍細胞の沈着と、各ウェルについてコロニー形成が陽性又は陰性かをプレート培養後少なくとも10日間採点することからなる分析によっても、コロニー形成細胞を計数することができる。腫瘍始原細胞頻度を決定するその能力が概してより正確である、in vivo の限界希釈実験又は分析には、未処置対照又は処置条件のいずれかに由来のヒト腫瘍細胞を、例えば免疫不全マウスの中へ系列希釈液で移植した後で、各マウスについて腫瘍形成が陽性又は陰性かを移植後少なくとも60日間採点することが含まれる。in vitro 又は in vivo での限界希釈分析による細胞頻度値の導出は、好ましくは、ポアソン分布統計を陽性及び陰性事象の既知頻度へ適用して、それにより陽性事象(この場合は、それぞれ、コロニー又は腫瘍の形成)の定義を満たす事象の頻度を提供することによって行う。
【0058】
腫瘍始原細胞頻度を計算するために使用し得る、本発明と適合可能な他の方法に関して言えば、ごく普通の方法は、定量可能なフローサイトメトリー技術と免疫組織化学染色手順を含む。直前に記載した限界希釈分析技術ほど正確ではないが、これらの手順は、ずっと労働集約的ではなくて、妥当な数値を相対的に短い時間枠で提供する。このように、当業者は、腫瘍始原細胞について濃縮することが知られている、当該技術分野で認められた細胞表面タンパク質(例えば、下記の実施例1で説明するような、潜在的に適合可能なマーカー)と結合する1以上の抗体又は試薬を利用して、それによって様々な試料由来のTICレベルを測定する、フローサイトメトリー細胞表面マーカープロフィール決定法を使用し得ることが理解されよう。なお別の適合可能な方法において、当業者は、これらの細胞を区別すると考えられる細胞表面タンパク質へ結合することが可能である1以上の抗体又は試薬を使用する免疫組織化学によって、TIC頻度を in situ で(例えば、組織切片において)計数することができよう。
【0059】
従って、上記に参照した方法のいずれを使用しても、本明細書の教示に従って、開示されるEFNAモジュレーター(細胞傷害剤へコンジュゲートしたものを含めて)によって提供されるTIC(又はその中のTPC)の頻度の低下を定量することが可能である。いくつかの事例において、本発明の化合物は、TICの頻度を(消失、分化誘導、ニッチ破壊、沈静化、等が含まれる、上記に注目した多様な機序によって)10%、15%、20%、25%、30%、又は35%も低下させる場合がある。他の態様において、TICの頻度の低下は、約40%、45%、50%、55%、60%、又は65%のオーダーであり得る。ある態様において、開示される化合物は、TICの頻度を、70%、75%、80%、85%、90%、又は95%も低下させる場合がある。当然ながら、TICの頻度のどの低下も、新生物の腫瘍形成性、永続性、再発、及び攻撃性の対応する低下をもたらす可能性がある。
【0060】
IV.EFNAモジュレーター
いずれにしても、本発明は、いくつかのEFNA関連悪性腫瘍のいずれもの診断、治療及び/又は予防のためのEFNAモジュレーター(EFNAアンタゴニストが含まれる)の使用へ向けられる。開示モジュレーターは、単独で使用しても、化学療法剤又は免疫療法剤又は生物学的応答調節物質のような多種多様な抗癌化合物と一緒に使用してもよい。他の選択された態様では、2以上の別々のEFNAモジュレーターを組み合わせて使用して増強された抗新生物効果をもたらす場合もあれば、それを使用して多重特異性の構築体を作製する場合もある。
【0061】
ある態様において、本発明のEFNAモジュレーターは、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、又はポリペプチドを含む。なおより好ましくは、当該モジュレーターは、可溶性EFNA(sEFNA)、又はその形態、変異体、誘導体又は断片を含み、それには、例えば、EFNA融合構築体(例、EFNA−Fc、EFNA−標的化部分、等)又はEFNA−コンジュゲート(例、EFNA−PEG、EFNA−細胞傷害剤、EFNA−brm、等)が含まれる。また、他の態様において、EFNAモジュレーターは、抗体(例、抗EFNA1又は抗EFNA4 mAb)又はその免疫反応性断片若しくは誘導体を含むと理解される。特に好ましい態様において、本発明のモジュレーターは、中和抗体又はその誘導体若しくは断片を含む。他の態様において、EFNAモジュレーターは、内在化抗体(internalizing antibody)又はその断片を含んでよい。なお他の態様において、EFNAモジュレーターは、枯渇性抗体又はその断片を含んでよい。さらに、上述した融合構築体に関して言えば、これらの抗体モジュレーターは、選択される細胞傷害剤、ポリマー、生物学的応答調節物質(BRM)、等とコンジュゲートする、連結する、又は他の方法で会合して、様々な(そして任意選択的に、多数の)作用機序で、指向される免疫療法を提供することができる。上記に述べたように、そのような抗体は、汎EFNA抗体であって2以上のエフリンAリガンドと会合しても、6種のエフリンAリガンドの1つと選択的に反応する免疫特異抗体であってもよい。なお他の態様において、当該モジュレーターは、遺伝子レベルで機能し得て、アンチセンス構築体、siRNA、マイクロRNA、等といった化合物を含んでよい。
【0062】
本明細書の教示に基づいて、当業者は、本発明の特に好ましい態様が、sEFNA4又はsEFNA1を含んでも、EFNA4又はEFNA1の一方又は両方と会合する抗体モジュレーターを含んでもよいことを理解されよう。
【0063】
開示されるEFNAモジュレーターは、選択される経路に作動するか又は拮抗すること、又は、例えば、EFNAモジュレーター、あらゆる会合ペイロード、又は投薬、及び送達法の形態に依存して、特定の細胞を消失させることが含まれる多様な機序を介して、腫瘍細胞(特にTPC)及び/又は関連する新生物を枯渇する、沈静化する、中和する、消失させる、又はその増殖、伝播、又は生存を阻害し得ることがさらに理解されよう。従って、本明細書に開示する好ましい態様は、腫瘍永続化細胞のような特定の腫瘍細胞亜集団の枯渇、阻害、又は沈静化へ向けられるが、そのような態様は、単に例示であって、いかなる意味でも限定的ではないことが強調されなければならない。むしろ、付帯の特許請求項において説明されるように、本発明は、如何なる特別な機序にも標的腫瘍細胞集団にも関係なく、EFNAモジュレーターと、様々なEFNA関連過剰増殖性障害の治療、管理、又は予防におけるそれらの使用へ概括的に向けられる。
【0064】
同じ意味において、本発明の開示態様は、1以上のEFNAアンタゴニストを含んでよい。そのために、本発明のEFNAアンタゴニストは、EFNAタンパク質又はその断片を認識する、それと反応する、結合する、複合する、競合する、会合する、又は他の方法で相互反応して、腫瘍始原細胞又は他の新生物細胞(バルク腫瘍又はNTG細胞が含まれる)の増殖を消失させる、沈静化する、低下させる、阻害する、妨害する、束縛する、又は制御する、如何なるリガンド、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質、抗体、又は免疫学的に活性なその断片若しくは誘導体も含んでよいことが理解されよう。選択される態様において、EFNAモジュレーターは、EFNAアンタゴニストを含む。
【0065】
本明細書に使用するように、アンタゴニストは、特別又は特定のタンパク質の活性(受容体のリガンドへの結合、又は酵素の基質との相互作用が含まれる)を中和する、遮断する、阻害する、廃絶する、低下させる、又はそれに干渉することが可能な分子を意味する。より一般的には、本発明のアンタゴニストは、抗体とその抗原結合性断片若しくは誘導体、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、糖脂質、多糖、オリゴ糖、核酸、アンチセンス構築体、siRNA、miRNA、生体有機分子、ペプチド模倣体、薬剤とその代謝産物、転写及び翻訳制御配列、等を含んでよい。アンタゴニストには、該タンパク質へ特異的に結合して、それによってその基質標的へのその結合を隔離する、低分子阻害剤、融合タンパク質、受容体の分子及び誘導体、該タンパク質のアンタゴニスト変異体、該タンパク質へ指向されるアンチセンス分子、RNAアプタマー、並びに該タンパク質に対するリボザイムも含めてよい。
【0066】
本明細書に使用するように、そして2以上の分子又は化合物へ適用されるように、「認識する」又は「会合する」という用語は、それによって一方の分子が他方の分子に対して影響を及ぼす、共有結合的又は非共有結合的な、両分子の反応、結合、特異結合、複合、相互作用、接続、連結、一体化、合体、合併、又は接合を意味するものとする。
【0067】
さらに、本発明の実施例において証明するように、ヒトEFNAのモジュレーターには、ある事例において、ヒト以外の種由来の(例、マウスの)EFNAと交差反応するものがある。他の事例において、例示のモジュレーターは、ヒトEFNAの1以上のアイソフォームに特異的であり得、他の種由来のEFNA相同分子種との交差反応性を示さない。当然ながら、本明細書の教示に一致して、そのような態様は、単一の種由来の2以上のエフリンAリガンドと会合する汎EFNA抗体、又は単一のエフリンAリガンドと排他的に会合する抗体を含んでよい。
【0068】
いずれにしても、そして下記により詳しく考察するように、当業者は、開示モジュレーターをコンジュゲート形態でも非コンジュゲート形態でも使用してよいことを理解されよう。即ち、当該モジュレーターは、医薬活性化合物、生物学的応答調節物質、抗癌剤、細胞傷害剤又は細胞増殖抑制剤、診断部分、又は生体適合可能な修飾剤と(例えば、共有結合的又は非共有結合的に)会合又はコンジュゲートしてよい。この点について言えば、そのようなコンジュゲートは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、低分子、模倣剤、合成薬、無機分子、有機分子、及び放射性核種を含んでよいと理解されよう。さらに、本明細書で示したように、選択したコンジュゲートは、そのコンジュゲーションに影響を及ぼすのに使用される方法に少なくとも一部は依存して、EFNAモジュレーターへ様々なモル比で共有結合的又は非共有結合的に連結してよい。
【0069】
IV.抗体
a.概説
先に述べたように、本発明の特に好ましい態様は、EFNAモジュレーターを抗体の形態で含む。抗体という用語は最も広義に使用されて、具体的には、合成抗体、モノクローナル抗体、オリゴクローナル又はポリクローナル抗体、マルチクローナル抗体、組換え産生抗体、細胞内抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、一価抗体、多価抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体(CDR-grafted antibody)、霊長類化抗体、Fab断片、F(ab’)断片、単鎖FvFcs(scFvFc)、単鎖Fvs(scFv)、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、及び(所望される生理活性、即ち、EFNAとの会合又は結合を示す限りにおいて)他のあらゆる免疫学的に活性な抗体断片を網羅する。より広義において、本発明の抗体には、免疫グロブリン分子と免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片(即ち、抗原結合部位を含有する分子)が含まれて、ここでこれらの断片は、限定されないが、Fc領域又はその断片が含まれる、別の免疫グロブリンドメインへ融合してもしなくてもよい。さらに、本明細書においてより詳しく概説されるように、抗体及び抗体(複数)という用語には、具体的には、下記に記載のようなFc変異体が含まれ、完全長の抗体と、Fc領域又はその断片を含んでなり、少なくとも1つのアミノ酸残基修飾を含んでもよく、そして免疫グロブリンの免疫学的に活性な断片へ融合してもよい、変異体Fc融合体が含まれる。
【0070】
下記により詳しく考察するように、抗体又は免疫グロブリンという一般用語は、生化学的に、そしてその重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依って、識別することができて、適正なクラスへ容易に帰属させることができる、5種の別個の抗体のクラスを含む。史的な理由のために、インタクト抗体の主要クラスは、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMと呼ばれる。ヒトでは、IgG及びIgAのクラスが、構造とある種の生化学的特性に依って、認知されたサブクラス(アイソタイプ)、即ち、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2へさらに分類され得る。ヒトのIgGアイソタイプは、血清中のその豊富さの順で命名されて、IgG1が最も豊富であることが理解されよう。
【0071】
全5種の抗体クラス(即ち、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM)とすべてのアイソタイプ(即ち、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、並びにその変異体が本発明の範囲内にあるが、IgGクラスの免疫グロブリンを含んでなる好ましい態様について、単に例証の目的のために、やや詳しく考察する。しかしながら、そのような開示は、本発明を実施する例示の組成物及び方法について単に実証するのであって、本発明の範囲又は付帯の特許請求項を決して限定するものではないことを理解されたい。
【0072】
この点に関して言えば、ヒトIgG免疫グロブリンは、分子量がほぼ23,000ダルトンの2つの同一の軽いポリペプチド鎖と、分子量がアイソタイプに依存して53,000〜70,000である2つの同一の重鎖を含む。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、対応するギリシャ語の小文字、α、δ、ε、γ、及びμによってそれぞれ示される。どの脊椎動物種由来の抗体の軽鎖も、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる、2つの明らかに別個の型の1つへ帰属させることができる。当業者は、異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元配置がよく知られていることを理解されよう。
【0073】
この4本の鎖は、ジスルフィド結合によってY配置で結合して、ここで軽鎖は、重鎖の外側にあって、Yの開口部より始まって、可変領域を通して続いて、Yの両端に至る。それぞれの軽鎖が重鎖へ1つの共有ジスルフィド結合によって連結するのに対し、ヒンジ領域にある2つのジスルフィド連結は、重鎖を結合する。それぞれの重鎖及び軽鎖はまた、一定間隔の鎖内ジスルフィド架橋を有するが、その数は、IgGのアイソタイプに基づいて変動し得る。
【0074】
それぞれの重鎖は、一端に可変ドメイン(V)を有し、いくつかの定常ドメインがこれに続く。それぞれの軽鎖は、一端に可変ドメイン(V)を、そしてその他端に定常ドメインを有し;軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第一定常ドメインと並置して、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと並置している。この点に関して言えば、軽鎖の可変ドメイン(V)と重鎖の可変ドメイン(V)の両方の部分が抗原認識と特異性を決定すると理解される。一方、軽鎖の定常ドメイン(C)と重鎖の定常ドメイン(C1、C2、又はC3)は、分泌、経胎盤移動性、循環半減期、補体結合、等といった重要な生物学的特性を付与して制御する。転換によって、定常領域ドメインの番号付けは、それらが抗体の抗原結合部位又はアミノ末端からより離れるにつれて増加する。このように、抗体のアミノ又はN末端は、可変領域を含み、カルボキシ又はC末端は、定常領域を含む。このように、C3ドメインとCドメインは、それぞれ重鎖及び軽鎖のカルボキシ末端を実際に含む。
【0075】
「可変」という用語は、可変ドメインのある部分が免疫グロブリン間の配列において広範囲に異なっていて、これらのホットスポットが特別な抗体の結合及び特異性の特徴を概ね決定するという事実に関連する。これらの超可変部位は、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインの両方において、相補性決定領域(CDR)として知られる、それぞれ3つのセグメントで出現する。CDRの近傍にある可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。より具体的には、天然に存在する単量体のIgG抗体において、抗体の各アームに存在するこの6つのCDRは、抗体が水性環境においてその三次元構造をとるときに、抗原結合部位を形成するように特異的に定位される、アミノ酸の短い不連続配列である。
【0076】
重鎖及び軽鎖の可変ドメインの残りを含んでなるフレームワーク領域は、アミノ酸配列において、より少ない分子間変動性を示す。むしろ、フレームワーク領域は、概ねβシートコンホメーションを採って、CDRは、このβシート構造に連結して、ある場合はその一部となるループを形成する。このように、これらのフレームワーク領域は、6つのCDRを非共有結合性の鎖間相互作用によって正確な配向で定位することをもたらす骨格を形成するように作用する。この定位されたCDRによって形成される抗原結合部位は、免疫反応性抗原(即ち、EFNA4)上のエピトープに対する表面相補性を決定する。この相補的な表面は、免疫反応性抗原エピトープに対する抗体の非共有結合を促進する。CDRの位置は、当業者によって容易に確定され得ると理解されよう。
【0077】
下記により詳しく考察するように、そして付帯の「実施例」において示すように、有効な抗体を提供するために、標準の組換え及び発現技術を使用して、重鎖及び軽鎖の可変領域の全部又は一部を再結合又は工学処理してよい。即ち、第一抗体(又はそのあらゆる部分)由来の重鎖又は軽鎖可変領域を、第二抗体由来の重鎖又は軽鎖可変領域のどの選択される部分とも混合して適合させてよい。例えば、1つの態様では、第一抗体の3つの軽鎖CDRを含んでなる軽鎖可変領域全体を、第二抗体の3つの重鎖CDRを含んでなる重鎖可変領域全体と対合させて、作動可能な(operative)抗体を提供することができる。さらに、他の態様では、様々な抗体に由来する個々の重鎖及び軽鎖CDRを混合して適合させて、最適化された特徴を有する所望の抗体を提供することができる。このように、例示の抗体は、第一抗体由来の3つの軽鎖CDR、第二抗体由来の2つの重鎖CDR、及び第三抗体由来の第三の重鎖CDRを含んでよい。
【0078】
より具体的には、本発明の文脈では、図面7Aにおいて開示される重鎖及び軽鎖CDRのいずれも、本明細書の教示に従ってこの方法で再配置させて、最適化された抗EFNA(例、抗hEFNA4)抗体を提供し得ることが理解されよう。即ち、図面7Aに開示されるCDRの1以上を、EFNAモジュレーターに、そして特に好ましい態様では、1以上のエフリンAリガンドと免疫特異的に会合するCDR移植又はヒト化抗体に取り込むことができる。
【0079】
いずれにしても、相補性決定領域の残基番号は、Kabat et al.(1991, NIH 公開公報 91-3242, National Technical Information Service, Springfield, Va.)のそれのように定義し得て、具体的には、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(CDR1)、50〜56(CDR2)及び89〜97(CDR3)と重鎖可変ドメイン中の31〜35(CDR1)、50〜65(CDR2)及び95〜102(CDR3)である。CDRは、抗体ごとにかなり変動する(そして、定義上、カバット(Kabat)コンセンサス配列との相同性を示さない)ことに留意されたい。フレームワーク残基の最大の並置には、しばしば、Fv領域に使用するために、スペーサー残基をこの番号付けシステムに挿入することが求められる。加えて、ある個別残基の同一性は、どの所与のカバット部位番号でも、種間又は対立遺伝子の多様性により、抗体鎖ごとに変動する場合がある。Chothia et al., J. Mol. Biol. 196: 901-917 (1987); Chothia et al., Nature 342, pp.877-883 (1989) 及び MacCallum et al., J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996) も参照のこと。ここでその定義には、互いに対して比較するときのアミノ酸残基の重なり又は亜集合が含まれる。上述した参考文献のそれぞれは、その全体において参照により本明細書に組み込まれて、上記に引用した参考文献のそれぞれによって定義されるようなCDRが含まれるアミノ酸残基を比較のために示す。
【0080】
CDRの諸定義
【0081】
【表2】
【0082】
簡便性のために、図面7Aに示すCDR(配列番号8〜59及び70〜95)は、VBASE2分析に由来しているが、本出願の内容があれば、当業者は、それぞれの各重鎖及び軽鎖配列について、Kabat et al. 又は MacCallum et al. によって定義されるようにCDRを容易に同定して列挙することができよう。この点に関して言えば、実施例7(b)で説明するヒト化分析には、Kabat et al. によって定義されるようなCDRを使用して、本発明に従ってヒト化抗体配列を図示する図面7O〜7R(配列番号148〜163)において下線を施している。従って、本発明の範囲内には、すべてのそのような命名法によって定義されるCDRを含んでなる抗体が明白に含まれる。より概括的に言えば、「可変領域CDRアミノ酸残基」という用語には、上記に示したようなどの配列又は構造ベースの方法を使用しても同定されるようなCDR中のアミノ酸が含まれる。
【0083】
本明細書に使用するように、「可変領域フレームワーク(FR)アミノ酸残基」という用語は、Ig鎖のフレームワーク領域中のアミノ酸に言及する。本明細書に使用する「フレームワーク領域」又は「FR領域」という用語には、可変領域の一部であるが、CDRの一部ではない(例えば、CDRのカバット定義を使用する)アミノ酸残基が含まれる。故に、可変領域フレームワークは、長さが約100〜120個のアミノ酸の不連続配列であるが、CDRの外側のアミノ酸だけが含まれる。
【0084】
重鎖可変領域の具体例では、そして Kabat et al. によって定義されるようなCDRでは、フレームワーク領域1がアミノ酸1〜30を囲む可変領域のドメインに対応し;フレームワーク領域2がアミノ酸36〜49を囲む可変領域のドメインに対応し;フレームワーク領域3がアミノ酸66〜94を囲む可変領域のドメインに対応して、フレームワーク領域4がアミノ酸103〜可変領域の末端までの可変領域のドメインに対応する。軽鎖のフレームワーク領域も、軽鎖可変領域CDRのそれぞれによって同様に分離している。同様に、Chothia et al. 又は McCallum et al. によるCDRの定義を使用すると、フレームワーク領域の境界は、上記に記載のようなそれぞれのCDR末端によって分離される。
【0085】
上述した構造上の考慮事項を銘記して、当業者は、本発明の抗体が、いくつかの機能的な態様のいずれも含んでよいことを理解されよう。この点に関して言えば,適合可能な抗体は、被検者において所望される生理学的応答をもたらす、どの免疫反応性抗体(この用語は、本明細書において定義される)も含んでよい。開示される抗体のいずれも本教示に従って使用してよいが、本発明のある態様は、キメラ、ヒト化、又はヒトモノクローナル抗体、又はそれらの免疫反応性断片を含む。なお他の態様は、例えば、ホモ(homogeneous)又はヘテロ(heterogeneous)の多量体構築体、Fc変異体、及びコンジュゲートされたか又はグリコシル化により改変された抗体を含んでよい。さらに、そのような配置が相互に排他的ではないこと、そして適合可能な個々の抗体が本明細書に開示する機能的な側面の1以上を含んでよいことが理解されよう。例えば、適合可能な抗体は、ヒト化可変領域がある一本鎖の二重特異性抗体(diabody)、又はグリコシル化パターンを変化させて血清半減期を調節するFc修飾がある、完全にヒトの完全長IgG3抗体を含んでよい。当業者には、他の例示態様が容易に明らかであって、本発明の範囲内にあるものとして容易に識別可能であり得る。
【0086】
b.抗体作製
よく知られているように、本明細書の教示に従った抗体を提供するには、ウサギ、マウス、ラット、等が含まれる様々な宿主動物に接種して、これを使用してよい。免疫学的応答を高めるために使用し得る、当該技術分野で知られたアジュバントには、接種される種に依存して、限定されないが、フロイント(完全及び不完全)アジュバント、水酸化アルミニウムのような鉱物ゲル剤、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油乳剤、スカシ貝ヘモシアニン、ジニトロフェノールのような界面活性物質、並びにBCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム・パルブム(corynebacterium parvum)のような、潜在的に有用なヒトアジュバントが含まれる。このようなアジュバントは、抗原を局所の貯蔵部位(deposit)へ隔離することによってその速やかな拡散を防ぐ場合もあれば、マクロファージにとって走化性である因子や免疫系の他の成分を分泌するように宿主を刺激する物質を含有する場合もある。好ましくは、ポリペプチドを投与するならば、免疫化のスケジュールは、該ポリペプチドの2回以上の投与が数週にわたって行われることを伴う。
【0087】
選択されるアイソフォーム及び/又はペプチド、又は所望のタンパク質を発現する生細胞又は細胞調製物を含み得るEFNA免疫原(例、可溶性EFNA4又はEFNA1)での動物の接種後、その動物より、当該技術分野で公知の技術を使用して、抗体及び/又は抗体産生細胞を入手することができる。いくつかの態様では、動物を出血させるか又は犠牲にすることによってポリクローナル抗EFNA抗体含有血清を入手する。この血清は、動物より入手した形態で研究目的に使用しても、あるいは、この抗EFNA抗体を部分的又は完全に精製して、免疫グロブリン画分又は同種の抗体調製物を提供してもよい。
【0088】
c.モノクローナル抗体
本発明のある側面と併せてポリクローナル抗体を使用してよいが、好ましい態様は、EFNA反応性モノクローナル抗体の使用を含む。本明細書に使用するように、「モノクローナル抗体」又は「mAb」という用語は、実質的に同種の抗体の集団より得られる抗体を意味し、即ち、この集団を含んでなる個々の抗体は、微量に存在し得る可能な突然変異(例、天然に存在する突然変異)以外は、同一である。このように、「モノクローナル」という修飾語は、別々の抗体の混合物ではないという抗体の特徴を示して、どの種類の抗体と併せて使用してもよい。ある態様において、そのようなモノクローナル抗体には、EFNAと結合又は会合するポリペプチド配列を含んでなる抗体が含まれて、ここでEFNA結合ポリペプチド配列は、複数のポリペプチド配列からの単一の標的結合ポリペプチド配列の選択が含まれる方法によって入手される。
【0089】
好ましい態様では、免疫化した動物より単離した細胞より抗体産生細胞株を調製する。免疫化の後で、その動物を犠牲にして、付帯の「実施例」に示すような、当該技術分野で周知の手段によって、リンパ節及び/又は脾臓B細胞を不死化する。細胞を不死化する方法には、限定されないが、それらを癌遺伝子でトランスフェクトすること、それらを癌ウイルスに感染させて不死化細胞を選別する条件の下でそれらを培養すること、それらを発癌性化合物又は変異原性化合物へ処すること、それらを不死化細胞(例、骨髄腫細胞)と融合すること、及び腫瘍抑制遺伝子を不活性化することが含まれる。骨髄腫細胞との融合を使用する場合、骨髄腫細胞は、好ましくは、免疫グロブリンポリペプチドを分泌しない(非分泌細胞株)。エフリンAリガンド(選択されるアイソフォームが含まれる)又はその免疫反応性部分を使用して、不死化細胞をスクリーニングする。好ましい態様において、最初のスクリーニングは、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)又はラジオイムノアッセイを使用して実施する。
【0090】
より一般的には、ハイブリドーマ、組換え技術、ファージディスプレイ技術、酵母ライブラリー、トランスジェニック動物(例、XenoMouse(登録商標)又はHuMAb Mouse(登録商標))、又はこれらの何らかの組み合わせが含まれる、当該技術分野で公知の多種多様な技術を使用して、本発明に一致した別々のモノクローナル抗体を製造することができる。例えば、上記に概括的に記載されて、Harlow et al.「抗体:実験マニュアル(Antibodies:A Laboratory Manual)」(コールドスプリングハーバーラボラトリー出版局、第2版、1988);「モノクローナル抗体とT細胞ハイブリドーマ(Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas)」(エルセヴィエ、ニューヨーク、1981)中、Hammerling, et al., 563-681(このそれぞれは、本明細書に組み込まれる)においてより詳しく教示されるようなハイブリドーマ技術を使用して、モノクローナル抗体を製造することができる。開示されるプロトコールを使用して、好ましくは、関連の抗原とアジュバントの多数の皮下又は腹腔内注射によって、抗体を哺乳動物中で産生する。先に考察したように、この免疫化は、活性化された脾臓細胞又はリンパ球からの抗原反応性抗体(免疫化動物がトランスジェニックであれば、完全にヒトのものであり得る)の産生を含む免疫応答を概ね誘発する。生じる抗体は、この動物の血清より採取してポリクローナル調製物を提供し得るが、一般的には、脾臓、リンパ節、又は末梢血より個々のリンパ球を単離して、モノクローナル抗体の同種調製物を提供することがより望ましい。最も典型的には、脾臓よりリンパ球を入手して不死化して、ハイブリドーマを提供する。
【0091】
例えば、上記に記載のように、この選択法は、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、又は組換えDNAクローンのプールのような複数のクローンからのユニークなクローンの選択であり得る。例えば、標的への親和性を高める、標的結合配列をヒト化する、細胞培養中でのその産生を改善する、その in vivo での免疫原性を低下させる、多重特異性抗体を創出する、等のために選択したEFNA結合配列をさらに改変することができること、そしてその改変した標的結合配列を含んでなる抗体も本発明のモノクローナル抗体であることが理解されるべきである。異なる決定基(エピトープ)に対して指向された別々の抗体が典型的には含まれるポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物のそれぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一決定基に対して指向される。その特異性に加えて、モノクローナル抗体調製物は、典型的には、交差反応性であり得る他の免疫グロブリンがそこに混在していない点で有利である。
【0092】
d.キメラ抗体
別の態様において、本発明の抗体は、少なくとも2つの異なる種又は種類の抗体からの共有結合したタンパク質セグメントに由来するキメラ抗体を含んでよい。本明細書に使用するように、「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特別な種に由来するか又は特別な抗体クラス又はサブクラスに属する抗体中の対応配列と同一又は相同である一方で、この鎖(複数)の残りは、別の種に由来するか又は別の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体、並びにそのような抗体の断片(それらが所望される生理活性を示す限りにおいて)の中の対応配列と同一又は相同である構築体へ向けられると理解されよう(米国特許第4,816,567号;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81: 6851-6855 (1984))。1つの例示態様において、本明細書の教示に従うキメラ抗体は、マウスのV及びVアミノ酸配列とヒトの供給源に由来する定常領域を含んでよい。他の適合可能な態様において、本発明のキメラ抗体は、下記に記載のようなCDR移植抗体又はヒト化抗体を含んでよい。
【0093】
一般的に言えば、キメラ抗体を作製する目標は、企図される被検者種からのアミノ酸の数が最大化されたキメラを創出することである。1つの例は、CDR移植抗体であって、ここでこの抗体は、特別な種に由来するか又は特別な抗体クラス又はサブクラスに属する1以上の相補性決定領域(CDR)を含む一方で、この抗体鎖(複数)の残りは、別の種に由来するか又は別の抗体クラス又はサブクラスに属する抗体中の対応配列と同一又は相同である。ヒトにおける使用のためには、齧歯動物の抗体からの可変領域又は選択CDRをヒト抗体の中へ移植して、ヒト抗体の天然に存在する可変領域又はCDRに置き換える。これらの構築体は、一般的には、最強のモジュレーター機能(例、CDC、ADCC、等)を提供する一方で、この抗体に対する被検者による望まれない免疫応答を低下させるという利点を有する。
【0094】
e.ヒト化抗体
CDR移植抗体に似ているのがヒト化抗体である。一般的に言えば、ヒト化抗体は、初めは非ヒト動物において作製されたモノクローナル抗体より産生する。本明細書に使用するように、非ヒト(例、マウス)抗体のヒト化形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有するキメラ抗体である。1つの態様において、ヒト化抗体は、レシピエント抗体のCDRからの残基が、所望される特異性、親和性、及び/又は能力を有する、マウス、ラット、ウサギ、又はヒト霊長動物のような非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基に置き換わっている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント又はアクセプター抗体)である。
【0095】
一般的に言えば、抗体のヒト化は、ドナー抗体とレシピエント抗体の両方の配列相同性及びカノニカル構造の分析を含む。選択態様において、レシピエント抗体は、コンセンサス配列を含む場合がある。ヒトのコンセンサスフレームワークを創出するには、いくつかのヒト重鎖又は軽鎖アミノ酸配列からのフレームワークを並置して、コンセンサスアミノ酸配列を同定することができる。さらに、多くの事例では、ヒト免疫グロブリンの可変ドメイン中の1以上のフレームワーク残基を、ドナー抗体からの対応する非ヒト残基によって置き換える。これらのフレームワーク置換は、当該技術分野で周知の方法によって(例えば、CDR残基とフレームワーク残基の相互作用をモデル化して、抗原結合に重要なフレームワーク残基を同定すること、及び特別な位置での異常なフレームワーク残基を同定するための配列比較によって)確認される。このような置換は、移植CDR(複数)適正な三次元配置を維持するのに役立ち、フレームワーク置換のない類似の構築体に優って親和性をしばしば改善する。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体やドナー抗体に見出されない残基を含んでよい。これらの修飾を施して、既知の技術を使用して抗体性能をさらに洗練させることができる。
【0096】
CDR移植抗体とヒト化抗体については、例えば、米国特許第6,180,370号、5,693,762号、5,693,761号、5,585,089号、及び5,530,101号に記載されている。概して言えば、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、そして典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、ここでそのCDRのすべて又は実質的にすべては、非ヒト免疫グロブリンのそれに対応して、フレームワーク領域のすべて又は実質的にすべては、ヒト免疫グロブリン配列のそれである。ヒト化抗体はまた、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれである、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部を含んでもよい。さらなる詳細については、例えば、Jones et al., Nature 321: 522-525 (1986); Riechmann et al., Nature 332: 323-329 (1988);及び Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593-596 (1992) を参照のこと。また、例えば、Vaswani and Hamilton, Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1 :105-115 (1998); Harris, Biochem. Soc. Transactions 23: 1035-1038 (1995); Hurle and Gross, Curr. Op. Biotech. 5:428-433 (1994);及び、米国特許第6,982,321号及び7,087,409号を参照のこと。なお別の方法は、ヒューマニアリング(humaneering)と呼ばれて、例えば、U.S.2005/0008625に記載されている。本出願の目的では、「ヒト化抗体」という用語には、フレームワーク置換が無いかほとんど無いCDR移植抗体(即ち、1以上の移植非ヒトCDRを含んでなるヒト抗体)が明白に含まれるものとする。
【0097】
追加的に言えば、非ヒト抗EFNA抗体はまた、WO98/52976及びWO00/34317に開示される方法による、ヒトT細胞エピトープの特異的除去又は脱免疫化によって修飾してよい。簡潔に言えば、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域についてMHCクラスIIへ結合するペプチドを解析することができて;これらのペプチドは、潜在的なT細胞エピトープ(WO98/52976及びWO00/34317において定義されるような)を代表する。潜在的なT細胞エピトープの検出には、ペプチドスレディング(peptide threading)と呼ばれるコンピュータモデリングアプローチを適用し得て、加えて、WO98/52976及びWO00/34317に記載のように、V及びV配列に存在するモチーフを求めて、ヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースを検索することができる。これらのモチーフは、18の主要MHCクラスII DRアロタイプのいずれへも結合して、それにより潜在的なT細胞エピトープを構成する。検出された潜在的なT細胞エピトープは、可変領域中の少数のアミノ酸残基を置換することによるか又は単一アミノ酸置換によって消失させることができる。可能な限り、保守的な置換がなされる。しばしば、絶対的ではないが、ヒト生殖細胞系抗体配列中のある位置に共通のアミノ酸が使用され得る。脱免疫化の変化を確認した後で、突然変異誘発又は他の合成法(例、de novo 合成、カセット置換、等)によって、V及びVをコードする核酸を構築することができる。突然変異誘発した可変配列をヒト定常領域へ融合させてもよい。
【0098】
選択態様では、ヒト化抗体可変領域残基の少なくとも60%、65%、70%、75%、又は80%が親のフレームワーク領域(FR)及びCDR配列の残基に対応する。他の態様では、ヒト化抗体残基の少なくとも85%又は90%が親のフレームワーク領域(FR)及びCDR配列の残基に対応する。さらに好ましい態様では、ヒト化抗体残基の95%より多くが親のフレームワーク領域(FR)及びCDR配列の残基に対応する。
【0099】
ヒト化抗体は、本明細書に記載のような通常の分子生物学及び生体分子工学の技術を使用して製造することができる。これらの方法には、少なくとも1つの重鎖又は軽鎖由来の免疫グロブリンFv可変領域の全部又は一部をコードする核酸配列を単離すること、操作すること、及び発現させることが含まれる。そのような核酸の供給源は、当業者に周知であり、例えば、上記に記載のような、予め決定された標的に対する抗体又は免疫反応性断片を産生するハイブリドーマ、真核細胞、又はファージより、生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子より、又は合成構築体より入手し得る。次いで、ヒト化抗体をコードする組換えDNAを適正な発現ベクターの中へクローン化することができる。
【0100】
ヒト生殖細胞系配列は、例えば、Tomlinson, I. A. et al. (1992) J. Mol. Biol. 227: 776-798; Cook, G. P. et al. (1995) Immunol. Today 16: 237-242; Chothia, D. et al. (1992) J. Mol. Bio. 227: 799-817; 及び Tomlinson et al. (1995) EMBOJ 14: 4628-4638 に開示されている。V BASEディレクトリは、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の包括的なディレクトリを提供する(Retter et al., (2005) Nuc Acid Res 33: 671-674 を参照のこと)。これらの配列は、ヒト配列の(例えば、フレームワーク領域及びCDRのための)供給源として使用することができる。本明細書に説明するように、コンセンサスヒトフレームワーク領域も、例えば、米国特許第6,300,064号に記載のように、使用することができる。
【0101】
f.ヒト抗体
上述した抗体に加えて、当業者は、本発明の抗体が完全ヒト抗体を含み得ることを理解されよう。本出願の目的では、「ヒト抗体」という用語は、ヒトによって産生された、及び/又は本明細書に開示するようなヒト抗体を作製するための技術のいずれも使用して作製された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を保有する抗体を含む。このヒト抗体の定義は、具体的には、非ヒト抗原結合残基を含んでなるヒト化抗体を排除する。
【0102】
当該技術分野で公知の様々な技術を使用して、ヒト抗体を産生することができる。上記に述べたように、ファージディスプレイ技術を使用して、本教示に準拠した免疫活性の結合領域を提供することができる。このように、本発明のある態様は、(好ましくは、ヒト)抗体のライブラリーをファージ上で合成する工程、このライブラリーを選択されるEFNA又はその抗体結合部分でスクリーニングする工程、EFNAへ結合するファージを単離する工程、及びこのファージより免疫反応性断片を入手する工程を含んでなる、抗EFNA抗体又はその抗原結合部分を産生するための方法を提供する。例を挙げると、ファージディスプレイ技術における使用のための抗体ライブラリーを製造するための1つの方法は、ヒト又は非ヒトの免疫グロブリン遺伝子座を含んでなる非ヒト動物を、選択したEFNA又はその抗原性部分で免疫化して、免疫応答を創出する工程、免疫化した動物より抗体産生細胞を抽出する工程;この抽出した細胞より、本発明の抗体の重鎖及び軽鎖をコードするRNAを単離する工程、このRNAを逆転写してcDNAを産生する工程、プライマーを使用してこのcDNAを増幅する工程、及びこのcDNAを、抗体がファージ上で発現されるように、ファージディスプレイベクターへ挿入する工程を含む。より具体的には、V及びVドメインをコードするDNAをscFvリンカーと共にPCRによって組換えて、ファージミドベクター(例、pCANTAB6又はpComb3HSS)へクローン化する。次いで、このベクターは、大腸菌(E. coli)中へ電気穿孔させてよく、次いでこの大腸菌にヘルパーファージを感染させる。これらの方法で使用するファージは、典型的には、fd及びM13が含まれる繊維状ファージであって、V及びVドメインは、通常、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIの一方へ組換え的に融合される。
【0103】
上記のように製造した組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーをスクリーニングすることによって、本発明の組換えヒト抗EFNA抗体を単離することができる。好ましい態様において、該ライブラリーは、B細胞より単離したmRNAより製造されるヒトのV及びVcDNAを使用して産生される、scFvファージディスプレイライブラリーである。当該技術分野では、このようなライブラリーを製造してスクリーニングする方法が周知であり、ファージディスプレイライブラリーを産生するためのキットが市販されている(例えば、ファルマシア社の組換えファージ抗体システム(Recombinant Phage Antibody System)、カタログ番号:27−9400−01;及び、Stratagene のSurfZAPTMファージディスプレイキット、カタログ番号:240612)。抗体ディスプレイライブラリーを産生してスクリーニングするのに使用し得る他の方法及び試薬も存在する(例えば、米国特許第5,223,409号;PCT公開公報番号:WO92/18619、WO91/17271、WO92/20791、WO92/15679、WO93/01288、WO92/01047、WO92/09690;Fuchs et al., Bio/Technology 9:1370-1372 (1991); Hay et al., Hum. Antibod. Hybridomas 3:81-85 (1992); Huse et al., Science 246:1275-1281 (1989); McCafferty et al., Nature 348:552-554 (1990); Griffiths et al., EMBO J. 12:725-734 (1993); Hawkins et. al., J. Mol. Biol. 226:889-896 (1992); Clackson et al., Nature 352:624-628 (1991); Gram et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3576-3580 (1992); Garrad et al., Bio/Technology 9:1373-1377 (1991); Hoogenboom et al., Nuc. Acid Res. 19:4133-4137 (1991); 及び Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7978-7982 (1991) を参照のこと)。
【0104】
ナイーブライブラリー(天然又は合成のいずれか)によって産生される抗体は、中等度の親和性(約10〜10−1のK)であるが、当該技術分野で記載されるような二次ライブラリーより構築して再選択することによって、親和性成熟も in vitro で模倣することができる。例えば、Hawkins et. al., J. Mol. Biol., 226: 889-896 (1992) の方法において、又は Gram et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 3576-3580 (1992) の方法において、エラーを起こしやすい(error-prone)ポリメラーゼ(Leung et al., Technique, 1: 11-15 (1989) に報告されている)を使用することによって、突然変異を in vitro で無作為に導入することができる。追加的に言えば、例えば、選択した個々のFvクローンにおいて、対象のCDRが含まれるランダム配列を担うプライマーでPCRを使用して1以上のCDRを無作為に突然変異させて、より高親和性のクローンをスクリーニングすることによって、親和性成熟を実施することができる。WO9607754は、免疫グロブリン軽鎖の相補性決定領域中に突然変異誘発を引き起こして、軽鎖遺伝子のライブラリーを創出するための方法について記載した。別の有効なアプローチは、Marks et al., Biotechnol., 10: 779-783 (1992) に記載のように、ファージディスプレイによって選択されるV又はVドメインを、非免疫化ドナーより得られる天然に存在するVドメイン変異体のレパートリーと組換えて、数回の鎖リシャッフリング(chain reshuffling)においてより高い親和性をスクリーニングすることである。この技術により、解離定数:K(koff/kon)が約10−9M以下である抗体及び抗体断片の産生が可能になる。
【0105】
結合対をその表面に発現する真核細胞(例、酵母)を含んでなるライブラリーを使用して同様の手順を利用し得ることがさらに理解されよう。ファージディスプレイ技術と同様に、この真核細胞ライブラリーを対象の抗原(即ち、EFNA)に対してスクリーニングして、候補結合対を発現する細胞を単離してクローン化する。ライブラリー内容を最適にすることと反応性結合対の親和性成熟のために種々の工程を講じてよい。例えば,米国特許第7,700,302号及び米国仮特許出願シリアル番号:12/404,059を参照のこと。1つの態様において、ヒト抗体は、ファージライブラリーより選択されて、ここでそのファージライブラリーは、ヒト抗体を発現する(Vaughan et al. Nature Biotechnology 14:309-314 (1996): Sheets et al. Proc. Natl. Acad. Sci. 95:6157-6162 (1998)); Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol, 227:381 (1991); Marks et al., J. MoI. Biol, 222:581 (1991))。他の態様では、酵母のような真核細胞において産生されるコンビナトリアル抗体ライブラリーよりヒト結合対を単離してよい。例えば、米国特許第7,700,302号を参照のこと。このような技術は、有利にも、多数の候補モジュレーターのスクリーニングを可能にして、候補配列の相対的に容易な操作(例えば、親和性成熟又は組換えシャッフリング(recombinant shuffling)による)を提供する。
【0106】
ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子座をトランスジェニック動物(例えば、内因性の免疫グロブリン遺伝子が一部又は完全に不活性化されたマウス)の中へ導入することによって作製することができる。抗原チャレンジすると、ヒト抗体産生が観測されて、これは、遺伝子再編成、アセンブリー、及び抗体レパートリーを含めて、ヒトで見られるものとすべての点で酷似している。このアプローチについては、例えば、米国特許第5,545,807号;5,545,806号;5,569,825号;5,625,126号;5,633,425号;5,661,016号に記載され、ゼノマウス(Xenomouse)(登録商標)技術に関しては、以下の科学文献とともに米国特許第6,075,181号及び6,150,584号に記載されている:Marks et al., Bio/Technology 10: 779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368: 856-859 (1994); Morrison, Nature 368:812-13 (1994); Fishwild et al., Nature Biotechnology 14: 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14: 826 (1996); Lonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13:65-93 (1995)。あるいは、ヒト抗体は、標的抗原に対して指向された抗体を産生するヒトBリンパ球の不死化により産生してよい(このようなBリンパ球は、新生物障害に罹患している個体より回収してもよく、in vitro で免疫化してもよい)。例えば、Cole et al.「モノクローナル抗体と癌療法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」Alan R. Liss, p. 77 (1985); Boerner et al., J. Immunol, 147 (l):86-95 (1991); 及び米国特許第5,750,373号を参照のこと。
【0107】
VI.抗体の特徴
当該抗体モジュレーターをどのように入手したとしても、またそれが上述した形態(例、ヒト化、ヒト、等)のいずれを採るとしても、開示モジュレーターの好ましい態様は、様々な特徴を示す可能性がある。この点に関して言えば、抗EFNA抗体産生細胞(例、ハイブリドーマ又は酵母コロニー)を、例えば、活発な増殖、高い抗体産生、及び(下記により詳しく考察するような)望ましい抗体特徴が含まれる望ましい特徴について選択し、クローン化して、さらにスクリーニングしてよい。ハイブリドーマは、同系遺伝子の動物、免疫系を欠損している動物(例、ヌードマウス)において in vivo で、又は細胞培養において in vitro で拡充させることができる。そのそれぞれが別々の抗体種を産生するハイブリドーマ及び/又はコロニーを選択する、クローン化する、及び拡充させる方法は、当業者に周知である。
【0108】
a.中和抗体
特に好ましい態様において、本発明のモジュレーターは、中和抗体又はその誘導体若しくは断片を含む。「中和抗体」又は「中和アンタゴニスト」という用語は、エフリンAリガンドへ結合するか又はそれと相互作用してリガンドのその結合相手(例、EPHA受容体)への結合又は会合を防ぐことによって、これら分子の相互作用より生じるはずの生体応答を妨害する抗体又はアンタゴニストを意味する。抗体又はその免疫学的に機能的な断片若しくは誘導体の結合と特異性について評価する場合、抗体又は断片がリガンドのその結合相手又は基質への結合を実質的に阻害するのは、例えば、in vitro 競合結合アッセイ(例えば、本明細書の実施例9〜12を参照のこと)で測定されるように、過剰の抗体が標的分子へ結合する結合相手の量を少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、又は99%以上低下させるときである。例えば、EFNA4に対する抗体の場合、中和抗体又はアンタゴニストは、好ましくは、EphA4へ結合するEFNA4の能力を少なくとも約20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、又は99%以上減少させる。この減少した活性は、当該技術分野で認められた技術を使用して直接測定しても、そのような低下がEPH(例、EPHA4)受容体活性に及ぼす影響によって測定してもよいと理解されよう。
【0109】
b.内在化抗体
選択されるエフリンAリガンド又はそれらのアイソフォームが可溶型で存在する場合があることを示す証拠はあるが、少なくともある種のEFNA(例、EFNA1及びEFNA4)は、細胞表面と会合した状態にあるようであり、それにより開示モジュレーターの内在化を可能にしている。従って、本発明の抗EFNA抗体は、エフリンAリガンドを発現する細胞によって、少なくともある程度は、内在化され得る。例えば、腫瘍始原細胞の表面上のEFNA4へ結合する抗EFNA4抗体は、腫瘍始原細胞によって内在化され得る。特に好ましい態様では、そのような抗EFNA抗体を、内在化と同時に細胞を殺傷する細胞傷害性部分のような抗癌剤と会合させるか又はそれへコンジュゲートさせてよい。
【0110】
本明細書に使用するように、内在化する抗EFNA抗体とは、哺乳動物細胞と会合したEFNAへの結合時にその細胞によって取り込まれるものである。この内在化抗体には、抗体断片、ヒト又はヒト化抗体、及び抗体コンジュゲートが含まれる。内在化は、in vitro でも in vivo でも起こり得る。療法上の応用では、内在化が in vivo で起こり得る。内在化される抗体分子の数は、EFNA発現細胞、特にEFNA発現腫瘍始原細胞を殺傷するのに十分又は充分であり得る。抗体又は抗体コンジュゲートの効力に依っては、いくつかの事例において、抗体が結合する標的細胞を殺傷するのに、該細胞への単一の抗体分子の取込みで十分である。例えば、ある毒素は、殺傷においてきわめて強力であるので、腫瘍細胞を殺傷するには、抗体へコンジュゲートした毒素の1分子の内在化で十分である。抗EFNA抗体が哺乳動物細胞上のEFNAへの結合時に内在化されるかどうかは、下記の実施例(例、実施例15及び16)に記載されるものが含まれる様々なアッセイによって決定することができる。抗体が細胞中へ内在化されるかどうかを検出する方法については、その全体において参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,619,068号にも記載されている。
【0111】
c.枯渇性抗体
他の好ましい態様において、本発明のモジュレーターは、枯渇性抗体又はその誘導体若しくは断片を含む。「枯渇性抗体」という用語は、細胞表面の上又は近くにあるEFNAへ結合するか又はそれと会合して、該細胞の死滅又は消失を(例えば、補体依存性細胞傷害又は抗体依存性細胞傷害によって)誘発する、促進する、又は引き起こす抗体又は断片を意味する。下記により詳しく考察するいくつかの態様において、選択した枯渇性抗体は、細胞傷害剤へ会合又はコンジュゲートされる。好ましくは、枯渇性抗体は、ある一定の細胞集団において、少なくとも20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、97%、又は99%の腫瘍永続化細胞を枯渇する、消失させる、又は殺傷する。いくつかの態様において、この細胞集団は、濃縮、分画、精製、又は単離された腫瘍永続化細胞を含んでよい。他の態様において、この細胞集団は、腫瘍永続化細胞を含む腫瘍試料全体又は異種の腫瘍抽出物を含んでよい。当業者は、下記の実施例(例、実施例16)に記載のような標準の生化学技術を本明細書の教示に従って使用して、腫瘍形成細胞又は腫瘍永続化細胞の枯渇をモニターして定量し得ることを理解されよう。
【0112】
d.エピトープ結合
開示される抗EFNA抗体は、選択された標的(複数)によって提示される別々のエピトープ又は決定基と会合するか又はそれへ結合するとさらに理解されよう。本明細書に使用するように、エピトープという用語は、特別の抗体によって認識されて特異的に結合されることが可能な標的抗原のその部分を意味する。抗原がEFNAのようなポリペプチドである場合、エピトープは、連続したアミノ酸からも、タンパク質の三次元フォールディングによって並列される不連続アミノ酸からも形成され得る。連続したアミノ酸より形成されるエピトープがタンパク質の変性時に典型的には保持されるのに対し、三次元フォールディングによって形成されるエピトープは、タンパク質の変性時に典型的には失われる。エピトープには、典型的には、少なくとも3個、そしてより通常は、少なくとも5又は8個〜10個のアミノ酸が独自の空間コンホメーションに含まれる。より具体的には、当業者は、エピトープという用語には、免疫グロブリン又はT細胞受容体へ特異結合するか又は他の方法で分子と相互作用することが可能などのタンパク質決定基も含まれると理解されよう。エピトープの決定基は、一般的には、アミノ酸又は炭水化物又は糖側鎖のような分子の化学的に活性な表面配置からなり、一般的には、特異的な三次元構造上の特性、並びに特異的な荷電特性を有する。追加的に言えば、エピトープは、線状でも高次構造状でもよい。線状エピトープでは、該タンパク質と相互作用分子(抗体のような)の間の相互作用点のすべてが該タンパク質の一次アミノ酸配列に沿って線状に生じる。高次構造状エピトープでは、相互反応の点が、直線的には互いに分離しているタンパク質上のアミノ酸残基の全体で生じる。
【0113】
抗原上の所望のエピトープが決定されたならば、例えば、本発明において記載される技術を使用して、エピトープを含んでなるペプチドで免疫化することによって、そのエピトープに対する抗体を産生することが可能である。あるいは、この探索プロセスの間に、抗体の産生及び特性決定によって、望ましいエピトープに関する情報を解明することができる。次いで、この情報より、抗体について同じエピトープへ結合することを競合的にスクリーニングすることが可能である。このことを達成するアプローチは、競合試験を実施して、互いに競合的に結合する抗体(即ち、この抗体は、抗原への結合に関して競合する)を見出すことである。WO03/48731には、それらの交差競合性に基づいて抗体をビニングする(binning)ためのハイスループット法が記載されている。
【0114】
本明細書に使用するように、「ビニング(binning)」という用語は、それらの抗原結合特性に基づいて抗体を群分けするための方法を意味する。ビンの割当ては、試験した抗体の観測された結合パターンがどのくらい異なるかに依存して、やや恣意的である。このように、この技術は、本発明の抗体を分類するのに有用なツールであるが、そのビンは、必ずしも直にエピトープと相関するものではないので、そのような初めの決定は、他の当該技術分野で認められた方法論によってさらに確かめるべきである。
【0115】
この注意事項に留意して、選択した一次抗体(又はその断片)が同じエピトープへ結合するのかどうか、又は結合に関して二次抗体と交差競合するのかどうかを、当該技術分野で公知であり、且つ本明細書の実施例で説明されている方法を使用することによって決定することができる。1つの態様では、本発明の一次抗体を飽和条件の下でEFNAへ結合させることが可能であり、次いでEFNAへ結合する二次抗体の能力を測定する。この試験抗体が一次の抗EFNA抗体と同時にEFNAへ結合することが可能であれば、その二次抗体は、一次抗体と異なるエピトープへ結合する。しかしながら、二次抗体が同時にEFNAへ結合することが可能でなければ、二次抗体は、同じエピトープ、部分的に重なるエピトープ、又は一次抗体が結合するエピトープのごく近傍にあるエピトープへ結合する。当該技術分野で公知であり、下記の実施例において詳述されるように、所望のデータは、固相の直接又は間接ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相の直接又は間接酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ、BiacoreTMシステム(即ち、表面プラズモン共鳴法−GE Healthcare)、ForteBio(登録商標)Analyzer(即ち、バイオレイヤー干渉法−ForteBio 社)、又はフローサイトメトリー法を使用して入手することができる。本明細書に使用する「表面プラズモン共鳴法」という用語は、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出による、リアルタイムの生体特異的な相互作用の分析を可能にする光学現象に関連する。特に好ましい態様において、この分析は、下記の実施例において証明されるように、Biacore又はForteBio機器を使用して実施する。
【0116】
同じエピトープについて競合する抗体の文脈において使用される場合の「競合する」という用語は、試験下の抗体又は免疫学的に機能的な断片が共通抗原に対する参照抗体の特異結合を防ぐか又は阻害するアッセイにおいて決定される、抗体間の競合を意味する。典型的には、そのようなアッセイは、上記抗体のいずれかを担う固体表面又は細胞へ結合する精製抗原、非標識の被検免疫グロブリン、及び標識された参照免疫グロブリンの使用を伴う。競合阻害は、被検免疫グロブリンの存在下でこの固体表面又は細胞へ結合する標識の量を定量することによって測定する。通常、この被検免疫グロブリンは、過剰に存在する。競合アッセイによって同定される抗体(競合抗体)には、参照抗体と同じエピトープへ結合する抗体と、参照抗体が結合するエピトープに対して立体障害が起こるほど十分近傍にある隣接エピトープへ結合する抗体が含まれる。競合結合を決定するための方法に関する追加の詳細を本明細書の実施例に提供する。通常、競合抗体が過剰に存在する場合、それは、参照抗体の共通抗原への特異結合を少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、又は75%阻害する。ある事例では、結合が少なくとも80%、85%、90%、95%、又は97%以上阻害される。
【0117】
エピトープ特異性以外に、開示される抗体は、いくつかの異なる物理特性(例えば、結合親和性、融点(Tm)、及び等電点が含まれる)を使用して、特性決定してよい。
e.結合親和性
この点に関して言えば、本発明には、選択されるEFNAに対して(又は、汎抗体の場合は、1種より多いエフリンAリガンドに対して)高い結合親和性を有する抗体の使用がさらに含まれる。本発明の抗体がその標的抗原へ特異的に結合すると言われるのは、解離定数:K(koff/kon)が≦10−8Mであるときである。この抗体は、Kが≦5x10−9Mであるときには高い親和性で、そしてKが≦5x10−10Mであるときはきわめて高い親和性で抗原へ特異的に結合する。本発明の1つの態様において、該抗体は、10−9M以下のKと約1x10−4/秒のオフ速度を有する。本発明の1つの態様において、オフ速度は、<1x10−5/秒である。本発明の他の態様において、該抗体は、EFNAへ約10−8Mと10−10Mの間のKで結合して、なお別の態様において、それは、2x10−10M以下のKで結合する。本発明のなお他の選択される態様は、10−2M未満、5x10−2M未満、10−3M未満、5x10−3M未満、10−4M未満、5x10−4M未満、10−5M未満、5x10−5M未満、10−6M未満、5x10−6M未満、10−7M未満、5x10−7M未満、10−8M未満、5x10−8M未満、10−9M未満、5x10−9M未満、10−10M未満、5x10−10M未満、10−11M未満、5x10−11M未満、10−12M未満、5x10−12M未満、10−13M未満、5x10−13M未満、10−14M未満、5x10−14M未満、10−15M、又は5x10−15M未満の解離定数又はK(koff/kon)を有する抗体を含む。
【0118】
具体的態様において、EFNAへ免疫特異的に結合する本発明の抗体は、少なくとも10−l−l、少なくとも2x10−l−l、少なくとも5x10−l−l、少なくとも10−l−l、少なくとも5x10−l−l、少なくとも10−l−l、少なくとも5x10−l−l、又は少なくとも10−l−lの会合速度定数又はkon速度(EFNA(Ab)+抗原(Ag)on←Ab−Ag)を有する。
【0119】
別の態様において、EFNAへ免疫特異的に結合する本発明の抗体は、l0−l−l未満、5xl0−l−l未満、l0−2−l未満、5xl0−2−l未満、l0−3−l未満、5xl0−3−l未満、l0−4−l未満、5xl0−4−l未満、l0−5−l未満、5xl0−5−l未満、l0−6−l未満、5xl0−6−l未満、l0−7−l未満、5xl0−7−l未満、l0−8−l未満、5xl0−8−l未満、l0−9−l未満、5xl0−9−l、又はl0−10未満のkoff速度(EFNA(Ab)+抗原(Ag)off←Ab−Ag)を有する。
【0120】
本発明の他の選択された態様において、抗EFNA抗体は、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも10−1、少なくとも5x10−1、少なくとも1010−1、少なくとも5x1010−1、少なくとも1011−1、少なくとも5x1011−1、少なくとも1012−1、少なくとも5x1012−1、少なくとも1013−1、少なくとも5x1013−1、少なくとも1014−1、少なくとも5x1014−1、少なくとも1015−1、又は少なくとも5x1015−1の親和定数又はK(kon/koff)を有する。
【0121】
f.等電点
上述した結合特性に加えて、抗EFNA抗体とその断片は、すべてのポリペプチドのように、一般的にはポリペプチドが実効電荷を担わないときのpHとして定義される、等電点(pI)を有する。当該技術分野では、溶液のpHがタンパク質の等電点(pI)に等しい場合、典型的には該タンパク質の溶解度が最低になることが知られている。故に、抗体中のイオン化可能な残基の数と位置を改変してpIを調整することによって溶解度を最適化することが可能である。例えば、ポリペプチドのpIは、適正なアミノ酸置換を施すことによって(例えば、アラニンのような非電荷残基にリジンのような荷電アミノ酸を代用することによって)操作することができる。どの特別な理論にも束縛されることを望まずに言えば、抗体のpIの変化をもたらす前記抗体のアミノ酸置換は、該抗体の溶解度及び/又は安定性を改善する場合がある。当業者は、ある特別な抗体が所望のpIを達成するのにどのアミノ酸置換が最も適正であるかを理解されよう。
【0122】
タンパク質のpIは、限定されないが、等電点電気泳動と様々なコンピュータアルゴリズムが含まれる多様な方法によって決定することができる(例えば、Bjellqvist et al., 1993, Electrophoresis 14: 1023 を参照のこと)。1つの態様において、本発明の抗EFNA抗体のpIは、約6.5、約7.0、約7.5、約8.0、約8.5、又は約9.0の間かそれより高い。別の態様において、本発明の抗EFNA抗体のpIは、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、又は9.0の間かそれより高い。なお別の態様において、本発明の抗体のpIの改変をもたらす置換は、EFNAへのその結合親和性を有意には減少させない。下記により詳しく考察するように、具体的には、FcγRへの結合の改変をもたらすFc領域の置換(複数)は、pIの変化ももたらす場合があると考慮される。好ましい態様では、所望されるFcγR結合の改変とpIの所望されるあらゆる変化をともに有効にするように、Fc領域の置換(複数)が具体的に選択される。本明細書に使用するように、pI値は、優勢な荷電形状のpIとして定義される。
【0123】
g.熱安定性
抗体のFabドメインのTmは、抗体の熱安定性の良好な指標であり得、さらに貯蔵寿命の目安となり得ることがさらに理解されよう。Tmは、所与のドメイン又は配列の50%アンフォールディングの温度に他ならない。Tmが低いほどより多くの凝集/より少ない安定性を示すのに対し、Tmが高いほど、より少ない凝集/より大きな安定性を示す。従って、より高いTmを有する抗体又はその断片若しくは誘導体が好ましい。さらに、当該技術分野で認められた技術を使用して、抗EFNA抗体又はそのドメインの組成を改変して、分子安定性を高めるか又は最適化することが可能である。例えば、米国特許第7,960,142号を参照のこと。このように、1つの態様において、選択した抗体のFabドメインは、少なくとも50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、100℃、105℃、110℃、115℃、又は120℃より高いTm値を有する。別の態様において、抗体のFabドメインは、少なくとも約50℃、約55℃、約60℃、約65℃、約70℃、約75℃、約80℃、約85℃、約90℃、約95℃、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃又は約120℃より高いTm値を有する。当該技術分野で公知の標準法を使用して、例えば、示差走査熱量測定(例えば、いずれも参照により本明細書に組み込まれる、Vermeer et al., 2000, Biophys. J. 78: 394-404; Vermeer et al., 2000, Biophys. J. 79: 2150-2154 を参照のこと)によって、タンパク質ドメイン(例、Fabドメイン)の熱融解温度(Tm)を測定することができる。
【0124】
VII.EFNAモジュレーターの断片及び誘導体
本発明の薬剤が、インタクト融合構築体、抗体、断片、又は誘導体のいずれを含むとしても、選択したモジュレーターは、EFNAと反応する、結合する、組み合わさる、複合する、接続する、付着する、一緒になる、相互作用する、又は他の方法で会合して、それによって所望の抗新生物効果をもたらす。当業者は、抗EFNA抗体を含んでなるモジュレーターが該抗体上で発現される1以上の結合部位を介してEFNAと相互作用するか又は会合することを理解されよう。より具体的には、本明細書に使用するように、「結合部位」という用語は、対象の標的分子(例、酵素、抗原、リガンド、受容体、基質、又は阻害剤)へ選択的に結合することの原因となるポリペプチドの領域を含む。結合ドメインは、少なくとも1つの結合部位を含む(例えば、インタクトIgG抗体は、2つの結合ドメインと2つの結合部位を有するものである)。例示の結合ドメインには、抗体の可変ドメイン、リガンドの受容体結合ドメイン、受容体のリガンド結合ドメイン、又は酵素ドメインが含まれる。本発明の目的では、EFNAの典型的な活性領域は、(例えば、Fc−EFNA融合構築体の一部として)基質(例、Eph受容体)の結合部位を含み得る。
【0125】
a.断片
本発明を実施するのに、どの形態のモジュレーター(例、キメラ、ヒト化、等)を選択しても、その免疫反応性断片は、本明細書の教示に従って使用し得ると理解されよう。最も広義において、「抗体断片」という用語は、インタクト抗体(例、天然に存在する免疫グロブリン)の少なくとも一部を含む。より具体的には、「断片」という用語は、インタクト又は完全な抗体又は抗体鎖より少ないアミノ酸残基を含んでなる抗体又は抗体鎖(又は、Fc融合の場合はEFNA分子)の一部又は部分を意味する。「抗原結合断片」という用語は、抗原と結合するか又はインタクト抗体と(即ち、それらが導かれたインタクト抗体と)抗原結合(即ち、特異結合)について競合する、免疫グロブリン又は抗体のポリペプチド断片を意味する。本明細書に使用するように、「抗体分子の断片」という用語には、抗体の抗原結合断片、例えば、抗体軽鎖(V)、抗体重鎖(V)、単鎖抗体(scFv)、F(ab’)断片、Fab断片、Fd断片、Fv断片、単ドメイン抗体断片、二重特異性抗体、線状抗体、単鎖抗体分子、及び抗体断片より生成される多重特異性抗体が含まれる。同様に、EFNAの活性断片は、EFNA基質又は受容体と相互作用してインタクトEFNAのそれと似た様式でそれらを修飾する(やや低い効率であるかもしれないが)その能力を保持するEFNA分子の一部を含む。
【0126】
当業者は、インタクト又は完全なモジュレーター(例、抗体又は抗体鎖)の化学的又は酵素的処理によるか又は組換え手段によって断片を入手し得ることを理解されよう。この点に関して言えば、インタクト抗体の消化の点から様々な抗体断片が規定されるが、当業者は、そのような断片を化学的に、又は組換えDNAの方法論を使用することによって de novo 合成し得ることを理解されよう。このように、本明細書に使用する抗体という用語には、抗体全体の修飾によって産生されるか又は組換えDNAの方法論を使用して de novo 合成される抗体又はその断片若しくは誘導体が明白に含まれる。
【0127】
より具体的には、抗体のパパイン消化は、それぞれに単一の抗原結合部位がある、Fab断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、残余のFc断片(この名称は、容易に結晶するその能力を反映する)を産生する。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有して、依然として抗原と交差結合することが可能であるF(ab’)断片を生じる。Fab断片はまた、軽鎖の定常ドメインと重鎖の第一定常ドメイン(C1)を含有する。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1以上のシステインが含まれる重鎖C1ドメインのカルボキシ末端での数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’−SHは、本明細書において、定常ドメインのシステイン残基(複数)が少なくとも1つのフリーチオール基を担うFab’の明示である。F(ab’)抗体断片は、元来、その間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学的カップリングについても知られている。他の抗体断片のより詳しい記載については、例えば「基礎免疫学(Fundamental Immunology)」W. E. Paul(監修)レイブン・プレス、ニューヨーク(1999)を参照のこと。
【0128】
Fv断片が完全な抗原認識及び結合部位を含有する抗体断片であることがさらに理解されよう。この領域は、1つの重鎖可変ドメインと1つの軽鎖可変ドメインが緊密に会合した(これは、天然では、例えばscFvでは、共有結合性であり得る)二量体からなる。それぞれの可変ドメインの3つのCDRが相互作用して、V−V二量体の表面に抗原結合部位を規定するのは、この配置においてである。この6つのCDR又はその亜集合は、集合的に、抗体へ抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的な3つのCDRのみを含んでなる、FVの半分)でも、通常は完全な結合部位より低い親和性であるものの、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0129】
他の態様において、抗体断片は、例えば、Fc領域を含み、FcRn結合、抗体半減期調節、ADCC機能、及び補体結合といった、インタクト抗体中に存在しているときのFc領域に普通は関連する生体機能の少なくとも1つを保持する。1つの態様において、抗体断片は、インタクト抗体に実質的に類似した in vivo 半減期を有する一価抗体である。例えば、そのような抗体断片は、その断片へin vivo 安定性を付与することが可能なFc配列へ連結した抗原結合アームを含む場合がある。
【0130】
b.誘導体
別の態様では、本発明のモジュレーターが一価でも多価(例、二価、三価、等)でもよいことがさらに理解されよう。本明細書に使用するように、「結合価」という用語は、抗体と会合する潜在的な標的(即ち、EFNA)結合部位の数を意味する。それぞれの標的結合部位は、1つの標的分子、又は標的分子上の特定の位置又は座へ特異的に結合する。本発明の抗体が1より多い標的結合部位を含む(多価)とき、それぞれの標的結合部位は、同じ分子か又は異なる分子へ特異的に結合し得る(例えば、異なるリガンド又は異なる抗原へ、又は同じ抗原上の異なるエピトープ又は位置へ結合し得る)。本発明の目的では、主題の抗体は、好ましくは、ヒトEFNAに特異的な少なくとも1つの結合部位を有する。1つの態様において、本発明の抗体は、その分子のそれぞれの結合部位が単一のEFNAの位置又はエピトープへ特異的に結合するという点で一価であろう。他の態様において、該抗体は、それらが1より多い結合部位と、単一より多い位置又はエピトープと特異的に会合する異なる結合部位を含むという点で多価であろう。そのような場合は、選択したEFNAポリペプチド又はスプライス変異体に多重エピトープが存在し得るか、又はEFNA上に単一エピトープが存在し得る一方で、別の分子又は表面上に第二の異なるエピトープが存在し得る。例えば、米国特許第2009/0130105号を参照のこと。
【0131】
上記に述べたように、多価抗体は、所望の標的分子の異なるエピトープへ免疫特異的に結合しても、標的分子だけでなく、異種ポリペプチドのような異種エピトープ又は固体支持材料へも免疫特異的に結合してよい。抗EFNA抗体の好ましい態様は、2つの抗原だけに結合する(即ち、二重特異性抗体)が、本発明には、三重特異性抗体のような追加の特異性がある抗体も含まれる。二重特異性抗体の例には、限定なしに、EFNAへ対して指向される1つのアームと他のあらゆる抗原(例、モジュレーター細胞マーカー)に対して指向される他のアームがあるものが含まれる。当該技術分野では、二重特異性抗体を作製するための方法が公知である。完全長の二重特異性抗体の従来的な産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の同時発現に基づき、ここでこの2つの鎖は、異なる特異性を有する(Millstein et al., 1983, Nature, 305: 537-539)。他のより洗練された適合可能な多重特異性構築体とそれらの製造の方法は、米国特許第2009/0155255号に説明されている。
【0132】
なお他の態様では、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)のある抗体可変ドメインを免疫グロブリン定常ドメイン配列へ融合する。この融合は、好ましくは、ヒンジ、C2、及び/又はC3領域の少なくとも一部を含んでなる、免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。1つの例では、軽鎖結合に必要な部位を含有する第一重鎖定常領域(C1)がその融合物の少なくとも1つに存在する。免疫グロブリン重鎖融合物と、所望されるならば、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを別々の発現ベクター中へ挿入して、好適な宿主生物へ同時トランスフェクトする。これにより、構築体中で使用される3つのポリペプチド鎖の同等でない割合が最適な収量をもたらす場合の態様において、この3つのポリペプチド断片の相互比率を調整するのに大きな柔軟性が得られる。しかしながら、等しい割合の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高収量をもたらす場合、又はこの割合が特に重要でないときは、2個又は全3個のポリペプチド鎖のコーディング配列を1つの発現ベクターに挿入することが可能である。
【0133】
このアプローチの1つの態様において、二重特異性抗体は、第一の結合特異性が一方のアームにあるハイブリッド免疫グロブリン重鎖(例、EFNA4)と、他のアーム中のハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第二の結合特異性を提供する)からなる。この不斉構造は、二重特異性分子の片方だけに免疫グロブリン軽鎖が存在することで容易な分離法がもたらされるので、望まれない免疫グロブリン鎖の組合せからの所望の二重特異性化合物の分離を促進することが見出された。このアプローチは、WO94/04690に開示されている。二重特異性抗体を産生することのさらなる詳細には、例えば、Suresh et al., 1986, Methods in Enzymology, 121: 210 を参照のこと。WO96/27011に記載される別のアプローチによれば、抗体分子の対を工学処理して、組換え細胞培養より回収されるヘテロ二量体の百分率を最大にすることができる。好ましいインターフェイスは、抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第一抗体分子のインターフェイス由来の1以上の小さなアミノ酸側鎖をより大きな側鎖(例、チロシン又はトリプトファン)に置き換える。大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(例、アラニン又はスレオニン)に置き換えることによって、第二抗体分子のインターフェイス上に、大きな側鎖(複数)と同一又は類似の大きさの代償性空洞(compensatory cavities)が創出される。これにより、ホモ二量体のような他の望まれない最終産物に優ってヘテロ二量体の収量を高めるための機序が提供される。
【0134】
二重特異性抗体には、架橋連結又はヘテロコンジュゲートの抗体も含まれる。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の一方をアビジンへ、他方をビオチンへカップリングすることができる。そのような抗体は、例えば、免疫系細胞を望まれない細胞へ標的化すること(米国特許第4,676,980号)、及びHIV感染の治療(WO91/00360、WO92/200373、及びEP03089)に提唱されてきた。ヘテロコンジュゲート抗体は、どの簡便な架橋連結法を使用しても作製してよい。当該技術分野では好適な架橋連結剤が周知であり、いくつかの架橋連結技術とともに、米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0135】
VIII.EFNAモジュレーター−定常領域の修飾
a.Fc領域及びFc受容体
上記に示した、開示モジュレーター(例、Fc−EFNA又は抗EFNA抗体)の可変又は結合領域に対する様々な修飾、置換、付加、又は削除に加えて、当業者は、本発明の選択態様が定常領域(即ち、Fc領域)の置換又は修飾も含み得ることを理解されよう。より具体的には、本発明のEFNAモジュレーターは、限定されないが、改変した薬物動態、増加した血清半減期、増加した結合親和性、低下した免疫原性、増加した産生、改変したFcリガンド結合、増強又は低下したADCC又はCDC活性、改変したグリコシル化及び/又はジスルフィド結合、及び変化した結合特異性が含まれる、好ましい特徴のある化合物をもたらす1以上の追加のアミノ酸残基置換、突然変異及び/又は修飾をとりわけ含有してよいと考慮される。この点に関して言えば、これらのFc変異体を有利にも使用して、開示モジュレーターの有効な抗新生物特性を高めることができると理解されよう。
【0136】
本明細書の「Fc領域」という用語は、ネイティブ配列のFc領域と変異体のFc領域が含まれる、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために使用される。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は変動し得るが、ヒトのIgG重鎖Fc領域は、通常、Cys226位のアミノ酸残基から、又はPro230からそのカルボキシル末端まで伸びるように定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号方式によれば残基447)は、例えば、抗体の産生又は精製の間に、又は抗体の重鎖をコードする核酸を組換え的に工学処理することによって除去してよい。従って、インタクト抗体の組成物は、すべてのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が除去されていない抗体集団、及びK447残基が有る抗体と無い抗体の混合物を有する抗体集団を含んでよい。機能的なFc領域は、ネイティブ配列Fc領域のエフェクター機能を保有する。例示のエフェクター機能には、C1q結合;CDC;Fc受容体結合;ADCC;食作用;細胞表面受容体(例、B細胞受容体;BCR)の下方調節、等が含まれる。そのようなエフェクター機能には、概して、Fc領域が結合ドメイン(例、抗体可変ドメイン)と結びつくことが求められて、例えば、本明細書の諸定義において開示されるような様々なアッセイを使用して、評価することができる。
【0137】
Fc受容体又はFcRは、抗体のFc領域へ結合する受容体を言い表す。いくつかの態様では、FcRがネイティブなヒトFcRである。いくつかの態様では、FcRがIgG抗体(γ受容体)へ結合するものであって、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体が含まれて、それら受容体の対立遺伝子変異体と選択的にスプライスされた形態が含まれる。FcγII受容体には、主としてその細胞質ドメインにおいて異なる同様のアミノ酸配列を有する、FcγRIIA(活性化受容体)とFcγRIIB(阻害性受容体)が含まれる。活性化受容体のFcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体のチロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害性受容体のFγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体のチロシンベースの阻害モチーフ(ITIM)を含有する(例えば、Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15: 203-234 (1997) を参照のこと)。FcRsについては、例えば、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol 9: 457-92 (1991);Capel et al., Immunomethods 4: 25-34 (1994);及び de Haas et al., J. Lab. Clin. Med. 126:330-41 (1995) に概説されている。他のFcRも、将来同定されるものを含めて、本明細書のFcRという用語に含まれる。Fc受容体又はFcRという用語には、ある事例では、母体IgGの胎児への輸送(Guyer et al., J. Immunol. 117: 587 (1976) 及び Kim et al., J. Immunol. 24: 249 (1994))と免疫グロブリンのホメオスタシスの調節の原因となる新生児受容体、FcRnも含まれる。FcRnへの結合を測定する方法が知られている(例えば、Ghetie and Ward., Immunol. Today 18(12) :592-598 (1997);Ghetie et al., Nature Biotechnology, 15(7): 637-640 (1997);Hinton et al., J. Biol. Chem. 279(8): 6213-6216 (2004);WO2004/92219(Hinton et al. を参照のこと)。
【0138】
b.Fc機能
本明細書に使用するように、補体依存性細胞傷害及びCDCは、補体の存在下での標的細胞の溶解に関連する。この補体活性化経路は、補体系の第一成分(C1q)が、例えば、コグネイト抗原と複合した分子、抗体へ結合することによって始動される。補体活性化を評価するには、例えば、Gazzano-Santoro et al., 1996, J. Immunol. Methods, 202: 163 に記載のようなCDCアッセイを実施することができる。
【0139】
さらに、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害又はADCCは、ある種の細胞傷害性細胞(例、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)に存在するFc受容体(FcR)上へ結合して分泌されたIgによって、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原を担う標的細胞へ特異的に結合して、その後この標的細胞を細胞毒素で殺傷することが可能になる、細胞毒性の形態に関連する。標的へ指向される特異的な高親和性IgG抗体は、細胞傷害性細胞を装備して、そのような殺傷に絶対的に必要とされる。標的細胞の溶解は細胞外であり、直接的な細胞−細胞の接触が必要とされて、補体は関与しない。
【0140】
FcR結合親和性又はADCC活性が改変されたEFNAモジュレーター変異体とは、親抗体又は非修飾抗体と、又はネイティブ配列のFc領域を含んでなるモジュレーターと比較して増強又は減少したFcR結合活性及び/又はADCC活性を有するものである。FcRへの増加した結合を示すモジュレーター変異体は、親抗体又は非修飾抗体、又はネイティブ配列のFc領域を含んでなるモジュレーターに優る親和性で少なくとも1つのFcRへ結合する。FcRへの減少した結合を示す変異体は、親抗体又は非修飾抗体、又はネイティブ配列のFc領域を含んでなるモジュレーターに劣る親和性で少なくとも1つのFcRへ結合する。FcRへの減少した結合を示すそのような変異体は、FcRに対する結合性をほとんど又は認められるほどに保有しない。例えば、当該技術分野で周知の技術によって決定されるように、ネイティブ配列のIgG Fc領域に比較して、例えば、FcRへの0〜20%の結合を保有する。
【0141】
FcRnに関しては、本発明の抗体はまた、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、5日より大きい、10日より大きい、15日より大きい、好ましくは20日より大きい、25日より大きい、30日より大きい、35日より大きい、40日より大きい、45日より大きい、2ヶ月より大きい、3ヶ月より大きい、4ヶ月より大きい、又は5ヶ月より大きい半減期(例、血清半減期)をもたらす、定常領域への修飾があるFc変異体を含むか又はそれに含まれる。本発明の抗体(又はFc含有分子)の増加した半減期は、哺乳動物、好ましくはヒトにおいて、該哺乳動物中の前記抗体又は抗体断片のより高い血清力価をもたらして、それによって前記抗体又は抗体断片の投与の頻度を低下させる、及び/又は投与される前記抗体又は抗体断片の濃度を低下させる。増加した in vivo 半減期を有する抗体は、当業者に公知の技術によって産生することができる。例えば、in vivo 半減期が増加した抗体は、FcドメインとFcRn受容体の間の相互作用に関与するものとして同定されたアミノ酸残基を修飾すること(例えば、置換すること、欠失させること、又は付加すること)によって産生することができる(例えば、国際特許公開公報番号:WO97/34631;WO04/029207;米国特許第6,737,056号及び米国特許第2003/0190311号を参照のこと)。ヒトFcRnへの in vivo での結合とヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドの血清半減期については、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウス又はトランスフェクトされたヒト細胞株において、又は変異体Fc領域があるポリペプチドを投与された霊長動物においてアッセイすることができる。WO2000/42072は、FcRnへの結合が改善又は減少した抗体変異体について記載する。例えば、Shields et al. J. Biol. Chem. 9(2):6591-6604 (2001) も参照のこと。
【0142】
c.グリコシル化修飾
なお他の態様では、本発明の抗体のグリコシル化の様式又は組成が修飾される。より具体的には、本発明の好ましい態様は、1以上の工学処理された糖型、即ち、Fc領域を含んでなる分子へ共有結合的に付加される、改変したグリコシル化様式又は改変した炭水化物組成を含んでよい。工学処理された糖型は、限定されないが、エフェクター機能を増強又は低下させること、抗体の標的抗原への親和性を高めること、又は抗体の産生を高めることが含まれる、多様な目的に有用であり得る。低下したエフェクター機能が所望される事例では、その分子が非グリコシル化型で発現されるように工学処理し得ることが理解されよう。そのような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1以上の部位を改変することによって達成することができる。即ち、1以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の消失をもたらすことによってその部位でのグリコシル化を消失させる、1以上のアミノ酸置換を行うことができる(例えば、米国特許第5,714,350号及び6,350,861号を参照のこと)。逆に、1以上の追加のグリコシル化部位において工学処理することによって、Fc含有分子へエフェクター機能の増強又は結合の改善を付与することができる。
【0143】
追加的に、あるいはまた、フコシル残基の量が低下した低フコシル化抗体又は二分するGlcNAc構造が増加した抗体といった、改変したグリコシル化組成を有するFc変異体も作製することができる。これらの、そして同様の改変したグリコシル化様式は、抗体のADCC能力を高めることが証明されてきた。工学処理される糖型は、当業者に公知の如何なる方法によっても、例えば、工学処理されたか又は変異体の発現株を使用することによって、1以上の酵素(例えばN−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTI11))での同時発現によって、Fc領域を含んでなる分子を様々な生物又は様々な生物由来の細胞株において発現させることによって、又はFc領域を含んでなる分子が発現された後で炭水化物(複数)を修飾することによって産生してよい。例えば、Shields, R. L. et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740; Umana et al. (1999) Nat. Biotech. 17:176-1、並びに欧州特許番号:EP1,176,195;PCT公開公報:WO03/035835;WO99/54342、Umana et al, 1999, Nat. Biotechnol 17:176-180; Davies et al., 20017 Biotechnol Bioeng 74:288-294; Shields et al, 2002, J Biol Chem 277:26733-26740; Shinkawa et al., 2003, J Biol Chem 278:3466-3473)、米国特許第6,602,684号;米国仮特許出願シリアル番号:10/277,370;10/113,929;PCT WO00/61739A1;PCT WO01/292246A1;PCT WO02/311140A1;PCT WO02/30954A1;PotillegentTM技術(Biowa 社);GlycoMAbTMグリコシル化工学技術(GLYCART biotechnology AG);WO00061739;EA01229125;米国特許第2003/0115614号;Okazaki et al., 2004, JMB, 336: 1239-49 を参照のこと。
【0144】
IX.モジュレーター発現
a.概論
慣用の手順を使用して(例えば、抗体重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子へ特異的に結合することが可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、所望のEFNAモジュレーターをコードするDNAを容易に単離して配列決定することができる。単離されてサブクローン化されたハイブリドーマ細胞(又はファージ若しくは酵母由来のコロニー)は、そのモジュレーターが抗体であれば、そのようなDNAの好ましい供給源として役立つ場合がある。所望されるならば、この核酸を本明細書に記載のようにさらに操作して、融合タンパク質、又はキメラ、ヒト化、又は完全ヒト抗体が含まれる薬剤を創出することができる。より具体的には、単離DNA(修飾されている場合がある)を使用して、米国特許第7,709,611号に記載のような製造抗体のために、定常及び可変領域の配列をクローン化することができる。
【0145】
この例示の方法には、選択した細胞からのRNAの抽出、cDNAへの変換、及び抗体特異プライマーを使用するPCRによる増幅を伴う。好適なプライマーは、当該技術分野で周知であり、また本明細書において例示されるように、数多くの市販供給源より容易に入手可能である。コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングによって単離される組換えヒト又は非ヒト抗体を発現するには、この抗体をコードするDNAを組換え発現ベクターへクローン化して、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌が含まれる宿主細胞へ導入することが理解されよう。なお他の態様において、モジュレーターは、サルCOS細胞、NS0細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は(他の方法では所望の構築体を産生しない)骨髄腫細胞へ導入されてそれによって発現される。下記により詳しく考察するように、臨床及び市販の融合構築体又は免疫グロブリンの供給をもたらすには、所望のモジュレーターを発現する形質転換細胞を相対的に多い量で増殖させてよい。
【0146】
EFNAモジュレーターの所望の部分をコードする核酸が、ファージディスプレイ技術、酵母ライブラリー、ハイブリドーマベースの技術、合成的に、又は市販の供給源より入手されるか又はそれらに由来するかに拘らず、本発明には、融合タンパク質と抗EFNA抗体又はその抗原結合断片若しくは誘導体が含まれるEFNAモジュレーターをコードする核酸分子及び配列が明白に含まれると理解されるべきである。さらに本発明には、高いストリンジェンシーの下で、またあるいは、中間的又はより低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件(例えば、下記に定義するような)の下で、本発明のモジュレーター又はその断片若しくは変異体をコードするポリヌクレオチド配列を有する核酸へ相補的なポリヌクレオチドへハイブリダイズする核酸又は核酸分子(例、ポリヌクレオチド)が含まれる。本明細書に使用する「核酸分子」又は「単離(された)核酸分子」という用語には、少なくともDNA分子とRNA分子が含まれると企図される。核酸分子は、一本鎖でも二本鎖でもよいが、好ましくは、二本鎖DNAである。さらに、本発明は、そのようなモジュレーターコード化ポリヌクレオチドを取り込むどの担体又は構築体も含み、限定なしに、ベクター、プラスミド、宿主細胞、コスミド、又はウイルス構築体が含まれる。
【0147】
「単離(された)核酸」という用語は、その核酸が(i)例えばポリメラーゼ鎖反応(PCR)によって in vitro で増幅された、(ii)クローニングによって組換え的に産生された、(iii)例えば、切断とゲル電気泳動分画化によって精製された、又は(iv)例えば化学合成によって合成されたことを意味する。単離核酸とは、組換えDNA技術による操作によって入手可能である核酸である。
【0148】
より具体的には、本発明の抗体の一方又は両方の鎖、又はその断片、誘導体、ムテイン、又は変異体が含まれるモジュレーターをコードする核酸、ハイブリダイゼーションプローブとしての使用に十分なポリヌクレオチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定する、分析する、突然変異させる、又は増幅するためのPCRプライマー又は配列決定プライマー、ポリヌクレオチドの発現を阻害するためのアンチセンス核酸、及び上記の相補性配列も提供される。この核酸はどの長さでもあり得る。それらは、例えば、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、75、100、125、150、175、200、250、300、350、400、450、500、750、1,000、1,500、3,000、5,000又はそれより多いヌクレオチドの長さであり得る、及び/又は1以上の追加配列(例えば、調節配列)を含み得る、及び/又はより大きな核酸(例えば、ベクター)の一部であり得る。これらの核酸は、一本鎖でも二本鎖でもよくて、RNA及び/又はDNAヌクレオチドとその人工的な変異体(例、ペプチド核酸)を含み得る。抗体又はその免疫反応性断片若しくは誘導体が含まれる、本発明のモジュレーターをコードする核酸は、好ましくは、上記に記載のように単離されている。
【0149】
b.ハイブリダイゼーションと同定
示したように、本発明は、他の核酸へ特別なハイブリダイゼーション条件の下でハイブリダイズする核酸をさらに提供する。当該技術分野では、核酸をハイブリダイズさせる方法が周知である。例えば、「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク(1989)、6.3.1-6.3.6 を参照のこと。本出願の目的では、中等度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が、5x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)を含有するプレ洗浄溶液、約50%ホルムアミド、6xSSCのハイブリダイゼーション緩衝液と55℃のハイブリダイゼーション温度(又は、約50%ホルムアミドを含有するもののような他の同様のハイブリダイゼーション溶液を42℃のハイブリダイゼーション温度で)と、0.5xSSC、0.1% SDS中で60℃の洗浄条件を使用する。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件では、6xSSC中45℃でハイブリダイズさせることに、0.1xSSC、0.2% SDS中68℃での1回以上の洗浄を続ける。さらに、当業者は、ハイブリダイゼーション及び/又は洗浄条件を操作して、互いに少なくとも65、70、75、80、85、90、95、98、又は99%同一であるヌクレオチド配列を含んでなる核酸が典型的には互いにハイブリダイズしたままであるように、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増加又は減少させることができる。より一般的には、本開示の目的では、「核酸配列に関して実質的に同一である」という用語は、参照の核酸配列に対して少なくとも約85%、又は90%、又は95%、又は97%の配列同一性を示すヌクレオチドの配列として解釈され得る。
【0150】
ハイブリダイゼーション条件の選択に影響を及ぼす基本のパラメータと好適な条件を設計するための手引きについては、例えば、Sambrook, Fritsch, and Maniatis(1989)「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」:コールドスプリングハーバーラボラトリー出版局、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、第9章及び11章;及び「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」(1995)Ausubel et al.(監修)ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社、セクション2.10 及び 6.3-6.4)に示されて、例えば、核酸の長さ及び/又は塩基組成に基づいて、当業者によって容易に決定され得る。
【0151】
本発明によれば、核酸が単独で存在しても、相同又は異種であり得る、他の核酸との組合せにおいて存在してもよいことがさらに理解されよう。好ましい態様において、核酸は、前記核酸に関して相同又は異種であり得る発現制御配列へ機能的に連結している。この文脈において、相同という用語は、核酸が天然の発現制御配列へ機能的にも連結していることを意味し、異種という用語は、核酸が天然の発現制御配列へ機能的には連結していないことを意味する。
【0152】
c.発現
RNA及び/又はタンパク質又はペプチドを発現する核酸のような核酸と発現制御配列は、前記核酸の発現又は転写が前記発現制御配列の制御下又は影響下にあるような様式でそれらが互いに共有結合的に連結しているならば、互いに機能的に連結している。その核酸が機能的なタンパク質へ翻訳されるならば、発現制御配列機能はコーディング配列へ機能的に連結していて、前記発現制御配列の誘導は、コーディング配列のフレームシフトを引き起こすことも、前記コーディング配列が所望のタンパク質又はペプチドへ翻訳されることが可能でないことも無く、前記核酸の転写をもたらす。
【0153】
「発現制御配列」という用語は、本発明のプロモーターによれば、リボソーム結合部位、促進剤、及び遺伝子の転写又はmRNAの翻訳を調節する他の制御要素を含む。本発明の特別な態様において、発現制御配列は、調節することができる。発現制御配列の正確な構造は、その種又は細胞種に応じて変動し得るが、一般的に言えば、TATAボックス、キャップ配列、CAAT配列、等といった、転写と翻訳の開始にそれぞれ関与する5’非転写配列と5’及び3’非翻訳配列を含む。より具体的には、5’非転写発現制御配列は、機能的に連結した核酸の転写制御のためのプロモーター配列が含まれるプロモーター領域を含む。発現制御配列はまた、プロモーター配列又は上流アクチベータ配列も含み得る。
【0154】
本発明によれば、「プロモーター」又は「プロモーター領域」という用語は、発現される核酸配列の上流(5’)に位置して、RNAポリメラーゼに認識及び結合部位を提供することによって該配列の発現を制御する核酸配列に関する。プロモーター領域には、遺伝子の転写の調節に関与するさらなる因子のためのさらなる認識及び結合部位が含まれ得る。プロモーターは、原核生物又は真核生物の遺伝子の転写を制御し得る。さらに、プロモーターは、誘導可能であり得、誘導剤に応答して転写を開始してもよく、転写が誘導剤によって制御されない場合は、常時発現性であってもよい。誘導可能プロモーターの制御下にある遺伝子は、誘導剤が存在しなければ、発現されないか又はわずかな程度しか発現されない。誘導剤の存在下では、その遺伝子にスイッチが入るか、又は転写のレベルが増加する。このことは、概して、特定の転写因子の結合によって媒介される。
【0155】
本発明により好ましいプロモーターには、SP6、T3、及びT7ポリメラーゼのプロモーター、ヒトU6 RNAプロモーター、CMVプロモーター、及びこれらの人工的なハイブリッドプロモーター(例、CMV)[ここでは、例えば、ヒトGAPDH(グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロヒドロゲナーゼ)のような他の細胞タンパク質の遺伝子のプロモーターの一部又は諸部分へその一部又は諸部分が融合して、追加のイントロン(複数)が含まれるか又は含まれない]が含まれる。
【0156】
本発明によれば、「発現」という用語は、その最も一般的な意味で使用されて、RNAの産生、又はRNA及びタンパク質/ペプチドの産生を含む。それは、核酸の部分的な発現も含む。さらに、発現は、一過的に行われても安定的に行われてもよい。
【0157】
好ましい態様において、本発明による核酸分子は、適宜(該核酸の発現を制御する)プロモーターとともに、ベクター中で存在する。「ベクター」という用語は、本明細書において、その最も一般的な意味で使用されて、核酸が例えば原核細胞及び/又は真核細胞の中へ導入されて、適宜、ゲノムの中へ組み込まれることを可能にする、前記核酸のどの媒介担体も含む。この種のベクターは、好ましくは、細胞中で複製及び/又は発現される。ベクターは、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージ、又はウイルスゲノムを含んでよい。本明細書に使用する「プラスミド」という用語は、一般的には、染色体DNAから独立して複製することができる、染色体外遺伝物質の構築体、通常は、環状DNA二重鎖に関する。
【0158】
本発明を実施する場合、分子生物学、微生物学、及び組換えDNA技術中の多くの慣用技術が任意選択的に使用されると理解されよう。そのような慣用技術は、本明細書に定義されるようなベクター、宿主細胞、及び組換え方法に関する。これらの技術は周知であり、例えば、Berger and Kimmel「酵素学の方法(Methods in Enzymology)」第152巻、「分子クローニング技術の手引き(Guide to Molecular Cloning Techniques)」、アカデミックプレス社(カリフォルニア州サンディエゴ);Sambrook et al.「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning - A Laboratory Manual)」第3版、1-3 巻、コールドスプリングハーバーラボラトリー、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(2000)、及び「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」F. M. Ausubel et al.(監修)上掲、に説明されている。例えば、細胞の単離及び培養のために(例えば、後続の核酸又はタンパク質の単離のために)有用な他の参考文献には、Freshney(1994)「動物細胞の培養、基本技術マニュアル(Culture of Animal Cells, a Manual of Basic Technique)」第3版、Wiley-Liss,ニューヨークとその中の参考文献;Payne et al.(1992)「植物細胞及び組織の液体系培養(Plant Cell and Tissue Culture in Liquid Systems)」ジョン・ウィリー・アンド・サンズ社、ニューヨーク州ニューヨーク;Gamborg and Phillips(監修)(1995)「植物細胞、組織、及び器官の培養;基礎的な方法のスプリンガー・ラボ・マニュアル(Plant Cell and Tissue Culture; Fundamental Methods Springer Lab Manual)」Springer-Verlag(ベルリン−ハイデルベルグ−ニューヨーク)、及び Atlas and Parks(監修)「微生物培地ハンドブック(The Handbook of Microbiological Media)」(1993)CRCプレス(フロリダ州ボカラトン)が含まれる。核酸を作製する方法(例えば、in vitro 増幅、細胞からの精製、又は化学合成によって)、核酸を操作する方法(例えば、制限酵素消化、ライゲーション、等による部位特異的突然変異誘発)、及び核酸を操作して作製するのに有用な様々なベクター、細胞株、等についても、上記の参考文献に記載されている。加えて、本質的には、どのポリヌクレオチド(例えば、標識化又はビオチニル化ポリヌクレオチドが含まれる)も、多様な市販供給源のいずれかより、カスタム又は標準注文することができる。
【0159】
このように、1つの側面において、本発明は、本発明の抗体又はその部分の組換え発現を可能にする組換え宿主細胞を提供する。そのような組換え宿主細胞中での発現によって産生される抗体を本明細書では組換え抗体と呼ぶ。本発明はまた、そのような宿主細胞の子孫細胞と、それによって産生される抗体を提供する。
【0160】
本明細書に使用する「組換え宿主細胞(又は単に、宿主細胞)」という用語は、組換え発現ベクターが導入された細胞を意味する。組換え宿主細胞と宿主細胞は、特別な被検細胞だけでなくそのような細胞の子孫も意味すると理解されるべきである。後継の世代では、突然変異又は環境上の影響により、ある何らかの修飾が起こり得るので、そのような子孫は、実際には親細胞と同一ではないかもしれないが、それでも本明細書に使用される宿主細胞という用語の範囲内に含まれる。そのような細胞は、本発明による、上記に記載のようなベクターを含んでよい。
【0161】
別の側面において、本発明は、本明細書に記載のような抗体又はその部分を作製するための方法を提供する。1つの態様によれば、前記方法は、上記に記載のようなベクターでトランスフェクトされたか又は形質転換された細胞を培養することと、抗体又はその部分を回収することを含む。
【0162】
上記に示したように、本発明の抗体(又はその断片若しくは変異体)の発現は、好ましくは、所望の抗EFNA抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクター(複数)を含む。当業者に周知の方法を使用して、抗体コーディング配列と適正な転写及び翻訳制御シグナルを含んでなる発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、例えば、in vitro 組換えDNA技術、合成技術、及び in vivo 遺伝子組換えが含まれる。このように、本発明の態様は、本発明の抗EFNA抗体(例、全抗体、抗体の重鎖又は軽鎖、抗体の重鎖若しくは軽鎖可変ドメイン、又はその部分、又は重鎖若しくは軽鎖のCDR、単鎖Fv、又はこれらの断片若しくは変異体)をコードするヌクレオチド配列をプロモーターへ作動可能に連結して含んでなる複製可能なベクターを提供する。好ましい態様では、そのようなベクターに、抗体分子の重鎖(又はその断片)をコードするヌクレオチド配列、抗体の軽鎖(又はその断片)、又は重鎖と軽鎖の両方をコードするヌクレオチド配列が含まれてよい。
【0163】
本発明のヌクレオチドが本明細書の教示に従って単離されて修飾されたならば、それらを使用して、抗EFNA抗体又はその断片が含まれる、選択したモジュレーターを産生することができる。
【0164】
X.モジュレーターの産生及び精製
当該技術分野で認められた分子生物学技術と現行のタンパク質発現の方法論を使用して、所望のモジュレーターの実質的な量を産生することができる。より具体的には、上記に記載のように入手されて工学処理される抗体のようなモジュレーターをコードする核酸分子を、様々な種類の宿主細胞を含んでなる、周知の市販されているタンパク質産生系へ導入して、所望の医薬品の前臨床量、臨床量、又は市販量を提供することができる。好ましい態様において、モジュレーターをコードする核酸分子は、選択した宿主細胞中への効率的な組込みと所望されるEFNAモジュレーターの後続の高い発現レベルをもたらすベクター又は発現ベクターの中へ工学処理されると理解されよう。
【0165】
好ましくは、EFNAモジュレーターをコードする核酸分子とこれらの核酸分子を含んでなるベクターを好適な哺乳動物、植物、細菌、又は酵母の宿主細胞のトランスフェクションに使用することができるが、モジュレーターの産生には、原核細胞系が使用し得ると理解されよう。トランスフェクションは、ポリヌクレオチドを宿主細胞へ導入することで知られたどの方法によってもよい。当該技術分野では、異種ポリヌクレオチドの哺乳動物細胞への導入の方法が周知であり、デキストラン媒介トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、ポリヌクレオチド(複数)のリポソーム被包化、及びDNAの核中への直接的なマイクロインジェクションが含まれる。加えて、核酸分子を哺乳動物細胞中へウイルスベクターによって導入してよい。当該技術分野では、哺乳動物細胞を形質転換する方法が周知である。例えば、米国特許第4,399,216号、4,912,040号、4,740,461号、及び4,959,455号を参照のこと。さらに、当該技術分野では、植物細胞を形質転換する方法が周知であり、例えば、アグロバクテリウム媒介形質転換、生物銃(biolistic)形質転換、直接注入、エレクトロポレーション、及びウイルス形質転換が含まれる。当該技術分野では、細菌細胞や酵母細胞を形質転換する方法も周知である。
【0166】
さらに、宿主細胞は、本発明の2つの発現ベクター、例えば、重鎖由来ポリペプチドをコードする第一ベクターと軽鎖由来ポリペプチドをコードする第二ベクターで同時トランスフェクトしてよい。この2つのベクターは、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの実質的に等しい発現を可能にする、同一の選択可能マーカーを含有し得る。あるいは、重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方をコードして、それらを発現することが可能である単一ベクターを使用してよい。そのような状況では、軽鎖は、好ましくは、重鎖の手前に配置されて、過度の有害な遊離重鎖を回避する。重鎖及び軽鎖のコーディング配列は、cDNA又はゲノムDNAを含んでよい。
【0167】
a.宿主発現系
多くが市販されている、多様な宿主発現ベクター系は、本明細書の教示に適合可能であって、本発明のモジュレーターを発現するために使用し得る。そのような宿主発現系は、対象のコーディング配列が発現されて後に精製される媒体を意味するが、適正なヌクレオチドコーディング配列で形質転換されるか又はトランスフェクトされる場合は、本発明の分子を in situ で発現する細胞も意味する。そのような系には、限定されないが、モジュレーターコーディング配列を含有する、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA、又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌(例、大腸菌、枯草菌、ストレプトマイセス)のような微生物;モジュレーターコーディング配列を含有する組換え酵母発現ベクターでトランスフェクトされた酵母(例、サッカロミセス属、ピキア属);モジュレーターコーディング配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例、バキュロウイルス)で感染された昆虫細胞系;モジュレーターコーディング配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染されたか又はそれを含有する組換えプラスミド発現ベクター(例、Tiプラスミド)でトランスフェクトされた植物細胞系(例、タバコ属、アラビドプシス属、アオウキクサ、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモ、等);又は哺乳動物細胞のゲノム由来のプロモーター(例、メタロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルス由来のプロモーター(例、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)を含有する組換え発現構築体を収容する哺乳動物細胞系(例、COS、CHO、BHK、293、3T3細胞)が含まれる。
【0168】
細菌系では、有利にも、発現される分子のために企図される使用に依存して、いくつかの発現ベクターを選択することができる。例えば、モジュレーターの医薬組成物の産生のために、大量のそのようなタンパク質を産生すべき場合は、容易に精製される融合タンパク質産物の高レベル発現を指令するベクターが望ましいかもしれない。そのようなベクターには、限定されないが、大腸菌発現ベクターpUR278(Ruther et al., EMBO1. 2: 1791 (1983))[ここでは、融合タンパク質を産生するように、コーディング配列を該ベクターの中へlacZコーディング領域と正しいフレームで個別にライゲート(ligate)し得る];pINベクター(Inouye & Inouye, Nucleic Acids Res. 13: 3101-3109 (1985);Van Heeke & Schuster, J. Biol. Chem. 24: 5503-5509 (1989))、等が含まれる。pGEXベクターも、グルタチオン5−トランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質として異種ポリペプチドを発現するのに使用してよい。一般に、そのような融合タンパク質は可溶性であって、溶解した細胞より、マトリックスグルタチオンアガロースビーズへの吸着及び結合に続く、遊離グルタチオンの存在下での溶出によって容易に精製することができる。pGEXベクターは、トロンビン又は第Xa因子プロテアーゼ切断部位が含まれるように設計されているので、クローン化された標的遺伝子産物は、GST部分より放出され得る。
【0169】
昆虫系では、異種遺伝子を発現するためのベクターとして、Autographa californica(キンウワバ科)核多角体ウイルス(AcNPV)を使用してよい。このウイルスは、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞中で増殖する。コーディング配列は、このウイルスの非本質的な領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)へ個別にクローン化して、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に配置してよい。
【0170】
哺乳動物の宿主細胞では、所望のヌクレオチド配列を導入するのに、いくつかのウイルスベースの発現系を使用してよい。発現ベクターとしてアデノウイルスを使用する場合、対象のコーディング配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体(例えば、後期プロモーター及び3部分(tripartite)リーダー配列)へライゲートしてよい。次いで、このキメラ遺伝子を、in vitro 又は in vivo の組換えによって、アデノウイルスゲノムに挿入してよい。ウイルスゲノムの非本質領域(例えば、領域E1又はE3)での挿入は、被感染宿主において生存可能でその分子を発現することが可能である組換えウイルスをもたらす(例えば、Logan & Shenk, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81: 355-359 (1984) を参照のこと)。挿入されたコーディング配列の効率的な翻訳には、特定の始動シグナルが求められる場合もある。これらのシグナルには、ATG開始コドンと隣接配列が含まれる。さらに、開始コドンは、挿入物全体の翻訳を確実にするために、所望のコーディング配列のリーディングフレームと同調していなければならない。これら外因性の翻訳制御シグナルと開始コドンは、天然と合成ともに、多様な起源のものであり得る。発現の効率は、適正な転写促進剤要素、転写ターミネーター、等の包含によって増強することができる(例えば、Bittner et al., Methods in Enzymol. 153:51-544 (1987) を参照のこと)。このように、当該技術分野では、発現用の宿主として利用し得る適合可能な哺乳動物細胞株が周知であり、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)より入手可能な多くの不死化細胞株が含まれる。これらには、とりわけ、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS0細胞、SP2細胞、HEK−293T細胞、293 Freestyle 細胞(Life Technologies)、NIH−3T3細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例、Hep G2)、A549細胞、及びいくつかの他の細胞株が含まれる。
【0171】
組換えタンパク質の長期の高収量産生には、安定した発現が好ましい。従って、当該技術分野で認められた標準技術を使用して、選択されるモジュレーターを安定的に発現する細胞株を設計することができる。ウイルスの複製起点を含有する発現ベクターを使用することよりむしろ、宿主細胞は、適正な発現制御要素(例、プロモーター、プロモーター配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位、等)と選択可能マーカーによって制御されるDNAで形質転換することができる。異種DNAの導入に続いて、工学処理された細胞を濃縮培地においてそのまま1〜2日間増殖してよく、次いで選択培地へスイッチさせる。組換えプラスミド中の選択可能マーカーは、この選択に対する抵抗性を付与して、細胞がプラスミドをその染色体中へ安定的に組み込んで、増殖して細胞巣を形成することを可能にし、次いでこれをクローン化して細胞株へ拡大することができる。この方法は、有利にも、上記分子を発現する細胞株を設計するために使用し得る。このような設計された細胞株は、該分子と直接的又は間接的に相互作用する組成物のスクリーニング及び評価において特に有用であり得る。
【0172】
当該技術分野では、いくつかの選択系が周知であり、限定されないが、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(Wigler et al., Cell 11:223 (1977))、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:202 (1992))、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al., Cell 22:8 17 (1980))の遺伝子がそれぞれtk−、hgprt−、又はaprt−の細胞中で利用され得る系を含めて、使用することができる。また、代謝拮抗薬への抵抗性を以下の遺伝子の選択についての基礎として使用することができる:メトトレキセートに対する抵抗性を付与する、dhfr(Wigler et al., Natl. Acad. Sci. USA 77:357 (1980); O'Hare et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527 (1981));ミコフェノール酸に対する抵抗性を付与する、gpt(Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072 (1981));アミノグリコシドG−418に対する抵抗性を付与する、neo(Clinical Pharmacy 12:488-505; Wu and Wu, Biotherapy 3:87-95 (1991); Tolstoshev, Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol. 32:573-596 (1993); Mulligan, Science 260:926-932 (1993); 及び Morgan and Anderson, Ann. Rev. Biochem. 62: 191-217 (1993); TIB TECH 11(5):155-2 15 (May, 1993));並びに、ヒグロマイシンに対する抵抗性を付与する、hygro(Santerre et al., Gene 30:147 (1984))。所望の組換えクローンを選択するには、当該技術分野で一般に公知の組換えDNA技術の方法を定型的に適用してよくて、そのような方法については、例えば、Ausubel et al. (監修)「分子生物学の最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(1993);Kriegler,「遺伝子の移入及び発現:実験マニュアル(Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual)」ストックトン・プレス、ニューヨーク(1990);及び、Dracopoli et al.(監修)「ヒト遺伝学の最新プロトコール(Current Protocols in Human Genetics)」ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク(1994)中12及び13章;Colberre-Garapin et al., J. Mol. Biol. 150:1 (1981) に記載されている。安定した高収量細胞株を確立する1つの特に好ましい方法は、ある条件の下で発現を高めるのに効率的なアプローチを提供するグルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(GS系)を含むと理解されよう。このGS系については、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる、EP特許:0216846、0256055、0323997、及び0338841に関連して、その全体又は一部が考察されている。
【0173】
加えて、挿入された配列の発現を調節するか又はその遺伝子産物を所望される特定の形式で修飾及び処理する宿主細胞株を選択してよい。タンパク質のそのような修飾(例、グリコシル化)及びプロセシング(例、切断)は、該タンパク質産物の機能及び/又は精製に重要であり得る。異なる宿主細胞は、翻訳後プロセシングとタンパク質及び遺伝子産物の修飾に特徴的で特異的な機序を有する。当該技術分野で公知なように、適正な細胞系又は宿主系を選択して、発現されるポリペプチドの望まれる修飾及びプロセシングを確実にすることができる。このために、本発明における使用には、一次転写物の適切なプロセシング、グリコシル化、及び遺伝子産物のリン酸化のための細胞機構を保有する真核宿主細胞が特に有効である。従って、特に、好ましい哺乳動物宿主細胞には、限定されないが、CHO、VERY、BHK、HeLa、COS、NS0、MDCK、293、3T3、W138、並びに、例えば、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O、及びT47Dのような乳癌細胞株と、例えば、CRL7O3O及びHsS78Bstのような正常な乳腺細胞株が含まれる。モジュレーターと選択される産生系に依って、当業者は、モジュレーターの効率的な発現に適正な宿主細胞を容易に選択して最適化することができる。
【0174】
b.化学合成
上述した宿主細胞株以外に、本発明のモジュレーターは、当該技術分野で公知の技術を使用して、化学的に合成し得ることが理解されよう(例えば、Creighton (1983)「タンパク質:構造及び分子の諸原理(Proteins: Structures and Molecular Principles)」W. H. フリーマン社、ニューヨーク、及び Hunkapiller, M., et al.(1984)Nature 310: 105-111 を参照のこと)。例えば、本発明のポリペプチド断片に対応するペプチドをペプチド合成機の使用によって合成することができる。さらに、所望されるならば、ポリペプチド配列中への代用物又は付加物として非典型型アミノ酸又は化学アミノ酸類似体を導入することができる。非典型型アミノ酸には、限定されないが、通常のアミノ酸のD−異性体、2,4−ジアミノ酪酸、a−アミノイソ酪酸、4−アミノ酪酸、Abu、2−アミノ酪酸、g−Abu、e−Ahx、6−アミノヘキサン酸、Aib、2−アミノイソ酪酸、3−アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、ザルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t−ブチルグリシン、t−ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、b−アラニン、フルオロ−アミノ酸、b−メチルアミノ酸、Ca−メチルアミノ酸、Na−メチルアミノ酸のようなデザイナーアミノ酸、並びにアミノ酸類似体全般が含まれる。さらに、アミノ酸は、D(右旋性)でもL(左旋性)でもよい。
【0175】
c.トランスジェニック系
本発明のEFNAモジュレーターはまた、対象の免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖配列(又は、その断片若しくは誘導体若しくは変異体)についてトランスジェニックである哺乳動物又は植物の産生と、所望の化合物の回収可能形態での産生により、トランスジェニックに産生することができる。哺乳動物中でのトランスジェニック産生に関連して、抗EFNA抗体は、例えば、ヤギ、ウシ、又は他の哺乳動物において産生されて、その乳より回収することができる。例えば、米国特許第5,827,690号、5,756,687号、5,750,172号、及び5,741,957号を参照のこと。いくつかの態様では、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む非ヒトトランスジェニック動物を上記に記載のようにEFNA又はその免疫原性部分で免疫化する。抗体を植物中で作製する方法については、例えば、米国特許第6,046,037号及び5,959,177号に記載されている。
【0176】
本明細書の教示に従って、本発明のEFNAモジュレーターをコードする1以上の核酸分子を動物又は植物の中へ標準トランスジェニック技術によって導入することによって、非ヒトのトランスジェニック動物又は植物を産生することができる。Hogan と米国特許第6,417,429号を参照のこと。トランスジェニック動物を作製するのに使用するトランスジェニック細胞は、胚性幹細胞でも、体細胞でも、受精卵でもよい。トランスジェニック非ヒト生物は、キメラ、非キメラの異型接合体と非キメラの同型接合体であり得る。例えば、Hogan et al.「マウス胚の操作法:実験マニュアル(Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual)」第2版、コールドスプリングハーバー出版局(1999);Jackson et al.「マウスの遺伝学とトランスジェニック技術:実践アプローチ(Mouse Genetics and Transgencs: A Practical Approach)」オックスフォード大学出版局(2000);及び Pinkert「トランスジェニック動物技術:実験手引き(Transgenic Animal Technology: A Laboratory Handbook)」アカデミックプレス(1999)を参照のこと。いくつかの態様において、トランスジェニック非ヒト動物は、例えば、対象の重鎖及び/又は軽鎖をコードする標的化構築体による、標的指向された破壊及び置換を有する。1つの態様において、トランスジェニック動物は、EFNAへ特異的に結合する重鎖及び軽鎖をコードする核酸分子を含んで発現する。抗EFNA抗体は、どのトランスジェニック動物でも作製してよいが、特に好ましい態様において、非ヒト動物は、マウス、ラット、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、又はウマである。さらなる態様において、非ヒトトランスジェニック動物は、所望の医薬品を血液、乳、尿、唾液、涙液、粘液、及び他の体液において発現して、それは、当該技術分野で認められた精製技術を使用して、容易に入手することができる。
【0177】
異なる細胞株によるか又はトランスジェニック動物において発現されるモジュレーター(抗体が含まれる)は、互いに異なるグリコシル化様式を有する可能性がある。しかしながら、本発明で提供される核酸分子によってコードされるか又は本発明で提供されるアミノ酸配列を含んでなるすべてのモジュレーターが、該分子のグリコシル化状態に拘らず、そしてより一般的には、翻訳後修飾(複数)の存在又は非存在に拘らず、本発明の一部である。加えて、本発明には、翻訳の間又は後に異なって修飾される(例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、既知の保護基/ブロッキング基による誘導化、タンパク分解的切断、抗体分子又は他の細胞リガンドへの連結、等により)モジュレーターが含まれる。数多くの化学修飾のいずれも、限定されないが、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBHによる特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、酸化、還元、ツニカマイシンの存在下での代謝合成、等が含まれる既知の技術によって行ってよい。様々な翻訳後修飾も本発明に含まれて、例えば、N連結又はO連結した炭水化物鎖、N末端又はC末端のプロセシング、アミノ酸骨格への化学部分の付加、N連結又はO連結した炭水化物鎖の化学修飾、並びに原核宿主細胞発現の結果としてのN末端メチオニン残基の付加又は削除が含まれる。さらに、本文と下記の「実施例」において説明するように、該ポリペプチドはまた、そのモジュレーターの検出及び単離を可能にする、酵素、蛍光、放射性同位体、又は親和性の標識のような、検出可能な標識で修飾してよい。
【0178】
d.精製
本明細書に開示する組換え発現技術又は他の技術のいずれによっても本発明のモジュレーターを産生したならば、それは、免疫グロブリンの精製について当該技術分野で公知の如何なる方法によって精製してもよく、又はより一般的には、タンパク質の精製についての如何なる他の標準技術によって精製してもよい。この点に関して言えば、モジュレーターは、単離することができる。本明細書に使用するように、単離EFNAモジュレーターとは、同定されて、その本来の環境の成分より分離及び/又は回収されたものである。その本来の環境の混在成分は、該ポリペプチドの診断又は療法上の使用に干渉し得る物質であって、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性若しくは非タンパク質性の溶質が含まれる場合がある。単離モジュレーターには、該ポリペプチドの本来環境の少なくとも1つの成分も存在していないという理由から、組換え細胞内の in situ モジュレーターが含まれる。
【0179】
組換え技術を使用する場合、EFNAモジュレーター(例えば、抗EFNA抗体又はその誘導体若しくは断片)は、細胞内で、又は細胞周辺腔で産生され得るか、その培地へ直接分泌され得る。所望の分子が細胞内で産生されるならば、第一の工程として、粒子状の残渣(宿主細胞又は溶出断片)を例えば、遠心分離又は限外濾過によって除去することができる。例えば、Carter, et al., Bio/Technology 10: 163 (1992) は、大腸菌の細胞周辺腔へ分泌される抗体を単離する手順について説明する。簡潔に言えば、細胞ペーストを酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA、及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で約30分にわたり融解する。遠心分離によって細胞残滓を取り除くことができる。抗体が培地中へ分泌される場合、一般的には、そのような発現系からの上清を市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、アミコン(Amicon)又はミリポア(Millipore)ペリコン(Pellicon)限外濾過ユニットを使用して初めに濃縮する。上記工程のいずれでも、タンパク質加水分解を防ぐためにPMSFのようなプロテアーゼ阻害剤を含めてよくて、偶発的な汚染体の増殖を防ぐために抗生物質を含めてよい。
【0180】
細胞より調製したモジュレーター(例、fc−EFNA又は抗EFNA抗体)組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及び親和性クロマトグラフィーを使用して精製することができて、親和性クロマトグラフィーは、好ましい精製技術である。親和性リガンドとしてのプロテインAの適格性は、選択した構築体に存在するあらゆる免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。プロテインAを使用して、ヒトのIgG1、IgG2、又はIgG4重鎖に基づいた抗体を精製することができる(Lindmark, et al., J Immunol Meth 62:1 (1983))。すべてのマウスアイソタイプとヒトIgG3には、プロテインGが推奨されている(Guss, et al., EMBO J 5:1567 (1986))。親和性リガンドが付着するマトリックスは、多くの場合、ほぼアガロースであるが、他のマトリックスも利用可能である。制御された細孔ガラス又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンのような機械的に安定なマトリックスは、アガロースで達成され得るものより速い流速とより短い処理時間を可能にする。抗体がC3ドメインを含む場合は、Bakerbond ABXTM樹脂(J. T. Baker;ニュージャージー州フィリップスバーグ)が精製に有用である。イオン交換カラムでの分画化、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンでのクロマトグラフィー、陰イオン又は陽イオン樹脂でのセファロースクロマトグラフィー(ポリアスパラギン酸カラムのような)、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、及び硫酸アンモニウム沈殿といった、タンパク質精製用の他の技術も、回収すべき抗体に依って利用可能である。特に好ましい態様において、本発明のモジュレーターは、少なくとも一部は、プロテインA若しくはプロテインG親和性クロマトグラフィーを使用して精製される。
【0181】
XI.コンジュゲートされたEFNAモジュレーター
本明細書の教示に従って本発明のモジュレーターを精製したならば、それらは、医薬活性部分又は診断部分、又は生体適合性の修飾剤と連結、融合、コンジュゲートさせる(例えば、共有結合的又は非共有結合的に)、又は他の方法で会合させることができる。本明細書に使用するように、「コンジュゲート(conjugate)」という用語は概括的に使用されて、会合の方法に拘らず、開示モジュレーターと会合したあらゆる分子を意味するものとする。この点に関して言えば、そのようなコンジュゲートは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、ポリマー、核酸分子、低分子、模倣薬剤、合成薬、無機分子、有機分子、及び放射性同位体を含んでよいと理解されよう。さらに、上記に示したように、選択したコンジュゲートは、モジュレーターへ共有結合的又は非共有結合的に連結してよく、少なくとも一部は、このコンジュゲーションを有効にするために使用される方法に依存して、様々なモル比を示し得る。
【0182】
好ましい態様において、本発明のモジュレーターは、選択される特徴を付与するタンパク質、ポリペプチド、又はペプチド(例、生体毒素、バイオマーカー、精製タグ、等)とコンジュゲート又は会合し得ることが明らかであろう。より一般的には、選択態様において、本発明には、異種のタンパク質又はポリペプチドへ組換え的に融合されるか又は化学的にコンジュゲートされる(共有結合と非共有結合の両方のコンジュゲーションが含まれる)モジュレーター又はその断片の使用が含まれ、ここで該ポリペプチドは、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、又は少なくとも100のアミノ酸を含む。この構築体は、必ずしも直接的に連結している必要はないが、リンカー配列を介して生じ得る。例えば、抗体を使用して、特別な細胞表面受容体に特異的な抗体へ本発明のモジュレーターを融合又はコンジュゲートさせることによって、EFNAを発現する特別な細胞種へ異種ポリペプチドを in vitro 又は in vivo のいずれかで標的指向することができる。さらに、異種ポリペプチドへ融合又はコンジュゲートしたモジュレーターはまた、in vitro イムノアッセイに使用し得て、当該技術分野で公知の精製の方法論と適合可能であり得る。例えば、国際特許公開公報番号:WO93/21232;欧州特許番号:EP439,095;Naramura et al., 1994, Immunol. Lett. 39: 91-99;米国特許第5,474,981号;Gillies et al., 1992, PNAS 89: 1428-1432;及び Fell et al., 1991, J. Immunol. 146: 2446-2452 を参照のこと。
【0183】
a.生体適合性の修飾剤
好ましい態様において、本発明のモジュレーターは、モジュレーター特徴を所望のように調整、改変、改善、又は加減するために使用し得る、生体適合性の修飾剤とコンジュゲートさせるか又は他の方法で会合させることができる。例えば、市販のポリエチレングリコール(PEG)又は同様の生体適合性ポリマーといった、相対的に分子量が高いポリマー分子を付着させることによって、in vivo 半減期が増加した抗体又は融合構築体を産生することができる。当業者は、該抗体へ特異的な特性を付与する(例えば、半減期を設計することができる)ように選択することが可能である、多くの異なる分子量及び分子配置でPEGを入手し得ることを理解されよう。PEGは、多機能性リンカーを伴うか又は伴わずに、前記抗体又は抗体断片のN若しくはC末端へのPEGの部位特異的なコンジュゲーションによるか、又はリジン残基上に存在するε−アミノ基を介して、モジュレーター又は抗体断片若しくは誘導体へ付着させることができる。生理活性の損失をほとんどもたらさない、線状又は分岐鎖ポリマーの誘導体化を使用してよい。コンジュゲーションの度合いは、SDS−PAGE及び質量分析法によって密接にモニターして、PEG分子の抗体分子への最適なコンジュゲーションを確実にすることができる。未反応のPEGは、例えば、サイズ排除又はイオン交換クロマトグラフィーによって抗体−PEGコンジュゲートより分離することができる。同様の方法で、開示モジュレーターをアルブミンへコンジュゲートさせて、抗体又は抗体断片を in vivo でより安定にするか又はより長い in vivo 半減期を持たせることができる。この技術は、当該技術分野で周知であり、例えば、国際特許公開公報番号:WO93/15199、WO93/15200、及びWO01/77137;及び欧州特許第0413,622号を参照のこと。当業者には、他の生体適合性コンジュゲートが明らかであって、本明細書の教示に従って容易に確定することができる。
【0184】
b.診断剤又は検出剤
他の好ましい態様では、本発明のモジュレーター又はその断片若しくは誘導体を、診断又は検出可能な薬剤、生体分子であり得るマーカー又はレポーター(例、ペプチド又はヌクレオチド)、低分子、フルオロフォア、又は放射性同位体へコンジュゲートする。標識化モジュレーターは、過剰増殖性障害の発症又は進行をモニターするのに、又は開示モジュレーターが含まれる特別な療法の効力を決定するための臨床検査手技(即ち、診断・治療)の一部として有用であり得る。そのようなマーカー又はレポーターは、選択したモジュレーターを精製すること、TICを分離又は単離すること、又は前臨床手順又は毒性試験においても有用であり得る。
【0185】
そのような診断及び検出は、限定されないが、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼを含んでなる様々な酵素;限定されないが、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンのような補欠分子族;限定されないが、ウンベリフェロン、フルオレセイン、イソチオシアン酸フルオレセイン、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリド、又はフィコエリトリンのような蛍光物質;限定されないが、ルミノールのような発光物質;限定されないが、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、及びエクオリンのような生物発光物質;限定されないが、ヨウ素(131I、125I、123I、121I、)、炭素(14C)、イオウ(35S)、トリチウム(H)、インジウム(115In、113In、112In、111In、)、及びテクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、及び117Tinのような放射活性物質;様々な陽電子放射断層撮影法に使用する陽電子放射金属、非放射性常磁性金属イオン、及び放射標識化されるか又は特定の放射性同位体へコンジュゲートした分子が含まれる、検出可能な物質へ当該モジュレーターをカップリングすることによって達成することができる。そのような態様において、当該技術分野では、適正な検出の方法論が周知であり、数多くの市販供給源より容易に入手可能である。
【0186】
上記に示したように、他の態様において、当該モジュレーター又はその断片は、ペプチド又はフルオロフォアのようなマーカー配列へ融合させて、免疫組織化学又はFACのような精製又は診断の手順を促進することができる。好ましい態様において、マーカーアミノ酸配列は、中でも、その多くが市販されている、pQEベクター(Qiagen)において提供されるタグのような、ヘキサヒスチジン(配列番号166)ペプチドである。Gentz et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 821-824 に記載されるように、例えば、ヘキサヒスチジン(配列番号166)は、融合タンパク質の簡便な精製をもたらす。精製に有用な他のペプチドタグには、限定されないが、インフルエンザへマグルチニンタンパク質(Wilson et al., 1984, Cell 37:767)に由来するエピトープに対応する、へマグルチニン「HA」タグと「flag(フラッグ)」タグ(米国特許第4,703,004号)が含まれる。
【0187】
c.治療薬の部分
先に述べたように、当該モジュレーター又はその断片若しくは誘導体はまた、抗癌剤、細胞毒素又は細胞傷害剤(例、細胞増殖抑制剤又は細胞致死剤)、治療薬剤、又は放射活性金属イオン(例、α又はβ−放出体)のような治療薬部分へコンジュゲート、連結、又は融合させるか又は他の方法でそれと会合させてよい。本明細書に使用するように、細胞毒素又は細胞傷害剤には、細胞に有害であって、細胞の増殖又は生存を阻害し得るあらゆる薬剤又は治療薬部分が含まれる。例には、パクリタキセル、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシン、DM−1a及びDM−4(Immunogen 社)のようなメイタンシノイド類、ジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1−デヒドロテストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、ピューロマイシン、エピルビシン、及びシクロホスファミドとこれらの類似体又は相同体が含まれる。追加の細胞毒素は、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)及びモノメチルアウリスタチンF(MMAF)(Seattle Genetics 社)が含まれるアウリスタチン類、α−アマンチン、β−アマンチン、γ−アマンチン又はε−アマンチン(Heidelberg Pharma AG)のようなアマンチン類、デュオカマイシン誘導体(Syntarga, B. V.)のようなDNA副溝結合剤、及び修飾されたピロロベンゾジアピン二量体(PBD、Spirogen 社)を含む。さらに、1つの態様において、本発明のEFNAモジュレーターは、抗CD3結合分子と会合して細胞傷害性T細胞を動員して、それらを腫瘍始原細胞へ標的指向させることができる(BiTE技術;例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Fuhrmann, S. et. al. AACR年次会合抄録番号:5625(2010)を参照のこと)。
【0188】
追加の適合可能な治療薬部分は、限定されないが、代謝拮抗薬(例、メトトレキセート、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、シタラビン、5−フルオロウラシル、ダカルバジン)、アルキル化剤(例、メクロレタミン、チオテパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BCNU)及びロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、マイトマイシンC、及びシスジクロロジアミン白金(II)(DDP)シスプラチン)、アントラサイクリン類(例、ダウノルビシン(かつてのダウノマイシン)及びドキソルビシン)、抗生物質(例、ダクチノマイシン(かつてのアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシン、及びアントラマイシン(AMC))、及び抗有糸分裂剤(例、ビンクラスチン及びビンブラスチン)が含まれる細胞傷害剤を含む。治療薬部分のより広汎なリストは、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開公報:WO03/075957及び米国特許第2009/0155255号に見出すことができる。
【0189】
選択したモジュレーターはまた、放射活性物質、又は放射金属イオンをコンジュゲートするのに有用な大環状キレート剤といった治療薬部分へコンジュゲートすることができる(放射活性物質の例については、上記を参照のこと)。ある態様において、大環状キレート剤は、リンカー分子を介して抗体へ付けることができる、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N’,N”,N”−テトラ酢酸(DOTA)である。当該技術分野では、このようなリンカー分子が一般に公知であり、Denardo et al., 1998, Clin Cancer Res. 4: 2483;Peterson et al., 1999, Bioconjug. Chem. 10: 553;及び Zimmerman et al., 1999, Nucl. Med. Biol. 26: 943 に記載されている。
【0190】
本発明のこの側面と適合可能であり得る例示の放射性同位体には、限定されないが、ヨウ素(131I、125I、123I、121I、)、炭素(14C)、銅(62Cu、64Cu、67Cu)、イオウ(35S)、トリチウム(H)、インジウム(115In、113In、112In、111In)、ビスマス(212Bi、213Bi)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Ti)、ガリウム(68Ga、67Ga)、パラジウム(103Pd)、モリブデン(99Mo)、キセノン(133Xe)、フッ素(18F)、153Sm、177Lu、159Gd、149Pm、140La、175Yb、166Ho、90Y、47Sc、186Re、188Re、142Pr、105Rh、97Ru、68Ge、57Co、65Zn、85Sr、32P、153Gd、169Yb、51Cr、54Mn、75Se、113Sn、117Tin、225Ac、76Br、及び211Atが含まれる。他の放射性核種(特に、60〜4,000keVのエネルギー範囲にあるもの)も、診断剤及び治療剤として利用可能である。治療される状態と望まれる治療プロフィールに依存して、当業者は、開示モジュレーターとの使用に適した放射性同位体を容易に選択することができる。
【0191】
本発明のEFNAモジュレーターはまた、所与の生体応答を変化させる治療薬部分又は薬物(例、生物学的応答調節物質又はBRM)へコンジュゲートさせてよい。即ち、本発明に適合可能な治療薬剤又は治療成分は、典型的な化学治療薬剤に限定されると解釈してはならない。例えば、特に好ましい態様において、薬物部分は、所望の生理活性を保有する、タンパク質又はポリペプチド又はその断片であってよい。そのようなタンパク質には、例えば、アブリン、リシンA、オンコナーゼ(Onconaze)(又は別の細胞傷害性RNアーゼ)、シュードモナス外毒素、コレラ毒素、又はジフテリア毒素のような毒素;腫瘍壊死因子、α−インターフェロン、β−インターフェロン、神経成長因子、血小板由来増殖因子、組織プラスミノゲンアクチベータ、アポトーシス誘発剤(例、TNF−α、TNF−β、AIM I(国際特許公開公報番号:WO97/33899を参照のこと)、AIM II(国際特許公開公報番号:WO97/34911を参照のこと)、Fasリガンド(Takahashi et al., 1994, J. Immunol., 6: 1567)、及びVEGI(国際特許公開公報番号:WO99/23105を参照のこと)、血栓形成剤又は抗血管新生剤(例、アンジオスタチン又はエンドスタチン)のようなタンパク質;又は、例えば、リンホカイン(例、インターロイキン−1(「IL−1」)、インターロイキン−2(「IL−2」)、インターロイキン−6(「IL−6」)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(「GM−CSF」)、及び顆粒球コロニー刺激因子(「G−CSF」))、又は成長因子(例、成長ホルモン(「GH」))のような生物学的応答調節物質を含めてよい。上記に説明したように、当該技術分野では、モジュレーターをポリペプチド部分へ融合又はコンジュゲートさせる方法が公知である。先に開示した主題の参考文献に加えて、例えば、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,336,603号;5,622,929号;5,359,046号;5,349,053号;5,447,851号、及び5,112,946号;EP 307,434;EP 367,166;PCT公開公報:WO96/04388及びWO91/06570;Ashkenazi et al., 1991, PNAS USA 88: 10535;Zheng et al., 1995, J Immunol 154: 5590;及び Vil et al., 1992, PNAS USA 89: 11337 を参照のこと。ある部分とモジュレーターの会合は、必ずしも直接的である必要はなくて、リンカー配列を介して生じてよい。当該技術分野では、そのようなリンカー分子が一般に公知であり、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる、Denardo et al., 1998, Clin Cancer Res 4 :2483;Peterson et al., 1999, Bioconjug Chem 10: 553;Zimmerman et al., 1999, Nucl Med Biol 26: 943;Garnett, 2002, Adv Drug Deliv Rev 53: 171 に記載されている。
【0192】
より一般的には、治療薬部分又は細胞傷害剤をモジュレーターへコンジュゲートさせるための技術が周知である。限定されないが、アルデヒド/シッフ連結、スルフィドリル連結、酸不安定連結、cis−アコチニル連結、ヒドラゾン連結、酵素分解可能連結(一般的には、Garnett, 2002, Adv Drug Deliv Rev 53: 171 を参照のこと)が含まれる、当該技術分野で認められたどの方法によっても部分をモジュレーターへコンジュゲートさせることができる。また、例えば、「モノクローナル抗体と癌療法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」Reisfeld et al.(監修)中、Amon et al.「癌療法における薬物の免疫標的化のためのモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy)」、243-56頁(Alan R. Liss 社、1985);「制御された薬物送達(Controlled Drug Delivery)第2版」Robinson et al.(監修)中、Hellstrom et al.「薬物送達用の抗体(Antibodies For Drug Delivery)」623-53頁(マーセル・デッカー社、1987);「モノクローナル抗体 '84:生物学及び臨床上の応用(Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications)」Pinchera et al.(監修)中、Thorpe「癌療法における細胞傷害剤の抗体担体:概説(Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review)」475-506頁 (1985);「癌の検出及び療法用のモノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies For Cancer Detaction and Therapy)」Baldwin et al.(監修)中、「放射標識化抗体の癌療法における療法上の使用の分析、結果、及び将来展望(Analysis, Results And Future Prospective Of The Therapeutic Use Of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy)」 303-16頁(アカデミック・プレス、1985)、及び Thorpe et al., 1982, Immunol. Rev. 62: 119 を参照のこと。好ましい態様では、治療薬部分又は細胞傷害剤へコンジュゲートしたEFNAモジュレーターを細胞表面と会合したEFNA分子への結合時に細胞によって内在化させて、それによって治療薬ペイロードを送達することができる。
【0193】
XII.診断薬とスクリーニング
a.診断
示したように、本発明は、過剰増殖性障害を検出する、診断する、又はモニターするための in vitro 又は in vivo の方法と、TPCが含まれる腫瘍形成細胞を同定するために患者由来の細胞についてスクリーニングする方法を提供する。そのような方法には、患者又は患者より入手した試料を本明細書に記載のような選択したEFNAモジュレーターと接触させて、試料中の結合型又は遊離エフリンAリガンドへの該モジュレーターの会合の存在又は非存在、又はそのレベルを検出することを含んでなる、癌の治療又はその進行のモニタリングのために癌を有する個体を同定することが含まれる。該モジュレーターが抗体又はその免疫学的に活性な断片を含む場合、試料中の特別なEFNAとの会合は、該試料が腫瘍永続化細胞(例、癌幹細胞)を含有し得る可能性があることを示し、癌を有する個体が本明細書に記載のようなEFNAモジュレーターで効果的に治療され得ることを示唆する。この方法は、対照への結合のレベルを比較する工程をさらに含んでよい。逆に、選択したモジュレーターがFc−EFNAである場合、試料との接触時に、選択したエフリンAリガンドの結合特性を(in vivo 又は in vitro で直接的又は間接的に)利用してモニターして、所望の情報を得ることができる。当該技術分野では、本明細書の教示と適合可能な他の診断又はセラグノーシスの方法が周知であり、専用のレポーティング系のような市販の材料を使用して、実践することができる。
【0194】
特に好ましい態様では、本発明のモジュレーターを使用して、患者試料(例、血漿又は血液)中のEFNAレベルを検出して定量することができ、次いでそれを使用して、過剰増殖性障害が含まれるEFNA関連障害を検出、診断、又はモニターすることができる。1つのそのような態様について、血漿試料中のEFNAの検出について提供する下記の実施例17において説明する。
【0195】
例示の適合可能なアッセイ方法には、ラジオイムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、競合結合アッセイ、蛍光イムノアッセイ、イムノブロットアッセイ、ウェスタンブロット分析、フローサイトメトリーアッセイ、及びELISAアッセイが含まれる。より一般的には、生体試料中のEFNAの検出、又はEFNAの酵素的活性(又はその阻害)の測定は、当該技術分野で公知のどのアッセイを使用しても達成してよい。適合可能な in vivo セラグノーシス又は診断は、当該技術分野で認められた、磁気共鳴造影法(MRI)、コンピュータ断層撮影法(例、CATスキャン)、ポジトロン断層撮影法(例、PETスキャン)、X線撮影法、超音波法、等のような造影又はモニタリング技術を含んでよい。当業者には、障害の病因、病理学的症状、又は臨床進行に基づいて、適正な検出、モニタリング、又は造影技術(他の市販の供給源を含んでなる)を認識して実行することが容易に可能であろう。
【0196】
別の態様において、本発明は、癌の進行及び/又は発病を in vivo で分析する方法を提供する。別の態様において、癌の進行及び/又は発病の in vivo 分析は、腫瘍進行の程度を決定することを含む。別の態様において、分析は、腫瘍の同定を含む。別の態様では、腫瘍進行の分析を原発性腫瘍について実施する。別の態様では、当業者に公知のような癌の種類に依存して、分析を経時的に実施する。別の態様では、原発性腫瘍の転移細胞を起源とする続発性腫瘍のさらなる分析を in vivo で分析する。別の態様では、続発性腫瘍の大きさと形状を分析する。いくつかの態様では、さらなる体外(ex vivo)分析を実施する。
【0197】
別の態様において、本発明は、細胞転移を決定することを含めて、癌の進行及び/又は発病を in vivo で分析する方法を提供する。なお別の態様において、細胞転移の分析は、原発性腫瘍から断続している部位での細胞の進行性増殖の決定を含む。別の態様において、細胞転移分析の部位は、新生物拡散の経路を含む。いくつかの態様では、細胞が血管系構造、リンパ管を介して、体腔内で、又はこれらの組合せで分散することができる。別の態様では、細胞遊走、播種、滲出、増殖、又はこれらの組合せの観点で細胞転移分析を実施する。
【0198】
ある実施例では、被検者又は被検者由来試料中の腫瘍形成細胞について、開示モジュレーターを療法又はレジメンに先立って使用して評価又は特性決定して、ベースラインを確定することができる。他の実施例において、試料は、治療された被検者に由来する。いくつかの実施例では、被検者が治療を始めるか又は終えてから少なくとも約1、2、4、6、7、8、10、12、14、15、16、18、20、30、60、90日、6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、又は12ヶ月以上後で該被検者より試料を採取する。ある実施例では、ある回数の投薬後に(例えば、2、5、10、20、30又はそれ以上の回数の治療薬の投薬後に)腫瘍形成細胞について特性決定するか又は評価する。他の実施例では、1以上の療法を受けてから1週、2週、1ヶ月、2ヶ月、1年、2年、3年、4年、又はそれ以上の後で腫瘍形成細胞について特性決定するか又は評価する。
【0199】
別の側面において、そして下記により詳しく考察するように、本発明は、過剰増殖性障害を検出する、モニターする、又は診断する、そのような障害を有する個体について可能な治療を確定する、又は患者における障害の進行(又は退縮)をモニターするためのキットを提供し、ここで該キットは、本明細書に記載のようなモジュレーターと、試料に対する該モジュレーターの影響を検出するための試薬を含む。
【0200】
b.スクリーニング
当該EFNAモジュレーターとそれを含んでなる細胞、培養物、集団、並びに組成物(それらの子孫が含まれる)はまた、エフリンAリガンド(例えば、そのポリペプチド又は遺伝成分)と相互作用することによって腫瘍始原細胞又はその子孫の機能又は活性に影響を及ぼす化合物又は薬剤(例、薬物)をスクリーニングするか又は同定するために使用することができる。故に、本発明は、EFNA又はその基質と会合することによって腫瘍始原細胞又はその子孫の機能又は活性に影響を及ぼし得る化合物又は薬剤の評価又は同定のためのシステム及び方法をさらに提供する。そのような化合物及び薬剤は、例えば、過剰増殖性障害の治療についてスクリーニングされる薬物候補であり得る。1つの態様において、システム又は方法には、EFNAを明示する腫瘍始原細胞と化合物又は薬剤(例、薬物)が含まれ、ここで該細胞と化合物又は薬剤(例、薬物)は、互いに接触している。
【0201】
さらに本発明は、腫瘍始原細胞又は子孫細胞の活性又は機能を変化させることについて、EFNAモジュレーター又は薬剤及び化合物をスクリーニングして同定する方法を提供する。1つの態様では、試験薬剤又は化合物と腫瘍始原細胞又はその子孫を接触させること;及び、この試験薬剤又は化合物がエフリンAリガンドの会合した腫瘍始原細胞の活性又は機能を調節するかどうかを決定することが方法に含まれる。
【0202】
そのような腫瘍始原細胞又はその集団内の子孫細胞のEFNA関連活性又は機能を調節する試験薬剤又は化合物により、試験薬剤又は化合物を活性剤として同定する。調節され得る例示の活性又は機能には、腫瘍始原細胞又はその子孫の細胞形態の変化、マーカーの発現、分化又は脱分化、成熟化、増殖、生存能力、アポトーシス、又は細胞死が含まれる。
【0203】
「接触させること」は、細胞又は細胞培養物、又は方法工程又は治療と関連して使用される場合、組成物(例、エフリンAリガンド会合細胞又は細胞培養物)と別の参照実体(referenced entity)との間の直接的又は間接的な相互作用を意味する。直接的な相互作用の特別な例は、物理的な相互作用である。間接的な相互作用の特別な例は、組成物が中間分子に作用して、次いでそれが参照実体(例、細胞又は細胞培養物)と相互作用する。
【0204】
本発明のこの側面において、「調節する」は、本発明の腫瘍始原細胞又は子孫細胞の特別な側面(例、転移又は増殖)に関連していることが判明した細胞の活性又は機能に対する効果を検出することに適合可能な様式で、腫瘍始原細胞又は子孫細胞の活性又は機能に影響を及ぼすことを示す。例示の活性及び機能には、限定されないが、計量し得る形態、発生マーカー、分化、増殖、生存能力、細胞呼吸、ミトコンドリア活性、膜完全性、又はある状態に関連したマーカーの発現が含まれる。従って、化合物又は薬剤(例、候補医薬品)について、該化合物又は薬剤と腫瘍始原細胞又は子孫細胞とを接触させて、本明細書に開示されるか又は当業者に公知であるような腫瘍始原細胞又は子孫細胞の活性又は機能のあらゆる調節を測定することによって、そのような細胞又は子孫細胞に対するその効果を評価することができる。
【0205】
薬剤及び化合物についてスクリーニングして同定する方法には、ハイスループットスクリーニングに適したものが含まれて、それには、任意選択的に所定の位置又はアドレスに定位又は配置された細胞のアレイ(例、マイクロアレイ)が含まれる。ハイスループットのロボット又はマニュアル操作法では、化学的な相互作用を精査して、多くの遺伝子の発現レベルを短い時間帯で定量することができる。分子シグナル(例、フルオロフォア)と、情報をごく高速で処理する自動分析を利用する技術が開発されてきた(例えば、Pinhasov et al., Comb. Chem. High Throughput Screen. 7: 133 (2004) を参照のこと)。例えば、特定遺伝子の情報を提供する一方で、何千もの遺伝子の相互作用を同時に精査するためのマイクロアレイ技術が広汎に利用されてきた(例えば、Mocellin and Rossi, Adv. Exp. Med. Biol. 593: 19 (2007) を参照のこと)。
【0206】
そのようなスクリーニング方法(例、ハイスループット)では、活性のある薬剤及び化合物を迅速かつ効率的に同定することが可能である。例えば、潜在的に療法性の分子を同定するために、培養皿、試験管、フラスコ、ローラーボトル又はプレート(例えば、8、16、32、64、96、384、及び1536穴のマルチウェルプレート又はディッシュのような、単一のマルチウェルプレート又はディッシュ)に、任意選択的に所定の位置で、細胞を定位又は配置する(予め播く)ことができる。スクリーニングされ得るライブラリーには、例えば、低分子ライブラリー、ファージディスプレイライブラリー、完全ヒト抗体酵母ディスプレイライブラリー(Adimab, LLC)、siRNAライブラリー、及びアデノウイルストランスフェクションベクターが含まれる。
【0207】
XIII.医薬調製物と療法使用
a.製剤と投与経路
モジュレーターの形態、並びに任意選択のコンジュゲート、企図される送達形式、治療又はモニターされる疾患、及び他の数多くの変数に依存して、本発明の組成物は、当該技術分野で認められた技術を使用して、所望されるように製剤化してよい。即ち、本発明の様々な態様では、EFNAモジュレーターを含んでなる組成物を多種多様な医薬的に許容される担体とともに製剤化する(例えば、Gennaro「レミントン:調剤の科学と実践:事実と比較(Remington: The Science and Practice of Pharmacy with Facts and Comparisons)」Drugfacts Plus, 第20版 (2003); Ansel et al.「医薬剤形と薬物送達系(Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems)」第7版、Lippencott Williams and Wilkins(監修)(2004); Kibbe et al.「医薬賦形剤の手引き(Handbook of Pharmaceutical Excipients)」第3版、Pharmaceutcal Press (2000) を参照のこと)。媒体、アジュバント、及び希釈剤が含まれる、様々な医薬的に許容される担体が数多くの市販供給源より容易に利用可能である。さらに、pH調整剤及び緩衝剤、張度調整剤、安定化剤、湿潤剤、等のような、医薬的に許容される補助物質の取り合わせも利用可能である。ある非限定的な例示の担体には、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、及びこれらの組合せが含まれる。
【0208】
より具体的には、いくつかの態様において、本発明の治療組成物は、そのまま投与しても、最少量の追加成分とともに投与してもよいと理解されよう。逆に、本発明のEFNAモジュレーターは、当該技術分野で周知の相対的に不活性な物質であって、該モジュレーターの投与を促進するか又は作用部位への送達について医薬的に最適化された調製物への活性化合物の加工処理を補佐する賦形剤及び補助剤を含んでなる、好適な医薬的に許容される担体を含有するように任意に製剤化してもよい。例えば、賦形剤は、形態又は堅さを与えるか又は希釈剤として作用して、モジュレーターの薬物動態を改善することができる。好適な賦形剤には、限定されないが、安定化剤、湿潤及び乳化剤、浸透性を変化させるための塩類、被包化剤、緩衝液、及び皮膚浸透促進剤が含まれる。
【0209】
全身投与用の開示モジュレーターは、経腸、非経口、又は局所投与用に製剤化することができる。実際、有効成分の全身投与を達成するには、全3種類の製剤を同時に使用してよい。非経口及び非腸管外の薬物送達用の賦形剤並びに製剤については、「レミントン、調剤の科学及び実践(Remington, The Science and Practice of Pharmacy)」第20版、マック・パブリッシング(2000)に説明されている。非経口投与に適した製剤には、水溶型の活性化合物、例えば、水溶性塩の水溶液剤が含まれる。加えて、油性の注射懸濁液剤に適正のような活性化合物の懸濁液剤も投与し得る。好適な脂溶性の溶媒又は媒体には、脂肪油剤、例えば、ゴマ油、又は合成脂肪酸エステル類、例えば、オレイン酸エチル又はトリグリセリドが含まれる。水性注射懸濁液剤は、該懸濁液剤の粘度を高める物質を含有してよくて、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、及び/又はデキストランが含まれる。懸濁液剤は、安定化剤を含有してもよい。また、リポソーム剤を使用して、細胞中への送達のために薬剤を被包化することができる。
【0210】
経腸投与に適した製剤には、硬又は軟ゼラチンカプセル剤、丸剤、錠剤(被覆錠剤が含まれる)、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、又は吸入剤とこれらの制御放出形態が含まれる。
【0211】
一般に、EFNAモジュレーターを含んでなる本発明の化合物及び組成物は、その必要な被検者へ、限定されないが、経口、静脈内、動脈内、皮下、非経口、鼻腔内、筋肉内、心臓内、心室内、気管内、頬内、直腸、腹腔内、皮内、局所、経皮、及び鞘内が含まれる様々な経路によって、また他の様式では、移植又は吸入によって in vivo で投与され得る。主題の組成物は、調製物へ固体、半固体、液体、又は気体の形態で製剤化し得て;限定されないが、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、溶液剤、坐剤、浣腸剤、注射剤、吸入剤、及びエアゾール剤が含まれる。企図される適用と療法レジメンに従って、適正な製剤と投与経路を選択してよい。
【0212】
b.投与量
同様に、特別な投与レジメン(即ち、用量、時機、及び反復)は、特別な個体とその個体の治療歴に依存するものである。投与量の決定には、薬物動態(例、半減期、クリアランス速度、等)のような経験的な考慮事項が寄与する。投与の頻度は、療法の経過にわたって決定して調整してよくて、腫瘍始原細胞が含まれる過剰増殖性細胞又は新生物細胞の数を低下させること、そのような新生物細胞の低下を維持すること、新生物細胞の増殖を低下させること、又は転移の発現を遅らせることに基づく。あるいは、主題の治療組成物の持続した連続放出製剤が適正であり得る。上記に述べたように、当該技術分野では、持続放出を達成するための様々な製剤及びデバイスが公知である。
【0213】
治療上の視点から、当該医薬組成物は、特定の適応症の治療又は予防に有効な量で投与される。治療有効量は、典型的には、治療される被検者の体重、彼又は彼女の身体又は健康状態、治療すべき状態の広がり、又は治療される被検者の年齢に依存する。一般に、本発明のEFNAモジュレーターは、投薬につき約10μg/kg(体重)〜約100mg/kg(体重)の範囲の量で投与してよい。ある態様において、本発明のEFNAモジュレーターは、投薬につき、約50μg/kg(体重)〜約5mg/kg(体重)の範囲の量で投与してよい。ある他の態様において、本発明のEFNAモジュレーターは、投薬につき、約100μg/kg(体重)〜約10mg/kg(体重)の範囲の量で投与してよい。本発明のEFNAモジュレーターは、投薬につき、約100μg/kg(体重)〜約20mg/kg(体重)の範囲の量で投与してもよい。さらに、本発明のEFNAモジュレーターは、投薬につき、約0.5mg/kg(体重)〜約20mg/kg(体重)の範囲の量で投与してもよい。ある態様において、本発明の化合物は、少なくとも約100μg/kg(体重)、少なくとも約250μg/kg(体重)、少なくとも約750μg/kg(体重)、少なくとも約3mg/kg(体重)、少なくとも約5mg/kg(体重)、少なくとも約10mg/kg(体重)の用量で提供される。
【0214】
他の投薬レジメンは、その全体において参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,744,877号に開示されるような体表面積(BSA)計算値に基づいてよい。当該技術分野で周知であるように、BSAは、患者の身長及び体重を使用して計算して、彼又は彼女の身体の表面積によって表されるような被検者のサイズの尺度を提供する。BSAを使用する、本発明の選択された態様において、モジュレーターは、10mg/m〜800mg/mの投与量で投与してよい。他の好ましい態様において、該モジュレーターは、50mg/m〜500mg/mの投与量で、そしてなおより好ましくは、100mg/m、150mg/m、200mg/m、250mg/m、300mg/m、350mg/m、400mg/m、又は450mg/mの投与量で投与される。当然ながら、投与量をどのように計算するかに拘らず、選択された時間帯にわたって多数の投与量を投与して、個々の投与より実質的に高い絶対的な投与量を提供してよい。
【0215】
いずれにしても、当該EFNAモジュレーターは、好ましくは、その必要な被検者へ必要とされるように投与される。投与頻度の決定は、担当医のような当業者によって、治療される状態、治療される被検者の年齢、治療される状態の重症度、治療される被検者の全般的な健康状態、等の考慮事項に基づいてなされてよい。一般的には、EFNAモジュレーターの有効量が被検者へ1回以上投与される。より具体的には、該モジュレーターの有効量が被検者へ1ヶ月に1回、1ヶ月に1回より多く、又は1ヶ月に1回より少なく投与される。ある態様において、EFNAモジュレーターの有効量は、少なくとも1ヶ月、少なくとも6ヶ月、又は少なくとも1年の期間の間を含めて、数回投与してよい。
【0216】
開示される治療組成物の投与量及びレジメンはまた、1回以上の投与(複数)を受けてきた個体において、経験的に決定することができる。例えば、本明細書に記載のように製造した治療組成物の漸増する投与量を個体へ与えてよい。選択した組成物の効力を評価するために、特定の疾患、障害、又は状態のマーカーを先に記載のように追跡することができる。個体が癌を有する態様において、これらには、触診又は目視観察による腫瘍サイズの直接的な測定、X線又は他の造影技術による腫瘍サイズの間接的な測定;直接的な腫瘍生検と腫瘍試料の顕微鏡検査によって評価されるような改善;間接的な腫瘍マーカー(例、前立腺癌のPSA)又は本明細書に記載の方法によって同定される抗原の測定、疼痛又は麻痺の減少;言語能力、視覚、呼吸、又は腫瘍に関連した他の無能力の改善;食欲増加;又は承認された検査法によって測定されるような生活の質の増加、又は生存の延長化が含まれる。当業者には、その個体、新生物状態の種類、新生物状態の段階、その新生物状態が個体中の他の部位へ転移し始めたかどうか、及び使用されているこれまでの治療薬と併用治療薬に依って、投与量が変動するものであることが明らかであろう。
【0217】
c.組合せ療法
本発明によって考慮される組合せ療法は、望まれない新生物細胞増殖(例、内皮細胞)を減少させるか又は阻害すること、癌の発生を減少させること、癌の再発を減少させるか又は予防すること、又は癌の広がり又は転移を減少させるか又は予防することに特に有用であり得る。そのような場合、本発明の化合物は、腫瘍塊(例、NTG細胞)を支援して永続化させるTPCを除去することによって増感剤又は化学増感剤として機能し得て、現行の標準治療の腫瘍減量剤又は抗癌剤のより有効な使用を可能にし得る。即ち、EFNAモジュレーターと1以上の抗癌剤を含んでなる組合せ療法を使用して、定着した癌を減衰させる(例えば、存在する癌細胞の数を減少させる、及び/又は腫瘍負荷を減少させる)、又は癌の少なくとも1つの徴候又は副作用を改善することができる。このように、組合せ療法は、EFNAモジュレーターと1以上の抗癌剤(限定されないが、細胞傷害剤、細胞増殖抑制薬剤、化学療法剤、標的化抗癌剤、生物学的応答調節物質、免疫療法剤、癌ワクチン、抗血管新生剤、サイトカイン、ホルモン療法、放射線療法、及び抗転移剤が含まれる)の投与に関連する。
【0218】
本発明の方法によれば、組み合わせた結果がそれぞれの治療法(例、抗EFNA抗体と抗癌剤)を別々に実施するときに観測される効果の相加である必要はない。少なくとも相加的な効果が一般的には望ましいが、単一療法の1つに優る増加された抗腫瘍効果が有益である。さらに、本発明は、組合せ治療が相乗効果を明示することを求めない。しかしながら、当業者は、好ましい態様を含むある選択した組合せでは、相乗作用が観測され得ることを理解されよう。
【0219】
本発明による組合せ療法を実践するには、1以上の抗癌剤と組合せたEFNAモジュレーター(例、抗EFNA抗体)を、その必要な被検者へ抗癌活性を該被検者内でもたらすのに有効な様式で投与してよい。EFNAモジュレーターと抗癌剤は、それらの組合わされた存在と腫瘍環境中でのそれらの組合わされた作用を所望されるようにもたらすのに有効な量と有効な時間帯で提供される。この目標を達成するために、EFNAモジュレーターと抗癌剤は、単一組成物において、又は同じか又は異なる投与経路を使用する2以上の別個の組成物として、被検者へ同時に投与してよい。
【0220】
あるいは、当該モジュレーターは、例えば、数分〜数週に及ぶ間隔で、抗癌剤の治療に先行又は後続してよい。抗癌剤と抗体が被検者へ別々に適用されるある態様において、それぞれの送達の時機の間の時間帯は、抗癌剤とモジュレーターが腫瘍に対して組合せ効果を発揮することができるようなものである。特別な態様では、抗癌剤とEFNAモジュレーターの両方が互いから約5分〜約2週以内に投与される。
【0221】
なお他の態様では、モジュレーターと抗癌剤の投与の間に、数日(2、3、4、5、6又は7日)、数週(1、2、3、4、5、6、7又は8週)、又は数ヶ月(1、2、3、4、5、6、7又は8ヶ月)が経過してよい。EFNAモジュレーターと1以上の抗癌剤(組合せ療法)は、1回、2回、又は少なくとも該状態が治療、緩和、又は治癒されるまでの時間帯で投与してよい。好ましくは、組合せ療法は、数回投与される。組合せ療法は、1日3回〜6ヶ月ごとに1回投与してよい。投与することは、1日3回、1日2回、1日1回、2日ごとに1回、3日ごとに1回、週1回、2週ごとに1回、1ヶ月ごとに1回、2ヶ月ごとに1回、3ヶ月ごとに1回、6ヶ月ごとに1回のようなスケジュールであっても、ミニポンプより連続的に投与してもよい。先に示したように、組合せ療法は、経口、粘膜、頬内、鼻腔内、吸入可能、静脈内、皮下、筋肉内、腸管外、腫瘍内、又は局所の経路より投与してよい。組合せ療法は、腫瘍の部位より離れた部位で投与してよい。組合せ療法は、一般的には、腫瘍が存在する限りにおいて、その組合せ療法が腫瘍又は癌の増殖を止める、又はその重量又は体積を減少させるという前提で、投与される。
【0222】
1つの態様では、EFNAモジュレーターを1以上の抗癌剤と組合せて、その必要な被検者へ短い治療サイクルの間投与する。この抗体での治療の継続期間は、使用する特別な抗癌剤に従って変動してよい。本発明はまた、不連続な投与、又は数回の部分投与へ分割される1日用量を考慮する。当業者には、特別な抗癌剤に適正な治療時間が評価されて、本発明は、それぞれの抗癌剤に最適な治療スケジュールの継続的な評価を考慮する。
【0223】
本発明は、組合せ療法が投与される間の少なくとも1回のサイクル、好ましくは、1回より多いサイクルを考慮する。当業者には、1回のサイクルに適正な時間帯が評価されて、サイクルの全数とサイクル間の間隔も評価されよう。本発明は、それぞれのモジュレーター及び抗癌剤に最適な治療スケジュールの継続的な評価を考慮する。さらに、本発明はまた、抗EFNA抗体又は抗癌剤のいずれか一方の1回より多い投与を提供する。モジュレーターと抗癌剤は、可換的に、隔日又は隔週で投与してよい;又は連続した抗体治療を与えて、抗癌剤療法の1回以上の治療を続けてよい。いずれにしても、当業者によって理解されるように、化学療法剤の適正な用量は、一般的には、臨床療法においてすでに利用されてきた用量に近いものであって、ここでこの化学療法剤は、単独で、又は他の化学療法剤と組み合わせて投与される。
【0224】
別の好ましい態様において、本発明のEFNAモジュレーターは、腫瘍疾患の初期症状に続く腫瘍再発の見込みを低下又は消失させるために、維持療法で使用されてよい。好ましくは、該障害は、治療が済んで、患者が無症候性又は寛解状態にあるように、最初の腫瘍塊は、消失、低下、又は他の様式で改善している。このような時間に、標準の診断手順を使用して疾患の徴候がほとんど又は全くないとしても、被検者へ開示モジュレーターの医薬有効量を1回以上投与してよい。いくつかの態様において、エフェクターは、ある時間帯にわたり規則的なスケジュールで投与される。例えば、EFNAモジュレーターは、毎週、毎2週、毎月、毎6週、毎2ヶ月、毎3ヶ月、毎6ヶ月、又は毎年で投与することができる。本明細書の教示があれば、当業者は、疾患再発の潜在可能性を低下するのに好ましい投与量及び投薬レジメンを容易に決定することができよう。さらに、そのような治療は、患者の応答と臨床及び診断の諸変数に依って、数週、数ヶ月、数年の期間、又は無期限でも続けることができる。
【0225】
なお別の好ましい態様において、発明のエフェクターは、腫瘍減量術(debulking procedure)に続く腫瘍転移の可能性を防ぐか又は抑えるために予防的に使用してよい。本開示に使用されるように、腫瘍減量術は概括的に定義されて、腫瘍又は腫瘍増殖を消失、低下、治療、又は改善するあらゆる手順、技術、又は方法を意味する。例示の腫瘍減量術には、限定されないが、外科手術、放射線治療(即ち、ビーム放射線)、化学療法、又は除去が含まれる。本開示に照らして当業者によって容易に決定される適正な時間で、臨床及び診断、又はセラグノーシスの手順によって示唆されるように、腫瘍転移を抑えるためにEFNAモジュレーターを投与してよい。当該モジュレーターは、標準的な技術を使用して決定されるように、医薬的に有効な投与量で1回以上投与してよい。好ましくは、投薬レジメンには、それを必要に応じて変更することを可能にする、適正な診断又はモニタリング技術が付随するものである。
【0226】
d.抗癌剤
本明細書に使用するように、「抗癌剤」という用語は、癌のような細胞増殖性障害を治療するために使用し得るあらゆる薬剤を意味し、細胞傷害剤、細胞増殖抑制薬剤、抗血管新生剤、腫瘍減量剤、化学療法剤、放射線療法と放射線療法剤、標的化抗癌剤、生物学的応答調節物質、抗体、及び免疫療法剤が含まれる。上記に考察したような選択態様では、抗癌剤がコンジュゲートを含む場合があって、投与に先立ってモジュレーターと会合させてよいと理解されよう。
【0227】
細胞傷害剤という用語は、細胞の機能を減少させるか又は阻害する、及び/又は細胞の破壊を引き起こす物質を意味し、即ち、その物質は、細胞にとって有害である。典型的には、この物質は、生物に由来する天然に存在する分子である。細胞傷害剤の例には、限定されないが、細菌(例、ジフテリア毒素、シュードモナス内毒素及び外毒素、ブドウ球菌エンテロトキシン)、真菌(例、α−サクリン、レストリクトシン)、植物(例、アブリン、リシン、モデッシン、ビスクミン、ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、サポニン、ゲロニン、モモリジン、トリコサンチン、麦毒、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、フィトラッカ・アメリカーナ(Phytolacca Americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、モモルディカ・チャランチア(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポナリア・オフィシナリス(saponaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミテゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、ネオマイシン、及びトリコテセン類)、又は動物(例、細胞外膵臓RNアーゼのような細胞傷害性RNアーゼ;DNアーゼI)に由来する、低分子毒素又は酵素活性毒素が含まれて、これらの断片及び/又は変異体が含まれる。
【0228】
化学療法剤は、癌細胞の成長、増殖、及び/又は生存を非特異的に減少させるか又は阻害する化学化合物(例、細胞傷害性又は細胞増殖抑制性の薬剤)を意味する。そのような化学薬剤は、多くの場合、細胞の増殖又は分裂に必要な細胞内プロセスへ指向されるので、概して速やかに増殖及び分裂する癌性細胞に対して特に有効である。例えば、ビンクリスチンは、微小管を脱重合させて、それにより細胞が有糸分裂に入ることを阻害する。一般に、化学療法剤には、癌性細胞、又は癌性になるか又は腫瘍形成性の子孫(例、TIC)を産生する可能性がある細胞を阻害するか又は阻害するように設計されたあらゆる化学薬剤を含めることができる。そのような薬剤は、多くの場合、組合せて(例えば、CHOP処方において)投与され、そして多くの場合、最も効果的である。
【0229】
本発明のモジュレーターと組み合わせて(又はそれへコンジュゲートして)使用され得る抗癌剤の例には、限定されないが、アルキル化剤、アルキルスルホネート、アジリジン、エチレンイミン及びメチルアメラミン、アセトゲニン、カンプトテシン、ブリオスタチン、カリスタチン、CC−1065、クリプトフィシン、ドラスタチン、デュオカマイシン、エレウテロビン、パンクラチスタチン、サルコディクチン、スポンジスタチン、ナイトロジェンマスタード、抗生物質、エネジイン抗生物質、ダイネマイシン、ビスホスホネート類、エスペラマイシン、色素タンパク質−エネジイン抗生物質クロモフォア、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン類、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン類、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、アドリアマイシン(ADRIAMYCIN)(登録商標)ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン類、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン類、ペプレオマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、キュエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;代謝拮抗薬、葉酸類似体、プリン類似体、アンドロゲン類、抗副腎薬、フロリン酸のような葉酸リプレニッシャー、アセグラトン、アルドホスファミドグリコシド、アミノレブリン酸、エニルウラシル、アムサクリン、ベストラブシル、ビサントレン、エダトラキセート、デフォファミン、デメコルシン、ジアジコン、エルフォルニチン、酢酸エリプチニウム、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダイニン、メイタンシノイド類、ミトグアゾン、ミトキサントロン、モピダンモール、ニトラエリン、ペントスタチン、フェナメット、ピラルビシン、ロソキサントロン、ポドフィリン酸、2−エチルヒドラジド、プロカバルジン、PSK(登録商標)多糖複合体(JHS Natural Products, オレゴン州ユージーン)、ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テニュアゾン酸;トリアジコン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特に、T−2毒素、ベラキュリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド類、クロラムブシル;ジェムザール(GEMZAR)(登録商標)ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;白金類似体、ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ナベルビン(NAVELBINE)(登録商標)ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキセート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(Camptosar,CPT−11)、トポイソメラーゼ阻害剤:RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイド類;カペシタビン;コンブレタスタチン;ロイコボリン(LV);オキサリプラチン;細胞増殖を抑制する、PKC−α、Raf、H−Ras、EGFR、及びVEGF−Aの阻害剤と、上記のいずれもの医薬的に許容される塩、酸、又は誘導体が含まれる。この定義にまた含まれるのは、抗エストロゲン剤と選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、酵素アロマターゼ[副腎中でのエストロゲン産生を調節する]を阻害するアロマターゼ阻害剤、及び抗アンドロゲン剤のような、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤;並びに、トロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);アンチセンスオリゴヌクレオチド;VEGF発現阻害剤及びHER2発現阻害剤のようなリボザイム;ワクチン類、プロロイキン(PROLEUKIN)(登録商標)rIL−2;ラルトテカン(LURTOTECAN)(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;アバレリクス(ABARELIX)(登録商標)rmRH;ビノレルビン及びエスペラマイシン類、及び上記のいずれもの医薬的に許容される塩、酸、又は誘導体が含まれる。他の態様は、限定されないが、リツキシマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ・オゾガマイシン、アレムツズマブ、イブリツモマブ・チウキセタン、トシツモマブ、ベバシズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、オファツムマブ、イピリムマブ、及びブレンツキシマブ・ベドチンが含まれる、癌療法について承認された抗体の使用を含む。当業者は、本明細書の教示と適合可能である追加の抗癌剤を容易に同定することができよう。
【0230】
e.放射線療法
本発明はまた、放射線療法(即ち、γ線照射、X線、UV照射、マイクロ波、電子放出、等といった、DNA損傷を腫瘍細胞内で局所的に誘発するあらゆる機序)とEFNAモジュレーターの組合せを提供する。腫瘍細胞へ指向された放射性同位体の送達を使用する組合せ療法も考慮されて、標的指向された抗癌剤又は他の標的化手段と共に使用してよい。典型的には、放射線療法は、約1〜約2週の時間帯にわたりパルスで投与される。放射線療法は、頭頚部癌を有する被検者へ約6〜7週の間投与することができる。放射線療法は、単一用量として投与してもよく、多数回の連続用量として投与してもよい。
【0231】
f.新生物状態
単独、又は抗癌剤又は放射線療法との組合せのいずれで投与しても、本発明のEFNAモジュレーターは、一般的には、良性又は悪性の腫瘍(例、腎癌、肝臓癌、腎臓癌、膀胱癌、乳癌、胃癌、卵巣癌、結直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、肺癌、甲状腺癌、肝細胞癌;肉腫;膠芽腫;及び様々な頭頚部腫瘍);白血病とリンパ系悪性腫瘍;神経細胞、神経膠細胞、星状細胞、視床下部、及び他の腺、マクロファージ、上皮、間質、及び割腔の障害のような他の障害;並びに、炎症性障害、血管新生障害、免疫障害、及び病原体によって引き起こされる障害が含まれ得る、患者又は被検者の新生物状態を全般的に治療するのに特に有用である。本発明の治療組成物及び方法での治療に特に好ましい標的は、固形腫瘍を含んでなる新生物状態である。他の好ましい態様において、本発明のモジュレーターは、血液悪性腫瘍の診断、予防、又は治療に使用してよい。本明細書に使用するように、この用語は、明白に、あらゆる哺乳動物種を含むとみなされるが、好ましくは、治療される被検者又は患者はヒトであろう。
【0232】
より具体的には、本発明による治療へ処せられる新生物状態は、限定されないが、副腎腫瘍、AIDS関連癌、胞巣状軟部肉腫、星状細胞腫瘍、膀胱癌(扁平上皮癌と移行上皮癌)、骨癌(アダマンチノーム、脈瘤性骨嚢胞、骨軟骨腫、骨肉腫)、脳及び脊髄の癌、転移性脳腫瘍、乳癌、頚動脈小体腫瘍、子宮頚癌、軟骨肉腫、脊索腫、嫌色素性腎細胞癌、淡明細胞癌、結腸癌、結直腸癌、皮膚良性線維性組織球腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、上衣腫、ユーイング腫瘍、骨外性粘液型軟骨肉腫、骨性線維形成不全症(fibrogenesis imperfecta ossium)、線維性骨異形成症、胆嚢及び胆管癌、妊娠性絨毛疾患、生殖細胞腫瘍、頭頚部癌、島細胞腫瘍、カポシ肉腫、腎臓癌(腎芽腫、乳頭状腎細胞癌)、白血病、脂肪腫/良性脂肪様腫瘍、脂肪肉腫/悪性脂肪様腫瘍、肝臓癌(肝芽腫、肝細胞癌)、リンパ腫、肺癌(小細胞癌、腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、等)、髄芽腫、メラノーマ、髄膜腫、多発性内分泌新生物、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、神経芽腫、神経内分泌腫瘍、卵巣癌、膵臓癌、乳頭状甲状腺癌、副甲状腺腫瘍、小児癌、末梢神経鞘腫瘍、褐色細胞腫、下垂体腫瘍、前立腺癌、後ブドウ膜黒色腫、稀な血液系障害、腎転移癌、横紋筋肉腫様腫瘍、横紋筋肉腫、肉腫、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、胸腺腫、甲状腺転移癌、及び子宮癌(子宮頚癌、子宮内膜癌、及び平滑筋腫)が含まれる群より選択され得る。ある好ましい態様において、癌性細胞は、限定されないが、乳癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞肺癌、膵臓癌、結腸癌、前立腺癌、肉腫、腎転移癌、甲状腺転移癌、及び淡明細胞癌が含まれる固形腫瘍の群より選択される。
【0233】
血液系腫瘍に関しては、本発明の化合物及び方法は、低悪性度/NHL濾胞細胞リンパ腫(FCC)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、びまん性大細胞リンパ腫(DLCL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度非開裂型小細胞NHL、巨大腫瘤疾患NHL、ワルデンストローム・マクログロブリン血症、リンパ形質細胞様リンパ腫(LPL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞リンパ腫(DLCL)、バーキットリンパ腫(BL)、AIDS関連リンパ腫、単球性B細胞リンパ腫、血管性免疫芽細胞性リンパ腺症、小リンパ球性、濾胞性、びまん性大細胞、びまん性小分割型細胞、大細胞免疫芽球性リンパ芽腫、小細胞、非分割型、バーキット及び非バーキット、濾胞性、大細胞優勢型;濾胞性、小分割細胞優勢型;及び、濾胞性、小分割型細胞及び大細胞混合型のリンパ腫が含まれる多様なB細胞リンパ腫を治療するのに特に有効であり得る。「癌:腫瘍学の原理と実践(PRINCIPLES & PRACTICE OF ONCOLOGY)」第2巻:2131-2145(DeVita et al(監修)、第5版、1997)中 Gaidono et al.「リンパ腫(Lymphomas)」を参照のこと。当業者には、上記のリンパ腫が、多くの場合、分類体系の変更によって異なる名称を有するであろうことと、異なる名称下に分類されるリンパ腫を有する患者も本発明の組合せ療法レジメンより利益を得る可能性があることとが明らかなはずである。
【0234】
なお他の好ましい態様において、当該EFNAモジュレーターは、慢性リンパ球性白血病(CLL又はB−CLL)のような白血病が含まれる、ある種の骨髄性及び血液系腫瘍を効果的に治療するために使用し得る。CLLは、50歳以降で発症率が増加し始めて60代後半にピークに達する、主に高齢者の疾患である。それは、一般的には、新生物性の末梢血リンパ球の増殖を伴う。CLLの臨床知見には、リンパ球増加症、リンパ腺症、巨脾症、貧血、及び血小板減少症が伴う。CLLの特徴的な特質は、モノクローナルB細胞増殖と分化の中間段階で進行阻止されたBリンパ球の蓄積であり、ここではそのようなB細胞が表面IgM(sIgM)又はsIgMとsIgDの両方と、単一の軽鎖を正常なB細胞上のそれより低い密度で発現する。しかしながら、上記に考察して、本明細書に付帯した「実施例」において示すように、B−CLL細胞上では、選択したEFNA発現(例、EFNA)が上方調節されていて、それにより開示モジュレーターにとって魅力的な標的を提供する。
【0235】
本発明はまた、良性又は前癌性の腫瘍を提示する被検者の防止的又は予防的な治療を提供する。ある特別な種類の腫瘍又は新生物障害は、本発明を使用する治療より除外されるべきであるとは考えられない。しかしながら、腫瘍細胞の種類は、二次的な治療薬剤、特に、化学療法剤と標的化抗癌剤と組み合わせた本発明の使用に関連する場合がある。
【0236】
本発明のなお他の好ましい態様は、固形腫瘍に罹患している被検者を治療するためのEFNAモジュレーターの使用を含む。そのような被検者では、これら固形腫瘍の多くが、開示されるエフェクターでの治療に対して特に敏感にさせ得る様々な遺伝子変異を示す組織を含む。例えば、結直腸癌の患者では、KRAS、APC、CTNNB1、及びCDH1の突然変異が相対的に共通している。さらに、上記の突然変異がある腫瘍に罹患している患者は、通常、現行の療法に対して最も難治性である;特に、KRAS突然変異のある患者でそうである。KRAS活性化突然変異(典型的には、単一のアミノ酸置換をもたらす)はまた、肺腺癌、粘液腺腫、及び膵臓の腺管癌が含まれる、他の治療困難な悪性腫瘍において関連が示唆されている。
【0237】
現在、結直腸癌患者が例えばEGFR又はVEGF阻害性の薬物へ応答するかどうかの最も信頼し得る予測は、ある種のKRAS「活性化」突然変異を検査することである。結直腸癌の35〜45%でKRASが突然変異しており、腫瘍が突然変異KRASを発現している患者は、これらの薬物に対して十分に応答しない。例えば、KRASの突然変異から、結直腸癌におけるパニツムマブ及びツキシマブ療法に対する応答の不足が予測される(Lievre et al. Cancer Res 66: 3992-5; Karapetis et al. NEJM 359: 1757-1765)。結直腸癌患者のほぼ85%でAPC遺伝子に突然変異があって(Markowitz & Bertagnolli. NEJM 361: 2449-60)、家族性大腸腺腫症と結直腸癌の患者では、800より多いAPC突然変異が特性決定されてきた。これら突然変異の大多数が、β−カテニンの破壊に媒介する機能能力が低下した、末端切断型のAPCタンパク質をもたらす。β−カテニン遺伝子、CTNNB1中の突然変異はまた、該タンパク質の増加した安定化をもたらし得て、いくつかの発癌転写プログラムの細胞核輸入と後続の活性化をもたらすが、これは、突然変異したAPCがβ−カテニン破壊に適正に媒介し得ないこと(正常な細胞増殖及び分化のプログラムを阻止するために必要とされる)より生じる発癌の機序でもある。
【0238】
CDH1(E−カドヘリン)発現の喪失は、結直腸癌において一般に発生する更なる別の事象であり、多くの場合、この疾患がより進行した段階で観察される。E−カドヘリンは、上皮層中の細胞を繋げて組織化する接着構造の中心的なメンバーである。通常、E−カドヘリンは、β−カテニン(CTNNB1)を形質膜で物理的に捕捉するので、結直腸癌におけるE−カドヘリン発現の喪失は、β−カテニンの核への局在化とβ−カテニン/WNT経路の転写活性化をもたらす。異常なβ−カテニン/WNTシグナル伝達は、発癌にとって中核的であって、核内のβ−カテニンは、癌の幹細胞性との関連が示唆されてきた(Schmalhofer et al., 2009 PMID 19153669)。E−カドヘリンは、上皮細胞中のEFNAリガンドの既知の結合相手である、EphA2の発現及び機能に必要とされる(Dodge Zantek et al., 1999 PMID 10511313; Orsulic S and Kemler R, 2000 PMID 10769210)。EFNAリガンドへ結合してEph受容体結合と作動するか又はそれに拮抗するモジュレーターを使用することは、発癌促進プロセスを変化させる、妨害する、又は逆転させる可能性がある。あるいは、EFNAモジュレーターは、EFNAモジュレーターの結合選好性に基づいて、Eph/エフリン相互作用が異常な腫瘍細胞へ選好的に結合する可能性がある。従って、上記に言及した遺伝形質を担う担癌患者は、上述したEFNAモジュレーターでの治療より利益を得る可能性がある。
【0239】
XIV.製造品
EFNAモジュレーターの1以上の用量を含んでなる1以上の容器を含んでなる、医薬パック及びキットも提供される。ある態様では、単位投与量が提供され、ここで該単位投与量は、例えば、抗EFNA抗体を1以上の追加薬剤の有り無しで含んでなる所定量の組成物を含有する。他の態様では、そのような単位投与量が単回使用の注射用充填済みシリンジにおいて供給される。なお他の態様において、単位投与量に含有される組成物は、生理食塩水、ショ糖、等;リン酸塩、等のような緩衝液を含んでよい;及び/又は、安定して有効なpH範囲内で製剤化してよい。あるいは、ある態様において、当該組成物は、適正な液体、例えば、無菌水の添加時に復元され得る凍結乾燥散剤として提供してよい。ある好ましい態様において、当該組成物は、タンパク質凝集を阻害する1以上の物質(限定されないが、ショ糖及びアルギニンが含まれる)を含む。その容器(複数)上にあるか又はそれに付随したどのラベルも、開示組成物が第一選択の疾患状態を診断又は治療するために使用されることを示す。
【0240】
本発明はまた、EFNAモジュレーターの単用量又は多用量の投与単位と、任意選択的に、1以上の抗癌剤をもたらすためのキットを提供する。当該キットは、容器と、その容器の上にあるか又はそれに付随したラベル又は添付文書を含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、等が含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックのような多様な材料より生成され得る。容器は、該状態を治療するのに有効である組成物を保持して、無菌のアクセスポートを有してよい(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。そのようなキットは、一般に、好適な容器中に、EFNAモジュレーターの医薬的に許容される製剤を含有して、同じか又は異なる容器に1以上の抗癌剤を含有してもよい。当該キットは、診断又は組合せ療法のいずれかのために、他の医薬的に許容される製剤を含有してよい。例えば、本発明のEFNAモジュレーターに加えて、そのようなキットは、化学療法薬又は放射線療法薬;抗血管新生薬剤;抗転移剤;標的化抗癌剤;細胞傷害剤;及び/又は他の抗癌剤といった幅広い抗癌剤のどの1以上も含有してよい。そのようなキットはまた、抗癌剤又は診断剤とEFNAモジュレーターをコンジュゲートするのに適正な試薬を提供する(例えば、その全体において参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,422,379号を参照のこと)。
【0241】
より具体的には、当該キットは、EFNAモジュレーターを追加成分の有り無しで含有する単一容器を有しても、所望される各薬剤で別個の容器を有してもよい。組み合わされた治療剤がコンジュゲーションのために提供される場合、単一の溶液剤を、モル濃度が等しい組合せで、又はある成分を他の成分より過剰な状態でプレ混合してよい。あるいは、このキットのEFNAモジュレーターとどの任意選択の抗癌剤も、患者への投与に先立って、別個の容器内で別々に維持されてよい。当該キットはまた、無菌の医薬的に許容される緩衝液、又は注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、リンゲル液、及びデキストロース溶液のような他の希釈剤を含有するための第二/第三の容器手段を含んでよい。
【0242】
当該キットの成分が1以上の液体溶液剤で提供される場合、この液体溶液剤は、好ましくは、水溶液剤であって、無菌水溶液剤が特に好ましい。しかしながら、当該キットの成分は、乾燥散剤(複数)として提供してよい。試薬又は成分が乾燥散剤として提供される場合、この散剤は、好適な溶媒の添加によって復元することができる。この溶媒も、別の容器で提供されてよいことが想定される。
【0243】
上記に簡潔に示したように、当該キットはまた、当該抗体とある任意選択の成分を動物又は患者へ投与するための手段(例えば、それより該製剤が動物へ注射又は導入され得るか又は身体の患部へ適用され得る、1以上の針又はシリンジ、又は点眼器、ピペット、又は他のそのような器具)を含有してよい。本発明のキットには、典型的には、バイアル又はそのようなものと他の成分を市販用に厳重密封して含有するための手段(例えば、所望のバイアルと他の器具がその中へ配置されて保持される、注入又は吹込み成形されたプラスチック容器のような)も含まれる。どのラベル又は添付文書も、当該EFNAモジュレーター組成物が癌(例えば、結直腸癌)を治療するために使用されることを示す。
【0244】
XV.研究試薬
本発明の他の好ましい態様はまた、蛍光活性化細胞選別(FACS)、磁気活性化細胞選別(MACS)、又はレーザー媒介分画法のような方法を介して腫瘍始原細胞の集団又は亜集団を同定、単離、分画、又は濃縮するのに有用な道具としての開示モジュレーターの特性を利用する。当業者は、癌幹細胞が含まれるTICの特性決定及び操作に適合可能ないくつかの技術において当該モジュレーターが使用し得ることを理解されよう(例えば、そのそれぞれがその全体において参照により本明細書に組み込まれる、米国仮特許出願シリアル番号:12/686,359、12/669,136、及び12/757,649を参照のこと)。
【0245】
XVI.その他
本明細書において他に定義されなければ、本発明に関連して使用される科学及び技術用語は、当業者によって通常理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって他に求められなければ、単数形の用語には複数が含まれて、複数形の用語には単数が含まれる。より具体的には、本明細書と付帯の特許請求項において使用されるように、単数形の冠詞(「a」「an」及び「the」)には、文脈が明らかに他のことを示さなければ、複数の指示語が含まれる。このように、例えば、「タンパク質(a protein)」への言及には、複数のタンパク質が含まれ;「細胞(a cell)」への言及には、細胞の混合物が含まれる、といった具合である。加えて、本明細書と付帯の特許請求項において提供される範囲には、両方の終点とその終点間のすべての点が含まれる。故に、2.0〜3.0の範囲には、2.0、3.0と2.0と3.0の間のすべての点が含まれる。
【0246】
一般的に言えば、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、並びにタンパク質及び核酸の化学及びハイブリダイゼーションと関連して使用される命名法とその技術は、当該技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。本発明の方法及び技術は、他に示さなければ、当該技術分野で周知の、本明細書を通して引用されて考察される様々な概説とより専門的な参考文献に記載されるような慣用の方法に従って概ね実施される。例えば、Sambrook J. & Russell D.「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」第3版、コールドスプリングハーバーラボラトリー出版局、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(2000);Ausubel et al.「分子生物学の簡略プロトコール:分子生物学の最新プロトコールからの方法の要約(A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology)」Wiley, John & Sons 社(2002);Harlow and Lane「抗体の使用法:実験マニュアル(Using Antibodies: A Laboratory Manual)」コールドスプリングハーバーラボラトリー出版局、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(1998);及び、Coligan et al.「タンパク質科学の簡略プロトコール(Short Protocols in Protein Science)」Wiley, John & Sons 社(2003)を参照のこと。酵素反応と精製技術は、当該技術分野で通常実施されているか又は本明細書に記載のように、製造業者の仕様に従って実施する。本明細書に記載のような分析化学、合成有機化学、並びに医化学及び製薬化学に関連して使用される命名法とその実験手順及び技術は、当該技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。
【0247】
本明細書内で開示又は引用されるすべての参考文献又は文書は、限定なしに、その全体において参照により本明細書に組み込まれる。さらに、本明細書に使用するどのセクション見出しも、編成上の目的のみのためであって、記載される主題を限定するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0248】
このように、上記で一般的に記載された本発明は、以下の実施例を参照して、より容易に理解されよう。これらは、例証のために提供されるのであって、本発明を限定することを企図するものではない。これらの実施例は、下記の実験が実施されるすべての実験又は唯一の実験であることを表明するものではない。他に示さなければ、割合は、重量割合であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏(℃)であり、そして圧力は大気圧か又は大気圧付近である。
【0249】
実施例1
腫瘍始原細胞集団の濃縮
癌患者の中に存在するような固形腫瘍の細胞異種性について特性決定し、特別な表現型マーカーを使用して腫瘍永続化細胞(TPC;即ち、癌幹細胞:CSC)の同一性を解明して、臨床意義のある療法標的を同定するために、当該技術分野で認められた技術を使用して大きな非従来型の異種移植片(NTX)腫瘍バンクを開発して維持した。多数の別個の腫瘍細胞株を含んでなるNTX腫瘍バンクを、免疫不全マウスにおいて、当初は多様な固形悪性腫瘍に罹患している数多くの癌患者より得られた異種の腫瘍細胞を多数回にわたって継代することを通じて、増殖させた。明確に定義された系統を有する多数の個別の初期継代NTX腫瘍細胞株が継続して利用可能であることで、この細胞株より精製された細胞の再現可能で反復性の特性決定を可能にするようなTPCの同定及び単離が大いに促進される。より具体的には、単離又は精製されたTPCは、その細胞の起源となった患者腫瘍試料を反復するマウスにおいて、表現型でも形態学的にも異種の腫瘍を産生するそれらの能力に従って、レトロスペクティブに極めて正確に特徴付けられる。このように、単離細胞の小集団を使用して完全に異種の腫瘍をマウスにおいて産生する能力は、その単離細胞がTPCを含むという事実を強く示唆する。そのような研究において、最小限に継代されたNTX細胞系の使用は、in vivo 実験を大いに単純化して、容易に証明可能な結果を提供する。さらに、初期継代NTX腫瘍はまた、イリノテカン(即ち、Camptosar(登録商標))のような治療薬剤に反応して、腫瘍増殖、現行療法への抵抗性、及び腫瘍再発を推進する根源的な機序への臨床的に関連性のある見識を提供する。
【0250】
NTX腫瘍細胞株が確立されたので、構成要素の腫瘍細胞表現型についてフローサイトメトリーを使用して分析して、腫瘍始原細胞(TIC)について特性決定し、単離、精製、又は濃縮して、そのような集団内のTPC及びTProg細胞を分離又は分析するために使用され得る別々のマーカーを同定した。この点に関して、本発明者は、タンパク質の発現に基づいた細胞の迅速な特性決定と潜在的に有用なマーカーの同時同定をもたらす、専用のプロテオミックベースプラットフォーム(即ち、PhenoPrintTM Array)を利用した。PhenoPrint Array は、その多くが市販供給源より入手されて、96ウェルプレートに配置された、数百もの別々の結合分子を含んでなる専用のプロテオミックプラットフォームであって、ここで各ウェルは、フィコエリトリン蛍光チャネル中の別個の抗体とプレート全体で各ウェルに配置された異なる蛍光色素の多数の追加抗体を含有する。これにより、非フィコエリトリンチャネルを介して関連細胞を迅速に包含させ、又は非関連細胞を除外することを通じて、選択した腫瘍細胞の亜集団における対象の抗原の発現レベルの決定が可能になる。この PhenoPrint Array を当該技術分野で周知の組織解離、移植、及び幹細胞の技術(Al-Hajj et al., 2004, Dalerba et al., 2007 及び Dylla et al., 2008, いずれも上掲、このそれぞれは、その全体において参照により本明細書に組み込まれる)と組み合わせて使用した場合、関連マーカーを効果的に同定した後で、特異的なヒト腫瘍細胞亜集団をきわめて効率的に単離及び移植することが可能であった。
【0251】
従って、重度の免疫不全マウス中のヒト腫瘍について一般になされているように様々なNTX腫瘍細胞系を確立したらすぐに、800〜2,000mmに達した時点でマウスより腫瘍を切除して、当該技術分野で認められた酵素消化技術(例えば、本明細書に取り込まれる、米国特許第2007/0292414号を参照のこと)を使用して、この細胞を単一細胞懸濁液へ解離させた。これらの懸濁液より PhenoPrint Array を使用して得られたデータは、細胞ごとのベースで、絶対的(各細胞あたり)と相対的(集団中の他の細胞に対する)の両方の表面タンパク質発現を提供し、細胞集団のより複雑な特性決定及び層別化をもたらした。より具体的には、PhenoPrint Array の使用は、NTGバルク腫瘍細胞及び腫瘍間質よりTIC又はTPCをあらかじめ識別するタンパク質又はマーカーの迅速な同定を可能にして、NTX腫瘍モデルから分離されるときに、特異的な細胞表面タンパク質の異なるレベルを発現する腫瘍細胞亜集団の相対的に迅速な特性決定を提供した。特に、腫瘍細胞集団全体で異種に発現されるタンパク質により、ある特別なタンパク質又はマーカーの発現レベルが高いか又は低い、独自の高度精製された腫瘍細胞亜集団の単離と免疫不全マウスへの移植が可能になり、それによって、ある亜集団又は別の亜集団においてTPCが濃縮されたかどうかの評価が促進される。
【0252】
「濃縮する」という用語は、細胞を単離することと同義的に使用されて、ある種類の細胞の収率(画分)が出発又は最初の細胞集団と比較して、他の種類の細胞の画分に対して増加していることを意味する。好ましくは、「濃縮すること」は、ある細胞集団中の1種類の細胞の百分率を、出発の細胞集団と比較して、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、又は50%より多く高めることを意味する。
【0253】
本明細書に使用するように、細胞又は組織の文脈において、マーカーは、ある特別な細胞、細胞集団、又は組織と同定可能なほどに関連しているか又はその中又は上に特異的に見出される化学的又は生物学的な実体(疾患又は障害に影響を受けている組織又は細胞集団の中又は上で同定されるものも含まれる)の形式のあらゆる特徴を意味する。はっきり明示されるように、マーカーは、本質的に、形態学的、機能的、又は生化学的であり得る。好ましい態様において、マーカーは、特定の細胞種(例、TPC)によるか又はある条件下の細胞(例えば、細胞周期の特別な時点にある細胞、又は特別なニッチにある細胞)によって差示的又は選好的に発現される細胞表面抗原である。好ましくは、そのようなマーカーは、タンパク質であり、そして好ましくは、当該技術分野で公知であるような抗体、アプタマー、又は他の結合分子のエピトープを保有する。しかしながら、マーカーは、細胞の表面又はその内部に見出されるどの分子からもなってよく、限定されないが、タンパク質(ペプチド及びポリペプチド)、脂質、多糖、核酸、及びステロイドが含まれる。形態学的マーカーの特徴又は形質の例には、限定されないが、形状、大きさ、及び「核」対「細胞質」比が含まれる。機能的マーカーの特徴又は形質の例には、限定されないが、特別な基質へ付着する能力、特別な色素を取り込むか又は排除する能力(例えば、限定されないが、脂溶性色素の排除)、特別な条件の下で遊走する能力、及び特別な系譜に沿って分化する能力が含まれる。マーカーはまた、レポーター遺伝子より発現されるタンパク質であり得、例えば、レポーター遺伝子をコードする核酸配列の細胞への導入とその転写の結果として該細胞によって発現されるレポーター遺伝子は、マーカーとして使用し得るレポータータンパク質の産生をもたらす。マーカーとして使用し得るこのようなレポーター遺伝子は、例えば、限定されないが、蛍光タンパク質酵素、呈色性(chromomeric)タンパク質、耐性遺伝子、等である。
【0254】
関連した意味において、「マーカー表現型」という用語は、組織、細胞、又は細胞集団(例、安定したTPC表現型)の文脈において、特別な細胞又は細胞集団を(例えば、FACSによって)特性決定する、同定する、分離する、単離する、又は濃縮するために使用し得るあらゆるマーカー又はマーカーの組合せを意味する。具体的態様において、マーカー表現型は、細胞表面マーカーの組合せの発現を検出又は同定することによって決定され得る細胞表面表現型である。
【0255】
当業者は、数多くのマーカー(又はそれらの非存在)が癌幹細胞の様々な集団と関連付けられて、腫瘍細胞亜集団を単離するか又は特性決定するのに使用されてきたことを認めよう。この点に関して言えば、例示の癌幹細胞マーカーは、OCT4、Nanog、STAT3、EPCAM、CD24、CD34、NB84、TrkA、GD2、CD133、CD20、CD56、CD29、B7H3、CD46、トランスフェリン受容体、JAM3、カルボキシペプチダーゼM、ADAM9、オンコスタチンM、Lgr5、Lgr6、CD324、CD325、ネスチン、Sox1、Bmi−1、eed、easyh1、easyh2、mf2、yy1、smarcA3、smarckA5、smarcD3、smarcE1、mllt3、FZD1、FZD2、FZD3、FZD4、FZD6、FZD7、FZD8、FZD9、FZD10、WNT2、WNT2B、WNT3、WNT5A、WNT10B、WNT16、AXIN1、BCL9、MYC、(TCF4)SLC7A8、IL1RAP、TEM8、TMPRSS4、MUC16、GPRC5B、SLC6A14、SLC4A11、PPAP2C、CAV1、CAV2、PTPN3、EPHA1、EPHA2、SLC1A1、CX3CL1、ADORA2A、MPZL1、FLJ10052、C4.4A、EDG3、RARRES1、TMEPAI、PTS、CEACAM6、NID2、STEAP、ABCA3、CRIM1、IL1R1、OPN3、DAF、MUC1、MCP、CPD、NMA、ADAM9、GJA1、SLC19A2、ABCA1、PCDH7、ADCY9、SLC39A1、NPC1、ENPP1、N33、GPNMB、LY6E、CELSR1、LRP3、C20orf52、TMEPAI、FLVCR、PCDHA10、GPR54、TGFBR3、SEMA4B、PCDHB2、ABCG2、CD166、AFP、BMP−4、β−カテニン、CD2、CD3、CD9、CD14、CD31、CD38、CD44、CD45、CD74、CD90、CXCR4、デコリン、EGFR、CD105、CD64、CD16、CD16a、CD16b、GLI1、GLI2、CD49b、及びCD49fを含む。例えば、そのそれぞれが参照により本明細書に組み込まれる、Schulenburg et al., 2010, PMID:20185329、米国特許第7,632,678号、及び米国特許公開公報番号:2007/0292414、2008/0175870、2010/0275280、2010/0162416、及び2011/0020221を参照のこと。上記に記載の PhenoPrint Array には、これらマーカーのいくつかが含まれていたことを理解されたい。
【0256】
同様に、ある腫瘍型の癌幹細胞に関連した細胞表面表現型の非限定的な例には、CD44hiCD24low、ALDH、CD133、CD123、CD34CD38、CD44CD24、CD46hiCD324CD66c、CD133CD34CD10CD19、CD138CD34CD19、CD133RC2、CD44αβhiCD133、CD44CD24ESA、CD271、ABCB5、並びに、当該技術分野で公知である他の癌幹細胞表面表現型が含まれる。例えば、そのそれぞれがその全体において参照により本明細書に組み込まれる、Schulenburg et al., 2010、上掲、Visvader et al., 2008, PMID: 18784658 及び米国特許公開公報番号:2008/0138313を参照のこと。当業者は、直前に例示したようなマーカー表現型を標準のフローサイトメトリー分析及び細胞選別技術と併せて使用して、TIC及び/又はTPC細胞又は細胞集団をさらなる分析のために特性決定する、単離する、精製する、又は濃縮することができることを理解されよう。本発明に関連して興味深い、CD46、CD324、及び任意選択的にCD66cは、多くのヒト結直腸(「CR」)、乳房(「BR」)、非小細胞肺(NSCLC)、小細胞肺(SCLC)、膵臓(「PA」)、メラノーマ(「Mel」)、卵巣(「OV」)、及び頭頚部癌(「HN」)の腫瘍細胞の表面で、分析される腫瘍標本が原発性の患者腫瘍標本であるか又は患者由来のNTX腫瘍であるかに拘らず、高度に、又は異種に発現されている。
【0257】
陰性発現(即ち、「−」)の細胞とは、本明細書において、対象の他のタンパク質を蛍光放射の追加チャネルにおいて標識する完全な抗体染色カクテルの存在下に蛍光のチャネル中のアイソタイプ対照抗体で観測される発現の95パーセンタイル以下を発現する細胞として定義される。当業者は、陰性事象を明確化するためのこの手順が「蛍光マイナス1」又は「FMO」染色と呼ばれることを理解されよう。本明細書では、上記に記載したFMO染色手順を使用してアイソタイプ対照抗体で観測される発現の95パーセンタイルより大きい発現がある細胞を「陽性」(即ち「+」)と定義する。本明細書で明確にされるように、概括的に「陽性」と定義される様々な細胞の集団がある。第一に、低い発現(即ち「lo」)の細胞とは、観測される発現が、アイソタイプ対照抗体でのFMO染色を使用して決定される95パーセンタイルより高くて、上記に記載のFMO染色手順を使用してアイソタイプ対照抗体で観測される発現の95パーセンタイルの標準偏差内にある細胞として一般的に定義される。「高い」発現(即ち「hi」)の細胞とは、観測される発現が、アイソタイプ対照抗体でのFMO染色を使用して決定される95パーセンタイルより高くて、上記に記載のFMO染色手順を使用してアイソタイプ対照抗体で観測される発現の95パーセンタイルより1標準偏差だけ大きい細胞として定義され得る。他の態様では、好ましくは、99パーセンタイルを陰性及び陽性のFMO染色の間の境界点として使用してよく、特に好ましい態様において、このパーセンタイルは、99%より大きくてよい。
【0258】
結直腸癌患者由来のいくつかのNTX腫瘍全体の発現の強度及び異種性に基づいて結直腸腫瘍抗原を速やかに同定して順位付ける上記に記載のような技術を使用して、候補のTPC抗原について、「腫瘍」対「正常隣接組織」の比較によってさらに評価してから、少なくとも一部は、悪性腫瘍細胞中の特別な抗原の上方又は下方調節に基づいて選択した。さらに、完全に異種な腫瘍をマウス中へ移植する能力を高めるその能力(即ち、腫瘍形成能力)に関して多様な細胞表面マーカーについて体系的に分析して、その後これらのマーカーを組み合わせることで、この方法の解明が実質的に向上して、移植時に全ての腫瘍産生能力を専ら含有する、高く濃縮された区別可能な腫瘍細胞亜集団(即ち、腫瘍始原細胞)を同定して特性決定するように蛍光活性化細胞選別(FACS)技術を独自設計する能力も向上した。繰り返すと、腫瘍始原細胞(TIC)又は腫瘍形成(TG)細胞という用語には、腫瘍永続化細胞(TPC;即ち、癌幹細胞)と高増殖性腫瘍始原細胞(TProg)が共に含まれ、これらは一緒に、バルク腫瘍又は塊の独自の亜集団(即ち、0.1〜25%)を概して含み;その特徴は、上記に定義されている。この形式で特性決定される腫瘍細胞の大部分はこの腫瘍形成能力を欠失しているので、非腫瘍形成性(NTG)と特性決定され得る。驚くべきことに、専用の PhenoPrint Array を使用して同定されたほとんどの個別マーカーは、標準FACSプロトコールを使用すると、結直腸腫瘍中の腫瘍始原細胞集団を濃縮する能力を証明しなかったが、個別マーカーの組合せを使用すれば、腫瘍始原細胞の2つの亜集団:TPCとTProgを同定し得ることが観測された。当業者は、TPCとTProgの間の明確な違いが、いずれも一次移植体において始動する腫瘍であるが、低い細胞数での連続移植時にも腫瘍増殖を永続的に促進するTPCの能力であることを認めよう。さらに、TPCとTProgをともに濃縮するために組み合わせて使用されるマーカー/タンパク質は、腫瘍形成細胞を濃縮するために同様に使用し得る明確化された細胞表面マーカー又は酵素活性を有するものもあるが、本発明者による発見以前には、どの組織又は新生物中でもそのような活性を含有する細胞に関連していることが知られていなかった(Dylla et al 2008, 上掲)。下記に説明するように、次いで、上記に言及した細胞表面マーカーの組合せを使用して単離した特定の腫瘍細胞亜集団を、全トランスクリプトームの次世代配列決定法を使用して分析して、差示的に発現される遺伝子を同定して特性決定した。
【0259】
実施例2
濃縮された腫瘍始原細胞集団からのRNA試料の単離と分析
実施例1に記載のように産生して継代したいくつかの確立された結直腸NTX細胞株(SCRX−CR4、CR11、CR33、PA3、PA6、及びPA14)を使用して、免疫不全マウスにおいて腫瘍を始動させた。SCRX−CR4、PA3、又はPA6腫瘍を担うマウスでは、平均腫瘍負荷が約300mmに達したならば、このマウスを無作為化して、15mg/kgのイリノテカン、25mg/kgのゲムシタビン、又は媒体対照(PBS)で週2回、安楽死に先立つ少なくとも20日の期間の間、処理した。全6種のNTX系より生じる腫瘍(化学療法の処理を受けているマウス由来のものも含まれる)を取り出して、切除したばかりの結直腸NTX腫瘍より、TPC、TProg、及びNTG細胞をそれぞれ単離して、同様に、実施例1で説明した技術を概ね使用して、膵臓NTX腫瘍よりTG細胞とNTG細胞を単離した。より具体的には、FACSによって細胞集団を単離して、すぐにペレット状にして、Qiagen RLTplus RNA溶解緩衝液(Qiagen 社)に溶解させた。次いで、この溶解物を使用するまで−80℃で保存した。融解させてすぐに、Qiagen RNeasy 単離キット(Qiagen 社)をベンダーの説明書に従って使用して、全RNAを抽出して、ベンダーのプロトコールと推奨される機器設定を再び使用して、Nanodrop(Thermo Scientific)と Bioanalyzer 2100(Agilent Technologies)で定量した。生じる全RNA調製物は、遺伝子の配列決定及び解析に適していた。
【0260】
媒体又は化学療法剤で処理されたマウスより上記に記載のように単離したそれぞれの細胞集団より入手した全RNA試料を、Applied Biosystems SOLiD 3.0(オリゴライゲーション/検出による配列決定法)次世代配列決定プラットフォーム(Life Technologies)を使用する全トランスクリプトーム配列決定用に、各試料につき5ngの全RNAから開始して、調製した。SOLiD プラットフォームによって作成されたデータより、ヒトゲノム由来の34,609の遺伝子へマッピングして、EFNA4が含まれるエフリンAリガンドを検出することができて、ほとんどの試料中のENFAレベルの実証可能な測定値を得た。
【0261】
一般的には、SOLiD3 次世代配列決定プラットフォームは、ビーズへ連結したクローン増幅RNA/DNA断片の並列した配列決定を可能にする。次いで、色素標識化オリゴヌクレオチドでのライゲーションによる配列決定を使用して、試料中に存在する各断片の50塩基読み取りを5000万より多い読み取りの全数で作成し、ゲノム中のタンパク質のmRNA転写物レベル発現のずっとより正確な表示を作成する。SOLiD3 プラットフォームは、読み取りカバー率(ゲノム位置へ独自にマッピングされる読み取り)だけに基づいて、発現だけでなく、SNP、既知及び未知の選択的スプライシング事象、及び潜在的に新しいエクソンの発見を捉えることができる。このように、この次世代プラットフォームの使用は、転写物レベルでの発現の差異だけでなく、発現されるmRNA転写物の特定のスプライス変異体の差異又は選好性の決定を可能にした。さらに、Applied Biosystems からの改良された全トランスクリプトームプロトコールを使用する SOLiD3 プラットフォームでの分析には、増幅前にほぼ5ngの出発材料だけを必要とした。このことが重要であるのは、選別された細胞集団では、例えば、TPC細胞の亜集合がNTG又はバルク腫瘍よりごくわずかな数しかないので、全RNAの抽出がごく少量の使用可能な出発材料しかもたらさないからである。
【0262】
SOLiD3 プラットフォームからの同一2回試行の配列決定データを正規化して変換して、標準的な業界手法のように倍率比を計算した。図面2に示すように、腫瘍由来のEFNA1、EFNA3、及びEFNA4のレベル、並びにEph受容体:EPHA1、EPHA2、及びEPHA10のレベルを測定した。このデータの解析は、媒体(図面2A)又は15mg/kgのイリノテカン(図面2B)で処理されたマウスより細胞を入手したかに拘らず、EFNA4がSCRx−CR4 NTX腫瘍TPCにおいてNTG集団に対して転写物レベルで1.9〜3倍、そしてTPCにおいてTProg集団に対して1.2〜1.4倍上方調節されていることを示した。さらに、EFNA1も、TProg及びNTGそれぞれの細胞に対して、TPCにおいて上昇していたことが理解されよう(但し、EFNA4より低い程度で)。さらに、追加の結直腸(SCRx−CR11及びCR33)及び膵臓(SCRx−PA3、PA6、及びPA14)の腫瘍試料について、SOLiD3 全トランスクリプトーム配列決定法によって分析すると、EFNA4遺伝子発現は、同様に、結直腸癌(図面3A)ではTProg及びNTG細胞に対してTPCにおいて、そして膵臓腫瘍(図面3B)由来の細胞のTIC(又はTG)亜集団において上昇して、上記に例証したように発見された独自の細胞表面マーカーのパネルを使用して明確化された(膵臓腫瘍中のTIC集団を構成するTPC及びTProg細胞の亜集合は、まだ明確化されていない)。
【0263】
また、EFNA4リガンドとEFNA1リガンドがともに相互作用するEPHA2受容体の発現は、TPC細胞からNTG細胞への分化の進行の間のEFNA4とEFNA1の両方の発現を逆に反映することが観測された。このEFNA1/EFNA4リガンドとEPHA2受容体の逆の発現パターンは、これらのリガンド/受容体対の間の応答が結直腸癌幹細胞分化の間の細胞運命の決定においてある役割を演じている可能性があること、そしてこれらの相互作用を中和することが腫瘍増殖に対して負の影響を及ぼす可能性があることを示唆する。具体的には、エフリンAリガンドの後者の対に抗する中和抗体を使用してEFNA1及び/又はEFNA4とのEphA2相互作用を遮断することによって、例えば、TPCを化学療法剤に対して増感させるか又は分化するように強制することができるかもしれない。さらに、EFNA1及び/又はEFNA4−内在化抗体を使用してTPCを標的化することによって、裸のモジュレーターによって直接的に、又は毒素又は抗体−薬物コンジュゲートの使用を介して、TPCを殺傷することができるかもしれない。
【0264】
上記に詳述した観測事実は、EFNA1及び/又はEFNA4の発現がTPC集団において概ね上昇していることを示して、これらの膜繋留(tethered)リガンドが腫瘍形成性と腫瘍維持において重要な役割を担うことにより、新規の治療アプローチへの優れた標的を構成する可能性があることを示唆する。
【0265】
実施例3
濃縮された腫瘍始原細胞集団中のエフリンAリガンドのリアルタイムPCR分析
結直腸癌ではTProg及びNTG細胞に対してTPC集団において、そして膵臓癌ではNTG細胞に対してTGにおいて、全トランスクリプトーム配列決定によって観測された、エフリンAリガンドの差示的な発現を検証するために、TaqMan(登録商標)定量的リアルタイムPCRを使用して、上記に示したような様々なNTX系より単離したそれぞれの細胞集団中の遺伝子発現レベルを測定した。そのようなリアルタイムPCR分析は、特別な対象の遺伝子に特異的なプライマー及びプローブのセットを使用する別々の標的の遺伝子発現レベルのより直接的で迅速な測定を可能にする。TaqMan(登録商標)リアルタイム定量的PCRを Applied Biosystems 7900HT Machine(Life Technologies)で実施して、これを使用して多数の患者由来NTX系細胞集団と対応する対照におけるEFNA4遺伝子発現を測定した。さらに、この分析は、TaqMan System と共に供給される説明書において特定されるように、そして市販のEFNA4プライマー/プローブセット(Life Technologies)を使用して行った。
【0266】
図面4に見られるように、3種の別個の結直腸NTX腫瘍系(SCRx−CR4、CR5、及びCR14)より単離したNTG、TProg、及びTPC集団における遺伝子発現の定量的リアルタイムPCRインターロゲーション(interrogation)は、EFNA4遺伝子発現がNTG細胞に対してTIC亜集団(TPC及び/又はTProg)において1.4倍より多く上昇していることを示した。EFNA4はまた、イリノテカンでの処理を受けているマウスのTIC集団や膵臓腫瘍のTG細胞集団(例、SCRx−PA3)においてもほぼ1.8倍上昇していた。リアルタイム定量的PCRのより広く認められた方法論を使用する、結直腸と膵臓の両方の患者由来NTX腫瘍からのNTG細胞対照と比較した、NTX TIC細胞調製物における上昇したEFNA4発現の観測事実は、先の実施例の SOLiD3 全トランスクリプトーム配列決定データがより高感度であることを確認して、腫瘍形成性、治療への抵抗性、及び再発の根底にあるEFNA4と細胞の間で観測される関連性を裏付ける。
【0267】
実施例4
未分画結直腸腫瘍標本におけるエフリンAリガンドの発現
エフリンAリガンド遺伝子発現が結直腸腫瘍由来のTPC集団において同じ腫瘍由来のTProg及びNTG細胞と比較するときに上昇していることがわかったという事実に照らして、上昇したエフリンAリガンド(即ち、EFNA4)発現が未分画結直腸腫瘍試料においても正常隣接組織(NAT)に対して検出可能であるかどうかを判定する実験を行った。同様に、エフリンAリガンドの腫瘍中の発現が正常組織試料中のレベルといかに比較されるかを判定するための測定も行った。当該技術分野で公知の技術を使用して、110の結直腸患者腫瘍標本、正常隣接組織、及び48の正常組織を含有する Custom TumorScan qPCR(Origene Technologies)384ウェルアレイを設計して製作した。実施例3において詳述した手順と、同一のEFNA4特異プライマー/プローブセットを使用して、カスタムプレートのウェルにおいて TaqMan リアルタイム定量的PCRを実施した。
【0268】
図面5A及び5Bは、発現データの結果を正常な結腸及び直腸組織における平均の発現に対して正規化したグラフ形式で示す。より具体的には、図面5Aは、110名の結直腸癌患者より入手した168の組織標本(このうち35の組織標本は、結直腸癌患者由来の正常(NL)隣接組織である)と他の部位由来の48の正常組織(他のNL)を使用して作成したデータを要約する。このプロットでは、それぞれの組織標本/患者からのデータを点によって表して、X軸上で区切られた各集団の幾何平均値が線として表される。同様に、図面5Bは、この疾患の様々なステージ(I〜IV)での腫瘍(T)又は正常隣接組織(N)より入手した、24のマッチした結直腸患者標本からのデータを含有する。ここでプロットしたデータは、試料ごとのベースで提示されて、個々の患者由来のそれぞれの腫瘍と正常隣接組織の間に連結がある。EFNA4の発現は、マッチした「腫瘍」対「正常隣接組織」の大多数で明らかにより高くて、ステージ2、3、及び4における差示的な発現は、統計学的有意差(n≧4、P≦0.047)に達する。図面5Aと図面5Bはともに、提示した全4つのステージにおいて、EFNA4遺伝子の発現レベルが結直腸腫瘍の大多数において、そして正常隣接組織に対してマッチした腫瘍標本において上昇していることを示す。さらに、結直腸癌のどのステージでも、平均のEFNA4遺伝子発現は、上記の実験において調べたどの正常組織におけるEFNA4遺伝子発現の最高レベルほど高くはないとしても少なくとも同等であるように見える(図面5A)。上記の結果は、EFNA4発現が結直腸癌において増加していること、そして上記の観測事実と併せた場合に、EFNA4発現が結直腸TPCと膵臓TICにおいて最大であることを証明して、EFNA4を発現する腫瘍形成細胞の療法標的化が癌患者に対して大きな治療利益をもたらす可能性があることを示唆する。
【0269】
実施例5
例示の腫瘍試料におけるエフリンAリガンドの差示的な発現
追加の結直腸癌患者の腫瘍試料と17の他の異なる固形腫瘍型のうち1つを診断された患者からの腫瘍標本におけるエフリンAリガンド遺伝子発現についてさらに評価するために、実施例4に記載のようにカスタム製作されたTissueScanTMqPCR(Origene Technologies)384ウェルアレイを使用して、Taqman qRT−PCRを実施した。この測定の結果は、図面6に提示されて、EFNA4の遺伝子発現がいくつかの腫瘍試料において有意に上昇又は抑制されていることを示す。
【0270】
この点に関して、図面6A及び6Bは、18の異なる固形腫瘍型の1つがある患者由来の全腫瘍標本(灰色の点)又はマッチした正常隣接組織(NAT;白色の点)中のヒトEFNA4の相対的な遺伝子発現レベルと絶対的な遺伝子発現レベルをそれぞれ示す。図面6Aでは、分析した各腫瘍型についてNAT中の平均した遺伝子発現に対してデータを正規化している。図面6Bでは、EFNA4の絶対的な発現について様々な組織/腫瘍で評価して、このデータを、定量的リアルタイムPCRによる指数的増幅に達するのに必要とされるサイクルの数(Ct)としてプロットした。増幅しなかった標本には45のCt値を割り当てたが、これは、この実験プロトコールでの最終増幅サイクルを表す。各点は、個別の組織標本を表して、その平均値を実線として表す。
【0271】
このカスタムアレイを使用すると、結直腸癌と診断された患者の大多数と、子宮内膜癌、食道癌、肝臓癌、肺癌、前立腺癌、膀胱癌、及び子宮癌と診断されたほとんどの患者がその腫瘍においてNATに対して有意に多いEFNA4遺伝子発現を有することが観測され、これらの腫瘍における腫瘍形成及び/又は腫瘍進行にEFNA4がある役割を担う可能性があることを示唆した。対照的に、副腎癌と膵臓癌の患者由来の腫瘍では、EFNA4の発現が有意に抑制されているように見えた。また上記の試験から明らかであったのは、EFNA4遺伝子発現がほとんどのNAT試料において概して低い〜中等度であったことであり;最も高い発現は、副腎、乳房、子宮頚部、及び卵巣において観測された。再び、上記のデータは、選択した過剰増殖性障害を示す患者の腫瘍形成性又は永続性に関して、差示的なEFNA4発現(高いか又は低い)がその指標になって、手掛かりとなる(dispositive)可能性があることを示唆する。
【0272】
EFNA4発現については、上記に考察したような専用の非従来型異種移植片(NTX)を使用して評価して、正常な組織発現に関連して定量した。市販の正常組織RNA試料(乳房、結腸、食道、心臓、腎臓、肝臓、肺、卵巣、膵臓、骨格筋、小腸)と、乳癌(BR)、結直腸癌(CR)、腎臓癌(KDY)、肝臓癌(LIV)、メラノーマ(MEL)、非小細胞肺癌(NSCLC)、卵巣癌(OV)、膵臓癌(PA)、及び小細胞肺癌(SCLC)由来のNTX腫瘍に対して定量的リアルタイムPCRを実施した。図面6Cに示す結果は、正常組織中の発現に比べて、乳房、結腸、及び肝臓のNTX系においてEFNA4の発現が上昇していることを証明する。逆に、図面6Dは、同一の正常系とNTX系の多くにおける関連したファミリーメンバーのEFNA1の発現を明らかにして、正常組織と腫瘍組織の間の差示的な発現がほとんどないことを示す。この発現プロフィールにも拘らず、EFNA1と反応する本発明のEFNAモジュレーター(他のEFNAと反応するものも含まれる)は、後続の実施例で裏付けられるように、腫瘍形成細胞を消失させるために有効に使用することができる。
【0273】
いずれにしても、定量的リアルタイムPCRによって検出されるmRNA発現の上昇がEFNA4のタンパク質レベルの上昇へ翻訳されることを確かめるために、ウェスタンブロットを行った。全タンパク質抽出キット(Bio Chain Institute # K3011010)を提供のプロトコールに従って使用して、NTX及び細胞株(293のナイーブ細胞と293のEFNA4過剰発現細胞)の細胞溶解物を産生して、市販の正常組織溶解物(Novus Biologicals)とマッチさせた。BCAタンパク質アッセイ(Pierce/Thermo Fisher #23225)を使用して、溶解物のタンパク質濃度を定量した。等量の細胞溶解物を還元条件下にMES緩衝液中の NuPAGE Novex 4−12% Bis-Tris ゲル剤(Life Technologies)に泳動させた。ヒトEFNA4に対する市販抗体(R&D Systems-AF369)を使用して、EFNA4タンパク質発現を検出した。図面6Eのトップパネルでは、EFNA4を過剰発現するように工学処理された293細胞が、ナイーブ293細胞に比較して高い発現を示す。追加的に言えば、このトップパネルでは、いくつかの乳癌、結腸癌、及び非小細胞肺癌のNTXが相対的に高いEFNA4の発現を示した。同様の条件の下で、図面6Eの最下部のパネル中のウェスタンブロットは、NTX細胞株のCR11中の高いEFNA4発現と比較したときに、正常組織が低いか又は検出不能なレベルのEFNA4を発現することを示す。両方のパネルで細胞溶解物のローディングが等しいことを証明するために、抗GAPDH対照抗体を使用する。
【0274】
実施例6
EFNA免疫原を使用する、抗EFNA抗体の産生
本明細書の教示に従って、EFNA4−ECD−Fc、hEFNA4−ECD−His、hEFNA1−ECD−His、EFNA4を過剰発現するBALB/c 3T3細胞の全細胞、又は本明細書で説明したように調製した血漿調製物での接種により、マウスの抗体の形態でのEFNAモジュレーターを産生した(ECD−細胞外ドメイン)。免疫原は、いずれも市販の出発材料(例、組換えヒトエフリンA4 Fcキメラ、CF R&D systems # 369-EA-200)及び/又は当業者に周知の技術を使用して調製した。
【0275】
より具体的には、9匹の雌性マウス(各3匹:Balb/c、CD−1、FVB)をEFNA4又はEFNA1抗原の様々な調製物で免疫化することによって、マウスの抗体を産生した。免疫原には、Fc構築体又はHisタグ付きヒトEFNA4若しくはEFNA1、EFNA4を過剰発現する10個の293細胞より抽出した膜画分、又はヒトEFNA4を表面で過剰発現する3T3細胞全体が含まれた。すべての注射で足蹠(footpad)の経路よりマウスを免疫化した。免疫化には、10μgのEFNA4若しくはEFNA1免疫原、又は1X10個の細胞、又は等量のTITERMAXTM又はアルムアジュバントで乳化した細胞同等物を使用した。免疫化の後でマウスを安楽死させて、漏出するリンパ節(拡げれば、膝窩及び鼠蹊部)を切り出して、抗体産生細胞の供給源として使用した。組織グラインダーを使用する、リンパ節の機械的な破壊によってリンパ球を放出した。
【0276】
2種の融合プロトコールの1つを使用した。第一のプロトコールでは、Genetronic デバイスでの電気細胞融合を実施して、プレーティングを続けて、ポリクローナルハイブリドーマを後続のサブクローニングでスクリーニングして、モノクローナルハイブリドーマを産生した。第二のプロトコールでは、BTX機器での電気細胞融合を実施し、ハイブリドーマライブラリーのバルクでの増殖とこのハイブリドーマの単一細胞沈着を続けて、後にこのクローンをスクリーニングした。
【0277】
Genetronic デバイス融合プロトコール:B細胞の単一細胞懸濁液を(ATCC CRL-1580;Kearney et al, J. Immunol. 123: 1548-1550 (1979))より購入した非分泌型P3x63Ag8.653骨髄腫細胞と1:1の比で混合することによって融合を実施した。この細胞混合物を800gでの遠心分離によって穏やかにペレット化した。上清の完全な除去の後で、この細胞を2〜4mLのプロナーゼ(Pronase)溶液で2分以下の間処理した。融合ジェネレーター、モデルECM2001(Genetronic 社)を使用して、電気細胞融合を実施した。
【0278】
細胞を平底マイクロタイタープレートに2X10個/ウェルで播いた後で、選択HAT培地(シグマ、CRL P-7185)にて2週間のインキュベーションを続けた。次いで、個々のウェルについて、ELISA及びFACSによって抗ヒトEFNA4モノクローナルIgG抗体をスクリーニングした。
【0279】
ELISAマイクロタイタープレートを、トランスフェクトした293細胞より精製した組換えEFNA4 His融合タンパク質で、炭酸塩緩衝液中100ng/ウェルで被覆した。プレートを4℃で一晩インキュベートしてから、PBS/Tween(0.05%)中3% BSAの200μl/ウェルでブロックした。ハイブリドーマプレートからの上清を各ウェルへ加えて、周囲温度で1〜2時間インキュベートした。このプレートをPBS/Tweenで洗浄してから、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)へコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG(Fc断片特異的)(Jackson Immuno Research)とともに室温で1時間インキュベートした。洗浄後、このプレートをTMB基質(Thermo Scientific 34028)で発色させて、分光光度計によってOD450で分析した。
【0280】
陽性ウェルからのEFNA4分泌ハイブリドーマについて再スクリーニングして、限界希釈又は単一細胞FACS選別によってサブクローン化した。
選択した抗原陽性ウェルについて、限界希釈プレーティングを使用して、サブクローニングを実施した。プレートについて、単一コロニー増殖の存在を外観的に検査してから、単一コロニーウェル由来の上清を上記に記載の抗原特異的ELISAと下記に記載のようなFACS確認によってスクリーニングした。生じるクローン集団を増やして凍結培地(90% FBS,10% DMSO)中で凍結保存して、液体窒素に保存した。EFNA4で免疫化したマウスからのこの融合より、上記に記載のELISAプロトコールを使用して、EFNA4に反応性の159のマウスモノクローナル抗体を得た。
【0281】
BTX機器融合プロトコール:B細胞の単一細胞懸濁液を非分泌型P3x63Ag8.653骨髄腫細胞と1:1の比率で電気細胞融合によって融合した。電気細胞融合は、Hybrimune System, モデル47-0300(BTX Harvard Apparatus)を使用して実施した。融合した細胞を、アザセリン(Azaserine)(シグマ #A9666)を補充したハイブリドーマ選択培地[15%胎仔クローンI血清(Hyclone)、10% BM Condimed(Roche Applied Sciences)、1mMピルビン酸ナトリウム、4mM L−グルタミン、100IUペニシリン−ストレプトマイシン、50μM 2−メルカプトエタノール、及び100μMヒポキサンチンを含有するDMEM(Cellgro カタログ番号:15-017-CM)培地]に再懸濁させてから、4つのT225フラスコにおいてフラスコあたり90mlの選択培地でプレート培養した。次いで、このフラスコを、5% COと95%空気を含有する加湿37℃インキュベーターに6〜7日間入れた。
【0282】
6〜7日の増殖時に、このライブラリーを、Aria I 細胞ソーターを使用して、48 Falcon 96 ウェルU底プレートにおいてウェルあたり1細胞でプレート培養する。簡潔に言えば、15%胎仔クローンI血清(Hyclone)、10% BM Condimed(Roche Applied Sciences)、1mMピルビン酸ナトリウム、4mM L−グルタミン、100IUペニシリン−ストレプトマイシン、50μM 2−メルカプトエタノール、及び100μMヒポキサンチンを含有する培養基を 48 Falcon 96 ウェルU底プレートにおいてウェルあたり200μlで播く。生存可能なハイブリドーマを、Aria I 細胞ソーターを使用して、ウェルにつき1細胞で入れて、10〜11日間培養して、その上清について、FACS又はELISAによってEFNA4又はEFNA1に反応性の抗体をアッセイする。
【0283】
マウス免疫グロブリンを分泌している増殖陽性ハイブリドーマウェルについて、上記の記載に似たELISAアッセイを使用して、マウスのEFNA4特異性をスクリーニングした。簡潔に言えば、96ウェルプレート(VWR, 610744)を炭酸ナトリウム緩衝液中1μg/mLのマウスEFNA4−Hisで、4℃で一晩被覆した。このプレートを2% FCS−PBSで、37℃で1時間洗浄してブロックして、すぐに使用するか又は4℃で保存した。非希釈ハイブリドーマ上清をプレート上にて室温で1時間インキュベートした。このプレートを洗浄して、1% BSA−PBSで10,000倍希釈したHRP標識化ヤギ抗マウスIgGで、室温で1時間プローブする。次いで、このプレートを上記に記載のような基質溶液とともにインキュベートして、OD450で読み取る。
【0284】
マウス免疫グロブリンを分泌する増殖陽性ハイブリドーマウェルについても、以下のようなFACSアッセイを使用して、ヒトEFNA1特異性をスクリーニングした。簡潔に言えば、ヒトEFNA1を発現する、ウェルにつき1x10個のJurkat細胞を25〜100μlのハイブリドーマ上清とともに30分間インキュベートした。細胞をPBS/2% FCSで2回洗浄してから、試料あたり50μlのDyeLight 649標識化ヤギ抗マウスIgG、Fc断片特異的二次抗体(PBS/2% FCSで200倍希釈)とともにインキュベートした。15分のインキュベーションの後で細胞をPBS/2% FCSで2回洗浄して、DAPIを含むPBS/2% FCSに再懸濁させて、標準条件下にHTS付属装置を使用して、FACS Canto II(BD Biosciences)によって分析した。生じるEFNA1特異的クローンのハイブリドーマを増やして、CS−10凍結培地(Biolife Solutions)に冷凍保存して、液体窒素に保存した。EFNA1で免疫化したマウスからのこの融合より、FACS分析を使用して決定されるような、EFNA4と反応する1つのハイブリドーマを得た。さらに、FACS分析により、これらハイブリドーマのほとんど又はすべてに由来する精製抗体が濃度依存的な様式でEFNA4又はEFNA1へ結合することを確認した。
【0285】
実施例7
エフリンAリガンドモジュレーターの配列決定及びヒト化
7(a)配列決定:
上述したことに基づいて、固定化したヒトEFNA4又はEFNA1へ見かけ上高い親和性で結合する、いくつかの例示の別個のモノクローナル抗体を選択した。図面7A中の表形式に示すように、実施例6からのmAbをコードするDNAの配列分析により、その多くが独自のVDJ再配列を有して新規の相補性決定領域を示すことが確認された。図面7Aに示す相補性決定領域(配列番号8〜59及び70〜95)は、VBASE2分析に由来していることに留意されたい。
【0286】
配列決定の開始のために、TRIZOL試薬を Invitrogen(Life Technologies)より購入した。ワンステップRT PCRキットとQIAquick PCR精製キットを Qiagen 社より購入して、RNasinは、プロメガ(Promega)より購入した。カスタムオリゴヌクレオチドは、Integrated DNA Technologies より購入した。
【0287】
ハイブリドーマ細胞をRNA調製のためにTRIZOL試薬に溶解させた。10〜10個の細胞を1ml TRIZOLに再懸濁させた。200μlのクロロホルムの添加後に、試験管を激しく振り混ぜた。試料を4℃で10分間遠心分離させた。水相を新鮮な微量遠心管へ移して、等量のイソプロパノールを加えた。管を激しく振り混ぜて、そのまま室温で10分間インキュベートした。次いで、試料を4℃で10分間遠心分離させた。ペレットを1mlの70%エタノールで1回洗浄して、室温で少しの間乾燥させた。このRNAペレットを40μLのDEPC処理水で再懸濁させた。RNA調製物の量は、1%アガロースゲルに3μLを分画することによって決定した。このRNAを、使用するまで、−80℃のフリーザーに保存した。
【0288】
可変ドメインプライマーのミックスを使用して、マウスの免疫グロブリン重鎖及びκ軽鎖に特異的なコンセンサスプライマーで増幅した、ハイブリドーマの多様なDNA配列を入手した。ワンステップRT−PCRキットを使用して、それぞれのRNA試料からのVH及びVK遺伝子セグメントを増幅した。この Qiagen ワンステップRT−PCRキットは、Sensiscript 及び Omniscript の逆転写酵素、HotStarTaq DNAポリメラーゼ、Qiagen ワンステップRT−PCR緩衝液、dNTPミックス、及びQ−Solutionの混和物(「困難な」(例えば、GCリッチ)鋳型の効率的な増幅を可能にする新規添加剤)を提供する。
【0289】
3μLのRNA、100μMの重鎖又はκ軽鎖いずれかのプライマーの0.5μL、5μLの5xRT−PCR緩衝液、1μL dNTP、逆転写酵素及びDNAポリメラーゼを含有する1μLの酵素ミックス、及び0.4μLのリボヌクレアーゼ阻害剤RNasin(1単位)が含まれる反応混合物を調製した。この反応混合物は、両方の逆転写とPCRに必要とされる試薬のすべてを含有する。熱サイクルプログラムは、RT(逆転写)工程、50℃で30分間、95℃で15分間に、30サイクルの(95℃で30秒間、48℃で30秒間、72℃で1.0分間)を続けた。次いで、72℃で10分間の最終インキュベーションがあった。
【0290】
直接的なDNA配列決定用のPCR産物を産生するために、QIAquickTMPCR精製キットを製造業者のプロトコールに従って使用して、それらを精製した。このDNAを、50μLの無菌水を使用してスピンカラムより溶出させてから、両鎖より直接的に配列決定した。PCR断片について直接的に配列決定して、VBASE2(Retter et al., Nucleic Acid Res. 33; 671-674, 2005)を使用して、DNA配列を解析した。
【0291】
上記で簡潔に述べたように、いくつかの例示の抗hEFNA4/hEFNA1抗体の遺伝子配置と導かれたCDR(VBASE2分析に由来している)を図面7A(配列番号8〜59及び70〜95)において表形式で示す。さらに、同じ例示の抗体重鎖及び軽鎖可変領域の核酸配列とアミノ酸配列を図面7B〜7N(配列番号96〜147)に示す。
【0292】
7(b)ヒト化:
実施例6からのマウスの抗体のうち4つを、相補性決定領域(CDR)移植法を使用してヒト化した。機能性ヒト生殖細胞系遺伝子に関する配列及び構造の類似性に基づいて、重鎖及び軽鎖のヒトフレームワークを選択した。この点に関して言えば、VBASE2分析に由来しているように、マウスカノニカルCDR構造を同じカノニカル構造のあるヒト候補物と比較することによって、構造類似性を評価した。
【0293】
より具体的には、コンピュータ支援CDR移植法(Abysis Database, UCL Business Plc.)と標準分子工学技術を使用してマウスの抗体:SC4.5、SC4.15、SC4.22、及びSC4.47をヒト化して、hSC4.5、hSC4.15、hSC4.22、及びhSC4.47のモジュレーターを得た(註:クローン又は抗体の表示に続く後続の数字の付加(即ち、SC4.47.3)は、特別なサブクローンに言及するのであって、他に述べなければ、又は文脈によって要請されなければ、本開示の目的のための材料ではない)。マウスフレームワーク配列とそのカノニカル構造に対する最高の配列相同性に基づいて、可変領域のヒトフレームワーク領域を選択した。この解析の目的では、CDRドメインそれぞれのアミノ酸の帰属は、Kabat et al. の番号付けに準拠する。最適のヒト化抗体を産生するためにいくつかのヒト化抗体変異体を作製したが、このヒト化抗体は、ヒトフレームワーク領域に関連する、マウスハイブリドーマ由来の抗原結合性の相補性決定領域(CDR)を概して保持していた。ヒト化SC4.15、SC4.22、及びSC4.471のmAbがそのマウス対照物と同様の親和性でEFNA4抗原へ結合するのに対し、hSC1.5は、Biacoreシステムを使用して測定されるように、やや弱い親和性で結合した。
【0294】
当該技術分野で認められた技術を使用して、分子工学手順を実行した。そのために、製造業者のプロトコール(Trizol(登録商標)Plus RNA精製システム、Life Technologies)に従って、先のハイブリドーマより全mRNAを抽出した。完全なマウスレパートリーに標的指向するように設計された、32種のマウス特異的5’リーダー配列プライマーを含んでなるプライマーミックスを3’マウスCγ1プライマーと組み合わせて使用して、抗体重鎖の可変領域を増幅して配列決定した。同様に、Vkマウスファミリーのそれぞれを増幅するように設計された32種の5’Vkリーダー配列プライマーミックスをマウスκ定常領域へ特異的な単一のリバースプライマーと組み合わせて使用して、κ軽鎖を増幅して配列決定した。このV及びV転写物は、逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を使用して、100ngの全RNAより増幅した。
【0295】
それぞれのハイブリドーマにつき、全8回のRT−PCR反応を実施した(Vκ軽鎖についての4回とVγ重鎖(γ1)についての4回)。増幅には、QIAGEN ワンステップRT−PCRキット(Qiagen 社)を使用した。特異的なV領域プライマーを使用して、抽出したPCR産物を直接的に配列決定した。IMGTを使用してヌクレオチド配列を解析して、最高の配列相同性がある生殖細胞系V、D、及びJ遺伝子メンバーを同定した。V−BASE2(Retter et al., 上掲)を使用して、そしてV及びV遺伝子のマウス生殖細胞系データベースへの並置によって、この導いた配列をIgV及びJ領域の既知の生殖細胞系DNA配列と比較した。
【0296】
このヌクレオチド配列情報より、SC4.5、SC4.15、SC4.22、及びSC4.47の重鎖及び軽鎖のV、D、及びJ遺伝子セグメントに関するデータを入手した。この配列データに基づいて、抗体のIg V及びV鎖のリーダー配列に特異的な新しいプライマーセットを組換えモノクローナル抗体のクローニングのために設計した。引き続き、このV−(D)−J配列をマウスIg生殖細胞系配列と並置した。SC4.5の重鎖遺伝子をIGHV2−6(V)及びJH3と同定した。E5モノクローナル抗体重鎖の短いCDR3の解析では、特異的なマウスD遺伝子が同定されなかった。SC4.15の重鎖遺伝子をIGHV5−6(V)、DSP2.9(D)及びJH3と同定した。SC4.22の重鎖遺伝子をVHJ558(V)と同定し、DセグメントをDFL16.1e及びJH4(J)と同定した。SC4.47の重鎖遺伝子をIGHV1−26(V)、P1inv(D)及びJH2(J)と同定した。4種の軽鎖は、いずれもKクラスであった。軽鎖遺伝子は、SC4.5 mAbではIGKV6−15、JK2として、SC4.15 mAbではIGKV6−b及びJK5として、SC4.22 mAbではIGKV1−110及びJK1生殖細胞系配列として、そしてSC4.47κ軽鎖ではIGKV21−7、JK1生殖細胞系配列として同定した。これらの結果をすぐ下の表2に要約する。
【0297】
【表3】
【0298】
全4つのクローンより入手した重鎖及び軽鎖配列を機能性ヒト可変領域配列へ並置して、相同性とカノニカル構造について検討した。この重鎖及び軽鎖解析の結果を下記の表3及び4にそれぞれ示す。
【0299】
【表4】
【0300】
【表5】
【0301】
この生殖細胞系選択とCDR移植の方法により、その結合特性を概ね保持する抗体が提供されたようであったので、この構築体のほとんどにマウスの残基を挿入することは、ほとんど必要ないようであった。しかしながら、hSC4.15では、重鎖残基68をThr(T)からLys(K)へ復帰突然変異させて、その抗体特性を改善した。
【0302】
全4種の抗体のヒト化重鎖可変領域及びヒト化κ軽鎖のアミノ酸配列を(関連の核酸配列とともに)図面7O〜7R(配列番号148〜163)に示し、ここでアミノ酸配列中のCDR(Kabat et al., 上掲によって定義されるような)は下線を施されている。
【0303】
より具体的には、ヒト化SC4.5重鎖の核酸配列と対応するアミノ酸配列(配列番号148及び149)とヒト化軽鎖のそれ(配列番号150及び151)を図面7Oに示す。同様に、ヒト化SC4.15重鎖の核酸配列と対応するアミノ酸配列(配列番号152及び153)とヒト化軽鎖のそれ(配列番号154及び155)を図面7Pに示す。本発明の別の態様を図面7Qに例証するが、ここではヒト化SC4.22重鎖の核酸配列と対応するアミノ酸配列(配列番号156及び157)とヒト化軽鎖のそれ(配列番号158及び159)を示す。なお別の態様において、図面7Rは、ヒト化SC4.47重鎖の核酸配列と対応するアミノ酸配列(配列番号160及び161)とヒト化軽鎖のそれ(配列番号162及び163)を示す。下記の実施例で証明されるように、上述のヒト化抗体のそれぞれは、本明細書の教示に従って、有効なEFNAモジュレーターとして機能する。
【0304】
いずれにしても、当該技術分野で認められた技術を使用して、開示モジュレーターを発現させて単離した。そのために、両方の重鎖の合成ヒト化可変DNA断片(Integrated DNA Technologies)をヒトIgG1発現ベクター中へクローン化した。可変軽鎖断片は、ヒトC−κ発現ベクター中へクローン化した。この重鎖と軽鎖のCHO細胞への同時トランスフェクションによって、抗体を発現させた。
【0305】
より具体的には、抗体産生のために、マウス及びヒト化の可変遺伝子PCR産物のヒト免疫グロブリン発現ベクター中への一方向性クローニングを行った。Ig遺伝子特異的PCRに使用したすべてのプライマーには、制限部位(IgHではAgeIとXhoI、IgKではXmaIとDraIIIであり、これらによりヒトIgG1及びIGKの定常領域をそれぞれ含有する発現ベクター中への直接的なクローニングが可能になる)が含まれた。簡潔に言えば、PCR産物を Qiaquick PCR精製キット(Qiagen 社)で精製して、AgeIとXhoI(IgH)、XmaIとDraIII(IgK)のそれぞれでの消化を続けた。発現ベクターへのライゲーションに先立って、消化されたPCR産物を精製した。全量10μLにおいて、200U T4−DNAリガーゼ(NewEngland Biolabs)、7.5μLの消化及び精製済み遺伝子特異的PCR産物、及び25ngの線状化ベクターDNAでライゲーション反応を実施した。コンピテント大腸菌:DH10B細菌(Life Technologies)を42℃での熱ショックにより3μLのライゲーション産物で形質転換させて、アンピシリンプレート(100μg/mL)上へ播いた。次いで、V領域のAgeI−EcoRI断片をpEE6.4HuIgG1発現ベクターの同じ部位へ挿入する一方、合成のXmaI−DraIII V挿入物をそれぞれのpEE12.4Hu−κ発現ベクターのXmaI−DraIII部位へクローン化した。
【0306】
293フェクチンを使用する、適正なプラスミドでのHEK293細胞のトランスフェクションによって、ヒト化抗体を産生する細胞を作製した。この点に関しては、プラスミドDNAをQIAprep Spinカラム(Qiagen)で精製した。10%熱不活性化FCS、100μg/mL ストレプトマイシン、100U/mL ペニシリンG(いずれも Life Technologies より)を補充したダルベッコ改良イーグル培地(DMEM)中の標準条件下で150mmプレート(Falcon, Becton Dickinson)においてヒト胚性腎(HEK)293T(ATCC番号:CRL−11268)細胞を培養した。
【0307】
一過性トランスフェクションのために、細胞を80%の集密度まで増殖させた。1.5mL opti−MEM中50μLのHEK293トランスフェクション試薬と混合した1.5mL Opti−MEMへ等量のIgHと対応するIgL鎖ベクターDNA(各ベクターDNAの12.5μg)を加えた。この混合物を室温で30分間インキュベートして、培養プレートへ均等に分配した。トランスフェクションの3日後に上清を採取し、10% FBSを補充した20mLの新鮮なDMEMに置き換えて、トランスフェクション後6日目に再び採取した。800xgで10分間の遠心分離によって培養上清から細胞残滓を除いて、4℃で保存した。組換えキメラ抗体とヒト化抗体をプロテインGビーズ(GE Healthcare)で精製した。
【0308】
実施例8
EFNAモジュレーターの特性
8(a) 全般的なモジュレーター特性
様々な方法を使用して、上記に説明したように産生した、選択したエフリンA4モジュレーターの結合特性を分析した。具体的には、いくつかのEFNA4抗体について、親和性、動態、ビニング(binning)、並びにカニクイザル及びマウスの相同体(内製)との交差反応性に関する特性をForteBIO(登録商標)によって決定した。ウェスタン反応性も測定して、還元条件下で結合する2つの抗体(SC4.22及びSC4.91)についてエピトープを決定した。加えて、この抗体について、中和する(即ち、受容体リガンド相互作用をブロックする)、内在化する能力を試験して、これらの実施例(例えば、実施例12及び16を参照のこと)に示す手順を使用する in vitro 細胞傷害性アッセイによって、それらの相対的な殺傷のEC50を比較評価(benchmark)した。この特性決定の結果を図面8Aにおいて表形式で示す。
【0309】
このデータに関して言えば、精度を確実にするために3つの様式で親和性を測定した。第一に、ELISAにおいて、抗原の系列希釈液に対してプローブされる一定量の抗体について結合シグナルを測定して、相対的なモジュレーター活性(シアノ結合についてのみデータを示す)を決定した。第二に、次いで、標準抗原濃度系列でのバイオ層干渉測定分析をForteBIO RED(ForteBIO 社)で使用して、選択したモジュレーターの親和性及び運動定数(kon及びkoff)を測定した。最後に、選択したモジュレーターの親和性を表面プラズモン共鳴法(Biacore System, GE Healthcare)によって測定した。標準抗原濃度系列に基づいて、そして1:1ラングミュア結合モデルを使用して、抗原への抗体結合のKと運動定数(kon及びkoff)を決定した。全般に、選択したモジュレーターは、相対的に高い親和性をナノモル濃度範囲で明示した。
【0310】
抗体ビニングに関しては、ForteBIOを製造業者の説明書に従って使用して、同じ又は異なるビン(bins)へ結合する抗体を同定した。簡潔に言えば、抗体(Ab1)を抗マウス捕捉チップ上に捕捉させてから、高濃度の非結合抗体を使用してそのチップをブロックして、ベースライン値を採取した。次いで、単量体の組換えエフリンA4−Hisを特異抗体(Ab1)に捕捉させて、そのチップを、対照としての同一抗体(Ab1)のあるウェルか又は異なる抗体(Ab2)のあるウェルのいずれかへ浸漬した。新しい抗体との追加の結合が観測されたならば、Ab1とAb2は、異なるビンにあるものと判定した。対照のAb1と同様に、さらなる結合が生じなければ、Ab2は同じビンにあると判定された。この方法を拡張して、96ウェルプレートにおいて独自のビンを表す完全列の抗体を使用して、独自抗体の大きなライブラリーについてスクリーニングすることができる。この実験は、スクリーニングされた抗体がEFNA4タンパク質上の少なくとも3種の異なるビン又はエピトープへ結合することを示した。
【0311】
エフリンA4モジュレーターによって認識されるエピトープが連続アミノ酸を含むのか、又は抗原の二次構造によって並列される不連続アミノ酸によって形成されるのかを決定するために、還元条件と非還元条件の下でウェスタンブロットを行った。より具体的には、当該技術分野で周知の標準の電気泳動技術を使用して、両方の状態のエフリンA4抗原を選択したモジュレーターへ曝露した。図面8Aに示すように、ほとんどのエフリンA4モジュレーターは、ジスルフィド結合がインタクトである(NR)抗原とのみ実質的に反応したが、2つのモジュレーターは、非還元抗原と還元抗原(NR/R)の両方と反応した。これらの抗体について、Pepspot(JPT)膜を使用して、ペプチドによる抗体認識の限界を決定した。SC4.22とSC4.91は、配列QRFTPFSLGFE(配列番号164)とRLLRGDAVVE(配列番号165)をそれぞれ認識することがわかった。対象のペプチドへ結合するこれらペプチドの能力のELISAによる再試験により、これらの抗体が実際に上記エピトープに特異的であることを確かめた。
【0312】
最後に、カニクイザルエフリンA4相同体に関する交差反応性について、組換え的に発現された単量体エフリンA4抗原での濃度系列を使用して、ForteBIOにおいて評価した。図面8Aに示すように、選択したモジュレーターは、この相同体と反応した。特に、きわめて似ているカニクイザルエフリンA4とはすべての抗体が交差反応したのに対し、マウスエフリンA4と交差反応性であったのは、SC4.5、SC4.15、SC4.91、及びSC4.105である。表中のNDは、そのデータが「判断不能」であったことを示す。
【0313】
8(b)ヒト化モジュレーターの特性
本実施例において上記に説明した技術を使用して、ヒト化構築体のshSC4.15、hSC4.22、及びhSC4.47について分析して、それらの結合特性を決定した。さらに、ヒト化抗体の結合性を親マウスの抗体と直接比較して、両方の抗体について、ヒト化の方法によって生じた速度定数の微妙な変化を同定した。
【0314】
より具体的には、表面プラズモン共鳴法(SPR)を使用するBiacoreによってマウスのSC4.47の親和性を測定して、図面8Bに示す結果を得た。25、12.5、及び6.25nMの濃度系列(図面8B及び8C中の最上部から最下部への曲線を作成する)に基づいて、そして1:1ラングミュア結合モデルを使用して、抗原への抗体結合のKが1.1nMであると推定した。次いで、ヒト化構築体で行った同様の実験は、ヒト化の方法が親和性に悪影響を及ぼさなかったことを示唆する同様の結果を示した(図面8C)。この点に関して言えば、この測定は、ヒト化構築体が、親マウスの抗体と実質的に同一である、1x10−10未満のKを有することを示した。
【0315】
本実施例において説明した他の技術と共に、これらの測定は、実施例7からのすべてのヒト化エフリンA4エフェクターが望ましい特質を保有することを示した。図面8Dに示すように、SC4.15は、マウスのエフリンA4相同体と強く交差反応して、それによって毒性試験を促進した。すべての抗体のカニクイザル抗原へ反応性は、ELISAによってはヒトEFNAから識別し得なかったので、非常に類似していることが予測される。
【0316】
実施例9
エフリンAリガンドモジュレーターは、細胞表面結合を証明する
上記に説明したようにhEFNA4−Fcに対して産生した抗体を産生するハイブリドーマからの上清について、フローサイトメトリーアッセイで測定するように、細胞表面結合をスクリーニングした。この抗体の結合特性を証明するために、2種の細胞株、JurkatE6細胞とZ138細胞(このいずれも、高レベルの表面エフリンA4を発現することが知られている)を利用した。より具体的には、細胞標識色素のCFSE(簡易同定用)で染色した600万個のJurkat E6細胞と400万個の非標識化Z138細胞を20μg/mlのFcブロッキング試薬(Trueblock,Biolegend 社)とともにインキュベートして混合して、100万個の細胞/mLの最終濃度とした。この細胞混合物の50μLを各ウェル中50μLの抗体含有上清へ加えて、4℃で60分間インキュベートした。この細胞を、2% FBS、2mM EDTA、及び0.05%アジ化ナトリウムを含有するPBS(洗浄緩衝液)で1回洗浄してから、DyLight649へコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(Jackson Immuno Research)のFc領域特異的F(ab)断片で、暗所において4℃で60分間染色した。細胞を洗浄緩衝液で2回洗浄して、2μg/ml DAPIで対比染色した。陰性対照試料は、マウスIgG1アイソタイプ抗体(10μg/ml,Biolegend 社)と、マウスIgGを分泌しないことが知られているハイブリドーマ(H13.2)由来の上清であった。EFNA4特異的であることがELISAによってすでに同定された、10μg/mlの精製抗体(E76.2としても知られるSC4.76.2)(図面9の左側)を使用して、陽性対照試料を調製した。標準条件下に、そしてHTS付属装置を使用して、試料をFACS Canto II(BD Biosciences)で採取した。114個のクローンのうち84個のクローンが、両方の細胞株を陰性対照試料より高く有意に染色することによるフローサイトメトリーによって実証されるような有意な細胞表面結合を示すと判定された。この点に関して、図面9は、50の例示ハイブリドーマ上清の相対的な結合能力を示す。
【0317】
実施例10
選択したEFNA4モジュレーターは、エフリンA4リガンド結合を中和する
ENFA4発現細胞へ結合することが知られた抗体を産生するハイブリドーマ由来の上清(実施例9)について、HEK293Td細胞の表面にあるその受容体(EphA)へ結合する可溶性hEFNA4−Fcの結合をブロックするその能力を試験した。初めに、図面10Aに見られるように、HEK293Td細胞は、陰性対照抗体と比較するときに、EFNA4−Fcへ用量依存的な様式で結合することが示される。この結合の中和を証明するために、60μlの抗EFNA4ハイブリドーマ上清を、洗浄緩衝液に希釈した200ng/ml hEFNA4−Fcとともに4℃で2時間インキュベートした。次いで、この混合物を50,000個のHEK293Td細胞へ加えて、4℃で1時間インキュベートした。細胞を洗浄緩衝液に1回洗浄してから、DyLight649へコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(Jackson Immuno Research)で、暗所において4℃で45分間染色した。次いで、細胞を洗浄緩衝液で2回洗浄して、2μg/mlのDAPIで対比染色した。陰性対照試料は、非染色細胞、非IgG産生ハイブリドーマ(H13.2)由来上清で染色した細胞、及びヒトIgGFcγ1断片で染色した細胞であった。陽性対照試料は、ハイブリドーマ上清の非存在下でのhEFNA4−Fc染色細胞と、非IgG産生ハイブリドーマ上清の存在下でのhEFNA4−Fc染色試料であった(図面10Bの左側)。先に考察したように、FACS Canto IIで試料を測定した。図面10Bによって裏付けられるように、フローサイトメトリーを使用して測定するとき、試験した83個のうち62個のクローンがhEFNA4−Fcのその細胞表面受容体への結合を中和するいくらかの能力を証明した。
【0318】
実施例11
EFNAモジュレーターは、細胞表面EFNA結合を濃度依存的な様式でブロックする
EFNA活性を中和する、本発明のエフリンAリガンドモジュレーターの能力をさらに測定するために、選択したハイブリドーマ由来の抗EFNA4抗体を精製して、PBS緩衝液中の無菌試薬として使用した。初めに、ヒト及びマウスのEFNA4−Fc(組換えマウスエフリンA4Fcキメラ、CF R&D Systems)単独の全用量応答曲線を同時に設定して、EFNA4−FcのHEK293Td細胞への用量制限的な結合を証明した(図面11A)。この対照を確定したならば、3種の例示ハイブリドーマ(即ち、SC4.15.3、SC4.47.3、及びSC4.76.2)より入手した抗EFNA4抗体の系列希釈液を、洗浄緩衝液中のこの限界濃度(0.1μg/ml及び1.0μg/ml)のhEFNA4−Fc及びmEFNA4−Fcのそれぞれと4℃で1時間インキュベートした。次いで、得られた試薬混合物を50,000個のHEK293Td細胞へ移して、4℃で1時間インキュベートした。細胞を洗浄緩衝液に1回洗浄してから、DyLight649へコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(Jackson Immuno Research)のFc領域特異的F(ab)断片で、暗所において4℃で45分間染色した。細胞を洗浄緩衝液で2回洗浄して、2μg/ml DAPIで対比染色した。陰性対照試料は、非染色と、ヒトIgGFcγ1断片で染色した細胞であった。上記ですでに述べたように、試料をFACS Canto IIで採取した。図面11Bは、ヒト及びマウスのEFNA4−Fcの細胞への結合を相対的に高い濃度で一部阻害する、mAb SC4.15.3の活性を示す。図面11Cは、細胞へ結合するhEFNA4−Fcの能力をほぼ完全にブロックするが、mEFNA4−Fcの能力はブロックしない、mAb SC4.47.3の活性を例証する。同様に、図面11Dは、細胞へ結合するhEFNA4−Fcの能力を実質的に阻害する一方で、その細胞へ結合するmEFNA4−Fcの能力に劇的に影響を及ぼさない、エフリンAリガンドモジュレーターのmAb SC4.76.2の能力を証明する。これらの結果は、エフリンAリガンドの細胞表面受容体への結合を阻害することにより、付随した腫瘍形成活性を阻害する、本発明の選択したモジュレーターの能力を強く示唆する。
【0319】
実施例12
EFNAモジュレーターは、EFNAのEphA受容体への結合を濃度依存的な様式でブロックする
上記に考察したように、EphA2は、EFNA4について知られた結合相手である。この既知の関係を利用するために、標準的な技術を使用してEphA2の細胞外ドメインをヒトIgGのFc部分へ融合させ、HEK293Td細胞において一過的に発現させて、培養物の上清より、タンパク質A親和性クロマトグラフィーを使用して精製した。図面12Aに見られるように、EphA2−Fcホモ二量体は、Jurkat細胞(EFNAを発現することが知られている)へ用量依存的な形式で結合するが、ヒトIgGのFc部分単独では、結合を全く示さない。このEphA2−FcのJurkat細胞への結合は、本発明のエフリンAモジュレーターを使用して、そして特に、エフリンA4に対するモノクローナル抗体の使用を介して阻害することができる。このために、ウェルあたり50,000個のJurkat細胞を、洗浄緩衝液中10μg/mlの4種の選択した抗ENFA4抗体(即ち、SC4.22、SC4.31.3、SC4.47.3、及びSC4.73、いずれも上記に記載のように調製した)とともに4℃で1時間インキュベートした。マウスIgGと無抗体(データ示さず)を陰性対照として役立てる。洗浄後、洗浄緩衝液中のこの細胞へEphA2−Fcの系列希釈液を4℃で1時間加えて、図面12Bにグラフ表示される結果を得た。図面12Bの検討により、モジュレーターのSC4.31.3とSC4.47.3がEphA2−FcのEFNA4への結合を実質的に阻害するのに対し、モジュレーターのSC4.22とSC4.73は、相対的により少ない阻害を示すことが示される。この受容体との相互作用を阻害する開示モジュレーターの能力をさらに例証するために、最初にJurkat細胞を抗体の系列希釈液とともにインキュベートして、10μg/ml EphA2−Fcとのインキュベーションを続けた。次いで、この細胞を洗浄緩衝液で2回洗浄し、2μg/ml DAPIで対比染色して、HTS付属装置を使用する標準条件下にFACS Canto II(BD Biosciences)で分析して、図面12Cに表示するデータを得た。図面12Bと同様に、図面12Cは、モジュレーターのmAb SC4.47.3が相対的に強力な阻害剤であって、Jurkat細胞上で発現されるEFNA4へのEphA2−Fcの結合を効率的にブロックすることを証明する。比較すると、他のモジュレーターは、やや小さい活性を示して、SC4.31.3は、中等度の阻害をより高い濃度でもたらす。
【0320】
上記の知見を拡張するために、追加のEFNA4モジュレーターとEphA受容体の間の相互作用を探究した。レトロウイルス形質導入の手段によりEFNA4を過剰発現するHEK293T細胞(HEK293T.hEFNA4細胞として言及される)(図面12D)又はレトロウイルス形質導入の手段によりEFNA1を過剰発現するHEK293T細胞(図面12E)を使用すること以外は、上記に記載の実験と同様の実験を行った。加えて、このアッセイは、単一のEphAx−Fc濃度(10μg/ml)で行った。このデータは、SC4.2、SC4.31、及びSC4.47が、試験したすべてのEphA受容体結合相手のエフリンA4リガンド(即ち、EphA2、EphA3、EphA4、EphA6、EphA7、EphA8、及びEphA10)への結合をブロックすることができることを示す。加えて、EFNA1に対する免疫化活動(campaign)(実施例6による)において作製したEFNA4モジュレーターのSC9.65が、EphA1、EphA2、EphA4、及びEphA7のエフリンA1リガンドへの結合に干渉する能力を有することが確認された。これらのデータは、本明細書の他の実施例の結果と組み合わせると、様々な受容体の結合に拮抗するこのモジュレーターの能力には、本発明の観測された治療効果をもたらすのに意義深い可能性があることを示唆する。
【0321】
実施例13
ヒトエフリンAに対するモジュレーターは、マウス相同分子種と交差反応する
ヒト及びマウスのエフリンA4リガンドの細胞外ドメインがタンパク質レベルで80%の配列同一性を共有するという事実に照らして、ヒトEFNA4に対する開示モジュレーターについて、それらがマウス相同体と会合するかどうかを見るために試験した。より具体的には、抗体サンドイッチELISAを使用して、EFNA4特異的モノクローナル抗体のそのマウス相同体との交差反応性のレベルを定量した。高タンパク質結合性96ウェルアッセイプレートをIgG分子のFc部分に特異的なロバ抗ヒトIgGポリクローナル抗体の0.5μg/mlで被覆した。このプレートのタンパク質コーティングは、50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)を16時間のインキュベーションの間に4℃で使用して、ウェルあたり100μlの容量で行った。ヒトIgG分子のFcγ1部分へ融合したヒト及びマウスのEFNA4分子(EFNA4−Fc)を2%(w/v)ウシ血清アルブミン含有PBS緩衝液(PBSA)で系列希釈した。この被覆プレートを0.05% Tween20含有PBS緩衝液(PBST)中で洗浄後、PBSAで希釈されたマウス及びヒトEFNA4−Fcの100μl/ウェルを3時間の間周囲温度でウェルへ加えた。次いで、このプレートをPBSTで再び洗浄して、このプレートへ10%使用済ハイブリドーマ上清含有PBSA又は1μg/mlの精製モノクローナル抗体(陽性対照として)の100μl/ウェルを周囲温度で1時間の間に加えた。このプレートをPBSTで洗浄後、マウスIgGのFc部分に特異的で、西洋ワサビペルオキシダーゼへコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgGポリクローナル抗体(Jackson Immuno Research)の5000倍希釈液を含有する100μl/ウェルのPBSAをこのプレートへ周囲温度で30分間加えた。このプレートをPBSTで十分に洗浄した後で、このウェルへウェルあたり100μlのTMB基質(Thermo Fisher)を15分間加えた。100μl/ウェルの2M硫酸を添加することによって、この酵素反応を止めた。この比色分析法の吸光度は、Victor プレートリーダー(パーキンエルマー)を使用して、450nmで測定した。データは、2つの反復値を使用して、吸光度読取り値の平均+標準偏差として提示する。図面13Aは、hEFNA4を認識するがmEFNA4は認識しない、例示のモノクローナル抗体SC4.31.3を示す。逆に、図面13Bは、ヒトとマウスの両方のEFNA4を認識する、例示のモノクローナル抗体SC4.91.4の結合を示す。
【0322】
上記の結果を確実にするために、ヒト化エフリンA4モジュレーター、hSC4.15を使用するアッセイを行った。より具体的には、用量設定された量のヒト及びマウスのエフリンA4−Hisを高タンパク質結合性96ウェルプレートにPBS中4℃で16時間被覆した。このプレートをPBSAにおいて周囲温度で2時間ブロックした後で、PBSA中0.5μg/mlのhSC4.15モジュレーターを2時間加えた。ELISAは、西洋ワサビペルオキシダーゼへコンジュゲートしたロバ抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Jackson Immuno Research)を使用して、上記に記載のように展開した。図面13Cは、hSC4.15モジュレーターがヒトとマウスの両方のエフリンA4リガンドを十分に等しく認識することを示し、開示されたヒト化モジュレーターが本明細書の教示と完全に適合可能であることを示唆する。
【0323】
実施例14
例示の腫瘍試料、腫瘍細胞亜集団、及び造血系細胞におけるエフリンAリガンドの発現
先の実施例において、上昇した遺伝子発現レベルを報告してEFNA4に対する抗体を作製した後で、選択した細胞集団における対応するEFNA4タンパク質の発現についての証拠を探求した。この点に関して言えば、11の腫瘍型からの432の組織溶解物、又はそのそれぞれの正常隣接組織の4つの希釈液を含んでなる逆相癌タンパク質溶解物アレイ(ProteoScan Arrays;OriGene Technologies)を、外因性プロモーターによって推進されるTP53過剰発現の有り無しのHEK293細胞からなる対照と共に提供した。EFNA4タンパク質を認識する本発明のマウスモノクローナルEFNA4抗体(例えば、SC4.47.3としても知られるクローンE47.3)を使用して、ウェスタンブロットによって、このアレイ上の溶解物中のEFNA4タンパク質発現を検出した。比色検出試薬とプロトコールは、ProteoScan Arrays の製造業者によって提供されて、製作したアレイ上のスポットは、BZScan2 Java(登録商標) Software(INSERM-TAGC)を使用する平底型スキャナーを使用してデジタル画像へ変換して、スポット強度を定量した。
【0324】
このようなアッセイの選択した結果を図面14に示し、その結果は、EFNA4タンパク質の発現が結直腸腫瘍試料において上方調節されていることを示す。より具体的には、図面14Aは、EFNA4タンパク質発現が結直腸腫瘍標本の亜集合において有意に上昇しているようである(特に、ステージIV疾患の患者において、正常隣接組織、又はより初期の疾患より入手した標本由来の腫瘍組織と比較した場合)ことを示す。上記の記載のようにデータを作成して、スポットあたりの平均ピクセル強度(スポット強度)として表した。各試料中の水平の黒いバーは、それぞれのカテゴリーの標本についての平均を表す。
【0325】
ある種の結直腸腫瘍の全細胞溶解物においてEFNA4タンパク質が上方調節されていることを確かめた後で、腫瘍始原細胞でも同じ標的が発現されていることを確定するための試験を実施した。より具体的には、EFNA4タンパク質の発現が腫瘍始原細胞の細胞表面でも検出され得るかどうかを決定するために、フローサイトメトリー分析用に腫瘍を上記に記載のように解離させた。腫瘍試料(例、実施例2の結直腸細胞株CR33)を単一細胞懸濁液へ解離させた後で、それらを37℃で24時間インキュベートして、抗原の再発現(コラゲナーゼ/ヒアルロニダーゼに対するEFNA4抗原の酵素感受性による)を促進してから、EFNA4を認識することができるフィコエリトリン(PE)−コンジュゲート化モノクローナル抗体で染色した。次いで、この細胞を、HTS付属装置を使用する標準条件下にFACS Canto II(BD Biosciences)で、先の実施例のように分析した。そのような実験を実施しているときに、EFNA4発現がTIC細胞亜集団(TIC明示細胞表面マーカー(例、46、324、66)を認識する抗体での細胞の同時染色によって明確化される)上で、NTG細胞上より顕著に高いことが観測された。SCRx−CR33結直腸NTX腫瘍細胞とEFNA4モジュレーターのSC4.47.3を使用する実験からの代表的な結果は、EFNA4の発現がTIC上でNTG細胞上より2倍より多く高かったことを示す(図面14B)。
【0326】
EFNA4がTIC細胞上で相対的に高く発現されていることをさらに確かめるために、LU86細胞とLU64細胞を in vitro で10日間培養して、本明細書において説明したようなPEコンジュゲート化SC4.47抗体を使用するフローサイトメトリーによって発現を測定した。生じるコロニーを採取して、上記に記載のように染色した。図面14Dに例証されるように、LU86細胞のTIC集団(黒色の実線)は、EFNA4をアイソタイプ対照(陰付きの灰色)や同じ腫瘍系由来のNTG集団(黒色の破線)より十分高く発現する。追加的に言えば、in vivo 培養されたLU86細胞は、EFNA4抗体で殺傷することができる(下記の実施例16に示すように)。逆に、LU64細胞は、上昇レベルのEFNA4を発現することが見出せず(図面14D)、後に抗EFNA抗体で殺傷されなかった。
【0327】
本開示より前には、固形腫瘍の標本においてEFNA4タンパク質発現が関連付けられたことはないと考えられるが、このタンパク質は、B細胞上では相対的に低いレベルで発現されて、慢性リンパ球性白血病(CLL)患者由来のB細胞では上昇していることが報告されている。正常な末梢血単核細胞(PBMC)上でのEFNA4タンパク質の発現を確かめるために、本実施例において先に記載したようなアッセイを行って、図面14Cに示すデータを得た。図面14Cに提示されるプロットの検討は、正常ドナー由来のPBMCでEFNA4発現について測定したとき、CD19B細胞だけが弱陽性であることを示し、EFNA4が発現される場所に関する文献の報告が確認された。
【0328】
上記のデータは、EFNA4の過剰発現が結直腸癌中のTIC及び/又はTPCに関連していて、増殖及び/又は生存に関与している可能性があるという上記実施例での観測事実を裏付ける。さらにこのデータは、EFNA4が大多数の正常PBMC上では発現されないことと、正常B細胞上での発現が最小であることを示す。a)EFNA4遺伝子発現が結直腸癌中のTPC細胞亜集団と膵臓腫瘍中の腫瘍形成細胞亜集団に関連していること;b)そのEFNA4タンパク質発現がTIC細胞亜集団上でより高いこと;c)EFNA4タンパク質発現が後期結直腸癌由来の腫瘍標本全体で上昇していること;及びd)TICがより頻繁であるのは後期腫瘍においてであること、という全般的な観測事実を示す上述の実施例に照らせば、EFNA4は、腫瘍増殖、療法への抵抗性、及び腫瘍再発の根底にあるそれらの細胞に関連しているように見えて、上記に言及した腫瘍のTPC及び/又はTICを支援するのにEFNA4が不可欠な役割を担う可能性があるとする仮説を支持するものである。
【0329】
実施例15
エフリンAリガンドモジュレーターは、K562細胞によって内在化される
先の実施例において確定されたエフリンAリガンドの発現プロフィールを前提として、本発明のモジュレーターが細胞表面抗原への結合時に内在化されるかどうかを見るためのアッセイを実施した。この点に関して言えば、実施例においてEFNA4−Fcに対して産生した抗体を産生するハイブリドーマ由来の上清について、(EFNA4を細胞表面上で低いレベルで発現する)K562細胞に内在化されるその能力をスクリーニングした。10個/ml(単一細胞懸濁液)の出発濃度でのK562細胞を Human TruStain(BioLegend 社)で、室温で10分間ブロックしてから、ウェルあたり5x10個の細胞へ希釈した。次いで、同一2検体の試料を、最終容量50μlの抗EFNA抗体含有上清で、氷上にて30分間染色した。次いで、細胞をFACS染色培地(FSM;2%胎仔ウシ血清/ハンクス緩衝化生理食塩水溶液/25mM HEPES[pH7.4])で洗浄して、非結合抗体を除去した。これに、ロバ抗マウスAlexa647(Life Technologies)での氷上で30分間の第二染色を続けた。試料を再び洗浄して未結合抗体を除去してから、内在化培地(2%胎仔ウシ血清/イスコブ(Iscove's)改良ダルベッコ培地)に再懸濁させた。内在化を可能にするために、試料を5% COにおいて37℃で(又は、対照では4℃で)1時間インキュベートした。試料を氷へ移して過剰の氷冷FSMを加えることによって、内在化を停止させた。内在化せずに細胞表面に残ったあらゆる抗体を除去するために、試料を低pHのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS[pH2.0])で、氷上で10分間処理した。この「酸ストリップ」手順に続いて、試料をFSMで十分洗浄し、2μg/mlのDAPIを含有する150μlのFSMに再懸濁させて、フローサイトメトリー(HTS付属装置を使用する標準条件下にFACS Canto II(BD Biosciences)を再び使用する)によって分析した。バックグラウンドを超えて検出されたどのシグナルも、抗体内在化[酸ストリップ法の間に蛍光コンジュゲートを細胞表面からの除去から護るプロセス]より生じるものである。すべてのインキュベーションは、他に述べない限り、FSMにおいて実施した。
【0330】
上記に記載の酸ストリッププロトコールを使用する、159EFNA4抗体含有ハイブリドーマ上清クローンのスクリーニングは、多くの上清が(IgG陰性対照抗体に対して)蛍光のポジティブシフトを表示することを示した(データ示さず)。例えば、例示のSC4.5、SC4.22、及びSC4.73クローンは、これらクローン由来の上清がAlexa647二次抗体を内在化してこれを酸ストリッピングの間に護ることができる限りにおいて、内在化を証明した(図面15A)。IgG対照と比較すると、EFNA4抗体含有上清のほぼ15%が内在化を様々な度合いで引き起こして、上位19検体では、デルタ平均蛍光強度(4℃に対して37℃でのMFI)を150より高く示した(図面15B)。このデータは、ヒトEFNA4 ECDに対して産生したモジュレーターの亜集合が細胞上に提示されるままの抗原へ結合して内在化することができることを証明した。このような結果は、本発明のモジュレーターの標的としてのエフリンAリガンドの潜在的な治療価値を細胞傷害性ペイロードが有っても無くても強調するものである。
【0331】
選択した精製EFNA4モジュレーターを10μg/mlの濃度で使用して、HEK293T細胞(図面15C)とHEK293T.hEFNA4細胞(図面15D)を標的細胞として使用して、このアッセイを繰り返した。親のHEK293Tは、その細胞表面に低いレベルのエフリンA4リガンドを発現する。上記に記載のプロトコールに従うと、データは、試験したすべてのエフリンA4モジュレーターが、細胞の表面で発現されるエフリンA4リガンドへの結合時に内在化されることを証明する。それぞれの試料について記録した蛍光強度(MFI)を、8種の異なる既知量の被包化フルオロフォアを含有する標準ビーズ(Becton Dickenson Spherotech 8色虹ビーズ)に対して比較した(データ示さず)。これにより、MFI値の線形値への変換と細胞あたりの相対的な受容体数の計算が可能になった。
【0332】
実施例16
標的化部分としてのEFNA4モジュレーター
抗体へ安定的に連結した細胞傷害薬の標的化は、固形腫瘍のある患者へ大きな治療利益を与える可能性がある、強化された抗体アプローチを代表する。上記に記載のEFNA4特異抗体が細胞傷害剤の生細胞への送達に媒介することができるかどうかを判定するために、リボソーム不活性化タンパク質、サポリン(Advanced Targeting Systems)へコンジュゲートしたストレプトアビジンをビオチニル化EFNA4抗体へ結合させる in vitro 細胞殺傷アッセイを実施して、これらのサポリン複合体が内在化して細胞を殺傷する能力を、細胞生存度を測定することによって72時間後に測定した。
【0333】
具体的には、ウェルあたり10個のZ138細胞を96ウェルプレートのウェルに播いた。上記に記載の抗EFNA4抗体を上清より精製し、ビオチニル化してから、20μg/mLへ希釈した。Z138細胞株(ATCC CRL−3001)は、マントル細胞リンパ腫の患者より導かれて、適度な量のEFNA4を発現する。それぞれの抗体のアリコートをストレプトアビジンZAP(Advanced Targeting Systems)とそれぞれ1:1で混合し、5秒間激しく振り混ぜてから、室温で1時間インキュベートした。次いで、抗体−サポリン複合体の2つの更なる10倍系列希釈液を作製してそれぞれ50μLの各混合物として、Z138細胞含有ウェルへ加えた。次いで、この細胞/抗体−サポリン混合物を37℃/5% COで24時間インキュベートした。このインキュベーションに続いて、細胞を丸底96ウェルプレートにおいてスピンダウンさせ、上清を除去して、100μLの新鮮な培養基を各ウェルへ加えた。次いで、この細胞をさらに72時間インキュベートしてから、CellTiter-Glo(プロメガ社)を製造業者のプロトコールに従って使用して、生存細胞数を計数した。
【0334】
このプロトコールを使用すると、ビオチニル化したアイソタイプ対照抗体が細胞を殺傷することができないのに対し、先の実施例に記載されたように内在化することができるいくつかの抗体は、in vitro での細胞殺傷に媒介することもできた(データ示さず)。即ち、これら内在化モジュレーターのいくつかは、細胞死をもたらすサポリン毒素内在化を媒介することができた。図面16Aは、例示の内在化モジュレーターSC4.5.3の細胞殺傷能力を例証するが、ここでは、この曲線の下方の傾きが対照と比較される濃度依存的な様式での細胞死を表す。これらのデータは、エフリンAリガンドを発現する腫瘍形成細胞における細胞傷害性ペイロードの選択的内在化のためのベクターとして作用する場合の開示モジュレーターの有効性を明らかに証明する。
【0335】
これらの結果を確証して、EFNA4エフェクターが毒素内在化と原発性ヒト腫瘍細胞の細胞殺傷に媒介し得るのかどうかを判定するために、マウスの系統枯渇(lineage-depleted)NTX細胞(即ち、免疫不全マウス中の低継代異種移植片として増殖させたヒト腫瘍細胞)をプレート培養して、その後抗EFNA4抗体とFab−ZAPへ曝露した。
【0336】
具体的には、肺及び皮膚の腫瘍標本を代表するNTX腫瘍を単一細胞懸濁液へ解離させて、当該技術分野で公知であるような増殖因子補充無血清培地において、BD PrimariaTMプレート(BD Biosciences)に播いた。37℃/5% CO/5% Oで3〜5日の培養後、細胞を対照(IgG1又はIgG2b)又はマウスのEFNA4モジュレーター(1nMでのSC4.5、SC4.22、SC4.47、又はSC4.91)、及びFab−ZAP(40nMで)と接触させた。次いで、モジュレーター媒介性サポリン細胞傷害性について、CellTiter Glo を5〜7日後に使用して残存細胞数を定量することによって評価した。図面16Bに見られるように、G2b及びIgG1アイソタイプ対照抗体が処理後の生細胞の数に影響を及ぼさなかったのに対し、EFNA4抗体への曝露は、LU86細胞数の低下をもたらした。図面16Cでは、アイソタイプ対照とSC4.22が無効であったのに対し、SC4.5、SC4.47、SC4.91抗体への曝露は、SK19細胞数の低下をもたらした。このデータは、本明細書に記載の例示抗体がEFNA4に特異的で、その細胞表面上のEFNA4抗原へ結合して細胞傷害性ペイロードの送達を促進して細胞死をもたらすことを証明するだけでなく、上記データは、多数の抗EFNA4抗体が多数のNTX腫瘍細胞の殺傷を媒介し得ることも証明した。
【0337】
上述した殺傷アッセイの変法において、EFNAモジュレーターを介した細胞傷害性ペイロードの送達を、追加の抗体について、そして追加の細胞において証明した。以下の細胞種の2000個の細胞/ウェルを抗体と毒素の添加の1日前に96ウェル組織培養プレート中のそれぞれの培地へ播いた:HEK293T細胞(図面16C)、HEK293T.hEFNA4細胞(図面16D)。その培養物へ様々な濃度での精製(「裸の」)マウスモノクローナル抗体と、サポリン(Advanced Targeting Systems,#IT−48)へ共有結合した一定濃度(10nM)の抗マウスIgG Fab断片を72時間加えた。生存細胞数を上記に記載のように計数した。サポリン−Fab断片とともに細胞を含有する培養物を使用する未処理(raw)発光カウントを100%基準値として設定して、他のすべてのカウントをそれに従って計算した(「正規化RLU」として言及する)。
【0338】
このアッセイを使用して、我々は、アイソタイプ対照抗体以外の試験したすべてのEFNA抗体が標的細胞を殺傷し得ることを証明することができる。さらにこのアッセイは、内在化が生じるのは、EFNA4抗体の細胞表面への結合の故のみであって、追加の架橋形成の必要はないことを証明する。最後に、このデータは、その表面で十分な数のEFNAを発現する細胞だけがEFNAモジュレーターによって殺傷されることを証明する。親のHEK293T細胞がその細胞表面に少数のEFNAを発現するのに対し、HEK293T.hEFNA4細胞は、このリガンドを強く発現する(先の実施例からの図面15C及び15Dを参照のこと)。下記の表5は、試験したすべての抗体/標的細胞の組合せについての50%有効濃度(通常「EC50」と呼ばれる)を収載する。上述の細胞株に加えて、ヒト腺癌由来の細胞株であるPC3細胞(ATCC CRL−1435)を標的細胞として使用した。
【0339】
【表6】
【0340】
in vitro 殺傷アッセイの別の変法では、ヒト化EFNAモジュレーターについて、細胞傷害性ペイロードを内在化して送達するその能力を試験した。このアッセイは、わずか500個の細胞/ウェルをプレート培養して、サポリン(Advanced Targeting Systems, #IT−51)へ共有結合した抗ヒトIgG Fab断片をこの培養物へ加えること以外は、上記に記載の通りに行った。図面16Eは、実施例7に記載のヒト化(図面16E中のHz)EFNAモジュレーターが、標的細胞の表面上で発現されるエフリンA4リガンドへ結合して、結合した抗体と細胞傷害性ペイロードと一緒にEFNAの内在化を引き起こすことができることを例証する。
【0341】
in vitro 殺傷アッセイのなお別の変法では、マウスEFNAとヒトEFNAへ等しく十分に結合することが示されたヒト化EFNAモジュレーター、hSC4.15(図面13Cを参照のこと)について、ヒト又はマウスのEFNAを過剰発現するHEK293T細胞に内在化して細胞傷害性ペイロードを送達するその能力を試験した。直接的な比較可能性を確実にするために、レンチウイルスで形質導入した細胞をhSC4.15で染色して、ヒト又はマウスのいずれかのエフリンA4の適度な発現についてのFACSによって選別した(データ示さず)。殺傷アッセイは、上記の記載通りに行った。図面16Fは、マウス又はヒトのEFNAを等しく十分に発現する細胞をヒト化SC4.15モジュレーターが殺傷することを例証する。
【0342】
実施例17
EFNAモジュレーターは、分泌されたエフリンAリガンドを検出する
上記でやや詳しく考察したように、EFNA4は、細胞膜と会合したGPI連結分子として、又は分泌された末端切断(truncated)リガンド若しくはアイソフォームとして存在することができる。これらの分泌された化合物の、体液又は細胞培養基のような生体材料中の検出は、診断目的に、又は患者管理における補助手段として有用であり得る(バイオマーカーとしての有用性)。例えば、その分泌されたEFNA4は、B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)患者において濃度が上昇して見られる場合があることが示唆されてきた(Alonso-C LM et al., 2009, Leukemia Research 33: 395-406)。本発明のそのような好ましい側面を証明するために、精製EFNA4の非重複エピトープを認識する開示モジュレーターを使用して、選択した腫瘍形成性の試料に分泌されたEFNAリガンドを概して検出して定量した。本発明のこの後者の特徴に関して、EFNAモジュレーターを使用して、ヒト血清(データ示さず)とB−CLL患者より入手したヒト血漿、及びヒト腫瘍異種移植体(例、上記の実施例1に記載のような)を担うマウスの血清からの分泌エフリンAリガンドを検出して定量した。いずれの場合も、このモジュレーターは、すぐ下記に記載のようなリガンドレベルを有効に測定することができた。
【0343】
可溶性ヒトEFNA4を検出するために、抗体SC4.91を50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.6)中5μg/mlで高タンパク質結合マイクロタイタープレート(Greiner BioOne Microlon プレート)へ4℃で一晩のインキュベーションの間に吸着させた。0.05%(v/v)Tween20を含有するリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(PBST)中でこのプレートを洗浄後、2%(w/v)ウシ血清アルブミン含有PBS(PBSA)においてこのプレートを周囲温度で2時間ブロックした。CHO−S細胞中で一過的に発現されて、ニッケル(Nickel)NTA樹脂とゲル濾過を連続的に使用して精製した、精製エフリンA4−HisをPBSAに系列希釈して、このプレートへ2時間加えた。PBSTで洗浄後、このプレートへビオチニル化抗体のSC4.47をPBSA中1μg/mlで1時間加えた。次いで、このプレートをPBSTで洗浄してから、ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート(例、Jackson Immuno Research)をPBSA中5000倍希釈液で30分間加えた。次いで、この処理済のプレートをPBSTにおいて再び洗浄して、TMB基質溶液(例、Thermo Fisher)を30分間加えた。等量の2M硫酸を加えることによってこの発色反応を止めた後で、450nmの吸光度読取りを標準プレートリーダーで使用して、このプレートを読み取った。この実験の結果を図面17A〜Cに示す。
【0344】
すぐ上記に記載の技術を使用して、可溶性エフリンA4−Hisの濃度を吸光度値に対してプロットして、図面17Aに示す曲線を得た。より具体的には、この増幅曲線は、0〜40pg/mlの可溶性EFNA4濃度での吸光度測定値の結果を示し、一方、差し込み図は、0〜1,000pg/mlの濃度での同じ曲線を示す。当業者は、図面17Aに示す標準曲線を使用して、生体試料中のEFNA4濃度の測定のためにきわめて高感度のアッセイを提供することができることを理解されよう。
【0345】
上述の測定値を利用して、そして非線形回帰(Prism 5,Graphpad Software)を使用して、未知試料中のエフリンA4の濃度を計算した。この点に関しては、4名の健常成人、B細胞慢性リンパ球性白血病(B−CLL)と診断された4名の患者、及び多発性骨髄腫(MM)と診断された4名の患者の血漿試料について、その分泌されたエフリンA4の濃度を分析した。得られたデータは、hEFNA4分析物がCLL患者において、健常成人や他の選択したB細胞由来腫瘍におけるより有意に高い可能性があることを示唆する(図面17B)。さらに、すでに示唆して、図面17Cに示されるように、分泌されるhENFA4は、ヒト結直腸癌異種移植体を収容するマウスにおいても検出可能である。具体的には、図面17Cにおいて、各点は、異なるマウスより入手した血清中の分泌hEFNA4レベルを表している。逆に、非異種移植マウス中の分泌hEFNA4の血清レベルは、本質的に検出不能であった(データ示さず)。なおより驚くべきことに、腫瘍量をhEFNA4の血清試料中の濃度に対してプロットすると、有意な相関性が観測されて、この分泌された分析物がある種のヒト固形腫瘍の腫瘍増殖を in vivo でモニターするのに特に有用であり得ることを示唆した。より一般的には、これらの結果は、治療と診断の両方の状況における本発明の応用可能性について強く示唆するものである。
【0346】
上記に記載の方法を使用して、血液バンクより入手した23名の正常ヒトドナー由来の血漿試料を使用して、この分析物の健常成人における濃度範囲を決定した。図面17Dに示すように、EFNA4の平均濃度:332pg/ml(標準偏差:6.2pg/ml)を見出した。このことは、EFNAがごく低くて厳しく調節された濃度で分泌又は発散されることを示唆し、EFNAをEFNA関連障害の疾患進行をモニターするか又は診断するのに理想的なバイオマーカー又は診断マーカーとする。
【0347】
上記の可能性をさらに探究するために、17名の結直腸癌患者由来の血清試料と非小細胞肺癌患者由来の10試料を市販品より入手し、上記に記載の方法を使用して、健常成人由来の12試料と比較してEFNA4濃縮を試験した。図面17Eに示すように、結直腸癌患者と非小細胞肺癌患者は共に、その血液中に有意に上昇した循環EFNA4レベルを有した。独立(unpaired)t検定を使用すると、健常成人と結直腸癌患者の間の比較は0.0002のp値に達して、健常成人と非小細胞肺癌患者の間の比較は0.01のp値に達した。このデータは、分泌又は発散されたEFNA4が固形腫瘍のある患者において上昇していることを証明し、開示モジュレーターを分析検査又は臨床診断に使用することの価値を例証する。
【0348】
実施例18
EFNA4モジュレーターは、関連するEFNAリガンドを発現する細胞に標的指向することができる
EFNA4モジュレーターのリガンド特異性について関連するEFNAリガンドに対して試験して、交差反応性の度合いを評価した。1例として、SC4.2.1とSC9.65について、EFNA4(図面17A)、EFNA3(図面17B)、及びEFNA1(図面17C)を過剰発現しているHEK293T細胞を使用する in vitro 殺傷アッセイで試験した。モジュレーターのSC9.65は、マウスをEFNA1免疫原で免疫化することによって産生した(実施例6による)ことに留意されたい。この殺傷アッセイは、実施例16に記載の通りに行った。図面17は、SC4.2.1がEFNA4発現細胞に加えてEFNA3発現細胞も殺傷することができることと、SC9.65がEFNA1発現細胞とEFNA4発現細胞を殺傷することができることを証明する。これらのデータは、特定のEFNAファミリーメンバーに対して産生した選択モジュレーターが他のファミリーメンバーへ十分によく結合し、内在化を引き起こして、細胞傷害性ペイロードをリガンド発現細胞へ送達することができることを例証する。この発見は、EFNAファミリーメンバー間の相同性の低い度合い(ヒトEFNA1、2、3、及び4の間でほぼ34〜45%のアミノ酸配列同一性)からすればやや予測外であって、本明細書に記載のように、診断又は治療の目的のために汎EFNAモジュレーターを産生することが可能であることを例示する。
【0349】
実施例19
EFNAリガンドは、多数のEphA受容体と選択的に相互作用する
上記に考察したように、エフリンAリガンドは、数多くのEphA受容体へ結合することが知られている。どのEphA受容体がEFNA4と相互作用するポテンシャルを有するかを探究するために、実施例9の記載に類似したフローサイトメトリー結合アッセイを開発した。より具体的には、ヒトIgG1 Fc融合構築体として発現される可溶性EphA受容体を、ウェルあたり50,000個のHEK293T細胞(図面19A)、又はレトロウイルス形質導入の手段によってEFNA4を過剰発現しているHEK293T細胞(HEK293T.hEFNA4細胞と称する)(図面19B)へ染色緩衝液において4℃で1時間加えた。洗浄後、Dylight649へコンジュゲートした抗ヒトIgGポリクローナル二次抗体(Jackson Immuno Research)を1時間加えた。2回洗浄後、2μg/ml DAPIを含有する染色緩衝液に試料を再懸濁させて、HTS付属装置を使用する標準条件下にFACS Canto II(BD Biosciences)で分析した。図面19A及び19Bは、EphA1を除いて、EphA2、EphA3、EphA4、EphA6、EphA7、及びEphA10がエフリンA4リガンドへ結合することを証明する。このことはまた、本発明のモジュレーターに固有の作用の利点と潜在的に多面的な要素を指摘する。
【0350】
実施例20
EFNA4は、EphB2受容体へ結合するが、EphB3及びEphB4受容体へ結合しない
実施例20に示された知見を拡げて、種々のEphB受容体へ結合するエフリンA4リガンドの能力を探究した。EFNA4は、当初、上記の実施例2〜4で証明したように、CSC関連標的として同定された。正常なマウス結腸陰窩の組織階層構造において、EphB2及びEphB3受容体は、結腸陰窩底部に存在する細胞によって高度に発現されて陰窩の上に位置する細胞によっては発現されないので、EphB発現とEphB受容体を介した前向き又は逆向きのシグナル伝達が組織構築と個々の細胞運命の決定に重要であることを示唆している(Batlle et al.; 2002 PMID: 12408869)。より最近になって、結直腸癌細胞によるEphB2発現は、腫瘍の始動及び長期増殖の能力に関連付けられて、EphB2が結腸の癌幹細胞の表現型マーカーとして役立ち得ることが示唆された(Merlos-Suarez et al., 2011 PMID: 21419747)。従って、差示的に発現されるEphB受容体のいずれかへ結合するエフリンA4リガンドの能力は、結直腸癌幹細胞にとって生物学的に重要である可能性がある。
【0351】
当該技術分野で認められた技術を使用して、ヒトIgG1Fc融合構築体として発現される可溶性EphB受容体、並びにEphA1−Fc(EFNA4へ結合しない)及びEphA2−Fc(EFANA4リガンドへ強く結合する)をウェルあたり50,000個のHEK293T細胞(図面20A)又はHEK293T.hEFNA4細胞(図面20B)へ染色緩衝液において4℃で1時間加えた。洗浄後、Dylight649へコンジュゲートした抗ヒトIgGポリクローナル二次抗体(Jackson Immuno Research)を1時間加えた。2回洗浄後、2μg/ml DAPIを含有する染色緩衝液に試料を再懸濁させて、HTS付属装置を使用する標準条件下にFACS Canto II(BD Biosciences)で分析した。図面20A及び20Bは、EphB3やEphB4でなく、EphB2がEFNA4リガンドへ結合することを証明して、開示モジュレーターによって有利に影響を及ぼすことが可能である、治療経路の潜在的な多様性を再び強調する。
【0352】
当業者は、本発明が、その精神又は主要属性より逸脱することなく他の特定の形態で具現化し得ることをさらに理解されよう。上記の本発明の記載は、その例示態様だけを開示したのであって、他の変更態様も本発明の範囲内にあると考慮されると理解されたい。従って、本発明は、本明細書において詳しく記載した特別な態様に制限されない。むしろ、本発明の範囲及び内容を示すものとしては、付帯の特許請求項を参照にすべきである。
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1]単離されたEFNAモジュレーター。
[態様2]EFNAモジュレーターがEFNAアンタゴニストを含む、態様1に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様3]EFNAモジュレーターが抗体又はその免疫反応性断片を含む、態様1に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様4]抗体又はその免疫反応性断片がモノクローナル抗体を含む、態様3に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様5]モノクローナル抗体が、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体からなる群より選択される、態様4に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様6]前記モノクローナル抗体が中和抗体を含む、態様4に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様7]前記モノクローナル抗体が内在化抗体を含む、態様4に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様8]前記モノクローナル抗体が枯渇性抗体を含む、態様4に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様9]前記モノクローナル抗体がEFNA4と会合する抗体を含む、態様4に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様10]前記モノクローナル抗体が3つの相補性決定領域を有する軽鎖可変領域と3つの相補性決定領域を有する重鎖可変領域とを含み、ここで重鎖及び軽鎖の相補性決定領域は、図面7Aに示す相補性決定領域を含む、態様9に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様11]前記モノクローナル抗体が軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含み、ここで前記軽鎖可変領域は、配列番号99、配列番号103、配列番号107、配列番号111、配列番号115、配列番号119、配列番号123、配列番号127、配列番号131、配列番号135、配列番号139、配列番号143、配列番号147、配列番号151、配列番号155、配列番号159、及び配列番号163に示されるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、そしてここで前記重鎖可変領域は、配列番号97、配列番号101、配列番号105、配列番号109、配列番号113、配列番号117、配列番号121、配列番号125、配列番号129、配列番号133、配列番号137、配列番号141、配列番号145、配列番号149、配列番号153、配列番号157、及び配列番号161に示されるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、態様9に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様12]細胞傷害剤をさらに含んでなる、態様9、10又は11に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様13]態様11に記載のアミノ酸重鎖可変領域又はアミノ酸軽鎖可変領域をコードする核酸。
[態様14]態様13に記載の核酸を含んでなるベクター。
[態様15]態様14に記載のベクターを含んでなる宿主細胞。
[態様16]配列番号2に示されるアミノ酸配列又はその断片を含んでなる、態様1に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様17]EFNAモジュレーターが免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部をさらに含む、態様16に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様18]モジュレーターが、腫瘍始原細胞の頻度を低下させることの必要な被検者への投与時に腫瘍始原細胞の頻度を低下させる、態様1に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様19]頻度の低下が、腫瘍始原細胞について濃縮することが知られている腫瘍細胞表面マーカーのフローサイトメトリー分析を使用して決定される、態様18に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様20]頻度の低下が、腫瘍始原細胞について濃縮することが知られている腫瘍細胞表面マーカーの免疫組織化学検出を使用して決定される、態様18に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様21]前記腫瘍始原細胞が腫瘍永続化細胞を含む、態様18に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様22]細胞傷害剤をさらに含んでなる、態様1に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様23]前記EFNAモジュレーターが汎EFNAモジュレーターを含む、態様1に記載の単離されたEFNAモジュレーター。
[態様24]態様1に記載の単離されたEFNAモジュレーターを含んでなる、医薬組成物。
[態様25]単離されたEFNA4モジュレーター。
[態様26]前記EFNA4モジュレーターが汎EFNA4モジュレーターを含む、態様25に記載の単離されたEFNA4モジュレーター。
[態様27]態様25に記載の単離されたEFNA4モジュレーターを含んでなる、医薬組成物。
[態様28]治療有効量のEFNAモジュレーターを、EFNA関連障害の治療が必要な被検者へ投与することを含んでなる、EFNA関連障害を治療する方法。
[態様29]前記EFNAモジュレーターがEFNAアンタゴニストを含む、態様28に記載の方法。
[態様30]前記EFNAモジュレーターが抗体又はその免疫反応性断片を含む、態様28に記載の方法。
[態様31]抗体又はその免疫反応性断片がモノクローナル抗体を含む、態様30に記載の方法。
[態様32]モノクローナル抗体が、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト化抗体、及びヒト抗体からなる群より選択される、態様31に記載の方法。
[態様33]前記モノクローナル抗体が3つの相補性決定領域を有する軽鎖可変領域と3つの相補性決定領域を有する重鎖可変領域とを含み、ここで重鎖及び軽鎖の相補性決定領域は、図面7Aに示す相補性決定領域を含む、態様32に記載の方法。
[態様34]前記モノクローナル抗体がEFNA4と会合する、態様31に記載の方法。
[態様35]前記モノクローナル抗体が中和抗体を含む、態様31に記載の方法。
[態様36]前記モノクローナル抗体が内在化抗体を含む、態様31に記載の方法。
[態様37]前記内在化抗体が細胞傷害剤を含む、態様36に記載の方法。
[態様38]前記EFNA関連障害が過剰増殖性障害を含む、態様28に記載の方法。
[態様39]前記過剰増殖性障害が新生物障害を含む、態様38に記載の方法。
[態様40]前記新生物障害が固形腫瘍を含む、態様39に記載の方法。
[態様41]新生物障害が、副腎癌、膀胱癌、子宮頚部癌、子宮内膜癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、結直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、又は乳癌を含む、態様40に記載の方法。
[態様42]前記新生物障害が血液系腫瘍を含む、態様39に記載の方法。
[態様43]前記血液系腫瘍が白血病又はリンパ腫を含む、態様42に記載の方法。
[態様44]前記新生物障害に罹患している被検者が、腫瘍始原細胞を含んでなる腫瘍を明示する、態様39に記載の方法。
[態様45]腫瘍始原細胞の頻度を前記被検者において低下させる工程をさらに含んでなる、態様44に記載の方法。
[態様46]頻度の低下が、腫瘍始原細胞について濃縮することが知られている腫瘍細胞表面マーカーのフローサイトメトリー分析、又は腫瘍始原細胞について濃縮することが知られている腫瘍細胞表面マーカーの免疫組織化学検出を使用して決定される、態様45に記載の方法。
[態様47]頻度の低下が、in vitro 又は in vivo の限界希釈分析を使用して決定される、態様45に記載の方法。
[態様48]頻度の低下が、生きたヒト腫瘍細胞の免疫不全マウス中への移植を含んでなる in vivo 限界希釈分析を使用して決定される、態様47に記載の方法。
[態様49]in vivo 限界希釈分析を使用して決定される頻度の低下が、ポアソン分布統計を使用する腫瘍始原細胞頻度の定量を含む、態様48に記載の方法。
[態様50]頻度の低下が、生きたヒト腫瘍細胞の in vitro コロニー支持条件中への限界希釈沈着を含んでなる in vitro 限界希釈分析を使用して決定される、態様47に記載の方法。
[態様51]in vivo 限界希釈分析を使用して決定される頻度の低下が、ポアソン分布統計を使用する腫瘍始原細胞頻度の定量を含む、態様50に記載の方法。
[態様52]抗癌剤を投与する工程をさらに含んでなる、態様28に記載の方法。
[態様53]前記EFNAモジュレーターが配列番号2に示されるアミノ酸配列又はその断片を含む、態様28に記載の方法。
[態様54]前記EFNAモジュレーターが汎EFNAモジュレーターを含む、態様28に記載の方法。
[態様55]腫瘍始原細胞の頻度を低下させることの必要な被検者において腫瘍始原細胞の頻度を低下させる方法であって、前記被検者へEFNAモジュレーターを投与する工程を含んでなる、前記方法。
[態様56]腫瘍始原細胞が腫瘍永続化細胞を含む、態様55に記載の方法。
[態様57]前記腫瘍永続化細胞がCD44細胞又はCD133細胞である、態様56に記載の方法。
[態様58]前記EFNAモジュレーターが抗体を含む、態様55に記載の方法。
[態様59]前記抗体がモノクローナル抗体を含む、態様58に記載の方法。
[態様60]前記EFNAモジュレーターが抗EFNA4抗体を含む、態様59に記載の方法。
[態様61]被検者が、副腎癌、膀胱癌、子宮頚部癌、子宮内膜癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、結直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、及び乳癌からなる群より選択される新生物障害に罹患している、態様55に記載の方法。
[態様62]被検者が血液系腫瘍に罹患している、態様55に記載の方法。
[態様63]腫瘍始原細胞の頻度が少なくとも10%低下する、態様55に記載の方法。
[態様64]頻度の低下が、腫瘍始原細胞について濃縮することが知られている腫瘍細胞表面マーカーのフローサイトメトリー分析、又は腫瘍始原細胞について濃縮することが知られている腫瘍細胞表面マーカーの免疫組織化学検出を使用して決定される、態様55に記載の方法。
[態様65]頻度の低下が、in vitro 又は in vivo の限界希釈分析を使用して決定される、態様55に記載の方法。
[態様66]血液系腫瘍に罹患している被検者を治療する方法であって、前記被検者へEFNAモジュレーターを投与する工程を含んでなる、前記方法。
[態様67]前記EFNAモジュレーターがEFNA4モジュレーターである、態様66に記載の方法。
[態様68]EFNAモジュレーターを被検者へ投与する工程を含んでなる、被検者における腫瘍を抗癌剤での治療のために増感させる方法。
[態様69]前記EFNAモジュレーターが抗体を含む、態様68に記載の方法。
[態様70]前記腫瘍が固形腫瘍である、態様68に記載の方法。
[態様71]前記抗癌剤が化学療法剤を含む、態様68に記載の方法。
[態様72]前記抗癌剤が免疫療法剤を含む、態様68に記載の方法。
[態様73]過剰増殖性障害を診断することの必要な被検者において過剰増殖性障害を診断する方法であって:
a)前記被検者より組織試料を入手する工程;
b)該組織試料を少なくとも1つのEFNAモジュレーターと接触させる工程;及び
c)該試料と会合したEFNAモジュレーターを検出又は定量する工程を含んでなる、
前記方法。
[態様74]EFNAモジュレーターがモノクローナル抗体を含む、態様73に記載の方法。
[態様75]抗体がレポーターと作動可能に会合している、態様74に記載の方法。
[態様76]EFNAモジュレーターを含んでなる容器(receptacle)とEFNA関連障害を治療又は診断するのに前記EFNAモジュレーターを使用するための指示物(instructional materials)とを含んでなる、EFNA関連障害を診断するか又は治療するのに有用な製造品。
[態様77]前記EFNAモジュレーターがモノクローナル抗体である、態様76に記載の製造品。
[態様78]容器が読取り可能プレートを含む、態様76に記載の製造品。
[態様79]少なくとも1つの内在化EFNAモジュレーターの治療有効量を投与する工程を含んでなる、新生物障害に罹患している被検者を治療する方法。
[態様80]前記EFNAモジュレーターが抗体を含む、態様79に記載の方法。
[態様81]前記抗体がモノクローナル抗体を含む、態様80に記載の方法。
[態様82]モノクローナル抗体が細胞傷害剤をさらに含む、態様81に記載の方法。
[態様83]モノクローナル抗体がEFNA4と会合する、態様81に記載の方法。
[態様84]少なくとも1つの中和EFNAモジュレーターの治療有効量を投与する工程を含んでなる、新生物障害に罹患している被検者を治療する方法。
[態様85]前記EFNAモジュレーターが抗体を含む、態様84に記載の方法。
[態様86]前記抗体がモノクローナル抗体を含む、態様85に記載の方法。
[態様87]前記モノクローナル抗体が抗EFNA4抗体を含む、態様86に記載の方法。
[態様88]前記EFNA4抗体が汎EFNA抗体を含む、態様87に記載の方法。
[態様89]新生物障害が、副腎癌、膀胱癌、子宮頚部癌、子宮内膜癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌、卵巣癌、結直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、及び乳癌からなる群より選択される、態様84に記載の方法。
[態様90]腫瘍始原細胞をEFNAモジュレーターと接触させる工程を含んでなる、腫瘍始原細胞の集団を同定する、単離する、分画する、又は濃縮する方法。
[態様91]前記EFNAモジュレーターが抗体を含む、態様90に記載の方法。
[態様92]hSC4.5、hSC4.15、hSC4.22、及びhSC4.47からなる群より選択される抗体上に見出されるヒト化可変領域に実質的に類似したヒト化抗体可変領域と医薬的に許容される担体とを含んでなる、組成物。
[態様93]軽鎖可変領域と重鎖可変領域とを含んでなる抗EFNA4抗体であって、ここで前記軽鎖可変領域は、配列番号151、配列番号155、配列番号159、及び配列番号163に示されるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、そしてここで前記重鎖可変領域は、配列番号149、配列番号153、配列番号157、及び配列番号161に示されるアミノ酸配列からなる群より選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記抗EFNA4抗体。
[態様94]医薬有効量のEFNAモジュレーターを投与する工程を含んでなる、転移を阻害するか又は予防することの必要な被検者において転移を阻害又は予防する方法。
[態様95]被検者がEFNAモジュレーターの投与の前又は後に腫瘍減量術を受ける、態様94に記載の方法。
[態様96]前記腫瘍減量術が少なくとも1つの抗癌剤の投与を含む、態様94に記載の方法。
[態様97]医薬有効量のEFNAモジュレーターを投与する工程を含んでなる、維持療法の必要な被検者に維持療法を実施する方法。
[態様98]前記被検者がEFNAモジュレーターの投与に先立って新生物障害について治療された、態様97に記載の方法。
[態様99]EFNAモジュレーターを投与する工程を含んでなる、過剰増殖性障害に罹患している被検者において腫瘍細胞を枯渇する方法。
[態様100]前記腫瘍細胞が腫瘍始原細胞を含む、態様99に記載の方法。
[態様101]EFNAモジュレーターを投与する工程を含んでなる、EFNA関連障害を in vivo で診断する、検出する、又はモニターすることの必要な被検者において、EFNA関連障害を in vivo で診断する、検出する、又はモニターする方法。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図2
図3
図4
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7-1】
図7-2】
図7-3】
図7-4】
図7-5】
図7-6】
図7-7】
図7-8】
図7-9】
図7-10】
図8-1】
図8-2】
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15-1】
図15-2】
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図16-4】
図17-1】
図17-2】
図18
図19
図20
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]