(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明が適用される建設機械の一例であるハイブリッド式ショベルを示す側面図である。ハイブリッド式ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載される。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられる。ブーム4の先端にはアーム5が取り付けられ、アーム5の先端にはバケット6が取り付けられる。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの1例である掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。また、上部旋回体3には、キャビン10が設けられ、且つエンジン等の動力源が搭載される。
【0011】
図2は、本発明の実施形態によるハイブリッド式ショベルの駆動系の構成を示すブロック図である。
図2において、機械的動力系は二重線、高圧油圧ラインは太実線、パイロットラインは破線、電気駆動・制御系は細実線でそれぞれ示される。
【0012】
エンジン11と電動発電機12は変速機13の2つの入力軸にそれぞれ接続される。変速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続される。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続される。
【0013】
コントロールバルブ17は、ハイブリッド式ショベルにおける油圧系の制御を行う制御装置である。下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9は、高圧油圧ラインを介してコントロールバルブ17に接続される。
【0014】
電動発電機12には、インバータ18を介して、蓄電器としてのキャパシタを含む蓄電系120が接続される。また、蓄電系120には、インバータ20を介して旋回用電動機21が接続される。旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。また、旋回用電動機21、インバータ20、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回変速機24は負荷駆動系を構成する。
【0015】
操作装置26は、レバー26A、レバー26B、ペダル26Cを含む。レバー26A、レバー26B、及びペダル26Cは、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及び圧力センサ29にそれぞれ接続される。圧力センサ29は、電気系の駆動制御を行うコントローラ30に接続される。
【0016】
図3は蓄電系120の構成を示すブロック図である。蓄電系120は、キャパシタ19、昇降圧コンバータ100、及びDCバス110を含む。DCバス110は、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を制御する。キャパシタ19には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部112と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部113が設けられる。キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及び、キャパシタ電流検出部113によって検出されるとキャパシタ電流値はコントローラ30に供給される。
【0017】
昇降圧コンバータ100は、電動発電機12及び旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。DCバス110は、インバータ18、インバータ20、及び昇降圧コンバータ100の間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間での電力の授受を行う。
【0018】
コントローラ30は、ハイブリッド式ショベルの駆動制御を行う主制御部としての制御装置である。コントローラ30は、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、内部メモリに格納された駆動制御用のプログラムをCPUに実行させて各種機能を実現する。
【0019】
例えば、コントローラ30は、圧力センサ29から供給される信号を速度指令値に変換し、旋回用電動機21の駆動制御を行う。圧力センサ29から供給される信号は、上部旋回体3を旋回させるために操作装置26としての旋回操作レバーを操作した場合の操作量を表す信号に相当する。
【0020】
また、コントローラ30は、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)を行うとともに、昇降圧コンバータ100を駆動制御することによるキャパシタ19の充放電制御を行う。具体的には、コントローラ30は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(アシスト運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。
【0021】
この昇降圧コンバータ100の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、DCバス電圧検出部111によって検出されるDCバス電圧値、キャパシタ電圧検出部112によって検出されるキャパシタ電圧値、及びキャパシタ電流検出部113によって検出されるキャパシタ電流値に基づいて行われる。
【0022】
以上のような構成において、アシストモータである電動発電機12が発電した電力は、インバータ18を介して蓄電系120のDCバス110に供給された後、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給され、或いは、インバータ20を介して旋回用電動機21に供給される。また、旋回用電動機21が回生した回生電力は、インバータ20を介して蓄電系120のDCバス110に供給された後、昇降圧コンバータ100を介してキャパシタ19に供給され、或いは、インバータ18を介して電動発電機12に供給される。また、キャパシタ19に蓄積された電力は、昇降圧コンバータ100及びDCバス110を介して電動発電機12及び旋回用電動機21の少なくとも一方に供給される。なお、本実施例では、旋回用電動機21は、キャパシタ19に蓄積された電力を優先的に使用し、電動発電機12が発電した電力を補助的に使用する。
【0023】
図4は、コントローラ30が旋回用電動機21の駆動制御を行う際に用いる旋回制御部30Aの構成例を示す機能ブロック図である。
【0024】
旋回制御部30Aは、速度指令生成部31、減算器32、PI制御部33、トルク制限部34、減算器35、PI制御部36、電流変換部37、旋回動作検出部38、及びPWM信号生成部40を有する。
【0025】
速度指令生成部31は、圧力センサ29から入力される電気信号に基づいて速度指令値を生成する。具体的には、速度指令生成部31は、圧力センサ29から入力される旋回操作レバーの操作量Lに基づいて速度指令値Cfを生成する。そして、速度指令生成部31は、速度指令値Cfを減算器32に対して出力する。なお、速度指令生成部31の詳細については後述する。
【0026】
減算器32は、速度指令値Cfと旋回速度の現在値との偏差をPI制御部33に対して出力する。旋回速度の現在値は、例えば旋回動作検出部38が算出する値である。なお、旋回動作検出部38は、旋回用電動機21の回転位置の変化に基づいて旋回速度値を算出し、減算器32に出力する。また、旋回用電動機21の回転位置の変化は、レゾルバ22によって検出される。
【0027】
PI制御部33は、減算器32から入力される偏差に基づいてPI制御を実行する。具体的には、PI制御部33は、旋回速度の現在値が速度指令値Cfに近づくようにトルク電流指令値を生成する。そして、PI制御部33は、生成したトルク電流指令値をトルク制限部34に対して出力する。
【0028】
トルク制限部34は、コントローラ30の内部メモリに記憶されたトルクリミット値を用いて、PI制御部33から入力されるトルク電流指令値をトルクリミット値以下に制限する。具体的には、トルク電流指令値がトルクリミット値以上であればトルクリミット値をトルク電流指令値として採用し、トルク電流指令値がトルクリミット値未満であればそのトルク電流指令値をそのまま採用する。そして、トルク制限部34は、採用したトルク電流指令値を減算器35に対して出力する。
【0029】
減算器35は、トルク電流指令値とトルク電流の現在値との偏差をPI制御部36に対して出力する。トルク電流の現在値は、例えば電流変換部37が算出する値である。なお、電流変換部37は、旋回用電動機21を流れるモータ駆動電流の値を検出し、検出したモータ駆動電流の値をトルク電流指令値に相当する値に変換して減算器35に出力する。
【0030】
PI制御部36は、減算器35から入力される偏差に基づいてPI制御を実行する。具体的には、PI制御部36は、トルク電流の現在値がトルク電流指令値に近づくようにインバータ20を駆動するための駆動指令値を生成する。そして、PI制御部36は、生成した駆動指令値をPWM信号生成部40に対して出力する。
【0031】
PWM信号生成部40は、PI制御部36から入力される駆動指令値に基づいて、インバータ20のトランジスタをスイッチング制御するためのPWM信号を生成し、生成したPWM信号をインバータ20に対して出力する。
【0032】
次に、
図5を参照し、速度指令生成部31の詳細について説明する。なお、
図5は、速度指令生成部31の構成例を示す機能ブロック図である。
【0033】
速度指令生成部31は、主に、速度指令目標値生成部310、最大変化幅決定部311、及び速度指令算出部312を含む。
【0034】
速度指令目標値生成部310は、旋回操作レバーの操作量Lに応じて速度指令目標値Ctを生成する機能要素である。本実施例では、速度指令目標値生成部310は、内部メモリに予め記憶された旋回操作レバーの操作量Lと速度指令目標値Ctとの対応関係を表す対応テーブルを参照して旋回操作レバーの操作量Lに対応する速度指令目標値Ctを制御周期毎に生成する。なお、本実施例では、右旋回方向の値が正値で表され、左旋回方向の値が負値で表される。
【0035】
最大変化幅決定部311は、現在の旋回速度と速度指令目標値Ctとの差である速度差ΔCに基づいて速度指令値の最大変化幅αを決定する機能要素である。
【0036】
現在の旋回速度は、例えば、旋回動作検出部38が算出する旋回速度の現在値であってもよく、所定回数前の制御周期における速度指令値であってもよい。なお、所定回数前の制御周期における速度指令値は、典型的には、前回の制御周期における速度指令値であるが、複数回前の制御周期における速度指令値であってもよい。この場合、各制御周期における速度指令値は、所定時間にわたって記憶・保持される。
【0037】
また、速度指令値の最大変化幅αは、前回の制御周期における速度指令値Cpと今回の制御周期における速度指令値Cfとの差が取り得る最大値を意味する。例えば、前回の制御周期における速度指令値Cpと今回の制御周期における速度指令目標値Ctとの差が最大変化幅α以上であれば、前回の制御周期における速度指令値Cpに最大変化幅αを加えた値、或いは、前回の制御周期における速度指令値Cpから最大変化幅αを差し引いた値が今回の制御周期における速度指令値Cfとして採用される。また、前回の制御周期における速度指令値Cpと今回の制御周期における速度指令目標値Ctとの差が最大変化幅α未満であれば、速度指令目標値Ctが今回の制御周期における速度指令値Cfとして採用される。
【0038】
本実施例では、最大変化幅決定部311は、速度差ΔCの関数として最大変化幅αを導き出す。但し、最大変化幅決定部311は、予め記憶された速度差ΔCと最大変化幅αとの対応関係を表す対応マップを参照して速度差ΔCに対応する最大変化幅αを導き出してもよい。なお、典型的には、最大変化幅αは速度差ΔCが大きいほど大きく、例えば、速度差ΔCの大きさに比例して大きくなる。また、最大変化幅αは、速度差ΔCが所定値以上の場合に一定となるように設定されてもよい。
【0039】
速度指令算出部312は、速度指令目標値Ctに基づいて速度指令値Cfを算出する機能要素である。本実施例では、速度指令算出部312は、今回の制御周期で速度指令目標値生成部310が生成した速度指令目標値Ctと、今回の制御周期で最大変化幅決定部311が決定した最大変化幅αと、前回の制御周期で速度指令算出部312が算出した速度指令値Cpとに基づいて今回の制御周期における速度指令値Cfを算出する。
【0040】
具体的には、速度指令算出部312は、今回の制御周期における速度指令目標値Ctと前回の制御周期における速度指令値Cp(<速度指令目標値Ct)との差が、今回の制御周期で決定した最大変化幅α以上の場合、前回の制御周期における速度指令値Cpに最大変化幅αを加えた値を今回の制御周期における速度指令値Cfとして算出する。或いは、今回の制御周期における速度指令目標値Ctと前回の制御周期における速度指令値Cp(>速度指令目標値Ct)との差が、今回の制御周期で決定した最大変化幅α以上の場合、前回の制御周期における速度指令値Cpから最大変化幅αを差し引いた値を今回の制御周期における速度指令値Cfとして算出する。或いは、今回の制御周期における速度指令目標値Ctと前回の制御周期における速度指令値Cpとの差が今回の制御周期で決定した最大変化幅α未満の場合、今回の制御周期における速度指令目標値Ctを今回の制御周期における速度指令値Cfとして採用する。そして、速度指令算出部312は、採用した速度指令値Cfを減算器32に対して出力する。
【0041】
次に、
図6を参照し、コントローラ30の速度指令生成部31が速度指令値Cfを生成する処理(以下、「速度指令生成処理」とする。)について説明する。なお、
図6は、速度指令生成処理の流れを示すフローチャートである。速度指令生成部31は、所定の制御周期で繰り返しこの速度指令生成処理を実行する。
【0042】
最初に、速度指令生成部31の速度指令目標値生成部310は、旋回操作レバーの操作量Lを取得する(ステップS1)。本実施例では、圧力センサ29の出力から操作量Lを算出する。
【0043】
その後、速度指令目標値生成部310は、操作量Lから速度指令目標値Ctを生成する(ステップS2)。本実施例では、内部メモリに予め記憶された旋回操作レバーの操作量Lと速度指令目標値Ctとの対応関係を表す対応テーブルを参照して旋回操作レバーの操作量Lに対応する速度指令目標値Ctを生成する。また、速度指令目標値Ctは、操作量Lから一意に定まる値であり、操作量Lが大きいほど大きい。
【0044】
その後、速度指令生成部31は、前回の速度指令値Cpを取得し、その速度指令値Cpと速度指令目標値Ctとの速度差ΔCを算出する(ステップS3)。
【0045】
その後、最大変化幅決定部311は、速度差ΔCから最大変化幅αを導き出す(ステップS4)。本実施例では、最大変化幅決定部311は所定の計算式(関数)を用いて速度差ΔCから最大変化幅αを導き出す。なお、最大変化幅αは、速度差ΔCが大きいほど大きい。
【0046】
その後、速度指令生成部31の速度指令算出部312は、速度指令目標値Ctと前回の制御周期における速度指令値Cpとの差が最大変化幅αより大きいか否かを判定する(ステップS5)。
【0047】
そして、その差が最大変化幅αより大きいと判定した場合(ステップS5のYES)、速度指令算出部312は、速度指令目標値Ctが前回の制御周期における速度指令値Cpより大きいか否かを判定する(ステップS6)。すなわち、旋回加速中であるか否かを判定する。
【0048】
そして、速度指令目標値Ctが前回の制御周期における速度指令値Cpより大きいと判定した場合(ステップS6のYES)、すなわち旋回加速中であると判定した場合、速度指令算出部312は、前回の制御周期における速度指令値Cpに最大変化幅αを加えた値を速度指令値Cfとして採用する(ステップS7)。
【0049】
また、速度指令目標値Ctが前回の制御周期における速度指令値Cpより小さいと判定した場合(ステップS6のNO)、すなわち旋回減速中であると判定した場合、速度指令算出部312は、前回の制御周期における速度指令値Cpから最大変化幅αを差し引いた値を速度指令値Cfとして採用する(ステップS8)。
【0050】
一方、速度指令目標値Ctと前回の制御周期における速度指令値Cpとの差が最大変化幅α以下であると判定した場合(ステップS5のNO)、速度指令算出部312は、速度指令目標値Ctをそのまま速度指令値Cfとして採用する(ステップS9)。
【0051】
その後、速度指令算出部312は、採用した速度指令値Cfを減算器32に対して出力する。
【0052】
このようにして、コントローラ30の速度指令生成部31は、旋回操作レバーの操作量Lに基づいて速度指令値Cfを制御周期毎に生成する。
【0053】
次に、
図7を参照し、旋回加速時における各種パラメータの時間的推移について説明する。なお、
図7は、旋回加速時における各種パラメータの時間的推移を示すグラフであり、上から順に、旋回操作レバーの操作量L、速度指令目標値Ct、速度指令値Cf、前回の速度指令値Cpと速度指令目標値Ctとの差である速度差ΔC、及び最大変化幅αの時間的推移を示す。なお、5つのグラフの時間軸(横軸)は共通である。
【0054】
図7の太実線で示すように、時刻t1において旋回操作レバーが値ゼロから値L1まで操作された場合、速度指令目標値Ctは値ゼロから値C1まで増大する。なお、前回の制御周期における速度指令値Cpは値ゼロである。時刻t1以前では旋回操作レバーが操作されていないためである。その結果、速度指令目標値Ctと前回の制御周期における速度指令値Cpとの差である速度差ΔCは、値ゼロから値C1まで増大する。また、最大変化幅αは、速度差ΔCの増大に応じて最大変化幅ゼロから最大変化幅α1まで増大する。また、速度指令値Cfは、値ゼロから最大変化幅α1だけ増大する。
【0055】
その後、所定の制御周期で速度指令生成処理が繰り返されるにしたがって、速度指令値Cfは徐々に増大し、時刻t2において速度指令目標値Ctに等しい値C1に至る。また、本実施例では、時刻t1から時刻t2において、速度指令値Cfの一制御周期当たりの増加幅は幅α1から幅ゼロまで徐々に減少する。速度差ΔCが値C1から値ゼロまで徐々に減少することで、最大変化幅αも最大変化幅α1から最大変化幅ゼロまで徐々に減少するためである。
【0056】
また、
図7の太点線で示すように、時刻t1において旋回操作レバーが値ゼロから値L2(<L1)まで操作された場合、速度指令目標値Ctは値ゼロから値C2(<C1)まで増大する。なお、前回の制御周期における速度指令値Cpは値ゼロである。時刻t1以前では旋回操作レバーが操作されていないためである。その結果、速度指令目標値Ctと前回の制御周期における速度指令値Cpとの差である速度差ΔCは値ゼロから値C2まで増大する。また、最大変化幅αは、速度差ΔCの増大に応じて最大変化幅ゼロから最大変化幅α2(<α1)まで増大する。また、速度指令値Cfは、値ゼロから最大変化幅α2だけ増大する。
【0057】
その後、所定の制御周期で速度指令生成処理が繰り返されるにしたがって、速度指令値Cfは徐々に増大し、時刻t3(>t2)において速度指令目標値Ctに等しい値C2に至る。また、本実施例では、時刻t1から時刻t3において、速度指令値Cfの一制御周期当たりの増加幅は幅α2から幅ゼロまで徐々に減少する。速度差ΔCが値C2から値ゼロまで徐々に減少することで、最大変化幅αも最大変化幅α2から最大変化幅ゼロまで徐々に減少するためである。
【0058】
このように、旋回加速時において、コントローラ30は、操作量Lが大きいほど、速度指令目標値Ctの増加幅が大きく、速度指令値Cfの一制御周期における増加幅も大きくなるようにする。また、速度指令値Cfが速度指令目標値Ctに達するまでの時間が短くなるようにする。但し、コントローラ30は、操作量Lの大きさによっては、操作量Lが大きいときに速度指令値Cfが速度指令目標値Ctに達するまでの時間が、操作量Lが小さいときに速度指令値Cfが速度指令目標値Ctに達するまでの時間より長くなるようにしてもよい。
【0059】
次に、
図8を参照し、旋回減速時における各種パラメータの時間的推移について説明する。なお、
図8は、旋回減速時における各種パラメータの時間的推移を示すグラフであり、上から順に、旋回操作レバーの操作量L、速度指令目標値Ct、速度指令値Cf、速度差ΔC、及び最大変化幅αの時間的推移を示す。なお、5つのグラフの時間軸(横軸)は共通である。
【0060】
図8の太実線で示すように、時刻t11において旋回操作レバーのレバー操作量Lが値L10から値L11まで中立方向に戻された場合、速度指令目標値Ctは値C10から値C11まで減少する。なお、前回の制御周期における速度指令値Cpは値C10である。時刻t11以前では旋回操作レバーの操作量Lが値L10となっているためである。その結果、速度指令目標値Ctと前回の制御周期における速度指令値Cpとの差である速度差ΔCは、値ゼロから負値(C11−C10)まで絶対値で増加する。また、最大変化幅αは、速度差ΔCの絶対値の増加に応じて最大変化幅ゼロから最大変化幅α11まで増加する。また、速度指令値Cfは、値C10から最大変化幅α11だけ減少する。
【0061】
その後、所定の制御周期で速度指令生成処理が繰り返されるにしたがって、速度指令値Cfは徐々に減少し、時刻t12において速度指令目標値Ctに等しい値C11に至る。また、本実施例では、時刻t11から時刻t12において、速度指令値Cfの一制御周期当たりの減少幅は幅α11から幅ゼロまで絶対値で徐々に減少する。速度差ΔCが負値(C11−C10)から値ゼロまで絶対値で徐々に減少することで、最大変化幅αも最大変化幅α11から最大変化幅ゼロまで徐々に減少するためである。
【0062】
また、
図8の太点線で示すように、時刻t11において旋回操作レバーの操作量Lが値L10から値L12(>L11)まで操作された場合、速度指令目標値Ctは値C10から値C12(>C11)まで減少する。なお、前回の制御周期における速度指令値Cpは値C10である。時刻t11以前では旋回操作レバーの操作量Lが値L10となっているためである。その結果、速度指令目標値Ctと前回の制御周期における速度指令値Cpとの差である速度差ΔCは値ゼロから負値(C12−C10)まで絶対値で増加する。また、最大変化幅αは、速度差ΔCの絶対値の増加に応じて最大変化幅ゼロから最大変化幅α12(<α11)まで増加する。また、速度指令値Cfは、値C10から最大変化幅α12だけ減少する。
【0063】
その後、所定の制御周期で速度指令生成処理が繰り返されるにしたがって、速度指令値Cfは徐々に減少し、時刻t13(>t12)において速度指令目標値Ctに等しい値C12に至る。また、本実施例では、時刻t11から時刻t13において、速度指令値Cfの一制御周期当たりの減少幅は幅α12から幅ゼロまで徐々に減少する。速度差ΔCが負値(C12−C10)から値ゼロまで絶対値で徐々に減少することで、最大変化幅αも最大変化幅α12から最大変化幅ゼロまで絶対値で徐々に減少するためである。
【0064】
このように、旋回減速時において、コントローラ30は、操作量Lが大きいほど、速度指令目標値Ctの減少幅が大きく、速度指令値Cfの一制御周期における減少幅も大きくなるようにする。また、速度指令値Cfが速度指令目標値Ctに達するまでの時間が短くなるようにする。但し、コントローラ30は、操作量Lの大きさによっては、操作量Lが大きいときに速度指令値Cfが速度指令目標値Ctに達するまでの時間が、操作量Lが小さいときに速度指令値Cfが速度指令目標値Ctに達するまでの時間より長くなるようにしてもよい。
【0065】
以上の構成により、コントローラ30は、旋回操作レバーの操作量Lに応じて生成される速度指令目標値Ctと、現在の旋回速度と速度指令目標値Ctとの速度差ΔCに基づいて決定される速度指令値Cfの最大変化幅αと、前回算出した速度指令値Cpとに基づいて速度指令値Cfを算出する。そのため、旋回操作レバーの操作量Lに応じて、速度指令値Cfが速度指令目標値Ctに達するまでの速度指令値Cfの増減率を変えることができる。その結果、旋回操作レバーの操作量に表れるオペレータの意思をより適切に反映でき、操作感を向上させることができる。
【0066】
なお、現在の旋回速度には、例えば、旋回用電動機21の回転位置の変化に基づいて算出される旋回速度の現在値、又は、所定回数前の制御周期における速度指令値が採用され得る。そのため、コントローラ30は、簡易且つ容易に、速度差ΔC、最大変化幅α、そして速度指令値Cfを算出できる。
【0067】
また、速度指令値Cfの変化は、旋回操作レバーの操作量が大きいほど大きく、旋回操作レバーの操作が速いほど大きくなるように調整され得る。また、最大変化幅αは、速度差ΔCが大きいほど大きくなるように調整され得る。そのため、操作量が大きい場合、或いは、操作が速い場合には、速度指令値Cfの変化が大きいため、上部旋回体3をより迅速に加減速させることができる。その結果、フル操作時の操作感を向上させることができる。
【0068】
また、速度指令値Cfの変化は、旋回操作レバーの操作量が小さいほど小さく、旋回操作レバーの操作が遅いほど小さくなるように調整され得る。また、最大変化幅αは、速度差ΔCが小さいほど小さくなるように調整され得る。そのため、操作量が小さい場合、或いは、操作が遅い場合には、速度指令値Cfの変化が小さいため、上部旋回体3をより緩やかに加減速させることができる。その結果、微操作時の操作感を向上させることができる。
【0069】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。